説明

軟性内視鏡用処置具および鋏鉗子

【課題】生体組織の剪断性に優れた鋏鉗子およびそれを含む内視鏡用処置具を提供する。
【解決手段】ある態様の鋏鉗子14は、操作管の先端に固定されたベース部30と、ベース部30に設けられた回動軸32と、回動軸32に軸支され、相対的に開閉自在な一対のブレード34,36と、一対のブレード34,36に対して設けられ、一端側がブレード34,36の基端部に回動可能に接続される一方、他端側がワイヤの先端部に対して回動可能に接続され、ワイヤの進退動作に応じて一端側がワイヤの軸線に接離してブレード34,36を回動軸を中心に回動させることにより一対のブレード34,36を開閉させるリンク50,52と、回動軸32よりも基端側に設けられ、一対のブレード34,36を閉じる際に両ブレードの刃面をその当接方向に付勢する力を発生させるテーパ構造と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡手術に用いられる内視鏡用処置具、および内視鏡手術における生体組織の切断に好適な鋏鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡手術は低侵襲で患者の負担も少なく術後の回復も早いことから、様々な医療分野で積極的に取り入れられている。そして、このような内視鏡手術のために生体組織を切除するためのさまざまな処置具が存在する。例えば、内視鏡の挿通チャンネルにワイヤを通して鉗子を駆動する処置具がある(例えば特許文献1参照)。このような処置具は一般に、可撓性シースの内部に駆動用のワイヤが配設されるとともにその先端に鉗子が連結され、シースの基端側からの遠隔操作によりワイヤを進退動作させて鉗子を開閉するように構成されている。
【0003】
このような鉗子としては現状、生体組織を把持してえぐるように切断する把持鉗子が用いられることが多いが、このような把持鉗子は構造上、切除すべき部位の周辺組織に損傷を与えてしまうことがある。このため、切除部分を最小限に抑えられるよう鋭利な刃面を有する鋏鉗子も提案されている。しかしながら、鋏鉗子は把持鉗子とは異なり、一対のブレードによる剪断力を生体組織に効果的に作用させなければならない。すなわち、粘膜等の柔らかい部位がブレード間に挟み込まれて剪断を阻害することがないよう、そのブレード間に適度な圧接力を作用させながら切断しなければならない。この点、例えば工作用の鋏であれば、作業者が手でその圧接力を微妙に調整することも可能であるが、内視鏡用処置のように遠隔操作を前提とし、ワイヤの牽引によりブレードを駆動する構成においてはそれも難しい。そこで、一対のブレードをそれぞれの刃部を交差させる方向に湾曲した形状とし、鋏鉗子の開位置から閉位置まで各ブレードの刃部を互いに接触させる付勢力を作用させる技術も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−142279号公報
【特許文献2】特開平6−315462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように鋏鉗子の開位置において一対のブレードが交差する構成では、その開位置から閉位置に到るまでにその交差部分により生体組織を挟み込む可能性がある。すなわち、開位置においてはブレードの先端側が交差し、閉位置においてはブレードの中間部に隙間が形成されるような構成であることから、生体組織の切断過程においてその剪断力がブレード間の一点に集中しつつ基端側から先端側へ移動する形となる。このため、その剪断箇所の前後の隙間に生体組織が挟み込まれてしまう可能性があり、実用に供するには難しい。特に内視鏡手術を脳外科手術に応用しようとした場合、切除対象となる患部の周囲への影響を極力最小限とする高精度な切除が可能な処置具が求められる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体組織の剪断性に優れた鋏鉗子およびそれを含む内視鏡用処置具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の内視鏡用処置具は、内視鏡の所定のチャンネル内に挿通される可撓性を有する操作管と、操作管の先端に設けられた鋏鉗子と、操作管の基端に設けられた操作部と、操作管の内部に長手方向に延在し、その先端が鋏鉗子に連結する一方、基端が操作部に連結し、操作部の操作に応じて長手方向に進退して操作部の駆動力を鋏鉗子に伝達するワイヤと、を備える。
【0008】
