説明

軟弱土改良方法及びそれに用いる固化材充填装置

【課題】 軟弱土を固化材と混合することにより改良する方法及びそれに用いる装置であって、固化材の飛散を防止すると共に固化材を損失することなく低コストで軟弱土と均一にかつ効率的に混合する。
【解決手段】 堆積した軟弱土に圧入可能な筒体の下端部に設けた開閉可能な放出口を閉状態として粉体状固化材を投入すると共に、軟弱土に対して筒体を圧入することにより柱状孔を設ける工程と、筒体の放出口を開状態として粉体状固化材を放出しつつ筒体を引き上げることにより柱状孔内に粉体状固化材を充填する工程と、軟弱土を粉体状固化材と共に撹拌混合する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、泥炭、高含水粘性土、風化火山灰などの軟弱な土を固化材と混合し、軟弱土中の水分により固化材を固化させて軟弱土の強度を向上させることにより軟弱土を改良する方法、並びにその方法に用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泥炭、高含水粘性土、風化火山灰、浚渫土、建設発生土等の軟弱な土(以下、本発明の説明において「軟弱土」と称する)は、そのまま利用することができず、表層用の地盤改良工を施工されたり、建設土木工事等で発生した場合は廃棄処分されてきた。しかしながら、循環型社会の構築を目的として資源の有効利用が注目を浴びるようになり、廃棄処分されてきた軟弱土も改良すれば、廃棄処分せずに利用可能となりつつある。
【0003】
軟弱土の改良方法の一つとして、セメントや石灰などの固化材を混合して改良する方法がある。固化材としては、例えば、特許文献1〜3に記載されたセメント系固化材、セメント石灰系固化材、石膏系固化材等が知られている。現在、軟弱土に対してセメントや石灰などの固化材を混合する場合には、堆積した軟弱土に対して、上から固化材の入った袋を破いて散布したり、ホース状のもので散布したりしている。散布した後、適宜の撹拌混合装置を用いて固化材と軟弱土とを混合する。
【特許文献1】特開2002−137950号公報
【特許文献2】特開2002−294232号公報
【特許文献3】特開2002−363558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術には、一応下記のような問題点を指摘することができる。
固化材は粉体状であり、固化材は水分を含んでいないことから、散布する際に大きな範囲で周辺に飛び散る。特に、風があるときなどは広い範囲に飛び散っている。このような飛散は、散布後に行う撹拌混合の初期にも生じる。固化材の粉塵が不要な範囲にまで飛散することは、環境上も作業者の健康上も好ましくない。また、固化材の損失にもなる。固化材散布時の飛散を防ぐ方法としては、施工現場の周辺を高いフェンスで囲ったり、直接作業する人が防塵マスクを着用したりしている。
【0005】
しかしながら、フェンス等で囲む場合は、その設備や設置作業にコストが係る。また防塵マスクの着用は煩わしく、作業性が低下する上、固化材の飛散による損失は避けられない。また、完全に密封状態で撹拌混合する機械もあるが大がかりな装置でコスト高である。
【0006】
以上の現状に鑑み本発明は、軟弱土を固化材と混合することにより改良する方法及びそれに用いる装置であって、固化材の飛散を防止すると共に固化材を損失することなく低コストで軟弱土と均一にかつ効率的に混合できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述のような問題を解決するため、下記のようになるものである。
本発明は、例えば、泥炭、高含水粘性土、風化火山灰などの軟弱土の中に粉体状固化材(セメント、石灰、石炭灰等)を柱状に充填した後に、周囲の軟弱土と撹拌することにより、固化材を飛散させることなく均一に軟弱土と固化材とを混合し、固化材の固化に伴い軟弱土を改良する方法を基本原理とし、さらにこの方法を実施できる装置を提供する。
【0008】
(1)請求項1に係る軟弱土改良方法は、粉体状固化材を混合し固化させることにより軟弱土を改良する方法において、
堆積した軟弱土に対して表面から鉛直下方へ延びる柱状孔を設ける工程と、
