説明

転写フィルム

キャリアフィルム(22)および構造層を有する転写層部(14)を備える転写フィルム、特に、熱エンボスフィルムに関する。転写層部はキャリアフィルム(22)に着脱可能に配置される。キャリアフィルム(22)は構造層(14)に向かう側にマスター・レリーフ構造(22m)を備え、構造層(14)は前記キャリアフィルム(22)に向かう側にキャリアフィルム(22)のマスター・レリーフ構造(22m)と相補の第1レリーフ構造(14o)を備える。構造層(14)は前記キャリアフィルム(22)から遠い側に第1レリーフ構造(14o)とは異なる第2レリーフ構造(14u)有し、第2レリーフ構造(14u)は少なくともその領域方向に反射層(16)で被覆されている。さらに転写フィルム、構造層を有して形成される多層体および多層体を有するセキュリティ文書の製造プロセスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアフィルムおよび、透過性の構造層を有しキャリアフィルムに着脱可能に配置される転写層部を備える転写フィルム、特に、熱エンボスフィルムに関し、およびかかる転写フィルムならびに多層体の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば身分証明書類、銀行紙幣、クレジットカード等の書類を保護するために熱エンボスフィルム、積層フィルムをセキュリティ素子として、引き剥がすことのできるキャリアとともに使用することが知られている。これらのフィルムは回折特性を有する、金属および/または誘電体の反射層と結合された層を備える。基板に当該セキュリティ素子を用いるとほぼ平滑な反射面になる。このセキュリティ素子には光学的特性が組み込まれている。
【0003】
ヨーロッパ特許公開公報第1182504号A2には、両側に互いに連携し光学効果を形成するレリーフ構造層を備える埋没構造層が開示されている。構造層は厚さ最大200μmの層である。エンボス加工されるフィルムの両側には、相互に圧力支持シリンダとして機能し、十分なエンボス圧力を生成するために2つのエンボス・シリンダが配置されている。層の厚さが大きいと製造中に2つのレリーフ構造が互いに影響しあう恐れがない。例えばポリエステルのような耐熱性キャリアフィルムをラッカとともに両側に塗布し、2つのラッカ層をエンボス加工することが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、両側に形成される透過性の構造層を有する多層体の大量生産に適した安価なプロセス、およびこのプロセスで製造される多層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、キャリアフィルムおよび、構造層を有し、キャリアフィルムに着脱可能に配置される転写層部を備える転写フィルム、特に熱エンボスフィルムによって達成される。キャリアフィルムは構造層に向かう側にマスター・レリーフ構造を備え、構造層は前記キャリアフィルムに向かう側にキャリアフィルムのマスター・レリーフ構造と相補の第1レリーフ構造を備える。構造層は前記キャリアフィルムから遠い側に第1レリーフ構造とは異なる第2レリーフ構造有し、第2レリーフ構造は少なくともその領域方向に反射層で被覆されている。
【0006】
本発明の目的はさらに、キャリアフィルムおよび、構造層部を有し、キャリアフィルムに着脱可能に配置される転写層部を備える転写フィルムの製造プロセスによって達成される。マスター・レリーフ構造はキャリアフィルムに導入されるおよび/またはキャリアフィルムに装着され、構造層はキャリアフィルムに装着される。キャリアフィルムのマスター・レリーフ構造と相補の第1レリーフ構造は構造層に成形され、構造層を硬化することによって光学的に固定される。第1レリーフ構造と異なる第2レリーフ構造は構造層に成形され、反射層が第2レリーフ構造の少なくとも領域方向に装着される。
【0007】
本発明の目的はさらに、構造層を備える多層体によって達成される。構造層は多層体の正面を形成し、第1レリーフ構造は、多層体の正面を形成する構造層の第1面に成形される。第2レリーフ構造は構造層の第1面と対向する関係にある第2面に成形される。第1レリーフ構造と異なる第2レリーフ構造は少なくともその領域方向に反射層に被覆され、構造層の厚さは、2つのレリーフ構造の中心レベル間で、<10μm、好ましくは< 5μmである。
【0008】
この場合、第1および第2レリーフ構造は一方で、そのパターン、プロファイル深度、空間周波数、周期、表面プロファイル、望ましい方向等に関して異なるレリーフ構造を形成することによって異なってもよい。また完全にまたは概略同一でもよく、単にある面に互いに位置をずらして配置し、例えば第1レリーフ構造の谷または凹部を第2レリーフ構造の谷ではなく頂点と一致させるようにしてもよい。従って、第1および第2レリーフ構造の同じパターン領域は、互いに垂直に重ねあわすのではなく互いに位置をずらして配置される。この場合、第1および第2レリーフ構造は周期の分数または倍数分のみ移動される。また、第1レリーフ構造の配置される領域に対して、第2レリーフ構造が垂直に配置されないように、またその逆に第2レリーフ構造の配置される領域に対して、第1レリーフ構造が垂直に配置されないようにしてもよい。さらに、第1および第2レリーフ構造を重ね合わせて配置する、または領域方向にのみ重ねあわせてもよい。また、第1および第2レリーフ構造は互いに補足的なパターンまたは表示を有してもよい。
【0009】
さらに、本発明の目的は上記に記載した多層体を有するセキュリティ文書によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、両側に非常に薄い厚さに成形されたレリーフ構造を有する構造層を、製造工程で2つのレリーフ構造が互いに影響しあうことなく、製造することが可能になる。マスター・レリーフ構造を有するキャリアフィルムは一方で、第2レリーフ構造を成形するに十分な機械的安定性を提供し、もう一方で第2レリーフ構造の成形工程の間、第1レリーフ構造を保護する。
【0011】
この点において、構造層の厚さが薄いため、セキュリティ文書に適用する際に貼り付かず、使用中、例えば折りたたんで積載することによって損傷されない。さらに、厚さの薄い構造層は保護すべき物品または書類を破壊することなく再度取り外しができないため、偽造に対してよりレベルの高い保護手段となる。また、2つのレリーフ構造間の距離が狭いため、新奇の光学的効果を発生することができる。
