説明

車輌用前照灯

【課題】 車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図る。
【解決手段】 ランプハウジング2と該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバー3とによって灯具外筐4が構成され灯具外筐の内部に光源を有するランプユニット10、16が配置され、ランプユニットの一部を構成すると共に光源として発光ダイオード12a、17aが用いられた発光ユニット12、17と、ランプユニットの一部を構成すると共に発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材13、14、18と、発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出する放熱部材6とを設け、放熱部材の少なくとも一部に車輌の歩行者との衝突時における衝撃を吸収する衝撃吸収部7a、7a、7aを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、光源として発光ダイオードを有する発光ユニット及びその駆動時に発生する熱を放出する放熱部材を備えた車輌用前照灯において、車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、カバーとランプハウジングによって形成された灯具外筐の内部に、光源を有するランプユニットが配置されたものがある。
【0003】
このような車輌用前照灯においては、万が一、車輌が歩行者に衝突したときに、歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージを軽減する必要がある。
【0004】
そこで、従来の車輌用前照灯には、ランプハウジングを車体に取り付けるための取付部(取付用ブラケット)に脆弱部を設け、衝突時に衝撃により脆弱部が破断又は屈曲されるようにして歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、別の従来の車輌用前照灯には、ランプハウジングとカバーの結合部であるシール溝に脆弱部を設け、衝突時に衝撃により脆弱部が破断又は屈曲されるようにして歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図るようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】2006−27488号公報
【特許文献2】2007−15453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の車輌用前照灯にあっては、車輌の歩行者に対する衝突時に、ランプハウジングを車体に取り付けるための取付部又はランプハウジングとカバーの結合部であるシール溝に設けられた脆弱部が破断又は屈曲することにより、歩行者に対するダメージの軽減を図るようにしている。
【0008】
ところが、車輌が歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯に接触したときには、先ず、カバーが歩行者に接触するため、カバーが変形又は破壊され、続いて、歩行者が灯具外筐の内部に配置された剛性の高い構造物、即ち、ランプユニットに接触する可能性が高い。
【0009】
また、光源として発光ダイオードが用いられているランプユニットを備えた車輌用前照灯にあっては、発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出するための金属製の放熱部材にランプユニットが取り付けられているため、ランプユニットの他に剛性の高い放熱部材が存在する。
【0010】
従って、従来の車輌用前照灯において、取付部やシール溝に設けられた脆弱部が破断又は屈曲する前に歩行者がランプユニットに接触したり、或いは、取付部やシール溝に設けられた脆弱部が破断又は屈曲しても歩行者がランプユニットに接触した場合には、剛性の高いランプユニット及び放熱部材が存在するため、歩行者に対して大きなダメージが付与されてしまう。
【0011】
そこで、本発明車輌用前照灯は、車輌の歩行者との衝突時における歩行者に対する衝撃の緩和によるダメージの軽減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、ランプユニットの一部を構成すると共に前記光源として発光ダイオードが用いられた発光ユニットと、前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材と、前記発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出する放熱部材とを備え、前記放熱部材の少なくとも一部に車輌の歩行者との衝突時における衝撃を吸収する衝撃吸収部を形成したものである。
【0013】
従って、車輌用前照灯にあっては、車輌が歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯に接触した場合に、放熱部材の衝撃吸収部によって衝撃が吸収される。
【0014】
別の車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、ランプユニットの一部を構成すると共に前記光源として発光ダイオードが用いられた発光ユニットと、前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材と、前記発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出する放熱部材とを備え、前記放熱部材を前記ランプユニットの下方に配置し、前記発光ユニットと前記放熱部材を熱伝導部材を介して接続したものである。
【0015】
