説明

軟質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 高密度化しても低硬度であり、黄変が小さい軟質ポリウレタンフォームの製造方法を見出す。
【解決手段】 ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、触媒、発泡剤、および整泡剤の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、(A)中に、(A)の合計質量に基づいて、下記ポリオール(a1)を20〜100質量%、下記ポリオール(a2)を0〜80質量%含有する軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
(a1):官能基数が2であり、末端に炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が特定の1級水酸基であるポリオール。
(a2):官能基数が3であり、末端に炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が特定の1級水酸基であるポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用に好適な軟質ポリウレタンフォームおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールとポリイソシアネートを、水及び触媒の存在下に反応させて得られるものであり、優れた軽量性、クッション性及び耐久性を有する。このような特徴を活かし、軟質ポリウレタンフォームは肩パット、ブラジャーパットなどの衣料用として用いられる。
【0003】
衣料用軟質ポリウレタンフォームとしては、高密度化しても低硬度〔例えば硬さ(25%−ILD)が100N/314cm2以下〕であることが求められる。また、熱プレス時や太陽光、NOxガスによる黄変が小さいことが望ましい。黄変が小さく衣料用に好適な軟質ポリウレタンフォームが知られている(特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2006−328095号公報
【特許文献2】特開2007−23201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献に記載の方法では、黄変が小さい点では改善されているものの、依然として、高密度化した場合は低硬度な軟質ウレタンフォームが得られないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれらの問題点を解決するため鋭意検討した結果、末端1級水酸基化率の高い特定のポリオールを用いることにより解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記2発明である。
(I) ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)、および整泡剤(E)の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、(A)中に、(A)の合計質量に基づいて、下記ポリオール(a1)を20〜100質量%、下記ポリオール(a2)を0〜80質量%含有することを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
ポリオール(a1):官能基数が2であり、末端に炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオール。
ポリオール(a2):官能基数が3であり、末端に炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオール。
−CHCH2OH
| (1)

[式中、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。]
(II)上記記載の製造方法により得られ、衣料用である軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法により、従来の方法によるものに比べて、低硬度な軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。また、熱プレス時、太陽光、NOxガスによる黄変が小さいフォームを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前記の一般式(1)で表される1級水酸基におけるRの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基等の分岐アルキル基;フェニル基;p−メチルフェニル基等のアルキル置換フェニル基;クロロメチル基、ブロモメチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基等のハロゲン原子置換アルキル基;p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基等のハロゲン原子置換フェニル基等、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらの中で好ましくは直鎖または分岐のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0008】