【0012】
特に、第1レリーフ構造と第2レリーフ構造を断面で見たときに、互いに係合するまたは相互に咬み合わせることができる。
【0013】
本発明のプロセスにおいて、構造層の両側にレリーフ構造を互いに独立して製造することができる。この場合レリーフ構造は機能基準に基づき専用に設計することができる。また、大量生産およびロール・ツー・ロール工程でレリーフ構造の両側に備えられる構造層に適した、実際に試され試験された装置やプロセス手順を用いることができる。
【0014】
第1レリーフ構造は多層体の表面に配置されているため、多層体によって表示されるセキュリティ機能を触覚手段によって検出することもできる。これにより、視覚障害のある人も感じることができ、従来のコピーまたは印刷プロセスによって模倣されることもない。
【0015】
構造層は透過性のものが好ましい。また部分的にのみ透過的にしたり、例えばカラー領域を含んだり、不透明印刷を含んだりすることもできる。構造層のかかる部分領域を第1および/または 第2レリーフ構造とレジスタ関係にすることが効果的である。
【0016】
さらに、有利な構成が付属の特許請求の範囲に記載されている。
【0017】
構造層の厚さは、2つのレリーフ構造の中央レベル間で<10μm、好ましくは<5μmである。
【0018】
マスター・レリーフ構造はキャリアフィルムにエンボス加工によって形成される。フィルム本体の製造に用いられるエンボスプロセスを提供することができる。キャリアフィルムが熱可塑性のキャリアフィルムの場合、マスター・レリーフ構造を圧力および温度下でエンボスローラを用いて熱エンボスプロセスにより導入してもよい。このようにエンボス加工されたキャリアフィルムは、第2レリーフ構造の熱エンボス加工処理においてキャリア構造の変形を防ぐのに十分な安定性を有する。
【0019】
また、キャリアフィルムは、マスター・レリーフ構造が成形される層を有してもよい。例えば、熱可塑性複製ラッカ層をキャリアフィルムに装着し、ラッカ層を乾燥後、マスター・レリーフ構造をそのラッカ層に成形する。
【0020】
さらに、UV硬化性の複製ラッカをキャリアフィルムに装着し、エンボスローラを用いた装着工程においてマスター・レリーフ構造を導入してもよい。UVラッカ硬化に必要なUV源を透過性のエンボスローラまたはキャリアフィルムの下の何れか一方に配置してもよい。変更された実施形態において、マスター・レリーフ構造を、キャリアフィルムのUV硬化性複製ラッカ層を部分照射することによって成形し、硬化していない領域を洗浄除去してもよい。
【0021】
構造層を形成するために、熱可塑性複製ラッカをキャリアフィルムに装着し、 第1レリーフ構造をかかる方法で成形する。ラッカ乾燥後、第2レリーフ構造を高温エンボスローラで成形してもよい。
【0022】
さらに、UV硬化性ラッカをキャリアフィルムに装着し、ラッカを第2レリーフ構造のUV光による成形加工中に硬化させる。UV硬化性ラッカは非常に流動体に適し、マスター・レリーフ構造の非常に小さな空洞も完全に充填できるので、この低温エンボスプロセスは第1レリーフ構造の高レベルの画質を際立たせる。UV硬化性ラッカが温度性において特に安定的な層を生成することは有利である。したがって、構造層を2つの層で形成し、第1の層をUV硬化性ラッカが、第2の層を熱可塑性ラッカで有利に形成することもできる。両層の光屈折率を同じにして、層構造を光学的に認知不可能にすると有利である。
【0023】
さらに有利な構成は、キャリアフィルムが部分印刷を有することである。部分印刷は、深度対幅の比を低くして特に簡単にマスター・レリーフ構造を製造するのに非常に有効である。例えばキャリアフィルムが粗い面を有し、乾燥後の印刷ラッカが平滑な面を有する、またはその逆の場合に更なる効果が達成できる。印刷ラッカの特質は例えば固形物の割合によって決定される。印刷によって与えられる層の厚さは、例えば2μmから5μmの間の異なる数値に設定できる。部分印刷はまた、例えばマスター・レリーフ構造を独自化するためにマスター・レリーフ構造の上記エンボス加工の補助として行うこともできる。好ましくは、ソフトウェアで制御可能な印刷プロセスをその目的で備えてもよい。このように構造層の独自化を安価に少ない工程数で行うことができる。
【0024】
印刷によって加えられる層はカラー層および/またはナノ粒子含有層でもよい。
【0025】
剥離層がキャリアフィルムと転写層部との間に配置される。キャリアフィルムと構造層に用いられた材料対合によってキャリアフィルムの取り外しが困難または不可能な場合に、剥離層を備えてもよい。剥離層を剥離後キャリアフィルムまたは転写層部に残してもよい。
【0026】
さらに、防護層が構造層の第1レリーフ構造に配置される。構造層を防護層として機能させてもよい。
【0027】
反射層は金属層および/または 誘電層または層列に形成することができる。誘電層の光屈折率を構造層より低くして、構造層と誘電層のインターフェイス層で全反射を生成することができる。またHRI層(高い屈折率)、LRI層(低い屈折率)の層列を含んでも良い。この種の薄フィルムは顕著な可変のカラー表現を創出することができる。したがって、誘電層の下に配置される領域を好適な目視方向で目視できる。なぜなら全反射が構造層および誘電層の屈折率ならびに光の入射角に依存して起きるからである。
【0028】
第1レリーフ構造は触覚手段によって検出可能なレリーフ構造である。このような構成により、突起部を人間の皮膚の隣接する少なくとも2本の神経端が刺激される間隔で配置することができる。レリーフ構造はまた、例えば爪をこするなど、体を第1レリーフ構造に接触させて振動音を発生させるように構成してもよい。
【0029】
第1レリーフ構造を光学手段によって認識させることもできる。第1レリーフ構造は光学および触覚手段双方により検出可能な性質のものでもよい。
【0030】
第1および/または第2レリーフ構造は好ましくは非ランダムなレリーフ構造である。非ランダムなレリーフ構造という用語は、具体的に、ある目的のために形成され、材料表面の任意の粗度によっては発生しない構造を意味するのに用いられる。このように非ランダムレリーフ構造は具体的に再生可能という点で特に評価される。
【0031】
例えば、所望のプロファイル形状のレリーフ構造を例えば工業規模で無端のキャリアフィルムに生成する場合、微小な長さの好適に構成された印、シリンダ等が一般に使用される。構成されたツールを無端キャリアフィルム上で連続して使用するために、成形したレリーフ構造をキャリアフィルム上で一定の間隔を置いて繰り返す。このように一度見た限りではランドムレリーフ構造が局所的に存在するように見える場合でも、成形したレリーフ構造は知覚的には非ランドムレリーフ構造である。