前記柱状孔内に粉体状固化材を充填する工程と、
前記堆積した軟弱土を前記充填された粉体状固化材と共に撹拌混合する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
(2)請求項2に係る軟弱土改良方法は、粉体状固化材を混合し固化させることにより軟弱土を改良する方法において、
堆積した軟弱土に圧入可能な筒体の下端部に設けた開閉可能な放出口を閉状態とし、該筒体内に粉体状固化材を投入すると共に、該堆積した軟弱土に対して前記筒体を圧入することにより該軟弱土表面から鉛直下方へ延びる柱状孔を設ける工程と、
前記筒体の前記放出口を開状態として前記粉体状固化材を放出しつつ該筒体を引き上げることにより前記柱状孔内に該粉体状固化材を充填する工程と、
前記堆積した軟弱土を前記充填された粉体状固化材と共に撹拌混合する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
(3)請求項3に係る固化材充填装置は、請求項2に記載の軟弱土改良方法に使用する固化材充填装置であって前記筒体を有し、前記堆積した軟弱土に対し圧入しかつ引き上げるための駆動装置に取り付け可能であり、
前記放出口を開閉するべく前記筒体の下端部にて該筒体に対して相対的に上下移動可能に設けた放出バルブであって前記放出口が閉状態のとき該放出口を閉塞させる位置にありかつ該放出口が開状態のときに該放出口より下方の位置にある放出バルブと、
前記筒体内に前記粉体状固化材を投入するべく該筒体の側面部に設けた開閉可能な投入口と、
前記投入口を開閉するべく前記筒体内にて該筒体に対して相対的に上下移動可能に設けた投入バルブであって前記投入口が開状態のときに該投入口より上方の位置にありかつ該投入口が閉状態のときに該投入口を閉塞させる位置にある投入バルブと、
前記放出バルブと前記投入バルブの上下移動を連動させるために該放出バルブと該投入バルブを連結するべく鉛直方向に延在するバルブ連結ロッドとを有することを特徴とする。
【0011】
(4)請求項4に係る固化材充填装置は、請求項3において、前記放出バルブの下端形状が下方に向かって先細となる形状であることを特徴とする。
【0012】
(5)請求項5に係る固化材充填装置は、請求項3又は4において、前記バルブ連結ロッドを前記筒体に対して相対的に上下移動させる油圧シリンダーをさらに有することを特徴とする。
【0013】
(6)請求項6に係る固化材充填装置は、請求項3又は4において、前記バルブ連結ロッドを前記筒体に対して相対的に上下移動させるリンクカムをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述のように構成されているので、下記のような効果を期待することができる。
本発明は、種々の土木建築構造物の施工に伴い副次的に発生した軟弱土の改良に適用される。そして、本発明により改良された土は、例えば道路の盛土や河川の堤防の材料などの土構造物の構築に有効に使用できる。また、本発明は、軟弱地盤に対して種々の土木建築構造物の施工を可能とするために、当該軟弱地盤の表層改良にも適用可能である。本発明の方法及び装置は、大規模な装置や複雑な機構の装置を用いることなく安価に実施することができる。具体的には次の通りである。
【0015】
(1)請求項1に係る軟弱土改良方法は、基本原理に相当し、堆積した軟弱土に設けた柱状孔内に粉体状固化材を充填した後に軟弱土と撹拌混合するので、従来のように軟弱土表面に散布する場合に比べて、粉体状固化材を空気に触れさせることなく軟弱土中に充填することができる。これにより、固化材の飛散を防止することができる。また、軟弱土中に充填された固化材は、充填と同時に、軟弱土中に存在する水分を吸収するため、その後に軟弱土と固化材とを撹拌する際にも固化材の飛散が抑制される。これにより、環境上も健康上も好ましい施工を実現できる。
【0016】
(2)請求項2に係る軟弱土改良方法は、基本原理に基づいた好適方法であり、上記の固化材飛散防止効果に加えて、適宜の筒体を軟弱土に対して圧入することにより軟弱土に柱状孔の孔壁を容易にかつ速やかに形成できる。同時に、圧入時には筒体内部空間に既に粉体状固化材が投入されている。そして、筒体を引き上げる際に筒体下端部の放出口から粉体状固化材を放出する。これにより、筒体引き上げの完了と同時に粉体状固化材の充填も完了することができる。この好適方法では、柱状孔の形成と粉体状固化材の充填とを同時に行えるので、迅速な施工が可能となる。