本発明において、ポリオール成分(A)中に含有するポリオール(a1)、および必要により含有するポリオール(a2)〔以下ポリオール(a1)と(a2)を総称する場合、(a)と記載する〕は、いずれも、末端に炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイド(以下アルキレンオキサイドをAOと略記する。)が付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基のうち、前記一般式(1)で表される1級水酸基の割合(末端1級OH化率)が40%以上である。末端1級OH化率は、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。(a)の末端1級OH化率が高くなるほど、硬化性に優れ、高フォーム物性となる。一方、末端1級OH化率が40%未満では、ポリウレタン化反応時に、(A)とポリイソシアネート成分(B)との反応性が低く、硬化性が悪かったり、フォーム物性が低かったりする。反応性を高めるために有機スズ化合物を触媒として用いると、フォームが黄変しやすくなる。また、末端に炭素数2のAO(すなわちエチレンオキサイド、以下EOと略記する)が付加されてなるポリエーテルポリオールでは、末端1級OH化率が40%以上であっても、親水性が高いため、フォーム物性の湿度依存性が大きくなる。さらに、末端に1,2−AO以外の炭素数3以上のAOが付加されてなるポリエーテルポリオールでは、末端1級OH化率がほぼ0%となり、イソシアネートとの反応性が低く、硬化性が悪かったり、フォーム物性が低くなったりすることがあるか(例えば2,3−ブチレンオキサイド付加物)、末端1級OH化率が100%となっても、常温で固状となり、取り扱いが容易でないことがある(例えば1,4−ブチレンオキサイド付加物)。
【0009】
本発明において、末端水酸基の1級OH化率は、予め試料をエステル化の前処理をした後に1H−NMR法により算出する。1H−NMR法の詳細を以下に具体的に説明する。
<試料調製法>
測定試料約30mgを直径5mmの1H−NMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶媒を加え溶解させる。その後、約0.1mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し25℃で約5分間放置して、ポリオールをトリフルオロ酢酸エステルとし、分析用試料とする。
ここで重水素化溶媒とは、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させることのできる溶媒を適宜選択する。
【0010】
<NMR測定>
通常の条件で1H−NMR測定を行う。
<末端水酸基の1級OH化率の計算方法>
1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号は4.3ppm付近に観測され、2級水酸基の結合したメチン基由来の信号は5.2ppm付近に観測されるから、末端水酸基の1級OH化率は下式〔1〕により算出する。
1級OH化率(%)=[r/(r+2s)]×100 〔1〕
ただし、
r:4.3ppm付近の1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号の積分値
s:5.2ppm付近の2級水酸基の結合したメチン基由来の信号の積分値
である。
【0011】
本発明におけるポリオール(a1)の官能基数は2である。本発明においてポリオールの官能基数は、出発物質の官能基数と同一であるとみなす。
ポリオール(a1)は、2価の活性水素化合物にAOを付加して得られる。2価の活性水素化合物としては、炭素数2〜20の2価アルコール(脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;および脂環式ジオール、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルキレングリコール)、2価フェノール(ピロガロール、ハイドロキノンおよびフロログルシン等の単環2価フェノール)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびビスフェノールスルホン等)、炭素数1〜20のアルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン)、炭素数4〜20の脂環式モノアミン(例えば、シクロヘキシルアミン)、炭素数6〜20の芳香族モノアミン(例えば、アニリン、トルイジン)、炭素数4〜18の脂肪族2価カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸)、炭素数8〜18の芳香族2価カルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸)、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらの中で好ましくは、炭素数2〜20の2価アルコールである。
【0012】
本発明におけるポリオール(a2)の官能基数は3であり、3価の活性水素化合物にAOを付加して得られる。3価の活性化合物としては、炭素数3〜20の3価アルコール(脂肪族トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどのアルカントリオール)、炭素数2〜20の3価のアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびイソプロパノールアミン)、アミノエチルピペラジン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらの中で好ましくは、炭素数3〜20の3価アルコールである。
【0013】