【0032】
非ランダムレリーフ構造はまた、例えば通常見られないまたはごく稀にしか見られない一定のプロファイル形状が頻繁に、周期的にまたは準周期的に発生するという事実によって評価される。不明確で丸いプロファイル形状は表面粗度のようなランダムレリーフ構造から予想されるが、非ランドムレリーフ構造の場合は、例えば長方形、鋸歯、半球、ブレーズ構造等の正確に幾何学的に形成されるプロファイル形状を示す。さらに、例えばねじれた階段状の構成、ドイツ特許公開公報第10054503号B4に記載される双対プロファイルのようなある一定のプロファイル深度等のプロファイル深度を有するプロファイルを示す。
【0033】
階段状プロファイルの具体的な事例は長方形プロファイルである。この場合、局所的なプロファイル深度は離散準位を想定するのみである。この際、2つの隣接する凹部の間隔は好ましくは0.5と50μmの間である。中央レベルに対するプロファイル深度は好ましくは<5μmである。
【0034】
局所的に構造深度が変化する微視的に微小なランダムレリーフ構造が例えばヨーロッパ特許公開公報第992020号B1に開示されている。
【0035】
第1レリーフ構造および/または第2レリーフ構造が微細構造を含む場合、その寸法は人間の目の解像限度より下であることが望ましいと証明されている。
【0036】
第1レリーフ構造 および/または第2レリーフ構造は一般に、微細構造に形成され、その寸法は人間の目の解像限度より下である、および/または人間の目に見えるマクロ構造に形成される。この場合、マクロ構造は微細構造の側にある、および/または微細構造を重畳してもよい。この場合、微細構造はマクロ構造の存在をシミュレートする光学的効果を有する。
【0037】
第1レリーフ構造 および/または第2レリーフ構造はマット構造および/または回折構造および/または屈折構造および/またはマクロ構造として形成することができる。
【0038】
マット構造は確率的構成の回折構造であるため、入射光は任意に散乱する。微小規模において、マット構造は、散乱性を決定し、平均粗度値Ra、相関長Icなどの確率的パラメタで説明することのできる微小なレリーフ構造素子を有する。好ましいマット構造は、平均粗度Raが20nmから2,000nmの範囲、好ましくは50nmから500nmの範囲である。相関長Icは好ましくは200nmから50,000nmの範囲、特に500nmから10,000nmの範囲が好ましい。
【0039】
回折構造は、例えば回折格子またはホログラムのような光回折に基づく光学的効果を発生する構造である。表面構造に従って三次元情報の表示を可能にする典型的な2D/3Dまたは3Dホログラムを含んでもよい。局地的な見地から、例えばフーリエ・ホログラムのようなホログラフィックに生成されたホログラムのプロファイルをほぼ周期的とみなすこともできる。この場合、一般的なライン数は300から2,000l/mmの範囲であり、一般的な構造深度は50から800nmの範囲である。
【0040】
例えばキノフォームと呼ばれるコンピュータが生成するホログラムは、確率的な表面レリーフの表現を生み、非対称的な回折効果を有する。一般的な構造深度は入射光の波長の半分または倍数であり、キノフォームが送信または反射モードにおいて効果を発生するかどうかに依存する。
【0041】
レリーフ構造は例えば線形格子または交差格子に形成される。つまりXおよび/またはY方向にx、y座標で規定される面において伸張する。レリーフ構造はまた、例えば六角格子のように3方向に伸張する構造でもよい。
【0042】
屈折構造は、例えばマイクロレンズのような光の屈折に基づいて光学的効果を発生する構造である。この種のマイクロレンズは一般に個別に使用されるのではなく、相互に並列に規則的なラスタ格子状に配置される。マイクロレンズの直径は好ましくは3μmから80μm、さらに好ましくは5μmから50μmの間である。
【0043】
これらの構造は通常人間の目の解像限度より低い寸法のものである。
【0044】
マクロ構造は、人間の目で認知できる寸法を持つ、例えば構造領域によって形成されるデザイン素子等の構造である。
【0045】
かかるマクロ構造は、光学的回折効果および特にドイツ特許公開公報第10254499号B4または第10254500号B4に基づくレリーフ構造のような目視可能なレンズのような効果を発生する例えばレンズ素子または、特に成形されたレリーフ構造によって形成される。この場合、肉眼で見える構造が、光学的回折効果を有し、眼で解像できないレリーフ構造を用いて基本的にシミュレートされる。さらにマクロ構造は、ドイツ特許公開公報10216561号A1の少なくとも部ごとに安定した可微分であって、少なくとも部分的な領域は曲線であり、隣接する極値が互いに少なくとも0.1mmの間隔の開いた関数に従って設計できる。
【0046】
微細構造に重畳されるマクロ構造は、例えば国際特許公開公報第03/084764号A2に見られる。微視的に微細なレリーフプロファイルに目視できる構造を加法的または減法的に重畳することによって形成される回折構造が記載されている。
【0047】
効果的な構成としては、反射防止効果を有するおよび/または拡散器であるおよび/または汚れ防止に適応された第1レリーフ構造を形成する。汚れ防止効果のある第1レリーフ構造を製造するために、さらに構造層を疎水性にしてもよい。
【0048】
相補的な第1レリーフ構造が表面の減反射用の光学的アクティブ・レリーフ構造の場合は、その幅または格子周期は光の波長未満である。可視光の範囲は人間の目の最大スペクトル感度を考慮して、波長はl = 555nm、すなわち格子周期bは、< 550nmでなければならない。良好な減反射効果に必要なレリーフ構造の最小深度は少なくとも波長の半分の大きさ、つまりt > 275nmでなければならない。
【0049】
汚れ防止の第1レリーフ構造は疎水性材料の上に形成され、格子周期は汚れ粒子の平均サイズ未満に選択される。大きさ2から5μmの汚れ微粒子は、流れ落ちる水滴によって捕捉されレリーフ構造から除去される。この点において、水はその表面張力によってレリーフ構造を濡らすことができないため、レリーフ構造の微細な突起部は既に疎水効果を有している。
【0050】
