説明

軟質ポリウレタンフォーム

密度が100kg/m3未満である軟質ポリウレタンフォームはポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物との反応生成物を含む。ポリイソシアネート組成物は、ポリメリックMDI成分及び2,4’−MDIを含むMDIモノマー成分を含み、2,4’−MDIは、MDIモノマー成分100質量部に対して35質量部を超える量でMDIモノマーに存在している。イソシアネート反応性組成物は、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオール及び第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールとは異なる第二のポリオールを含む。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、キャリアポリオール及びスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子を含む。そのキャリアポリオールは3500g/mol以上の重量平均分子量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム及びこの軟質ポリウレタンフォームを製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、難燃性を示す軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは広範囲の剛性、硬度及び密度を示す。ポリウレタンフォームの一種である軟質ポリウレタンフォームは、家具にクッション性、支持性及び快適性を付与するために特に有用である。例えば、軟質ポリウレタンフォームは一般に、クッションや詰め物(padding)等の家具の快適部材(comfort article)、及びマットレスやパッド等の支持部材(support article)に組み込まれる。
【0003】
軟質ポリウレタンフォームは典型的には可燃性である。圧縮及び曲げ(bending)を繰り返し受けた場合には特にそうである。通常、圧縮及び曲げの繰り返しによって、軟質ポリウレタンフォームの気泡構造は脆弱となる(一般に、曲げ疲労(flex fatigue)と称されている。)。曲げ疲労によってフォーム内部の酸素循環が増加するので、軟質ポリウレタンフォームの可燃性が増大する。軟質ポリウレタンフォームは、家具の快適及び支持部材に使用された場合に、圧縮及び曲げを繰り返し受けることにより、長い期間を掛けて曲げ疲労を受けるので、合衆国連邦及び州の規則では現在、軟質ポリウレタンフォームの可燃性の基準が規定されている。このような規則の一つであるカリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117は、弾性充填材、例えば布張りされた(upholstered)家具内部の軟質ポリウレタンフォームの難燃性を試験するための要件、試験手法及び装置を規定している。
【0004】
難燃性及び軟質性を示す軟質ポリウレタンフォームを製造するための様々な手法が従来技術で知られている。例えば、難燃性を示す従来の多くの軟質ポリウレタンフォームは、トルエンジイソシアネート(TDI)と、通常1種以上のポリオールを含むイソシアネート反応性組成物とを反応させることにより製造される。今までは、TDIは、適度な難燃性及び軟質性を有する軟質ポリウレタンフォームを製造するのに最もよく使用されるイソシアネートであったが、最近では他の使用可能なイソシアネートより望ましくないものとして監視下に置かれるようになっている。
【0005】
軟質ポリウレタンフォームを製造するための他の手法は、イソシアネート反応性組成物中に難燃性添加剤を含有させることによる。例えば、アスベスト等の鉱物;ヒドロキシメチルホスホニウム塩等の塩類;及びハロカーボン等の合成物質を含む難燃添加剤を、イソシアネート反応性組成物中に含有させる場合がある。また、従来の他の手法は、適切なポリオール及び架橋剤の選択に依存する。例えば、従来の多くの軟質ポリウレタンオフォームは、重量平均分子量が3500g/mol未満のポリエーテルポリール及び公称官能基数が3を超える架橋剤から製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US5668378A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の軟質ポリウレタンフォームの多くが、1種以上の欠点、例えば、有害な原料及び成分の使用、数多くの成分の使用、処理及び成形の困難性、望ましくない快適性及び支持性、100kg/m3を超える密度及び曲げ疲労を受けた場合の可燃性に難渋している。
【0008】
従来の軟質ポリウレタンフォームの欠点のため、これらの欠点に苦しまない、家具に使用するための軟質ポリウレタンフォームを提供する機会が依然として残っている。具体的には、ある望ましくない成分を除外し、所望とする快適性及び支持性が維持される一方で、軟質ポイリウレタンフォームが受ける曲げ疲労の量にかかわらず、難燃性を示す軟質ポリウレタンフォームを提供する機会が依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、密度が100kg/m3未満の軟質ポリウレタンフォームを提供する。この軟質ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物との反応生成物を含む。このポリイソシアネート組成物はポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)成分と2,4’−MDIを含むジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)モノマー成分を含む。2,4’−MDIは、MDIモノマー(モノメリックMDI)成分100質量部に対して2,4’−MDIを35質量部より多い量で、MDIモノマー成分に存在している。
【0010】
イソシアネート反応性組成物は、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオール及びこの第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールとは異なる第二のポリオールを含む。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、キャリアポリオール及びそのキャリアポリールに分散したスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子を含む。キャリアポリールは、3500g/mol以上の重量平均分子量を有する。
【0011】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームを製造する方法も提供する。この方法は、ポリイソシアネート組成物を準備する工程、イソシアネート反応性組成物を準備する工程、ポリイソシアネート組成物をイソシアネート反応性組成物と反応させ、軟質ポリウレタンフォームを形成する工程を含む。
【0012】
軟質ポリウレタンフォームは、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117規則に従う可燃性試験において、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず難燃性を示す。更に、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、密度が100kg/m3未満であり、優れた快適性及び支持性を示し、適当な難燃性を得るためのトルエンジイソシアネート(TDI)を使用する必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム及びこの軟質ポリウレタンフォームを製造する方法を含む。軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、クッション、詰め物及びマットレス等、家具のクッション性(緩衝性)、支持性及び快適性を提供するために使用される。しかしながら、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、家具の用途を超えて、例えば、乗り物の騒音、振動及び粗さ(harshness)(NVH)の低減等の用途を有し得るものである。
【0014】
