説明

軟質で弾性の可塑剤非含有熱可塑性ポリウレタンおよびそれを合成するプロセス

本発明は、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンを開示し;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;上記ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;上記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤との反応生成物である硬質セグメントを含み;上記硬質セグメントは、上記熱可塑性ポリウレタンの総重量の10〜40重量%に相当する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、170℃より高い融点および75未満のShore A硬度を有する可塑剤非含有熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物に関する。本発明のTPU組成物はまた、圧縮歪みに対する高いレベルの耐性を有し、高温に曝され得る軟質ポリマーを要する適用において有用である。例えば、本発明のTPU組成物は、靴構成要素および溶融紡糸繊維を製造するにおいて利用するために特に望ましくする特徴を示す。本発明はまた、このようなTPU組成物を合成するためのプロセス、およびそれらを使用して製造された製造物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
TPUポリマーは、代表的には、(1)ヒドロキシル末端化ポリエーテルヒドロキシ末端化ポリエーテルもしくはヒドロキシ末端化ポリエステル、(2)鎖伸長剤、および(3)イソシアネート化合物を反応することによって作製される。上記3種の反応物の各々についての種々のタイプの化合物は、文献中に開示されている。これら3種の反応物から作製される上記TPUポリマーは、種々の分野で用途が見いだされ、これら分野において、生成物は、上記TPUを溶融処理すること、および上記TPUを種々の形状に形成して、押し出し成形(extrusion)および成形(molding)のようなプロセスによって望ましい物品を生成することによって、作製される。溶融紡糸弾性繊維を作製する分野において、TPUは、非常に有用である。上記TPU繊維は、他の天然繊維および合成繊維と組み合わせて、衣類、ならびに種々の他のコンシューマー製品および工業製品を作製し得る。
【0003】
TPUは、軟質セグメントおよび硬質セグメントを有するセグメント化ポリマーである。この特徴は、それらの優れた弾性特性の原因である。上記軟質セグメントは、上記ヒドロキシ末端化ポリエーテルもしくはポリエステルから得られ、上記硬質セグメントは、上記イソシアネートおよび上記鎖伸長剤から得られる。上記鎖伸長剤は、代表的には、種々のグリコールのうちの1つ(例えば、1,4−ブタングリコール)である。
【0004】
特許文献1は、ヒドロキシ末端化ポリエーテル、グリコール鎖伸長剤、およびジイソシアネートから作製されるTPUを開示している。このTPUは、繊維、ゴルフボールコア、レクリエーション用車両(recreational wheel)、および他の用途を作製するために有用であると記載されている。
【0005】
従来のTPU繊維の代表的欠点のうちの1つは、それらが、製造手順において通常遭遇する高温に耐えられないことである。例えば、高温耐性は、上記TPU繊維と、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維)とを組み合わせることによって物品(例えば、衣類)を作製したい場合には、重要である。これは、合成繊維が、染色され、高温で熱硬化されて、それらで作製された上記衣類が、後の洗浄および乾燥サイクルの間に縮まないようにされねばならないからである。この理由が原因で、高温に対する耐性を提供しない従来のTPU繊維は、通常、高温熱処理を要しない天然繊維(例えば、綿)と組み合わせて使用される。
【0006】
高温耐性はまた、TPUが織物コーティング適用において使用される場合に、非常に望ましい。例えば、衣類において、織物コーティングが使用され得、ここでTPUライナーが、フルオロ−ポリマーコーティングとともに使用され、上記コーティングが上記織物に適用した後に通常加熱されて、乾燥しかつ上記フルオロポリマーを架橋する。このような場合において、上記TPUは、上記手順の乾燥および架橋工程において遭遇する高温に耐えられる必要がある。
【0007】
多くの適用において、低レベルの硬度(例えば、75未満および好ましくはより低いShore A硬度)と合わせて、良好な高温耐性のために高い融解点を有することが、TPUに関して望ましい。言い換えると、良好な高温耐性を有する軟質TPUは、有益なことには、このような適用において使用され得る。しかし、可塑剤を含まない、高い融解点を有する軟質TPUは、手に入れにくかった。これは、上記融解点および上記TPUの硬度が、代表的には、利用される鎖伸長剤のレベルとともに両方とも増大することが原因である。従って、代表的には、鎖伸長剤のレベルを増大させることによって、上記ポリマーの硬度を同様に増大させることなく、高い融解点を有するTPUを作製することは困難であった。
【0008】
可塑剤は、TPU組成物に一般に添加されて、上記ポリマー組成物をより弾性かつ軟質にする。しかし、多くの適用において、可塑剤を上記TPU組成物に添加することは望ましくない。例えば、透明なTPU組成物において可塑剤を使用することは、避けられるべきである。なぜなら、可塑剤の存在は、上記組成物の透明性を低くし得るからである。従って、可塑剤は、透明性が求められるTPU組成物における利用については望ましくない。可塑剤はまた、曇り得るか、または上記組成物の硬度が望ましくないレベルにまで増大し得るこのような組成物からは抽出され得る。特定の可塑剤の使用はまた、環境的見方および毒物学的見方から精査下にあった。従って、TPU組成物における可塑剤の必要性を排除することは、通常、望ましい物理的特徴が可塑剤なしで得られ得る場合に、有利であると考えられる。
【0009】
