説明

軟質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを開放系で反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともポリオール化合物を含み、かつ、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られる、ポリオール化合物(A)とモノオール化合物(X)の少なくとも一方を含むポリオール組成物(I)と、ポリイソシアネート組成物(II)とを金属触媒とアミン触媒とからなるウレタン化触媒、および発泡剤の存在下に、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに開放系で反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは種々の用途で使用されており、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを開放系で反応(スラブ法)させるものと、密閉系で反応(モールド法)させるものとがある。開放系での反応で得られる軟質ポリウレタンフォームは、たとえば、マットレス、ソファー用クッション等の寝具、家具分野に使用されている。また、密閉系での反応で得られる軟質ポリウレタンフォームは、たとえば、自動車用シートクッションやシートバック材に使用されている。
【0003】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、ウレタン化触媒、発泡剤、および整泡剤の存在下で行われ、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が広く用いられる。たとえば、整泡剤としてジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体を用いた軟質ポリウレタンフォームがある(特許文献1)。
【0004】
しかし、シリコーン系整泡剤は、揮発性有機化合物(VOC)を含んでいるため、異臭発生や電子部材の不具合等の原因となる。また、軟質ポリウレタンフォームに微生物を担持させて排水処理に用いる場合には、シリコーン系整泡剤によって化学的酸素要求量(COD)を増加させしまうという問題がある。さらに、軟質ポリウレタンフォームの製造では、一般的にはシリコーン系整泡剤の単価が原料の中で最も高いため、経済性が低くなる。
【0005】
防音材用途ではシリコーン系整泡剤を用いずにポリウレタンフォームを製造する方法として、分子量分布が1.02〜1.2の範囲で、かつ末端基として第1級水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いる方法が示されている(特許文献2)。しかし、得られたポリウレタンフォームの密度は80kg/m以上のため、クッション性が失われ、一般的な開放系での反応で得られる軟質ポリウレタンフォームの用途であるマットレス、ソファー用クッション等の寝具、家具分野への使用が困難である。
【0006】
密閉系の場合には、シリコーン系整泡剤を用いずに軟質ポリウレタンフォームを製造する方法として、複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)を用いて開始剤にプロピレンオキシドを開環重合させ、さらにアルカリ金属化合物触媒またはホスファゼニウム錯体化合物により末端にエチレンオキシドを開環重合させたポリオール化合物を用いる方法が示されている(特許文献3)。しかし、一般に密閉系で反応させる場合は、得られる軟質ポリウレタンフォームの体積が密閉する金型の体積よりも大きくなるように発泡状態を制御する。そのため、開放系で発泡させる場合とは反応条件が異なり、密閉系での条件を開放系で反応させる場合にそのまま適用することはできない。
以上のことから、開放系の場合において、シリコーン系整泡剤を用いずに軟質ポリウレタンフォームを製造できるような対策が望まれている。
【特許文献1】特開2001−200028号公報
【特許文献2】特開2005−301000号公報
【特許文献3】国際公開第06/054657号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを開放系で反応させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、少なくともポリオール化合物を含むポリオール組成物(I)と、ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物(II)とを、ウレタン化触媒、および発泡剤の存在下に、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに開放系で反応させる方法であって、前記ウレタン化触媒は金属触媒とアミン触媒とからなり、前記ポリオール組成物(I)は、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られるポリオール化合物(A)、および/または複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られるモノオール化合物(X)を含んでいる。
【0009】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、前記ポリオール化合物(A)が、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られた、平均水酸基数が2〜3、水酸基価が10〜90mgKOH/gのポリエーテルポリオールであるのが好ましい。
【0010】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、前記モノオール化合物(X)が、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られた、水酸基価が5〜200mgKOH/gのポリエーテルポリオールであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、開放系で反応させて軟質ポリウレタンフォームを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)とを、ウレタン化触媒と発泡剤の存在下で、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに開放系で反応させる方法である。
【0013】
<ポリオール組成物(I)>
ポリオール組成物(I)は、少なくともポリオール化合物を含み、かつポリオール化合物(A)および/またはモノオール化合物(X)を含む。
[ポリオール化合物(A)]
ポリオール化合物(A)は、複合金属シアン化物錯体触媒(以下、DMC触媒とする。)を用いて開始剤(a1)にアルキレンオキシド(a2)を開環重合させて得られる、ポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)である。したがって、ポリオール化合物(A)は、DMC触媒によりアルキレンオキシド(a2)が開環重合したポリオキシアルキレン鎖を有する。
【0014】
開始剤(a1)は、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いるポリオール化合物が得られるものであればよく、なかでも分子中に活性水素原子を2つまたは3つ有する化合物であるのが好ましい。
活性水素原子を2つ有する化合物としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。活性水素原子を3つ有する化合物としては、たとえば、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられる。
