転がり軸受の潤滑装置
【課題】 攪拌抵抗の増加を防止して軸受温度の上昇を抑制すると共に、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる転がり軸受の潤滑装置を提供する。
【解決手段】 内輪1に軸方向に延びる内輪延長部6を設けると共に、外輪2の軸方向端に隣接し、内輪延長部6に径方向に対向する外輪間座7を設け、これら内輪延長部6と外輪間座7とにわたって給排油機構KUを設ける。スピンドル装置SUのハウジングHsにおける複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口23,24を設ける。この吸気口23,24と各転がり軸受BRの軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路27を設けた。
【解決手段】 内輪1に軸方向に延びる内輪延長部6を設けると共に、外輪2の軸方向端に隣接し、内輪延長部6に径方向に対向する外輪間座7を設け、これら内輪延長部6と外輪間座7とにわたって給排油機構KUを設ける。スピンドル装置SUのハウジングHsにおける複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口23,24を設ける。この吸気口23,24と各転がり軸受BRの軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路27を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、立型の工作機械主軸等のスピンドルの支持に用いられる転がり軸受の潤滑装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受の冷却と、軸受に対する潤滑油の給排油を行う機構を有する潤滑装置が提案されている(特許文献1)。この潤滑装置では、図14(A)に示すように、内輪端面に接する内輪間座50を設け、外輪端面に接する潤滑油導入部材51を設けている。内輪52のうち前記内輪端面から内輪軌道面に繋がる斜面に円周溝53を設けると共に、前記潤滑油導入部材51にノズル54を設け、このノズル54から前記円周溝53内に軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を吐出するようになっている。同図(A)において、矢印は潤滑油の流れを示す。潤滑油導入部材51に導入された潤滑油を円周溝53内に吐出することで、内輪52を冷却する。潤滑油導入部材51から軸受内に延びる被さり部55と前記斜面との間の隙間から、円周溝53の一部の潤滑油を軸受内に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の転がり軸受には、次の排油経路I,II(図示せず)が存在する。
・排油経路I:内輪冷却後、軸受外に排出する経路
・排油経路II:軸受内部の潤滑剤として使用され、軸受外に排出する経路
従来、潤滑装置は、各排油経路I,IIに対し、ポンプをそれぞれ使用し、軸受内の油を速やかに排出していた。しかし排油経路IIのポンプの吸引力の影響で軸受内部に潤滑油が多量に流入し、攪拌抵抗が増え軸受温度が上昇する傾向があった。一方、排油経路IIのポンプを使用せず、油を重力、遠心力のみで自然排出しようとすると、排油経路Iのポンプの吸引力の影響で軸受内部が負圧となり、油が軸受内部に十分流入しなくなった。
【0005】
そこで、本件出願人は、外輪間座のうち排油口近傍に吸気孔を設けることで、排油をポンプで吸引するとき、排油口に空気が流入することで、軸受内部が負圧になることを解消し、軸受内部に十分な潤滑油を供給する技術を見出している。
しかし、前記吸気孔から軸受内部に空気が流入する際、脈動を生じ、吸気口に潤滑油が漏れてくる場合がある。また、図15に示すように、ハウジングHsに軸方向の吸気経路56を設けた場合、吸気口58から漏れた潤滑油と、空気とが、吸気経路途中の点線内で表記する部分57で干渉し、油の障壁が発生する可能性がある。この油の障壁が発生すると、軸受内に空気が流入できず、スピンドル装置内部の圧力バランスに影響を及ぼす。すなわち、軸受内部が負圧となって、油が軸受内部に十分流入しなくなることがある。
【0006】
この発明の目的は、攪拌抵抗の増加を防止して軸受温度の上昇を抑制すると共に、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる転がり軸受の潤滑装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の転がり軸受の潤滑装置は、立型のスピンドル装置におけるハウジング内に、スピンドルの軸方向に並べて配置されて、それぞれ外輪が前記ハウジングに設置され内輪でスピンドルを支持する複数の転がり軸受と、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を前記各転がり軸受内に供給すると共に軸受外に排出する給排油機構とを設け、前記内輪に軸方向に延びる内輪延長部を設けると共に、前記外輪の軸方向端に隣接し、または前記外輪の一部として、前記内輪延長部に径方向に対向する外輪間座を設け、これら内輪延長部と外輪間座とにわたって前記給排油機構を設け、前記スピンドル装置のハウジングにおける前記複数の転がり軸受が配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けたことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、給排油機構により軸受内に潤滑油を導入することで、軸受を冷却する。軸受内に導入した潤滑油の一部は、軸受内の潤滑油として使用される。また給排油機構により、潤滑油を軸受外に排出する。前記軸受を冷却した潤滑油は、例えば、ポンプを使用して軸受外に排出する。軸受内で潤滑に供された潤滑油は、例えば、潤滑油自体の重力および遠心力により排出する。
【0009】
特に、ハウジングの上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けたため、前記ポンプは、軸受を冷却した潤滑油と共にハウジング内の周辺空気も同時に吸引する。複数の吸気路から軸受内部に空気が流入するときに例えば前記ポンプによる脈動を生じ、前記複数の吸気路から軸受内で潤滑に供された潤滑油が漏れた場合、ハウジングの下部の吸気口からこの潤滑油を排出する。このとき、ハウジングの上部の吸気口から複数の吸気路を介して軸受内部に安定して空気を供給する。
【0010】
このため、軸受空間内に必要十分な空気を流入させることができ、軸受内部が負圧となることを抑制することができる。これにより軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる。複数の吸気路から潤滑油が漏れた場合においても、少なくともハウジングの上部の吸気口から空気を供給できるため、ハウジングの下部において潤滑油と空気とが干渉することがなく油の障壁が生じることを確実に防止し得る。なお、吸気路から潤滑油が漏れない場合には、ハウジングの上部および下部の各吸気口からそれぞれ空気を供給することができる。
軸受内で潤滑に供された潤滑油を、ポンプを用いることなく重力および遠心力により排出することができるので、軸受内部に過度の潤滑油が流入することがなくなる。これにより、攪拌抵抗を低減し、軸受温度の上昇を抑制することができるため、動力損失の低減を図ることができる。また前記のように、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給できるため、スピンドルの高速化を図ることができる。
【0011】
前記ハウジングには、潤滑油を給排油機構に供給する給油経路と、軸受内で潤滑に供された前記潤滑油である排油をハウジング外に排出する排油経路とが設けられ、前記排油経路は、排油を重力により排出するものであって、この排油経路におけるハウジングの下部に位置する部分には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部が設けられるものとしても良い。
【0012】
立型のスピンドル装置におけるハウジングの下部では、排油経路の一部として、加工の容易性から一般的に水平方向経路が採用されている。排油経路では、軸受内で潤滑に供された排油が重力により排出される。この場合に、重力の向きである鉛直方向に対し、垂直方向の経路である前記水平方向経路では排出効率が悪くなる。この構成によると、排油経路におけるハウジングの下部に位置する部分に、前述の排油経路傾斜部が設けられるため、この排油経路傾斜部に沿って排油が円滑に排出される。
【0013】
前記給排油機構は、前記潤滑油を軸受内に供給する給油口と潤滑油を軸受外に排出する排油口とを有し、ハウジングには、各排油口と前記排油経路とを径方向に連通して繋ぐ連通部材がそれぞれ設けられるものとしても良い。この場合、各軸受内で潤滑に供された排油は、それぞれ連通部材を通して排油経路に導かれ重力により排出される。
【0014】
各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、上下の連通部材の先端部の円周方向位置を互いに変えて配設したものとしても良い。この場合、上部の軸受に連通する連通部材の先端部から吐出される排油が、下部の軸受に連通する連通部材の先端部に衝突することを抑えることができる。したがって、吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排油の排出効率を良くすることができる。
【0015】
