説明

軟質ポリウレタンフォーム及び布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品

分子量2000以上の高分子量ポリオール成分100重量部に対して低分子量架橋剤を0.2〜1.5重量部含むポリウレタン原料を発泡させてなる軟質ポリウレタンフォーム。所定量の低分子量架橋剤を配合することにより、ポリイソシアネートと低分子量架橋剤との高い反応性により、ポリイソシアネートと水との反応によるウレア結合の生成、凝集を抑制し、ウレアボールを分散させて、軟質ポリウレタンフォーム中の部分的な膨潤、収縮状態を緩和し、フォーム全体で膨潤、収縮の応力を吸収することにより、これと貼り合せ一体化されている布地のシワ入りを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地と貼り合せて熱プレスすることにより、ブラジャーパッドや肩パッド等の衣料用途として好適に用いられる軟質ポリウレタンフォームと、この軟質ポリウレタンフォームに布地を貼り合せた布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品に関する。詳しくは、本発明は、洗濯時の湿潤、乾燥時の膨潤、収縮率が布地と近似しており、洗濯時のシワの発生の問題が低減された軟質ポリウレタンフォームと、この軟質ポリウレタンフォームに布地を貼り合せてなる布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品に関する。
【発明の背景】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは良好なクッション性を有し、綿のように長期ないし繰り返し使用時にヘタることがなく、柔らかく良好な感触を有することから、ブラジャーパッド、肩パッド等の衣料用として広く使用されている。
【0003】
軟質ポリウレタンフォームをブラジャーパッド、肩パッド等の衣料用として用いる場合、一般的には、所要の形状に発泡成形してなる軟質ポリウレタンフォームの成形品に布地を貼り合せ、熱プレスして一体化することにより布地で被覆した布貼り品とされる。
【0004】
このような布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品において、ポリウレタン原料中の酸化防止剤等に起因する移染変色等の防止については、種々研究がなされている(例えば、特開平11−323126)。
【0005】
布地を貼り合せて熱プレスにより一体化した軟質ポリウレタンフォームにあっては、洗濯により布地にシワが入り、その外観が非常に劣るものとなり、著しい場合に全体が変形してパッド等としての製品形状を維持し得なくなる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、このように布地と貼り合せて熱プレスにより一体化した布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品において、洗濯による布地のシワ入りを防止し得る軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、分子量2000以上の高分子量ポリオール成分100重量部に対して低分子量架橋剤を0.2〜1.5重量部含むポリウレタン原料を発泡させてなることを特徴とする。
【0008】
本発明の布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品は、このような本発明の軟質ポリウレタンフォームの成形品に、布地を貼り付けて熱プレスしてなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例及び比較例で熱プレスに用いたモールドプレス型を示す断面図である。
【発明の好ましい形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、分子量2000以上の高分子量ポリオール成分100重量部に対して低分子量架橋剤を0.2〜1.5重量部含むポリウレタン原料を発泡させてなる。
【0012】
本発明者らは、布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品の洗濯による布地のシワ入りの原因について検討し、軟質ポリウレタンフォームと布地とで洗濯を行ったときの湿潤、乾燥時の膨潤、収縮率が異なること、そして、この膨潤、収縮率が異なることにより、軟質ポリウレタンフォームが局部的に膨潤、収縮することが、軟質ポリウレタンフォームと布地とを完全に貼り合せて一体化した布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品にあって、布地にシワが入る原因であると考え、軟質ポリウレタンフォームの局部的な膨潤、収縮を緩和すべく、更に検討を行った。
【0013】
その結果、所定量の低分子量架橋剤をポリウレタン原料中に配合することにより、以下の作用効果により、軟質ポリウレタンフォームの局部的な膨潤、収縮を緩和することができ、この結果、布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品の洗濯時の布地のシワ入りを防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
ウレタン反応時にポリイソシアネートと水との反応で生成するウレア結合は、凝集し易く、ウレアボールと呼称されるウレア結合の凝集体が生成し易いが、このウレアボールが軟質ポリウレタンフォームの部分的な膨潤、収縮の原因となる。本発明により、所定量の低分子量架橋剤を配合することにより、ポリイソシアネートと低分子量架橋剤との高い反応性により、ポリイソシアネートと水との反応によるウレア結合の生成、凝集を抑制し、ウレアボールを分散させて、軟質ポリウレタンフォーム中の部分的な膨潤、収縮状態を緩和し、フォーム全体で膨潤、収縮の応力を吸収することにより、これと貼り合せ一体化されている布地のシワ入りを防止する。
【0015】
