説明

軟質ポリウレタンフォームおよびその製造方法

【課題】
車両用クッション、シートバックとして低密度化、強固な機械物性、耐久性を有する軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、前記軟質ポリウレタンフォームのコア密度が25〜35kg/m3の範囲内にあり、且つ、 前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、70〜90質量%のジフェニルメタンジイソシアネート(A−1)と、10〜30質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(A−2)とを含有するものであり、かつ、(A−1)が2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2−ジフェニルメタンジイソシアネートを50〜100%含有することを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームに関し、より詳しくは、車両用シートバックおよび車両用シートクッションに好適に使用することが可能な軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軟質ポリウレタンフォームは、クッション性に優れていることから、家具等のクッション部材などのほか、自動車シートにも広く使用されている。
【0003】
フォーム物性、成形性及び表面キュア性などに優れた軟質ポリウレタンフォームの製造方法として、具体的には例えば、ポリヒドロキシル化合物、有機ポリイソシアネート、触媒、整泡剤、発泡剤(水)及び添加剤を用いて反応させる方法が提案されており、 軟質ポリウレタンフォームとして、トルエンジイソシアネートをイソシアネート成分に用いた技術が既に広く知られている(特許文献1)。しかしながら、トルエンジイソシアネートの凝固点は常圧下で約17℃と高く、冬場に固化してしまうために保温、温調が必要である。また、生産場所では、トルエンジイソシアネートに起因する作業者の健康状態が問題となるときもある。
【0004】
そこで、蒸気圧の低いジフェニルメタンジイソシアネートをポリイソシアネート成分に用いた軟質ポリウレタンフォームも提案されている(特許文献2)。しかしながら、従来のジフェニルメタンジイソシアネートの主成分である4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの凝固点は常圧下で約38℃とトルエンジイソシアネートに比べ更に高く、プレポリマー化等の前処理が必要であり、その結果として非常に高粘度となるため、作業性の悪化や生産設備条件による制限等の問題点があった。また、全ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下2,2’−MDIと略す)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下2,4−MDIと略す)および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下4,4’−MDIと略す)、総称として以下ピュアMDIと略す)中の2,2’−MDIおよび2,4−MDIの含有量(以下アイソマー比と略す)が低い場合は、貯蔵安定性が悪化する等の問題があった。
【0005】
そのため、軟質ポリウレタンフォーム用MDIイソシアネートとして、アイソマー比、および全イソシアネート中(ピュアMDIおよびポリメリックMDI)のピュアMDIの量(以下ジ含量と略す)が高い有機ポリイソシアネートをポリオールで変性したものを使用したものが存在する(特許文献3)。しかしながら、イソシアネート成分をポリオールで変性することにより、粘度が高くなり、NCO含量が低くなるため、低密度でかつ高い弾性性能などを有する軟質ポリウレタンフォームを得ることは非常に困難であった。さらに、イソシアネート組成物中の塩素イオン濃度について記載されているものではなかった。

【0006】
これまでの発明においては、有機ポリイソシアネート成分としてジフェニルメタンジイソシアネートのみを用いると車両用シートバックとして用いられるような低密度品、すなわちコア密度として25−35kg/m3の軟質ウレタンフォームの成形は困難であった。つまり、フォグリングに耐ええるような機械物性、クッション材としての耐久性などを満足した軟質ポリウレタンフォームはできなかった。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−172356号公報
【特許文献2】特開2005−194486号公報
【特許文献3】WO2008/136179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の課題を鑑み、車両用クッション、シートバックとして低密度化、強固な機械物性、耐久性を有する軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめて前記目的を達成することができる軟質ポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法は、以下のものである。
(1) 有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、前記軟質ポリウレタンフォームのコア密度が25〜35kg/mの範囲内にあり、且つ、 前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、70〜90質量%のジフェニルメタンジイソシアネート(A−1)と、10〜30質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(A−2)とを含有するものであり、かつ、(A−1)が2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2−ジフェニルメタンジイソシアネートを50〜100%含有することを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
(2) 前記ジフェニルメタンジイソシアネート(A−1)が、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2−ジフェニルメタンジイソシアネートを50〜90%有し、NCO含量が32%以上かつ塩素イオン濃度が5ppm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
(3) 前記ポリオール(B)が、2〜4の範囲内の公称平均官能基数を有しており、且つ3000〜8000の範囲内の数平均分子量を有しているものであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
(4) コア密度が25〜35kg/m、湿熱圧縮永久歪みが25%以下、伸び率が100%以上、引裂き強度が4.5N/cm以上、25%圧縮応力が80〜120Nの範囲であることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれか1つに記載の軟質ポリウレタンフォーム。
(5) 前記(1)から(4)のいずれか1つに記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。