従って、車輌用前照灯にあっては、車輌が歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯に接触した場合に、放熱部材が衝突位置から離隔した位置に配置されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明車輌用前照灯は、ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとによって灯具外筐が構成され前記灯具外筐の内部に光源を有するランプユニットが配置された車輌用前照灯であって、前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記光源として発光ダイオードが用いられた発光ユニットと、前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材と、前記発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出する放熱部材とを備え、前記放熱部材の少なくとも一部に車輌の歩行者との衝突時における衝撃を吸収する衝撃吸収部を形成したことを特徴とする。
【0017】
従って、車輌の歩行者との衝突時に衝撃吸収部によって衝撃が吸収され、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【0018】
請求項2に記載した発明にあっては、前記放熱部材の衝撃吸収部としてスリットを形成したので、スリットの形成が容易であるため、製造コストの高騰を来たすことなく、車輌が歩行者に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図ることができる。
【0019】
請求項3に記載した発明にあっては、前記放熱部材の後面側に前記衝撃吸収部として蛇腹状の放熱フィンを形成したので、放熱性の向上を図った上で車輌が歩行者に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図ることができる。
【0020】
請求項4に記載した発明にあっては、前記放熱部材の後面側に、前記衝撃吸収部として後方へ突出し前記放熱部材が変位して前記ランプハウジングに接触したときに該ランプハウジングを破壊して突き破る破壊用突部を形成している。
【0021】
従って、破壊用突部の形成が容易であるため、製造コストの高騰を来たすことなく、車輌が歩行者に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図ることができる。
【0022】
別の本発明車輌用前照灯は、ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとによって灯具外筐が構成され前記灯具外筐の内部に光源を有するランプユニットが配置された車輌用前照灯であって、前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記光源として発光ダイオードが用いられた発光ユニットと、前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材と、前記発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出する放熱部材とを備え、前記放熱部材を前記ランプユニットの下方に配置し、前記発光ユニットと前記放熱部材を熱伝導部材を介して接続したことを特徴とする。
【0023】
従って、ランプユニットの後方の空間に放熱部材が存在しないため、車輌の歩行者との衝突時に衝撃吸収部によって衝撃が吸収され、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0025】
車輌用前照灯1は、車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0026】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2と該ランプハウジング2の開口面を閉塞するカバー3とを備え、ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成されている。灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
【0027】
灯室5には放熱部材6が配置されている。放熱部材6は、例えば、熱伝導性の高い金属材料によって形成され、前後方向を向くベース面部7と該ベース面部7の後面から後方へ突出された放熱フィン8、8、・・・とが一体に形成されて成る(図1及び図2参照)。放熱フィン8、8、・・・は、例えば、左右に等間隔に離隔して設けられ、例えば、ベース面部7の後面における外周部を除く部分に設けられている。
【0028】
ベース面部7には左右に離隔して上下に延びるスリット7a、7a、7aが形成されている。スリット7a、7a、7aは、車輌が、万が一、歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯1に接触したときに、衝撃を吸収する衝撃吸収部として機能する。尚、スリット7a、7a、7aの数は三つに限られることはなく任意の数で形成することが可能である。
【0029】
放熱部材6の前面には、例えば、熱伝導性の高い金属材料によって形成された配置用部材9が取り付けられている(図1参照)。尚、配置用部材9は放熱部材6に一体に形成されていてもよい。
【0030】
配置用部材9には第1のランプユニット10が取り付けられて配置されている。第1のランプユニット10は連結部材11と発光ユニット12とリフレクター13と投影レンズ14とレンズホルダー15を有している。
【0031】
リフレクター13と投影レンズ14は発光ユニット12の後述する発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材として機能する。
【0032】
連結部材11は配置用部材9の前面に取り付けられたシェード11aと該シェード11aから前方へ突出された連結用突部11bとを有している。
【0033】
発光ユニット12は配置用部材9の上面に搭載されている。発光ユニット12は回路基板や光源として用いられた発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)12aを有している。
【0034】
リフレクター13は配置用部材9の後端部における上面に取り付けられている。リフレクター13は発光ダイオード12aから出射された光を反射して投影レンズ14に導く反射部材として機能する。
【0035】
投影レンズ14は連結部材11における連結用突部11bの前端部に取り付けられている。投影レンズ14は発光ダイオード12aから出射された光を前方へ向けて投影する機能を有している。
【0036】
レンズホルダー15の前端部には投影レンズ14が取り付けられ、レンズホルダー15によって投影レンズ14が保持されている。