【0017】
(3)請求項3に係る固化材充填装置は、請求項2に係る軟弱土改良方法に使用するものである。この固化材充填装置は、圧入引き上げ用の駆動装置に取り付け可能であって、固化材の放出口の開閉用に筒体下端部にて相対的に上下移動可能に設けた放出バルブと、固化材の投入口の開閉用に筒体内にて相対的に上下移動可能に設けた投入バルブが、鉛直方向に延在するバルブ連結ロッドにより連結されている。従って、放出バルブが閉状態のときは投入バルブが開状態となり、逆に放出バルブが開状態のときは投入バルブが閉状態となるように2つのバルブが連動する。これにより、筒体の圧入時に放出バルブを閉じて投入バルブを開き投入口から筒体内に粉体状固化材を投入して溜めることができる一方、筒体の引き上げ時には放出バルブを開いて放出口から柱状孔内に粉体状固化材を放出することができる。
圧入引き上げ用の駆動装置は、例えば、種々のアタッチメントを付け替え可能な油圧駆動されるアームを有する汎用性のあるパワーショベルやバックホー等の駆動装置であり、これらのアームにアタッチメントとして本発明の固化材充填装置を取り付けることにより、安価な施工を実現する。
【0018】
(4)請求項4に係る固化材充填装置は、請求項3について述べた効果に加えて、筒体下端部に設ける放出バルブの下端形状が下方に向かって先細となる形状であることから、筒体を圧入する際の抵抗を少なくすることができ、柱状孔を速やかに形成できる。
【0019】
(5)請求項5又は6に係る固化材充填装置は、請求項3又は4について述べた効果に加えて、バルブ連結ロッドを油圧装置又はリンク装置により筒体に対して相対的に上下移動させることで、放出バルブ及び投入バルブの開閉を随時行うことができ、また迅速に行うことができるので施工効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態の詳細を説明する。
(1)軟弱土改良方法の基本原理(請求項1に関連)
図1は、本発明による軟弱土改良方法の第一の形態の工程を模式的に示す図である。この第一の形態は、本発明の基本原理である。
【0021】
図1(A)は、本発明の適用対象である軟弱土1が堆積している状態を模式的に示している。建築土木関連の施工現場等において泥炭、高含水粘性土、風化火山灰、浚渫土、建設発生土等の水分含有率の高い軟弱土が副次的に発生する。発生した軟弱土は、本発明による処理を行う敷地内に運搬され蓄積される。図1(A)では、堆積した軟弱土を模式的に直方体で示しているが、例えば、縦横が数十m程度の面積の敷地に深さ50〜100cm程度で敷設され、堆積している。対象とする軟弱土の容積は任意である。別の例として、軟弱地盤の表層に対して本発明を適用する場合には、図1(A)は、対象とする軟弱地盤の表層に相当する。
【0022】
図1(B)は、堆積した軟弱とに対して表面から鉛直下方へ延びる柱状孔を設ける工程を示す。この柱状孔1aは、粉体状固化材(以下、単に「固化材」と称する場合がある)を充填するための孔である。柱状孔1aは、図示の例では円柱形状であるが、多角柱形状でもよく、堆積した軟弱土の最深部にほぼ達する深さの柱状の孔であれば断面形状は任意でよい。斯かる柱状孔1aの形成は、一般的な土木機械を用いて行うことができる。一例であるが、1つの柱状孔の断面積は、100cm程度、深さ50〜100cm程度とする。このような柱状孔を適宜の配列で複数形成する。1つの柱状孔の容積並びに形成する柱状孔の数は、処理対象の軟弱土の体積に対して混合しようとする粉体状固化材の体積から設定することができる。複数の柱状孔の配列は、軟弱土の全表面に対し偏り無く配置されるようにする。
【0023】
図1(C)は、形成した柱状孔1a内に粉体状固化材2を充填する工程と、この充填された粉体状固化材2と共に堆積した軟弱土1を撹拌混合する工程とを示す。粉体状固化材2は、公知の地盤改良工において一般的に用いられるセメント系固化材、セメント石灰系固化材、石膏系固化材等又はこれらの混合材であり、軟弱土の硬度並びに目標とする改良土の硬度等により適宜選択される。柱状孔1a内に充填された粉体状固化材2は、充填と同時に、周囲の軟弱土1中に存在する水分を吸収する。従って、この時点で粉体状固化材2は飛散し難い状態となる。