また、前記化合物にアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドを開環重合させて得られた高水酸基価のポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。ただし、高水酸基価のポリエーテルポリオールとは、水酸基1個当たりの分子量が200〜500程度、すなわち水酸基価が110〜280mgKOH/gのポリエーテルポリオールを意味する。開始剤(a1)は、前記条件を満たすポリオキシプロピレンポリオールであるのが好ましい。
開始剤(a1)は、前記化合物を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
アルキレンオキシド(a2)としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタンが挙げられる。なかでも、プロピレンオキシドのみの使用、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましく、プロピレンオキシドのみの使用がより好ましい。
ポリオール化合物(A)としては、得られる軟質ポリウレタンフォームの加湿時の耐久性が向上する点から、開始剤(a1)にプロピレンオキシドのみを開環重合させたポリオキシプロピレンポリオールを用いるのが好ましい。
【0016】
DMC触媒としては、たとえば、特公昭46−27250号公報に記載のものが使用できる。具体例としては、亜鉛ヘキサシアノコバルテートを主成分とする錯体が挙げられ、そのエーテルおよび/またはアルコール錯体が好ましい。
エーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(METB)、エチレングリコールモノ−tert−ペンチルエーテル(METP)、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(DETB)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPME)等が好ましい。
アルコールとしては、tert−ブチルアルコール等が好ましい。
【0017】
DMC触媒は、得られる軟質ポリウレタンフォームのセル荒れおよびフォームの収縮を抑える効果が高い点から、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−エチレングリコールジメチルエーテル錯体、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル錯体であるのが好ましい。
【0018】
DMC触媒により製造されるポリオール化合物は、他の触媒により製造されるポリオール化合物よりも分子量分布の狭いポリオール化合物となる。分子量分布が狭いポリオール化合物は、同程度の分子量領域(同じ水酸基価を有するポリオール)で分子量分布が広いポリオールと比べて粘度が低い。そのため、ポリオール化合物(A)は、ウレタン化反応の際に他の原料との混合性に優れており、軟質ポリウレタンフォーム製造時のフォームの安定性が高い。
【0019】
DMC触媒の使用量は、開始剤(a1)とアルキレンオキシド(a2)との合計質量を100質量部としたとき、0.001〜0.1質量部とするのが好ましく、0.003〜0.03質量部とするのがより好ましい。
DMC触媒の使用量を0.001〜0.1質量部とすれば、軟質ポリウレタンフォームの製造の際の発泡安定性が向上し、セル荒れおよびフォームの収縮を抑えられる。また、得られる軟質ポリウレタンフォームの難燃性も向上する。
【0020】
ポリオール化合物(A)の平均水酸基数は、2〜3であるのが好ましい。ただし、平均水酸基数とは、開始剤(a1)の活性水素数の平均値を意味する。
ポリオール化合物(A)の平均水酸基数を2〜3とすることにより、得られる軟質ポリウレタンフォームの乾熱圧縮永久歪等の物性が向上する。また、得られる軟質ポリウレタンフォームの伸びが高くなり、かつ硬度が高くなりすぎないことから引張強度等の物性も向上する。
特にポリオール化合物(A)が、水酸基数が2であるポリエーテルジオールを、ポリオール化合物(A)中に20〜100質量%含むことにより、得られる軟質ポリウレタンフォームの感温性が抑制し易く、優れた難燃性を示す。
【0021】
また、ポリオール化合物(A)の水酸基価は、10〜90mgKOH/gであるのが好ましく、10〜60mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
ポリオール化合物(A)の水酸基価を10mgKOH/g以上とすれば、コラップス等を抑制し、軟質ポリウレタンフォームの安定的な製造が容易になる。また、水酸基価を90mgKOH/g以下とすれば、得られる軟質ポリウレタンフォームの柔軟性が向上する。
【0022】
ポリオール化合物(A)の不飽和度は、0.05meq/g以下とするのが好ましく、0.01meq/g以下とするのがより好ましく、0.008meq/g以下とするのがさらに好ましい。不飽和度を0.05meq/g以下とすることで、得られる軟質ポリウレタンフォームの耐久性が向上する。
不飽和度の下限は、理想的には0meq/gである。不飽和度の測定は、JIS K 1557(1970年版)に準拠した方法で行う。
【0023】
ポリオール化合物(A)は、ポリマー分散ポリオールであってもよい。ただし、ポリオール化合物(A)がポリマー分散ポリオールであるとは、ポリオール化合物(A)をベースポリオール(分散媒)として、ポリマー微粒子(分散質)が安定に分散している分散系を意味する。
ポリオール化合物(A)中にポリマー微粒子を存在させることにより、ポリオール化合物(A)の水酸基価が低く抑えられ、軟質ポリウレタンフォームの硬度が高まる等、機械的物性の向上に有効である。
【0024】
ポリマー微粒子として用いることのできるポリマーとしては、付加重合系ポリマーまたは縮重合系ポリマーが挙げられる。
付加重合系ポリマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等のモノマーを単独重合して得られるポリマー、または共重合して得られるポリマーが挙げられる。
縮重合系ポリマーとしては、たとえば、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリメチロールメラミンが挙げられる。
【0025】
ポリマー分散ポリオール中のポリマー微粒子の含有量は、前記効果が得られればよく、ポリオール化合物(A)(100質量%)に対して、0〜5質量%とするのが好ましい。ただし、ポリマー分散ポリオールのポリオールとしての諸物性(不飽和度、水酸基価等)は、ポリマー微粒子を除いたベースポリオール(ポリオール化合物(A))について考えるものとする。
【0026】
[モノオール化合物(X)]
モノオール化合物(X)は、DMC触媒を用いて、活性水素数が1である開始剤(x1)にアルキレンオキシド(x2)を開環重合させることにより得られるポリエーテルモノオールである。
【0027】
開始剤(x1)としては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のモノオール類;フェノール、ノニルフェノール等の1価フェノール類;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の2級アミン類等が挙げられる。
また、前記化合物にアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドを開環重合させて得られたポリエーテルモノオールを用いることもできる。
開始剤(x1)は、前記化合物を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
アルキレンオキシド(x2)としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタンが挙げられる。なかでも、プロピレンオキシドのみの使用、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましく、プロピレンオキシドのみの使用がより好ましい。