鋏鉗子は、操作管の先端に固定されたベース部と、ベース部に設けられた回動軸と、回動軸に軸支され、相対的に開閉自在な一対のブレードと、一対のブレードの少なくとも一方に対して設けられ、一端側がブレードの基端部に回動可能に接続される一方、他端側がワイヤの先端部に対して回動可能に接続され、ワイヤの進退動作に応じて一端側がワイヤの軸線に接離してブレードを回動軸を中心に回動させることにより一対のブレードを開閉させるリンクと、回動軸よりも基端側に設けられ、一対のブレードを閉じる際に両ブレードの刃面をその当接方向に付勢する力を発生させるテーパ構造と、を備える。
【0009】
この態様によると、内視鏡用処置具として剪断性に優れる鋏鉗子が用いられる。そして、その鋏鉗子の回動軸よりも基端側にテーパ構造が設けられ、鋏鉗子が閉じられる際に一対のブレードの刃面を近接させる方向の付勢力が作用する。このため、鋏鉗子の開状態から閉状態となるまで適度な剪断力を維持しつつ対象物を切断することができる。特にブレードを交差させる形状をとらないため、ブレード間に対象物を挟み込むことを防止しつつその切断工程を進めることが可能となる。
【0010】
本発明の別の態様は、鋏鉗子である。この鋏鉗子は、可撓性を有する操作管の先端に設けられ、操作管の内部に配設されたワイヤの進退動作により開閉駆動される鋏鉗子であって、操作管の先端に固定されたベース部と、ベース部に設けられた回動軸と、回動軸に軸支され、相対的に開閉自在な一対のブレードと、一対のブレードの少なくとも一方に対して設けられ、一端側がブレードの基端部に回動可能に接続される一方、他端側がワイヤの先端部に対して回動可能に接続され、ワイヤの進退動作に応じて一端側がワイヤの軸線に接離してブレードを回動軸を中心に回動させることにより一対のブレードを開閉させるリンクと、回動軸よりも基端側に設けられ、一対のブレードを閉じる際に両ブレードの刃面をその当接方向に付勢する力を発生させるテーパ構造と、を備える。
【0011】
この態様によると、鋏鉗子の回動軸よりも基端側にテーパ構造が設けられ、鋏鉗子が閉じられる際に一対のブレードの刃面を近接させる方向の付勢力が作用する。このため、鋏鉗子の開状態から閉状態となるまで適度な剪断力を維持しつつ対象物を切断することができる。特にブレードを交差させる形状をとらないため、ブレード間に対象物を挟み込むことを防止しつつその切断工程を進めることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体組織の剪断性に優れた鋏鉗子およびそれを含む内視鏡用処置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る処置具が内視鏡に適用された状態を表す図である。
【図2】鋏鉗子の構成を示す斜視図である。
【図3】鋏鉗子の具体的構造を表す説明図である。
【図4】鋏鉗子の動作を表す説明図である。
【図5】リンクの構成を示す説明図である。
【図6】テーパ構造による作用を示す説明図である。
【図7】変形例に係る鋏鉗子の構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に位置関係を表現することがある。図1は、実施形態に係る処置具が内視鏡に適用された状態を表す図である。
【0015】
処置具1は、内視鏡2の特定のチャンネル10に挿通される操作管12と、操作管12の先端に設けられた鋏鉗子14と、操作管12の基端に設けられた操作部16とを備える。操作管12は、可撓性を有する長尺状の部材からなり、その内部には駆動力を伝達するためのワイヤ18が挿通されている。すなわち、ワイヤ18の先端は鋏鉗子14に連結され、基端は操作部16に連結されている。操作部16が操作されてワイヤ18が駆動されると、その駆動力が鋏鉗子14の後述するリンク機構に伝達される。
【0016】
本実施形態では、操作管12として、ステンレス鋼等の金属線等をほぼ一定の径で螺旋状に密着巻きして形成され、その巻回部の直径が2mm程度のコイルパイプを用いている。また、ワイヤ18として、牽引操作の繰り返しにより断線を生じることがない程度の強度および耐久性を有し、また伸びの少ないものが用いられる。具体的には、ステンレスのばね材からなり、駆動力を軸線方向に伝達するための十分な剛性と、操作管12の可撓性を維持するための弾性を有する単線であって、その断面の直径が0.5mm〜0.7mm程度のものを用いている。鋏鉗子14は、一対のブレードと、それを開閉させるためのリンク機構を有するが、その詳細については後述する。
【0017】