ここで使用する用語「軟質ポリウレタンフォーム」は、ポリウレタンフォームの一種のことをいい、硬質ポリウレタンフォームとは対照的関係である。一般的に、従来技術で知られているように、ポリウレタンフォームは、10%圧縮時の引張応力、即ち試験法DIN53421に従う圧縮強度が約15KPa未満である軟質ポリウレタンフォーム;10%圧縮時の引張応力が約15〜80KPaである準硬質(semi-rigid)ポリウレタンフォーム;及び10%圧縮時の引張応力が80KPaを超える硬質ポリウレタンフォームとしてとして分類される場合がある。軟質ポリウレタンフォームと硬質ポリウレタンフォームは両方ともポリオールとイソシアネートとの反応により形成されるが、用語「軟質ポリウレタンフォーム」は一般に、硬質ポリウレタンフォームよりも低い剛性を有するフォームのことを表す。特に、軟質ポリウレタンフォームは、軟質性多孔質生成物、即ち、ASTM D3574−03で定義されているように、200mm、25mm、25mmのサンプルが、18℃から29℃の間の温度で5秒間に1ラップの一定速度で直径25mmのマンドレルの周りを曲げられた場合に破断しない多孔質の有機ポリマー物質である。また、従来技術で知られているように、ポリオールの選択はポリウレタンフォームの剛性に影響を与える。すなわち、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、重量平均分子量が1000〜10000g/molであり且つ水酸基価が18〜115mgKOH/gであるポリオールから製造される。対照的に、硬質ポリウレタンフォームは、典型的には、重量平均分子量が250〜700g/molであり且つ水酸基価が300〜700mgKOH/gであるポリオールから製造される。更に、軟質ポリウレタンフォームは、一般に、硬質ポリウレタンフォームと比較してより多くのウレタン結合を含む一方で、硬質ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームと比較してより多くのイソシアヌレート結合を含み得る。また、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、低官能(f)の開始剤、すなわちf<4、例えばジプロピレングリコール(f=2)又はグリセリン(f=3)を有するポリオールから製造される。対照的に、硬質ポリウレタンフォームは、典型的には、高官能の開始剤、すなわちf≧4、例えばマンニッヒ塩基(f=4)、トルエンジアミン(f=4)、ソルビトール(f=6)又はスクロース(f=8)を有するポリオールから製造される。また、従来技術で知られているように、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、グリセリンを基礎とするポリエーテルポリオールから製造される一方、硬質ポリウレタンフォームは典型的には、三次元の架橋された気泡構造を形成する多官能のポリオールから製造され、これにより硬質ポリウレタンフォームの剛性が向上する。最後に、軟質ポリウレタンフォームと硬質ポリウレタンフォームは両方とも多孔質構造を含むが、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、硬質ポリウレタンフォームと比較して、力が加えられたときに空気が軟質ポリウレタンフォームを通過できる連続気泡壁、すなわち空洞をより多く含む。そのようなものとして、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、圧縮された後にその形が回復する。対照的に、硬質ポリウレタンフォームは、典型的には、力が加えられたときに空気が硬質ポリウレタンフォームを通過することを阻む独立気泡壁をより多く含む。そのため、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、緩衝及び支持用途、例えば家具の快適(comfort)及び支持(support)部材に有用である一方で、硬質ポリウレタンフォームは、典型的には、断熱が必要とされる用途、例えば装置及び建物のパネルに有用である。
【0015】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物との反応生成物を含んでいる。ここで使用するポリイソシアネート組成物という用語は、遊離ポリイソシアネートを含むものとして解釈されるべきである。また、ここで使用するポリイソシアネート組成物という用語は、典型的には、プレポリマーを除くものである。すなわち、プレポリマー、例えばポリイソシアネート中ポリオールは、典型的には、イソシアネート反応性組成物と余剰のポリイソシアネートとの反応生成物から形成されない。
【0016】
ポリイソシアネート組成物には、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)成分が含まれる。以下に詳細に説明するように、ポリメリックMDI成分は、典型的には、軟質ポリウレタン発泡反応の間に、反応性基、即ちNCO基を提供するポリイソシアネート組成物中に存在する。ポリメリックMDI成分は、典型的には、ジフェニルメタンジイソシアネートのオリゴマーの混合物、即ち、MDIとその2量体及び/又は3量体の混合物である。ポリメリックMDI成分は、NCO基を含む3個以上のベンゼン環を有する粗製MDIを含んでいる。ポリメリックMDIは、通常、酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドを縮合し、次いでホスゲン化し、得られたポリメリックアミン混合物を蒸留することにより得られる。ポリメリックMDI成分は、通常、ポリイソシアネート組成物100質量部に対して1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部の量でポリイソシアネート組成物に存在している。
【0017】
ポリイソシアネート組成物は更に、2,4’−MDIを含むMDIモノマー成分を含んでいる。ここで使用するMDIモノマーという用語は、2,4’−MDI、4,4’−MDI又は2,2’−MDI等のMDIの異性体を含む成分として定義づけられる。4,4’−MDI及び2,2’−MDIと比べて、2,4’−MDIは、非対称の分子であり、異なる反応性を有する2つのNCO基を提供する。そのため、理論に制限されることなく、2,4’−MDIは通常、軟質ポリウレタンフォームの安定性や硬化時間等の、軟質ポリウレタン発泡反応パラメータを最適化するために、ポリイソシアネート組成物に存在する。2,4’−MDIは、MDIモノマー成分100質量部に対して10質量部を超える量で、MDIモノマー成分に存在する。2,4’−MDIは、より典型的には、MDIモノマー成分100質量部に対して、35質量部を超え、より典型的には65質量部を超える量で、MDIモノマー成分中に存在する。
【0018】
MDIモノマー成分は、更に、2,2’−MDI及び4,4’−MDIを含んでいてよい。2,2’−MDIは、MDIモノマー成分に全く存在しないか、存在しても少量、すなわち、MDIモノマー成分100質量部に対して、0〜2質量部、好ましくは0.1〜1.5質量部だけしか存在していないことが好ましい。4,4’−MDIは、通常、MDIモノマー成分100質量部に対して0〜65質量部、好ましくは20〜55質量部、特に30〜35質量部の量で、MDIモノマー成分中に存在している。
【0019】
MDIモノマー成分は、通常、ポリイソシアネート組成物100質量部に対して80〜99質量部、好ましくは90〜98質量部の量で、ポリイソシアネート組成物中に存在している。
【0020】
特に、ポリイソシアネート組成物は、難燃性添加剤、例えば、特に制限されないが、アスベスト等の鉱物;ヒドロキシルメチルホスホニウム塩等の塩類;リン含有化合物;ハロゲン化難燃性添加剤;及びハロカーボン等の合成物質を含まない。また、ポリイソシアネート組成物は、通常、特別な用途で難燃性添加剤としても使用されているメラミンを含まない。難燃性添加剤は一般に高価なので、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物との反応生成物を含む本発明の軟質ポリウレタンフォームは、製造するのに費用効率が良い。本発明のポリイソシアネート組成物は、通常、トルエンジイソシアネート(TDI)、特に2,4’−TDI及び2,6’−TDIを含まない。TDIは、通常、MDIと比べて人間や環境に対して望ましくないので、本発明のポリイソシアネート組成物は、TDIを含む従来のポリイソシアネート組成物と比べて、より望ましい処理特性を有する。しかも、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、以下に詳細に説明するように、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117規則に従う可燃性試験において、難燃性を示す。
【0021】
理論に制限されることなく、ポリメリックMDI成分及びMDIモノマー成分を含むポリイソシアネート組成物は、軟質ポリウレタンフォームの優れた難燃性に寄与する。その理由は、MDIモノマー成分とポリメリックMDI成分は、軟質ポリウレタンフォームの溶融特性を変化させるからであると考えられる。例えば、MDIモノマー成分とポリメリックMDI成分は、燃焼中に付加的な炭化物(char)の形成を軟質ポリウレタンフォームに付与すると考えられる。付加的な炭化物の形成により、典型的には、炎が下部の軟質ポリウレタンフォームに接近することを防止する、安定で炭素に似たバリア(障壁)が形成される。より具体的には、ポリイソシアネート組成物は、軟質ポリウレタンフォームの結晶性に影響を及ぼすので、炎に曝されたときに、軟質ポリウレタンフォームは炎の中に残るよりもむしろ炎から離れて溶融する。すなわち、ポリイソシアネート組成物は、火炎伝播に対する炭化バリアを付与する連続的な結晶性マトリックスを本発明の軟質ポリウレタンフォームに付与すると考えられる。更に、ポリイソシアネート組成物は、本発明の軟質ポリウレタンフォームが熱に曝されたときの蒸気の生成を最小化すると考えられる。火炎伝播は気相を必要とするので、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117に従う可燃性試験において優れた難燃性を示す。
【0022】
ポリイソシアネート組成物は、典型的には、ポリイソシアネート組成物100質量部に対して約33質量部の量でポリイソシアネート組成物中に存在するNCO基を有している。更に、ポリイソシアネート組成物は、典型的には、25℃における粘度が17cpsであり、平均官能基数が約2.1である。ポリイソシアネート組成物は、通常、引火点が200℃であり、密度が25℃で1.20g/cm3であり、これにより、成分の混合の容易性等、加工性向上効果が奏され、これにより軟質ポリウレタンフォームの製造のコスト効率の向上に寄与する。本発明において好適なポリイソシアネート組成物として、ニュージャージー州のFlorham ParkのBASF Corporationから市販されているLupranate(登録商標)280イソシアネートが挙げられる。