本発明において、低分子量架橋剤としては、好ましくは、分子量100〜200、OH価400〜2000程度の低分子量ポリオールを用いることができる。このような低分子量ポリオールとしては例えば、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパンのPO付加物(三井武田社製「T880」)等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0016】
低分子量架橋剤の配合量は、少な過ぎると低分子量架橋剤を配合したことによる本発明の効果を十分に得ることができず、多過ぎても同様に効果が得られず、シワ入りの問題が生じる。低分子量架橋剤は、高分子量ポリオール成分100重量部に対して0.2〜1.5重量部、特に0.4〜1.3重量部とすることが好ましい。
【0017】
本発明においては、低分子量架橋剤の所定量を配合すること以外は、高分子量ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含む通常のポリウレタン原料配合とすることができる。
【0018】
高分子量ポリオール成分としては、分子量2000〜7000、OH価20〜90のポリエーテル系ポリオール及び/又はポリエステル系ポリオールを用いることができる。高分子量ポリオール成分は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0019】
このようなポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートであって、脂肪族系及び芳香族ポリイソシアネート化合物、更にこれらの変性物が包含される。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらの変性物としては、カルボジイミド変性物、プレポリマー変性物が挙げられる。好ましいポリイソシアネートは、芳香族系ポリイソシアネート又は芳香族系ポリイソシアネートの変性物であり、特に好ましくはジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0020】
また、発泡剤としては、ポリウレタンフォームの製造に使用される全ての発泡剤が使用できる。例えば、低沸点不活性溶剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のフロン系化合物等、メチレンクロライド;液化炭酸ガス反応によってガスを発生するものとして水、酸アミド、ニトロアルカン等;熱分解してガスを発生するものとして重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等がある。これらのうち、好ましい発泡剤としては、メチレンクロライド、水等が挙げられる。
【0021】
触媒としては、通常のウレタンフォームの製造に使用される全ての触媒が使用できる。例えば、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫系触媒、トリエチルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0022】
本発明のポリウレタンフォームには、更に必要に応じて整泡剤としての界面活性剤や、難燃剤、その他の助剤を配合使用しても良い。界面活性剤としてはシリコーン系界面活性剤が通常用いられる。難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)フォスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート等のような従来公知の難燃剤の他、尿素、チオ尿素のような有機質粉末あるいは金属水酸化物、三酸化アンチモン等の無機質粉末を用いることができる。
【0023】
その他の助剤としては、顔料、染料などの着色粉末、タルク、グラファイトなどの粉末、ガラス短繊維、その他の無機増量剤や有機溶媒などが挙げられる。
【0024】
本発明において、ポリウレタン原料配合は、例えば次のような配合とし、ポリウレタン原料のイソシアネートインデックスを100〜120とすることが好ましく、特に下記の配合において、発泡剤としてのメチレンクロライドを高分子量ポリオール成分に対して0〜15重量部、水を高分子量ポリオール成分に対して1.5〜4.0重量部とすることが好ましい。
【0025】
[ポリウレタン原料配合]
高分子量ポリオール成分:100重量部
低分子量架橋剤:0.2〜1.5
発泡剤:0〜19
触媒:0.01〜1.0
整泡剤:0.3〜2.0
【0026】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは密度20〜80kg/mに発泡成形されることが好ましい。
【0027】
このような軟質ポリウレタンフォームに貼り合せて熱プレスにより一体化される布地としては、ポリエステル等の合成繊維系の織布又は不織布、綿等の天然繊維系の織布又は不織布、あるいはこれらの混紡の織布又は不織布が挙げられる。
【0028】
熱プレス条件としては、通常180〜230℃、圧力0.04〜2.0MPaで20〜200秒の条件が採用される。
【0029】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、局部的な膨潤、収縮がなく、湿潤、乾燥時の膨潤、収縮率が布地に近似しているため、布地と貼り合せて熱プレスより一体化した布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品において、洗濯による布地のシワ入りを防止して、洗濯後も良好な状態を維持することができる。
【0030】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム及び布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品は、ブラジャーパッド、肩パッド等の衣料用として有用である。本発明の軟質ポリウレタンフォーム及び布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品は、何ら衣料用途に限定されるものではなく、各種クッション材等、布地と貼り合せて一体化される用途にも有効に用いることもできる。
