説明

軟骨にターゲティングするためのポリペプチドリガンド及びその使用方法

治療薬を関節軟骨組織に対してターゲティングするための使用及び関節軟骨のための新しい材料を含めて、関節軟骨組織に特異的に結合するリガンドが開示される。このリガンドは、治療材料を関節軟骨にターゲティングするのにインビボで効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明の技術分野は、軟骨に特異的に結合するポリペプチドを使用した、軟骨組織への治療薬の送達に一般的に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
軟骨病変はよく起こり、診断においても治療においても困難をもたらすことがある。病変は、軟骨マトリックスの目に見える破壊なしで、欠損になる、又は局所的軟骨分解になることがある。そのような病変は、スポーツ時の損傷、疾患、又は加齢によって生じる可能性がある。関節軟骨欠損の予後は、年齢、損傷の機序、部位、大きさ、関連外傷及び受ける治療により異なる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
しかし、本発明は軟骨損傷のための治療法を提供する。本発明のいくつかの態様は、WYRGRL(配列番号1)、DPHFHL(配列番号2)、若しくはRVMLVR(配列番号3)、又はその保存的置換体のアミノ酸配列を含む実質的に純粋なポリペプチド、或いはこれらの配列をコードする核酸である。このようなポリペプチドは軟骨組織に特異的に結合する。このようなポリペプチドは治療薬を含んでいてもよい。
【0004】
いくつかの本発明の方法は、軟骨組織に特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸を含む医薬として許容し得る組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の軟骨の治療に関する。このようなポリペプチドは、例えば、関節又は組織を治療する治療薬をコードしていてもよい。
【0005】
本発明の他の態様は、医薬として許容し得る賦形剤と、治療薬と、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及びその保存的置換体からなる群のアミノ酸配列を含むポリペプチドリガンドとを含む実質的に精製された調製物を含む治療薬を送達するための送達システムに関する。ポリペプチドリガンドは、軟骨組織に特異的に結合して、治療薬を軟骨組織に標的送達することができる。治療薬は、例えば、薬物、可視化剤、又は治療ポリペプチドを含んでいてよい。送達システムは、例えば、ナノ粒子が治療薬及びポリペプチドリガンドを含む、約10nmと約200nm間の平均直径を有する一群のナノ粒子を含んでいてよい。
【0006】
他の実施態様は、ポリマーと、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又はその保存的置換体のアミノ酸配列を含む実質的に純粋なポリペプチドとを含む生体材料に関し、ポリペプチドは軟骨組織に特異的に結合し、ポリマーはアミノ酸を有せず、少なくとも400の分子量を有する。WYRGRL(配列番号1)の変異体はWYRGRLC(配列番号4)であり、そのC末端残基は化学的リンカーとして使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】バイオパニングにより同定された3つのファージクローンの増幅を示し、3つのファージクローンはすべてランダムライブラリーに匹敵する等しい速度で増殖することを実証する棒グラフである。したがって、C1-3の最終的選択は、増幅中の増殖の違いに影響されなかった。
【図1b】ファージクローンC1-3及びC1-C1のみを回収することができた競合的結合アッセイを実証する棒グラフである。
【図1c】関節軟骨へのC1-3及びC1-C1の結合特異性を示している棒グラフである。これらのファージクローンの滑膜への結合により、ファージ回収は2桁低くなり、非特異的結合を反映している。エラーバーは、3つの独立した実験からの平均±標準偏差を示している。
【図2】合成ポリペプチドWYRGRLC(配列番号4)によるC1-3の軟骨結合の阻害を示すグラフである。データは合成ポリペプチドの不在の下で得られるクローンC1-3の最大ファージ結合の割合を表している。エラーバーは、3つの独立した実験からの平均±標準偏差を示している。
【図3】10μMの合成ポリペプチド対WYRGRLC(配列番号4)-PPSナノ粒子及び10μMの合成ミスマッチポリペプチドによるC1-3ファージの軟骨結合の阻害を示す棒グラフである。WYRGRLC(配列番号4)-PPSナノ粒子は、合成ポリペプチドと類似の結合を示すが、合成ミスマッチポリペプチドはファージ力価の有意の減少をもたらさない。エラーバーは、3つの独立した実験からの平均±標準偏差を示している。
【図4】対照ナノ粒子と比べた、WYRGRLC(配列番号4)で装飾されたナノ粒子の関節軟骨インビボにおける相対的蓄積を示す棒グラフである。エラーバーは、3つの独立した実験からの平均±標準偏差を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
(序論)
関節軟骨組織に特異的に結合するリガンドが発見されている。これらの関節軟骨組織結合リガンドは、治療薬を関節軟骨組織に対してターゲティングする新技術及び関節軟骨欠損の治療のための新材料を生み出してきた。このリガンドは、治療材料を関節軟骨にターゲティングするのにインビボで効果的である。
【0009】
軟骨組織結合リガンドのうちの3つは、WYRGRL(配列番号1)、DPHFHL(配列番号2)、又はRVMLVR(配列番号3)のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。他のリガンドは配列番号1、2又は3のうちの1つの保存的置換体を有する配列のポリペプチドである。リガンドとは、標的分子への特異的結合を有する化学的成分を指す用語である。標的とは、使用者がリガンドと結合させようと意図しているあらかじめ定められた分子、組織、又は位置のことである。したがって、組織への標的送達とは、分子を目的の標的組織に送達することであり;標的に送達される治療薬は、標的それ自体に作用することを目的にしても、又はある他の分子若しくは細胞、例えば、前記標的の近傍にある細胞若しくは組織に作用することを目的としてもよい。
【0010】
軟骨組織結合リガンドの一適用は、治療薬を関節軟骨へターゲティングするためであり、薬物が送達される場合は関節内薬物送達と一般に呼ばれる。関節内薬物送達は、関節内注射薬物の滞留時間が短いため大きな課題と呼ばれてきた。単独で注射される薬物は、急速に拡散する、又はそうでなければ循環中に急速に取り込まれる傾向があり、したがって、軟骨での薬物の生物学的利用能が低く、及び、望ましくない全身作用をもたらす。徐放薬物にもかかわらず、いかなる徐放製剤の関節内使用に関してもごくわずかな報告しか存在しない20-26。大部分は、アルブミン及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid))(PLGA)が、ゲルの形で22、又は微粒子として23-26、この目的のために、生体適合性生分解性ポリマーとして使用されてきた。しかし、そのようなアプローチは、時間をかけた分解に頼って関節内での徐放を実現しており、入手可能な生体材料の特性に制限され、前記材料が分解するときのみ薬物が利用可能になる戦略である。前記送達システムを組織結合リガンドを使用して関節軟骨にターゲティングすれば、関節腔内への放出とは対照的に、前記組織自体が疾病過程部位への薬物放出のための貯蔵場になる。
【0011】
軟骨組織結合リガンドは、診断、アッセイ、又は画像化目的のために、インビトロで軟骨組織に結合するのにも有用である。例えば、組織の部分を、前記軟骨組織の場所を可視化するための蛍光分子又は他の造影剤にも結合している軟骨組織結合リガンドに曝露してよい。又は、例えば、軟骨組織結合リガンドは、前記組織を単離するためにアフィニティークロマトグラフィーで使用してもよい。
【0012】
したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載する関節軟骨組織結合リガンドは、軟骨への特異的結合を通じて持続性局在化を可能にすることにより、制御された放出のための新技術を可能にし、それに伴う製剤は送達された薬物又は他の治療薬の関節内生物学的利用能を高めるが、これは、種々の疾病過程、例えば、関節リウマチ又は臨床的に明確な変形性関節症における炎症などの滑膜に関連する疾病過程に有益である。軟骨内への溶質の対流輸送は、この組織の固有の特性があるため損なわれるので27,28、変形性関節症における疾病過程の原発部位である軟骨マトリックスにおける薬物の生物学的利用能は、前記マトリックスそれ自体に属する徐放性システムにより増強することができる。したがって、本明細書に記載の軟骨マトリックスのターゲティングは、変形性関節症における軟骨分解を治療し、関節リウマチ、細菌性及び反応性関節炎のような状態の軟骨を保護する治療薬の送達のための軟骨マトリックスのターゲティングなど、一般的関節内治療薬送達に有用である。
【0013】
このように、軟骨組織結合リガンドは、治療薬を標的に導くのに有用である。治療薬とは、所望の医療的又は科学的機能を実現するための標的への送達用の分子のことであり、前記用語は薬物及び造影剤を含む。治療薬の例は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase)(MMP)阻害剤、アグリカナーゼ阻害剤、COX阻害剤、及び他の非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug)(NSAID)、グルコサミン、ジアセレイン、メトトレキサート、ステロイド薬、免疫抑制薬(ラパマイシン、シクロスポリン)、タンパク質治療薬(増殖因子、マトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害薬)、並びにオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA、shRNA、miRNA)である。造影剤の例は、蛍光マーカー、放射性不透過性材料、磁気共鳴画像法造影剤、X線造影剤、放射性医薬品造影剤、超音波造影剤、及び光学的画像法造影剤である。
【0014】
(リガンド発見及び実験データ)
バクテリオファージのマイナーコートタンパク質(pIII)上でのランダムペプチドファージ表示法の開発により、動物及びヒト7-9においてさえ、インビトロ6でもインビボでも、バイオパニング5と呼ばれるプロセスにおいて、複数の組織の正確なターゲティングのために特異的なペプチドを同定するアフィニティー精製の使用が可能になった。例として、Arapらは、ヒト脈管構造のマッピングとマウスの脂肪組織の微小血管系を特異的にターゲティングすることに成功した10。別の研究では、ファージ表示法により滑膜特異的ホーミングペプチドが同定された。ヒト滑膜移植片がSCIDマウスに移植され、バイオパニングがインビボで実施されて、滑膜組織の微小血管内皮に特異的なホーミングペプチドを有するファージが同定された11
【0015】
関節軟骨細胞外マトリックスに結合するペプチド配列を同定するためには、バイオパニングへのインビボアプローチは、細胞外マトリックス分子の高密度組織により示される難問に取り組まなければならないことをまず認識すべきである。実際、関節軟骨のコラーゲンII線維網は表層帯に60nmの既報告メッシュサイズを有し12、プロテオグリカン凝集体の側鎖間の最大間隔は、わずか20nmだと記載されている13。したがって、バイオパニングは、インビボで実施されるのではなく、代わりに、生体外材料での使用のために改作された。具体的には、スライスしたウシ軟骨を使用し、その細胞外マトリックスは、結合ファージビリオンのアフィニティー精製のために曝露された。
【0016】
(材料)