第1および第2レリーフ構造は互いに独立した光学的効果を発生する。しかしながら、互いに依存した光学的効果も発生する。かかる依存する光学的効果は、例えば第1レリーフ構造および第2レリーフ構造を共に画像情報項目を形成すると考えられる部分領域に形成することによって発生することができる。画像情報は、例えば画角に関して限定した範囲にのみ完全に目視可能にして、画角に依存する光学的効果を発生してもよい。特に効果的な特徴として、転写層部と統合されるプリントに対してまたは着色に対して交互に位置合わせされる第1および第2レリーフ構造の少なくとも一方向に位置合わせをする配置にある。
【0051】
上述したとおり、構造層は、これまでに実際に試され、試験された利用可能なプロセスによって製造ならびに構成することができる。
【0052】
したがって、剥離層 および/または 防護層は構造層への装着の前に、キャリアフィルムに装着される。なお、この点についてマスター・レリーフ構造に付加的に装着される剥離層は第1レリーフ構造の製造に影響を与えることがある。そのため、マスター・レリーフ構造はできれば、付加的に装着される剥離層の厚さ分、縮小したほうがよい。
【0053】
構造層はほぼ同じ屈折率の第1および第2の層から形成してもよい。この場合、第2の層は第1レリーフ構造を備える硬化した第1の層に装着され、第2レリーフ構造は第2の層に成形される。上述したように第1の層は放射硬化性ラッカで、第2の層は熱可塑性ラッカで効果的に形成することができる。材料の選択は、とりわけ傷防止、溶解防止、汚れ防止等の所望の機能に基づいて決定される。
【0054】
さらに、効果的な構成として、反射層および第2レリーフ構造を被覆する吸着層を装着する。吸着層は、構造層および反射層の形成方法に関係なく、構造層の関連する表面全体を被覆する。吸着層は高温性接着剤が好ましい。低温性接着剤、圧力反応接着剤、UV硬化性接着剤も追加の接着剤として使用できる。
【0055】
本発明に基づく構造層を有して製造される多層体は、たとえば個別化するために、部分的に水平化または平板化したレリーフ構造で形成してもよい。
【0056】
さらに、多層体の第1レリーフ構造は部分的に重ね刷りされていてもよい。
【0057】
更なる実施形態において、多層体の第1レリーフ構造は、触覚によって検出可能な領域を有する。かかる領域は事前に第1レリーフ構造に設けることができるが、後で部分除去または平板化および/または重ね刷りによって生成してもよい。
【0058】
触覚によって検出可能な領域を、その下に配置される、たとえば光学的に効果的な回折構造等の構造とレジスタ関係に配置してもよい。
【0059】
以下、付帯の図面を参照し、実施形態を例として用いて本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
図1は透過性の構造層14、反射層16、吸着層18から形成される多層体1を示す。吸着層18は多層体1をキャリア本体20に結合させる。キャリア本体20は例えば、通行証、パスポート、身分証明書またはクレジットカード等のセキュリティ文書である。多層体1を物品用のセキュリティ機能を目的として用いることもできる。
【0061】
透過性構造層14は吸着層18から遠い上側に第1レリーフ構造14oを有し、吸着層18に向かうその下側には第2レリーフ構造14uを有する。
【0062】
図1の実施形態において、第1レリーフ構造14oに、互いに異なる構造を有する領域14a、14b、14c、14d、および14eが形成される。
【0063】
領域aは格子定数< 0.4μm、深度> 0.2μmの非常に微細な格子構造を有する領域であり、目視可能範囲における回折度は有せず、ミラー反射とは別に垂直に照明される。適当な構成を有するこのような構造は表面の減反射として作用することができる。この減反射はミラー反射で見たときに輝度の異なる領域を生成する、または例えば領域下に置かれる薄フィルム配置の彩度を向上するために設けられる。0.5%の反射が実行される。その代わりに設けられる平滑な表面の場合、反射は4から5%の間となり、見る人が認識できる彩度を減少させ、傾斜した際の色変化による薄フィルム配置の照合を損なわせる。この種の構造が、例えば文字列に合わせて、部分的な領域のみに適用される場合、その情報はミラー反射モードで見るときには認識可能となるが、通常の目視状況ではほとんど認識できない。減反射を、大部分に透過性の領域を含み、部分的にフィリグリー・パターンに金属化された反射層と組み合わせることは特に効果的である。この状況では通常邪魔になる、装着されたフィルム素子の反射はほぼ全て減反射効果によって抑制される。
【0064】
構造層14の表面からの反射を、第1レリーフ構造14oを若干マット加工することによって部分的に隠すこともできる。この方法で、第1レリーフ構造14oの輝度は非常に減少され、透過光線はほんのわずかに散乱されるだけなので、構造層14下に配置される情報の項目がはっきりと認識可能となる。
【0065】
領域14aを格子ラスタに配置し、その反射能力を変化させてもよい。この方法でラスタ素子の異なる反射を利用してグラフィック表示を提供できる。
【0066】
構造層14が疎水性材料で形成される場合、領域14aのレリーフ構造は汚れ防止効果を有してもよい。領域14aのレリーフ構造の深度対幅比が高く、格子定数が低いため、比較的面積の大きい汚れ粒子がレリーフ構造にくっつかず、水滴によって捕捉され表面から除去される。深度対幅比は、『山』と『谷』を有する好適な周期的構造を特徴付ける次元のない数である。深度は『山』の高さまたは『谷』の深さを意味し、幅は2つの隣接する『山』の間隔を意味する。領域14aの構造層14の自浄作用は領域14a下にある情報項目の可読性を永久持続的に向上させることができる。
【0067】
領域14bは領域14aの汚れまたは傷の防止または少なくとも減少を目的とする間隙として設置される。領域14aの面積が大きい場合、領域14bは領域の端のみならず、領域14a内に配置してもよく、好ましくは規則的な間隔を設けて分散配置してもよい。
【0068】
領域14cは、最大深度わずか数マイクロメートルにもかかわらず、肉眼的な表面レリーフの視覚的効果をもたらす。このような構造は一般に層に埋め込まれる。肉眼的表面レリーフは反射光で目視できるが、キャリア基板20に適用される情報項目の認識可能性または第1表面領域14uに形成される反射構造を損なわない。
【0069】
領域14dは例えばフーリエ・ホログラムのような回折構造であり、スクリーン上レーザで照明された情報の隠された項目を表示するために設けても良い。領域14dの回折構造はその下に配置される構造の光学的効果をわずかに変化させるだけである。