特許文献2は、高レベルの耐熱性および高い水蒸気透過率を有するTPUを開示している。これらポリマーはまた、液体の水を通さず、静電放散特性(electrostatic dissipating property)を有する。これら特徴は、上記ポリマーを高い水蒸気透過特性を要する適用(例えば、ハウスラップ、屋根ふき下地(roofing underlay)、種々のテキスタイルコーティング、および溶融紡糸繊維)における使用に望ましくする。特許文献2によって記載されるTPU組成物は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体、芳香族鎖伸長剤グリコール、およびポリイソシアネートを反応させることによって調製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,959,059号明細書
【特許文献2】米国特許第7,202,322号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明のTPU組成物は、コンシューマー製品および工業製品を製造することにおいて種々の適用に非常に望ましい特有の多数の特徴を提供する。従って、本発明のTPU組成物は、代表的には、可塑剤を本質的に含まず、好ましくは、void of 可塑剤を含まない。用語、可塑剤を本質的に含まないとは、上記TPU組成物中の可塑剤の5重量%未満しか存在しないことを意味する。これらTPUの特性としては、少なくとも約170℃、代表的には、185℃より高い、およびより好ましくは、少なくとも200℃の融解点によって特徴付けられる高温耐性が挙げられる。本発明のTPUはまた、75未満、好ましくは、70未満、および最も好ましくは、65未満のShore A硬度を有する軟質ポリマーである。上記硬度は、5秒後に、ASTM D2240に従って測定される。上記TPUはまた、15%未満、好ましくは、10%未満、および最も好ましくは5%未満の低い引張り歪み特徴(200%歪みにおけるASTM D412によって)を有する。
【0012】
本発明は、より具体的には、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンを開示し;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで上記硬質セグメントは、上記熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する。上記硬質セグメントは、より代表的には、上記熱可塑性ポリウレタンの総重量の15重量%〜30重量%に相当する。
【0013】
本発明はさらに、ウェルトおよびインソールリブによってアウトソールシェルに固定されたアッパーを有する履き物を示し、ここで上記アッパーは、腰革および爪革を含み、ここで上記アウターシェルは、空隙を規定し、ここで上記ウェルトは、上記アッパー、上記インソール、および上記アウトソールシェルに取り付けられかつ相互連結し、ここで上記空隙は、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンで満たされ;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで上記硬質セグメントは、上記熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する。
【0014】
本発明はまた、アッパーおよびソールを有する履き物を開示し、ここで上記ソールは、アウトソール部分およびミッドソール部分から構成され、ここで熱可塑性ポリウレタン層は、上記アウトソール部分を上記ミッドソール部分に固定し、ここで上記アウトソールは、固体エラストマー物質から構成され、ここで上記ミッドソール部分は、吹き出されたポリウレタン組成物から構成され、そしてここで上記熱可塑性層は、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで上記硬質セグメントは、上記熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する。
【0015】
本発明はまた、溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維から構成される、織られた、編まれた、もしくは不織であり得る織物を開示し、ここで上記溶融紡糸熱可塑性ポリウレタンは、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで上記硬質セグメントは、上記熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する。いくつかの場合において、上記溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維はまた、上記織物を作製するにあたって、溶融紡糸ポリエステル繊維と組み合わされる。
【0016】
本発明はさらに、成形物品を製造するためのプロセスを開示し、上記プロセスは、(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、上記熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融点より高い温度へと加熱する工程であって、ここで上記熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで上記ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで上記硬質セグメントは、上記熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する、工程;(b)上記熱可塑性ポリウレタン組成物を型へと射出成形する工程;(c)上記型中の上記熱可塑性ポリウレタン組成物を、上記熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より低い温度へと冷却して、上記成形物品を製造する工程;ならびに(d)上記成形物品を上記型から外す工程、を包含する。本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、性質において非常に軟質であるとしても、上記組成物は、型に貼り付くという傾向をほとんど有していないという利点を提供する。よって、上記組成物は、射出成形適用における利用に非常に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物である。これら反応物が重合されて、上記熱可塑性ポリウレタンを合成する技術は、従来の装置、触媒、および手順を利用して行われる。しかし、上記重合は、必要とされる分子量を生じる様式において行われる。それはまた、特定のヒドロキシル末端化中間体を使用して、上記鎖伸長剤として利用されるエチレングリコールおよび/もしくはプロピレングリコールとともに、行われる。