【0024】
尚、図1(B)及び図1(C)に示した柱状孔形成工程と固化材充填工程は、先ず複数の柱状孔1aをまとめて形成した後に、それらの柱状孔1a内に固化材2を充填するように解されるが、もちろん、1つの柱状孔1a毎に孔の形成と固化材2の充填を行ってもよい。
【0025】
全ての柱状孔1a内に固化材2を充填したならば、パワーショベルやバックホー等の一般的な掘削機械を用いて軟弱土と粉体状固化材とを撹拌し、混合する(矢印参照)。粉体状固化材2は既にある程度の水分を吸収して飛散し難い状態となっているため、この撹拌混合工程においても固化材2の飛散が抑制される。
【0026】
図1(D)は、撹拌混合を完了した後の改良土3の状態を示す。軟弱土1中に均一に分散された固化材2が、軟弱土1中の水分との水和反応により硬化し、軟弱土1の強度が向上して改良土3となる。
【0027】
(2)好適な軟弱土改良方法(請求項2に関連)
図2は、本発明による軟弱土改良方法の第二の形態の工程を模式的に示す図である。この第二の形態は、前述の第一の形態の基本原理を実施する際の好適形態である。
【0028】
図2(A)は、好適な軟弱土改良方法に用いる固化材充填装置10を模式的に示す図である。この固化材充填装置10は、堆積した軟弱土に圧入可能な筒体10aを有する。筒体10aは、その下端部に開閉可能な放出口10bを設けている。筒体10aの外周壁は、前述の図1の基本原理で示した柱状孔の孔壁形状に対応する。従って、筒体10aは円筒でも角筒でもよいが、軟弱土への貫入容易性及び製作容易性を考慮すると円筒形状が好適である。筒体10aの長さは、形成しようとする柱状孔の深さよりも長く設定され、その内部空間は、1つの柱状孔に充填する量の粉体状固化材を収容可能な容積をもつ。放出口10bの大きさは、筒体10a内から下方へ粉体状固化材が速やかに放出される程度に適宜設定し、開閉機構は任意である。例えば、後述する図3〜図4に示す本発明による固化材充填装置の好適例を用いる。筒体10aは、その内部空間へ粉体状固化材と投入するための投入口10cも具備する。図示の例は、筒体10aの上端開口を投入口10cとしているが、筒体10aの側壁に設けてもよい。
【0029】
図2(B)は、軟弱土への柱状孔の形成工程を示す図である。先ず、図2(A)で準備した筒体10aの放出口10bを閉状態する。その後、筒体10a内に、1つの柱状孔に充填する量の粉体状固化材2を投入すると共に、堆積した軟弱土1に対して筒体10aを圧入することにより軟弱土1の表面から鉛直下方へ延びる柱状孔を形成する。筒体10aは、パワーショベルやバックホー等に用いる油圧装置を具備する駆動機械のアームに取り付けることにより上下移動させることができる。これにより、筒体10aの圧入及び後述する引き上げを行う。尚、粉体状固化材2は、筒体10aの圧入が完了する時点までに筒体10a内に投入されればよい。例えば、圧入開始前に予め投入しておいてもよく、また圧入しつつ投入してもよい。
【0030】
図2(C)は、筒体10aの圧入を完了した状態を示す図である。圧入完了時の筒体10aの下端の位置は、対象とする軟弱土1の最深部にほぼ相当する程度に設定する。
【0031】
図2(D)は、筒体10aの引き上げ及び粉体状固化材の充填の工程を示す図である。本工程では、先ず筒体10aの放出口10bを開状態とした後、筒体10aの引き上げを開始する。こうして、放出口10bから粉体状固化材2を柱状孔1a内に放出しつつ筒体10aを引き上げることにより、柱状孔1a内に粉体状固化材2を充填する。
【0032】
図2(E)は、筒体10aの引き上げを完了した状態を示す図である。こうして、1回の筒体10aの圧入及び引き上げ操作により、1つの柱状孔1aの形成とその中への粉体状固化材2の充填が行われる。その後、筒体10aの場所を移動させて別の柱状孔の形成と粉体状固化材の充填を行う。これを繰り返すことにより、軟弱土の全表面に偏り無く配置された複数の、粉体状固化材を充填した柱状孔を形成する。
【0033】