【発明の効果】
【0011】
本発明における軟質ポリウレタンフォームは、イソシアネート原料として環境に優し尾ピュアMDI・ポリメリックMDIのみを使用し、コア密度25〜35kg/m3、湿熱圧縮永久歪みが25%以下、伸び率が100%以上、引裂き強度が4.5N/cm以上、25%圧縮応力が80〜120Nの物性を有する。これにより、良好な乗り心地を有し、かつフォグリングに耐え得る車両用シートクッションおよびシートバック用軟質ポリウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0012】
本発明における軟質ポリウレタンフォームを製造する場合には、揮発性が高く人体に有害であるためにトリレンジイソシアネートを用いていないため、環境にも優しい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記軟質ポリウレタンフォームのコア密度が25〜35kg/m3の範囲内にあり、且つ、 前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、70〜90質量%のジフェニルメタンジイソシアネート(A−1)と、10〜30質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(A−2)を含有するものであることを特徴とするものである。さらに、前記ジフェニルメタンジイソシアネート(A−1)が、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2−ジフェニルメタンジイソシアネートを50〜100%有しているものであることが特徴とする。
【0015】
また、このような有機ポリイソシアネート(A)におけるイソシアネート基含有量(NCO含有量)は32質量%以上の範囲であることが好ましい。かかるNCO含有量が前記下限未満では、発泡倍率が低下してしまい低密度化しにくくなる傾向にある。
【0016】
本発明にかかるピュアMDIにおいては、アイソマーMDIの含量が50〜100質量%であることが必要であり、55〜100質量%であることがより好ましく、55〜65質量%であることが特に好ましい。
【0017】
本発明にかかるピュアMDIにおけるアイソマーMDIの比率が50質量%未満では得られる軟質ウレタンフォームの25%圧縮応力が高くなり、また湿熱圧縮歪みは25%を超えてしまうため軟質ポリウレタンフォームとして適さなくなる。また、アイソマーMDIの含量は90質量%を超えると湿熱圧縮歪みは25%を超えてしまうため90質量%以下が好ましい。
【0018】
このような本発明にかかるアイソマーMDIは、従来は生産技術上の問題から入手が困難であったものの近年は入手することが可能となり、様々な組成の有機ポリイソシアネートを得ることができる。
【0019】
前記ジフェニルメタンジイソシアネートと前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとを反応せしめる合成法としては特に制限されるものではなく、MDIとポリオールを全量仕込みプレポリマー化する方法、MDIの一部とポリオールを反応させてから残りのMDIを混合する方法等が適用できる。
【0020】
なお、流れ性、硬さ、発泡速度調整等の目的で他のイソシアネートを一部併用することもできる。具体例としては、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネートや、これらジイソシアネートのビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、カルボジイミド変性体、ポリオール変性体が挙げられる。
【0021】
本発明にかかるポリオール(B)としては、特に限定されないが、軟質ポリウレタンフォームとしての物性を発現しやすい、公称平均官能基数が2〜6かつ数平均分子量が3,000〜8,000のポリエーテルポリオールを主体とするものが好ましい。
【0022】
このようなポリエーテルポリオールとしては、公知のものが使用でき、例えば、数平均分子量700未満の低分子量ポリオール類、低分子量ポリアミン類、低分子量アミノアルコール類等を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドや、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを付加させて得られるものが挙げられる。このような開始剤としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール類;アニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子量アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の低分子量アミノアルコール類等が挙げられる。
【0023】
このようなポリエーテルポリオールは、水;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリオール類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等のアミノアルコール類;或いはエチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、トリエチレンテトラアミン、アニリン、トルイレンジアミン、メチレンビスアニリン等のアミン類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等をブロック又はランダムに開環付加させて得ることもできる。
【0024】
また、硬さ調整を目的として、ポリオール中でビニル系モノマーを通常の方法で重合せしめて製造したポリマーポリオールを更に併用することができる。このようなポリマーポリオールとしては、前記と同様のポリエーテルポリオールを用い、ラジカル開始剤の存在下でビニル系モノマーを重合させ、安定分散させたものが挙げられる。また、ビニル系モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ヒドロキシアルキル、メタアクリレート、アルキルメタアクリレートが挙げられ、中でもアクリロニトリル、スチレンが好ましい。このようなポリマーポリオールの具体例としては、旭硝子ウレタン社製のEL−910、EL−923、三洋化成工業社製のFA−728R等が挙げられる。
【0025】
本発明に使用される触媒(C)としては、当業界で公知の各種ウレタン化触媒や三量化触媒を用いることができる。代表例としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の三級アミン、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の反応型三級アミン又はこれらの有機酸塩、1−メチイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等の三量化触媒が挙げられる。反応をマイルドに、かつ、高キュア性のバランスから、触媒として少なくともイミダゾール系とエーテル基含有三級アミン化合物を用いることが好ましく、特に好ましい触媒は1,2−ジメチルイミダゾールとビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテルとの組み合わせである。
【0026】
本発明に使用される発泡剤(D)はイソシアネート基と水との反応で発生する炭酸ガスにより発泡させるものであるが、低密度化を目的に二酸化炭素を液状で混合し発泡時に気化発泡する方式を併用することもできる。水の量はポリイソシアネート組成物100質量部に対し2〜20質量部が好ましい。液化炭酸ガスを併用する場合はその量としてポリイソシアネート組成物100質量部に対し0.5〜6質量部が好ましい。
