説明

車輌用ヘッドランプ

【課題】、車輌用ヘッドランプに前方からの衝突があった場合に、衝突物のダメージを軽減或いは無くすことを課題とする。
【解決手段】光源41L、41Rを備えたランプハウジング20をほぼ車輌の前後方向に延びるブラケット50A、50B、50Cを介して車体60へ取り付ける車輌用ヘッドランプ10であって、前記ブラケットには、前記ランプハウジング側端部と車体締結部(ボルト挿通孔)53との間の部分に水抜き孔59が設けられており、前記水抜き孔は少なくとも一つの角部59aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用ヘッドランプに関する。詳しくは、車輌用ヘッドランプに前方からの衝突があった場合に、衝突物のダメージを軽減或いは無くす技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具の一例に特許文献1に示されたものがある。
【0003】
特許文献1の車輌用灯具は、ランプハウジングに一体に形成されて後方へ突出した連結部の後端部に設けられた取付部の取付ボルトを挿入する円筒部の周囲に縦リブと横リブを形成し、前記横リブに切欠部を形成し、取付部内の水が前記切欠部から排出されるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】実開平6−75885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に示された車輌用灯具にあっては、切欠部によって水抜きが為されるので、取付部に水が溜まることはない。
【0006】
しかしながら、ランプハウジングを車体に支持している連結部は強固に構成されているため、車輌用灯具に前方から歩行者等が衝突した際に、車輌用灯具が容易に破損しない限り、歩行者等の衝突物に大きな衝撃が加えられ、歩行者等の衝突物が大きなダメージを受ける。
【0007】
本発明は、以上に示した問題点に鑑みて為されたものであり、車輌用ヘッドランプに前方からの衝突があった場合に、衝突物のダメージを軽減或いは無くすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車輌用ヘッドランプは、前記した課題を解決するために、光源を備えたランプハウジングをほぼ車輌の前後方向に延びるブラケットを介して車体へ取り付ける車輌用ヘッドランプであって、前記ブラケットには、前記ランプハウジング側端部と車体締結部との間の部分に水抜き孔が設けられており、前記水抜き孔は少なくとも一つの角部を有する。
【0009】
従って、車輌用ヘッドランプにあっては、ブラケットに加えられる衝撃による応力が水抜き孔の角部に集中する。
【発明の効果】
【0010】
本発明車輌用ヘッドランプは、光源を備えたランプハウジングをほぼ車輌の前後方向に延びるブラケットを介して車体へ取り付ける車輌用ヘッドランプであって、前記ブラケットには、前記ランプハウジング側端部と車体締結部との間の部分に水抜き孔が設けられており、前記水抜き孔は少なくとも一つの角部を有することを特徴とする。
【0011】
従って、本発明車輌用ヘッドランプにあっては、ブラケットに加えられる衝撃による応力が水抜き孔の角部に集中する。そのため、車輌用ヘッドランプに歩行者等が衝突すると、該衝突の衝撃による応力が集中する水抜き孔の角部から破断しやすく、前記破断によりブラケットに車輌用ヘッドランプを保持する力がなくなり、歩行者等の衝突物体に押されるままに、車輌用ヘッドランプは後方へ移動する。そのため、衝突の反力として歩行者等の衝突物に与えられる衝撃が無くなるか或いは緩和される。
【0012】
請求項2に記載した発明にあっては、前記水抜き孔は三角形状をしているので、応力が集中して破断する可能性がある角部が3箇所もあり、衝突の衝撃により破断しやすい。
【0013】
請求項3に記載した発明にあっては、車輌のほぼ左右方向に離間して一対の水抜き孔が形成されているので、2つの水抜き孔の間の部分で破断が起こりやすく、衝突の衝撃により破断しやすい。
【0014】
請求項4に記載した発明にあっては、前記ブラケットは長手方向に沿って厚さが異なり、厚さが最も薄い位置に前記水抜き孔が形成されているので、ブラケットの最も強度が弱くなっている部分に水抜き孔が位置することになり、衝突の衝撃による破断が起こりやすい。
【0015】
請求項5に記載した発明にあっては、前記ブラケットの上面が凹形状となっているので、水が溜まりやすい凹部の底の位置に水抜き孔が位置し、水抜きが確実に為されると共に、水抜き孔がある位置の肉厚が最も薄くて強度が弱いため、衝突の衝撃による破断が起こりやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明車輌用ヘッドランプを実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。なお、図示した最良の形態は本発明を自動車用ヘッドランプに適用したものである。
【0017】
図1乃至図3を参照して、自動車用ヘッドランプ10の概要を説明する。自動車用ヘッドランプ10は、ほぼ前方に開口した容器状をしたランプハウジング20の前面開口が透明なカバー30で覆われ、ランプハウジング20とカバー30とで画成された空間である灯室内に光源41L、41R、リフレクタ42L、42R等が配置されて成る。
【0018】
前記ランプハウジング20にはほぼ後方へ突出した、すなわち、ほぼ自動車の前後方向に延びる、ブラケット50A、50B、50Cが設けられ、該ブラケット50A、50B、50Cの後端部が車体60(図3参照)に固定され、これによって、自動車用ヘッドランプ10が車体60に支持される。前記ブラケットはランプハウジング20から一体に突設されても良いし、或いは、図1、図2に示すブラケット50Cや図3に示すブラケット50Aのように、ランプハウジング20と別体に形成されて、ランプハウジング20側端部が取付ネジ51によってランプハウジング20に固定されても良い。
【0019】
次に、前記ブラケットの詳細を、図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5共にブラケット50Aの要部を示す。図4は平面図、図5は図4のV−V線に沿う断面図である。
【0020】