【0070】
領域14eは、光学的補助がないと認知できないほど小さな大きさの突起部および凹部を有する表面レリーフを備える。この構成は通常ラッカ層に埋め込まれる。表面レリーフは拡大鏡または顕微鏡で認知でき、例えば微視的に微細な文字列または画像情報を表示する。
【0071】
さらに、レリーフ構造14oは、金属層または誘電層、または薄い金属層および/または誘電層の列で形成される反射層を少なくとも部分的に有する。このような追加的反射層は、構造層の成形前に例えば蒸着によって装着することができる。反射層をレリーフ構造14oの領域とレジスタ関係に部分的に製造することは特に有効である。
【0072】
第2レリーフ構造14uは、ホログラムまたはキネグラム(登録商標)のような回折構造を含むことのできる表面レリーフとともに形成される。例えば英数字またはバーコード形式の個別化された情報項目を含むこともできる。
【0073】
図2aから2eは、図1に示す多層体1の製造段階を示す。
【0074】
図2aは、マスター・レリーフ構造が成形され、第1レリーフ構造 14oと相補の構成であるキャリアフィルム22を示す(図1を参照)。 キャリアフィルム22は、厚さ6から150μm、好ましくは12から70μmの範囲のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはBOPフィルムである。 マスター・レリーフ構造22mは、熱エンボス加工により直接キャリアフィルムに製造してもよい。そのために、高温エンボスローラをキャリアフィルムに接触させる。
【0075】
他の構成として、キャリアフィルム22はマスター・レリーフ構造22mが成形されるラッカ層を有してもよい。特に減反射表面に必要な非常に微細なマスター・レリーフ構造を製造するために、マスター・レリーフ構造22mがUV複製によって導入されるUV硬化性ラッカを含んでもよい。UV硬化性ラッカは非常に流動的に設定できるので、エンボスローラの非常に小さな空洞までも完全に充填することができ、特別に深い構造を生成できる。UV硬化性ラッカは、キャリアフィルムや透過性エンボスローラを透過するUV光で直接硬化性してもよい。エンボスローラはまた、マスター・レリーフ構造22mを光学的に撮像することによって転写する光学的エンボスローラを含んでもよい。UVラッカは部分的に硬化され、その後の洗浄部で未硬化のUVラッカを洗い流す。
【0076】
UV硬化性ラッカは、例えば以下の内の一つでもよい。単量体またはオリゴマーポリエステル・アクリレート、ポリエステル・アクリレート、ウレタンアクリレートまたはエポクシ・アクリレート、またはアミノ変性ポリエステル・アクリレート、アミノ変性ポリエーテル・アクリレートまたはアミノ変性ウレタンアクリレート。
【0077】
また、その材料は圧力および温度下で熱エンボス加工によって複製される熱可塑性ラッカでもよい。例えば、以下の構造のラッカを含む。
成分 重量部
メチルエチルケトン 400
エチルアセテート 260
ブチルアセテート 160
ポリメチルメタクリレート 150
(軟化点約170℃)
スチレン共重合体 30
(軟化点約100℃)
ラッカは装着工程後、乾燥され、複製される。
【0078】
上述した例が明確に示すように、本発明に基づくプロセスはマスター・レリーフ構造の特性に広い限度で影響を与えることができる。好適なプロセス手順を大量生産に用いることができる。
【0079】
図2bは、透過性の構造層14が表面全域に印刷、スプレーまたはスキジー塗布によって装着された複製または印刷されたキャリアフィルム22を示す。構造層14は、プリントローラを用いて、層の厚さ0.5μmから10μmの熱可塑性ラッカ、UV硬化性ラッカまたは層の列(一部、部分領域のみに設けることもある)として形成することができる。図2cに示すとおり、熱可塑性ラッカに乾燥工程後、熱エンボス加工を施す。UV硬化性ラッカを用いる場合は、図2cに示す製造段階を、構造層14の装着直後に実施して、ラッカをUV放射によって硬化させる。
【0080】
さて、第1レリーフ構造 14oが構造層14に成形され、構造層14は完全にキャリアフィルム22のマスター・レリーフ構造22mを充填している。ここで、構造層は均一の構成である必要はなく、統合されたプリントを含んでもよく、蛍光またはカラーの部分領域、またはナノ粒子を含んでもよい。
【0081】
第2レリーフ構造14uが構造層14(図1を参照)に図2cに示す製造段階で成形される。この製造段階は、構造層14のキャリアフィルム22から遠い側を熱エンボス加工することによって、または上述したとおり、構造層14をキャリアフィルム22に装着する際に低温エンボス加工することによって実施される。
【0082】
また、構造層14を第1および第2の層から形成し、第1の層をレリーフ構造14oとともに、第2の層をレリーフ構造14uとともに形成してもよい。この場合、第2の層を硬化した第1の層に装着し、エンボス加工を施し硬化させる。構造層の多層構造はレリーフ構造の材料構成および形成を最適化するために設けられる。好ましくは、第1および第2の層をほぼ同じ屈折率に形成することによって、構造層14を光学的に均一の層に形成する。
【0083】
図2dは、反射層16が第2レリーフ構造14uに装着される第4製造段階を示す。例えば、反射層16は、反射性の高い金、銀、アルミニウム、銅などの金属からなる部分的な金属層で形成されてもよい。図2dに示す例では、反射層16の非金属領域は誘電層16dで覆われている。
【0084】
金属層16mで形成される反射層16の領域は、画角に関係なく入射光を反射する。反対に誘電層16dを備え、構造層14と接合される反射層16の領域は画角に依存する全反射を提供する。またこれには、HRI層(高屈折率)およびLRI層(低屈折率)の層列を含んでもよい。この種のフィルムは優れた色表現変化を生成する。また、異なる屈折率を持つ薄い誘電層の列、または金属および誘電層の列を含んでもよい。この種の層の集合は、傾斜時の干渉効果によって非常に明らかな色変化を有する。
【0085】
図2eは、キャリアフィルム22に装着され、吸着層18の反射層14への装着を含む、図1の多層体1の第5および最終の製造段階を示す。吸着層18はメルト接着剤が好ましい。
【0086】
例えば、以下の構造の接着剤を使用することができる。
成分 重量部
メチルエチルケトン 550
エチルアセテート 175
シクロヘクサノン 50