各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、複数の連通部材の各先端部は、排油経路内への突出量が下方の連通部材の先端部程長く突出するように設けたものとしても良い。この場合にも、上部の軸受に連通する連通部材から吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
各連通部材の先端部における底面に、連通部材の内径と同径の先端部排油口を設けても良い。この場合、各連通部材の先端部まで導かれた排油を、この先端部の底面から重力により円滑に排出することができる。また、上方の連通部材から吐出される排油が、この連通部材の下方に位置する連通部材から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0016】
前記連通部材の先端を、上方に向かうに従って排油経路内の対向壁面に近づくように傾斜する傾斜面としても良い。この場合にも、上方の連通部材から吐出される排油が、この連通部材の下方に位置する連通部材から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0017】
前記ハウジングには、下部の吸気口と各吸気路とを繋ぐ吸気経路が設けられ、この吸気経路のうちハウジングの下部には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部が設けられるものとしても良い。ポンプによる脈動に起因して、軸受内部潤滑油が複数の吸気路を介して吸気経路に流れ込む場合がある。この場合に、重力の向きである鉛直方向に対し、垂直方向の経路である水平方向経路では軸受内部潤滑油の排出効率が悪くなる。この構成によると、吸気経路のうちハウジングの下部に、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部が設けられるため、吸気経路傾斜部に沿って軸受内部潤滑油が円滑に排出される。
【0018】
前記複数の転がり軸受のうち、各外輪の下面に位置する外輪端面、および、各外輪間座の上面に位置する間座端面のいずれか一方または両方に、前記複数の吸気路を設けたものとしても良い。この場合、例えば、外輪端面または間座端面の円周方向の一部を切欠くことで、吸気路を容易に形成することができる。
この発明のいずれかの転がり軸受の潤滑装置は、工作機械のスピンドルの支持に用いられるものであっても良い。
【発明の効果】
【0019】
この発明の転がり軸受の潤滑装置は、立型のスピンドル装置におけるハウジング内に、スピンドルの軸方向に並べて配置されて、それぞれ外輪が前記ハウジングに設置され内輪でスピンドルを支持する複数の転がり軸受と、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を前記各転がり軸受内に供給すると共に軸受外に排出する給排油機構とを設け、前記内輪に軸方向に延びる内輪延長部を設けると共に、前記外輪の軸方向端に隣接し、または前記外輪の一部として、前記内輪延長部に径方向に対向する外輪間座を設け、これら内輪延長部と外輪間座とにわたって前記給排油機構を設け、前記スピンドル装置のハウジングにおける前記複数の転がり軸受が配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けた。このため、攪拌抵抗の増加を防止して軸受温度の上昇を抑制すると共に、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る転がり軸受の潤滑装置の断面図である。
【図2】同転がり軸受の潤滑装置を含む立型のスピンドル装置の断面図である。
【図3】同スピンドル装置の要部を水平方向に切断して見た断面図である。
【図4】図3のC−O−D断面図である。
【図5】図4のスピンドル装置の吸気経路等を部分的に示す断面図である。
【図6】(A)は、同スピンドル装置の上部の吸気口付近を拡大して示す断面図、(B)は、同スピンドル装置の下部の吸気口付近を拡大して示す断面図である。
【図7】同スピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。
【図8】(A)は、同スピンドル装置の排油経路の要部を拡大して示す断面図、(B)は、参考提案例に係る排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
【図9】この発明の他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。
【図10】(A)は、同スピンドル装置の排油経路の要部を、図9のA−A線で水平方向に切断して見た断面図、(B)は、同スピンドル装置の排油経路の要部を、図9のB−B線で水平方向に切断して見た断面図である。
【図11】この発明のさらに他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。
【図12】この発明のさらに他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
【図13】この発明のさらに他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
【図14】(A)は、従来例の転がり軸受の潤滑装置の給油側の断面図、(B)は同潤滑装置の排油側の断面図である。
【図15】従来例のスピンドル装置の吸気経路等を部分的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図8と共に説明する。この実施形態に係る転がり軸受の潤滑装置は、図2に示すように、立型のスピンドル装置SUに用いられる。このスピンドル装置SUは工作機械に応用されるものであり、このスピンドル装置SUにおけるハウジングHs内に、複数の転がり軸受BRがスピンドルShの軸方向に並べて配置される。ハウジングHs内に複数の転がり軸受BRの外輪2がそれぞれ嵌合状態に設置され、複数の内輪1でスピンドルShを支持するようになっている。ハウジングHsと、このハウジングHs内に設置される複数の転がり軸受BRと、後述する複数の給排油機構KUとで転がり軸受装置が構成される。
【0022】
図1に示すように、転がり軸受の潤滑装置は、転がり軸受BRと、給排油機構KUとを含む。転がり軸受BRは、内外輪1,2と、内外輪1,2の軌道面1a,2a間に介在する複数の転動体3と、これら転動体3を保持するリング状の保持器4とを有する。この転がり軸受BRはアンギュラ玉軸受からなり、転動体3として、鋼球やセラミックス球等からなる玉が適用される。
【0023】
内輪1は、内輪本体部5と、内輪延長部6とを有する。内輪本体部5は、軸受としての必要な強度を満たし、且つ、所定の幅寸法に設けられる。前記所定の幅寸法とは、JIS、軸受カタログ等に規定される内輪の幅寸法である。内輪本体部5における外周面の中央部に軌道面1aが形成されている。前記外周面のうち軌道面1aに繋がる軸方向一方側に、カウンタボアとなる斜面1bが形成されている。この斜面1bは、軌道面1a側に向かうに従って大径となるように傾斜する断面形状に形成されている。前記外周面のうち軌道面1aに繋がる軸方向他方側に、平坦な外径面1cが形成されている。この内輪本体部5の内輪背面側または内輪正面側に、内輪延長部6が軸方向一方に延びるように一体に設けられる。
外輪2の軌道面2aの軸方向両側に、外輪内径面2bと、斜面状のカウンタボア2cとがそれぞれ形成されている。前記外輪内径面2bに保持器4が案内されるように構成されている。
【0024】
図1に示すように、給排油機構KUは、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を軸受内に供給すると共に、軸受外に排出する機構である。転がり軸受装置を図2に示す立軸で使用する場合、給排油機構KUを転がり軸受BRの上部に配設する。外輪2の軸方向端に隣接して、外輪2とは別体の外輪間座7を設け、この外輪間座7の内周面を、内輪延長部6の外周面に対向させている。これら内輪延長部6と外輪間座7とにわたって給排油機構KUを設けている。
給排油機構KUは、環状油路8と、給油口9と、排油口10とを有する。これらのうち環状油路8は、図1左側に示すように、内輪側円周溝11と、間座側円周溝12とで成る。内輪側円周溝11は、内輪延長部6の外周面に設けられる断面凹形状の円周溝である。間座側円周溝12は、内輪側円周溝11に対して径方向に対向するように配設される。これら内輪側円周溝11と間座側円周溝12とで断面矩形孔状で環状に連なる環状油路8が形成される。
【0025】
図1左側に示すように、外輪間座7のうち円周方向の一部に、潤滑油を軸受内に供給する前記給油口9が形成されている。この給油口9は、外輪間座7の外周面から前記環状油路8に径方向に貫通する段付きの貫通孔状に形成されている。すなわち給油口9は、環状油路8の円周方向の一部に連通する連通孔9aと、この連通孔9aに繋がり前記外周面に開口する座繰り孔9bとで成る。座繰り孔9bは、連通孔9aに対し同心で同連通孔9aよりも大径に形成されている。給油口9から環状油路8に供給された潤滑油は、図3に示すように、環状油路8内を、回転側の軌道輪である内輪1の回転方向L1と同一方向に進み、排油口10等から排出される。
【0026】
図3に示すように、外輪間座7のうち、前記給油口9とは位相の異なる円周方向の一部に、潤滑油を軸受外に排出する排油口10が形成されている。排油口10は、図1右側に示すように、外輪間座7の外周面から環状油路8に径方向に貫通する貫通孔状に形成されている。図3に示すように、給油口9に対し、排油口10の位相が所定の位相角度α(この例ではα=270度)となるように設けられている。
【0027】