ポリオール(a)において、活性水素化合物に付加させるAOとしては、炭素数2〜8のものが好ましく、例えば、EO、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、1,3−、1,4−および2,3−ブチレンオキサイド、1,2−、1,4−および2,3−ペンテンオキサイド、スチレンオキサイド並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
AOの付加形式としては、活性水素化合物の分子末端に1,2−AOが付加されたものである。AOとして1,2−AOのみを単独もしくは併用して用いてもよいし、分子内部に1,2−AO以外のAOが付加されてなるものでもよい。
活性水素化合物に付加するAOとして、2種以上のAOを用いる場合、付加形式としては、ブロック付加、ランダム付加のいずれでもよい。1,2−AOとしてはPOが好ましく、必要により内部に付加される1,2−AO以外のAOとしては、EOが好ましい。
【0014】
本発明に用いるポリオール(a)中の、内部オキシエチレン単位の含有量は、好ましくは15質量%(以下、%はとくに断りの無い限り、質量%を意味する。)以下であり、さらに好ましくは10%以下、とくに好ましくは5%以下、最も好ましくは0%である。オキシエチレン単位の含有量が15%以下であると、得られるポリウレタンフォームの耐湿物性が良好である。
【0015】
本発明に用いるポリオール(a)の、水酸基価(mgKOH/g)は、好ましくは20〜200である。上限はさらに好ましくは90、とくに好ましくは60である。下限はさらに好ましくは25、とくに好ましくは30である。200以下であると成形性が良好なポリウレタンフォームが得られ、20以上であるとポリオール成分(A)が低粘度となり成形時のハンドリングが良好である。
【0016】
末端1級OH化率が40%以上の(a)を得る方法としては、例えば、前記活性水素化合物に、必要により、従来のポリオールの製造に通常用いるアルカリ触媒(水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等)の存在下でAO(1,2−AO以外のものを含む)を付加させ、次いでアルカリ触媒を除去した後、特定の触媒(α)の存在下で、炭素数3以上の1,2−AOを付加させることにより得られる。
なお、アルカリ触媒を用いて1,2−AOを付加させた場合の末端1級OH化率は極めて低く、例えば水酸化カリウムを用いた場合、通常3%以下である。
【0017】
上記特定の触媒(α)としては、特開2000−344881号公報に記載のものが挙げられ、具体的には、フッ素原子、(置換)フェニル基および/または3級アルキル基が結合したホウ素もしくはアルミニウム化合物であり、トリフェニルボラン、ジフェニル−t−ブチルボラン、トリ(t−ブチル)ボラン、トリフェニルアルミニウム、ジフェニル−t−ブチルアルミニウム、トリ(t−ブチル)アルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルアルミニウムなどが挙げられる。
これらの中で好ましいものは、トリフェニルボラン、トリフェニルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウムであり、さらに好ましいのはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウムである。
AOの付加条件についても上記公報に記載の方法と同様でよく、例えば、生成する開環重合体に対して、好ましくは0.0001〜10%、さらに好ましくは0.001〜1%の上記触媒を用い、好ましくは0〜250℃、さらに好ましくは20〜180℃で反応させる。
【0018】
本発明において、ポリオール成分(A)の合計質量に基づいて、ポリオール(a1)が20〜100%、ポリオール(a2)が0〜80%であることが望ましい。さらに好ましくは(a1)が30〜90%、(a2)が10〜70%、とくに好ましくは、(a1)が40〜80%、(a2)が20〜60%である。(a1)が20%未満、あるいは(a2)が80%を超えると低硬度なフォームが得られない。また、(a1)が90%以下であると、機械強度に優れたフォームが得られる。
【0019】
本発明に用いるポリオール成分(A)中には、(a1)、(a2)以外に、必要により他の活性水素化合物(b)を併用することができる。
他の活性水素化合物(b)としては、多価アルコール、アミン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、これら以外の各種ポリオール、並びにこれらの混合物であって、(a1)および(a2)以外のもの等が挙げられる。
【0020】
多価アルコールとしては、前記炭素数2〜20の2価アルコール、前記炭素数3〜20の3価アルコール、炭素数5〜20の4〜8価またはそれ以上の多価アルコール(脂肪族ポリオール、例えば、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトールなどのアルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物;ならびにショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシドなどの糖類およびその誘導体)が挙げられる。
【0021】
アミンとしては、脂肪族アミンとして、前記炭素数2〜20の3価のアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびイソプロパノールアミン)、前記炭素数1〜20のアルキルアミン、炭素数2〜6のアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン)、炭素数4〜20のポリアルキレンポリアミン(アルキレン基の炭素数が2〜6のジアルキレントリアミン〜ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン)が挙げられる。