【0018】
上記熱可塑性ポリウレタンを作製するにあたって使用される上記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体もしくはヒドロキシル末端化ポリエステル中間体である。結晶化を阻害するために、上記ヒドロキシル末端化中間体は、(1)分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または(2)ランダムコポリエーテルもしくはランダムコポリエステルである。例えば、ヒドロキシル末端化ランダムコポリエーテル中間体は、2種の異なるアルキルジオールもしくはグリコールと、アルキレンオキシドとを反応させて合成され得る。代替において、上記アルキルジオールもしくはグリコールは、結晶化を阻害するために分枝状であり得る。
【0019】
上記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体を生成するにあたって使用される上記アルキルジオールもしくはグリコールは、代表的には、2〜12個の炭素原子を含み、上記アルキレンオキシドは、代表的には、2〜6個の炭素原子を含む。上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体を作製するにあたって使用され得る上記グリコールは、脂肪族、芳香族、もしくはこれらの組み合わせであり得、通常、合計で2〜8個の炭素原子を含む。使用され得るグリコールのいくつかの代表例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどが挙げられる。いくつかの好ましいグリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールが挙げられる。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドは、上記ヒドロキシル官能性ポリエーテル中間体を合成するにあたって使用され得るアルキレンオキシドの代表例である。
【0020】
本発明の実施において有用なヒドロキシル官能性ランダムコポリエーテル中間体は、プロピレングリコールと、プロピレンオキシドとを最初に反応させて、続いて、エチレンオキシドとを反応させることによって生成され得る。このことは、ポリ(プロピレン−エチレン)グリコールの形成を生じる。さらなる有用なヒドロキシル官能性ポリエーテルポリオールのいくつかの代表例としては、ポリ(エチレン)グリコール。ポリ(プロピレン)グリコール、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールなどが挙げられる。ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールは、本発明の熱可塑性ポリウレタンを作製するにあたって使用するために非常に好ましいヒドロキシル官能性ポリエーテルポリオールである。
【0021】
ヒドロキシル末端化ランダムコポリエステル中間体は、(1)2種の異なるアルキルジオールもしくはグリコールと、1種以上のジカルボン酸もしくは無水物とのエステル化反応、または(2)2種の異なるアルキルジオールもしくはグリコールと、ジカルボン酸の1種以上のエステルとのトランスエステル化反応を介して、合成され得る。代替において、上記アルキルジオールもしくはグリコールは、上記ヒドロキシル末端化コポリエステル中間体の結晶化を阻害するために分枝状であり得る。
【0022】
上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体を作製するにあたって使用される上記ジオールもしくはグリコールは、上記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体を合成するにあたって使用され得る上記ジオールもしくはグリコールと同じである。上記ヒドロキシル官能性コポリエステル中間体を作製するにあたって使用される上記ジカルボン酸は、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、もしくはこれらの組み合わせであり得る。単独で、もしくは混合物において使用され得る適切なジカルボン酸は、一般に、合計で、4〜15個の炭素原子を有し、そして以下が挙げられる:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸など。アジピン酸は、好ましい酸である。上記ジカルボン酸の無水物(例えば、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物など)はまた、上記で説明したように、トランスエステル化反応によって上記中間体を合成するために使用され得る。有用なヒドロキシル官能性ランダムコポリエステルポリオールのいくつかの代表例としては、ポリ(ブチレンヘキシレンアジペート)グリコール、ポリ(エチレンヘキシレンアジペート)グリコール、ポリ(プロピレンヘキシレンアジペート)グリコール、ポリ(エチレンブチレンアジペート)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンスクシネート)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレングルタレート)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンピメレート)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンアゼレート)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンテレフタレート)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンイソフタレート)グリコールなどが挙げられる。ポリ(ブチレンヘキシレンアジペート)グリコールは、本発明の実施における利用に非常に好ましいヒドロキシル官能性コポリエステルポリオールである。