図1に示すように、内輪延長部6および外輪間座7には、給油口9から環状油路8に供給された潤滑油の一部を、斜面1bを介して内輪軌道面1aに導く軸受シール部13を設けている。内輪延長部6のうち、内輪側円周溝11を成す断面凹形状の一方側肩部14は、内輪本体部5に一体に繋がっている。外輪間座7のうち環状油路8を成す断面凹形状の一方側肩部15の内周面と、同内周面に径方向すきまを介して対向する内輪延長部6の一方側肩部14の外周面とにより、ラビリンスから成る軸受シール部13を形成している。この軸受シール部13を形成したことで、軸受内への潤滑油の供給量を抑制し得る。
固定側の軌道輪である外輪2には、切欠部から成る排油口16が設けられる。この排油口16は、外輪2のうち外輪間座7とは軸方向逆側の外輪下端面に設けられ、軸受シール部13を経由して軸受内の軌道面1aに供給された潤滑油を軸受外に排出するようになっている。図3に示すように、排油口10は、後述の排油経路20と同位相となる位置に設けられる。
【0028】
図1に示すように、内輪延長部6および外輪間座7には、軸方向に隣接する軸受内に潤滑油が漏洩することを抑制するラビリンス機構17を設けている。このラビリンス機構17は、給油口9および排油口10に連通し、広部と狭部とが軸方向に連なるものとしている。広部は、内輪延長部6における他方側肩部の外周面に設けられる円周溝18と、この円周溝18に対向する外輪間座7の内周面とを含んで構成される。前記円周溝18は、軸方向に間隔をあけて複数配設される。前記狭部は、内輪延長部6における前記外周面の突出先端部と、この突出先端部に対向する外輪間座7の内周面とを含んで構成される。潤滑油が給油口9から供給されラビリンス機構17に浸入した場合、この潤滑油は、内輪回転による遠心力により円周溝18に沿って漏れ側とは反対方向に移動するため、隣接する軸受内に潤滑油が漏洩することを抑制し得る。なお、内輪延長部6に円周溝18を設ける構成に代えて、外輪間座7における断面凹形状の他方側肩部に、円周溝18を設けても良い。また内輪延長部6および外輪間座7にそれぞれ円周溝18を設けても良い。
【0029】
ハウジングHsには、給油経路19と、排油経路20,21と、吸気経路22と、吸気口23,24とが設けられている。
給油経路19および排油経路20について説明する。
図2は、図3のA−O−B断面図である。図2に示すように、ハウジングHsには、潤滑油を給排油機構KUに供給する給油経路19と、軸受を冷却した潤滑油である冷却油をハウジングHs外に排出する排油経路20とが設けられている。給油経路19と、排油経路20とは、ハウジングHsのうち位相の異なる円周方向の一部に設けられている。この例では、図3に示すように、給油経路19に対し、排油経路20の位相が所定の位相角度β(この例ではβ=270度)となるように設けられている。図2に示すように、給油経路19は、給油ポンプ25に配管接続され、排油経路20は、排油ポンプ26にそれぞれ配管接続されている。これら給油ポンプ25、排油ポンプ26は、それぞれハウジングHs外に設置されている。
【0030】
図2に示すように、前記給油経路19は、スピンドル軸方向に平行に延びる主たる軸方向経路19aと、この軸方向経路19aと各給油口9とをそれぞれ繋ぐ複数の径方向経路19bと、前記軸方向経路19aの下端に繋がりハウジングHsの下部に設けられる水平方向経路19cおよび軸方向経路19dとを有する。ハウジングHsにおける軸方向経路19dの下端に、例えば、図示外の継手が螺着され、この継手と給油ポンプ25とが配管接続される。この給油ポンプ25を用いて、潤滑油を給油源から給油経路19を介して各給油口9に強制的に圧送するようになっている。
【0031】
前記排油経路20は、スピンドル軸方向に平行に延びる軸方向経路20aと、この軸方向経路20aと各排油口10とをそれぞれ繋ぐ複数の径方向経路20bと、前記軸方向経路20aの下端に繋がりハウジングHsの下部に設けられる水平方向経路20cおよび軸方向経路20dとを有する。ハウジングHsにおける軸方向経路20dの下端に、例えば、継手を介して排油ポンプ26が配管接続される。軸受を冷却した潤滑油は、排油ポンプ26を用いて排油経路20を介してハウジングHs外に排出し得る。なお、各径方向経路19b,20bおよび水平方向経路19c,20cを形成するとき、ハウジングHsの外周面側から半径方向内方側に孔をそれぞれ形成した後、ハウジングHsの外周面にて開口した各孔を埋め栓で塞ぐことでこれらの経路を容易に形成し得る。
【0032】
吸気路27、吸気口23,24、吸気経路22について説明する。
図4は、図3のC−O−D断面図である。図4に示すように、ハウジングHsには、前述の排油ポンプ26(図2)の吸引力の影響で軸受内部が負圧となるのを防ぐ吸気口23,24および吸気経路22が設けられている。後述の吸気口23,24と、各転がり軸受BRの軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路27が、外輪間座7に設けられている。
各吸気路27は、この例では、外輪間座7の上端面のうち、図3に示すように、排油口10との位相が近い「排油口近傍」において、半径方向に延びる溝形状に形成される。このように各吸気路27は、外輪間座7の上端面における円周方向の一部に設けられる。前記「排油口近傍」とは、排油口10の位相中心に対し、±30度内の範囲をいう。なお吸気路27を、外輪下端面における排油口近傍に、半径方向に延びる溝形状に形成しても良い。外輪間座7の上端面および外輪下端面における、円周方向の同位相となる位置で且つ排油口近傍に、吸気路27を設けても良い。
【0033】
前記吸気口23,24は、図5に示すように、ハウジングHsにおける前記複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放するように設けられている。この明細書において、前記「ハウジングHsにおける前記複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の上部」とは、ハウジングHs内で軸方向に並ぶ複数の転がり軸受BRのうち、最上部に位置する転がり軸受BRの内輪上端面よりも少なくとも上方に位置するハウジングHsの部分を指す。「ハウジングHsにおける前記複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の下部」とは、ハウジングHs内で軸方向に並ぶ複数の転がり軸受BRのうち、最下部に位置する転がり軸受BRの内輪下端面よりも少なくとも下方に位置するハウジングHsの部分を指す。
【0034】
図6(A)に示すように、上部の吸気口23は、ハウジングHsと、このハウジングHsの上端を塞ぐ上蓋28との境界部のうち、円周方向の一部がこの円周方向に沿って長孔状に形成されて成る。吸気経路22は、スピンドル軸方向に平行に延びる主経路22aと、この主経路22aと各吸気路27とをそれぞれ繋ぐ複数の副経路22bと、吸気経路傾斜部22cとを有する。吸気経路22の主経路22aに、前記上部の吸気口23が連通されている。図6(B)に示すように、吸気経路22のうちハウジングHsの下部には、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部22cが設けられる。吸気経路22のうちの吸気経路傾斜部22cに、前記下部の吸気口24が連通されている。図4に示すように、ハウジングHsにおける下部の吸気口24は、油タンク29に配管接続されるうえ、大気開放される。
【0035】
排油経路21について説明する。
図4に示すように、排油経路21は、排油を、ポンプ等の駆動源を用いることなく重力により排出するものである。この排油経路21と、ハウジングHsのうち吸気経路22とは位相の異なる円周方向の一部に設けられている。この例では、図3に示すように、吸気経路22に対し、排油経路21の位相が所定の位相角度γ(この例ではγ=150度)となるように設けられている。
図7に示すように、排油経路21は、軸方向経路21aと、排油経路傾斜部20bと、軸方向経路21cとを有する。軸方向経路21aはスピンドル軸方向に平行に延びる。軸方向経路21aと各排油口16とをそれぞれ繋ぎ、径方向に延びる円筒部材から成る複数の連通部材30が設けられている。各連通部材30としてプラグ等が用いられる。
【0036】
図8(A)は、このスピンドル装置SUの排油経路21の要部を拡大して示す断面図、同図8(B)は、参考提案例に係る排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
図8(A)に示すように、ハウジングHsの下部には、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部21bが設けられる。ハウジングHsにおける軸方向経路21aの下端に、順次、排油経路傾斜部21b、軸方向経路21cが繋がる。図4に示すように、ハウジングHsにおける軸方向経路21cの下端が油タンク29に配管接続される。
ここで立型のスピンドル装置SUにおけるハウジングHsの下部では、排油経路の一部として、加工の容易性から一般的に図8(B)に示す水平方向経路31が採用されている。排油経路では、軸受内で潤滑に供された排油が重力により排出される。この場合に、重力の向きである鉛直方向に対し、垂直方向の経路である前記水平方向経路31では排出効率が悪くなる。
本実施形態に係る図8(A)に示す排油経路21では、排油が重力により排油経路傾斜部21bに沿って円滑に排出される。
【0037】
作用効果について説明する。
給油ポンプ25を駆動し、潤滑油を給油源から給油経路19を介して各給油口9に強制的に圧送する。これにより潤滑油を、軸受内の環状油路8に導入する。これにより軸受の特に内輪1を冷却する。導入された潤滑油の一部は、軸受シール部13を経由して、軌道面1a等に供給される。また給排油機構KUの排油口10から、潤滑油を軸受外に排出する。軸受を冷却した潤滑油すなわち冷却油は、排油ポンプ26を使用して各排油口10から軸受外に排出し、順次、径方向経路20b、軸方向経路20a、水平方向経路20c、および軸方向経路20dを介してハウジングHs外に排出する。