図2(F)は、軟弱土と粉体状固化材の撹拌混合工程の完了後の状態を示す図である。撹拌混合は、前述の第一の形態の図1(C)で説明した通り、パワーショベルやバックホー等を用いて行われる。こうして、軟弱土中に均一に分散された固化材が水和反応により硬化し、軟弱土の強度が向上して改良土3となる。
【0034】
(3)軟弱土改良方法に使用する固化材充填装置(請求項3〜5に関連)
図3は、図2に示した好適な軟弱土改良方法に使用する固化材充填装置10の好適例を概略的に示した側断面図である。尚、図3では、固化材充填装置10全体を鉛直方向に上下移動させるための駆動装置である、パワーショベルやバックホー等の駆動装置のアーム20に取り付けた状態を示す。
【0035】
固化材充填装置10は、筒体10aを有し、その上端開口部には、アーム20に取り付けるための取付部18が設けられる。筒体10aは、圧入時の軟弱土の抵抗を少なくするためには円筒形状が好ましいが、角筒形状であってもよい。
【0036】
筒体10aの下端開口には放出口10bが設けられる。放出口10bを開閉可能とするべく筒体10aの下端部に放出バルブ11が設けられる。放出バルブ11は、放出口10bに対して上下移動可能である。すなわち、筒体10aに対して相対的に上下移動可能である。筒体10aの下端開口から下方へ向かって中心軸に近づくように延びるテーパー状の部分は、放出バルブ11のバルブシート10dの役割を果たす。放出バルブ11の下半分の形状は、頂点を下方に向けた円錐形である。これは、固化材充填装置10の圧入時に軟弱土の抵抗を少なくして進行し易くするための形状である。この放出バルブ11の下半分の形状は、下方に向かって先細となる形状であれば、円錐形に限られず、角錐形でもよい。
【0037】
放出口10bが閉状態のときは、放出バルブ11は放出口10bを閉塞させる位置にある。このとき、放出バルブ11と放出バルブシート10dが密着する。これにより筒体10aの内部空間10eの底部が閉じられる。一方、放出口10bが開状態のときは、図示のように放出バルブ11は放出口10bより下方の位置にある。このとき放出バルブ11とそのバルブシート10dは離れ、隙間ができる。この隙間は、筒体10aの内部空間10eに収容された粉体状固化材が速やかに放出される程度の大きさとする。
【0038】
放出バルブ11の上下移動は、放出バルブ11の上端中心に取り付けられて鉛直方向上方へ延びるバルブ連結ロッド12が上下移動することにより行われる。このバルブ連結ロッド12を支持するためのロッドガイド15、16が内部空間10e内に設けられる。ロッドガイド15、16は、例えば、筒体10aの内周壁の対向位置から中心軸へ向かって延びる一対の支持具であり、バルブ連結ロッド12を両側から支持している。バルブ連結ロッド12は、ロッドガイド15、16と固定されておらず、これらのロッドガイド15、16に沿って滑動可能である。尚、ロッドガイド15は、粉体状固化材が放出される際、固化材の落下動作を妨げない程度の形状及び大きさとする。
【0039】
さらに、筒体10aの側面部には、内部空間10e内に粉体状固化材を投入するための投入口10cが設けられる。投入口10cに対して、外部へ連通する固化材送出管19が取り付けられる。固化材送出管19を通って粉体状固化材が移送されてくる。尚、筒体10aの投入口10cから放出口10bまでの内部空間10eの容積は、1つの柱状孔に充填する量の粉体状固化材を収容可能であるように設定する。
【0040】
投入口10cを開閉するために筒体10a内に投入バルブ13が設けられる。投入バルブ13は、図示の例では筒体10aの内周壁に嵌合する円柱形状であり、内周壁に沿って滑動しつつ上下移動可能である。すなわち、筒体10aに対して相対的に上下移動可能である。投入バルブ13の下面外周縁はテーパー形状となっており、一方、このテーパー形状部分を受容する形状の投入バルブシート14が筒体10aの内周壁に沿って環状に設けられている。投入バルブシート14は、投入口10cより下方に位置する。
【0041】
投入口10cが開状態のときは、投入バルブ13は投入口10cより上方の位置にあって投入バルブシート14から離れた位置にある。このとき、投入口10cが内部空間10eと連通する。一方、投入口10cが閉状態のときは、図示の通り、投入バルブ13は投入口10cを閉塞させる位置にあり、投入バルブシート14と密着する。