【0023】
本発明の上記熱可塑性ポリウレタンを作製するにあたって使用される上記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体もしくは上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、代表的には、上記末端官能性基のアッセイによって測定される場合、約350〜約10,000ダルトン、望ましくは、約500〜約5,000、好ましくは、約700〜約4,000、および最も好ましくは、約1,000〜約3,000の範囲内の数平均分子量(Mn)を有する。2種以上のヒドロキシル末端化中間体のブレンドは、本発明のTPUを作製するために使用され得る。
【0024】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを作製するにあたって使用される上記グリコール鎖伸長剤は、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはこれらの混合物のいずれかである。上記グリコール鎖伸長剤としてはまた、1,4−ブタングリコール、1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールが挙げられ得る。上記鎖伸長剤として、エチレングリコールおよび/もしくはプロピレングリコールのみを利用することは、非常に好ましい。最も好ましい鎖伸長剤は、エチレングリコールであり、完全にエチレングリコールからなることは、上記鎖伸長剤にとって好ましい。
【0025】
上記熱可塑性ポリウレタンを合成するにあたって使用される上記ポリイソシアネートは、好ましくは、ジイソシアネートである。脂肪族ジイソシアネートが利用され得る一方で、芳香族ジイソシアネートは、非常に好ましい。さらに、架橋を引き起こす多官能性イソシアネート化合物(すなわち、トリイソシアネートなど)の使用は、一般に、回避され、従って、使用される量は、あるとしても、使用される上記種々のイソシアネート全ての総モルに基づいて、一般に、4モル%未満、および好ましくは、2モル%未満である。適切なジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI);m−キシレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン−1−4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート(TODI)、およびトルエンジイソシアネート(TDI));ならびに脂肪族ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン−1,10−ジイソシアネート、およびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート)が挙げられる。上記ジイソシアネートのダイマーおよびトリマーもまた、2種以上のジイソシアネートが使用され得るのと同様に、使用され得る。
【0026】
本発明において使用される上記ポリイソシアネートは、イソシアネートで末端がキャップされた低分子量ポリマーもしくはオリゴマーの形態で存在し得る。例えば、上記に記載されるヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体は、イソシアネート含有化合物と反応させられて、イソシアネートで末端がキャップされた低分子量ポリマーを作り得る。上記TPU技術において、このような物質は、通常は、プレ−ポリマーといわれている。このようなプレ−ポリマーは、通常は、約1000〜約10,000ダルトンの範囲内の数平均分子量(Mn)を有する。
【0027】
上記1種以上のジイソシアネートのモル比は、一般に、上記1種以上のヒドロキシ末端化ポリエーテルおよび/もしくはポリエステル中間体ならびに上記1種以上の鎖伸長剤の総モルの約0.95〜約1.05モル/モル、および好ましくは、約0.98〜約1.03モル/モルである。
【0028】
本発明のTPUポリマーを生成するためのプロセスは、従来のTPU製造装置を利用し得る。上記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体、上記ジイソシアネート、および上記鎖伸長剤は、上記のように、一般に、一緒に添加され、任意の従来のウレタン反応法に従って反応させられる。好ましくは、本発明のTPU形成成分は、適切なミキサー(例えば、Banburyミキサーとして公知の密閉式ミキサー、もしくは好ましくは、押し出し機)中で溶融重合させられる。好ましいプロセスにおいて、上記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体は、上記グリコール鎖伸長剤とブレンドされ、ブレンドとして押しだし機に添加される。上記ジイソシアネートは、上記押し出し機に別個に添加される。上記ジイソシアネートの適切な処理温度もしくは重合開始温度は、約100℃〜約200℃、および好ましくは、約100℃〜約150℃である。上記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体および上記鎖伸長剤のブレンドの適切な処理温度もしくは重合開始温度は、約100℃〜約220℃、および好ましくは、約150℃〜200℃である。上記種々の成分が反応しかつ本発明のTPUポリマーを形成することができるために適切な混合時間は、一般に、約2〜約10分、および好ましくは、約3〜約5分である。
【0029】
本発明のTPUを生成するための好ましいプロセスは、1回注入重合プロセス(one−shot polymerization process)といわれるプロセスである。一般に、その場で起こる上記1回注入重合プロセスにおいて、同時の反応が、3種の成分(すなわち、上記1種以上のヒドロキシル末端化中間体、上記グリコール、および上記ジイソシアネート)の間で起こる。上記反応は、一般に、約90℃〜約120℃の温度において開始される。上記反応は、発熱性であるので、上記反応温度は、一般に、約220℃〜250℃へと上昇する。エチレングリコールが上記鎖伸長剤として使用される場合、この発熱反応の温度を最大235℃に制限して、望ましくない発泡形成を妨げることは、重要である。上記