【0023】
イソシアネート反応性組成物は、キャリアポリオール及びスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子を含む第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールを含み、このスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子は、以下に詳細に説明するように、キャリアポリオールに分散している。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、低官能基数、即ちf<4の開始剤、例えばグリセリン(f=3)又はトリメチロールプロパン(f=3)から形成される。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、典型的には、2〜4、より典型的には2.5〜3の官能基数(f)を有する。低官能の開始剤は、第一級ヒドロキシル基末端、例えばエチレンオキシドキャップを提供するためのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドによるオキシアルキル化反応を受ける。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、典型的には、極性を向上させ且つ第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールの反応性を向上させる第一級ヒドロキシル基を含んでいる。エチレンオキシドキャップは、典型的には、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオール100質量部に対して、10〜90質量部、より典型的には15〜60質量部の量で、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールに存在している。
【0024】
更に、ここで使用する用語「グラフトポリエーテルポリオール」は、キャリアポリオールに化学的にグラフト化された分散ポリマー固形物のことを意味する。分散ポリマー固形物は、スチレンとエチレン性不飽和ニトリルの結合物(combination)である。より具体的には、本発明の第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、分散したスチレンとアクリロニトリルとの共重合体の粒子を含んでいる。
【0025】
キャリアポリオールは、その技術分野において知られている全ての第一級ヒドロキシル基末端ポリオールであり、好ましくは分散したスチレンとアクリロニトリルの共重合体粒子の連続相として作用する。すなわち、スチレンとアクリロニトリルを共重合した粒子は、キャリアポリオール中に分散して分散体を、即ち、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルオールを形成する。キャリアポリオールは、典型的には、数平均分子量が3500以上、より好ましくは4000以上、更に好ましくは5000g/mol以上である。キャリアポリオールは、典型的には、軟質ポリウレタンフォームが軟質性及び100kg/m3未満に密度を有するように、上述した重量平均分子量を有する。すなわち、上述したキャリアポリオールの重量平均分子量は、本発明の軟質ポリウレタンフォームの軟質性に寄与するが、密度が100kg/m3未満の軟質ポリウレタンフォームの形成も可能にさせる。このキャリアポリオールの重量平均分子量は、典型的には、軟質ポリウレタンフォームが圧縮された後にその形を回復できる軟質ポリウレタンフォーム内で、ランダムなサイズで不規則な形の気泡、例えば隣接する気泡とサイズ及び形の両方で異なる気泡を提供する。
【0026】
スチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子は、キャリアポリオール100質量部に対して、5〜65、好ましくは10〜45、より好ましくは25〜35、更に好ましくは32質量部の量でキャリアポリオールに分散している。キャリアポリオール100質量部に対して32質量部の量で分散したスチレンとアクリロニトリルの共重合体粒子を有するキャリアポリオールの例は、New Jersey州のFlorham ParkのBASF Corporationから市販されているPuracol(登録商標)4830である。
【0027】
理論に制限されることなく、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、典型的には、イソシアネート反応性組成物中に存在し、最適な断面密度を有する軟質ポリウレタンフォームを形成し、軟質ポリウレタンフォームの固形部レベルを調整する。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルはまた、典型的には、軟質ポリウレタンフォームの加工性と硬さに寄与する。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールはまた、軟質ポリウレタンフォームの弾性に不利な影響を与えることなく、軟質ポリウレタンフォームの形成中に最適な連続気泡が生じることを可能にする。このようなものとして、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、典型的には、従来技術において、高弾性(HR)ポリオールとも呼ばれている。その理由は、これにより形成された軟質ポリウレタンフォームは優れた弾性を有するからである。HRポリオールはまた、第二級ヒドロキシル基末端ポリエーテルポリオールと比較して、軟質ポリウレタンフォームを形成する際に優れた加工性及び短縮した硬化時間を有する。更に、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、本発明の軟質ポリウレタンフォームの難燃性に寄与すると考えられる。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、典型的には、イソシアネート反応性組成物に存在する全てのポリオール100質量部に対して、5〜95、より好ましくは10〜90、更に好ましくは20〜80質量部の量で、イソシアネート反応性組成物中に存在する。また、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、典型的には、水酸基価が10〜60、好ましくは20〜40mgKOH/gである。
【0028】
更に、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、25℃において1000〜7000センチポアズの粘度を有する。これにより、成分の混合の容易性等、加工性向上効果が奏され、これにより軟質ポリウレタンフォームの製造のコスト効率の向上に寄与する。本発明において、好適な第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、ニュージャージー州のFlorham ParkのBASF Corporationから市販されているPluracol(登録商標)4830である。
【0029】
イソシアネート反応性組成物は更に、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールとは異なる第二のポリオールを含む。第二のポリオールは、典型的には、慣用のポリエーテルポリオールである。ここで使用する用語「慣用のポリエーテルポリオール」は、非グラフトポリエーテルポリオールを意味する。第二のポリオールは、低官能の、即ちf<4の、トリオールグリコール開始剤、例えばトリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン及び/又はグリセリンから形成される。そのため、第二のポリオールは、典型的には、官能基数が3.5以下、好ましくは2.2〜3.2である。低官能開始剤は、プロピレンオキシドにおるオキシアルキル化を受けて第二のポリオールのコアを提供し、エチレンオキシドによるオキシアルキル化反応を受けて第一級ヒドロキシル基末端、例えばエチレンオキシドキャップを提供する。第二のポリオールは、典型的には、第二のポリオールの極性及び反応性を向上させるための第一級ヒドロキシル基を含む。使用する場合、エチレンオキシドキャップは、典型的には、第二のポリオール100質量部に対して、0質量部を超え60質量部以下、より典型的には5〜25質量部の量で、第二のポリオールに存在する。
【0030】
理論に制限されることなく、第二のポリオールは、典型的には、軟質ポリウレタンフォームの安定性を最適化するため及び軟質ポリウレタンフォームに100kg/m3未満の密度を付与するために、イソシアネート反応性組成物中に存在する。また、第二のポリオールは、本発明の軟質ポリウレタンフォームの難燃性に寄与すると考えられる。
【0031】
第二のポリオールは、典型的には、重量平均分子量が1000以上、より典型的には3500以上、最も典型的には4000g/molであり、水酸基価が15〜45、より典型的には20〜40mgKOH/gである。第二のポリオールは、典型的には、軟質性及び100kg/m3未満の密度を有する軟質ポリウレタンを提供できるような上述した重量平均分子量を有する。すなわち、第二のポリオールの上述した重量平均分子量は、本発明の軟質ポリウレタンフォームの軟質性に寄与し、また、100kg/m3未満の密度を有する軟質ポリウレタンフォームの形成が可能となる。第二のポリオールの上述した重量平均分子量はまた、本発明の軟質ポリウレタンフォームを柔軟にし、優れた快適性及び支持性を付与する。第二のポリオールの重量平均分子量はまた、典型的には、軟質ポリウレタンフォームが圧縮された後にその形を回復できる軟質ポリウレタンフォーム内で、ランダムなサイズで不規則な形の気泡、例えば隣接する気泡とサイズ及び形の両方で異なる気泡を提供する。