【0038】
排油ポンプ26は、冷却油と共にハウジングHs内の周辺空気も同時に吸引するが、外輪間座7の上端面のうち、排油口近傍に吸気路27を設けたため、排油口10に空気が流れ込み、排油を円滑にすると同時にハウジングHs内部の圧力分布変動を抑える。特に、ハウジングHsの上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口23,24を設け、この吸気口23,24と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路27を設けたため、排油ポンプ26は、冷却油と共にハウジングHs内の周辺空気も同時に吸引する。複数の吸気路27から軸受内部に空気が流入するときに例えば排油ポンプ26による脈動を生じ、前記複数の吸気路27から軸受内部潤滑油が漏れた場合、この軸受内部潤滑油は、吸気経路22の各副経路22b、主経路22a、吸気経路傾斜部22cを経由してハウジングHs外に排出し油タンク29に戻す。吸気経路22のうちハウジングHsの下部に、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部22cが設けられるため、吸気経路傾斜部22cに沿って軸受内部潤滑油が円滑に排出される。このとき、ハウジングHsの上部の吸気口23から複数の吸気路27を介して軸受内部に安定して空気を供給する。
【0039】
このため、軸受空間内に必要十分な空気を流入させることができ、軸受内部が負圧となることを抑制することができる。これにより軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる。複数の吸気路27から軸受内部潤滑油が漏れた場合においても、少なくともハウジングHsの上部の吸気口23から空気を供給できるため、ハウジングHsの下部において軸受内部潤滑油と空気とが干渉することがなく油の障壁が生じることを確実に防止し得る。なお、吸気路27から軸受内部潤滑油が漏れない場合には、ハウジングHsの上部および下部の各吸気口23,24からそれぞれ空気を供給することができる。
【0040】
軸受内部潤滑油を、ポンプを用いることなく重力および遠心力により排出することができるので、軸受内部に過度の潤滑油が流入することがなくなる。排油経路21では、軸受内部潤滑油が重力により排出される。この構成によると、排油経路21のうちハウジングHsの下部に、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部21bが設けられるため、排油経路傾斜部21bに沿って排油が円滑に排出される。
前述のように、軸受内部に過度の潤滑油が流入しないようにできることで攪拌抵抗を低減し、軸受温度の上昇を抑制することができるため、動力損失の低減を図ることができる。また前記のように、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給できるため、スピンドルShの高速化を図ることができる。
【0041】
他の実施形態について図9、図10と共に説明する。
図9はこの発明の他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。図10(A)は上部の軸受の排油口16での断面図(図9のA−A線断面図)、図10(B)が前記軸受の下部に隣接する軸受の排油口16での断面図(図9のB−B線断面図)である。各連通部材30の先端部が排油経路21にそれぞれ開口し、且つ、上下の連通部材30,30の先端部の円周方向位置を互いに変えて配設しても良い。この例では、上下の隣接する軸受の排油口16と、排油経路21の軸方向経路21aとの連結部分を径方向に角度α1(例えばα1=30度)を設けて連通させている。
この場合、上部の軸受に連通する連通部材30の先端部から吐出される排油が、下部の軸受に連通する連通部材30の先端部に衝突することを抑えることができる。したがって、吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排油の排出効率を良くすることができる。
【0042】
図11に示すように、各連通部材30の先端部30aが、排油経路21の軸方向経路21aにそれぞれ開口し、且つ、複数の連通部材30の各先端部30aは、軸方向経路21a内への突出量が下方の連通部材30の先端部30a程長く突出するように設けても良い。このように各連通部材30の突出量L2を変えることにより、上部の軸受に連通する連通部材30から吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0043】
図12は、図11の構成に加えて、各連通部材30の先端部30aにおける底面に、連通部材30の内径と同径の先端部排油口30aaを設けたものである。この場合、各連通部材30の先端部30aまで導かれた排油を、この先端部30aの底面の先端部排油口30aaから重力により円滑に排出することができる。また、上方の連通部材30から吐出される排油が、この連通部材30の下方に位置する連通部材30から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0044】
図13に示すように、図11の構成に加えて、連通部材30の先端を、上方に向かうに従って排油経路21内の対向壁面に近づくように傾斜する傾斜面30bとしても良い。この場合にも、上方の連通部材30から吐出される排油が、この連通部材30の下方に位置する連通部材30から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0045】
排油経路21に連通する各連通部材30のうち、最上部の連通部材30を省略しても良い。
この転がり軸受の潤滑装置を、工作機械以外の装置、ロボット等に適用することも可能である。
各実施形態では、外輪2の軸方向端に隣接して外輪間座7を設けているが、外輪間座7を外輪2の一部として外輪2に一体に設けても良い。
実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…内輪
2…外輪
6…内輪延長部
7…外輪間座
9…給油口
16…排油口
19…給油経路
21…排油経路
21b…排油経路傾斜部
22…吸気経路
22c…吸気経路傾斜部
23,24…吸気口
27…吸気路
30…連通部材
30a…先端部
30aa…先端部排油口
30b…傾斜面
BR…転がり軸受
Hs…ハウジング
KU…給排油機構
Sh…スピンドル
SU…スピンドル装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、立型の工作機械主軸等のスピンドルの支持に用いられる転がり軸受の潤滑装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受の冷却と、軸受に対する潤滑油の給排油を行う機構を有する潤滑装置が提案されている(特許文献1)。この潤滑装置では、図14(A)に示すように、内輪端面に接する内輪間座50を設け、外輪端面に接する潤滑油導入部材51を設けている。内輪52のうち前記内輪端面から内輪軌道面に繋がる斜面に円周溝53を設けると共に、前記潤滑油導入部材51にノズル54を設け、このノズル54から前記円周溝53内に軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を吐出するようになっている。同図(A)において、矢印は潤滑油の流れを示す。潤滑油導入部材51に導入された潤滑油を円周溝53内に吐出することで、内輪52を冷却する。潤滑油導入部材51から軸受内に延びる被さり部55と前記斜面との間の隙間から、円周溝53の一部の潤滑油を軸受内に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の転がり軸受には、次の排油経路I,II(図示せず)が存在する。
・排油経路I:内輪冷却後、軸受外に排出する経路
・排油経路II:軸受内部の潤滑剤として使用され、軸受外に排出する経路
従来、潤滑装置は、各排油経路I,IIに対し、ポンプをそれぞれ使用し、軸受内の油を速やかに排出していた。しかし排油経路IIのポンプの吸引力の影響で軸受内部に潤滑油が多量に流入し、攪拌抵抗が増え軸受温度が上昇する傾向があった。一方、排油経路IIのポンプを使用せず、油を重力、遠心力のみで自然排出しようとすると、排油経路Iのポンプの吸引力の影響で軸受内部が負圧となり、油が軸受内部に十分流入しなくなった。
【0005】
そこで、本件出願人は、外輪間座のうち排油口近傍に吸気孔を設けることで、排油をポンプで吸引するとき、排油口に空気が流入することで、軸受内部が負圧になることを解消し、軸受内部に十分な潤滑油を供給する技術を見出している。
しかし、前記吸気孔から軸受内部に空気が流入する際、脈動を生じ、吸気口に潤滑油が漏れてくる場合がある。また、図15に示すように、ハウジングHsに軸方向の吸気経路56を設けた場合、吸気口58から漏れた潤滑油と、空気とが、吸気経路途中の点線内で表記する部分57で干渉し、油の障壁が発生する可能性がある。この油の障壁が発生すると、軸受内に空気が流入できず、スピンドル装置内部の圧力バランスに影響を及ぼす。すなわち、軸受内部が負圧となって、油が軸受内部に十分流入しなくなることがある。
【0006】