ポリウレタン樹脂(Fp 3 200oC) 100
ポリ塩化ビニル三重合体 120
(Tg=90 oC)
二酸化珪素 5
【0087】
図2fは、キャリア本体20に装着された多層体1と、装着後キャリアフィルム22を取り除いた多層体1を示す。多層体1とキャリアフィルム22を図2aから2eに示す位置に対して180oC回転させているので、ここでは第1レリーフ構造 14oが、キャリア本体20から遠い側の多層体1の上部を形成している。
【0088】
キャリアフィルム22は、キャリアフィルム22と構造層14を材料対合することによって多層体1から着脱することができる。 また、キャリアフィルム22と構造層14の間に、例えばワックスの層で形成される剥離層を配置することもできる。剥離層は、厚さわずか数nmの極めて薄いフィルムであることが好ましい。必要に応じて構造層14を防護層として、つまり最上部の下位層を防護層とする特別な耐層または多層構造で形成してもよい。
【0089】
上述のプロセスは特に、多層体をキャリアフィルム22に層方向に装着して構成するロール・ツー・ロール連続工程に非常に好適である。
【実施例】
【0090】
図3aは装着の第1の例を示す。転写フィルムは通行証またはパスポート保護用の積層として形成され、とりわけ多層体30aを備えている。転写フィルムは以下の構成部または層を含むことができる。
・ 図2aから2fを参照して上述したキャリアフィルム
・ 外側レリーフ構造がキャリアフィルムに対向する多層体30a
・ 熱活性吸着層
・ 選択的に第2の熱活性吸着層および吸着層2層間のプリントマーク
【0091】
図3aの例では、キャリアフィルムの剥離後、露出した多層体30aの平滑な表面上に分散領域32(図1の記号14aを参照)が形成される。分散領域32はエンドレスなパターンで文章の一部を、図の例では文字『MUSTERFIRMA』を繰り返す。保護すべき通行証の下層にある情報項目の読解性は分散領域32によって損なわれない。分散領域32を、分散特性が変化するマット構造で形成して、傾斜または回転されると、無色の文字が異なる輝度レベルで現れるようにしてもよい。
【0092】
多層体30aはさらに、図の例では会社のロゴマークとして形成される回折パターン34を有する。回折パターン34を多層体30の上側に成形してもよいし、多層体の下側に成形して反射層で支持してもよい。
【0093】
さらに、多層体30aは、多層体30aの下側に回折反射領域として形成され、傾斜または回転されるとカラー領域として目視できる個人データ36を有する。同じ個人データを、パスポート写真の図3aにおいて破線で示す外側輪郭38の側に、多層体30aによって保護されるパスポート表面に印刷によって形成してもよい。データ36は多層体30a上に、パスポート表面に印刷されたデータと位置をずらして配置してもよい。
【0094】
図3bは装着の第2の例を示す。多層体30bは図3aに示す多層体30aと原理的に同様であるが、その上部に微細格子構造39oが追加的に成形されている。格子構造39oは、格子構造39uから視角を変えると明るくなるように構成される。格子構造39uは多層体30bの下側に成形され、反射層に支持される。この目的で、例えば格子構造39uが異なる格子定数を有して、視角に依存する色効果を発生してもよい。
【0095】
図4aから4cは、本発明に基づく多層体の装着の第1の実施形態を示す。例えば上述した転写フィルム30a(図3a)または30b(図3b)を含んでもよい。
【0096】
図4aは身分証明書類42を保護する積層フィルム40を示す。フィルム40は身分証明書類42内に配置され積層部44に挿入される。この方法で、積層フィルム40の下側に形成される吸着層を熱し、保護すべき通行書類42の頁に押圧する。図4bに示すとおり、吸着層(図示せず)の他に、積層フィルム40はキャリアフィルム40tおよびセキュリティ機能を備える構造層40sを有する。
【0097】
構造層40sの領域を、保護すべき通行書類42の頁の穴または透かし上に配置して、所望の視覚効果を達成するために、構造層40sの光学的効果を送信モードにおいても利用することは効果的である。
【0098】
図4bは、積層フィルム40でラミネート加工された通行書類42を示す。保護すべき頁には構造層40sが装着され、キャリアフィルム40tは既に部分的に剥がされている。
【0099】
図4cは、構造層40sでラミネート加工された通行書類42を示す。セキュリティ機能を備える構造層40sは、損傷または破壊することなく、書類42から再度剥がすことはできない。構造層40sはコピー処理によって模倣できないセキュリティ機能を有する。
【0100】
ラミネート加工処理後、キャリアフィルム40tは通行書類42に対応部として残され、追加のセキュリティ機能を形成する。構造面を備える透過性のキャリアフィルムを、通行書類42のラミネート加工された頁が被覆されたときに、一般的なモアレ効果を生む光学的認証装置として使用することもできる。
【0101】
また、構造層のレリーフ構造に部分的な変更を加えて、例えば独自化することもできる。 例えば、個別の英数字および/またはグラフィック表示を加えるために、被覆するラッカに部分的な重ね刷りを施こすこともできる。
【0102】
さらに、構造層40のレリーフ構造の作用を、透明なまたはカラーのラッカで重ね刷りすることによって局所的に除去することもできる。この場合、ラッカの屈折率は構造層40sの最上層の屈折率と0.1未満だけ異ならせる。また構造層40sを、例えばレーザまたは熱エンボス装置を用いて、部分的に除去あるいは水平化して、個人データを構造層に転写してもよい。
【0103】
さらに、構造層40sの領域を、触覚に関連して周囲から突出させる、またはこの領域に触れることで検出できるパターンを備えてもよい。この領域は硬さ、弾性、スリップ特性、熱伝導性、または粘着性等の性質によって感じることができる。または触れることによって検出でき、例えば点字文字または四角、ひし形、円、星等の簡単なグラフィックロゴのようなパターンを形成する凹部または突起部を備えてもよい。領域はさらに、周囲に対して高くまたは低くすることによって、触覚で検出可能にしてもよい。さらに、触覚によって検出可能な領域は、その下に配置される光学的に効果的な層構造とレジスタ関係に配置することができる。光学的構造は例えば、回折格子、ホログラム、またはキネグラム(登録商標)である。
【0104】
個人データを有する領域を、例えば少なくとも最重要なデータを点字表示にするなど、触覚によって検出できるようにしてもよい。