操作部16は、操作管12の基端が固定された本体20と、本体20の軸線に沿って進退動作可能に係合されたハンドル22を有する。ワイヤ18の基端はハンドル22に固定されているため、そのハンドル22の進退動作に連動してワイヤ18が操作管12の内部で進退動作する。なお、操作部16には、ハンドル22を先端側に向けて付勢するスプリング等の付勢機構が設けられており、ハンドル22の非操作時においてはワイヤ18が先端方向、つまり一対のブレードが開く方向に付勢される。一方、ハンドル22を牽引操作すると、その駆動力がワイヤ18を介して鋏鉗子14に伝達され、一対のブレードが閉じる方向に付勢される。なお、内視鏡2の他のチャンネルにはCCDカメラやライト等が挿通されるが、ここではその説明を省略する。
【0018】
次に、処置具1の主要部である鋏鉗子14の構成について詳細に説明する。図2は鋏鉗子14の構成を示す斜視図である。図3は鋏鉗子14の具体的構造を表す説明図である。(A)はその正面図を示し、(B)は側面図を示している。(C)は(A)に対応する内部構造図であり、説明の便宜上、鋏鉗子14のベース部30を取り除いた状態を示している。(D)は(B)に対応する内部構造図であり、説明の便宜上、鋏鉗子14のベース部30を取り除いた状態を示している。
【0019】
図2に示すように、鋏鉗子14は、操作管12先端に固定されたベース部30と、ベース部30に設けられた回動軸32と、回動軸32に回動可能に軸支された一対のブレード34,36と、ワイヤ18の進退運動をブレード34,36の回動運動に変換するリンク機構38を有する。ワイヤ18は、端部部材40を介してリンク機構38に連結されている。端部部材40は、ベース部30の基端部に軸線方向に摺動可能に支持されており、その先端部にリンク機構38が連結され、基端部にワイヤ18が連結されている。リンク機構38は、ブレード34,36を回動軸32を中心に回動させて鋏鉗子14を開閉させるものである。ブレード34,36の各刃面には、その厚み方向に所定深さを有する複数の窪み42が設けられている。
【0020】
図3(A)および(C)に示すように、ブレード34,36は、ベース部30の軸線に対して対称な構成を有する。ブレード34,36は、両者を開いた際に最も基端側で接触する部分から先端にかけて片側面が傾斜した薄肉形状を有する一方、基端部はリンク50,52をそれぞれ安定に接続できるよう平坦で十分な厚みを有する。各ブレードには、その対向面とは反対側の刃面にそって複数(本実施形態では3つ)の窪み42が設けられていている。ブレード34,36は、回動軸32を中心に回動することで、互いの刃面を近接または離間させる。複数の窪み42は、生体組織を切断する際の滑り止めとして機能する。窪み42は、図示の例では半円形状をなしているが、同様の機能を発揮できれば多角形状その他の形状であってもよい。ただし、窪み42は、ブレード34,36の刃面を厚み方向に貫通してはおらず、刃面を構成する傾斜面の一部を厚み方向に切り欠いたものとなっている。
【0021】
リンク機構38は、一対のリンク50,52を含んで構成される。リンク50,52は、端部部材40の軸線に対して対称な構成を有する。リンク50は段付平板状をなし、その一端部がピン54を介してブレード34の基端部(回動軸32に対して刃部の反対側端部)に接続されている。ピン54は、ブレード34とリンク50との回動軸を構成する。端部部材40はその先端部が平坦な軸支部60となっており、リンク50の他端部がピン58を介して接続されている。
【0022】
一方、リンク52も段付平板状をなし、その一端部がピン56を介してブレード36の基端部(回動軸32に対して刃部の反対側端部)に接続されている。ピン56は、ブレード36とリンク52との回動軸を構成する。また、リンク52の他端部がピン58を介して接続されている。すなわち、ピン58は、リンク50,52の端部部材40に対する回動軸を構成する。なお、リンク50,52には、ブレード34,36を閉じる際に両ブレードの刃面をその当接方向に付勢する力を発生させるテーパ構造が設けられているが、その詳細については後述する。
【0023】