線維状ファージ系統fd-tetに基づくファージ表示法ライブラリーfUSE5/6-merはミズリー大学コロンビア校から入手した。軟骨移植片、滑液及び滑膜は、地元の食肉処理場から入手したウシ肩肉から収集した。軟骨移植片は、4℃で0.1%アジ化ナトリウム及びプロテアーゼ阻害薬中で保存し、72時間以内に使用した。ファージ表示法スクリーニングに使用した緩衝液及び溶液:ブロッキング溶液(0.1M NaHCO3、1%BSA、pH8.5)、洗浄緩衝液(PBS、Tween 20 0.1〜1%)、溶出液(50mMグリシン-HCl、pH2.0)、中和緩衝液(0.2M NaHPO4)。ナノ粒子合成用の溶剤及び試薬はSigma-Aldrich社(Buchs、スイス)から購入した。ペプチド(Novabiochem社製の合成化学物質、Lautelfingen、スイス)はすべて、自動ペプチド合成装置(CHEMSPEED社製PSW 1100、Augst、スイス)を使用して固体樹脂上標準F-moc化学で合成した。精製は、Waters ATLANTIS dC18半調製用カラムを使用したWaters超高純度化システム上で実施し、ペプチドは、飛行時間型(time-of-flight)(TOF)質量分析法により分析されるその分子量により回収した。
【0017】
(ファージ表示されたコンビナトリアルペプチドライブラリーのスクリーニング及び結合アッセイ)
関節軟骨マトリックスへの結合用のペプチドは、fUSE5/6-merライブラリーをウシ軟骨移植片に曝露することにより選択され、これにより6アミノ酸直鎖ペプチド挿入物が繊維状ファージのマイナーコートタンパク質上に表示されている6.4×107の異なったファージクローンが提供された5,18。軟骨移植片は8及び4mm生検カッター(両側表面1cm2及び0.25cm2)で収集した。無傷の関節表面を有するスライスは取り除かれ、ファージを表面下の軟骨マトリックスのみに曝露した。アフィニティー選択は、ポリスチレン48ウェルプレートで実施し、ウェルプレートは非特異的接着のために、スクリーニングに先立って2時間、1%BSAを含有するブロッキング溶液でブロックした。全部で5巡りのスクリーニングを実施した。初回では、mlあたり1013、その後の回では1012ファージビリオンを軟骨移植片に曝露し、PBS/Tween 20で洗浄し、低pHで溶出した。初回は低厳密性で高収量をもたらすと考えられたが、その後の回は厳密性を高めながら実施して、より強い結合体を選択した。条件は、室温で4時間の結合とPBS/0.1%Tweenでの洗浄から、220RPMで37℃、30分の結合とPBS/1%Tween20での洗浄へと増やしていくと、軟骨表面は1cm2から5巡目には0.25cm2へ減少した。溶出ファージは、大腸菌(E.coli)系統TG1の2xYT培養液中で一晩増幅させ、2度のPEG/NaCl(2M、25%)沈殿により精製した。初回のスクリーニングでは、無傷の関節表面並びに滑液(粘度を下げるためにPBSで50%希釈)に対するネガティブスクリーンを、これらの標的に結合しているファージを除去するために実施した。量的力価カウント数は、LB-寒天/テトラサイクリンプレート上への15μlのファージ/細菌培養液のスポットタイターリングにより得られ、トランスデューシング単位(transducing unit)(TU)/mlで与えられる。関節軟骨マトリックスに特異的なアフィニティー選択ファージのポリペプチド配列は、シークエンシングプライマー5'-CAT GTA CCG TAA CAC TGA G(配列番号5)を使用したDNA塩基配列決定法(Microsynth社、Balgach、スイス)により決定した。結合特異性は、選択ファージクローン(108TU/ml)を、滑液のある関節軟骨(0.25cm2)及び滑液なしの関節軟骨(同)に、滑膜(3×4mm、0.24cm2)に、並びにブロック後のポリスチレンに曝露することにより決定した。力価カウント数はスポットタイターリングにより得られた。競合的結合は、滑液の存在の下で選択ファージクローンとfUSE5/6-merライブラリー(それぞれ108TU/ml)の混合液を、37℃、220RPMで30分間関節軟骨に曝露し、PBS/1%Tween20で洗浄することにより探索した。ファージクローンは、DNA塩基配列決定法により同定し、対応する力価カウント数を計算した。遊離ポリペプチド又はナノ粒子に対する競合的結合のために、及び用量反応曲線を得るために、108TU/mlのファージ及び異なった濃度のその遊離ポリペプチド又はナノ粒子を混合し、関節軟骨に曝露し、力価カウント数を決定した。実験はすべて3通り実施し、確認のために繰り返した。
【0018】
(ナノ粒子合成)
ポリ(プロピレンスルフィド)ナノ粒子は、他の文献に記載されている通りに調製した14。手短に言えば、30と40nm間のナノ粒子では、1.6%(w/v)のプルロニック F-127(分子量12600)を10mlの脱気し2度蒸留ろ過した水に溶解することによりモノマー乳濁液を調製する。前記系は連続攪拌し、60〜90分間アルゴンでパージする。プロピレンスルフィドは、プルロニック/モノマー比0.4(w/w)で添加する。イニシエータのペンタエリスリトールテトラチオエステル(tetrathioester)(TTE)(以前記載された通りに合成した14)は、モル当量の0.5Mメタン酸ナトリウムと混合することにより脱保護し、5分間アルゴンの下で攪拌する。次に、脱保護したイニシエータを前記乳濁液に添加する。5分後、60μlのジアザ[5.4.0]ビシクロウンデカ-7-エン(diaza[5.4.0]bicycloundec-7-ene)(DBU)を添加し、反応は6時間不活性条件の下で攪拌する。空気への曝露により、粒子コアのジスルフィド架橋が生じる。続いて、6〜8kDaのMWCO(Spectra/Por)を有する膜を通じて2日間の超純水に対する繰り返し透析により、粒子を残存モノマー及び塩基から精製する。遊離のプルロニック F-127は、300kDa膜を通じた第2透析段階で除去する。粒子サイズは透析後、動的光散乱(ZETASIZER NANO ZS、Malvern Instruments社、Malvern、イギリス)により測定する。表面機能化ナノ粒子の調製のために、ポリペプチドは、ナノ粒子合成に先立ってプルロニック F-127にコンジュゲートする。プルロニック F-127をビニルスルホンで誘導体化するために、400mlのトルエンと15gのプルロニック F-127を、グラスウールを充填したSoxhlettと乾燥分子篩と冷却管に連結した三口丸底フラスコに導入した。プルロニックは共沸的に4時間乾燥させた。トルエン中の乾燥プルロニックは、氷浴中で冷却し、水素化ナトリウムを、プルロニック-OH基と比較して5等モル過剰に添加した。反応は15分間攪拌し、ジビニルスルホンを15モル過剰に添加し、反応はアルゴン下、室温で5日間、暗所で実施した。反応溶液は、セライトろ過ケーキを通じてろ過し、回転蒸発により濃縮し、次に氷冷ジエチルエーテル中で5回沈殿させた。ポリマーは真空下で乾燥させ、アルゴン下、-20℃で保存した。誘導体化は1H-NMR(CDCl3):=1.1(m、PPG CH3)、3.4(m、PPG CH)、3.5(m、PPG CH2)、3.65(m、PEG CH2)、6.1及び6.4(d、各1H、CH2=CH-SO2-)、6.85(q、1H、CH2=CH-SO2-)ppmで確認した。88%という末端基誘導体化の程度は1H-NMRにより決定した。ポリペプチドはすべてN末端でアセチル化して、∝アミンとの反応を防止し、C末端でシステインと合成して、遊離チオールを介したマイケル型付加によりプルロニック-ジ-ビニルスルホンにコンジュゲートした29。コンジュゲーションのために、1.6mM プルロニック-ジ-ビニルスルホンは、完全に溶解するまでpH8.5でトリエタノールアミン緩衝液中で攪拌し、2mMのポリペプチドを添加して、室温で3時間攪拌する。コンジュゲーションは、メタノール中1H-NMRによって非存在のビニルスルホンピークにより確認される。ナノ粒子は、0.16%(w/v)のコンジュゲートプルロニックの一部分に対応する10%表面機能化と共に上記の通りに調製する。粒子上のポリペプチドの存在は、粒子合成後、動的光散乱(ZETASIZER NANO ZS、Malvern Instruments社、Malvern、イギリス)によりゼータ電位を測定することにより確認される。前記ナノ粒子は、10mM Tris-HCl中1mg/mlのナノ粒子溶液pH8.5で標識を添加し、室温で2時間、暗所で攪拌することにより、6-ヨードアセトアミドフルオレセイン(6-IAF、Molecular Probes社、Eugene、オレゴン州)又はAlexa FLUOR 488マレイミドで蛍光的に標識した。未反応標識は5mgのL-システインを添加することにより消光した。精製は、5mM PBS中24kDaのMWCOを有する膜に対して、2度の緩衝液シフトで24時間の透析により実現した。
【0019】
(インビトロ注射)
標識したナノ粒子は、チェニー(Cheney)再現性アダプター及び30G注射針の付いた25μlハミルトン注射器を使用して、濃度1%(w/v)、容積5μlで、生後4〜6週間のC57BL/6マウスの膝関節に注射した(地元の審査委員会に承認された動物実験プロトコル、承認番号1894)。前記マウスは、イソフルランで麻酔にかけた。前記動物は24時間後にCO2窒息により安楽死させた。前記膝関節を回収し、顕微解剖により周囲の筋肉から取り除いた。
【0020】
(共焦点顕微鏡観察及び画像解析)
前記切片は、Zeiss LSM510 metaを使用して共焦点レーザースキャニング顕微鏡により解析した。蛍光は、軟骨組織の自己蛍光を減らすために、発光フィンガープリント法により抽出した。ピンホールは、TETRASPECK蛍光微粒子(Invitrogen社、T14792、Carlsbad、カリフォルニア州)を使用して調整した。解析用の画像は、Zeiss 63×APOCHROMAT対物レンズを使用して、関節あたり10の異なる場所で、それぞれz-スタックの10画像を得た。画像デコンボリューションは、Huygensソフトウェアにより実現した。画像解析はImageJにより行った。
【0021】
(ファージ提示法ライブラリーのアフィニティー選択及び結合アッセイ)
軟骨移植片は、ファージ表示ライブラリー上のfUSE5ペプチドと一緒にインキュベートし、このライブラリーはマイナーコートタンパク質(pIII)上に6.4×107の多様性で直鎖状6-merランダムペプチドを発現していた。ファージビリオン上に表示されたポリペプチドに対応する配列は、アフィニティー選択(パニング)の3及び5巡り目の後にDNA塩基配列決定法により決定された。3巡り後では、配列決定法により、選択されたポリペプチドにコンセンサスモチーフは明らかにならなかった。5巡り目の配列決定では、3つの異なるファージクローンC1-3(配列番号1を有する)、C1-C1(配列番号2を有する)及びC1-F1(配列番号3を有する)が生じたが、C1-3は96の配列決定されたクローンのうち94に現れ、C1-C1及びC1-F1は両方とも1回現れたのみであった。前記3つのファージクローンの選択が、他のファージと比べてその増幅速度の違いの結果ではないことを保証するために、106粒子/mlの3つの選択されたクローンとランダムfUSE5ファージライブラリーの一晩増幅を細菌培養液中で実施した。図1aに示すように、増幅速度はすべてランダムライブラリーの速度に等しい。これにより、3つのファージクローンは、その増幅速度に違いがあるためパニング過程において選択されず、増幅速度はライブラリーに有利に偏っていたと考えられることが示唆される。選択されたファージクローンの相対的結合強度を互いに対して評価するために、競合的結合アッセイを実施した。等量の3つの選択されたファージクローンとランダムfUSE5ファージライブラリーを混合し、軟骨移植片(0.25cm2)に曝露した。回収したファージビリオンの対応する力価カウント数は、96コロニーの3通りのDNA塩基配列決定により決定した。C1-3及びC1-C1のみが回収され、それにより、C1-F1とランダムライブラリーよりもすぐれたC1-3とC1-C1の結合強度を示していることが図1bに実証されている。さらに、C1-3はC1-C1よりもほぼ1桁高い力価カウント数を有しており、5巡り後のその頻繁な出現により既に示唆されていたその優勢な結合をさらに実証している。
【0022】
C1-3とC1-C1の関節軟骨への結合特異性は、ファージクローンを関節軟骨(0.25cm2)及び滑膜(0.24cm2)に曝露し、fUSE5ファージライブラリーのランダム結合と比較することにより評価した。さらに、ファージ結合に対する滑液の存在の効果は、等容量のウシ滑液のファージへの添加により探索し、これは滑液を2の係数で希釈する。図1cは、C1-3もC1-C1も滑膜よりも2桁多く関節軟骨への特異的結合を示していること、及び滑液の添加は関節軟骨へのファージの結合を有意に低下させてはいないことを示している。滑膜への特異的ファージクローンの結合は、滑膜へ同程度結合しているランダムファージライブラリーfUSE5のように背景ファージ結合を反映していると思われる。さらに、関節軟骨に対するfUSE5のファージ力価は滑膜に対するのと同レベルであり、C1-3及びC1-C1の特異的結合をさらに示している。ポリスチレンがアフィニティー選択を実施したプラスティックウェア中に含有されているために、ファージは、BSAでブロックした後にポリスチレンウェルに曝露した。しかし、ポリスチレンへの背景ファージ結合は検出できなかった。