この発明の目的は、攪拌抵抗の増加を防止して軸受温度の上昇を抑制すると共に、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる転がり軸受の潤滑装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の転がり軸受の潤滑装置は、立型のスピンドル装置におけるハウジング内に、スピンドルの軸方向に並べて配置されて、それぞれ外輪が前記ハウジングに設置され内輪でスピンドルを支持する複数の転がり軸受と、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を前記各転がり軸受内に供給すると共に軸受外に排出する給排油機構とを設け、前記内輪に軸方向に延びる内輪延長部を設けると共に、前記外輪の軸方向端に隣接し、または前記外輪の一部として、前記内輪延長部に径方向に対向する外輪間座を設け、これら内輪延長部と外輪間座とにわたって前記給排油機構を設け、前記スピンドル装置のハウジングにおける前記複数の転がり軸受が配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けたことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、給排油機構により軸受内に潤滑油を導入することで、軸受を冷却する。軸受内に導入した潤滑油の一部は、軸受内の潤滑油として使用される。また給排油機構により、潤滑油を軸受外に排出する。前記軸受を冷却した潤滑油は、例えば、ポンプを使用して軸受外に排出する。軸受内で潤滑に供された潤滑油は、例えば、潤滑油自体の重力および遠心力により排出する。
【0009】
特に、ハウジングの上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けたため、前記ポンプは、軸受を冷却した潤滑油と共にハウジング内の周辺空気も同時に吸引する。複数の吸気路から軸受内部に空気が流入するときに例えば前記ポンプによる脈動を生じ、前記複数の吸気路から軸受内で潤滑に供された潤滑油が漏れた場合、ハウジングの下部の吸気口からこの潤滑油を排出する。このとき、ハウジングの上部の吸気口から複数の吸気路を介して軸受内部に安定して空気を供給する。
【0010】
このため、軸受空間内に必要十分な空気を流入させることができ、軸受内部が負圧となることを抑制することができる。これにより軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる。複数の吸気路から潤滑油が漏れた場合においても、少なくともハウジングの上部の吸気口から空気を供給できるため、ハウジングの下部において潤滑油と空気とが干渉することがなく油の障壁が生じることを確実に防止し得る。なお、吸気路から潤滑油が漏れない場合には、ハウジングの上部および下部の各吸気口からそれぞれ空気を供給することができる。
軸受内で潤滑に供された潤滑油を、ポンプを用いることなく重力および遠心力により排出することができるので、軸受内部に過度の潤滑油が流入することがなくなる。これにより、攪拌抵抗を低減し、軸受温度の上昇を抑制することができるため、動力損失の低減を図ることができる。また前記のように、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給できるため、スピンドルの高速化を図ることができる。
【0011】
前記ハウジングには、潤滑油を給排油機構に供給する給油経路と、軸受内で潤滑に供された前記潤滑油である排油をハウジング外に排出する排油経路とが設けられ、前記排油経路は、排油を重力により排出するものであって、この排油経路におけるハウジングの下部に位置する部分には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部が設けられるものとしても良い。
【0012】
立型のスピンドル装置におけるハウジングの下部では、排油経路の一部として、加工の容易性から一般的に水平方向経路が採用されている。排油経路では、軸受内で潤滑に供された排油が重力により排出される。この場合に、重力の向きである鉛直方向に対し、垂直方向の経路である前記水平方向経路では排出効率が悪くなる。この構成によると、排油経路におけるハウジングの下部に位置する部分に、前述の排油経路傾斜部が設けられるため、この排油経路傾斜部に沿って排油が円滑に排出される。
【0013】
前記給排油機構は、前記潤滑油を軸受内に供給する給油口と潤滑油を軸受外に排出する排油口とを有し、ハウジングには、各排油口と前記排油経路とを径方向に連通して繋ぐ連通部材がそれぞれ設けられるものとしても良い。この場合、各軸受内で潤滑に供された排油は、それぞれ連通部材を通して排油経路に導かれ重力により排出される。
【0014】
各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、上下の連通部材の先端部の円周方向位置を互いに変えて配設したものとしても良い。この場合、上部の軸受に連通する連通部材の先端部から吐出される排油が、下部の軸受に連通する連通部材の先端部に衝突することを抑えることができる。したがって、吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排油の排出効率を良くすることができる。
【0015】
各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、複数の連通部材の各先端部は、排油経路内への突出量が下方の連通部材の先端部程長く突出するように設けたものとしても良い。この場合にも、上部の軸受に連通する連通部材から吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
各連通部材の先端部における底面に、連通部材の内径と同径の先端部排油口を設けても良い。この場合、各連通部材の先端部まで導かれた排油を、この先端部の底面から重力により円滑に排出することができる。また、上方の連通部材から吐出される排油が、この連通部材の下方に位置する連通部材から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0016】
前記連通部材の先端を、上方に向かうに従って排油経路内の対向壁面に近づくように傾斜する傾斜面としても良い。この場合にも、上方の連通部材から吐出される排油が、この連通部材の下方に位置する連通部材から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0017】
前記ハウジングには、下部の吸気口と各吸気路とを繋ぐ吸気経路が設けられ、この吸気経路のうちハウジングの下部には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部が設けられるものとしても良い。ポンプによる脈動に起因して、軸受内部潤滑油が複数の吸気路を介して吸気経路に流れ込む場合がある。この場合に、重力の向きである鉛直方向に対し、垂直方向の経路である水平方向経路では軸受内部潤滑油の排出効率が悪くなる。この構成によると、吸気経路のうちハウジングの下部に、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部が設けられるため、吸気経路傾斜部に沿って軸受内部潤滑油が円滑に排出される。
【0018】
前記複数の転がり軸受のうち、各外輪の下面に位置する外輪端面、および、各外輪間座の上面に位置する間座端面のいずれか一方または両方に、前記複数の吸気路を設けたものとしても良い。この場合、例えば、外輪端面または間座端面の円周方向の一部を切欠くことで、吸気路を容易に形成することができる。
この発明のいずれかの転がり軸受の潤滑装置は、工作機械のスピンドルの支持に用いられるものであっても良い。
【発明の効果】
【0019】
この発明の転がり軸受の潤滑装置は、立型のスピンドル装置におけるハウジング内に、スピンドルの軸方向に並べて配置されて、それぞれ外輪が前記ハウジングに設置され内輪でスピンドルを支持する複数の転がり軸受と、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を前記各転がり軸受内に供給すると共に軸受外に排出する給排油機構とを設け、前記内輪に軸方向に延びる内輪延長部を設けると共に、前記外輪の軸方向端に隣接し、または前記外輪の一部として、前記内輪延長部に径方向に対向する外輪間座を設け、これら内輪延長部と外輪間座とにわたって前記給排油機構を設け、前記スピンドル装置のハウジングにおける前記複数の転がり軸受が配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けた。このため、攪拌抵抗の増加を防止して軸受温度の上昇を抑制すると共に、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る転がり軸受の潤滑装置の断面図である。
【図2】同転がり軸受の潤滑装置を含む立型のスピンドル装置の断面図である。
【図3】同スピンドル装置の要部を水平方向に切断して見た断面図である。
【図4】図3のC−O−D断面図である。
【図5】図4のスピンドル装置の吸気経路等を部分的に示す断面図である。
【図6】(A)は、同スピンドル装置の上部の吸気口付近を拡大して示す断面図、(B)は、同スピンドル装置の下部の吸気口付近を拡大して示す断面図である。
【図7】同スピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。
【図8】(A)は、同スピンドル装置の排油経路の要部を拡大して示す断面図、(B)は、参考提案例に係る排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
【図9】この発明の他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。
【図10】(A)は、同スピンドル装置の排油経路の要部を、図9のA−A線で水平方向に切断して見た断面図、(B)は、同スピンドル装置の排油経路の要部を、図9のB−B線で水平方向に切断して見た断面図である。