図3(B)および(D)に示すように、ベース部30は、円筒状の本体の先端側がスリット状に開放された形状を有する。ベース部30は、その基端部から先端に向けて軸線を挟むように対向配置された一対の支持部62,64を有し、その先端部において支持部62,64を架橋するように回動軸32が設けられている。ブレード34,36は、支持部62と支持部64との間に配設されている。ベース部30の基端部には、端部部材40を摺動可能に支持する挿通孔66が設けられている。端部部材40の先端部は、挿通孔66を貫通して支持部62と支持部64との間に延出し、その片側面にてリンク50に当接し、その反対側面にてリンク52に当接するように連結されている。リンク50,52は、支持部62と支持部64との間に配設されている。このように、支持部62と支持部64との間、つまりベース部30の内方にブレード34,36およびリンク50,52を配置したため、鋏鉗子14全体としてコンパクトに構成されている。
【0024】
図4は、鋏鉗子14の動作を表す説明図である。(A)は鋏鉗子14が開いた状態を示し、(B)は閉じた状態を示している。(C)および(B)は、説明に便宜上、(A)および(B)のベース部30を取り除いた状態を示している。
【0025】
図1に示した操作部16が操作されていない状態においては、図4(A)および(C)に示すように、端部部材40が軸支部60と回動軸32とを近接させた状態に維持され、鋏鉗子14が開いた状態となる。この状態から操作部16が操作されてワイヤ18が牽引されると、端部部材40が軸支部60を回動軸32から離間させる方向に駆動される。その結果、図4(B)および(D)に示すように、リンク50,52が端部部材40の軸線と平行に近づくよう、つまりピン54,56がその軸線に近づくように回動し、ブレード34,36が閉じる方向に動作する。
【0026】
生体組織を切断する際には、図4(A)に示す状態にてその生体組織の該当箇所にブレード34,36を位置させ、操作部16を操作する。それにより、ブレード34,36が閉じる方向に動作する過程で生体組織を切断する。その切断過程においては、リンク50,52に設けられた後述するテーパ構造によりブレード34,36の剪断性能が高く維持される。また、切断過程においてブレード34,36に設けられた窪み42が滑り止めとなり、生体組織が両ブレードの先端側に抜け落ちることが防止される。その結果、良好な処置を実現することができる。
【0027】
次に、リンク機構38におけるテーパ構造について詳細に説明する。図5はリンク50,52の構成を示す説明図である。(A)はリンク50,52の斜視図を示し、(B)は平面図を示し、(C)は左側面図を示し、(D)は正面図を示し、(E)は右側面図を示している。図6はテーパ構造による作用を示す説明図である。(A)は鋏鉗子14が開いた状態を示し、(B)は閉じた状態を示している。(C)は鋏鉗子14が閉じる過程において発生する力を示した側面図である。
【0028】
図5に示すように、リンク50,52は、その上半部と下半部とが厚み方向にずれた段付平板状の本体70を有し、その上半部にはピン54またはピン56を挿通するための挿通孔72が設けられ、下半部にはピン58を挿通するための挿通孔74が設けられている。そして、上端部と下半部との境界部における片側面には、その幅方向の一方から他方に向けて所定角度で傾斜するテーパ形状の係合部76が形成されている。
【0029】
図6(A)および(B)に示すように、係合部76は、リンク50およびリンク52の互いの対向面に設けられ、一対のブレード34,36が閉じる際に係合する。操作部16の非操作時にブレード34とブレード36とが開いた状態においては、図6(A)に示すように、リンク50の係合部76とリンク52の係合部76とは互いに干渉しない位置にある。そして、操作部16が操作されてブレード34とブレード36とが閉じる方向に動作すると、図6(B)に示すように、リンク50の係合部76とリンク52の係合部76とが係合する。
【0030】
リンク50の係合部76とリンク52の係合部76とは、互いの傾斜面の低い箇所が近接するように配設されており、その係合が進むにつれて徐々に傾斜面の高い箇所が当接するようになる。このため、鋏鉗子14の切断動作時には、図6(C)に実線矢印にて示すように、リンク50とリンク52との間には互いを離間する方向に付勢する付勢力が作用する。その結果、リンク50が連結されたブレード34の基端部と、リンク52が連結されたブレード36の基端部との間にも互いを離間する方向に付勢する付勢力が作用する。一方、ブレード34とブレード36との相対変位が回動軸32の位置で規制されているため、ブレード34とブレード36の回動軸32よりも先端側には逆に、二点鎖線矢印にて示すように、互いを当接方向(剪断方向と直角方向)に付勢する力が作用するようになる。
【0031】