【0023】
fUSE5/6-merファージ表示法ライブラリーのアフィニティー選択により、他のファージクローンと比べて、関節軟骨への結合特異性も優勢結合も示しているファージクローンC1-3(ポリペプチドWYRGRL、配列番号1)が発見された。ポリペプチドとの関連での特異的結合とは、他の分子とは対照的に、対象標的へのポリペプチドの特異的な結合のことである。
【0024】
(遊離のポリペプチドWYRGRLC及びYRLGRWCに対するC1-3の競合的結合)
本明細書に報告されているアフィニティー選択及び結合アッセイに基づいて、クローンC1-3の6-merポリペプチド挿入WYRGRL(配列番号1)並びにそのスクランブルミスマッチYRLGRW(配列番号6)を、標準Fmoc化学を使用して固体樹脂上で合成した。N末端アミノ酸はアセチル化し、遊離チオールを介したマイケル型付加によるビニルスルホンへのバイオコンジュゲーションのために、システインをポリペプチドのC末端に付加した。関節軟骨へのWYRGRLC(配列番号4)の結合特性をさらに特徴付けるために、ファージクローンC1-3に対する競合的結合アッセイを、C1-3及びWYRGRLC(配列番号4)を軟骨に曝露することにより実施した。50nMから10μMの幅のポリペプチドの段階希釈及びそれを108TU/mlのファージと混合することにより、用量反応曲線を決定した。回収したファージの力価カウント数は、溶液中の遊離ポリペプチドの濃度が増加されるに従って、2桁徐々に減少した(図2)。約200nMのIC50は図2の曲線から推定することができる。
【0025】
(プルロニック F-127へのポリペプチドのコンジュゲーション及びナノ粒子合成)
ポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)ナノ粒子を機能化するために、プルロニック F-127をビニルスルホンで誘導体化した。ポリペプチドは、マイケル型付加により、C末端システイン中の遊離チオールを介してプルロニック-ジ-ビニルスルホンにコンジュゲートした。コンジュゲーションは、ビニルスルホンに特異的なピークの非存在によりメタノール中の1H-NMRによって確認した。次に、PPSナノ粒子は、乳化剤として働くプルロニックF-127(90%)とポリペプチド-コンジュゲートプルロニックF-127(10%)を使用して、逆相乳化重合により調製した。乳化剤としてのプルロニックが粒子表面に残るために、コンジュゲートされたポリペプチドはナノ粒子の表面に表示され、それによって粒子にポリペプチドのターゲティング機能性が加えられる。動的光散乱(ZETASIZER NANO ZS、Malvern Instruments社、Malvern、イギリス)によるサイズ測定により、WYRGRLC(配列番号4)を表示しているPPS粒子は38nm(多分散指標PDI 0.221)、YRLGRWC(配列番号7)を表示している粒子は31nm(PDI 0.412)、及び非コンジュゲートPPS粒子は37nm(PDI 0.212)の容量サイズであることが明らかになった。非コンジュゲートPPSナノ粒子のゼータ電位はほぼ中性(-2.64±8.97mV)である。ポリペプチドの正電荷のため、コンジュゲートナノ粒子のゼータ電位は+17.8±3.45mVに変わり、これによりナノ粒子表面上のポリペプチドの存在がさらに確認される。
【0026】
2%(w/v)のWYRGRLC(配列番号4)-PPSナノ粒子を、遊離ポリペプチドWYRGRLC(配列番号4)及びYRLGRWC(配列番号7)に対してそれぞれ10μlの濃度で競合的結合アッセイにかけた。したがって、ファージクローンC1-3を、WYRGRLC(配列番号4)-PPSナノ粒子、WYRGRLC(配列番号4)又はYRLGRWC(配列番号7)の存在の下で軟骨に曝露させ、競合的阻害剤のない対照C1-3ファージに対する軟骨に結合するC1-3ファージの量を測定した。図3の結果は、WYRGRLC(配列番号4)-PPSナノ粒子が、対応する遊離ポリペプチド(WYRGRLC(配列番号4)-PPS 10.4±6%及び対照のWYRGRLC(配列番号4)13.9±2.8%)と類似する結合を示しているが、YRLGRWC(配列番号7)は競合的に結合せず、したがってファージ力価は有意に低下しなかった(対照の92±12%)ことを示している。したがって、2%(w/v)で表面機能化度10%のコンジュゲートPPSナノ粒子は、10μMの遊離ポリペプチドWYRGRLC(配列番号4)に類似する関節軟骨への結合を有すると思われる。
【0027】
(インビボでの関節軟骨の能動的ターゲティング)
WYRGRLC(配列番号4)-PPS及びPPSナノ粒子は、6-IAFで標識し、溶液中にそれでも遊離の標識がないことを保証するために、少なくとも2種類の緩衝液シフトで2日間透析した。容積5μlのナノ粒子を、生後4〜6カ月のC57BL/6マウスの膝関節に注射した。3匹のマウスに、右の膝関節にWYRGRLC(配列番号4)-PPSを、及び左の膝関節にPPS粒子を注射した。再現性のある注射をするために、チェニー(Cheney)再現性アダプター付きの25μlハミルトン注射器(Hamilton Europe社、Bonaduz、スイス)を、30G注射針での前外側膝蓋骨注射のために使用した。24時間後に得られた凍結切片は、共焦点レーザー走査顕微鏡により分析した。関節あたり10の異なる場所での10面を有するz-スタックのサンプリングにより決定される軟骨容積あたりの蛍光点の定量化により、PPS粒子での29.0±1.5%からWYRGRLC(配列番号4)-PPS粒子での83.8±4.0%までの粒子蓄積の増加が明らかになった(図4)。24時間後には関節軟骨マトリックスでの機能化されたナノ粒子の明白で順調な蓄積が起こるが、ナノ粒子は濃度2%(w/v)で関節全体に蓄積し、滑膜に加えて半月板及び靱帯組織に進入する。
【0028】
(考察)
結合タンパク質又はポリペプチドのアフィニティー選択のためには、ファージ表示法5、酵母表面表示法15、mRNA表示法16又はペプチドオンビーズ表示法17などのいくつかの方法が存在する。本明細書では、線維状ファージベクターfd-tetに基づくfUSE5/6-merライブラリーを使用したファージ表示法18を使用して、関節軟骨マトリックスに結合する短いペプチドを選択した。本発明の実施態様には、生体外での軟骨に対する結合タンパク質又はペプチドのアフィニティー選択を使用することが含まれる。
【0029】
この場合、ウシ軟骨の切片に対してバイオパンイングを実施した。結合段階における条件は、高アフィニティーポリペプチドの結合を支持するために、1巡目から5巡目へ厳密性を増加させるに従って選択した。96クローンのDNA塩基配列決定から得られた選択された配列は、競合的結合アッセイにおいて評価してきた。2つの配列C1-3及びC1-C1は、C1-F1及びfUSE5ライブラリー由来のランダムファージよりも強い競合的結合を示した(図1b)。したがって、軟骨へのC1-3及びC1-C1の結合特異性をさらに評価した。ファージクローンを生理的条件(37℃及び振動)下におき、軟骨、滑液の存在下での軟骨及び滑膜に対する結合特異性を調べた。C1-3及びC1-C1両方のファージ力価は、滑膜よりも軟骨のほうが2桁高かった。さらに重要なのは、軟骨標的への結合は、滑液の添加により損なわれることはなかった(図1c)。これは、初回のバイオパニング中に実施されたネガティブスクリーニングの結果である可能性がある。滑液の成分に潜在的に結合するポリペプチド配列を有するファージを除去するために、最初のスクリーニングは、滑液の存在の下で実施し、滑液は結合ファージを軟骨切片から溶出させる前にファージを含めて破棄した。ポリペプチド配列の相対的結合アフィニティーを評価するために、対応するポリペプチドWYRGRLC(配列番号4)を合成した。WYRGRL(配列番号1)(108TU/ml)を表示しているファージC1-3に対する競合的結合アッセイでは、約200nMの高ナノモル範囲におけるIC50を実証することができる(図2)。
【0030】
結合特異性は、負電荷プロテオグリカンに非特異的に固着する正味の正電荷のポリペプチドではなくポリペプチド配列により与えられた。これは、10μMのWYRGRLC(配列番号4)は100倍近くファージ力価が減少した点で、図3に実証されている。これとは対照的に、10μMのYRLGRWC(配列番号7)は、同じアミノ酸を組み換えた順番で含んでいるが、ポリペプチドのない対照ファージ力価と比べて、ファージ力価の有意の減少は見られなかった。したがって、WYRGRLC(配列番号4)は、関節軟骨に特異的に結合し、ファージC1-3に対する競合的結合が用量依存的減少を示す短いポリペプチドである。他のポリペプチドのDPHFHL(配列番号2)及びRVMLVR(配列番号3)は、WYRGRLに使用されたのと同じ実験方法を使用して発見されたが、これらの同一技術を使用すれば、特異的結合を有することも明らかにすることができるであろう。
【0031】
前記ポリペプチドは、C末端にシステインを含有するように合成した。ナノ粒子合成において乳化剤として働き、したがって粒子表面に表示されたままになるプルロニック-ジ-ビニルスルホンへのマイケル型付加によるバイオコンジュゲーションのために、システインの遊離チオールが使用される。これは、逆相乳化重合により合成されるナノ粒子の表面機能化のための単刀直入な計画であるが、プルロニックのコンジュゲーションは、1H-NMRにより証明される100%近いコンジュゲーションを実現するためには、ビニルスルホンへの遊離チオールのマイケル型付加の好ましい速度論にもかかわらず過剰なポリペプチドが必要とされる。さらに、ナノ粒子合成中には一部のプルロニックが常に失われる。したがって、代替えの合成計画は、必要とされるポリペプチドの量を制限するために、表面機能性を既に合成されたナノ粒子に加える。
【0032】
中性から正へのゼータ電位の移動により示されるナノ粒子表面上のポリペプチドの存在は、競合的結合により確認された。関節軟骨へのファージクローンC1-3(108TU/ml)に対して濃度2%(w/v)で表面機能化度10%(使用される全プルロニックのw/w)を有するWYRGRLC(配列番号4)-PPSナノ粒子は、10μMの遊離ポリペプチドWYRGRLC(配列番号4、図3)と類似するファージ力価の減少が見られた。
【0033】
関節軟骨の細胞外マトリックスのターゲティングは、軟骨マトリックスに進入しそこにとどまる薬物送達システムの能力に本質的に依存している。消極的ターゲティングでは、関節内でのナノ粒子の分布は、組織浸透及び細胞取込みの能力により主に支配されている。比較的大きな粒子は進入しないが、比較的小さな粒子は軟骨ECMに浸透してとどまることができる。ナノ粒子(この場合、平均容積径36及び38nmのナノ粒子)は、滑膜に加えて、関節軟骨ECM及び半月板組織に進入することができることは本明細書で実証されている。これは、小粒子が軟骨ECMに進入する能力を有するという文献に一致している。平均直径20〜25nmのアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)(AAV)は、正常な軟骨で450μmの、分解した軟骨で720μmの浸透深度まで関節軟骨マトリックスに進入することは実証されている19。表面機能化PPSナノ粒子も非機能化PPSナノ粒子も関節軟骨マトリックスに進入するが、マウスの膝関節への関節内注射の24時間後では、非機能化したがって非標的化PPSナノ粒子よりもWYRGRLC(配列番号4)-PPSナノ粒子の蓄積が顕著に増加する(図4)。ウシ軟骨を使用した基礎研究が実施されてきたが、本明細書に記載するポリペプチド配列は、これらの組織の一般相同性のためにヒト関節軟骨に結合すると予想される。ウシ軟骨は、健常なヒト軟骨の入手が非常に限られているために、軟骨研究においては許容されるモデルである。
【0034】
(関節軟骨に特異的なポリペプチドリガンド)
軟骨組織結合リガンドの3つは、アミノ酸配列WYRGRL(配列番号1)、DPHFHL(配列番号2)、又はRVMLVR(配列番号3)を有するポリペプチドである。他のリガンドは、配列番号1、2、又は3のうちの1つの保存的置換体を有する配列のポリペプチド又は機能的ポリペプチドである。
【0035】