【0029】
モノオール化合物(X)は、得られる軟質ポリウレタンフォームの加湿時の耐久性が向上する点から、開始剤(x1)にプロピレンオキシドのみを開環重合させたポリオキシプロピレンモノオールであるのが好ましい。
【0030】
モノオール化合物(X)の製造に用いるDMC触媒としては、ポリオール化合物(A)の製造に用いるDMC触媒と同じものを用いることができる。
DMC触媒の使用量は、開始剤(x1)とアルキレンオキシド(x2)との合計質量を100質量部としたとき、0.001〜0.1質量部とするのが好ましく、0.003〜0.3質量部とするのがより好ましい。
DMC触媒の使用量を0.001〜0.1質量部とすれば、軟質ポリウレタンフォームの製造の際の発泡安定性が向上し、セル荒れおよびフォームの収縮を抑えられる。また、得られる軟質ポリウレタンフォームの難燃性も向上する。
【0031】
モノオール化合物(X)の平均水酸基数は1である。また、モノオール化合物(X)の水酸基価は5〜200mgKOH/gであるのが好ましく、5〜120mgKOH/gであるのがより好ましい。
【0032】
また、ポリオール組成物(I)は、下記に示すポリオール化合物(B)および/またはモノオール化合物(Y)を含んでいてもよい。
[ポリオール化合物(B)]
ポリオール化合物(B)は、ポリオール化合物(A)以外のポリオールである。すなわち、DMC触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させたポリエーテルポリオール以外のポリオールである。ポリオール化合物(B)としては、ポリオール化合物(A)以外で軟質ポリウレタンフォームの製造に通常用いられるものが使用でき、少なくとも下記に示すポリオール化合物(B1)を含むものであるのが好ましい。
【0033】
(ポリオール化合物(B1))
ポリオール化合物(B1)は、DMC触媒以外のアルキレンオキシド開環重合触媒を用いて開始剤(b1−1)にアルキレンオキシド(b1−2)を開環重合させて得られる、平均水酸基数が2〜3のポリエーテルポリオールである。
【0034】
DMC触媒以外のアルキレンオキシド開環重合触媒は、フォスファゼニウム錯体化合物、ルイス酸化合物が好ましく、アルカリ金属化合物触媒がより好ましい。
アルカリ金属化合物触媒としては、たとえば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)等が挙げられる。
【0035】
開始剤(b1−1)は、活性水素数が2または3の化合物であり、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;ビスフェノールA等の多価フェノール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペラジン等のアミン類が挙げられる。なかでも、多価アルコール類が好ましい。また、これらの化合物にアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドを開環重合させて得られた高水酸基価ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
開始剤(b1−1)は、前記化合物を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
アルキレンオキシド(b1−2)としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタンが挙げられる。このうち、プロピレンオキシドのみの使用、またはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましい。
【0037】
ポリオール化合物(B1)としては、得られる軟質ポリウレタンフォームの加湿時の耐久性が向上する点から、開始剤(b1−1)にプロピレンオキシドのみを開環重合させて得られるポリオキシプロピレンポリオールであるのが好ましい。
また、ポリオール化合物(B1)としては、開始剤(b1−1)にプロピレンオキシドのみを開環重合させて得られるポリオキシプロピレンポリオールと、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの混合物を開環重合させて得られる、オキシアルキレン基におけるオキシエチレン基含有量が50〜100質量%であるポリオキシプロピレンオキシエチレンポリオールとを併用するのが好ましく、得られる軟質ポリウレタンフォームの加湿時の耐久性がさらに向上する。ただし、該ポリオキシプロピレンオキシエチレンポリオールを用いる場合は、ポリオール化合物(B1)(100質量%)中の含有量を1〜20質量%とするのが好ましく、2〜15質量%とするのがより好ましい。
【0038】
ポリオール化合物(B1)の平均水酸基数は2〜3である。平均水酸基数を2〜3とすることにより、得られる軟質ポリウレタンフォームの乾熱圧縮永久歪等の物性、伸びが向上し、硬度が高くなりすぎず引張強度等の物性が向上する。
また、ポリオール化合物(B1)の平均水酸基数は2.0〜2.7であるのがより好ましく、2.0〜2.6であるのがさらに好ましい。ポリオール化合物(B1)の平均水酸基数を前記範囲とすることで反発弾性率を低く抑えることができ、かつ硬さ変化の小さい(感温性が低い)軟質ポリウレタンフォームが得られる。
また、ポリオール化合物(B1)は平均水酸基数が2のポリエーテルジオールと、平均水酸基数が3のポリエーテルトリオールを併用することが好ましい。ポリオール化合物(B1)中に含まれる平均水酸基数が2のポリエーテルジオールの割合は、ポリオール化合物(B1)(100質量%)中に30質量%以上とするのが好ましい。
【0039】
ポリオール化合物(B1)の水酸基価は15〜250mgKOH/gであり、20〜200mgKOH/gであるのが好ましい。水酸基価を15mgKOH/g以上とすれば、コラップス等を抑制して軟質ポリウレタンフォームを安定して製造し易くなる。また、水酸基価を250mgKOH/g以下とすれば、得られる軟質ポリウレタンフォームの柔軟性が向上し、かつ反発弾性率が低く抑えられる。
【0040】
ポリオール化合物(B1)は、ポリマー分散ポリオールであってもよい。ポリマー微粒子のポリマーとしては、ポリオール化合物(A)で説明したものと同じものが挙げられる。また、ポリマー分散ポリオール中のポリマー微粒子の含有量は、ポリオール化合物(B)の全体量に対して、0〜50質量%とするのが好ましく、0〜20質量%とするのがより好ましい。
【0041】
(ポリオール化合物(B2))
また、ポリオール化合物(B)は、ポリオール化合物(B1)に加えて、ポリオール化合物(B2)を含んでいてもよい。ポリオール化合物(B2)は、平均水酸基数が2〜6、水酸基価が251〜1830mgKOH/gのポリオールである。
ポリオール化合物(B2)としては、たとえば、多価アルコール類、水酸基数が2〜6のアミン類、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0042】
多価アルコール類としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールが挙げられる。
水酸基数が2〜6のアミン類としては、たとえば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンが挙げられる。
【0043】
ポリエーテルポリオールとしては、DMC触媒以外のアルキレンオキシド開環重合触媒を用いて、開始剤(b2−1)にアルキレンオキシド(b2−2)を開環重合させて得られたポリエーテルポリオールが挙げられる。DMC触媒以外のアルキレンオキシド開環重合触媒は、ポリオール化合物(B1)で挙げたものと同じものが使用できる。
開始剤(b2−1)としては、前記多価アルコール類、ポリオール化合物(B1)で挙げた開始剤(b1−1)を用いることができる。