【0037】
配置用部材9の下面側には第2のランプユニット16が取り付けられて配置されている。第2のランプユニット16は発光ユニット17とリフレクター18を有している。
【0038】
リフレクター18は発光ユニット17の後述する発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材として機能する。
【0039】
発光ユニット17は配置用部材9の下面に搭載されている。発光ユニット17は回路基板や光源として用いられた発光ダイオード17aを有している。
【0040】
リフレクター18は配置用部材9の後端部における下面に取り付けられている。リフレクター18は発光ダイオード17aから出射された光を前方へ向けて反射する機能を有している。
【0041】
以上のように構成された車輌用前照灯1において、第1のランプユニット10の発光ダイオード12aから光が出射されると、出射された光はリフレクター13で反射され投影レンズ14及びカバー3を透過されて前方へ照射される。このとき発光ダイオード12aから出射された光の一部がシェード11aによって遮蔽される。
【0042】
また、第2のランプユニット16の発光ダイオード17aから光が出射されると、出射された光はリフレクター18で反射されカバー3を透過されて前方へ照射される。
【0043】
上記のように構成された車輌用前照灯1を有する車輌が、万が一、歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯1に接触したときには、衝撃によってカバー3が変形又は破断され、カバー3から第1のランプユニット10及び第2のランプユニット16を介して衝撃が放熱部材6に付与される。
【0044】
放熱部材6には衝撃吸収部として機能するスリット7a、7a、7aが形成されているため、衝撃によってベース面部7の一部が撓み、衝撃が吸収される。このとき大きな衝撃が放熱部材6に付与された場合には、スリット7a、7a、7aにより放熱部材6の剛性が低くされているため、放熱部材6が破損する。
【0045】
従って、車輌の歩行者との衝突時に歩行者が車輌用前照灯1に接触した場合において、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【0046】
尚、上記には、放熱部材6にスリット7a、7a、7aを形成することにより剛性を低くした例を示したが、例えば、スリット7a、7a、7aの形成に代えて、放熱部材6を熱伝導性を有するセラミック材料又は樹脂材料によって形成して剛性を低くし、歩行者が車輌用前照灯1に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図るようにしてもよい。
【0047】
また、放熱部材6を熱伝導性を有するセラミック材料又は樹脂材料によって形成した場合にも、スリット7a、7a、7aを形成することにより、さらに剛性を低くし、歩行者が車輌用前照灯1に接触したときの歩行者に対するダメージの一層の軽減を図るようにしてもよい。
【0048】
さらに、放熱部材6を熱伝導性を有するセラミック材料又は樹脂材料によって形成した場合には、放熱部材6を金属材料によって形成した場合に比し軽量化が図られ、放熱部材6が破断し易くなり、歩行者に対する一層のダメージの軽減を図ることができる。尚、放熱部材6の剛性を一層低くするために、放熱部材6のベース面部7の前後方向における厚みを薄くすることが望ましい。
【0049】
さらにまた、上記には、放熱部材6の後面にスリット7a、7a、7aを形成した例を示したが、例えば、放熱部材6の左右両側面の少なくとも一方にスリット7a、7a、7aを形成することも可能である。放熱部材6の側面に衝撃吸収部として機能するスリット7a、7a、7aを形成することにより、車輌の歩行者への衝突時に前方から衝撃が付与され易いため、衝撃の吸収効果が高まり、また、放熱部材6の破断が一層生じ易くなる。
【0050】
加えて、スリット7a、7a、7aを衝撃吸収部として形成することにより、スリット7a、7a、7aの形成が容易であるため、製造コストの高騰を来たすことなく、歩行者が車輌用前照灯1に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図ることができる。
【0051】
次に、衝撃吸収部として破壊用突部19、19、・・・が設けられた放熱部材6Aについて説明する(図3参照)。
【0052】
放熱部材6Aには破壊用突部19、19、・・・が設けられ、該破壊用突部19、19、・・・はベース面部7の後面から後方へ突出され、例えば、ベース面部7の後面における外周部に設けられている。破壊用突部19、19、・・・は後方へ行くに従って先細りで先端が尖った形状に形成されている。
【0053】
尚、放熱部材6Aにはスリット7a、7a、7a、・・・は形成されていない。
【0054】
このような放熱部材6Aが設けられた車輌用前照灯1を有する車輌が、万が一、歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯1に接触したときには、衝撃によってカバー3が変形又は破断される。このとき歩行者の体の一部100、例えば、頭部がカバー3に接触し、カバー3が衝撃によって変形又は破断され、体の一部100が第1のランプユニット10又は第2のランプユニット16に接触して第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Aに衝撃が付与される。
【0055】
第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Aに衝撃が付与されると、これらの各部が後方へ移動され、破壊用突部19、19、・・・によってランプハウジング2の後面部が破壊されて突き破られる。従って、第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Aに付与された衝撃が吸収され、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【0056】
このように破壊用突部19、19、・・・はランプハウジング2の後面部を破壊して衝撃を吸収する衝撃吸収部として機能する。
【0057】
上記のように、破壊用突部19、19、・・・を衝撃吸収部として設けることにより、破壊用突部19、19、・・・の形成が容易であるため、製造コストの高騰を来たすことなく、歩行者が車輌用前照灯1に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図ることができる。