【0105】
図5は本発明に基づく多層体の装着の第2の実施形態を示す。キャリアフィルム50tを有する転写フィルム50、構造層50s、熱吸着層(図示せず)は供給ローラ50vに巻き付けられ、進行方向に互いに間隔を置いて配置される2つの圧力ローラ52、52’によってバンド状のキャリア基板54に装着されている。高温転写ローラ56は転写フィルム50を反対圧力ローラ56に対して押圧する。それによって構造層50sは高温性接着剤でキャリア基板54に接着される。キャリアフィルム50tは構造層sから引き離され、転写フィルム50がキャリア基板54とともに転写ローラ56の下りに配置される圧力ローラ52’を通過後、ロール50aに巻かれる。
【0106】
図6は本発明の多層体の装着の第3実施形態を示す。キャリアフィルム60tを備える転写フィルム60、構造層60s、熱吸着層(図示せず)は供給ローラ60vに巻き付けられ、進行方向に互いに間隔を置いて配置される2つの圧力ローラ62、62’によってバンド状のキャリア基板64に装着されている。構造層60sは、キャリアフィルム60t上に互いに間隔を置いて連続的に配置される部から形成される。構造層60sの一部が高温穿孔機66の下に配置されると直ちに、穿孔機66は転写フィルム60を反作用ホルダ66gに対して押圧する。これによって、構造層60sの一部が高温性接着剤によってキャリア基板64に装着される。キャリアフィルム60tは構造層60sから引き離され、転写フィルム60がキャリア基板64とともに穿孔機66の下りに配置される圧力ローラ62’を通過後、ロール60aに巻かれる。
【0107】
さらに、キャリア基板64を、クレジットカードや身分証明カードのような、カード状のキャリア基板とし、輸送装置によって穿孔機66の下に配置することもできる。この場合、構造層60sを、英数字がプリントされたロゴ状の、表面に触覚により検出できるレリーフ構造を有する個別化されたセキュリティ機能とすることもできる。
【0108】
本発明に基づく多層体は、製品の製造過程の中間段階においてのみ重要な役割を演じる。その点を明確にすることを目的として、最終製品にレリーフ構造 14oを媒体によって被覆する3つの例を示す。
【0109】
第1の例において、個人化されていない通行証は、回折機能、例えば図2fに示す構成のパッチを備えている。例えばインクジェットを用いて達成される個人化工程において、微細レリーフ構造14oは良好なプリント画像を保証し、構造層14に印刷インクを確実に接着するように機能する。個人化工程に続いて、上述した図4aから4cに示すように、通行証の全データ頁が積層フィルムから転写された構造層によって密封される。
【0110】
第2の例は熱エンボスフィルムのエッジ領域の形成に関する。エッジ領域の鋭さは基板に熱エンボスフィルムを転写する上で、重要な基準である。そのため、転写層部の層は適度に中折れしなければならない。この中折れ効果は、好適なレリーフ構造14oによって、例えば機械的弱体化によって影響を受ける。レリーフ構造14oの利点の1つに装着の種類や穿孔の形状に対する柔軟性および適応性にある。後の手順で構造層14が例えば構造層14の光屈折率を有する積層によって密閉される場合、レリーフ構造14oは認識可能な光学的効果を備えない。
【0111】
第3の例は好適な表面構造による液晶の方向に関する。多層体の装着後、露出したレリーフ構造14oは、例えば印刷プロセスによって全表面積または部分的に異方性ポリマー材料で塗布される。その後、異方性ポリマー材料の液晶は必要に応じて、配向層としてのレリーフ構造に熱を加えることによって方向を合わせられる。それから、異方性ポリマー材料のUV硬化性または熱誘因性の急激な架橋結合によって液晶の方向性は固定される。液晶層を有する印刷される領域には、偏光子で検査すると、レリーフ構造14oとレジスタ関係に見える追加情報が現れる。

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1はキャリア基板に装着された本発明に基づく多層体の断面図である。
【図2】図2aから図2eは、図1の多層体の製造段階の断面図を示す。
【図2f】図2fは図2eの多層体のキャリア基板への装着を示す。
【図3a】図3aは装着の第1の例を示す。
【図3b】図3bは装着の第2の例を示す。
【図4】図4aから図4cは本発明に基づく多層体の装着の第1実施形態を示す。
【図5】図5は本発明に基づく多層体の装着の第2実施形態を示す。
【図6】図6は本発明に基づく多層体の装着の第3実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルム(22)および、構造層(14)を有し、キャリアフィルム(22)に着脱可能に配置される転写層部を備える転写フィルム、特に、熱エンボスフィルムであって、該転写フィルムにおいて、
前記キャリアフィルム(22)は構造層(14)に向かう側にマスター・レリーフ構造(22m)を備え、前記構造層(14)は前記キャリアフィルム(22)に向かう側にキャリアフィルムのマスター・レリーフ構造(22m)と相補の第1レリーフ構造(14o)を備え、前記構造層(14)は前記キャリアフィルム(22)から遠い側に該第1レリーフ構造(14o)とは異なる第2レリーフ構造(14u)を有し、該第2レリーフ構造(14u)は少なくともその領域方向に反射層(16)で被覆されることを特徴とする転写フィルム。
【請求項2】
前記構造層(14)は、前記2つのレリーフ構造(14o、14u)の中央レベル間の厚さが<10μm、特に<5μmであることを特徴とする請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記マスター・レリーフ構造(22m)はエンボス加工によって前記キャリアフィルム(22)に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記キャリアフィルム(22)は部分印刷を有し、前記マスター・レリーフ構造は前記部分印刷によって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記キャリアフィルム(22)は前記マスター・レリーフ構造が成形される複製ラッカ層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の転写フィルム。
【請求項6】
剥離層が前記キャリアフィルム(22)と前記転写層部の間に配置されることを特徴とする先行する請求項の内の何れか1項に記載の転写フィルム。