【0044】
アルキレンオキシド(b2−2)としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタンが挙げられる。なかでも、プロピレンオキシドのみの使用、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましく、プロピレンオキシドのみの使用がより好ましい。
ポリオール化合物(B2)は、ポリエーテルポリオールであるのが好ましく、開始剤(b2−1)にプロピレンオキシドのみを開環重合させたポリオキシプロピレンポリオールであるのがより好ましい。プロピレンオキシドのみを開環重合させることにより得られる軟質ポリウレタンフォームの加湿時の耐久性が向上する。
ポリオール化合物(B2)は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリオール化合物(B2)は架橋剤として作用し、得られる軟質ポリウレタンフォームの発泡安定性が良好となり、かつ硬度等の機械的物性を向上させることができる。
ポリオール化合物(B2)は、ポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B1)との合計質量(100質量部)に対して、10質量部以下とするのが好ましく、5質量部以下とするのがより好ましく、2質量部以下とするのがさらに好ましい。ポリオール化合物(B2)の質量割合を前記範囲内とすることで、軟質ポリウレタンフォームを製造する際の発泡安定性が良好となる。
【0046】
(ポリオール化合物(B3))
また、ポリオール化合物(B)は、前記ポリオール化合物以外で、平均水酸基数が3.1〜6.0、水酸基価が15〜250mgKOH/gであるポリオール化合物(B3)を含んでいてもよい。
ポリオール化合物(B3)としては、オキシアルキレン基におけるオキシエチレン基含有量が50〜100質量%であるポリオキシプロピレンオキシエチレンポリオールが好ましく挙げられる。
【0047】
ポリオール化合物(B3)は、ポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B1)との合計質量(100質量部)に対して、10質量部以下とするのが好ましく、7質量部以下とするのがより好ましい。ポリオール化合物(B3)の質量割合を前記範囲内とすることで、通気性が向上し、また軟質ポリウレタンフォームを製造する際の発泡安定性が良好となる。
【0048】
[モノオール化合物(Y)]
モノオール化合物(Y)は、DMC触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させたモノオール化合物(X)以外のモノオールであり、DMC触媒以外のアルキレンオキシド開環重合触媒を用いて開始剤(y1)にアルキレンオキシド(y2)を開環重合させて得られたポリエーテルモノオールであるのが好ましい。
【0049】
DMC触媒以外のアルキレンオキシド開環重合触媒は、フォスファゼニウム錯体化合物、ルイス酸化合物が好ましく、アルカリ金属化合物触媒がより好ましい。
アルカリ金属化合物触媒としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)等が挙げられる。
【0050】
開始剤(y1)としては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のモノオール類;フェノール、ノニルフェノール等の1価フェノール類;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の2級アミン類等が挙げられる。
また、前記化合物にアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドを開環重合させて得られたポリエーテルモノオールを用いることもできる。
開始剤(y1)は、前記化合物を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
アルキレンオキシド(y2)としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタンが挙げられる。なかでも、プロピレンオキシドのみの使用、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましく、プロピレンオキシドのみの使用がより好ましい。
モノオール化合物(Y)は、開始剤(y1)にプロピレンオキシドのみを開環重合させたポリオキシプロピレンモノオールであるのが好ましい。プロピレンオキシドのみを開環重合させることにより、得られる軟質ポリウレタンフォームの加湿時の耐久性が向上する。
【0052】
モノオール化合物(Y)の平均水酸基数は1である。また、モノオール化合物(Y)の水酸基価は5〜200mgKOH/gであるのが好ましく、5〜120mgKOH/gであるのがより好ましい。
【0053】
[ポリオール組成物(I)]
本発明のポリオール組成物(I)は、ポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B)の少なくとも一方を含む。また、ポリオール組成物(I)は、ポリオール化合物(A)とモノオール化合物(X)の少なくとも一方を含む。すなわち、本発明のポリオール組成物(I)は、以下に示す組み合わせのうちいずれかを用いることができる。
【0054】
(1)ポリオール化合物としてポリオール化合物(A)のみを使用するポリオール組成物(I)(ポリオール(A)単独系)。
(1a)ポリオール化合物(A)のみからなるポリオール組成物(I)
(1b)ポリオール化合物(A)およびモノオール化合物(X)からなるポリオール組成物(I)
(1c)ポリオール化合物(A)およびモノオール化合物(Y)からなるポリオール組成物(I)
(1d)ポリオール化合物(A)およびモノオール化合物(X)およびモノオール化合物(Y)からなるポリオール組成物(I)
【0055】
(2)ポリオール化合物としてポリオール化合物(B)のみを使用するポリオール組成物(I)(ポリオール(B)単独系)。
(2a)ポリオール化合物(B)およびモノオール化合物(X)からなるポリオール組成物(I)
(2b)ポリオール化合物(B)およびモノオール化合物(X)およびモノオール化合物(Y)からなるポリオール組成物(I)
【0056】
(3)ポリオール化合物としてポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B)を併用するポリオール組成物(I)(ポリオール併用系)。
(3a)ポリオール化合物(A)およびポリオール化合物(B)からなるポリオール組成物(I)
(3b)ポリオール化合物(A)およびポリオール化合物(B)およびモノオール化合物(X)からなるポリオール組成物(I)
(3c)ポリオール化合物(A)およびポリオール化合物(B)およびモノオール化合物(Y)からなるポリオール組成物(I)
(3d)ポリオール化合物(A)およびポリオール化合物(B)およびモノオール化合物(X)およびモノオール化合物(Y)からなるポリオール組成物(I)
【0057】
(1)のポリオール(A)単独系では、ポリオール組成物(I)(100質量%)中のポリオール化合物(A)の質量割合は、75質量%以上とするのが好ましく、80質量%以上とするのがより好ましい。
ポリオール組成物(I)中のモノオール化合物(X)は、ポリオール化合物(A)100質量部に対して30質量部以下とするのが好ましく、25質量部以下とするのがより好ましい。
ポリオール組成物(I)中のモノオール化合物(Y)は、ポリオール化合物(A)100質量部に対して30質量部以下とするのが好ましく、25質量部以下とするのがより好ましい。
(1)のポリオール単独系では、ポリオール化合物(A)、モノオール化合物(X)、およびモノオール化合物(Y)を前記範囲内とすることで、シリコーン系整泡剤を実質的に用いない軟質ポリウレタンフォームの製造が容易になる。また、耐久性に優れ、かつ、通気性の良好な軟質ポリウレタンフォームが得られ易くなる。