ある種の実施態様は、開示されている配列と一定割合の同一性、又は一定程度の置換を有するポリペプチドのサブセットに向けられ、そのサブセットは、主に、又は単に、機能的ポリペプチドである。
【0036】
軟骨へのポリペプチドの結合活性は、本明細書に記載の実験プロトコルに従うだけで決定してよい。例えば、ポリペプチドリガンドのうちの1つのポリペプチド変異体にマーカー(例えば、放射性又は蛍光性)を標識し、ウシ軟骨に曝露して、公知の手順を使用してその結合アフィニティーを決定してよい。結合アッセイは、蛍光マーカー、例えば、システインの遊離チオールと反応する6-フルオレセインヨードアセトアミドでポリペプチド変異体を標識することにより、プレートリーダーを使用した単一蛍光読み取りを使用して実施してよい。そのような方法を使用すれば、所与の生理的条件の下で、例えば、WYRGRLC(配列番号4)に対するポリペプチド変異体、例えば、保存的置換体、配列の5以下のアミノ酸への切断、隣接基の付加、又は水溶液での溶解性のために配列を調整するための変化若しくは付加を使用して作られた配列の結合強度を決定することができる。
【0037】
種々の長さのポリペプチドを特定の適用に適切に使用してよい。通常、ポリペプチドリガンド配列を含有するポリペプチドは、前記ポリペプチドがインビボで軟骨との相互作用に利用できるのであれば、特異的結合を示すであろう。タンパク質フォールディングは、ポリペプチドリガンドの生物学的利用能に影響し得る。したがって、ある種の実施態様は、ポリペプチドリガンドを有するが自然には存在しないポリペプチドに向けられ、ある種の他の実施態様は、特定の長さ、例えば、6から3000残基、又は6〜1000、又は6〜100、又は6〜50を有するポリペプチドに向けられ;当業者は、明確に述べられる限度内のすべての値及び範囲が企図されていることを直ちに認識するであろう。さらに、さらに低い限界は、6の代わりに、4又は5でもよい。
【0038】
6残基のポリペプチドを広範に試験したが、3、4、又は5残基を有する変異体、並びにその保存的置換体も活性であり特異的結合を示し得る。したがって、各配列中のすべての近接する3、4、及び5残基を迅速にスクリーニングし、本明細書に記載する方法を使用して、例えば、配列決定法及び結合アッセイを使用して、又は競合的阻害で、結合を試験することができる。したがって、Wが最初の残基でLが6番目の残基である配列番号1の場合、結合活性は、3残基の1〜3、2〜4、3〜5、及び4〜6に予想してよく、4残基では、結合活性は1〜4、2〜5、及び3〜6で予想してよく、5残基では、結合活性は1〜5又は2〜6の位置で予想してよい。通常の当業者であれば、この開示を読んだ後に、この限られた数の配列をすぐにアッセイすることができるであろう。6残基配列を切断した場合には、おそらく結合活性のある程度の減少が観察される可能性はあるが、核心グループはかなりの結合を示すものと予想される。この予想は、これらの技術分野で結合部分を使用して行われた一般的観察に基づいている。例えば、ファージ表示実験では、ペプチド配列は、通常はファージビリオン上に表示されるすべての残基を含むわけではないコンセンサスモチーフを示すことが多く、例えば、Arapら、(Nature Medicine 2002;8:121)。前の回の比較的厳密ではない条件又は配列決定からは、1つの非常に強い結合配列とは異なったペプチド配列においてコンセンサスモチーフが得られる可能性が高い。
【0039】
ある種の実施態様は、種々のポリペプチド配列及び/又は精製されたポリペプチドを提供する。ポリペプチドとは、翻訳後修飾(例えば、リン酸化若しくはグリコシル化)及び/又は追加のポリペプチドとの複合体化、核酸及び/又は炭水化物、若しくは他の分子との多サブユニット複合体への合成とは無関係に、アミノ酸残基の鎖のことである。したがって、プロテオグリカンも本明細書ではポリペプチドと呼ばれる。本明細書で使用するように、「機能的ポリペプチド」は、指示された機能を促進することができるポリペプチドである。ポリペプチドは、その多くが当技術分野では公知のいくつかの方法で作製することができる。例えば、ポリペプチドは、天然源から(例えば、単離した細胞、組織、若しくは体液から)の抽出により、前記ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現により、又は化学合成により得ることができる。ポリペプチドは、例えば、組換え技術、及びコードされたポリペプチドの発現のために(例えば、形質転換若しくはトランスフェクションにより)宿主細胞に導入された前記ポリペプチドをコードする発現ベクターによって作製することができる。
【0040】
活性を変えることなくアミノ酸配列に通常もたらすことができる種々の保存的変化が存在する。これらの変化は、保存的置換体又は突然変異体と呼ばれており;即ち、特定のサイズ又は特徴を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸を別のアミノ酸で置換することができる。アミノ酸配列のための置換体は、前記アミノ酸が属するクラスの他のアミノ酸から選択してよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンが挙げられる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが挙げられる。正電荷を帯びた(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシン及びヒスチジンが挙げられる。負電荷を帯びた(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。そのような改変は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は等電点により決定される見かけの分子量に実質的に影響するとは予想されていない。例となる保存的置換体には、正電荷を維持するためのArgに代わるLys及びその逆;負電荷を維持するためのAspに代わるGlu及びその逆;遊離の-OHを維持するようにThrに代わるSer;並びに遊離のNH2を維持するためのAsnに代わるGluがあるが、これらに限定されるものではない。さらに、ポリペプチド配列又は対応する核酸配列の点突然変異体、欠失体、及び挿入体は、いくつかの場合では、前記ポリペプチド又は核酸フラグメントの機能を喪失せずに、作製してよい。置換体には、例えば、1、2、3、又はそれより多い残基を含んでいてよい。本明細書に記載するアミノ酸残基は、1文字アミノ酸符号を用いる場合も、3文字略称を用いる場合もある。本明細書で使用する略称は、標準ポリペプチド命名法、J.Biol.Chem.、(1969)、243、3552-3559に沿っている。すべてのアミノ酸残基配列は本明細書では、左と右の方向がアミノ末端からカルボキシ末端という従来の方向である式により表される。
【0041】
いくつかの場合、本明細書に記載する配列に対するペプチドのパーセント同一性の決定が必要とされることがある。そのような場合、割合同一性は、前記ペプチド、又は前記ペプチドの一部の残基の数の点から測定される。例えば、90%同一性のポリペプチドは、より大きなペプチドの一部でもよい。開示されたポリペプチド配列の変異体には、約83%同一性(例えば、6個のうちの1つが置換されている)又は約67%同一性(例えば、6個のうち2つが置換されている)を有するポリペプチド又は機能的ポリペプチドが挙げられる。
【0042】
ポリペプチドに関して本明細書で使用される用語「精製された」とは、天然に存在する相当物(例えば、ペプチド模倣物)がない、又は化学的に合成されており、したがって他のポリペプチドにより実質的に汚染されていない、又は天然に伴っている他の大半の細胞成分(例えば、他の細胞タンパク質、ポリヌクレオチド、若しくは細胞成分)から分離されている若しくは精製されているポリペプチドのことである。精製されたポリペプチドの例は、乾燥重量で少なくとも70%タンパク質及びポリペプチドが天然に付随する天然に存在する有機分子がないポリペプチドである。したがって、精製されたポリペプチドの調製物は、例えば、乾燥重量で少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも99%ポリペプチドであり得る。ポリペプチドは、ポリペプチドが精製される又はマークされる(例えば、親和性マトリックス上に捕獲され、顕微鏡下で視覚化される)のを促進するタグ配列(例えば、ポリヒスチジンタグ、mycタグ、又は「Flag(登録商標)」タグ)を含有するように工学的に操作することもできる。したがって、ポリペプチドを含む精製された組成物とは、他の方法で示されていなければ、精製されたポリペプチドのことである。
【0043】
ポリペプチドは化学的修飾体を含んでいてよく;この用語は、この文脈では、アミノ酸の天然に存在する化学構造の変化のことである。そのような修飾体は、側鎖又は末端に加えてよく、例えば、アミノ末端又はカルボキシ末端を変える。いくつかの実施態様では、修飾体は、ポリペプチドを他の材料に連結する、又は治療薬を結合させるのに都合よく使用してよい化学基を作り出すのに有用である。
【0044】
(ナノ粒子)
前述の例により実証されるように、軟骨組織結合リガンドを使用してナノ粒子を軟骨組織にターゲティングしてよく、そのようなナノ粒子は、治療薬、例えば、本明細書に記載する治療薬のうちの1種以上を含んでいてよい。ある種のポリマー治療薬が別の場所に記載されてはいるが、これらは、腫瘍組織における薬物濃度を増強することを主に目的としていた1。送達システムを通した抗癌薬の体内分布のそのような改変は、薬物毒性を減らすこと及び治療効果を改善することを目標としている2,3。効果的であるためには、薬物送達システムは非特異的全身性蓄積及び宿主防御免疫系による貪食性排除を免れなければならない。さらに、標的部位での蓄積後、治療効果を発揮するためには、頻繁な無血管組織の浸透を実現させ、薬物は活性型で放出されなければならない。関節軟骨にターゲティングするために、非特異的全身性蓄積は、直接関節内注射により回避することができる。これは、全身的作用を最小限にするため、魅力的な治療アプローチであるが、小化合物は急速リンパクリアランスを起こしやすく、わずか1〜5時間の滞留時間しかない4
【0045】
関節内注射を最小限にし、関節軟骨内での薬物の生物学的利用能を高めるために、本明細書に記載のナノ粒子ベース治療薬送達システムは、軟骨、具体的には、軟骨細胞外マトリックスに対して活性なターゲティング機能性を示している。ターゲティング機能性とナノ粒子ベース送達システムの組合せにより、特に軟骨マトリックスへの関節内薬物送達のための生物学的利用能及び体内分布のよりすぐれた制御が可能になる。選択されたペプチドでのナノ粒子の表面機能化は、関節軟骨における、具体的には、細胞外マトリックスにおけるナノ粒子の特異的蓄積により体内分布を制御する。したがって、軟骨マトリックスそれ自体は、ナノ粒子被包治療分子の貯蔵場として働き、この分子は疾病過程の部位に送達される。
【0046】
本明細書に説明するように、関節軟骨に特異的ホーミング活性を示すことが特徴付けられているポリペプチドの使用により、関節軟骨を、ナノ粒子を使用しインビボでターゲティングすることができる。PPSナノ粒子は本明細書では例証目的で使用しているが、ナノ粒子を作製するための他の技術も適応させてよい。乳化剤が表面に表示されたままになるPPSナノ粒子調製のための逆相乳化重合技術を使用して例証したように14、ターゲティングポリペプチドは、ナノ粒子表面での曝露により生物が利用可能になった。サイズ制御は、乳化剤をモノマー比に調整することによりこの特定の技術で実現され、約20nmから約200nmの範囲のサイズがもたらされた14。軟骨細胞外マトリックスの密度は、コンビナトリアルペプチドライブラリーのスクリーニングに対してだけではなく、潜在的に軟骨への薬剤送達に対しても関連障害を表すが、適切なサイズのナノ粒子及び/又は軟骨へ特異的に結合するリガンドの使用は送達効率を増強する。
【0047】