【請求項7】
キャリアフィルム(22)に向かう構造層(14)側に防護層が配置されることを特徴とする先行する請求項の内の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項8】
前記反射層(16)は金属層として形成されていることを特徴とする先行する請求項の内の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項9】
前記反射層(16)は誘電層(16d)として形成され、該誘電層(16d)の光屈折率は前記構造層(14)の光屈折率と異なることを特徴とする先行する請求項の内の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項10】
前記第1レリーフ構造(14o)は触覚手段によって認識可能であることを特徴とする先行する請求項の内の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項11】
前記第1レリーフ構造(14o)は光学手段によって認識可能であることを特徴とする先行する請求項の内の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項12】
前記第1レリーフ構造(14o)および/または前記第2レリーフ構造(14u)は微細構造を含むことを特徴とする請求項11に記載の転写フィルム。
【請求項13】
前記第1レリーフ構造(14o)および/または前記第2レリーフ構造(14u)はマット構造および/または回折構造および/または屈折構造および/または微細構造として形成されることを特徴とする請求項11または12に記載の転写フィルム。
【請求項14】
前記第1レリーフ構造(14o)および前記第2レリーフ構造(14u)は互いに独立した光学的効果を発生することを特徴とする先行する請求項の内の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項15】
前記第1レリーフ構造(14o)および/または前記第2レリーフ構造(14u)は互いに独立した光学的効果を発生することを特徴とする請求項1乃至13の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項16】
前記第1レリーフ構造(14o)は部分的に反射層を有することを特徴とする先行する請求項の内の何れか一つに記載の転写フィルム。
【請求項17】
キャリアフィルム(22)および、構造層(14)を有し、キャリアフィルム(22)に着脱可能に配置される転写層部を備える転写フィルムの製造プロセスにおいて、
マスター・レリーフ構造(22m)はキャリアフィルム(22)に導入され、および/またはキャリアフィルム(22)に装着され、前記構造層(14)は前記キャリアフィルム(22)に装着され、前記キャリアフィルム(22)のマスター・レリーフ構造(22m)と相補の第1レリーフ構造(14o)が前記構造層(14)に成形され、前記第1レリーフ構造(14o)は、前記構造層(14)を硬化することによって光学的に固定され、第1レリーフ構造(14o)とは異なる第2レリーフ構造(14u)は前記構造層(14)に成形され、第2レリーフ構造(14u)に少なくともその領域方向に反射層(16)が装着されることを特徴とする転写フィルムの製造プロセス。
【請求項18】
前記マスター・レリーフ構造(22m)はエンボス加工によってキャリアフィルム(22)に導入されることを特徴とする請求項17に記載の製造プロセス。
【請求項19】
前記マスター・レリーフ構造(22m)はキャリアフィルム(22)上に部分印刷によって装着されることを特徴とする請求項17に記載の製造プロセス。
【請求項20】
剥離層および/または防護層が、前記構造層(14)に装着される前に、前記キャリアフィルム(22)に装着されることを特徴とする請求項17乃至19の何れか一つに記載の製造プロセス。
【請求項21】
前記構造層(14)は第1および第2の層から形成され、第2の層は、第1レリーフ構造(14o)に備えられる前記硬化された第1の層に装着され、第2レリーフ構造(14u)は第2の層に成形されることを特徴とする請求項17乃至20の何れか一つに記載の製造プロセス。
【請求項22】
前記反射層(16)および前記第2レリーフ構造(14u)を被覆する吸着層(18)が装着されることを特徴とする請求項17乃至21の何れか一つに記載の製造プロセス。
【請求項23】
構造層(14)を備える多層体であって、該構造層は多層体の正面を形成し、第1レリーフ構造(14o)が該構造層の第1面に成形され、該多層体の正面を形成する該多層体において、
第2レリーフ構造(14u)は、前記構造層の第1面と対向する関係にある第2面に成形され、該第2レリーフ構造(14u)は第1レリーフ構造(14o)とは異なり、少なくともその領域方向に反射層(18)によって被覆され、前記構造層(14)は前記2つのレリーフ構造(14o、14u)の中央レベル間の厚さが<10μm、好ましくは<5μmであることを特徴とする多層体。
【請求項24】
前記第1レリーフ構造(14o)は部分的に水平化または平板化されていることを特徴とする請求項23に記載の多層体。
【請求項25】
前記第1レリーフ構造(14o)は部分的に重ね刷りされていることを特徴とする請求項23または24に記載の多層体。
【請求項26】
前記第1レリーフ構造は触覚によって検出可能な領域を有することを特徴とする請求項23乃至25の何れか一つに記載の多層体。
【請求項27】
前記触覚によって検出可能な領域は、その下に配置される、例えば光学的に効果的な回折構造のような構造とレジスタ関係に配置されることを特徴とする請求項26に記載の多層体。
【請求項28】
請求項23乃至27の何れか一つに記載の多層体を有することを特徴とするセキュリティ文書。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−535701(P2008−535701A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505795(P2008−505795)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003318
【国際公開番号】WO2006/108607
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】