【0058】
(2)のポリオール(B)単独系では、ポリオール組成物(I)(100質量%)中のポリオール化合物(B1)の質量割合は、75〜95質量%とするのが好ましく、80〜95質量%とするのがより好ましい。
また、ポリオール化合物(B2)および(B3)は、ポリオール化合物(B1)の全量を100質量部としたとき、ポリオール化合物(B2)を0〜10質量部、ポリオール化合物(B3)を0〜10質量部とするのが好ましい。
ポリオール組成物(I)(100質量%)中のモノオール化合物(X)の質量割合は、5〜20質量%とするのが好ましく、5〜15質量%とするのがより好ましい。
ポリオール組成物(I)(100質量%)中のモノオール化合物(Y)の質量割合は、5〜20質量%とするのが好ましく、5〜15質量%とするのがより好ましい。
(2)のポリオール単独系では、ポリオール化合物(B)、モノオール化合物(X)、およびモノオール化合物(Y)を前記範囲内とすることで、シリコーン系整泡剤を実質的に用いない軟質ポリウレタンフォームの製造が容易になる。また、耐久性に優れ、かつ、通気性の良好な軟質ポリウレタンフォームが得られ易くなる。
【0059】
(3)のポリオール併用系では、ポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B1)との合計質量(100質量%)に対するポリオール化合物(A)の質量割合を5〜50質量%とするのが好ましく、10〜30質量%とするのがより好ましい。
また、ポリオール組成物(I)(100質量%)中の、ポリオール化合物(A)とポリオール(B1)との合計の質量割合を、75質量%以上とするのが好ましく、80質量%以上とするのがより好ましい。
ポリオール組成物(I)中のポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B1)との合計の質量割合を前記範囲内とすることで、シリコーン系整泡剤を実質的に用いない軟質ポリウレタンフォームの製造が容易となる。また、耐久性に優れ、かつ、通気性の良好な軟質ポリウレタンフォームが得られ易くなる。
【0060】
モノオール化合物(X)は、ポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B1)との合計質量(100質量部)に対して、30質量部以下とするのが好ましく、25質量部以下とするのがより好ましい。
モノオール化合物(Y)は、ポリオール化合物(A)とポリオール化合物(B1)との合計質量(100質量部)に対して、30質量部以下とするのが好ましく、25質量部以下とするのがより好ましい。
モノオール化合物(X)およびモノオール化合物(Y)の質量割合を前記範囲内とすることで、耐久性に優れ、通気性の良好な軟質ポリウレタンフォームが得られる。
【0061】
(3)のポリオール併用系におけるポリオール組成物(I)の好適な組成の具体例としては、ポリオール化合物(A)が5〜50質量部、ポリオール化合物(B1)が50〜95質量部、ポリオール化合物(B2)が0〜10質量部、ポリオール化合物(B3)が0〜10質量部、モノオール化合物(X)が0〜30質量部、モノオール化合物(Y)が0〜30質量部、が挙げられる(ただし、前記ポリオール化合物(A)および(B1)の合計は100質量部である)。
【0062】
<ポリイソシアネート組成物(II)>
ポリイソシアネート組成物(II)は、ポリオール組成物(I)と反応させることで軟質ポリウレタンフォームが得られるものであり、たとえば、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート、前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物、また該ポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物を変性して得られる変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0063】
ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)が挙げられる。
変性ポリイソシアネートとしては、たとえば、上記ポリイソシアネートのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体が挙げられる。
【0064】
ポリイソシアネート組成物(II)は、TDI、MDI、クルードMDI、または該変性体を使用するのが好ましい。なかでも、発泡安定性、耐久性等が向上する点から、TDI、クルードMDI、または該変性体(特にプレポリマー型変性体が好ましい。)を使用するのがより好ましい。また、前記TDI、クルードMDIまたはその変性体のなかでも、得られる軟質ポリウレタンフォームの通気性が優れる点から、反応性が比較的低いポリイソシアネートを使用するのが好ましい。たとえば、2,4−TDI/2,6−TDI=80/20質量%のTDI混合物、または2,6−TDIの割合の多い(30質量%以上が特に好ましい。)TDI混合物が挙げられる。
【0065】
本発明の製造方法では、反応させるポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)とのイソシアネート指数を、90〜130とするのが好ましく、95〜110とするのがより好ましく、100〜110とするのがさらに好ましい。ただし、イソシアネート指数とは、ポリイソシアネート組成物(II)のイソシアネート基の当量を、ポリオール組成物(I)、水等の全ての活性水素原子の合計の当量で除した数値の100倍を意味する。
イソシアネート指数を90以上とすれば、用いたポリオール組成物(I)の可塑剤としての影響が適度になるため、洗濯耐久性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られる。また、後述するウレタン化触媒が放散し難く、得られる軟質ポリウレタンフォームが変色し難くなる。
【0066】
<整泡剤>
本発明の製造方法では、ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)との反応を、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに行うことを特徴とする。ただし、シリコーン系整泡剤を実質的に用いないとは、ポリオール組成物(I)(100質量%)に対してシリコーン系整泡剤中のケイ素含有率が0.05質量%以下であることを意味する。ポリオール組成物(I)(100質量%)に対するシリコーン系整泡剤中のケイ素含有率は0.03質量%以下であるのが好ましく、ゼロであるのが特に好ましい。
軟質ポリウレタンフォームに含まれるシリコーン系整泡剤は、ガスクロマトグラフィーによる分析等により検出することができる。
また、シリコーン系整泡剤はフォームの燃焼時に助燃効果があり、フォームが熱により液状に溶融した時、表面活性効果によりシリコーン系整泡剤が液表面に集まり、炭化を妨げる。本発明の製造方法で得られた軟質ポリウレタンフォームはシリコーン系整泡剤を実質的に用いていないため、難燃性が良好であると考えられる。
【0067】
<ウレタン化触媒>
ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)との反応は、ウレタン化触媒の存在下で行う。
ウレタン化触媒は、ウレタン化反応を促進する触媒であり、金属触媒とアミン触媒とからなる。ウレタン化触媒は金属触媒を必須として、アミン触媒を併用することにより、開放系でセル状態の良好な軟質ポリウレタンフォームを製造できる。
【0068】
金属触媒としては、たとえば、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸錫等のカルボン酸金属塩や、有機金属化合物として酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロリド、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルトが挙げられる。