TPUポリマーは、上記反応押し出し機から出て、ペレット化される。上記TPUのペレットは、通常、上記反応を継続させ、上記TPUペレットを乾燥させるために加熱容器中に貯蔵される。
【0030】
触媒(例えば、スズ(II)および他の金属カルボキシレート、ならびに三級アミン)を利用することは、しばしば望ましい。金属カルボキシレート触媒の例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、フェニル水銀プロピオネート、オクチル酸鉛、鉄アセチルアセトネート、マグネシウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。三級アミン触媒の例としては、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。上記1種以上の触媒の量は低く、一般に、上記形成される最終TPUポリマーの100万重量部(parts by weight)あたり約50〜約100重量部である。
【0031】
本発明のTPUポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約100,000〜約600,000ダルトン、好ましくは、約100,000〜約300,000ダルトン、およびより好ましくは、約120,000〜約250,000ダルトンの範囲に及ぶ。上記TPUポリマーのMwは、ポリスチレン標準物質に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に従って測定される。
【0032】
より高い分子量のTPUポリマーが望まれる場合、これは、架橋を誘導するために、2.0より大きい平均官能基を有する、少量の架橋剤を使用することによって達成され得る。使用される架橋剤の量は、好ましくは、鎖伸長剤の総モル量の2モル%未満、およびより好ましくは、1モル%未満である。上記好ましいTPUポリマーにおける分子量を増大させるために特に望ましい方法は、上記鎖伸長剤の1モル%未満を、トリメチロールプロパン(TMP)で置換することである。
【0033】
上記架橋は、上記TPUポリマーを製造するために、上記反応混合物中で、上記ヒドロキシル末端化中間体、上記イソシアネート化合物、および鎖伸長剤と一緒に、2.0より大きい平均官能基を有する架橋剤を添加することによって、達成される。上記TPUポリマーを作製するために上記反応混合物中で使用される架橋剤の量は、上記使用される架橋剤の望ましい分子量およびおよび効率に依存する。上記TPUポリマーを作製するにあたって使用される鎖伸長剤の総モル量に基づいて、通常、2.0モル%未満、および好ましくは、1.0モル%未満が、使用される。鎖伸長剤の総モル量に基づいて、2.0モル%より大きい架橋剤のレベルは、溶融プロセスに対して困難である。従って、使用される架橋剤のレベルは、鎖伸長剤の総モル量に基づいて、約0.05モル%〜約2.0モル%である。
【0034】
上記架橋剤は、2.0より大きい平均官能基を有し、上記TPUポリマーを架橋する能力を有する、任意のモノマー物質もしくはオリゴマー物質であり得る。このような物質は、熱硬化性ポリウレタンの分野で周知である。好ましい架橋剤としては、トリメチロールプロパン(TMP)およびペンタエリスリトールが挙げられる。トリメチロールプロパンは、特に所望の架橋剤であることが分かった。
【0035】
本発明のTPUポリマーは、種々の従来の添加剤もしくは配合剤(例えば、充填剤、増量剤、顔料、潤滑剤、UV吸収剤など)と混合され得る。しかし、本発明のTPUは、通常、可塑剤を含まない。使用され得る充填剤としては、タルク、シリケート、クレイ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。従来の添加剤のレベルは、TPUを配合する分野の当業者に周知であるように、望ましいエンドユーズ適用の最終特性および費用に依存する。上記添加剤は、上記TPUを形成するために、上記反応の間に添加され得るが、通常、第2の配合工程において添加される。
【0036】
本発明のTPUポリマーは、少なくとも約170℃、好ましくは、少なくとも約185℃、および最も好ましくは、少なくとも約200℃の高い融解点を有する。本発明のTPUは、代表的には、170℃〜240℃の範囲内の融解点を有し、より代表的には、185℃〜220℃の範囲内の融解点を有する。本発明のTPUは、好ましくは、200℃〜220℃の範囲内の融解点を有する。高い融解点は、他の合成繊維(例えば、ポリエステル)との溶融紡糸繊維を使用する適用において重要である。特定の溶融コーティング適用はまた、その製造プロセス、特に、フッ素化ポリマーの使用を要する適用に耐えるために、高い融解点のTPUを要する。上記TPUポリマーの融解点は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して、ASTM D−3417−99に従って測定され得る。しかし、非常に軟質のポリマーの場合、Kofler法は、上記TPUの融解点を測定するために使用され得る。
【0037】
本発明のTPUは、圧縮歪みおよび引張り歪みに対して優れた耐性を提供する。例えば、本発明のTPUは、200%歪みにおいて、15%未満、好ましくは、10%未満、および最も好ましくは、5%未満の引張り歪みを提供する。
【0038】