【0027】
本発明に使用される整泡剤(E)は当業界で公知の有機珪素系界面活性剤であり、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSZ−1328E、SZ−1325E、SZ−1336E、SZ−1346E、モーメンティブ社製のY−10366、L−3430、L−3420、L−3151、L−3415、エボニック社製のB−8737LF2、B−8724LF2、B−8734LF2、B−8715LF2、信越化学社製のF−122等が挙げられる。これら整泡剤の量はポリイソシアネート組成物100質量部に対し0.1〜3質量部が好ましい。
【0028】
また、本発明にはセルの安定化を目的としてジエタノールアミン又はトリエタノールアミンを添加することができる。好ましい添加量はポリオール成分100質量部に対し0.1〜5質量部である。
【0029】
本発明は更に必要に応じ、トリクロロエチルホスフェート、トリクロロプロピルホスフェート、これらの縮合タイプに代表されるリン−ハロゲン系液状難燃剤、メラミン粉末に代表される固体難燃剤、ケッチェンブラックに代表される導電性カーボン、ジオクチルフタレート等の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、内部離型剤、その他の助剤を用いることができる。なおこれらの助剤は通常ポリオールに添加して用いられるが、イソシアネートと反応し得る活性水素を有しない助剤はポリイソシアネート組成物にあらかじめ混合しておくこともできる。
【0030】
本発明のポリイソシアネート組成物中の全イソシアネート基と水を含むイソシアネート反応性化合物中の全イソシアネート反応性基の当量比(NCO/NCO反応性基)としては0.5〜1.5(イソシアネートインデックス(NCO INDEX)=50〜150)であることが好ましく、0.7〜1.2(イソシアネートインデックス(NCO INDEX)=70〜120)であることがより好ましい。
【0031】
本発明の軟質ポリウレタンモールドフォームの製造方法は、上記(A)〜(E)の軟質ポリウレタン発泡原液を金型内に注入し、その後発泡硬化させることを特徴とする軟質ポリウレタンモールドフォームの製造方法が使用できる。
【0032】
上記発泡原液を金型内に注入する際の金型温度としては、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、上限として通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。上記発泡原液を金型内に注入する際の金型温度が30℃未満であると、キュア性が低下し、一方、70℃より高いとフォーム表面が荒れ、また、エネルギーコストの増加による経済的なデメリットとなりうる。
【0033】
上記発泡原液を金型内で硬化させる時間としては、通常3分以上、好ましくは4分以上、上限として通常8分以下、好ましくは6分以下である。上記発泡原液を発泡硬化させる際の硬化時間が3分より短いと、キュア性が低下する場合があり、一方、8分より長いと、エネルギーコストがかさみ、また、得られるフォームがシュリンクする場合もある。
【0034】
発泡機により得られた混合液を金型内に吐出し、発泡硬化させ、その後脱型が行われる。上記脱型を円滑に行うため、金型には予め離型剤を塗布しておくことも好適である。使用する離型剤としては、成形加工分野で通常用いられる離型剤を用いればよく、特に限定されるものではないが、発泡原液の不要な発泡を抑制する観点から、本発明においてはワックス溶剤系離型剤を用いることが好ましい。また、脱型後の製品はそのままでも使用できるが、フォームのシュリンク(収縮)を防ぐため、従来公知の方法で圧縮又は、減圧下でセルを破壊し、製品の外観、寸法を安定化させることもできる。
【実施例1】
【0035】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。また、実施例及び比較例において用いた原料は以下のとおりである。
【0036】
有機ポリイソシアネートを調整するにあたり、使用した原料を以下に記載する。
MDI−1:アイソマーMDIを94%、4,4’−MDIを6%含有するジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業社製
MDI−2:4,4’−MDIを100%含有するジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業社製
MDI−3:4,4’−MDIを31%、ポリメリックMDIを69%含有するジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業社製
【0037】
ポリオールプレミックスを調整するにあたり、使用した原料を以下に記載する。
<ポリエーテルポリオール>
P−1:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数3、数平均分子量6000、三洋化成工業社製 品名FA−921
P−2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数4、数平均分子量8000、三洋化成工業社製 品名KC−285
P−3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数3、数平均分子量3500、三洋化成工業社製 品名FA−103
<触媒>
C−1:トリエチレンジアミン33%DPG溶液、東ソー社製 品名TEDA−L33
C−2:70%ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、30%ジプロピレングリコール、東ソー社製 品名Toyocat−ET
<架橋材>
DEA:ジエタノールアミン、三井化学社製
<整泡剤>
S−1:シリコーン系整泡剤、モーメンティブ製 品名Y−10366
【0038】
攪拌機を備えた反応器に、P−1を70kg、P−2を30kg、P−3を5kg、水を5.8kg、C−1を0.4kg、C−2を0.1kg、S−1を1kg、DEAを0.5kg仕込み、均一に混合を行うことによりポリオールプレミックスを得ることができた。
【0039】
クラウス社製高圧発泡機を用い、以下の要領で軟質ポリウレタンモールドフォームを製造した。原料温度23±2℃に温調されたポリオールプレミックス、イソシアネート成分を所定比率の下、高圧混合させ60±2℃に温調された金型(400mm×400mm×70mm厚)に吐出した。5分後に金型から脱型しフォームをクラッシングした。得られたフォームは温度23±2度かつ相対湿度50±5%の下、16時間以上放置した。その後、各物性測定に必要な大きさに裁断し、その物性を測定した。その結果を表1に示す。
物性測定はJIS K6400に準拠する。
また、当該JIS中の「硬さ測定方法A」において、フォーム厚みの25%圧縮したときの荷重を25%圧縮応力と称す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるように、実施例1〜3で軟質ポリウレタンフォームを得ることができた。つまり(A−1)の割合が、有機ポリイソシアネート中の70〜90%のとき、引裂き強度が4.5N/cm以上、伸び率100%以上、湿熱圧縮残留歪みが25%以下を確保する軟質フォームが得られる。一方、比較例1のポリイソシアネート組成物を用いた場合は、フォームが陥没してしまい金型内に軟質ポリウレタンフォームを良好に充填することができなかった。また、比較例2のポリイソシアネート組成物を用いた場合ではフォームの発泡倍率が低くなってしまい、充分な成形性を確立することはできなかった。この現象は、NCO含量が32%より低いことが理由とされる。
【0042】
【表2】