また、炭素数6〜20の芳香族ポリアミン(例えば、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリンおよびジフェニルエーテルジアミン);前記炭素数4〜20の脂環式モノアミン、炭素数4〜20の脂環式ポリアミン(例えば、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミンおよびジシクロヘキシルメタンジアミン);炭素数4〜20の複素環式アミン(例えば、ピペラジン、アミノエチルピペラジンおよび特公昭55−21044号公報記載のもの)等が挙げられる。
【0022】
ポリエーテルポリオールとしては、前記多価アルコール、前記アミン、ポリカルボン酸(前記炭素数4〜18の脂肪族2価カルボン酸、炭素数8〜18の芳香族2価カルボン酸など)等の活性水素化合物の前記のAO付加物であって、(a1)および(a2)に該当しないもの(多価アルコールにアルカリ金属触媒を用いてAOを付加して得られる末端1級OH化率が40%未満のポリオール等)が挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、前記の多価アルコール(とくに、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;前記ポリエーテルポリオール;またはこれらとグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価又はそれ以上の多価アルコールとの混合物)と、前記ポリカルボン酸もしくはその無水物、低級アルキル(アルキル基の炭素数:1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体(例えば、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テレフタル酸ジメチル等)、または前記カルボン酸無水物およびAOとの縮合反応物;そのAO(EO、PO等)付加反応物;ポリラクトンポリオール、例えば前記多価アルコールを開始剤としてラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるもの;ポリカーボネートポリオール、例えば前記多価アルコールとアルキレンカーボネートとの反応物;等が挙げられる。
【0024】
これら以外の各種ポリオールとしては、重合体ポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリジエンポリオールおよびそれらの水添物;アクリル系ポリオール、特開昭58−57413号公報及び特開昭58−57414号公報等に記載された水酸基含有ビニル重合体;ヒマシ油等の天然油系ポリオール;天然油系ポリオールの変性物;等が挙げられる。
上記重合体ポリオールは、通常用いられるものが使用でき、前記ポリエーテルポリオールの少なくとも1種中で、ラジカル重合開始剤の存在下、芳香族炭化水素モノマー(スチレン等)、不飽和ニトリル(アクリロニトリル等)、(メタ)アクリル酸エステル(メチルアクリレート等)などのビニルモノマーを重合し、その重合体微粒子をポリオール中に安定分散させたものである。重合方法の具体例としては、米国特許第3383351号明細書、特公昭39−25737号公報等に記載の方法が挙げられる。重合体ポリオールの合成温度は、好ましくは80〜150℃である。重合体ポリオール中の重合体微粒子の含有量は、10〜60%が好ましく、重合体微粒子の粒子径は、0.1〜20μmが好ましい。
【0025】
(A)中の他の活性水素化合物(b)の含有量は、30%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、10%以下である。(b)が30%以下であると低硬度の軟質フォームが得られる。
【0026】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、ポリイソシアネート成分(B)としては、通常ポリウレタンフォームに使用される有機ポリイオシアネートはすべて使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物など)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0027】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族イソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、カルボジイミド変性MDIなどが挙げられる。
【0029】
これらの中で好ましくは、芳香族ポリイソシアネートであり、さらに好ましくは、TDI、粗製TDI、MDI、粗製MDI、およびこれらのイソシアネートの変性物から選ばれる1種以上であり、とくに好ましくは、TDIである。
【0030】
本発明の製造方法における触媒(C)としては、ウレタン化反応を促進するすべての触媒を使用でき、例えば3級アミン(トリエチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等)、カルボン酸金属塩(酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛等)が挙げられる。これらの中では、太陽光、NOxガスによる黄変が少なくなることから、有機スズ化合物以外の触媒が好ましく、さらに好ましくは、3級アミンである。
(C)の使用量は、ポリオール成分(A)100部に対して、好ましくは0.01〜5部、さらに好ましくは0.1〜2部である。上記および以下において、部は質量部を意味する。