【0032】
第二のポリオールはまた、典型的には、25℃において500〜2000センチポアズの粘度を有する。これにより成分の混合の容易性等、加工性向上効果が奏され、これにより軟質ポリウレタンフォームの製造のコスト効率の向上に寄与する。第二のポリオールは、典型的には、イソシアネート反応性組成物100質量部に対して5〜95、より典型的には20〜80質量部の量で、イソシアネート反応性組成物中に存在する。本発明において、好適な第二のポリオールとして、特に限定されないが、ニュージャージー州のFlorham ParkのBASF Corporationから市販されているPluracol(登録商標)945、Pluracol(登録商標)2100及びPluracol(登録商標)2090が挙げられる。
【0033】
イソシアネート反応性組成物は更に、公称官能基数(nominal functionality)が4未満である架橋剤を含む。架橋剤により、典型的には、軟質ポリウレタンフォームの共重合体セグメントの間の相分離が可能となる。すなわち、軟質ポリウレアタンフォームは、典型的には、硬質のウレア共重合体セグメントと軟質のポリオール共重合体セグメントの両方を含んでいる。架橋剤は、典型的には、化学的及び物理的に、硬質のウレア共重合体セグメントを軟質のポリオール共重合体セグメントに結合させる。そのため、架橋剤は、典型的には、軟質ポリウレタンフォームの硬性(hardness)を変化させるため、安定性を向上させるため、及び収縮を抑制するために、イソシアネート反応性組成物中に存在する。架橋剤は、典型的には、イソシアネート反応性組成物中に存在する全てのポリオール100質量部に対して0.01〜4、より典型的には1〜3質量部の量で、イソシアネート反応性組成物中に存在する。
【0034】
好適な架橋剤として、従来技術で知られているあらゆる架橋剤、例えば水中のジエタノールアミンが挙げられる。ジエタノールアミンは、典型的には、架橋剤100質量部に対して約85質量部の量で、架橋剤中に存在している。本発明において、好適な架橋剤の具体例は、ペンシルバニア州のAllentownのAir Products and Chemicalsから市販されているDabco(登録商標)DEOA−LFである。
【0035】
イソシアネート反応性組成物は、典型的には更に触媒成分を含んでいる。触媒成分は典型的には、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物との間の軟質ポリウレタン発泡反応に触媒作用を及ぼすためにイソシアネート反応性組成物に存在する。触媒成分は典型的には、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物との反応生成物を形成するためには消費されない。すなわち、触媒成分は、典型的には、軟質ポリウレタン発泡反応に関与するが消費はされない。触媒成分は、典型的には、イソシアネート反応性組成物中に存在する全てのポリオール成分100質量部に対して0.01〜1、より典型的には0.05〜0.50質量部の量で、イソシアネート反応性組成物に存在する。触媒成分としては、従来技術で知られている好適な触媒又は触媒混合物が挙げられる。好適な触媒の例としては、特に限定されないが、ゲル化触媒、例えば、ジプロピレングリコール中の結晶性触媒;発泡触媒は例えばジプロピレングリコール中のビス(ジメチルアミノエチル)エーテル;及びスズ触媒、例えばオクチル酸スズである。本発明において、好適な触媒成分は、ペンシルバニア州のAllentownのAir Products and Chemicalsから市販されているDabco(登録商標)33LVである。
【0036】
イソシアネート反応性組成物は更に添加剤を含んでいても良い。添加剤は、典型的には、界面活性剤、発泡剤、ブロック剤、染料、顔料、希釈剤、溶媒、各種機能性添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線安定剤、殺生物剤、接着促進剤、帯電防止剤、離型剤、香料、及びこれらの組み合わせである。好適な添加剤には、技術分野で知られているあらゆる染料、顔料、希釈剤、溶媒及び各種機能性添加剤が含まれる。使用する場合には、添加剤は、典型的には、イソシアネート反応性組成物に存在する全てのポリオール100質量部に対して0質量部を超え15質量部以下、より典型的には1〜10質量部の量で、イソシアネート反応性組成物中に存在する。
【0037】
イソシアネート反応性組成物の添加剤には典型的には界面活性剤が含まれ、軟質ポリウレタンフォームの気泡構造を制御し、各成分の混和性及びポリウレタンフォームの安定性を改善する。好適な界面活性剤として、従来技術で知られている全ての界面活性剤、例えばシリコール及びノニルフェノールエトキシレートが挙げられる。通常、界面活性剤はシリコーンである。より具体的にはシリコーンは典型的にはポリジメチルシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体である。界面活性剤は、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールと第二のポリオールの反応性に応じて選択してよい。界面活性剤は、典型的には、イソシアネート反応性組成物中に存在する全てのポリオール100質量部に対して0.5〜2質量部の量で、イソシアネート反応性組成物中に存在する。本発明において、界面活性剤の具体的な例は、ウエストバージニア州のFriendlyのMomentive Performance Materialsから市販されているU−2000シリコーンである。
【0038】
イソシアネート反応性組成物の添加剤には、典型的には発泡剤が含まれ、軟質ポリウレタンフォームの形成を促進する。すなわち、従来技術で知られているように、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物の間の軟質ポリウレタンフ発泡反応の間、発泡剤は、軟質ポリウレタン中で気泡空洞を形成する発泡ガスの放出を促進する。発泡剤は、物理的発泡剤でも化学的発泡剤でもよい。
【0039】
用語「物理的発泡剤」とは、ポリイソシアネート成分及び/又はイソシアネート反応性組成物との化学的反応によらず、発泡ガスを供給する発泡剤のことをいう。物理的発泡剤は、ガスでも液体でもよい。液体の物理的発泡剤は、典型的には、加熱されたときにガスに蒸発し、典型的には冷却した時に液体に戻る。物理的発泡剤は、典型的には、軟質ポリウレタンフォームの熱伝導性を減少させる。本発明において、好適な物理的発泡剤として、液体CO2、アセトン及びこれらの混合物が挙げられる。最も典型的な物理的発泡剤は、典型的には、オゾン破壊ポテンシャルがゼロである。
【0040】
用語「化学的発泡剤」とは、ポリイソシアネート組成物又は他の成分と化学的に反応して発泡ガスを放出する発泡剤のことをいう。本発明において好適な化学的発泡剤の例として、ギ酸、水及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
発泡剤は、イソシアネート反応性組成物中の全てのポリオール100質量部に対して0.5〜20質量部の量で、イソシアネート反応性組成物中に存在する。本発明において好適な発泡剤の具体的な例は水である。
【0042】
イソシアネート反応性組成物の添加剤として、更にブロック剤が挙げられる。ブロック剤は典型的には、クリームタイムを遅らせるため及び軟質ポリウレタンフォームの硬化時間を増やすために、イソシアネート反応性組成物の添加剤に存在する。好適なブロック剤としては、従来から知られているあらゆるブロック剤が挙げられる。典型的には、ブロック剤は、ポリマー酸、すなわち、繰り返し単位と複数の酸性官能基を有するポリマーである。当業者により、典型的には、ポリイソシアネート組成物の反応性に応じてブロック剤が選択される。ブロック剤は、典型的には、イソシアネート反応性組成物に存在する全てのポリオール100質量部に対して、0.05〜1.5質量部の量でイソシアネート反応性組成物中に存在する。本発明において、界面活性剤の具体的な例は、ペンシルバニア州のAllentownのAir Products and Chemicals,Incから市販されているDabco(登録商標)BA100である。
【0043】