【0031】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0032】
以下の実施例及び比較例で用いたポリウレタン原料の成分材料は次の通りである。
高分子量ポリオール:三洋化成社製「GP3030」
(ポリエーテル系ポリオール)
ポリイソシアネート:三井武田社製「T−80」
(トルエンジイソシアネート)
発泡剤1:メチレンクロライド
発泡剤2:水
整泡剤1:花王社製「No.25」
(アミン系触媒)
整泡剤2:東レシリコン社製「SH192」
(シリコン系界面活性剤)
触媒:スタナスオクトエート
低分子量架橋剤1:三井武田社製「T−80」
(トリメチロールプロパンのPO付加物)
低分子量架橋剤2:トリメチロールプロパン
【0033】
実施例1〜4、比較例1
表1に示すポリウレタン原料配合で発泡成形することにより、厚さ10mmの軟質ポリウレタンフォームシート(密度32kg/m)を製造した。このシートにポリエステル系布地をウレタン系接着剤で貼り付けて、図1に示す形状のモールドプレス型(上型1と下型2との最大クリアランスDは8mm)を用いて、190℃、1.47kPa(150kgf)、180秒の条件で熱プレスした。
【0034】
得られた布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品について、通常の洗濯機で10分間洗い、その後、5分間すすぎ、脱水後70℃で10分間乾燥する工程を1サイクルとして、この洗濯、乾燥工程を5サイクル行った。その後、布地のシワの状態を目視により観察し、シワが全く入っていないものを「○」、シワがわずかに入っているが、殆ど問題のないものを「△」、シワが明らかに入っているものを「×」とし、結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、低分子量架橋剤を配合することにより、洗濯による布地のシワ入りを防止することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量2000以上の高分子量ポリオール成分100重量部に対して低分子量架橋剤を0.2〜1.5重量部含むポリウレタン原料を発泡させてなることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1において、該低分子量架橋剤が分子量100〜200、OH価400〜2000のポリオールであることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1において、該高分子量ポリオール成分が分子量2000〜7000、OH価20〜90のポリエーテル系ポリオール及び/又はポリエステル系ポリオールであることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1において、該ポリウレタン原料が、高分子量ポリオール成分100重量部に対して、低分子量架橋剤0.2〜1.5重量部と、発泡剤0〜19重量部と、触媒0.01〜1.0重量部と、整泡剤0.3〜2.0重量部とを含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1において、該ポリウレタン原料が高分子量ポリオール成分100重量部に対して低分子量架橋剤を0.4〜1.3重量部含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1において、該ポリウレタン原料がイソシアネート成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートの1種又は2種以上を含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1において、該ポリウレタン原料のイソシアネートインデックスが100〜120であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
請求項1において、該ポリウレタン原料が発泡剤としてメチレンクロライド及び水を、高分子量ポリオール成分100重量部に対して各々0〜15重量部及び1.5〜4.0重量部含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
請求項1において、布地と貼り合わされ、熱プレスされる用途に用いられることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
請求項9において、ブラジャーパッド又は肩パッドの布地と貼り合わされ、熱プレスされる用途に用いられることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォームよりなる成形品に、布地を貼り付けて熱プレスしてなることを特徴とする布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品。
【請求項12】
請求項11において、軟質ポリウレタンフォームよりなる成形品に、接着剤により布地を貼り付けて熱プレスしてなることを特徴とする布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品。
【請求項13】
請求項11において、軟質ポリウレタンフォームよりなる成形品に、フレームラミネート工法により布地を貼り付けて熱プレスしてなることを特徴とする布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品。
【請求項14】
請求項11において、熱プレス条件が、180〜230℃、圧力0.04〜2.0MPaで20〜200秒であることを特徴とする布貼り軟質ポリウレタンフォーム製品。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/054327
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515935(P2005−515935)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017836
【国際出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】