本発明のTPU組成物は、溶融紡糸繊維、射出成形製品(例えば、靴構成要素)、ならびに広い範囲の他のコンシューマー製品および工業製品を製造することにおいて利用するために上記組成物を特に望ましくする特徴を有する。本発明のTPUから溶融紡糸繊維を作製する場合、上記TPUをわずかに架橋するために添加剤を使用することは好ましい。上記好ましい添加剤は、ジフェニルメタンジイソシアネート末端化ポリエーテルプレポリマーもしくはジフェニルメタンジイソシアネート−末端化ポリエステルプレポリマーである。これら物質は、ポリエーテルグリコールもしくはポリエステルグリコールであり、ここで上記ヒドロキシル基は、イソシアネート末端化を提供するためにイソシアネート基に変換される。上記架橋添加剤は、上記ポリエーテルプレポリマーについてはHyperlast(登録商標) 5130として、ならびに上記ポリエステルプレポリマーについてはDiprane(登録商標) 5128およびDiprane(登録商標) 5184として、Hyperlast Limited,U.K.から購入可能である。上記好ましい架橋添加剤は、約2000ダルトンの数平均分子量およびMDIを有するポリ(1,4−ブタンジオール/ネオペンチルグリコール)アジペートから得られるジフェニルメタンジイソシアネート末端化ポリエステルプレポリマーである。上記好ましい溶融紡糸繊維を作製するにあたって使用される架橋添加剤の量は、上記繊維の約5重量%〜約20重量%、および好ましくは、約10重量%〜約15重量%である。溶融紡糸繊維は、架橋添加剤を使用することなく、本発明のTPUポリマーから作製され得る。しかし、上記架橋添加剤が、上記繊維の性能を高めることが見いだされた。
【0039】
上記繊維は、上記架橋添加剤と混合された上記TPUを溶融防止することによって作製される。溶融紡糸は、ポリマーが押しだしによって溶解され、紡糸口金(spinning nozzle)を通って空気中へと通過させ、冷却によって固化し、そして収集デバイスにで上記繊維を巻き取ることによって集められる、周知のプロセスである。代表的には、上記繊維は、約150℃〜約300℃のポリマー温度において好ましくは溶融紡糸される。
【0040】
本発明のTPUから作製された溶融紡糸繊維は、衣類・衣装(clothing apparel)において使用される他の繊維と合わせられ得る。先行技術の溶融紡糸TPU繊維は、通常、綿繊維と合わされるが、上記ポリエステル繊維とは合わされない。本発明のTPUはまた、綿と合わされ得るが、先行技術のTPUとは異なり、本発明のTPUはまた、上記TPUの高い融解点に起因して、ポリエステルと合わされ得る。
【0041】
本発明のTPUはまた、特定の靴構成要素(例えば、アウトソールシェルに、ウェルトおよびインソールリブによって固定化されているアッパーを有する履き物において)を製造することにおける利用によく適している。ここで上記アウターシェルは、空隙を規定し、そしてここで上記ウェルトは、上記アッパー、上記インソール、および上記アウトソールシェルに取り付けられかつ相互連結し、上記空隙は、有利には、本発明のTPUで満たされ得る。このような履き物のデザインにおいて、上記アッパーは、腰革および爪革を含む標準のデザインのものである。このような履き物のデザインは、米国特許第7,225,491号によってより詳細に記載されている。米国特許第7,225,491号の教示は、本発明のTPUが、上記履き物の上記アウトソールシェルによって規定される空隙のための充填物質として使用され得る履き物デザインの例示目的で、本明細書に参考として援用される。
【0042】
米国特許第6,749,781号は、TPU層がアウトソール部分をミッドソール部分に固定する履き物のソールを開示する。上記アウトソールは、好ましくは、エラストマーの固体物質(例えば、適切な合成ゴム)である。例えば、カルボキシル化ニトリルゴムは、有利なことには、このような履き物のソールの上記アウトソールを作製するにあたって使用され得る。上記アウトソールは、ひとが上記ソールで作製された履き物を着用しているときに、地面、舗道、床などに合うように適合される。上記ミッドソール部分は、代表的には、上記アウトソールに上記TPU層で固定化される吹き込まれたポリウレタン組成物から構成される。本発明のTPUは、有利なことには、このようなTPU層を作製するにあたって使用され得る。履き物のこのタイプのソールデザインは、米国特許第6,749,781号(本発明のTPUが上記TPU層として使用され得る履き物のソールを例示する目的で本明細書に参考として援用される)の教示によってより詳細に記載されている。
【0043】
本発明は、以下の実施例によって例示され、上記実施例は、例示目的に過ぎず、かつ本発明の範囲もしくは本発明が実施されうる様式を限定するとして解釈されるべきではない。別段示されない限り、部およびパーセンテージは、重量で示される。
【実施例】
【0044】
(実施例1〜5および比較例6)
この一連の実験において作製されるTPUを、全て1回注入重合プロセスを使用して、および同じ一般的手順を使用して作製した。使用した手順は、ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体および鎖伸長剤のブレンド、および別個にジイソシアネートを約150℃へと加熱し、次いで、上記成分を混合する工程を包含した。使用した鎖伸長剤は、エチレングリコールであり、使用したジイソシアネートは、MDIであった。上記反応は発熱反応であり、その温度は、約1〜5分間で約200℃〜250℃の範囲内にまで上昇し、その時間の間、粘性の増大によって実証されるように、重合が起こった。上記TPUを作製するにあたって使用した上記ヒドロキシル末端化中間体およびその作製したTPUの重量平均分子量を、表1に報告する。形成されるTPUの物理的特性を測定した。同様に、表1に報告する。実施例6は、3000Mn ポリ(ブチレンアジペート)グリコール(PBAG)を上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体として使用した比較例であることに注意すべきである。実施例1〜5において、ポリ(ブチレンヘキシレンアジペート)グリコール(PBHAG)を、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体として使用した。
【0045】
【表1】

表1から認められ得るように、上記TPUサンプルを、2500Mn ポリ(ブチレンヘキシレンアジペート)グリコール(PBHAG)を使用して作製した。上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体(実施例1〜5)は全て、70未満のShore A硬度を有した。これは、90より高いShore A硬度を有した比較実施例6において作製したTPUとは対照的であった。よって、PBHAGで作製した上記TPUサンプルは、PBAGで作製したTPUより遙かに軟らかい。さらに、PBHAGで作製した上記TPUサンプルは、exhibited a 7未満の引張り歪みを示した。これは、繰り返すと、86の引張り歪みを有した比較実施例6で作製したTPUとは対照的である。従って、実施例1〜5で作製した上記TPUサンプルは、比較実施例6において作製したTPUと比較して、非常に優れた引張り歪み特徴を提供した。