更に、本発明の軟質ポリウレタンフォームは典型的には難燃剤を含まない。予想外にも、難燃剤を含まない場合であっても、その軟質ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117規定に従う可燃性試験において難燃性を示す。すなわち、軟質ポリウレタンフォーム内部で酸素の循環が増え、軟質ポリウレタンフォームの難燃性が典型的には上昇する、脆弱な気泡構造等の曲げ疲労の影響を受けた場合であっても、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、予想外にも、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず難燃性を示す。軟質ポリウレタンフォームに難燃性を付与するために従来から使用されていたTDIよりもむしろ、上述した重量平均分子量を有する第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールと第二のポリオールと組み合わせて、上述した量のポリメリックMDIとMDIモノマーを含有させることにより、予想外にも、曲げ疲労の量とは関係なく、難燃性を有する軟質ポリウレタンフォームが提供されると考えられる。また、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールと第二のポリオールを組み合わせて、上述した量のポリメリックMDIとMDIモノマーを含有させることにより、予想外にも、軟質性及び100kg/m3未満の密度を有する軟質ポリウレタンフォームが提供される。特に、上述したように、理論に制限を受けることなく、ポリメリックMDI成分とMDIモノマー成分を含むポリイソシアネート組成物は、軟質ポリウレタンフォームの優れた難燃性に寄与する。その理由は、MDIモノマー成分及びポリメリックMDI成分は、軟質ポリウレタンフォームの溶融特性を変化させるからであると考えられる。より具体的には、このポリイソシアネート組成物により、火炎伝播に対する炭化障壁を付与する連続的結晶性マトリックスが、本発明の軟質ポリウレタンフォームに付与されると考えられる。更に、ポリイソシアネート組成物は、本発明の軟質ポリウレタンフォームが熱に曝されたときに蒸気の生成を最小化すると考えられる。火炎伝播は気相を必要とするので、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117に従う可燃性試験において優れた難燃性を示す。
【0044】
軟質ポリウレタンフォームを形成する方法は、ポリイソシアネート組成物を準備する工程、イソシアネート反応性組成物を準備する工程、及びポリイソシアネートをイソシアネート反応性組成物と反応させて軟質ポリウレタンフォームを形成する工程を含む。この方法は更に、触媒成分を準備する工程及び触媒成分の存在下でポリイソシアネート成分をイソシアネート反応性組成物と反応させて軟質ポリウレタンフォームを形成する工程を含んでいてもよい。
【0045】
ポリイソシアネート組成物及びイソシアネート反応性組成物は、典型的には、0.7以上、より典型的には0.9以上のイソシアネートインデックスで反応させる。イソシアネートインデックスという用語は、イソシアネート反応性組成物中のヒドロキシル基に対するポリイソシアネート成分中のNCO基の比のことをいう。本発明の軟質ポリウレタンフォームは、室温又は僅かに昇温させた温度、例えば15〜30℃において、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物を混合し、混合物を調製することにより形成してよい。軟質ポリウレタンフォームがモールド内で形成されるある実施の形態では、モールド内で処理する前に、ポリイソシアネート組成物とイソシアネート反応性組成物を混合して混合物を調製してよい。例えば、混合物を開放モールドに流し込んでもよく、混合物を密閉モールドに注入してもよい。別の方法として、ポリイソシアネート組成物及びイソシアネート反応性組成物をモールド内で混合して混合物を調製してもよい。この実施の形態では、軟質ポリウレタン発泡反応が完了すると、軟質ポリウレタンフォームにモールドの形が付される。軟質ポリウレタンフォームは、例えば、低圧モールド装置、低圧スラブコンベアシステム、高圧モールド装置、高圧スラブコンベアシステムで、及び/又はハンドミキシングで形成してもよい。
【0046】
ある実施の形態では、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、細長い矩形又は円形の形を有する軟質ポリウレタンフォームを形成するスラブコンベアシステムで形成又は処理する。軟質ポリウレタンフォームの優れた加工性のため、スラブコンベアシステムで軟質ポリウレタンフォームを形成することが特に有利である。従来技術で知られているように、スラブコンベアシステムは、典型的には、各成分を混合するための機械的ミキシングヘッド、軟質ポリウレタン発泡反応が行われる容器(trough)、軟質ポリウレタンフォームのライズ及び硬化のための可動コンベア、及び膨張する軟質ポリウレタンフォームを可動コンベアに誘導するための落下板(fallplate)ユニットを含む。
【0047】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、100kg/m3未満の密度を有する。典型的には、軟質ポリウレタンフォームは10以上100kg/m3未満、より典型的には10以上65kg/m3以下、最も典型的には15以上45kg/m3以下の密度を有する。驚くべきことに、密度が100kg/m3であり且つ難燃剤を含んでいないにも関わらず、この軟質ポリウレタンフォームは、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117規則に従う可燃性試験において、その軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、難燃性を示す。すなわち、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、荷重サイクルを繰り返し受けさせて曲げ疲労を誘導した後であっても、優れた難燃性を示し、カリフォルニア技術公報117のセクションA及びセクションDに規定されている試験方法に従う垂直直火試験(Vertical Open Flame test)、耐シガレット性(Cigarette Resistance)及び燻りスクリーニング(Smoldering Screening)試験の要件を充足する。
【0048】
より具体的には、垂直直火試験では、軟質ポリウレタンフォームが直火から離れた後に燃焼する時間、即ち残炎時間(afterflame time)を測定する。垂直直火試験の結果は、残炎時間と共に、炭化(char)の長さ、即ち軟質ポリウレタンフォームの炎に曝された末端から、生じた空洞領域の上端までの距離として記録される。耐シガレット性及び燻りスクリーニング試験は、軟質ポリウレタンフォームの燃焼及び燻りに対する抵抗性を評価するものである。
【0049】
予想外にも、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、5秒未満、より典型的には3秒未満、最も典型的には1秒未満の残炎時間を示す。すなわち、軟質ポリウレタンフォームは、直火から離れた後、5秒を超えて燃焼が持続しないので、軟質ポリウレタンフォームが家具の快適及び支持部材に使用された場合に火傷のリスクが最小限に抑えられる。また、軟質ポリウレタンフォームは、予想外にも、炭化長さ、即ち、炎に曝された軟質ポリウレタンフォームの末端から、軟質ポリウレタンフォームの空洞領域の上端までの距離が、6インチ未満、より典型的には3インチ未満である。すなわち、炎に曝された軟質ポリウレタンフォームの末端から、生じた空洞領域の上端までの距離が6インチ未満である。これにより、この軟質ポリウレタンフォームにより、ろうそく、マッチ又はタバコ用ライター等の直火に曝された家具によって引き起こされる火傷のリスクが最小化される。更に、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、曲げ疲労を受けていない場合に燻りを行った後、その重量の80%超、より典型的には90%超、最も典型的には99%超の重量を維持する。予想外にも、曲げ疲労を受けた後、軟質ポリウレタンフォームはその重量の80%超の重量を維持する。すなわち、曲げ疲労を受けさせた後であっても、軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、その燻り前の重量の80%超の重量を維持する。曲げ疲労は、軟質ポリウレタンフォームの気泡構造を脆弱にし、フォーム内部の酸素循環を増加させるので、曲げ疲労は通常、燻っているタバコや直火等の源からの軟質ポリウレタンフォームの可燃性を上昇させる。しかしながら、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、予想外にも、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず難燃性を示す。
【0050】
更に、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、その軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず難燃性を示すだけでなく、優れた快適性及び支持性、例えば軟質性及び安定性を示す。
【0051】
特に、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、ASTM D3574に従って測定されるように、10psiを超える引張強度、100%を超える伸び、及び1.0ppiを超える引裂強度を示す。引張強度、引裂強度及び伸びの性質は、製造又は組立て作業中の取り扱いに耐える軟質ポリウレタンフォームの能力を評価するものである。そのため、上述した優れた引張強度、引裂強度及び伸び値を考慮すると、軟質ポリウレタンフォームは製造費用効率の向上効果がある。
【0052】
軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、45%を超える弾性(resilience)を示す。弾性は、圧縮力が除かれた後の「跳ね返り(bounce back)」又は反発(rebound)についての軟質ポリウレタンフォームの性質を測定するものであり、家具に使用する軟質ポリウレタンフォームにとって特に重要な支持性質である。軟質ポリウレタンフォームの弾性は、参考高さから軟質ポリウレタンフォーム上にスチールボールを落下させ、そのボールのリバウンドの最高高さを計測することにより測定される。弾性は、参考高さに対する百分率で示される。