【0042】
投入バルブ13は、その中心軸を貫通するバルブ連結ロッド12に固定されている。従って、バルブ連結ロッド12の上下移動に伴って投入バルブ13も上下移動する。
【0043】
このように、バルブ連結ロッド12に対して放出バルブ11と投入バルブ12の双方が固定されているため、バルブ連結ロッド12を上下移動させることにより双方のバルブ11、13の上下移動を連動させることができる。従って、放出バルブ11が閉状態のときは投入バルブ13が開状態となり、逆に放出バルブ11が開状態のときは投入バルブ13が閉状態となるように2つのバルブ11、13が連動する。これにより、固化材充填装置10の圧入時には放出バルブ11を閉じて投入バルブ13を開き投入口10cから内部空間10eに粉体状固化材を投入して溜めることができる一方、固化材充填装置10の引き上げ時には放出バルブ11を開いて放出口10bから柱状孔内に粉体状固化材を放出することができる。
【0044】
尚、バルブ連結ロッド12の最下位置は、図示の通り、投入バルブ13が投入バルブシート14と密着する位置で規定される。また、バルブ連結ロッド12の最上位置は、放出バルブ11が放出バルブシート10dに密着する位置で規定される。
【0045】
図3に示した固化材充填装置10のバルブ連結ロッド12は、筒体の圧入時には、放出バルブ11に対する軟弱土の抵抗により、筒体に対して相対的に上方へ移動する。このとき、放出口10bは閉じ、投入口10cは開く。一方、筒体の引き上げ時には、バルブ連結ロッド12は、連結されている放出バルブ11とバ投入バルブ13の重量を含む自重により、筒体に対して相対的に下方へ移動する。このとき、放出口10bは開き、投入口10cは閉じる。この図3の実施例の方式を自重落下方式と称することとする。
【0046】
また、筒体10aの側面部の適宜の位置にエア抜き兼集塵装置17を設けることが好適である。エア抜き兼集塵装置17は、粉体状固化材を投入口10cから投入する際に内部空間10e内の空気を吸引することにより、投入時に舞い上がる粉塵を収集すると同時に固化材が円滑に投入されるようにする。
【0047】
尚、図3の実施例に関する上記説明における放出バルブ11、バルブ連結ロッド12及び投入バルブ13の「上下移動」とは、固化材充填装置10の本体すなわち筒体10aに対する相対的な上下移動を意味する。
【0048】
図4は、図3の自重落下方式の固化材充填装置10を図2の軟弱土改良方法に用いた施工例の工程を模式的に示す側断面図である。
【0049】
図4(A)は、固化材充填装置10の圧入開始前の状態を示す図である。駆動装置のアーム20により固化材充填装置10を吊り上げた状態であり、この時点では、放出バルブ11は開状態、投入バルブ13は閉状態であり、粉体状固化材はまだ投入されていない。
【0050】
図4(B)は、固化材充填装置10の圧入開始時の状態を示す図である。アーム20を下げていくと、放出バルブ13の先端部が軟弱土表面に接触してその抵抗により放出バルブ13は一旦停止する。続いて、筒体10aのみが下方に移動(バルブ連結ロッド12は筒体10aに対し相対的に上方に移動)し、放出バルブシート10dと放出バルブ11が接触して放出口が閉じられる。その後、固化材充填装置10全体が軟弱土中に埋没し始める。このとき、同時に投入バルブ13が開かれる。投入バルブ13が開かれたならば、粉体状固化材2を筒体内へ投入し始める。
【0051】
図4(C)は、固化材充填装置10の圧入途中の状態を示す図である。粉体状固化材2を投入しつつ、アーム20を下げることにより固化材充填装置10を軟弱土中に圧入していく。粉体状固化材2は、筒体内に蓄積されていく。
【0052】
図4(D)は、固化材充填装置10の圧入完了時の状態を示す図である。粉体状固化材2の投入も完了する。
【0053】
図4(E)は、固化材充填装置10の引き上げ開始時の状態を示す図である。アーム20を上げることにより固化材充填装置10を引き上げ始めると、筒体10aは上昇し始める。一方、放出バルブ11と投入バルブ13を連結しているバルブ連結ロッド12は、自重によりその位置に留まる。
【0054】