【図11】この発明のさらに他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。
【図12】この発明のさらに他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
【図13】この発明のさらに他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
【図14】(A)は、従来例の転がり軸受の潤滑装置の給油側の断面図、(B)は同潤滑装置の排油側の断面図である。
【図15】従来例のスピンドル装置の吸気経路等を部分的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図8と共に説明する。この実施形態に係る転がり軸受の潤滑装置は、図2に示すように、立型のスピンドル装置SUに用いられる。このスピンドル装置SUは工作機械に応用されるものであり、このスピンドル装置SUにおけるハウジングHs内に、複数の転がり軸受BRがスピンドルShの軸方向に並べて配置される。ハウジングHs内に複数の転がり軸受BRの外輪2がそれぞれ嵌合状態に設置され、複数の内輪1でスピンドルShを支持するようになっている。ハウジングHsと、このハウジングHs内に設置される複数の転がり軸受BRと、後述する複数の給排油機構KUとで転がり軸受装置が構成される。
【0022】
図1に示すように、転がり軸受の潤滑装置は、転がり軸受BRと、給排油機構KUとを含む。転がり軸受BRは、内外輪1,2と、内外輪1,2の軌道面1a,2a間に介在する複数の転動体3と、これら転動体3を保持するリング状の保持器4とを有する。この転がり軸受BRはアンギュラ玉軸受からなり、転動体3として、鋼球やセラミックス球等からなる玉が適用される。
【0023】
内輪1は、内輪本体部5と、内輪延長部6とを有する。内輪本体部5は、軸受としての必要な強度を満たし、且つ、所定の幅寸法に設けられる。前記所定の幅寸法とは、JIS、軸受カタログ等に規定される内輪の幅寸法である。内輪本体部5における外周面の中央部に軌道面1aが形成されている。前記外周面のうち軌道面1aに繋がる軸方向一方側に、カウンタボアとなる斜面1bが形成されている。この斜面1bは、軌道面1a側に向かうに従って大径となるように傾斜する断面形状に形成されている。前記外周面のうち軌道面1aに繋がる軸方向他方側に、平坦な外径面1cが形成されている。この内輪本体部5の内輪背面側または内輪正面側に、内輪延長部6が軸方向一方に延びるように一体に設けられる。
外輪2の軌道面2aの軸方向両側に、外輪内径面2bと、斜面状のカウンタボア2cとがそれぞれ形成されている。前記外輪内径面2bに保持器4が案内されるように構成されている。
【0024】
図1に示すように、給排油機構KUは、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を軸受内に供給すると共に、軸受外に排出する機構である。転がり軸受装置を図2に示す立軸で使用する場合、給排油機構KUを転がり軸受BRの上部に配設する。外輪2の軸方向端に隣接して、外輪2とは別体の外輪間座7を設け、この外輪間座7の内周面を、内輪延長部6の外周面に対向させている。これら内輪延長部6と外輪間座7とにわたって給排油機構KUを設けている。
給排油機構KUは、環状油路8と、給油口9と、排油口10とを有する。これらのうち環状油路8は、図1左側に示すように、内輪側円周溝11と、間座側円周溝12とで成る。内輪側円周溝11は、内輪延長部6の外周面に設けられる断面凹形状の円周溝である。間座側円周溝12は、内輪側円周溝11に対して径方向に対向するように配設される。これら内輪側円周溝11と間座側円周溝12とで断面矩形孔状で環状に連なる環状油路8が形成される。
【0025】
図1左側に示すように、外輪間座7のうち円周方向の一部に、潤滑油を軸受内に供給する前記給油口9が形成されている。この給油口9は、外輪間座7の外周面から前記環状油路8に径方向に貫通する段付きの貫通孔状に形成されている。すなわち給油口9は、環状油路8の円周方向の一部に連通する連通孔9aと、この連通孔9aに繋がり前記外周面に開口する座繰り孔9bとで成る。座繰り孔9bは、連通孔9aに対し同心で同連通孔9aよりも大径に形成されている。給油口9から環状油路8に供給された潤滑油は、図3に示すように、環状油路8内を、回転側の軌道輪である内輪1の回転方向L1と同一方向に進み、排油口10等から排出される。
【0026】
図3に示すように、外輪間座7のうち、前記給油口9とは位相の異なる円周方向の一部に、潤滑油を軸受外に排出する排油口10が形成されている。排油口10は、図1右側に示すように、外輪間座7の外周面から環状油路8に径方向に貫通する貫通孔状に形成されている。図3に示すように、給油口9に対し、排油口10の位相が所定の位相角度α(この例ではα=270度)となるように設けられている。
【0027】
図1に示すように、内輪延長部6および外輪間座7には、給油口9から環状油路8に供給された潤滑油の一部を、斜面1bを介して内輪軌道面1aに導く軸受シール部13を設けている。内輪延長部6のうち、内輪側円周溝11を成す断面凹形状の一方側肩部14は、内輪本体部5に一体に繋がっている。外輪間座7のうち環状油路8を成す断面凹形状の一方側肩部15の内周面と、同内周面に径方向すきまを介して対向する内輪延長部6の一方側肩部14の外周面とにより、ラビリンスから成る軸受シール部13を形成している。この軸受シール部13を形成したことで、軸受内への潤滑油の供給量を抑制し得る。
固定側の軌道輪である外輪2には、切欠部から成る排油口16が設けられる。この排油口16は、外輪2のうち外輪間座7とは軸方向逆側の外輪下端面に設けられ、軸受シール部13を経由して軸受内の軌道面1aに供給された潤滑油を軸受外に排出するようになっている。図3に示すように、排油口10は、後述の排油経路20と同位相となる位置に設けられる。
【0028】
図1に示すように、内輪延長部6および外輪間座7には、軸方向に隣接する軸受内に潤滑油が漏洩することを抑制するラビリンス機構17を設けている。このラビリンス機構17は、給油口9および排油口10に連通し、広部と狭部とが軸方向に連なるものとしている。広部は、内輪延長部6における他方側肩部の外周面に設けられる円周溝18と、この円周溝18に対向する外輪間座7の内周面とを含んで構成される。前記円周溝18は、軸方向に間隔をあけて複数配設される。前記狭部は、内輪延長部6における前記外周面の突出先端部と、この突出先端部に対向する外輪間座7の内周面とを含んで構成される。潤滑油が給油口9から供給されラビリンス機構17に浸入した場合、この潤滑油は、内輪回転による遠心力により円周溝18に沿って漏れ側とは反対方向に移動するため、隣接する軸受内に潤滑油が漏洩することを抑制し得る。なお、内輪延長部6に円周溝18を設ける構成に代えて、外輪間座7における断面凹形状の他方側肩部に、円周溝18を設けても良い。また内輪延長部6および外輪間座7にそれぞれ円周溝18を設けても良い。
【0029】
ハウジングHsには、給油経路19と、排油経路20,21と、吸気経路22と、吸気口23,24とが設けられている。
給油経路19および排油経路20について説明する。
図2は、図3のA−O−B断面図である。図2に示すように、ハウジングHsには、潤滑油を給排油機構KUに供給する給油経路19と、軸受を冷却した潤滑油である冷却油をハウジングHs外に排出する排油経路20とが設けられている。給油経路19と、排油経路20とは、ハウジングHsのうち位相の異なる円周方向の一部に設けられている。この例では、図3に示すように、給油経路19に対し、排油経路20の位相が所定の位相角度β(この例ではβ=270度)となるように設けられている。図2に示すように、給油経路19は、給油ポンプ25に配管接続され、排油経路20は、排油ポンプ26にそれぞれ配管接続されている。これら給油ポンプ25、排油ポンプ26は、それぞれハウジングHs外に設置されている。
【0030】
図2に示すように、前記給油経路19は、スピンドル軸方向に平行に延びる主たる軸方向経路19aと、この軸方向経路19aと各給油口9とをそれぞれ繋ぐ複数の径方向経路19bと、前記軸方向経路19aの下端に繋がりハウジングHsの下部に設けられる水平方向経路19cおよび軸方向経路19dとを有する。ハウジングHsにおける軸方向経路19dの下端に、例えば、図示外の継手が螺着され、この継手と給油ポンプ25とが配管接続される。この給油ポンプ25を用いて、潤滑油を給油源から給油経路19を介して各給油口9に強制的に圧送するようになっている。
【0031】
前記排油経路20は、スピンドル軸方向に平行に延びる軸方向経路20aと、この軸方向経路20aと各排油口10とをそれぞれ繋ぐ複数の径方向経路20bと、前記軸方向経路20aの下端に繋がりハウジングHsの下部に設けられる水平方向経路20cおよび軸方向経路20dとを有する。ハウジングHsにおける軸方向経路20dの下端に、例えば、継手を介して排油ポンプ26が配管接続される。軸受を冷却した潤滑油は、排油ポンプ26を用いて排油経路20を介してハウジングHs外に排出し得る。なお、各径方向経路19b,20bおよび水平方向経路19c,20cを形成するとき、ハウジングHsの外周面側から半径方向内方側に孔をそれぞれ形成した後、ハウジングHsの外周面にて開口した各孔を埋め栓で塞ぐことでこれらの経路を容易に形成し得る。
【0032】
吸気路27、吸気口23,24、吸気経路22について説明する。
図4は、図3のC−O−D断面図である。図4に示すように、ハウジングHsには、前述の排油ポンプ26(図2)の吸引力の影響で軸受内部が負圧となるのを防ぐ吸気口23,24および吸気経路22が設けられている。後述の吸気口23,24と、各転がり軸受BRの軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路27が、外輪間座7に設けられている。