【0031】
本発明の製造方法における発泡剤(D)としては、水を使用するのが好ましい。その他、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素、液化炭酸ガス等を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(D)として水のみを単独で用いる場合の水の使用量は、ポリオール成分(A)の合計質量に対して、好ましくは1.5〜3.0%未満、さらに好ましくは2.0〜2.9%である。1.5%以上であるとクッション性に優れたフォームが得られ、3.0%未満であると高密度で機械強度に優れたフォームが得られる。
【0032】
水素原子含有ハロゲン化炭化水素の具体例としては、塩化メチレン、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHCFC−123、HCFC−141b、HCFC−22およびHCFC−142b);HFC(ハイドロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHFC−134a、HFC−152a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245faおよびHFC−365mfc)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、塩化メチレン、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa、HFC−365mfcおよびこれらの2種以上の混合物である。
水素原子含有ハロゲン化炭化水素を用いる場合の使用量は、(A)の合計質量に対して、好ましくは50%以下、さらに好ましくは5〜45%である。
【0033】
低沸点炭化水素は、通常沸点が−5〜50℃の炭化水素であり、その具体例としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタンおよびこれらの混合物が挙げられる。好ましくはペンタンおよびシクロペンタンである。
低沸点炭化水素を用いる場合の使用量は、(A)の合計質量に対して、好ましくは40%以下、さらに好ましくは5〜30%である。
また、液化炭酸ガスを用いる場合の使用量は、(A)の合計質量に対して、好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。
【0034】
本発明の製造方法における整泡剤(E)としては、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるものはすべて使用でき、例として、ジメチルシロキサン系整泡剤[例えば、トーレダウコーニングシリコーン(株)製の「SRX−253」等]、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤[例えば、日本ユニカー(株)製の「L−540」、「SZ−1142」、「L−3601」、デグサジャパン(株)製「B−4900」が挙げられる。好ましくは、「SZ−1142」、「B−4900」である。
(E)の使用量は、ポリオール成分(A)100部に対して、好ましくは0.5〜3部、さらに好ましくは1〜2部である。
【0035】
本発明の製造方法においては、必要により、さらに以下に述べるようなその他の添加剤を用い、その存在下で反応させてもよい。
例えば、着色剤(染料、顔料)、難燃剤(リン酸エステル類、ハロゲン化リン酸エステル類など)、老化防止剤(トリアゾール系、ベンゾフェノン系など)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系など)などの公知の補助成分の存在下で反応させることができる。ポリオール成分(A)100部に対するこれらの補助成分の使用量に関しては、着色剤は、好ましくは1部以下である。難燃剤は、好ましくは5部以下、さらに好ましくは2部以下である。老化防止剤は、好ましくは1部以下、さらに好ましくは0.5部以下である。酸化防止剤は、好ましくは1部以下、さらに好ましくは0.01〜0.5部である。
【0036】
本発明の製造方法において、ポリウレタンフォームの製造に際してのイソシアネート指数(インデックス)[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]は、好ましくは70〜130、さらに好ましくは80〜125、特に好ましくは90〜120である。
【0037】
本発明の方法による軟質ポリウレタンフォームの製造方法の具体例の一例を示せば、下記の通りである。まず、ポリオール成分(A)、触媒(C)、発泡剤(D)、整泡剤(E)、および必要により他の添加剤を所定量混合する。次いでポリウレタン発泡機または攪拌機を使用して、この混合物とポリイソシアネート成分(B)とを急速混合する。得られた混合液(発泡原液)を連続発泡して軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。また、密閉型もしくは開放型のモールド(金属製または樹脂製)に注入し、ウレタン化反応を行わせ、所定時間硬化後、脱型して軟質ポリウレタンフォームを得ることもできる。本発明は、とくに連続発泡して軟質ポリウレタンフォームを得る方法として好適である。
【0038】
本発明の製造方法により得られる軟質ポリオールをブラジャーパッドや肩パッドなどに用いられる衣料用軟質ポリウレタンフォームとして用いる場合、コアー密度は、好ましくは38kg/m3以上、さらに好ましくは39〜80kg/m3、とくに好ましくは40〜60kg/m3である。
硬さ(25%−ILD)は、好ましくは100N/314cm2以下、さらに好ましくは40〜95N/314cm2である。