【0069】
アミン触媒としては、たとえば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ポリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサメチルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−オクタデシルモルホリン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス〔2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル〕エーテル、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン;上記化合物の有機塩および無機塩;第1および第2アミンのアミノ基のオキシアルキレン付加物;N,N−ジアルキルピペラジン類等のアザ環化合物;種々のN,N’,N”−トリアルキルアミノアルキルヘキサヒドロトリアジン類が挙げられる。
【0070】
ウレタン化触媒として用いる金属触媒の使用量は、用いるポリオール組成物(I)の種類によっても多少異なるが、ポリオール組成物(I)100質量部に対して0.1〜2.0質量部とすればよく、0.3〜1.5質量部とするのが好ましい。
ウレタン化触媒として用いるアミン触媒の使用量は、ポリオール組成物(I)100質量部に対して0.1〜1.5質量部とすればよく、0.2〜1.0質量部とするのが好ましい。
【0071】
<発泡剤>
発泡剤としては、たとえば、水、不活性ガス、フッ素化炭化水素等の公知の発泡剤が挙げられる。なかでも、不活性ガスを用いるのが好ましく、水を用いるのがより好ましい。不活性ガスとしては、たとえば、空気、窒素、炭酸ガスが挙げられる。
発泡剤は、水のみを使用するのが好ましい。
【0072】
発泡剤の使用量は、発泡剤として水を使用する場合には、ポリオール組成物(I)100質量部に対して10質量部以下とするのが好ましく、0.1〜4質量部以下とするのがより好ましい。
【0073】
<その他の添加剤>
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造では、前記ウレタン化触媒、発泡剤以外に添加剤を使用してもよい。
添加剤としては、たとえば、炭酸カリウム、硫酸バリウム等の充填剤;乳化剤等の界面活性剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;必要に応じて補助的に使用する難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤が挙げられる。
【0074】
<反応>
各成分の混合方法としては、開放系で各成分を混合し、反応性混合物を発泡させる方法(スラブ法)を用いる。具体的には、ワンショット法、セミプレポリマー法、プレポリマー法等の公知の方法が挙げられる。また、軟質ポリウレタンフォームの製造には、通常用いられる製造装置を用いることができる。
【0075】
また、軟質ポリウレタンフォームの耐久性は、以下のようになっているのが好ましい。ただし、耐久性は乾熱圧縮永久歪および湿熱圧縮永久歪で表される。湿熱圧縮永久歪は、蒸れた状態における耐久性の指標である。乾熱圧縮永久歪および湿熱圧縮永久歪の測定はいずれもJIS K6400(1997年版)に準拠した方法で行う。
軟質ポリウレタンフォームの乾熱圧縮永久歪は5%以下であるのが好ましく、4%以下であるのがより好ましく、3.5%以下であるのがさらに好ましい。軟質ポリウレタンフォームの湿熱圧縮永久歪は5%以下であるのが好ましく、4%以下であるのがより好ましく、3.5%以下であるのがさらに好ましい。
【0076】
軟質ポリウレタンフォームのコア密度は、15〜110kg/m であるのが好ましく、40〜80kg/m であるのがより好ましい。密度の測定は、JIS K6400(1997年版)に準拠した方法で行う。
【0077】
以上説明した本発明の製造方法では、DMC触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させたポリオール化合物(A)および/またはモノオール化合物(X)を使用することにより、シリコーン系整泡剤を実質的に用いることなく開放系で軟質ポリウレタンフォームを製造できる。該理由としては、DMC触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させた場合には、アルキレンオキシドが付加する向きが一部反転することが寄与しているものと考えられる。
たとえば、DMC触媒を用いて開始剤にプロピレンオキシドを開環重合させてポリオール化合物またはモノオール化合物を製造すると、プロピレンオキシドは1級炭素側から付加するとともに、約5〜10%の割合で2級炭素側からも付加する。本発明の製造方法が整泡剤を用いなくても軟質ポリウレタンフォームが製造できるのは、該ポリオール化合物またはモノオール化合物のポリオキシアルキレン鎖が、ウレタン化反応の際に泡の表面張力を強める働きをするためであると考えられる。
一方、水酸化カリウム等の触媒を用いて開始剤にプロピレンオキシドを開環重合させると、プロピレンオキシドは1級炭素側からしか付加しない。そのため、ウレタン化反応の際に泡の表面張力を強める働きがなく、整泡剤を用いなければ軟質ポリウレタンフォームを製造できないと考えられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。実施例および比較例における「部」は「質量部」を示す。
軟質ポリウレタンフォームの製造に使用した各原料を以下に示す。
[ポリオール組成物(I)]
(ポリオール化合物(A))
ポリオールA1:水酸化カリウム触媒を用いて、ジプロピレングリコールを開始剤として分子量1000までプロピレンオキシドを開環重合させた後、珪酸マグネシウムで精製して開始剤(a1)とした。その後、該開始剤(a1)に、DMC触媒である亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体触媒を用いて、アルキレンオキシド(a2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールA1)を得た。ポリオールA1は、平均水酸基数が2、水酸基価が14mgKOH/g、不飽和度が0.005meq/gである。
【0079】
ポリオールA2:水酸化カリウム触媒を用いて、ジプロピレングリコールを開始剤として分子量が1000となるまでプロピレンオキシドを開環重合させた後、珪酸マグネシウムで精製して開始剤(a1)とした。その後、該開始剤(a1)に、DMC触媒である亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体触媒を用いて、アルキレンオキシド(a2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールA2)を得た。ポリオールA2は、平均水酸基数が2、水酸基価が11mgKOH/g、不飽和度が0.005meq/gである。
【0080】
ポリオールA3:水酸化カリウム触媒を用いて、グリセリンを開始剤として分子量が1000となるまでプロピレンオキシドを開環重合させた後、珪酸マグネシウムで精製して開始剤(a1)とした。その後、該開始剤(a1)に、DMC触媒である亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体触媒を用いて、アルキレンオキシド(a2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールA3)を得た。ポリオールA3は、平均水酸基数が3、水酸基価が56mgKOH/g、不飽和度が0.005meq/gである。