ナノ粒子は、明確に述べられる範囲間、例えば、調製方法によりもたらされる多分散次第で、約20から約200、及び約20から約40まで、約70まで、又は約100nmまでのあらゆる範囲及び値を含む、約10nmと約200nm間の平均直径を有する粒子の集合体として調製されることになる。ナノ粒子を作製し送達するための詳細な方法は、下に及び2006年2月21日に提出された米国特許仮出願第60/775132号に記載されており、この特許文献は参照により本明細書に組み込まれている。ポリ(エチレングリコール)とポリ(乳酸)との共重合体から形成されるナノ粒子システム、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(ベータ-アミノエステル)との共重合体から形成されるナノ粒子システム、及び血清アルブミンなどのタンパク質から形成されるナノ粒子システムなどの多数のナノ粒子システムを利用することができる。他のナノ粒子システムはこれらの分野の当業者に公知である。Devalapallyら、Cancer Chemother Pharmacol.、07-25-06;Langerら、International Journal of Pharmaceutics、257:169-180(2003);及びTobioら、Pharmaceutical Research、15(2):270-275(1998)も参照されたい。
【0048】
軟骨組織結合リガンドを組み込んでいる約200nm以上の平均直径の比較的大きな粒子も調製してよく、これらの粒子は、ミクロン規模に近づき始めて、ほぼ光学的分解能の限界内に収まるので本明細書ではミクロ粒子と呼ばれる。例えば、ミクロ粒子を作製するためのある種の技術は、米国特許第5227165号、米国特許第6022564号、米国特許第6090925号、及び米国特許第6224794号に記載されている。
【0049】
ターゲティング能力を用いるためのナノ粒子の機能化は、例えば、バイオコンジュゲーション技術を使用した共有結合により、ターゲティングポリペプチドと前記粒子の会合が必要であり、特定の技術の選択は、前記ポリペプチドを結合させることになる粒子若しくはナノ粒子、又は他の構築物により導かれる。通常、ペプチドを他の材料に結合させるための多くのバイオコンジュゲーション技術は公知であり、最も適切な技術を特定の材料のために選んでよい。例えば、前記ポリペプチドをチオール反応性分子に結合させる場合のシステインなどの追加のアミノ酸を前記ポリペプチド配列に結合させてよい。本明細書には、チオール反応性ビニルスルホンで誘導体化されたプルロニック-F127への、C末端にシステインのあるポリペプチドWYRGRL(配列番号1)のコンジュゲーションの例が記載されている。前記ポリペプチドは、マイケル型付加により、プルロニックに共有結合され、続いてナノ粒子合成のために使用することができる。
【0050】
(関節軟骨組織にターゲティングされるタンパク質)
治療ポリペプチドなどの治療薬は、記載されているポリペプチドリガンドの使用によってターゲティング能力を備え、例えば、ポリペプチドリガンドと治療タンパク質との融合タンパク質を作製することにより、関節において比較的長い保持時間を有利に示すことができる。治療ポリペプチドが発現されるように遺伝子特異的プライマーを設計することにより、ポリペプチドリガンドを正常な順に又は逆の順にN末端又はC末端に結合させることができる。前記プライマーのうちの1つは、前記ポリペプチドリガンドがN末端に局在化していると考えられるかC末端に局在化していると考えられるかによって、順方向でも逆方向でも、適切な治療ポリペプチドの遺伝子配列を含有している。例えば、所与の治療ポリペプチドとC末端の(GGG)WYRGRL(配列番号8)リガンドの融合タンパク質を作製するために、逆プライマーは、N末端グリシン(GGG)リンカー(大文字)と逆相補的にWYRGRLのコドン配列、並びに終始コドン及びNotIの制限部位及びオーバーハングを含有する5'-ctgatgcggccgctcTCACAGCCTGCCCCTATACCAGCCGCCGCCxxxxx-3'(配列番号9)に一致している。前記Xは治療ポリペプチド特異的配列に対応しており、例えば、約20塩基対長でよいが、他の長さは、これらの技術分野では従来の慣行のように使用してよい。WYRGRL(GGG)(配列番号10)のN末端局在化のための同一制限部位を有する同一例は5'-atcaggagcggccgcTGGTATAGGGGCAGGCTGGGCGGCGGCxxxxx-3'(配列番号11)又はコドン配列の保存的置換体に一致している。リンカーとして3グリシンの代わりに、治療ポリペプチドの特性に適切な他のリンカーを選ぶことができる。同様に、他の標的リガンドは、例えば、DPHFHLGGG(配列番号13)をコードする核酸配列5'-ctgatgcggccgctcAAGATGGAAATGAGGATCGCCGCCGCCxxxxx-3'(配列番号12)又はRVMLVRGGG(配列番号15)をコードする核酸5'-ctgatgcggccgctcACGAACAAGCATAACACGGCCGCCGCCxxxxx-3'(配列番号14)を使用してコードしていてもよい。したがって、WYRGRL(配列番号1)のDNA配列は、TGGTATAGGGGCAGGCTG(配列番号16)であり、DPHFHL(配列番号2)のDNA配列は、AAGATGGAAATGAGGATC(配列番号17)であり、RVMLVR(配列番号3)のDNA配列は、ACGAACAAGCATAACACG(配列番号18)である。
【0051】
ある種の治療ポリペプチドには、軟骨に存在するタンパク質、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ-3の組織阻害剤(tissue inhibitors of matrix metalloproteinase-3)(TIMP-3)、増殖因子(例えば、形質転換増殖因子-β(Transforming growth factor-beta)(TGF-β)、増殖分化因子-5(growth developmental factor-5)(GDF-5)、CYR61(システインリッチ61(Cystein-rich61))/CTGF(結合組織増殖因子(connective tissue growth factor))/NOV(腎芽腫過剰発現(Nephroblastoma overexpressed))(CCN2)、インスリン様増殖因子-1(insulin-like growth factor-1)(IGF-1)、及び骨形成タンパク質(bone morphogenic protein)(BMP)が挙げられる。ある種の実施態様は、関節内補充療法のための分子、例えば、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸、プロテオグリカンを含むヒト軟骨に存在する分子である。
【0052】
いくつかの実施態様では、融合タンパク質を調製して、医薬として許容し得る状態で、又は医薬賦形剤と一緒に精製組成物として身体内に導入する。ある種の実施態様では、前記融合タンパク質は、原核細胞でも真核細胞でも、細胞を使用して産生される。他の実施態様では、融合タンパク質をコードする核酸を患者に導入し、その場合、前記核酸は「裸」でもよく、もっと大きな構築物、例えば、ベクターの一部でもよい。他の実施態様では、トランスフェクトされた細胞が患者に導入される。導入部位は、例えば、全身性、関節内、又は軟骨組織内でもよい。
【0053】
(軟骨結合融合タンパク質:ターゲティングされる組換え型TIMP-3)
マトリックスメタロプロテイナーゼ-3の組織阻害剤(TIMP-3)は、アギリカナーゼ1及び2、即ち、ADAMTS4及びADAMTS532に加えて、いくつかのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-1、-2、-9)31を阻害する比較的不溶性のマトリックス細胞タンパク質30である。そのようなものとして、この分子は、いかなる関節での変形性関節症の治療においても、具体的には、開始機械的原因が外科的に矯正される背景において有益である。TIMP-3はこれらのマトリックス分解酵素を遮断するために、追加的な分解を防ぐことにより関節軟骨のマトリックス代謝回転における平衡を回復させる可能性がある。しかし、TIMP-3は関節軟骨では特異的に発現されてはおらず、いくつかの酵素を阻害することができるため、関節内注射に続く全身投与又は全身播種に対していくつかの潜在的有害作用を及ぼすことがある。関節軟骨へのTIMP-3の阻害ドメインの標的送達は、軟骨マトリックスにおける、即ち、変形性関節症における疾病過程の部位での前記分子の治療効果を高めながら、潜在的全身播種を防ぐことができる。さらに、TIMP-3の阻害ドメインは、関節リウマチ、細菌性関節炎又は反応性関節炎などの状態において軟骨分解に対する保護剤としても働く。本明細書に開示されているのは、ターゲティングされる組換えTIMP-3(targeted recombinant TIMP-3)(trTIMP-3)(例えば、N末端又はC末端で、配列(配列番号1、配列番号2、配列番号3)又はその保存的置換体のうちの1つを含有する融合タンパク質である。TIMP-3が実施態様として選択されたが、他のプロテアーゼ阻害剤又はマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤も本明細書に開示する一般的手順に従うことにより、作製して使用してよい。
【0054】
TIMP-3は、シグナルドメイン、残基1から24、N末端阻害ドメイン、残基24から143、及び細胞外マトリックス結合ドメイン、残基143から211を含有している(スイスプロットエントリーP35625)。N-TIMP-3、即ち、残基24から143は、ADAMTS4及びADAMTS5並びにMMP-1及びMMP-2上で阻害活性を示すのに十分であることが実証されている3。したがって、C末端に配列WYRGRL(配列番号1)を含有するN-TIMP-3(Cys24からAsn143)の融合タンパク質を工学的に作製することが可能である。天然の非特異的C末端細胞外マトリックス結合ドメインは、関節軟骨に特異的なターゲティングポリペプチドで置換される。
【0055】
ヒト(P35625)及びマウスN-TIMP-3(P39876)は、3アミノ酸残基が異なる97%配列相同性を共有する。これらの残基のうちの2つは、保存的置換体、残基74でのThr対Ser、残基110でのAsp対Gluを表す。残基126では、Hisが2つのα-鎖を連結しているドメインにあるGlnの代わりに置き換わっている。
【0056】
クローニングのために、NM_000362の配列がプライマー設計に使用された。前記プライマーは、上で説明するように設計された(逆方向プライマーは配列番号9を、順方向プライマーは配列番号11を参照されたい)。コラゲナーゼD(Roche社、Basel、スイス)を使用した2段階消化プロトコルを使用して新生仔マウスの骨端軟骨から単離された未成熟マウス関節軟骨細胞から、RNeasy MinEluteスピンカラム(Qiagen社、Hombrechikon、スイス)を使用してRNAを単離した。第1鎖cDNAは、オリゴ-dT(20)プライマー(Microsynth社、Balgach、スイス)でSuperScript III(Invitrogen社、Carlsbad、カリフォルニア州)を使用して作製した。必要とされるDNAフラグメントを増幅するためのRT-PCRは、校正DNAポリメラーゼ(Pfu Turboポリメラーゼ、Stratagene社、LaJolla、カリフォルニア州)及びアガロースゲル電気泳動法により調べられる必要とされる長さの420bpを有するフラグメントで実施した。前記DNAフラグメントは、Nucleospin IIカラム(Macherey-Nagel社、Duren、ドイツ)でゲル精製し、対応する制限酵素BamHIとNotI(New England BioLabs社、Ipswich、マサチュセッツ州)で切断し、細菌タンパク質発現ベクターpGEX-4T-1(Amersham Biosciences社、GE Healthcare Europe、Otelfingen、スイス)にライゲートし、これは精製のためグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase)(GST)との融合タンパク質として全分子量40kDAのtrTIMP-3を発現する。細菌発現のために、大腸菌系統BL21を、エレクトロポレーションにより前記trTIMP-3-pGEX構築物で形質転換した。最適発現クローンは抗-GST ELISAにより選択した。
【0057】