【0053】
軟質ポリウレタンフォームはまた、典型的には、ASTM D4065に従って測定される、擦り切れ(wear)及び引裂(tear)、即ち曲げ疲労(flex fatigue)に対する抵抗性を示す。擦り切れ及び引裂に対する抵抗性は、軟質ポリウレタンフォームを繰り返し圧縮し、40%の押込力撓み(Indentation force deflection:IFD)の変化を計測することにより測定される。40%IFDは、50in2の円形押込フット(indentor foot)を、軟質ポリウレタンフォームにその厚さの40%の長さ押込むのに必要な、ポンドで表わされる力の量として定義される。曲げ疲労を測定するため、軟質ポリウレタンフォームの元の高さを計測し、40%IFDに相当する力の量を測定する。次に、軟質ポリウレタンフォームを、40%IFDの力で80000サイクル繰り返し打ち叩く。打ち叩いた後、軟質ポリウレタンフォームの高さを再度計測し、高さの損失の百分率を計算する。軟質ポリウレタンフォームの高さの損失の百分率は、典型的には、10%未満である。
【0054】
また、軟質ポリウレタンフォームの25%IFDを得るために必要な力の量は、典型的には、5〜125lb/50in2である。軟質ポリウレタンフォームの支持要素(support factor)、即ち、65%IFDを達成するために要求される力の量割る25%IFDを達成するために要求される力の量は、典型的には2.0を超える。そのため、上述したように、軟質ポリウレタンフォームは、家具に使用した場合に優れた快適性及び支持性を示す。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、如何なる場合にも本発明の範囲を限定するように解釈されるべきものではない。
【0056】
軟質ポリウレタンフォームは、上記で説明した方法により製造した。より具体的には、軟質ポリウレタンフォームを、表1に示した特定のポリイソシアネート組成物及びイソシアネート反応性組成物から形成した。示したもの以外については、表1の量は、軟質ポリウレタンフォーム処方物中の全てのポリオール100質量部に対する質量部である。
【0057】
【表1】

【0058】
イソシアネートAは、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)成分及び2,4’−MDIを含むジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)モノマー成分を含むポリイソシアネート組成物である。2,4’−MDIは、MDIモノマー成分100質量部に対して35質量部を超える量で、MDIモノマー成分中に存在している。ポリメリックMDI成分は、ポリイソシアネート組成物100質量部に対して40質量部未満の量で、ポリイソシアネート組成物中に存在している。
【0059】
イソシアネートBはトルエンジイソシアネート(TDI)である。
【0060】
ポリオールCは、キャリアポリオールC1及びスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子を含む第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールである。スチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子は、100質量部のキャリアポリオールC1に対して約30質量部の量で、キャリアポリオールC1に分散している。キャリアポリオールC1の重量平均分子量は約5000g/molである。第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、第一級ヒドロキシル基末端を付与するエチレンオキシドキャップを有する、グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールである。エチレンオキシドキャップは、典型的には、ポリオールC100質量部に対して5〜20質量部の量で、第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールに存在している。
【0061】
ポリオールDは、第一級ヒドロキシル基を付与するエチレンオキシドキャップを有する、トリプロピレングリコールを開始剤とする慣用のポリエーテルポリオールである。ポリオールDの重量平均分子量は約4000g/molであり、公称官能基数は3である。ポリオールDは、約35の水酸基価を有する。エチレンオキシドキャップは、ポリオールD100質量部に対して5〜20質量部の量で、ポリオールDに存在している。
【0062】
ポリオールEは、阻害剤パッケージ(inhibitor package)を含む慣用の第一級ヒドロキシル基末端トリオールである。ポリオールEの水酸基価は25mgKOH/gであり、公称官能基数は3である。
【0063】
ポリオールFは、キャリアポリオールF1及びスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子を含むグラフトポリエーテルポリオールである。スチレンアクリロニトリル共重合体粒子は、100質量部のキャリアポリオールF1に対して25質量部を超える量で、キャリアポリオールF1に分散している。ポリオールFの水酸基価は30mgKOH/g未満であり、粘度は25℃において2950cpsである。キャリアポリオールF1は、第一級ヒドロキシル基末端を付与するエチレンオキシドキャップを有する、グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールである。エチレンオキシドキャップは、100質量部のキャリアポリオールF1に対して5〜20質量部の量で、キャリアポリオールF1に存在している。
【0064】
架橋剤Gは、水中ジエタノールアミンである。ジエタノールアミンは、架橋剤G100質量部に対して約85質量部の量で、架橋剤Gに存在している。
【0065】
架橋剤Hは、官能基数が3<であり、水酸基価が860mgKOH/gである。
【0066】
溶媒Jは、液体発泡剤である。
【0067】
触媒Kは、33%のトリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液である。
【0068】
触媒Lは、70%のビス(ジメチルアミノエチル)エーテルのジプロピレングリコール溶液である。
【0069】
触媒Mは、50%のオクチル酸第一スズのジオクチルフタレート溶液である。
【0070】
触媒Nは、ジブチルスズジラウレートである。
【0071】
界面活性剤Pは、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体である。
【0072】
ブロック剤Qは、イソシアネートと反応してそこで遅延性作用の触媒を形成するポリマー酸である。ブロック剤Qは、水酸基価が210mgKOH/gであり、21℃における比重が1.1g/cm3であり、酸価が140mgKOH/gである。
【0073】
難燃剤Rは、トリス(1,3−ジクロロ−2−プロピル)ホスフェートである。
【0074】
実施例1−2及び比較例3−5の各処方物を、表2に示す処理条件に従って、Cannon−Viking Maxfoam装置で処理した。Cannon−Viking Maxfoam装置は、各成分を混合するための機械的ミキシングヘッド、軟質ポリウレタン発泡反応が行われるトラフ、軟質ポリウレタンフォームのライズ及び硬化用コンベア、及び膨張する軟質ポリウレタンフォームを可動コンベア上に誘導させるための落下板ユニットを有する。
【0075】
具体的には、実施例1及び2の軟質ポリウレタンフォームを形成するため、ポリイソシアネート組成物のイソシアネートAの第一の流れを、約73oFの温度で805psiの圧力において機械的ミキシングヘッドに送った。実施例1及び2のイソシアネート反応性組成物の第二の流れも約80oFの温度で機械的ミキシングヘッドに送った。機械的ミキシングヘッドによって第一の流れと第二の流れを4000rpmの速度で混合し、実施例1と2の反応混合物を調製した。実施例1及び2の反応混合物を、ポリイソシアネート組成物及びイソシアネート反応性組成物の反応が継続するトラフ(容器)に供給した。膨張する軟質ポリウレタンフォームをトラフの頂部から落下板ユニット上に送った。膨張する軟質ポリウレタンフォームを、落下板ユニットによって、軟質ポリウレタンフォームがライズ及び硬化を完了するためのコンベア上にそのコンベアに沿って誘導した。
【0076】
比較例3−5の軟質ポリウレタンフォームを同様にして製造した。すなわち、比較例3−5の軟質ポリウレタンフォームを、表2に示す処理条件に従って、Cannon−Viking Maxfoam装置で処理した。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例1−2及び比較例3−5で得られた軟質ポリウレタンフォームを24〜48時間硬化した。次に、様々な快適性及び支持性、即ち、物理的性質及び疲労、並びに可燃性の評価を測定する種々の試験に使用するために、実施例1−2及び比較例3−5の軟質ポリウレタンフォームを、4”厚のサンプルに切断した。
【0079】
このサンプルについて、ASTM D3574に従って68℃、相対湿度50%において密度を、25%の押込力撓み(indentation force deflection)(IFD)を、及び支持要素(support factor)を測定するために試験を行った。25%IFDとは、50in2の円形の押込フット(indentor foot)を、サンプルの厚さの25%の長さ、サンプルに押込む(indent)ために必要とされるポンドで表わされる力の量と定義される。同様に、65%IFDは、サンプルの厚さの65%の長さ、そのサンプルに押込フットを押込むのに必要とされるポンドで表わされる力の量のことをいう。支持要素は、65%IFDを得るために必要とされる力の量を25%IFDを得るために必要とされる力の量で除したものである。