ブラケット50Aはランプハウジング20から略後方に突出され、平面形状で、図2に示すように、自動車の前後方向に長く、且つ、後方へ行くに従って幅が狭くなる形状を有する。ブラケット50Aの後端部52の後端寄りの部分にはボルト挿通孔53が形成され、周縁部及び前端に上方へ突出された立壁54、55が形成されている。なお、前記後端部52より前側の部分の両側縁にもそれぞれ立壁56が形成されている。さらに、側縁の立壁56と56との間の部分には、補強用の複数のリブ57が上方へ突出されている。そして、前記ボルト挿通孔53が車体側締結部となり、このボルト挿通孔53に挿通された取付ボルト70によって車体60に締結される(図3参照)。
【0021】
ブラケット50Aの後端部52の上面58は凹形状に形成されている。すなわち、図5でわかるように、後端部52は自動車の前後方向に沿う方向である長手方向(図4の矢印Ln参照)において厚さが異なっており、詳しくは、前側部分52aは後方へ行くに従って、後側部分52bは前方へ行くに従って厚さが薄くなるように形成されている。そして、前記2つの部分52a、52bの境界部52cで厚みが最も薄くなっている。
【0022】
ブラケット50Aの後端部52には2つの水抜き孔59が形成されている。前記2つの水抜き孔59は前記境界部52cで自動車の左右方向に離間して形成されている。図示した水抜き孔59は三角形状を成し、従って、3つの角部59aを有する。そして、2つの水抜き孔59は3つの角部59aのうちの一が互いに向かい合って位置している。
【0023】
前記自動車用ヘッドランプ10において、前方から歩行者等の物体が衝突した場合、該衝突の衝撃がランプハウジング20を介してブラケット50Aに伝わる。ブラケット50Aの後端部52は水抜き孔59が形成されている部分が脆弱部分となっているため、該水抜き孔59が形成されている部分がブラケット50Aに伝わった前記衝撃によって折損し、ブラケット50Aにランプハウジング20を保持する力がなくなるため、ランプハウジング20がほぼ後方へ移動し、前記衝突による衝撃を緩和する。また、水抜き孔59には角部59aがあるため、前記衝撃による応力が角部59aに集中し、該角部59aから破壊が進みやすいので、衝突の際のブラケット50Aの折損が行われやすい。
【0024】
なお、本発明において、水抜き孔は三角形状である必要なく、少なくとも一つの角部を有していればよい。また、形成される数も、2個である必要はなく、1個でも、あるいは3個以上であってもよい。しかし、水抜き孔が三角形であると、応力集中が起こる鋭角となる角部を3個形成できるため、ブラケットの折損が容易に行われる。また、前記したように、2個一対の水抜き孔59が自動車の左右方向に離間して形成され、角部59aが向かい合うようにされると、それぞれの角部59aから進んでいく破壊が互いにつながり、ブラケットがより容易に折損しやすい。
【0025】
また、必須の構成ではないが、水抜き孔59がブラケット50Aの厚みが最も薄い箇所52cに形成されることによって、水抜き孔59の角部59aからの破壊がより容易に行われる。
【0026】
さらに、これも必須の構成ではないが、ブラケット50Aの上面58が凹形状にされ、その最も厚みが薄い箇所52cに水抜き孔59が形成されることによって、水抜き孔59による水抜きがスムーズに行われる。
【0027】
前記説明では、上側に位置した2つのブラケット50A、50Bのうちの一方50Aについて説明したが、他方50Bも水抜き孔を形成しうる向きとなっているので該ブラケット50Bにも前記したのと同様の水抜き孔59が形成される。
【0028】
なお、前記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、いずれも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図面は本発明車輌用ヘッドランプを自動車用ヘッドランプに適用した最良の形態を示すものであり、本図は概略正面図である。
【図2】概略平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿うブラケット部分の拡大断面図である。。
【図4】図2のIV部の拡大図である。
【図5】図4のV−V線に沿う拡大断面図である。。
【符号の説明】
【0030】
10…自動車用ヘッドランプ(車輌用ヘッドランプ)、20…ランプハウジング、41L…光源、41R…光源、50A…ブラケット、50B…ブラケット、50C…ブラケット、52C…境界部(厚さが最も薄い位置)、53…ボルト挿通孔(車体締結部)、58…上面、59…水抜き孔、59a…角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を備えたランプハウジングをほぼ車輌の前後方向に延びるブラケットを介して車体へ取り付ける車輌用ヘッドランプであって、
前記ブラケットには、前記ランプハウジング側端部と車体締結部との間の部分に水抜き孔が設けられており、
前記水抜き孔は少なくとも一つの角部を有する
ことを特徴とする車輌用ヘッドランプ。
【請求項2】
前記水抜き孔は三角形状をしている
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用ヘッドランプ。
【請求項3】
車輌のほぼ左右方向に離間して一対の水抜き孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用ヘッドランプ。
【請求項4】
前記ブラケットは長手方向に沿って厚さが異なり、厚さが最も薄い位置に前記水抜き孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車輌用ヘッドランプ。
【請求項5】
前記ブラケットの上面が凹形状となっている
ことを特徴とする請求項4に記載の車輌用ヘッドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−120137(P2009−120137A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298971(P2007−298971)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】