細菌培養液は、0.6から0.7のA600に達するまで、2×YTで培養した。次に、タンパク質発現は、0.5M IPTGにより3時間誘導した。封入体からタンパク質を収集するため、細菌は遠心分離し、超音波処理により溶解し、再び遠心分離した。ペレットは変性緩衝液(0.1M Tris-HCl、50mMグリシン、8mM β-メルカプトエタノール、8M尿素、0.2M PMSF、pH8.0)中に再懸濁し、一晩攪拌して、48000×gで20分間遠心分離し、上澄みはリフォールディングのために収集した。変性剤をゆっくり取り除くために尿素の量を減らしながら(0.1M Tris-HCl、1mM EDTA、0.2mM PMSF、pH8.0に24時間ごとに4M、2M、1M及び0M尿素を補充する)大量のリフォールディング緩衝液に対して上澄みを4℃で透析(24kDa MWCO)することにより、リフォールディングを実施した。透析の最終段階はPBSに対して24時間実施した。リフォールディングされたタンパク質は、遠心分離により沈殿物から取り除き、それに続いてGST結合カラム(GSTrap FF、Amersham Biosciences社、GE Healthcare Europe、Otelfingen、スイス)でのFPLCにより精製した。精製したtrTIMP-3-GST融合タンパク質のGSTタグは、24時間トロンビンと一緒のインキュベーションにより切断し、FPLCにより、GSTrap FFカラムでGSTから及びHiTrapベンズアミジンFFカラム(Amersham Biosciences社、GE Healthcare Europe、Otelfingen、スイス)でトロンビンから精製した。trTIMP-3の全収率は約1.5mg/lの細菌培養液であった。
【0058】
精製したtrTIMP-3の活性は、等モル量のtrTIMP-3がMMP-2活性を完全に阻害するMMP-2酵素電気泳動法により評価し、精製されたタンパク質のほぼ100%活性を示していた。追加の実験を使用すれば、本明細書に記載するナノ粒子について示しているのと類似する形で、trTIMP-3のアグリカナーゼ阻害活性及び関節軟骨への標的特異性を実証することもできると考えられる。さらに、軟骨分解を防ぐその治療可能性を、適切な動物モデル、例えば、マウス膝不安定モデルで実証することができると考えられる。
【0059】
(ベクター)
したがって、ある種の実施態様は、対象の治療タンパク質、例えば、治療薬及びポリペプチドリガンドの発現用のベクターに向けられる。ポリペプチドをコードする核酸は、ベクター内に組み込むことができる。本明細書で使用するように、ベクターは、挿入したセグメントの複製を引き起こすように別の核酸セグメントを挿入してよい、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどのレプリコンである。本発明のベクターは、典型的に、発現制御配列に機能的に結合している挿入された核酸セグメントを含有する発現ベクターである。発現ベクターは、1つ以上の発現制御配列を含むベクターであり、発現制御配列は別のDNA配列の転写及び/又は翻訳を制御し調節するDNA配列である。発現制御配列には、例えば、プロモーター配列、転写エンハンサーエレメント、及びRNAポリメラーゼ結合、開始又は転写の停止に必要な他のあらゆる核酸エレメントが挙げられる。発現制御配列に関して、「機能的に結合して」とは、発現制御配列及び対象の挿入された核酸配列が、前記挿入された配列が転写される(例えば、ベクターが宿主細胞に導入されたときに)ように位置していることである。例えば、発現制御配列がそのDNA配列の転写及び翻訳を制御し調節する場合には、DNA配列はプロモーターなどの発現制御配列に機能的に結合している。用語「機能的に結合して」は、発現されるDNA配列の前に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有し、発現制御配列の制御の下でDNA配列を発現させる正確な読み枠を維持して、所望のタンパク質産物を産生することを含む。ベクターの例には:プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(FIV)、レトロウイルス(MoMLV)、及びトランスポゾンが挙げられる。構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーターなどを含むが、これらに限定されることはない、使用できると考えられる種々のプロモーターがある。プロモーターは、細胞内でRNAポリメラーゼに結合して、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始する調節シグナルである。
【0060】
(関節内補充療法の標的送達)
関節内補充療法のための分子は、本明細書に記載するポリペプチドリガンドにコンジュゲートされて、軟骨内での増強された送達及び効果のためのコンジュゲートを形成してよい。そのようなコンジュゲートの形成は、普通の当業者の技術の範囲内であり、前記コンジュゲーションを実現するための種々の技術が公知であり、特定の技術の選択はコンジュゲートされる材料により導かれる。そのようなコンジュゲートは、全身的に送達されてもよく、局所的に、例えば、経口的に、又は関節への注射によって送達されてもよい。したがって、本明細書に開示されるポリペプチドとのヒアルロン酸コンジュゲーションは、関節内でのヒアルロン酸の滞留時間を延ばし、したがって、ヒアルロン酸での関節内補充療法の有効性を増強する可能性がある。ポリペプチドのヒアルロン酸へのコンジュゲーションは、上記のように直接実施することもでき、又はポリマーリンカーの使用によって実施することもできる。ポリマーリンカーの例は、アミノ酸のないポリマーを含む、生体適合性親水性ポリマーである。例えば、ポリマーリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)でもよい。ヒアルロン酸は、マイケル型付加化学により作製されるアクリル酸化PEG-Arg-Gly-Aspコンジュゲートで機能化することができる(Parkら、Biomaterilas 2003;24:893-900)。通常、ポリペプチドリガンドと共に使用するための本明細書に記載するポリマーは、アミノ酸を有しない、つまり、そのようなポリマーは天然の又は合成のアミノ酸を含有しないものでもよい。
【0061】
いくつかの実施態様では、前記コンジュゲートは、調製され、医薬として許容し得る状態で、又は医薬賦形剤と共に精製された組成物として身体内に導入される。ある種の実施態様では、前記コンジュゲートは、生体高分子の場合と同じように、原核細胞でも真核細胞でも、細胞を使用して産生される。他の実施態様では、トランスフェクトされた細胞が患者に導入される。導入の部位は、例えば、全身的でも、関節にでも、軟骨組織にでもよい。
【0062】
(ポリペプチドを結合したポリマーと共に凝縮したターゲティング遺伝子)
小遺伝子送達システムは、軟骨組織の密なマトリックスを浸透することに関して利点を有するであろう。したがって、いくつかの実施態様では、送達システムは著しく凝縮されたDNAを使用して、軟骨マトリックスに進入し、非分裂静止状態の軟骨細胞又は他の細胞にトランスフェクトする。したがって、いくつかの実施態様では、ポリペプチドリガンドは、核局在化配列を含有するポリマーに結合されてコンジュゲートを形成し、DNAを凝縮して軟骨マトリックスに埋め込まれている軟骨細胞での遺伝子トランスフェクションに対する難問を克服するのに使用される。これらの技術のいくつかの局面は、Trentinら、PNAS 2006;103:2506-11及びJ Control Release 2005;102:263-75に記載されている。したがって、ある種の実施態様では、治療ポリペプチドをコードする核酸と会合しているコンジュゲートが調製され、医薬として許容し得る状態で、又は医薬賦形剤と共に精製された組成物として身体内に導入される。ある種の実施態様では、そのようなコンジュゲートは、生体高分子の場合と同じように、原核細胞でも真核細胞でも、細胞を使用して産生される。他の実施態様では、トランスフェクトされた細胞が患者に導入される。導入の部位は、例えば、全身的でも、関節にでも、軟骨組織にでもよい。
【0063】
(軟骨への送達のためにリガンドと会合した治療薬)
本明細書に記載するポリペプチドは、バイオコンジュゲーションを通じて他のポリマーに結合させることができる。そのようなコンジュゲートの形成は、普通の当業者の技術の範囲内であり、前記コンジュゲーションを実現するための種々の技術が公知であり、特定の技術の選択はコンジュゲートされる材料により導かれる。イオン化可能な側鎖を含有するアミノ酸、即ち、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、システイン、ヒスチジン、又はチロシンであって、ポリペプチド配列の活性部分には含有されていない前記アミノ酸のポリペプチドへの付加(C末端若しくはN末端)は、その非プロトン化状態で、強力な求核試薬として働いて、ポリマー、即ち、ホモ-又はヘテロ-ビ-機能的PEGに結合している反応基と種々のバイオコンジュゲーション反応を行う(例えば、Lutolf and Hubbell、Biomacromolecules 2003;4:713-22、Hermanson.Bioconjugate Techniques.London.Academic Press Ltd;1996)。これが有用である可能性がある適用は、再び、治療薬の標的送達である。いくつかの実施態様では、前記薬物は可溶性ポリマーに結合しており、医薬として許容し得る形で患者に投与してよい。又は、薬物は、ポリメロソーム(polymerosome)若しくは小胞に被包されていてもよく、又はポリマーに共有結合していてもよい。後者の場合には、薬物は、分解可能な部位特異的スペーサー又はリンカーでポリマー骨格に結合している(Luら、J Control Release 2002;78:165-73)。
【0064】
通常、可溶性親水性生体適合性ポリマーを使用して、前記コンジュゲートが可溶性であり、患者への導入後は生物が利用可能になることを保証してもよい。可溶性ポリマーの例は、少なくとも100、400、又は100と400,000の間(これらの明白な値間のあらゆる範囲及び値が企図されている)の分子量を有するポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、及びポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシドを含む用語)である。可溶性とは、少なくとも1g/lの水又は生理食塩水における可溶性のことである。生分解性ポリマーのドメインは、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸との共重合体、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、及びポリシアノアシレート(polycyanoacylate)も使用してよい。
【0065】
いくつかの実施態様では、ポリペプチド-ポリマー会合体、例えば、コンジュゲートを調製し、医薬として許容し得る状態で、又は医薬賦形剤と共に、精製された組成物として身体内に導入される。導入の部位は、例えば、全身的でも、関節内でも、軟骨組織内でもよい。
【0066】
(軟骨に対する特異的結合を有するポリペプチドリガンドを使用した軟骨欠損治療)
ポリペプチドリガンドは、軟骨マトリックスに対するその結合親和性に基づいて発見されたが、関節軟骨に特異的に結合しているわけではない。したがって、治療薬送達システムによって、又は工学的に作製された融合タンパク質を軟骨マトリックスにターゲティングするなどの実施態様に加えて、前記ポリペプチドは、細胞外マトリックスが欠損箇所では曝露されているために欠損にターゲティングするのに特によく適している。この特徴は、軟骨欠損修復を媒介する遺伝子、タンパク質及び/又は細胞送達のための生体材料の送達には有用である。したがって、実施態様は、本明細書に記載する実施態様のうちの1つを使用して関節軟骨の欠損を治療することを含む。事実、軟骨欠損に接着する又はそうでなければ特異的に結合する能力を生体材料に与えれば、注射可能な欠損修復戦略が可能になるだけではなく、軟骨欠損での生体材料の保持が増強される可能性もある。種々の化学的計画を利用して、軟骨結合ポリペプチドを生体材料に組み込むことができる。例えば、Sawhneyらにより記載されている材料を使用すれば、Hernらにより記載されている組込みのための化学的アプローチを用いることができる(Sawhneyら、Macromolecules 1993;26:581-587及びHernら、J.Biomed.Mater.Res.1998;39:266-276)。別の例として、Lutolfらにより記載されている材料を使用すれば、その中に記載されている組込みのための化学的アプローチを用いることができる(Lutolfら、Nature Biotechnol.2003;21:513-518)。通常、そのような生体材料の修飾は、普通の当業者の技術の範囲内であり、前記修飾を実現するための種々の技術が公知であり、特定の技術の選択はコンジュゲートされる生体材料及びペプチドにより導かれる。