【0043】
表2においては、(A−1)に対するアイソマーMDIの割合が50%以上であるとき、引裂き強度が4.5N/cm以上、伸び率100%以上、湿熱圧縮残留歪みが25%以下を確保する軟質フォームが得られる。50%未満であるときは、25%圧縮応力が120Nを越えてしまい、本目的とする車両用シートバックとしては使用することが困難となる。

【0044】
【表3】



【0045】
表3においては、有機ポリイソシアネート中の塩素イオン濃度が5ppm以上であるときはキュア性が悪くなるため、軟質ポリウレタンフォームをえることができなかった。一般的には、キュア性が悪いとき、ウレタン化触媒量を増やすことによりキュア性の改善することができるが、触媒量が多いと、得られた軟質ポリウレタンフォームから触媒臭が発生し、ウレタンフォーム製品として製品価値をしめさない。また、触媒は原料中で経済的にも大きなウエイトを占めるため、キュア性の解決に触媒量を増やすことは好ましくない。
なお、塩素イオン濃度については、ICP等を用いた周知の測定方法で測定することが可能である。
【0046】
これまでに示した結果から明らかなように、本発明のポリイソシアネート組成物を用いて本発明の方法によって得られた軟質ポリウレタンフォームはいずれも、上記の諸物性(フォーム物性)について優れたものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
したがって、本発明により得られる軟質ポリウレタンフォームは耐久性、サポート性等に優れており、ソファー等の家具用クッション材、衣料用、自動車や鉄道車両用クッション材、自動車内装材、マットレス、枕等の寝具用、吸音材、遮音材、家庭電器製品用、電子部品用、工業用シール材、梱包材、日用雑貨用等に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、前記軟質ポリウレタンフォームのコア密度が25〜35kg/mの範囲内にあり、且つ、 前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、70〜90質量%のジフェニルメタンジイソシアネート(A−1)と、10〜30質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(A−2)とを含有するものであり、かつ、(A−1)が2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2−ジフェニルメタンジイソシアネートを50〜100%含有することを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記ジフェニルメタンジイソシアネート(A−1)が、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2−ジフェニルメタンジイソシアネートを50〜90%有し、NCO含量が32%以上かつ塩素イオン濃度が5ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリオール(B)が、2〜4の範囲内の公称平均官能基数を有しており、且つ3000〜8000の範囲内の数平均分子量を有しているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
コア密度が25〜35kg/m、湿熱圧縮永久歪みが25%以下、伸び率が100%以上、引裂き強度が4.5N/cm以上、25%圧縮応力が80〜120Nの範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2011−46907(P2011−46907A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199104(P2009−199104)
【出願日】平成21年8月29日(2009.8.29)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】