このように、鋏鉗子14が切断動作する際には、ブレード34の刃面とブレード36の刃面とを当接方向に付勢する力が作用するため、両ブレードの間に隙間ができることを防止または抑制でき、十分な剪断力が作用するようになる。すなわち、ブレード34とブレード36とが交差するような構造を有さなくとも、両者による剪断性を良好に確保することができる。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態の処置具1においては、鋏鉗子14の回動軸32よりも基端側に配置されるリンク50,52にテーパ構造を設けたことにより、鋏鉗子14の一対のブレード34,36が閉じられる際に両者の刃面を当接方向に付勢する力が作用する。このため、鋏鉗子14の開状態から閉状態となるまで適度な剪断力を維持しつつ患部を高精度に切断することができる。また、処置具1は把持鉗子ではなく鋏鉗子を採用するものであるが、先行技術文献2に記載のように一対のブレードを交差させる形状をとらないため、ブレード間に生体組織を挟み込むことを防止しつつその切断工程を進めることが可能となり、切除対象となる患部を効率よく正確に切除することができる。例えば、処置具1を脳外科手術に適用した場合、脳の深部に発生した腫瘍やのう胞の切除などに対して、周辺組織を損傷させることを防止できるようになる。また、一対のブレード34,35と一対のリンク50,52をベース部30の内方に収容可能な構成としたことから、鋏鉗子14全体をコンパクトに構成することができる。
【0033】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0034】
上記実施形態では、鋏鉗子14として、ブレード34とブレード36とが概ねフラットな形状となる態様を例示した。変形例においては、一対のブレードがその一方の側に湾曲する形状となる態様としてもよい。図7は、変形例に係る鋏鉗子の構成を表す説明図である。(A)は鋏鉗子の斜視図であり、(B)は鋏鉗子の側面図である。なお、同図において、上記実施形態の鋏鉗子14と同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0035】
すなわち、本変形例の鋏鉗子214は、一対のブレード234,236が、ブレード234の側に湾曲する形状を有する。ただし、本変形例においても、ブレード234,236にはその刃面に沿って複数の窪み42が設けられており、また、リンク50,52については上記実施形態と同様の係合部76によるテーパ構造が設けられている。本変形例によれば、上記実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、ブレード234,236をCCDカメラによる観察視野に収めやすくなるといったメリットが得られる。
【0036】
上記実施形態および変形例では、鋏鉗子14および鋏鉗子214として、いずれもリンク機構により一対のブレードの双方が回動軸を中心に回動する形態のものを例示した。変形例においては、一対のブレードの一方はベース部30に固定され、他方のみが回動軸を中心に回動可能な片開きの構成としてもよい。その場合、回動する側のブレードに連結されるリンクにテーパ構造を設ければよい。
【0037】
上記実施形態および変形例では、鋏鉗子14および鋏鉗子214のリンク50、52にテーパ構造を設ける例を示した。変形例においては、一対のブレードの所定箇所にそれぞれテーパ構造を設けるようにしてもよい。例えば、一対のブレードの基端部における対応するリンク側の面にテーパ面を形成してもよい。そして、一対のブレードが開いている際にはそのテーパ面とリンクとが干渉しない配置構成とし、一対のブレードが閉じる際にリンクがテーパ面に係合し、一対のブレードの回動軸32よりも先端側を互いに近接させる方向の付勢力を作用させる構成としてもよい。
【0038】
上記実施形態および変形例では、鋏鉗子14および鋏鉗子214を内視鏡用処置具に適用する例を示したが、例えば内視鏡とは別体に用いられる処理具に適用してもよい。そして、トラカール等の案内具を介して患部に挿入可能な処置具として構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 処置具、 2 内視鏡、 10 チャンネル、 12 操作管、 14 鋏鉗子、 16 操作部、 18 ワイヤ、 30 ベース部、 32 回動軸、 34,36 ブレード、 38 リンク機構、 40 端部部材、 42 窪み、 50,52 リンク、 60 軸支部、 62,64 支持部、 76 係合部、 214 鋏鉗子、 234 ブレード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の所定のチャンネル内に挿通される可撓性を有する操作管と、