【0046】
(実施例7〜8および比較実施例9)
この一連の実験において、TPUを、実施例1〜5に記載される一般的手順および成分を使用して再び作製した。作製されたポリマーの硬質セグメント含有量は、表2に示されるように変動した。上記TPUを作製するにあたって使用した上記ヒドロキシル末端化中間体、上記作製したTPUの重量平均分子量、および上記作製したTPUの物理的特性は、同様に、表2に報告される。
【0047】
【表2】

これら実施例は、上記TPUポリマーが、低い硬度という目的を達成するために分子量が十分高いことが必要であることを実証する。実施例7と表1の実施例1とを比較すると、両方のポリマーとも21% 硬質セグメントを有するが、実施例1のMwは、162,000ダルトンであり、実施例7のMwは、82,000ダルトンであることが認められ得る。実施例1のデュロメーター硬度は、68 Shore Aであるのに対して、実施例7の硬度は、88 Shore Aである。通常、TPU中の硬質セグメントの量が多いほど、上記TPUの硬度は高い。しかし、この通常の関係は、上記TPUが低分子量TPUである場合には、存在しない。これは、上記低Mw TPUにおけるより多くの相分離によって引き起こされ、従って、軟質ブロックがより多くなると、結晶化し、より高い硬度を引き起こすと考えられる。この特徴は、PBAGポリオールよりも、PBHAGポリオールを使用した場合により顕著であるようである。本発明のTPUのMwは、軟質TPU(75以下のShore Aデュロメーター)を達成するためには、100,000ダルトン以上である必要がある。
【0048】
特定の代表的実施形態および詳細が、本発明を例示する目的で示されてきたが、種々の変更および改変が、本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンであって、ここで該ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで該ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで該熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで該熱可塑性ポリウレタンは、該ポリイソシアネートおよび該グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで該硬質セグメントは、該熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタンは、可塑剤を実質的に含まず、ASTM D2240に従って測定した場合に75未満の5秒Shore Aデュロメーターを有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットを含む、請求項3に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体は、少なくとも2個の異なるグリコールから得られる反復ユニットを含む、請求項3に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットを含む、請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、少なくとも2個の異なるグリコールから得られる反復ユニットを含む、請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
前記硬質セグメントは、前記熱可塑性ポリウレタンの総重量の18重量%〜25重量%に相当する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリウレタンは、150,000〜300,000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
前記グリコール鎖伸長剤は、エチレングリコールである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
前記エチレングリコールは、もっぱら鎖伸長剤として使用される、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項13】
前記ポリイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項14】
前記芳香族ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)、m−キシレンジイソシアネート、フェニレン−1−4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、およびトルエンジイソシアネートからなる群より選択される、請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項15】
前記芳香族ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)である、請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項16】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ポリ(ブチレンヘキシレンアジペート)グリコールである、請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項17】
前記硬質セグメントは、前記熱可塑性ポリウレタンの総重量の20重量%〜22重量%を表し、ここで該熱可塑性ポリウレタンは、150,000〜300,000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、ここで前記グリコール鎖伸長剤は、エチレングリコールであり、ここで前記ポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)であり、そしてここで前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ポリ(ブチレンヘキシレン)グリコールである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項18】