これにより、放出バルブ11が筒体10aから離れて放出口が開き始め、一方、投入バルブ13が投入口を閉じ始める。この結果、開いた放出口から柱状孔1a内へ粉体状固化材2が落下し放出され始める。投入バルブ13が投入バルブシート14に当たると、その後は、放出口が開いたままの状態で固化材充填装置10全体が引き上げられる。
【0055】
図4(F)は、固化材充填装置10の引き上げ途中の状態を示す図である。さらに固化材充填装置10を引き上げていくと、柱状孔1aの下部が真空状態となり、粉体状固化材は下方に吸引されることにより落下が促進され、柱状孔1a内に堆積することになる。このように、固化材充填装置10を引き上げながら粉体状固化材の放出をするため、水分を十分に含む孔壁に固化材が吸着されることにより、順次下から堆積していき、固化材の拡散、飛散がほとんど発生しない。
【0056】
図4(G)は、固化材充填装置10の引き上げ完了時の状態を示す図である。図示のように粉体状固化材は全て軟弱土に形成された柱状孔1a内に落下し、空中には全く飛散、拡散していない。その後、図1及び図2で述べたとおり、軟弱土と粉体状固化材の撹拌混合を行う。
【0057】
図5は、バルブ連結ロッド12を上下移動させるバルブ開閉機構の幾つかの実施例を示した図である。図5(A)は、図3に示した自重落下方式であり、バルブ連結ロッド12は最上位置(圧入時)にあり、放出バルブ11が閉じ、投入バルブ13が開き、粉体状固化材2が筒体10a内に投入されている状態を示している。バルブ連結ロッド12が最下位置(引き上げ時)にあるとき、放出バルブ11が開き、投入バルブ13が閉じ、粉体状固化材2は放出口から放出される。
【0058】
図5(B)は、油圧シリンダー方式である。バルブ連結ロッド12の上端に油圧シリンダー19を取り付ける。油圧シリンダー19を伸縮動作を制御することにより、バルブ連結ロッド12を筒体10aに対して相対的に上下移動させることができる。バルブ開閉と粉体状固化材の投入及び放出との関係は、図5(A)と同じである。この方式では、随時バルブの開閉を行うことができる。特に極端な軟弱地の場合に有効な機構である。
【0059】
図5(C)は、リンクカム機構方式である。バルブ連結ロッド12の上端にリンクカムを取り付ける。リンクカムは駆動装置の油圧シリンダーへ連結される。各リンクを矢印のように回動させることにより、バルブ連結ロッド12を筒体10aに対して相対的に上下移動させることができる。バルブ開閉と粉体状固化材の投入及び放出との関係は、図5(A)と同じである。この方式でも、随時バルブの開閉を行うことができる。
【0060】
図5に示した種々のバルブ開閉機構は、現地の土地条件、環境及び使用する駆動装置等に応じて選択する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による軟弱土改良方法の第一の形態の工程を模式的に示す図である。(A)は、本発明の適用対象である軟弱土1が堆積している状態を模式的に示す。(B)は、堆積した軟弱とに対して表面から鉛直下方へ延びる柱状孔を設ける工程を示す。(C)は、形成した柱状孔内1aに粉体状固化材2を充填する工程と、この充填された粉体状固化材2と共に堆積した軟弱土1を撹拌混合する工程とを示す。(D)は、撹拌混合を完了した後の改良土3の状態を示す。
【図2】本発明による軟弱土改良方法の第二の形態の工程を模式的に示す図である。好適な軟弱土改良方法に用いる固化材充填装置10を模式的に示す。(B)は、軟弱土への柱状孔の形成工程を示す。(C)は、筒体10aの圧入を完了した状態を示す。(D)は、筒体10aの引き上げ及び粉体状固化材の充填の工程を示す。(E)は、筒体10aの引き上げを完了した状態を示す。(F)は、軟弱土と粉体状固化材の撹拌混合工程の完了後の状態を示す。
【図3】図2に示した好適な軟弱土改良方法に使用する固化材充填装置10の好適例を概略的に示した側断面図である。
【図4】図3の自重落下方式の固化材充填装置10を図2の軟弱土改良方法に用いた施工例の工程を模式的に示す側断面図である。(A)は、固化材充填装置10の圧入開始前の状態を示す。(B)は、固化材充填装置10の圧入開始時の状態を示す。(C)は、固化材充填装置10の圧入途中の状態を示す。(D)は、固化材充填装置10の圧入完了時の状態を示す。(E)は、固化材充填装置10の引き上げ開始時の状態を示す。(F)は、固化材充填装置10の引き上げ途中の状態を示す。(G)は、固化材充填装置10の引き上げ完了時の状態を示す。