【0080】
サンプルを、ASTM D3574に従って、引張強度、伸び及び引裂強度の試験を行った。引張強度、引裂強度及び伸びの性質は、製造又は組み立て時の取扱いに持ちこたえる、軟質ポリウレタンフォームの能力である。具体的には、引張強度は、軟質ポリウレタンフォームを破断点まで伸ばすために必要とされるlbs/in2で表わされる力である。引裂強度は、分裂及び破断が開始した後に軟質ポリウレタンフォームの引裂を継続させるのに必要な力の計測値であり、lbs/in(ppi)で表わされる。1.0ppiを超える引裂強度値は、快適性及び支持性部材である家具や寝具等の固体の基材にステープラーで止められる、縫われる又は鋲で留められる軟質ポリウレタンフォームを必要とする用途に特に好ましい。最後に、伸びは、軟質ポリウレタフォームが、破断する前の元の長さから伸ばし得る百分率の測定値である。
【0081】
軟質ポリウレタンフォームの弾性は、ASTM D3574に従って、スチールボールを参考高さからサンプル上に落下させ、ボールのリバウンドのピーク高さを測定することにより計測される。参考高さの百分率として表されるボールのリバウンドのピーク高さは、軟質ポリウレタンフォームの弾性である。
【0082】
実施例1−2及び比較例3−5の軟質ポリウレタンフォームについて、ASTM D4065に従って、軟質ポリウレタンフォームを繰り返し圧縮し、IFDの変化を計測することにより、擦り切れ(wear)及び引裂(tear)、即ち曲げ疲労(flex fatigue)、に対する抵抗性について試験を行った。曲げ疲労を計測するため、サンプルの元の高さを計測し、このサンプルにとっての40%IFDに相当する量の力を決定した。次に、サンプルを、40%IFDの力で80000サイクル繰り返し打ち叩いた。打ち叩いた後、サンプルの高さと40%IFD力を再度測定し、高さの損失及び硬さの損失の百分率を計算した。
【0083】
また、実施例1−2及び比較例3−5の軟質ポリウレタンフォームについて、静的疲労(static fatigue)、圧縮永久歪み(compression set)、及び圧縮力撓み(compression force deflection:CFD)を、それぞれASTM D3574に従って評価した。静的疲労は、軟質ポリウレタンフォームの耐荷重性能の損失の評価である。静的疲労は、軟質ポリウレタンフォームに、室温で17時間、サンプルの元の高さの75%の一定圧縮を受けさせることによって測定される。また、圧縮永久歪みは、軟質ポリウレタンフォーム内部における気泡構造の曲げ又は崩壊(collapse)による、圧縮後の軟質ポリウレタンフォームの元の高さの永続的な部分的現象の評価である。圧縮永久歪みは、軟質ポリウレタンフォームを、90%圧縮、すなわち元の厚さの10%に圧縮し、この圧縮下で70℃で22時間軟質ポリウレタンフォームを維持することにより測定される。圧縮永久歪みは、元の最初の圧縮度の百分率として表される。最後に、CFDは、軟質ポリウレタンフォームの耐荷重性能の評価であり、サンプルよりも大きい平坦な圧縮フットで軟質ポリウレタンフォームを圧縮することにより計測される。CFDは、平坦な圧縮フットにより与えられる力の量であり、典型的には、軟質ポリウレタンフォームの25%、40%、50%及び/又は65%の圧縮で表される。
【0084】
また、実施例1−2及び比較例3−5の軟質ポリウレタンフォームについて、圧縮永久歪み及びCFDのための湿気劣化及び、ASTM D3547に従う引張強度及び伸びのための熱劣化も受けさせる。湿気劣化は、100%の相対湿度、220oF、3時間の条件下での加速劣化試験である。熱老化は、220oF、3時間の条件下での加速劣化試験である。熱劣化させた軟質ポリウレタンフォームの試験結果を表3にHTAGとして示す。
【0085】
また、サンプルについて、ASTM D2574の空気流動試験に従って空隙率を測定した。空気流動試験は、空気が軟質ポリウレタンフォームを通過する容易さを測定する。空気流動試験は、チャンバ上のキャビティ内にサンプルを置くこと及び特定の一定の空気圧力の差を生じさせることから構成される。空気流動値は、1分間当たり立方フィート内で、一定の空気圧力差を維持するのに必要な空気流動の割合である。すなわち、空気流動値は、2”×2”×1”のサンプルの全域で125Paの一定の空気圧力差を維持するのに必要な、標準温度及び圧力における1秒あたりの空気の体積である。
【0086】
重要なことは、サンプルについて、曲げ疲労を受けさせた後の可燃性を評価したことである。各サンプルを、カリフォルニア技術公報(Carifornia Technical Bulletin)117のセクションA及びセクションDの要件、即ち垂直直火試験(Vertical Open Flame test)並びに耐シガレット性(Cigarette Resistance)及び燻りスクリーニング(Smoldering Screening)試験を、充足するか否か測定するために試験を行った。具体的には、垂直直火試験は、サンプルが直火から離れた後に燃焼する時間、即ち残炎時間を測定する。垂直直火試験のため、サンプルをバーナー上0.75インチに垂直に吊り下げて、サンプルの下端の中央で12秒間垂直に炎を当てる。垂直直火試験の結果は、炭化長さとして、即ち、サンプルの炎に曝された末端から生じた空洞領域の上端までの距離として記録される。垂直直火試験は、最初のフォームサンプル及び熱劣化させた条件のフォームサンプルについて行った。
【0087】
耐シガレット性及び燻りスクリーニング試験は、タバコの着火と同じような燃焼及び燻りに対する軟質ポリウレタンフォームの抵抗性を測定する。耐シガレット性と燻りスクリーニング試験の両方において、試験前に各サンプルを少なくとも24時間、70+/−5oF、相対湿度55%未満の状態においた。
【0088】
燻りスクリーニング試験のため、フォームのサンプルを、曲げ疲労を受けさせる前と後の両方について試験を行った。サンプルに曲げ疲労を受けさせる前の参考値を明らかにするため、軟質ポリウレタンフォームの各サンプルの重量を測定し、試験前の重量を記録した。サンプルをL字型構成に配置した。すなわち、サンプルの水平部を、サンプルの垂直部に隣接及び接触させて配置した。火のついたタバコを、サンプルの水平部と垂直部の両方に隣接及び接触させて置き、このサンプル及び火のついたタバコを、コットン又はコットン/ポリエステルのベッドシーツ材料で覆った。火のついたタバコを、全ての燃焼の形跡が完了するまで少なくとも5分間燻ぶらせた。燃焼が終わった後、サンプルの燃えなかった部分の重量を図り、試験前の重量と比較して燻られていない軟質ポリウレタンフォームの百分率を測定した。表3に、その結果を打ち叩き疲労前に維持された重量%として示す。
【0089】
サンプルに曲げ疲労を受けさせた後、軟質ポリウレタンフォームの耐シガレット性を評価するため、サンプルをまず、40%IFDの力で80000サイクルの間繰り返し打ち叩きを行い、軟質ポリウレタンフォームの各サンプルの重量を計り、曲げ疲労後の試験前の重量を記録した。燻りスクリーニング試験は上記で説明したように行った。燃焼が終わった後、サンプルの燃えていない部分の重量を計り、曲げ疲労後の試験前の重量と比較し、燻っていない軟質ポリウレタンフォームの百分率を測定した。表3にその結果を打ち叩き疲労後に維持された重量%として示す。
【0090】
実施例1−2及び比較例3−5の軟質ポリウレタンフォームの、物理的性質、疲労及び可燃性の数値の要約を表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
実施例1及び実施例2の軟質ポリウレタンフォームは、実施例2の処方物が難燃剤を含む一方で実施例1の処方物は難燃剤を含まないことを除き、同一の処方物を含んでいる。また、実施例1及び実施例2の軟質ポリウレタンフォームは、80000サイクルの打ち叩き(pounding)を受けさせた場合の高さの損失の百分率が同じである。しかしながら、予想外にも、実施例1の軟質ポリウレタンフォームは、難燃剤を含んでいなくても、その軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、カリフォルニア117規則に従う可燃性試験において難燃性を示す。更に、実施例1の軟質ポリウレタンフォームは、難燃剤を含まないので、軟質ポリウレタンフォームの製造費用効率が向上する。
【0093】
対照的に、比較例4の軟質ポリウレタンフォームは、難燃性添加剤を含んでいたが、カリフォルニア技術公報117の耐シガレット性及び燻りスクリーニング試験に不合格だった。対照的に、実施例1、実施例2、比較例3及び比較例5の軟質ポリウレタンフォームは全て、カリフォルニア技術公報117の耐シガレット性及び燻りスクリーニング試験に合格した。表1に示されているように、実施例1、実施例2、比較例3及び比較例5の軟質ポリウレタンフォームは全てポリールDを含んでいるが、比較例4の軟質ポリウレアタンフォームはポリオールDを含んでいない。より具体的には、実施例1、実施例2及び比較例3の軟質ポリウレタンフォームは全てポリオールC及びポリオールDを含んでいるが、比較例4の軟質ポリウレタンフォームはポリオールDを含んでいない。そのため、特にあらゆる理論に制限されることなく、実施例1−2及び比較例3及び5の軟質ポリウレタンフォームの第二のポリオール、ポリオールDは、軟質ポリウレタンフォームの難燃性に寄与すると考えられる。
【0094】