【0081】
ポリオールA4:水酸化カリウム触媒を用いて、グリセリンを開始剤として分子量が1000となるまでプロピレンオキシドを開環重合させた後、珪酸マグネシウムで精製して開始剤(a1)とした。その後、該開始剤(a1)に、DMC触媒である亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体触媒を用いて、アルキレンオキシド(a2)であるプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの混合物を開環重合させてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールA4)を得た。ポリオールA4は、平均水酸基数が3、水酸基価が56mgKOH/g、不飽和度が0.005meq/g、全オキシエチレン基含有量が7質量%である。
【0082】
(ポリオール化合物(B))
ポリオールB1−1:開始剤(b1−1)であるジプロピレングリコールに、水酸化カリウム触媒を用いて、アルキレンオキシド(b1−2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールB1−1)を得た。ポリオールB1−1は、平均水酸基数が2、水酸基価が160mgKOH/gである。
【0083】
ポリオールB1−2:開始剤(b1−1)であるグリセリンに、水酸化カリウム触媒を用いて、アルキレンオキシド(b1−2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールB1−2)を得た。ポリオールB1−2は、平均水酸基数が3、水酸基価が168mgKOH/gである。
【0084】
ポリオールB1−3:開始剤(b1−1)であるグリセリンに、水酸化カリウム触媒を用いて、アルキレンオキシド(b1−2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールB1−3)を得た。ポリオールB1−3は、平均水酸基数が3、水酸基価が56mgKOH/gである。
【0085】
ポリオールB1−4:開始剤(b1−1)であるグリセリンに、水酸化カリウム触媒を用いて、アルキレンオキシド(b1−2)であるプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの混合物を開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールB1−4)を得た。ポリオールB1−4は、平均水酸基数が3、水酸基価が48mgKOH/g、全オキシエチレン基含有量が80質量%である。
【0086】
ポリオールB1−5:開始剤(b1−1)であるグリセリンに、水酸化カリウム触媒を用いて、アルキレンオキシド(b1−2)であるプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの混合物を開環重合させてポリオキシプロピレンポリオール(ポリオールB1−5)を得た。ポリオールB1−5は、平均水酸基数が3、水酸基価が56mgKOH/g、全オキシエチレン基含有量が7質量%である。
【0087】
(モノオール化合物(X))
モノオールX1:開始剤(x1)であるn−ブチルアルコールに、DMC触媒である亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体触媒を用いて、アルキレンオキシド(x2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンモノオール(モノオールX1)を得た。モノオールX1は、平均水酸基数が1、水酸基価が17mgKOH/gである。
【0088】
モノオールX2:開始剤(x1)であるn−ブチルアルコールに、DMC触媒である亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体触媒を用いて、アルキレンオキシド(x2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンモノオール(モノオールX2)を得た。モノオールX2は、平均水酸基数が1、水酸基価が11mgKOH/gである。
【0089】
(モノオール化合物(Y))
モノオールY1:開始剤(y1)であるn−ブチルアルコールに、水酸化カリウム触媒を用いて、アルキレンオキシド(y2)であるプロピレンオキシドを開環重合させてポリオキシプロピレンモノオール(モノオールY1)を得た。モノオールY1は、平均水酸基数が1、水酸基価が22mgKOH/gである。
【0090】
[ポリイソシアネート組成物(II)]
ポリイソシアネートI1:TDI−80(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20質量%の混合物)、イソシアネート基含有量48.3質量%(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートT−80)。
【0091】
[ウレタン化触媒]
金属触媒M1:ジブチルスズジラウレート(日東化成社製、商品名:ネオスタンU−100)
金属触媒M2:2−エチルヘキサン酸スズ(エアプロダクツ アンド ケミカルズ社製、商品名:ダブコT−9)。
アミン触媒N1:トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液(東ソー社製、商品名:TEDA−L33)。
【0092】
[発泡剤]
発泡剤:水。
【0093】
[シリコーン系整泡剤]
整泡剤S1:シリコーン系整泡剤、ケイ素含有率15.5%(東レダウコーニング社製、商品名:SZ−1328)
【0094】
以下、実施例および比較例について説明する。
[実施例1]
ポリオールA1(23.5部)、ポリオールB1−1(33部)、ポリオールB1−2(41部)、ポリオールB1−4(12部)、モノオールX1(7.5部)、水(1.44部)、金属触媒M1(0.4部)、およびアミン触媒N1(0.25部)の混合物(以下、ポリオールシステムとする。)を液温21±1℃に調整した。また、ポリイソシアネートI1(イソシアネート指数100)の液温を21±1℃に調整した。ついで、ポリオールシステムにポリイソシアネートI1を加えて、ミキサー(毎分1425回転)で5秒間混合し、室温状態で上部が開放になっている、縦横300mm、高さ300mmの木箱にビニールシートを敷きつめたものに注入し、軟質ポリウレタンフォーム(スラブフォーム)を製造した。得られた軟質ポリウレタンフォームを取り出して、室温23℃、湿度50%に調節された室内に24時間以上放置してから、各種物性の測定を行った。
【0095】
[実施例2〜19]
用いた原料の組成を表1および表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
[比較例1〜2]
用いた原料の組成を表3に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0099】
[比較例3]
用いた原料の組成を表3に示す通りに変更し、縦横250mm、高さ250mmの木箱を使用した以外は実施例1と同様にして軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0100】
[比較例4〜5]
表3に示すように、シリコーン系整泡剤S1を含むポリオールシステムとした以外は実施例1と同様にして軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0101】
【表3】

【0102】
[評価方法]
実施例1〜19および比較例1〜5で得られた軟質ポリウレタンフォームの成形性に関する測定および評価方法は、以下に示す通りである。
(発泡安定性)
発泡安定性は、以下に示す基準に基づいて評価した。
○:フォームが成形され、セトリングが見た目にはわからない。
△:フォームが成形され、セトリング率が5%以上であるがフォーム形状は維持されている。