【図5】バルブ連結ロッド12を上下移動させるバルブ開閉機構の幾つかの実施例を示した図である。(A)は、図3に示した自重落下方式である。(B)は、油圧シリンダー方式である。(C)は、リンクカム機構方式である。
【符号の説明】
【0062】
1 軟弱土
2 固化材
3 改良土
10 固化材充填装置
10a 筒体
10b 放出口
10c 投入口
10d 放出バルブシート
10e 内部空間
11 放出バルブ
12 バルブ連結ロッド
13 投入バルブ
14 投入バルブシート
15、16 ロッドガイド
17 エア抜き兼集塵装置
18 取付部
19 油圧シリンダー
20 バックホー先端アーム
21 リンクカム機構
25 固化材送出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状固化材を混合し固化させることにより軟弱土を改良する方法において、
堆積した軟弱土に対して表面から鉛直下方へ延びる柱状孔を設ける工程と、
前記柱状孔内に粉体状固化材を充填する工程と、
前記堆積した軟弱土を前記充填された粉体状固化材と共に撹拌混合する工程とを有することを特徴とする
軟弱土改良方法。
【請求項2】
粉体状固化材を混合し固化させることにより軟弱土を改良する方法において、
堆積した軟弱土に圧入可能な筒体の下端部に設けた開閉可能な放出口を閉状態とし、該筒体内に粉体状固化材を投入すると共に、該堆積した軟弱土に対して前記筒体を圧入することにより該軟弱土表面から鉛直下方へ延びる柱状孔を設ける工程と、
前記筒体の前記放出口を開状態として前記粉体状固化材を放出しつつ該筒体を引き上げることにより前記柱状孔内に該粉体状固化材を充填する工程と、
前記堆積した軟弱土を前記充填された粉体状固化材と共に撹拌混合する工程とを有することを特徴とする
軟弱土改良方法。
【請求項3】
請求項2に記載の軟弱土改良方法に使用する固化材充填装置であって前記筒体を有し、前記堆積した軟弱土に対し圧入しかつ引き上げるための駆動装置に取り付け可能であり、
前記放出口を開閉するべく前記筒体の下端部にて該筒体に対して相対的に上下移動可能に設けた放出バルブであって該放出口が閉状態のとき該放出口を閉塞させる位置にありかつ該放出口が開状態のときに該放出口より下方の位置にある放出バルブと、
前記筒体内に前記粉体状固化材を投入するべく該筒体の側面部に設けた開閉可能な投入口と、
前記投入口を開閉するべく前記筒体内にて該筒体に対して相対的に上下移動可能に設けた投入バルブであって該投入口が開状態のときに該投入口より上方の位置にありかつ該投入口が閉状態のときに該投入口を閉塞させる位置にある投入バルブと、
前記放出バルブと前記投入バルブの上下移動を連動させるために該放出バルブと該投入バルブを連結するべく鉛直方向に延在するバルブ連結ロッドとを有することを特徴とする
軟弱土改良方法に使用する固化材充填装置。
【請求項4】
前記放出バルブの下端形状が下方に向かって先細となる形状であることを特徴とする請求項3に記載の固化材充填装置。
【請求項5】
前記バルブ連結ロッドを前記筒体に対して相対的に上下移動させる油圧シリンダーをさらに有することを特徴とする請求項3又は4に記載の固化材充填装置。
【請求項6】
前記バルブ連結ロッドを前記筒体に対して相対的に上下移動させるリンクカムをさらに有することを特徴とする請求項3又は4に記載の固化材充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−90057(P2006−90057A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278829(P2004−278829)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(501218810)独立行政法人北海道開発土木研究所 (10)
【出願人】(502118513)道路工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】