【0058】
次に、衝撃吸収部として放熱フィン20が設けられた放熱部材6Bについて説明する(図4参照)。
【0059】
放熱部材6Bには放熱フィン20が設けられ、該放熱フィン20は一端部がベース面部7の左右一方の端部における後面に連続され、薄板状に形成されている。放熱フィン20は蛇腹状に形成され、左右方向を向き左右に等間隔に離隔して位置する平面部20a、20a、・・・と、該平面部20a、20a、・・・の前縁間を連結する半円状の前側連結部20b、20b、・・・と、平面部20a、20a、・・・の後縁間を連結する半円状の後側連結部20c、20c、・・・とから成る。
【0060】
前側連結部20b、20b、・・・は前方へ凸の半円状に形成され、後側連結部20c、20c、・・・は後方へ凸の半円状に形成され、左右方向において交互に位置されている。
【0061】
このような放熱部材6Bが設けられた車輌用前照灯1を有する車輌が、万が一、歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯1に接触したときには、衝撃によってカバー3が変形又は破断される。このとき歩行者の体の一部、例えば、頭部がカバー3に接触し、カバー3が衝撃によって変形又は破断され、体の一部が第1のランプユニット10又は第2のランプユニット16に接触して第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Bに衝撃が付与される。
【0062】
第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Bに衝撃が付与されると、これらの各部が後方へ移動され、放熱部材6Bの放熱フィン20がランプハウジング2の後面部に接触し、放熱フィン20がベース面部7とランプハウジング2の後面部との間で収縮するように潰される。従って、第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Bに付与された衝撃が吸収され、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【0063】
このように放熱フィン20はベース面部7とランプハウジング2の後面部との間で収縮するように潰されて衝撃を吸収する衝撃吸収部として機能する。
【0064】
上記のように、蛇腹状の放熱フィン20を衝撃吸収部として設けることにより、放熱面積を大きくすることが可能であり、放熱性の向上を図った上で歩行者が車輌用前照灯1に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図ることができる。
【0065】
次に、衝撃吸収部として放熱フィン21が設けられた放熱部材6Cについて説明する(図5参照)。
【0066】
放熱部材6Cには放熱フィン21が設けられ、該放熱フィン21は一端部がベース面部7の左右一方の端部における後面に連続され、薄板状に形成されている。放熱フィン21は蛇腹状に形成され、前後方向を向き前後に等間隔に離隔して位置する平面部21a、21a、・・・と、該平面部21a、21a、・・・の左側縁間を連結する半円状の左側連結部21b、21b、・・・と、平面部21a、21a、・・・の右側縁間を連結する半円状の右側連結部21c、21c、・・・とから成る。
【0067】
左側連結部21b、21b、・・・は左方へ凸の半円状に形成され、右側連結部21c、21c、・・・は右方へ凸の半円状に形成され、前後方向において交互に位置されている。
【0068】
このような放熱部材6Cが設けられた車輌用前照灯1を有する車輌が、万が一、歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯1に接触したときには、衝撃によってカバー3が変形又は破断される。このとき歩行者の体の一部、例えば、頭部がカバー3に接触し、カバー3が衝撃によって変形又は破断され、体の一部が第1のランプユニット10又は第2のランプユニット16に接触して第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Cに衝撃が付与される。
【0069】
第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Cに衝撃が付与されると、これらの各部が後方へ移動され、放熱部材6Cの放熱フィン21がランプハウジング2の後面部に接触し、放熱フィン21がベース面部7とランプハウジング2の後面部との間で収縮するように潰される。従って、第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び放熱部材6Cに付与された衝撃が吸収され、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【0070】
このように放熱フィン21はベース面部7とランプハウジング2の後面部との間で収縮するように潰されて衝撃を吸収する衝撃吸収部として機能する。
【0071】
上記のように、蛇腹状の放熱フィン21を衝撃吸収部として設けることにより、放熱面積を大きくすることが可能であり、放熱性の向上を図った上で歩行者が車輌用前照灯1に接触したときの歩行者に対するダメージの軽減を図ることができる。
【0072】
次に、放熱部材6を第2のランプユニット16の下方に配置した例について説明する(図6及び図7参照)。
【0073】
放熱部材6は灯室5において第2のランプユニット16の下方に配置されている(図6参照)。従って、第1のランプユニット10及び第2のランプユニット16の後方には放熱部材6が配置されておらず、灯室5における第1のランプユニット10及び第2のランプユニット16の後方の空間は空き空間5aとして形成されている。放熱部材6はベース面部7と放熱フィン8が、例えば、上下に位置する向きで配置されている。
【0074】
放熱部材6と配置用部材9は熱伝導部材22によって接続されている。熱伝導部材22は発光ダイオード12a、17aの駆動時に発生する熱を配置用部材9から放熱部材6に伝達する機能を有し、例えば、ヒートパイプが用いられている。
【0075】