また、比較例5の軟質ポリウレタンフォームは、カリフォルニア技術公報117の垂直直火試験に不合格だった。上述したように、比較例5の軟質ポリウレタンフォームは、難燃性添加剤を含んでいない。反対に、実施例1−2及び比較例3−4の軟質ポリウレタンフォームは全て、カリフォルニア技術公報117の垂直直火試験に合格した。表1に示されているように、実施例1−2及び比較例3−4の軟質ポリウレタンフォームは全てポリオールCを含んでいるが、比較例5の軟質ポリウレタンフォームはポリオールCを含んでいない。そのため、理論に制限されることなく、実施例1−2及び比較例3−4の軟質ポリウレタンフォームの第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオール、ポリオールCは、軟質ポルレタンフォームの難燃性に寄与すると考えられる。
【0095】
最後に、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず難燃性を示し、カリフォルニア技術公報117の垂直直火試験並びに耐シガレット性及び燻りスクリーニング試験に合格した3つのサンプル、即ち実施例1、実施例2及び比較例3のうち、実施例1の軟質ポリウレタンフォームのみが、難燃性添加剤及びTDIを含まない処方物で難燃性を示した。すなわち、予想外にも、実施例1の軟質ポリウレタンフォームは、その軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、カリフォルニア技術公報117に従う可燃性試験において難燃性を示し、難燃性添加剤又はTDIを含んでいない。それどころか、実施例1の軟質ポリウレタンフォームは難燃性を示し、MDIを含む処方物から形成される。TDIは、典型的には、MDIよりも望ましくないので、実施例1のポリイソシアネート組成物は、TDIを含む従来のポリイソシアネートと比較して、より望ましい処理特性を示す。しかも、実施例1の軟質ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、カリフォルニア技術公報117に従う可燃性試験において難燃性を示す。
【0096】
特に、軟質ポリウレタンフォームの気泡構造を脆弱にし、フォーム内部の酸素循環を増加させ、典型的には軟質ポリウレアタンフォームの可燃性が増大する曲げ疲労を受けた場合であっても、実施例1の軟質ポリウレタンフォームは、予想外にも、軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず難燃性を示す。実施例1の軟質ポリウレタンフォームのみが、曲げ疲労を受ける前と後の両方でその重量の99%超を維持し、垂直直火試験並びに耐シガレット性及び燻りスクリーニング試験に合格した。曲げ疲労を繰り返し受けた後であっても、実施例1の軟質ポリウレタンフォームは、実施例1の処方物中に慣用の難燃剤を含有させずとも、難燃性を示す。軟質ポリウレタンフォームに難燃性を付与するために慣用的に使用されているTDIよりむしろ、上述した重量平均分子量を有する第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールと第二のポリオールとを組み合わせて、ポリメリックMDIとMDIモノマーを上述した量で含有させることにより、予想外にも、曲げ疲労の量にかかわらず、軟質ポリウレタンフォームに難燃性が付与されると考えられる。
【0097】
本発明は、説明に合った手法で記述しており、使用されている用語は、限定して解釈するよりもむしろ記載の言葉の本質で解釈されるべきである。言うまでもなく、本発明の多くの変更及び変化が上述の教示を考慮して可能である。本発明は、具体的に記述したことよりも別な方法で実用的であってよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)成分及び2,4’−MDIを含むジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)モノマー成分を含むポリイソシアネート組成物(但し、前記2,4’−MDIが、前記MDIモノマー成分100質量部に対して35質量部を超える量で前記MDIモノマーに存在している。)と、
3500g/mol以上の重量平均分子量を有するキャリアポリオール及び該キャリアポリオールに分散したスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子を含む第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオール及び前記第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールとは異なる第二のポリオールを含むイソシアネート反応性組成物との反応生成物を含み、密度が100kg/m3未満である軟質ポリウレタンフォームであって、
当該軟質ポリウレタンフォームは、その軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117規則に従う可燃性試験において難燃性を示すことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
難燃性添加剤を含まない請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールの前記キャリアポリオールが、4000g/mol以上の重量平均分子量を有する請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記第二のポリオールが、5000g/mol以上の重量平均分子量を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記スチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子は、前記キャリアポリオール100質量部に対して5〜65質量部の量で、前記キャリアポリオールに分散している請求項1〜4の何れか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記第二のポリオールは、1000g/mol以上の重量平均分子量を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
前記イソシアネート反応性組成物は更に、官能基数が4未満の架橋剤を含む請求項1〜6の何れか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
前記架橋剤はジエタノールアミンである請求項7に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
前記第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールは、前記イソシアネート反応性組成物に存在する全てのポリオール100質量部に対して5〜95質量部の量で、前記イソシアネート反応性組成物に存在している請求項1〜8の何れか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
前記イソシアネート反応性組成物は更に触媒成分を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)成分及び2,4’−MDIを含むジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)モノマー成分を含むポリイソシアネート組成物(但し、前記2,4’−MDIが、前記MDIモノマー成分100質量部に対して35質量部を超える量で前記MDIモノマーに存在している。)を準備する工程;
3500g/mol以上の重量平均分子量を有するキャリアポリオール及び該キャリアポリオールに分散したスチレンとアクリロニトリルの共重合体の粒子を含む第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオール及び前記第一級ヒドロキシル基末端グラフトポリエーテルポリオールとは異なる第二のポリオールを含むイソシアネート反応性組成物を準備する工程;
ポリイソシアネート組成物をイソシアネート反応性組成物と反応させて軟質ポリウレタンフォームを形成する工程;
を含む軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
当該軟質ポリウレタンフォームは、その軟質ポリウレタンフォームの曲げ疲労の量にかかわらず、カリフォルニア技術公報(California Technical Bulletin)117規則に従う可燃性試験において難燃性を示すことを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項12】
軟質ポリウレタンフォームが、スラブコンベアシステムに沿って形成されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ポリイソシアネート組成物をイソシアネート反応性組成物と反応させる工程を触媒成分の存在下で行い、軟質ポリウレタンフォームを形成する請求項11又は12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−513485(P2012−513485A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541351(P2011−541351)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066885
【国際公開番号】WO2010/072582
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】