各吸気路27は、この例では、外輪間座7の上端面のうち、図3に示すように、排油口10との位相が近い「排油口近傍」において、半径方向に延びる溝形状に形成される。このように各吸気路27は、外輪間座7の上端面における円周方向の一部に設けられる。前記「排油口近傍」とは、排油口10の位相中心に対し、±30度内の範囲をいう。なお吸気路27を、外輪下端面における排油口近傍に、半径方向に延びる溝形状に形成しても良い。外輪間座7の上端面および外輪下端面における、円周方向の同位相となる位置で且つ排油口近傍に、吸気路27を設けても良い。
【0033】
前記吸気口23,24は、図5に示すように、ハウジングHsにおける前記複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放するように設けられている。この明細書において、前記「ハウジングHsにおける前記複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の上部」とは、ハウジングHs内で軸方向に並ぶ複数の転がり軸受BRのうち、最上部に位置する転がり軸受BRの内輪上端面よりも少なくとも上方に位置するハウジングHsの部分を指す。「ハウジングHsにおける前記複数の転がり軸受BRが配置された軸方向範囲の下部」とは、ハウジングHs内で軸方向に並ぶ複数の転がり軸受BRのうち、最下部に位置する転がり軸受BRの内輪下端面よりも少なくとも下方に位置するハウジングHsの部分を指す。
【0034】
図6(A)に示すように、上部の吸気口23は、ハウジングHsと、このハウジングHsの上端を塞ぐ上蓋28との境界部のうち、円周方向の一部がこの円周方向に沿って長孔状に形成されて成る。吸気経路22は、スピンドル軸方向に平行に延びる主経路22aと、この主経路22aと各吸気路27とをそれぞれ繋ぐ複数の副経路22bと、吸気経路傾斜部22cとを有する。吸気経路22の主経路22aに、前記上部の吸気口23が連通されている。図6(B)に示すように、吸気経路22のうちハウジングHsの下部には、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部22cが設けられる。吸気経路22のうちの吸気経路傾斜部22cに、前記下部の吸気口24が連通されている。図4に示すように、ハウジングHsにおける下部の吸気口24は、油タンク29に配管接続されるうえ、大気開放される。
【0035】
排油経路21について説明する。
図4に示すように、排油経路21は、排油を、ポンプ等の駆動源を用いることなく重力により排出するものである。この排油経路21と、ハウジングHsのうち吸気経路22とは位相の異なる円周方向の一部に設けられている。この例では、図3に示すように、吸気経路22に対し、排油経路21の位相が所定の位相角度γ(この例ではγ=150度)となるように設けられている。
図7に示すように、排油経路21は、軸方向経路21aと、排油経路傾斜部20bと、軸方向経路21cとを有する。軸方向経路21aはスピンドル軸方向に平行に延びる。軸方向経路21aと各排油口16とをそれぞれ繋ぎ、径方向に延びる円筒部材から成る複数の連通部材30が設けられている。各連通部材30としてプラグ等が用いられる。
【0036】
図8(A)は、このスピンドル装置SUの排油経路21の要部を拡大して示す断面図、同図8(B)は、参考提案例に係る排油経路の要部を拡大して示す断面図である。
図8(A)に示すように、ハウジングHsの下部には、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部21bが設けられる。ハウジングHsにおける軸方向経路21aの下端に、順次、排油経路傾斜部21b、軸方向経路21cが繋がる。図4に示すように、ハウジングHsにおける軸方向経路21cの下端が油タンク29に配管接続される。
ここで立型のスピンドル装置SUにおけるハウジングHsの下部では、排油経路の一部として、加工の容易性から一般的に図8(B)に示す水平方向経路31が採用されている。排油経路では、軸受内で潤滑に供された排油が重力により排出される。この場合に、重力の向きである鉛直方向に対し、垂直方向の経路である前記水平方向経路31では排出効率が悪くなる。
本実施形態に係る図8(A)に示す排油経路21では、排油が重力により排油経路傾斜部21bに沿って円滑に排出される。
【0037】
作用効果について説明する。
給油ポンプ25を駆動し、潤滑油を給油源から給油経路19を介して各給油口9に強制的に圧送する。これにより潤滑油を、軸受内の環状油路8に導入する。これにより軸受の特に内輪1を冷却する。導入された潤滑油の一部は、軸受シール部13を経由して、軌道面1a等に供給される。また給排油機構KUの排油口10から、潤滑油を軸受外に排出する。軸受を冷却した潤滑油すなわち冷却油は、排油ポンプ26を使用して各排油口10から軸受外に排出し、順次、径方向経路20b、軸方向経路20a、水平方向経路20c、および軸方向経路20dを介してハウジングHs外に排出する。
【0038】
排油ポンプ26は、冷却油と共にハウジングHs内の周辺空気も同時に吸引するが、外輪間座7の上端面のうち、排油口近傍に吸気路27を設けたため、排油口10に空気が流れ込み、排油を円滑にすると同時にハウジングHs内部の圧力分布変動を抑える。特に、ハウジングHsの上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口23,24を設け、この吸気口23,24と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路27を設けたため、排油ポンプ26は、冷却油と共にハウジングHs内の周辺空気も同時に吸引する。複数の吸気路27から軸受内部に空気が流入するときに例えば排油ポンプ26による脈動を生じ、前記複数の吸気路27から軸受内部潤滑油が漏れた場合、この軸受内部潤滑油は、吸気経路22の各副経路22b、主経路22a、吸気経路傾斜部22cを経由してハウジングHs外に排出し油タンク29に戻す。吸気経路22のうちハウジングHsの下部に、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部22cが設けられるため、吸気経路傾斜部22cに沿って軸受内部潤滑油が円滑に排出される。このとき、ハウジングHsの上部の吸気口23から複数の吸気路27を介して軸受内部に安定して空気を供給する。
【0039】
このため、軸受空間内に必要十分な空気を流入させることができ、軸受内部が負圧となることを抑制することができる。これにより軸受内部に適量の潤滑油を供給することができる。複数の吸気路27から軸受内部潤滑油が漏れた場合においても、少なくともハウジングHsの上部の吸気口23から空気を供給できるため、ハウジングHsの下部において軸受内部潤滑油と空気とが干渉することがなく油の障壁が生じることを確実に防止し得る。なお、吸気路27から軸受内部潤滑油が漏れない場合には、ハウジングHsの上部および下部の各吸気口23,24からそれぞれ空気を供給することができる。
【0040】
軸受内部潤滑油を、ポンプを用いることなく重力および遠心力により排出することができるので、軸受内部に過度の潤滑油が流入することがなくなる。排油経路21では、軸受内部潤滑油が重力により排出される。この構成によると、排油経路21のうちハウジングHsの下部に、下方に向かうに従ってハウジングHsの径方向内側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部21bが設けられるため、排油経路傾斜部21bに沿って排油が円滑に排出される。
前述のように、軸受内部に過度の潤滑油が流入しないようにできることで攪拌抵抗を低減し、軸受温度の上昇を抑制することができるため、動力損失の低減を図ることができる。また前記のように、軸受内部が負圧となることを抑制して軸受内部に適量の潤滑油を供給できるため、スピンドルShの高速化を図ることができる。
【0041】
他の実施形態について図9、図10と共に説明する。
図9はこの発明の他の実施形態に係るスピンドル装置の排油経路等を部分的に示す断面図である。図10(A)は上部の軸受の排油口16での断面図(図9のA−A線断面図)、図10(B)が前記軸受の下部に隣接する軸受の排油口16での断面図(図9のB−B線断面図)である。各連通部材30の先端部が排油経路21にそれぞれ開口し、且つ、上下の連通部材30,30の先端部の円周方向位置を互いに変えて配設しても良い。この例では、上下の隣接する軸受の排油口16と、排油経路21の軸方向経路21aとの連結部分を径方向に角度α1(例えばα1=30度)を設けて連通させている。
この場合、上部の軸受に連通する連通部材30の先端部から吐出される排油が、下部の軸受に連通する連通部材30の先端部に衝突することを抑えることができる。したがって、吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排油の排出効率を良くすることができる。
【0042】
図11に示すように、各連通部材30の先端部30aが、排油経路21の軸方向経路21aにそれぞれ開口し、且つ、複数の連通部材30の各先端部30aは、軸方向経路21a内への突出量が下方の連通部材30の先端部30a程長く突出するように設けても良い。このように各連通部材30の突出量L2を変えることにより、上部の軸受に連通する連通部材30から吐出された排油の影響で生じる乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0043】