前記操作管の先端に設けられた鋏鉗子と、
前記操作管の基端に設けられた操作部と、
前記操作管の内部に長手方向に延在し、その先端が前記鋏鉗子に連結する一方、基端が前記操作部に連結し、前記操作部の操作に応じて長手方向に進退して前記操作部の駆動力を前記鋏鉗子に伝達するワイヤと、
を備え、
前記鋏鉗子は、
前記操作管の先端に固定されたベース部と、
前記ベース部に設けられた回動軸と、
前記回動軸に軸支され、相対的に開閉自在な一対のブレードと、
前記一対のブレードの少なくとも一方に対して設けられ、一端側が前記ブレードの基端部に回動可能に接続される一方、他端側が前記ワイヤの先端部に対して回動可能に接続され、前記ワイヤの進退動作に応じて一端側が前記ワイヤの軸線に接離して前記ブレードを前記回動軸を中心に回動させることにより前記一対のブレードを開閉させるリンクと、
前記回動軸よりも基端側に設けられ、前記一対のブレードを閉じる際に両ブレードの刃面をその当接方向に付勢する力を発生させるテーパ構造と、
を備えることを特徴とする軟性内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記ベース部は、前記操作管の先端から同軸状に延設され、その軸線を挟むように対向配置された一対の支持部を有し、
前記回動軸は、前記一対の支持部を架橋するように設けられ、
前記一対のブレードは、前記一対の支持部の間に介装されるようにして前記回動軸に軸支され、
前記リンクが前記一対のブレードに対してそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軟性内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記テーパ構造は、一対の前記リンクの対向面にそれぞれ設けられ、前記一対のブレードが閉じる際に係合する係合部のテーパ形状により実現されていることを特徴とする請求項2に記載の軟性内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記一対のブレードの各係合部は、前記操作部の非操作時に前記一対のブレードが開いた状態においては互いに干渉しないよう各ブレードに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の軟性内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記一対のブレードのそれぞれの刃面に、厚み方向に所定深さを有する窪みが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軟性内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記窪みは、前記一対のブレードの対向面とは反対側の刃面にそって複数設けられていることを特徴とする請求項5に記載の軟性内視鏡用処置具。
【請求項7】
可撓性を有する操作管の先端に設けられ、前記操作管の内部に配設されたワイヤの進退動作により開閉駆動される鋏鉗子であって、
前記操作管の先端に固定されたベース部と、
前記ベース部に設けられた回動軸と、
前記回動軸に軸支され、相対的に開閉自在な一対のブレードと、
前記一対のブレードの少なくとも一方に対して設けられ、一端側が前記ブレードの基端部に回動可能に接続される一方、他端側が前記ワイヤの先端部に対して回動可能に接続され、前記ワイヤの進退動作に応じて一端側が前記ワイヤの軸線に接離して前記ブレードを前記回動軸を中心に回動させることにより前記一対のブレードを開閉させるリンクと、
前記回動軸よりも基端側に設けられ、前記一対のブレードを閉じる際に両ブレードの刃面をその当接方向に付勢する力を発生させるテーパ構造と、
を備えることを特徴とする鋏鉗子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165812(P2012−165812A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27362(P2011−27362)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(507189460)学校法人金沢医科大学 (8)
【Fターム(参考)】