【0067】
特異的結合とは、その用語が生物学の技術分野で一般的に使用されているように、通常、非標的組織と比べて相対的に高いアフィニティーで標的に結合する分子のことであり、通常、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、水素結合等などの複数の非共有相互作用を伴う。特異的結合相互作用は、抗体抗原結合、酵素基質結合、及び特異的結合タンパク質受容体相互作用を特徴付ける;そのような分子はその標的に加えて、ときに組織に結合することもあるが、そのような結合は特異性を欠くと言われ、特異的結合ではない。配列番号1、2、及び3のペプチドは、いくつかの状況では非軟骨組織に結合することがあるが、そのような結合は、周囲の関節組織とは対照的にターゲティングされた組織へのペプチドのはるかに大きな結合により証明されるように、非特異的であることが観察されている(データは示されていない)。
【0068】
したがって、実施態様は、本明細書に開示され、軟骨の欠損を充填する又は増強するのに使用されるリガンドのうちの少なくとも1つを含む生体材料を含む。欠損とは、表面の空隙(例えば、窪み、断裂、若しくは空孔)又は表面の病的不連続(例えば、断裂若しくは浸食されたメンバー)のことである。充填とは、前記欠損を基本的に充填する若しくは覆う又は前記不連続を架橋することである。増強とは、少なくとも部分的充填のことである。いくつかの実施態様では、生体材料は患者への設置に先立って固体であり、他の実施態様では、材料はインサイツで作製され、欠損の部位で前駆体から形成されることを意味する。したがって、軟骨欠損用の生体材料は、リガンド又は本明細書に記載される他の実施態様で補充してよい。そのような生体材料の例には、米国特許第5874500号、及び米国特許第5410016号が挙げられ、これにはインサイツ重合により形成される材料が含まれる。軟骨欠損にターゲティングする、即ち、軟骨欠損に接着するための生体材料は、増殖因子などの軟骨修復を媒介する治療薬の送達に、及び修復部位への細胞送達に適している。自己軟骨移植/埋め込みのための技術に従って、ポリペプチドリガンド(配列番号1、2及び3)の使用により欠損に接着し、形態形成ガイドとして作用する細胞送達のための生体材料の使用は、軟骨欠損修復を改善する可能性がある。
【0069】
(核酸)
ある種の実施態様は核酸に向けられる。本明細書で使用するように、用語核酸とはsiRNA、shRNA、miRNA、cDNA、ゲノムDNA、合成(例えば、化学的に合成された)DNA、並びに天然に存在し化学的に修飾された核酸、例えば、合成塩基又は代替骨格を含む、RNA及びDNAの両方のことである。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(即ち、センス若しくはアンチセンス一本鎖)であり得る。単離された核酸とは、脊椎動物ゲノムの核酸配列の一方の側又は両側に正常に隣接する核酸(例えば、遺伝子に隣接する核酸)を含む、ゲノム中に存在する他の核酸塩基から分離される核酸のことである。保存的に置換された核酸とは、同一アミノ酸をコードする別のコドンでの核酸コドンの置換のことであり、ポリペプチドに関して本明細書に記載する保存的に置換されたアミノ酸をコードする核酸のことでもある。重大なことに、約6残基のみからなるポリペプチドに対する潜在的コドンの組合せは扱いやすい程度に小さい。
【0070】
本明細書に記載する核酸配列は、「T」が場合によっては、DNA又はRNAの「T」又は「U」を表す略称を許す従来の慣習に従って、DNA配列もRNA配列も表すことを意図している。ポリヌクレオチドは、少なくとも3ヌクレオチドサブユニットからなる核酸分子である。ポリヌクレオチド類似体又はポリ核酸は、化学的に修飾されたポリヌクレオチド又はポリ核酸である。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチド類似体は、ポリヌクレオチドの糖-リン酸骨格の一部を代替えの官能基で置換することにより作製することができる。モルホリノ修飾されたポリヌクレオチドは、本明細書では「モルホリノ」と呼ぶが、塩基がモルホリノ-ホスホロジアミデート(phosphorodiamidate)骨格により連結されているポリヌクレオチド類似体である(例えば、米国特許第5142047号及び米国特許第5185444号を参照されたい)。モルホリノに加えて、ポリヌクレオチド類似体の他の例には、塩基がポリビニル骨格で連結されている類似体、塩基が偽性ペプチド2-アミノエチル-グリシン基で形成されたアミド結合により連結されたペプチド核酸(peptide nucleic acid)(PNA)、ヌクレオシドサブユニットがメチルホスホン酸基により連結されている類似体、ヌクレオシドサブユニットを連結しているリン酸残基がホスホロジアミデート基により置換されている類似体、及びホスホロチオエート化されたDNA、2'O-メチル基を有する糖部分を含有する類似体が挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは、固相合成という公知であり常用の技術を通して作製することができる。代わりに、そのような合成のための他の適切な方法(例えば、一般的分子クローニング及び化学的核酸合成技術)を使用することができる。類似の技術を使用して、モルホリノ又はホスホロチオエート誘導体などのポリヌクレオチド類似体を調製することもできる。さらに、ポリヌクレオチド及びポリヌクレオチド類似体は商業的に得ることができる。オリゴヌクレオチドでは、医薬として許容し得る組成物の例は、例えば、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム等などの陽イオンで形成された塩;(b)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸で形成された酸添加塩;(c)有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸で形成された塩;及び(d)基本的陰イオン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素から形成された塩を含む塩が挙げられる。
【0071】
(医薬担体)
医薬として許容し得る担体又は賦形剤を使用して、本明細書に記載する実施態様を送達してよい。賦形剤とは、治療薬のための希釈剤又は媒体として使用される不活性物質のことである。医薬として許容し得る担体は、通常、化合物が治療のために又は産物として有用になるように、化合物と共に使用される。通常、いかなる物質でも、医薬として許容し得る担体は、動物への送達のために物質と組み合わされる材料である。従来の医薬担体(水性ベースでも粉末ベースでも油性ベースでも)、増粘剤等は必要である又は望ましいことがある。いくつかの場合、前記担体は送達に不可欠であり、例えば、液体送達のため不溶性化合物を可溶化するために;その活性を保存するための物質のpHの制御用の緩衝液;又は保存容器中での物質の喪失を防ぐための希釈剤がある。しかし、他の場合には、担体は便宜上であり、例えば、もっと便利な投与のための液体。本明細書に記載する化合物の医薬として許容し得る塩は、この技術分野の当業者に公知の方法に従って合成してもよい。したがって、医薬として許容し得る組成物は、患者への投与に適した担体、塩、又は賦形剤を有している。さらに、そのような組成物の不活性成分は、生体適合性であり毒性がない。
【0072】
本明細書に記載の化合物は、典型的には、意図される形の投与に関して適切に選択された及び従来の薬務と一致する適切な医薬希釈剤、賦形剤、増量剤、又は担体(本明細書では医薬として許容し得る担体、又は担体と呼ばれる)と混合して投与されることになる。したがって、送達可能な化合物は、経口、直腸、局所、静脈注射、関節内注射、又は非経口投与に適した形で作製してよい。担体には、固体又は液体が含まれ、担体の種類は使用されている投与の種類に基づいて選ばれる。適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、流動誘発剤、及び溶融剤を、例えば、錠剤のために担体として含んでいてよい。例えば、活性成分は、乳糖、ゼラチン、寒天、デンプン、ショ糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール等などの経口非毒性医薬として許容し得る不活性担体と組み合わせることができる。前記化合物は、カプセル、錠剤、及び粉末などの固形剤形で、又は、エリキシル剤、シロップ、及び懸濁剤などの液体剤形で、経口的に投与することができる。活性成分は、無菌液体剤形で非経口的に投与することもできる。生理pH又はモル浸透圧濃度を実現するための緩衝液も使用してよい。
【0073】
本明細書で言及するすべての特許出願、特許、及び出版物は、本明細書に記載する明確な開示に直接矛盾しない程度に、引用により本明細書に組み込まれている。
【0074】
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15.Boder ET及びWittrup KDの論文「コンビナトリアルポリペプチドライブラリーのスクリーニングのための酵母表面表示(Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries)」(Nat Biotechnol 1997;15-6:553-7)
16.Xu L、Aha P、Gu K、Kuimelis RG、Kurz M、Lam T、Lim AC、Liu H、Lohse PA、Sun L、Weng S、Wagner RW、Lipovsek D.らの論文「mRNA表示を使用した高アフィニティー抗体模倣体の指向進化(Directed evolution of high-affinity antibody mimics using mRNA display)」(Chem Biol 2002;9-8:933-42)
17.Lam KS、Lebl M、Krchnak Vらの論文「1ビーズ1化合物コンビナトリアルライブラリー法(The "One-Bead-One-Compound" Combinatorial Library Method)」(Chem Rev 1997;97-2:411-48)
18.Zacher AN、3rd、Stock CA、Golden JW、2nd、Smith GPらの論文「新線維状ファージクローニングベクター(A new filamentous phage cloning vector)」(fd-tet.Gene 1980;9-1-2:127-40)
19.Madry H、Cucchiarini M、Terwilliger EF、Trippel SB.らの論文「正常な及び骨関節炎のヒト関節軟骨において組換えアデノ随伴ウイルスベクターは効率的に持続的に軟骨細胞を形質導入する(Recombinant adeno-associated virus vectors efficiently and persistently transduce chondrocytes in normal and osteoarthritic human articular cartilage)」(Hum Gene Ther 2003;14-4:393-402)
20.Phillips NC、Thomas DP、Knight CG、Dingle JTらの論文「リポソーム組込み副腎皮質ステロイド。II.実験的関節炎における治療活性(Liposome-incorporated corticosteroids.II.Therapeutic activity in experimental arthritis)」(Ann Rheum Dis 1979;38-6:553-7)
21.Shaw IH、Knight CG、Thomas DP、Phillips NC、Dingle JTらの論文「リポソーム組込み副腎皮質ステロイド:I.リポソームコルチゾールパルミチン酸と炎症性滑膜の相互作用(Liposome-incorporated corticosteroids:I.The interaction of liposomal Cortisol palmitate with inflammatory synovial membrane)」(Br J Exp Pathol 1979;60-2:142-50)