図12は、図11の構成に加えて、各連通部材30の先端部30aにおける底面に、連通部材30の内径と同径の先端部排油口30aaを設けたものである。この場合、各連通部材30の先端部30aまで導かれた排油を、この先端部30aの底面の先端部排油口30aaから重力により円滑に排出することができる。また、上方の連通部材30から吐出される排油が、この連通部材30の下方に位置する連通部材30から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0044】
図13に示すように、図11の構成に加えて、連通部材30の先端を、上方に向かうに従って排油経路21内の対向壁面に近づくように傾斜する傾斜面30bとしても良い。この場合にも、上方の連通部材30から吐出される排油が、この連通部材30の下方に位置する連通部材30から吐出される排油に混じることを回避することが可能となる。したがって、乱流を抑え、排出効率を良くすることができる。
【0045】
排油経路21に連通する各連通部材30のうち、最上部の連通部材30を省略しても良い。
この転がり軸受の潤滑装置を、工作機械以外の装置、ロボット等に適用することも可能である。
各実施形態では、外輪2の軸方向端に隣接して外輪間座7を設けているが、外輪間座7を外輪2の一部として外輪2に一体に設けても良い。
実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…内輪
2…外輪
6…内輪延長部
7…外輪間座
9…給油口
16…排油口
19…給油経路
21…排油経路
21b…排油経路傾斜部
22…吸気経路
22c…吸気経路傾斜部
23,24…吸気口
27…吸気路
30…連通部材
30a…先端部
30aa…先端部排油口
30b…傾斜面
BR…転がり軸受
Hs…ハウジング
KU…給排油機構
Sh…スピンドル
SU…スピンドル装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立型のスピンドル装置におけるハウジング内に、スピンドルの軸方向に並べて配置されて、それぞれ外輪が前記ハウジングに設置され内輪でスピンドルを支持する複数の転がり軸受と、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を前記各転がり軸受内に供給すると共に軸受外に排出する給排油機構とを設け、
前記内輪に軸方向に延びる内輪延長部を設けると共に、前記外輪の軸方向端に隣接し、または前記外輪の一部として、前記内輪延長部に径方向に対向する外輪間座を設け、これら内輪延長部と外輪間座とにわたって前記給排油機構を設け、
前記スピンドル装置のハウジングにおける前記複数の転がり軸受が配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けたことを特徴とする転がり軸受の潤滑装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ハウジングには、潤滑油を給排油機構に供給する給油経路と、軸受内で潤滑に供された前記潤滑油である排油をハウジング外に排出する排油経路とが設けられ、前記排油経路は、排油を重力により排出するものであって、この排油経路におけるハウジングの下部に位置する部分には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部が設けられる転がり軸受の潤滑装置。
【請求項3】
請求項2において、前記給排油機構は、前記潤滑油を軸受内に供給する給油口と潤滑油を軸受外に排出する排油口とを有し、ハウジングには、各排油口と前記排油経路とを径方向に連通して繋ぐ連通部材がそれぞれ設けられる転がり軸受の潤滑装置。
【請求項4】
請求項3において、各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、上下の連通部材の先端部の円周方向位置を互いに変えて配設した転がり軸受の潤滑装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、複数の連通部材の各先端部は、排油経路内への突出量が下方の連通部材の先端部程長く突出するように設けた転がり軸受の潤滑装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、各連通部材の先端部における底面に、連通部材の内径と同径の先端部排油口を設けた転がり軸受の潤滑装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか1項において、前記連通部材の先端を、上方に向かうに従って排油経路内の対向壁面に近づくように傾斜する傾斜面とした転がり軸受の潤滑装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記ハウジングには、下部の吸気口と各吸気路とを繋ぐ吸気経路が設けられ、この吸気経路のうちハウジングの下部には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部が設けられる転がり軸受の潤滑装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記複数の転がり軸受のうち、各外輪の下面に位置する外輪端面、および、各外輪間座の上面に位置する間座端面のいずれか一方または両方に、前記複数の吸気路を設けた転がり軸受の潤滑装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、工作機械のスピンドルの支持に用いられるものである転がり軸受の潤滑装置。
【請求項1】
立型のスピンドル装置におけるハウジング内に、スピンドルの軸方向に並べて配置されて、それぞれ外輪が前記ハウジングに設置され内輪でスピンドルを支持する複数の転がり軸受と、軸受冷却媒体を兼ねる潤滑油を前記各転がり軸受内に供給すると共に軸受外に排出する給排油機構とを設け、
前記内輪に軸方向に延びる内輪延長部を設けると共に、前記外輪の軸方向端に隣接し、または前記外輪の一部として、前記内輪延長部に径方向に対向する外輪間座を設け、これら内輪延長部と外輪間座とにわたって前記給排油機構を設け、
前記スピンドル装置のハウジングにおける前記複数の転がり軸受が配置された軸方向範囲の上部と下部とに、それぞれ大気開放する吸気口を設け、この吸気口と前記各転がり軸受の軸受空間内とにそれぞれ連通する複数の吸気路を設けたことを特徴とする転がり軸受の潤滑装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ハウジングには、潤滑油を給排油機構に供給する給油経路と、軸受内で潤滑に供された前記潤滑油である排油をハウジング外に排出する排油経路とが設けられ、前記排油経路は、排油を重力により排出するものであって、この排油経路におけるハウジングの下部に位置する部分には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された排油経路傾斜部が設けられる転がり軸受の潤滑装置。
【請求項3】
請求項2において、前記給排油機構は、前記潤滑油を軸受内に供給する給油口と潤滑油を軸受外に排出する排油口とを有し、ハウジングには、各排油口と前記排油経路とを径方向に連通して繋ぐ連通部材がそれぞれ設けられる転がり軸受の潤滑装置。
【請求項4】
請求項3において、各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、上下の連通部材の先端部の円周方向位置を互いに変えて配設した転がり軸受の潤滑装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、各連通部材の先端部が排油経路にそれぞれ開口し、且つ、複数の連通部材の各先端部は、排油経路内への突出量が下方の連通部材の先端部程長く突出するように設けた転がり軸受の潤滑装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、各連通部材の先端部における底面に、連通部材の内径と同径の先端部排油口を設けた転がり軸受の潤滑装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか1項において、前記連通部材の先端を、上方に向かうに従って排油経路内の対向壁面に近づくように傾斜する傾斜面とした転がり軸受の潤滑装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記ハウジングには、下部の吸気口と各吸気路とを繋ぐ吸気経路が設けられ、この吸気経路のうちハウジングの下部には、下方に向かうに従ってハウジングの径方向内側または径方向外側に至るように傾斜状に形成された吸気経路傾斜部が設けられる転がり軸受の潤滑装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記複数の転がり軸受のうち、各外輪の下面に位置する外輪端面、および、各外輪間座の上面に位置する間座端面のいずれか一方または両方に、前記複数の吸気路を設けた転がり軸受の潤滑装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、工作機械のスピンドルの支持に用いられるものである転がり軸受の潤滑装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−255517(P2012−255517A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130003(P2011−130003)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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