ウェルトおよびインソールリブによってアウトソールシェルに固定されているアッパーを有する履き物であって、ここで該アッパーは、腰革および爪革を含み、ここで該アウターシェルは、空隙を規定し、ここで該ウェルトは、該アッパー、該インソール、および該アウトソールシェルに取り付けられかつ相互連結し、ここで該空隙は、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンで満たされ;ここで該ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで該ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで該熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで該熱可塑性ポリウレタンは、該ポリイソシアネートおよび該グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで該硬質セグメントは、該熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する、履き物。
【請求項19】
アッパーおよびソールを有する履き物であって、ここで該ソールは、アウトソール部分およびミッドソール部分から構成され、ここで熱可塑性ポリウレタン層は、該アウトソール部分を該ミッドソール部分に固定し、ここで該アウトソールは、固体エラストマー物質から構成され、ここで該ミッドソール部分は、吹き出されたポリウレタン組成物から構成され、そしてここで該熱可塑性層は、(1)ヒドロキシル末端化中間体、(2)ポリイソシアネート、ならびに(3)エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択されるグリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成され;ここで該ヒドロキシル末端化中間体は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル中間体およびヒドロキシル末端化ポリエステル中間体からなる群より選択され;ここで該ヒドロキシル末端化中間体は、分枝状グリコールから得られる反復ユニットから構成されるか、または少なくとも2個の異なる反復ユニットから構成され;ここで該熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで該熱可塑性ポリウレタンは、該ポリイソシアネートおよび該グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み;そしてここで該硬質セグメントは、該熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する、履き物。
【請求項20】
溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維および溶融紡糸ポリエステル繊維から構成される織物であって、ここで該溶融紡糸熱可塑性ポリウレタンは、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンである、織物。
【請求項21】
成形物品を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融点より高い温度へと加熱する工程であって、ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンから構成される、工程;(b)該熱可塑性ポリウレタン組成物を、型へと射出成形する工程;(c)該型中の該熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融点より低い温度へと冷却して、該成形物品を製造する工程;ならびに(d)該成形物品を該型から外す工程、を包含する、プロセス。
【請求項22】
熱可塑性ポリウレタン組成物であって、ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、実質的に可塑剤を含まず、そして以下の特徴:
(a)15〜30重量%の硬質セグメント含有量;
(b)ASTM D2240に従って5秒後に測定した場合、75 Shore Aデュロメーター未満の硬度;
(c)ASTM D412に従って200%歪みにおいて測定される場合、15%未満の引張り歪み;
(d)少なくとも170℃のKofler融解点;および
(e)ポリスチレン標準物質を使用してゲル浸透クロマトグラフィーに従って測定される場合、100,000〜600,000ダルトンの重量平均分子量、
を有する、熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項23】
前記組成物は、可塑剤を含まず、そして以下の特徴:
(a)70 Shore Aデュロメーター未満の硬度;
(b)10%未満の引張り歪み;
(c)185℃より高い融解点;および
(d)100,000〜300,000ダルトンの重量平均分子量、
を有する、請求項22に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項24】
前記組成物は、以下の特徴:
(a)65 Shore Aデュロメーター未満の硬度;
(b)5%未満の引張り歪み;および
(c)少なくとも200℃の融解点、
を有する、請求項23に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。

【公表番号】特表2011−500926(P2011−500926A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530186(P2010−530186)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/080600
【国際公開番号】WO2009/055361
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】