黄変度(ΔYI)(測定法は後述する)は、好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0040】
実施例1〜7、比較例1〜5
表1および表2に示した発泡処方に従って、下記の発泡条件により発泡して軟質ポリウレタンフォームを得、一昼夜放置後のフォームの物性を測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0041】
(発泡条件)
BOX SIZE:350mm×350mm×300mm
材質 :木材
ミキシング方法 :ハンドミキシング
ミキシング時間 :6秒
撹拌羽回転数 :5000回転/分
原料温度 :25±1℃
【0042】
(使用原料の記号の説明)
・ポリオール成分(A)
(a1−1)プロピレングリコールにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒として用いPOを付加して得られたポリオール(水酸基価=56、末端水酸基の1級化率=70%)
(a1−2)プロピレングリコールにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒として用いPOを付加して得られたポリオール(水酸基価=34、末端水酸基の1級化率=70%)
(a2−1)グリセリンにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒として用いPOを付加して得られたポリオール(水酸基価=56、末端水酸基の1級化率=70%)
(a2−2)グリセリンにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒として用いPOを付加して得られたポリオール(水酸基価=34、末端水酸基の1級化率=70%)
(b−1)プロピレングリコールに水酸化カリウムを触媒として用いPOを付加して得られたポリオール(水酸基価=56、末端水酸基の1級化率=3%)
(b−2)グリセリンに水酸化カリウムを触媒として用いPOを付加して得られたポリオール(水酸基価=56、末端水酸基の1級化率=3%)
・ポリイソシアネート成分(B)
(B−1)TDI、NCO%=48.3(商品名:コロネートT−80、日本ポリウレタン工業(株)製)
・触媒(C)
(C−1)オクチル酸スズ(商品名:ネオスタンU−28、日東化成(株)製)
(C−2)TEDA(トリエチレンジアミン)
・発泡剤(D)
(D−1)水
・整泡剤(E)
(E−1)ジメチルシロキサン系整泡剤(商品名:SZ−1142、日本ユニカー(株)製)
(E−2):ジメチルシロキサン系整泡剤(商品名:L−540、日本ユニカー(株)製)
【0043】
フォーム物性の測定方法及び単位を以下に示す。
・コアー密度 :JIS K6400:1997に準拠、単位はkg/m3
・硬さ(25%−ILD):JIS K6400に準拠、単位はN/314cm2
・ΔYI:NOx黄変試験は、まず試験片に対し、初期値YI0をYI値測定器(分光色彩計 SD−5000 日本電色工業(株)製)で測定する。ついで、試験片をデシケータにセットし、二酸化窒素を検知管(ガステック製)で濃度測定しながらデシケータ内に50PPM充填する。その状態で24時間放置した後、試験片を取り出してYI値を測定し、ΔYI=YI−YI0の式にしたがって黄変度ΔYIを計算する。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の方法により得られる軟質ポリウレタンフォームは、ブラジャーパッドや肩パッドなどに用いられる衣料用軟質ポリウレタンフォームに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)、および整泡剤(E)の存在下に反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、(A)中に、(A)の合計質量に基づいて、下記ポリオール(a1)を20〜100質量%、下記ポリオール(a2)を0〜80質量%含有することを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
ポリオール(a1):官能基数が2であり、末端に炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオール。
ポリオール(a2):官能基数が3であり、末端に炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加されてなり、末端に位置する水酸基含有基の40%以上が下記一般式(1)で表される1級水酸基であるポリオール。
−CHCH2OH
| (1)

[式中、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。]
【請求項2】
ポリオール成分(A)の合計質量に基づいて、発泡剤(D)として水を1.5質量%以上、3.0質量%未満用いる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
触媒(C)が有機スズ化合物を含有しない請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の製造方法により得られ、衣料用である軟質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2009−132841(P2009−132841A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311439(P2007−311439)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】