22.Ratcliffe JH、Hunneyball IM、Smith A、Wilson CG、Davis SSらの論文「薬物の関節内送達のための生分解性ポリマー系の調製及び評価(Preparation and evaluation of biodegradable polymeric systems for the intra-articular delivery of drugs)」(J Pharm Pharmacol 1984;36-7:431-6)
23.Ratcliffe JH、Hunneyball IM、Wilson CG、Smith A、Davis SSらの論文「関節内薬物送達のためのアルブミン小球体:ウサギの正常な及び関節炎膝関節におけるその保持の研究(Albumin microspheres for intra-articular drug delivery:investigation of their retention in normal and arthritic knee joints of rabbits)」(J Pharm Pharmacol 1987;39-4:290-5)
24.Tuncay M、Calis S、Kas HS、Ercan MT、Peksoy I、Hincal AAらの論文「ジクロフェナクナトリウム負荷アルブミン小球体のインビトロ及びインビボ評価(In vitro and in vivo evaluation of diclofenac sodium loaded albumin microspheres)」(J Microencapsul 2000;17-2:145-55)
25.Horisawa E、Hirota T、Kawazoe S、Yamada J、Yamamoto H、Takeuchi H、Kawashima Yらの論文「抗原誘導関節炎ウサギにおける関節内送達システムのためのベタメタゾンリン酸エステルナトリウムを含有するDL-ラクチド/グリコリドコポリマーナノ粒子の長期の抗炎症作用(Prolonged anti-inflammatory action of DL-lactide/glycolide copolymer nanospheres containing betamethasone sodium phosphate for an intra-articular delivery system in antigen-induced arthritic rabbit)」(Pharm Res 2002;19-4:403-10)
26.Horisawa E、Kubota K、Tuboi I、Sato K、Yamamoto H、Takeuchi H、Kawashima Yらの論文「ウサギ滑膜における食作用に対する関節内送達システムのためのDL-ラクチド/グリコリドコポリマー微粒子のサイズ依存性(Size-dependency of DL-lactide/glycolide copolymer particulates for intra-articular delivery system on phagocytosis in rat synovium)」(Pharm Res 2002;19-2:132-9)
27.Quinn TM、Morel V、Meister JJらの論文「関節軟骨の静的圧縮は、溶質拡散率及び分割を下げることができる:軟骨細胞生物学的応答の含意(Static compression of articular cartilage can reduce solute diffusivity and partitioning:implications for the chondrocyte biological response)」(J Biomech 2001;34-11:1463-9)
28.Quinn TM、Kocian P、Meister JJらの論文「静的圧縮は軟骨外植片におけるデキストランの拡散率の減少と関連している(Static compression is associated with decreased diffusivity of dextrans in cartilage explants)」(Arch Biochem Biophys 2000;384-2:327-34)
29.Lutolf MP及びHubbell JAの論文「マイケル型付加により形成される末端連結ポリ(エチレングリコール)-co-ペプチドハイドロゲルの合成及び物理化学的特徴付け(Synthesis and physicochemical characterization of end-linked poly(ethylene glycol)-co-peptide hydrogels formed by Michael-type addition)」(Biomacromolecules 2003;4-3:713-22)
30.Staskus PW、Masiarz FR、Pallanck LJ、Hawkes SPらの論文「21-kDaタンパク質はニワトリ線維芽細胞の形質転換感受性メタロプロテイナーゼ阻害剤である(The 21-kDa protein is a transformation-sensitive metalloproteinase inhibitor of chicken fibroblasts)」(J Biol Chem l991;266(l):449-54)
31.Negro A、Onisto M、Grassato L、Caenazzo C、Garbisa Sらの論文「大腸菌由来組換えヒトTIMP-3:合成、リフォールディング、物理化学的及び機能的洞察(Recombinant human TIMP-3 from Escherichia coli:synthesis,refolding,physico-chemical and functional insights)」(Protein Eng 1997;10(5):593-9)
32.Kashiwagi M、Tortorella M、Nagase H、Brew Kらの論文「TIMP-3はアグリカナーゼ1(ADAM-TS4)及びアグリカナーゼ2(ADAM-TS5)の強力な阻害剤である(TIMP-3 is a potent inhibitor of aggrecanase 1(ADAM-TS4)and aggrecanase 2(ADAM-TS5))」(J Biol Chem 2001;276(16):12501-4)
【0075】
本出願は、それぞれがある種の特徴を有する種々の独創的な実施態様を開示する。通常、これらの特徴は互いに混ぜ合わせ適合させて追加の機能的実施態様を作り出してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、又はその保存的置換体のアミノ酸配列を含む実質的に純粋なポリペプチドであって、軟骨組織に特異的に結合する、前記実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項2】
N末端又はC末端に化学的修飾を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列長が6から1000残基の間である、請求項1から2のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項4】
治療薬ポリペプチドをさらに含む、請求項1から3のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記治療薬ポリペプチドがマトリックスメタロプロテイナーゼ-3の組織阻害剤(TIMP-3)である、請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
合成骨格リンケージを含む、請求項1から5のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3、又はその保存的置換体をコードする核酸配列を含む実質的に純粋な核酸であって、該核酸によりコードされるポリペプチドが軟骨組織に特異的に結合する、前記実質的に純粋な核酸。
【請求項8】
ポリペプチド配列長が6から100残基の間である、請求項7記載の核酸。
【請求項9】
前記ポリペプチドが治療薬ポリペプチドを含む、請求項7又は8記載の核酸。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか記載の核酸を含むベクター。
【請求項11】
治療薬を軟骨組織に送達するための医薬品の製造方法であって、医薬として許容し得る担体と請求項1から6のいずれか記載のポリペプチドとを組み合わせることを含み、該ポリペプチドが、哺乳動物の軟骨組織に特異的に結合することにより該治療薬を軟骨組織にターゲティングする、前記製造方法。
【請求項12】
前記組成物が関節内に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
医薬として許容し得る賦形剤と、治療薬と、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及びその保存的置換体からなる群のアミノ酸配列を含むポリペプチドリガンドとを含む実質的に精製された調製物を含む治療薬を送達するための送達システムであって、該ポリペプチドリガンドが、軟骨組織に特異的に結合して、該治療薬を軟骨組織に標的送達する、前記送達システム。
【請求項14】
前記治療薬が、薬物、可視化剤、又は治療ポリペプチドを含む、請求項13記載の送達システム。
【請求項15】
前記ポリペプチドリガンド及び前記治療薬を含む融合ポリペプチドを含む、請求項13又は14記載の送達システム。
【請求項16】
前記治療薬がマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む、請求項13から15のいずれか記載の送達システム。
【請求項17】
前記ポリペプチドリガンド及び前記治療薬への共有結合を含む分子を含む、請求項13から16記載の送達システム。
【請求項18】
前記ポリペプチドリガンドが、前記治療薬に会合している生体適合性ポリマーに共有結合している、請求項13から17のいずれか記載の送達システム。
【請求項19】
前記生体適合性ポリマーはアミノ酸を有しない、請求項13から18のいずれか記載の送達システム。
【請求項20】
前記治療薬がヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、又はケラタン硫酸である、請求項13から15又は請求項17から19のいずれか記載の送達システム。
【請求項21】
約10nmから約200nmの間の平均直径を有する一群のナノ粒子を含み、該ナノ粒子が前記治療薬及び前記ポリペプチドリガンドを含む、請求項13から19のいずれか記載の送達システム。
【請求項22】
前記システムを使用して、哺乳動物に前記ポリペプチドリガンドを含む医薬として許容し得る組成物を投与することを含む、哺乳動物の軟骨を治療するための、請求項13記載の送達システムの使用。
【請求項23】
前記送達システムを使用して、前記組成物を関節内に送達する、請求項22記載の使用。
【請求項24】
ポリマーと、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又はその保存的置換体のアミノ酸配列を含む実質的に純粋なポリペプチドとを含む生体材料であって、該ポリペプチドが軟骨組織に特異的に結合し、該ポリマーはアミノ酸を有せず、少なくとも500の分子量を有する、前記生体材料。
【請求項25】
配列長が6から100残基の間である、請求項24記載の生体材料。
【請求項26】
前記ポリマーが少なくとも400Daのポリエチレングリコールを含む、請求項24又は25記載の生体材料。
【請求項27】
請求項24から26のいずれか記載の生体材料の製造方法であって、ポリマーをインサイツで反応させて該生体材料を形成することを含む、前記製造方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505444(P2010−505444A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532369(P2009−532369)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/021529
【国際公開番号】WO2008/063291
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(508252158)
【Fターム(参考)】