このように放熱部材6が第2のランプユニット16の下方に配置された車輌用前照灯1を有する車輌が、万が一、歩行者に衝突し歩行者が車輌用前照灯1に接触したときには、衝撃によってカバー3が変形又は破断される(図7参照)。このとき歩行者の体の一部100、例えば、頭部がカバー3に接触し、カバー3が衝撃によって変形又は破断され、体の一部100が第1のランプユニット10又は第2のランプユニット16に接触して第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び熱伝導部材22に衝撃が付与される。
【0076】
第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び熱伝導部材22に衝撃が付与されると、これらの各部が後方へ移動される。このとき第1のランプユニット10及び第2のランプユニット16の後方の空間は空き空間5aとして形成されているため、第1のランプユニット10、第2のランプユニット16及び熱伝導部材22の大きな移動スペースが確保されている。従って、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【0077】
尚、上記には、放熱部材6を灯室5において下方に配置した例を示したが、例えば、放熱部材6を灯具外筐4の外部において第2のランプユニット16の下方に配置してもよい。この場合にも放熱部材6と配置用部材9は熱伝導部材22によって接続される。
【0078】
放熱部材6を灯具外筐4の外部において下方に配置した場合でも、灯室5における第1のランプユニット10及び第2のランプユニット16の後方の空間が空き空間5aとして形成されるため、歩行者の車輌用前照灯1への接触時に、歩行者に対する衝撃が緩和され、歩行者に対するダメージを軽減することができる。
【0079】
また、放熱部材6を灯具外筐4の外部において下方に配置した場合には、灯室5の内部に配置される構造物の軽量化が図られ、歩行者の車輌用前照灯1への接触時に、歩行者に対する衝撃が一層緩和され、歩行者に対するダメージを一層軽減することができる。
【0080】
さらに、放熱部材6を灯具外筐4の外部において下方に配置した場合には、車輌の走行時に風が放熱部材6に当たるため、冷却効率の向上を図ることができる。
【0081】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図2乃至図7と共に本発明車輌用前照灯の最良の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略断面図である。
【図2】放熱部材の斜視図である。
【図3】歩行者が車輌用前照灯に接触したときに、破壊用突部を有する放熱部材によってランプハウジングが破壊された状態を示す概略断面図である。
【図4】蛇腹状の放熱フィンを有する放熱部材の斜視図である。
【図5】図4とは異なる形状に形成された蛇腹状の放熱フィンを有する放熱部材の斜視図である。
【図6】放熱部材が下方に配置された車輌用前照灯を示す概略断面図である。
【図7】放熱部材が下方に配置された車輌用前照灯に歩行者が接触したときの状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1…車輌用前照灯、2…ランプハウジング、3…カバー、4…灯具外筐、5…灯室、6…放熱部材、7a…スリット、10…第1のランプユニット、12…発光ユニット、12a…発光ダイオード、13…リフレクター(光学部材)、14…投影レンズ(光学部材)、16…第2のランプユニット、17…発光ユニット、17a…発光ダイオード、18…リフレクター(光学部材)、6A…放熱部材、19…破壊用突部、6B…放熱部材、20…放熱フィン、21…放熱フィン、22…熱伝導部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとによって灯具外筐が構成され前記灯具外筐の内部に光源を有するランプユニットが配置された車輌用前照灯であって、
前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記光源として発光ダイオードが用いられた発光ユニットと、
前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材と、
前記発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出する放熱部材とを備え、
前記放熱部材の少なくとも一部に車輌の歩行者との衝突時における衝撃を吸収する衝撃吸収部を形成した
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記放熱部材の衝撃吸収部としてスリットを形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記放熱部材の後面側に前記衝撃吸収部として蛇腹状の放熱フィンを形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記放熱部材の後面側に、前記衝撃吸収部として後方へ突出し前記放熱部材が変位して前記ランプハウジングに接触したときに該ランプハウジングを破壊して突き破る破壊用突部を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項5】
ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとによって灯具外筐が構成され前記灯具外筐の内部に光源を有するランプユニットが配置された車輌用前照灯であって、
前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記光源として発光ダイオードが用いられた発光ユニットと、
前記ランプユニットの一部を構成すると共に前記発光ダイオードから出射された光を前方へ向けて照射するための光学部材と、
前記発光ダイオードの駆動時に発生する熱を放出する放熱部材とを備え、
前記放熱部材を前記ランプユニットの下方に配置し、
前記発光ユニットと前記放熱部材を熱伝導部材を介して接続した
ことを特徴とする車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−3347(P2011−3347A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144163(P2009−144163)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】