×:フォームが崩壊(コラップス)または混合した液が沸騰しているような状態となる。
セトリングとは、成形したフォームが最高の高さに達した後に沈み込む現象を指し、セトリング率は下記式より算出した。
セトリング率(%)=[(A−B)/A]×100
ただし、式中、Aはフォーム最高高さ(mm)、Bはフォームが沈み込んだ時の高さ(mm)を意味する。
【0103】
(セル状態)
セル状態は、以下に示す基準に基づいて評価した。
○:フォームにセル荒れが発生せず、微細セルが得られる。
△:フォームの一部にセル荒れが発生している。
×:フォーム全体にセル荒れが発生している。
【0104】
(フォーム収縮)
フォーム収縮は、軟質ポリウレタンフォームを木箱から取り出して、室温23℃、湿度50%に調整された室内に24時間放置後に、目視により以下に示す基準に基づいて評価した。
○:フォームに収縮は発生しておらず、発泡直後の状態を保っている。
△:フォームの一部に収縮が発生している。
×:フォーム全体が収縮している。
【0105】
また、製造した軟質ポリウレタンフォームの物性の測定について以下に示す。
(コア密度、コア反発弾性率)
コア密度、コア反発弾性率は、JIS K6400(1997年版)に準拠した方法で測定した。フォームの中央部から表皮部を除いて縦横各100mm、高さ50mmの大きさに切り出したものを測定に用いた。
(25%硬さ、通気性、引張強度、伸び、乾熱圧縮永久歪、湿熱圧縮永久歪)
25%硬さ(ILD)、通気性、引張強度、伸び、乾熱圧縮永久歪、および湿熱圧縮永久歪は、JIS K6400(1997年版)に準拠した方法で測定した。また、通気性はJIS K6400(1997年版)のB法に準拠した方法で測定した。
ただし、25%硬さ、通気性、コア反発弾性率の測定は、手でクラッシングした後に行った。
【0106】
実施例8〜9および比較例4〜5については、以下に示す方法によりシリコーン成分の検出を行った。
[シリコーン成分の分析]
(シリコーン成分の抽出)
得られた軟質ポリウレタンフォーム(5g)を200mLガラス製容器に取り、テトラヒドロフラン100mLを入れた。軟質ポリウレタンフォームをテトラヒドロフランに浸漬させた状態で超音波振動機を用いて30分間超音波処理し、ついでチューブミキサーで10分間攪拌を行った。ガラス製容器中から軟質ポリウレタンフォームを取り出し、残ったテトラヒドロフランを上部から窒素を8時間噴きかけて揮発させた。
ついで、再度テトラヒドロフランを2mL添加し、抽出液を作製した。
(シリコーン成分の検出)
得られた抽出液からのシリコーン成分の検出は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製 型式「GC−14B」)で行った。抽出液を150℃で5分間加熱し、その後に10分間かけて250℃まで昇温し、以後測定終了(開始から約75分)までこの温度を維持した。抽出液から発生したガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、シリコーン成分を検出した。該方法のシリコーン成分の検出限界は100ppmである。
シリコーン成分の検出の確認方法は以下の通りである。実施例9で使用したシリコーン系整泡剤S1から発生するガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、シリコーン成分のピークを確認する。その後、実施例8〜9および比較例4〜5から得られた抽出液のピークと比較し、シリコーン成分の検出を確認した。結果を表4に示す。
【0107】
【表4】

【0108】
表1〜2に示すように、ポリオール組成物(I)に含まれるポリオール化合物がポリオール化合物(A)およびポリオール化合物(B)の両方であるポリオール併用系では、シリコーン系整泡剤を用いずに開放系で軟質ポリウレタンフォームを製造できた(実施例1〜4)。また、ポリオール組成物(I)に含まれるポリオール化合物がポリオール化合物(A)のみであるポリオール単独系でもシリコーン系整泡剤を用いずに開放系で軟質ポリウレタンフォームを製造できた(実施例5〜8、10〜13)。さらに、ポリオール組成物(I)がポリオール化合物(A)を含んでいない場合でも、モノオール化合物(X)を使用することによりシリコーン整泡剤を用いずに開放系で軟質ポリウレタンフォームを製造できた(実施例14〜19)。
また、実施例8のシリコーン系整泡剤を用いずに製造した本発明の軟質ポリウレタンフォーム、実施例9のポリオール組成物(I)(100質量%)に対してシリコーン系整泡剤が0.2質量%(ケイ素含有率0.03質量%)である軟質ポリウレタンフォームはガスクロマトグラフィーによる分析でシリコーン成分が検出されなかった。
【0109】
一方、表3に示すように、ポリオール化合物(A)もモノオール化合物(X)も使用していないポリオール組成物(I)の場合には、発泡安定性が低く、フォーム収縮も見られ、シリコーン系整泡剤を用いずに開放系で軟質ポリウレタンフォームを製造することができなかった(比較例1〜3)。
【0110】
また、比較例4〜5は、ポリオール化合物(A)を含むポリオール組成物(I)を用いており、軟質ポリウレタンフォームが製造できたが、ガスクロマトグラフィーによる分析でシリコーン成分が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の製造方法により得られる軟質ポリウレタンフォームは、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに得ることができるため、揮発性有機化合物(VOC)を含まず、異臭発生や電子部材の不具合等を起こすおそれが少ない。また、軟質ポリウレタンフォームの製造単価も低くなるため、寝具、マット、クッション等といった幅広い用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオール化合物を含むポリオール組成物(I)と、ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物(II)とを、ウレタン化触媒、および発泡剤の存在下に、シリコーン系整泡剤を実質的に用いずに開放系で反応させる方法であって、
前記ウレタン化触媒は金属触媒とアミン触媒とからなり、
前記ポリオール組成物(I)は、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られるポリオール化合物(A)、および/または複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られるモノオール化合物(X)を含んでいることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記ポリオール化合物(A)が、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られた、平均水酸基数が2〜3、水酸基価が10〜90mgKOH/gのポリエーテルポリオールである、請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
前記モノオール化合物(X)が、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて開始剤にアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られた、水酸基価が5〜200mgKOH/gのポリエーテルポリオールである、請求項1または2に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2009−73867(P2009−73867A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241372(P2007−241372)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】