説明

転写ベルトユニット及び画像形成装置

【課題】像担持体との摩擦に起因する転写ベルトの振動の発生を防止し、転写ベルトを介して転写位置に搬送される用紙にトナー像を正確に転写できるようにする。
【解決手段】二次転写ユニット3は、無端状の転写ベルト31を、駆動ローラ32、従動ローラ33、転写ローラ34、補助ローラ35及び支持ローラ36で張架している。転写ベルト31は、駆動ローラ32の回転によって転写位置Nを経由する循環経路に沿って移動する。転写ローラ34及び補助ローラ35は、転写位置Nで、転写ベルト31を中間転写ベルト22に向けて転写ベルト31の内周面側から押圧する。転写ベルトは31、中間転写ベルト22に圧接する外周面を表面粗さRz=6μm〜10μmに粗面化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる転写ベルトユニット、及びこの転写ベルトユニットを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体の表面にトナー像を形成し、このトナー像を転写手段によって用紙に転写する。画像形成装置には、無端状の転写ベルトを含む転写ベルトユニットを転写手段として備えたものがある。
【0003】
転写ベルトユニットは、無端状の転写ベルトを駆動ローラ及び転写ローラを含む複数のローラに張架する。駆動ローラは、駆動源からの回転の供給を受ける。転写ローラは、転写位置で転写ベルトを挟んで像担持体に圧接し、電源部から転写バイアスが印加されて転写電界を形成する。転写ベルトは、駆動ローラの回転によって所定の循環経路を移動する。転写ベルトは、循環経路に転写位置を経由する用紙搬送路の一部を含み、転写位置を経由して用紙を搬送する搬送ベルトの機能を備えている。
【0004】
像担持体表面のトナー像を用紙に正確に転写させるためには、転写位置での用紙の搬送速度を像担持体の表面の移動速度に同期させる必要があり、転写ベルトを一定速度で安定して移動させる必要がある。画像形成装置内で用紙を搬送する機能を有する搬送ベルトは、樹脂を素材として外周面及び内周面を鏡面にされており、駆動ローラとの間に滑りを生じ易く、一定速度で安定して移動させることが困難な場合がある。
【0005】
このため、従来の樹脂製の搬送ベルトには、駆動ローラの周面に接触する内周面を粗面化するものがある(例えば、特許文献1参照。)。この構成によれば、搬送ベルトと駆動ローラとの間の摩擦を大きくすることで滑りを防止でき、搬送ベルトを一定速度で移動させることができるとされている。
【0006】
したがって、転写ベルトの内周面を粗面化することで、転写ベルトと駆動ローラとの間に滑りを生じることがなく、転写ベルトを駆動ローラの周速に同期して移動させることができ、用紙を一定速度で安定して搬送できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−192136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、転写ベルトの内周面を粗面化した場合、像担持体に圧接する転写ベルトの外周面が鏡面のままであると、駆動ローラの径や転写ベルトの厚みの誤差により、像担持体と転写ベルトの外周面との摩擦によって転写ベルトに振動を生じる場合がある。これを放置すると、転写位置を通過する用紙が前後に微動し、像担持体から用紙に正確にトナー像を転写できなくなり、用紙に形成される画像の劣化を招く。この問題は、転写ベルトの内周面が鏡面である場合にも生じる可能性がある。
【0009】
この発明の目的は、像担持体との摩擦に起因する転写ベルトの振動の発生を防止し、転写ベルトを介して転写位置に搬送される用紙にトナー像を正確に転写することができる転写ベルトユニット、及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の転写ベルトユニットは、転写ベルト、駆動ローラ及び転写ローラを含む複数のローラ、駆動源を備えている。転写ベルトは、転写位置を経由する循環経路に沿って移動する樹脂製の無端ベルトである。複数のローラは、転写ベルトを張架する。駆動源は、駆動ローラに回転を供給する。転写ローラは、転写位置で、像担持体に向けて転写ベルトを転写ベルトの内周面側から押圧する。転写ベルトは、像担持体に接触する外周面を粗面化している。
【0011】
この構成においては、転写ローラによって像担持体に圧接する転写ベルトの外側面が粗面化されている。このため、像担持体の表面と転写ベルトの外周面との間の摩擦係数が大きくなり、転写ベルトは移動中に振動を生じることがない。
【0012】
なお、転写ベルトに用いる樹脂製の無端ベルトは、外周面及び内周面を10点平均表面粗さRzが1μm〜3μの鏡面にして製造される。この発明では、転写ベルトの外周面をRz=6μm〜10μmに粗面化する。
【0013】
この構成において、像担持体の移動方向における転写ローラの上流側で、像担持体に向けて転写ベルトを転写ベルトの内周面側から押圧する補助ローラを備えた場合、転写ベルトは、外周面が補助ローラの配置位置と転写ローラの配置位置との間で像担持体の表面に圧接する。このため、像担持体の表面との間の摩擦係数の影響を受け易くなり、外周面を粗面化することによる効果が顕著になる。
【0014】
また、転写ベルトの内周面を粗面化した場合、転写ベルトは、内周面と駆動ローラの周面との間に滑りを生じ難くなる。このため、駆動ローラの径や転写ベルトの厚さの誤差により、像担持体の表面と鏡面の転写ベルトの外周面との間の摩擦に起因する転写ベルトの振動が生じ易くなるため、外周面を粗面化することによる効果が顕著になる。
【0015】
さらに、転写ベルトの外周面が圧接する像担持体がローラに張架されて移動する中間転写ベルトである場合には、転写ベルトは中間転写ベルトと一体的に振動を生じ易くなるため、外周面を粗面化することによる効果が顕著になる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、像担持体との摩擦に起因する転写ベルトの振動の発生を防止することができ、転写ベルトを介して転写位置に搬送される用紙にトナー像を正確に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態に係る二次転写ユニットが適用される画像形成装置の概略図である。
【図2】同二次転写ユニットの構成を示す図である。
【図3】同二次転写ユニットにおける外周面の表面粗さと用紙上の画質との関係の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態に係る転写ベルトユニットを適用した画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1に示す画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成処理により、多色又は単色の画像を用紙に形成する。画像形成装置100は、画像形成ユニット1A〜1D、中間転写ユニット2、二次転写ユニット3、定着ユニット4、給紙トレイ5、用紙搬送路6を内蔵し、上面に排紙トレイ7を備えている。
【0020】
画像形成ユニット1A〜1Dは、それぞれ感光体ドラム11A〜11D、帯電器12A〜12D、露光ユニット13A〜13D、現像ユニット14A〜14D、転写ローラ15A〜15D、クリーナ16A〜16Dを備えている。
【0021】
一例として、画像形成ユニット1Aは、帯電器12Aによって感光体ドラム11Aの表面を均一の電位に帯電させた後、露光ユニット13Aからブラックの画像データで変調された画像光を感光体ドラム11Aの表面に照射する。感光体ドラム11Aの表面には、ブラックの画像データに応じた静電潜像が形成される。現像ユニット14Aは、感光体ドラム11Aの表面にブラックのトナーを供給し、静電潜像をブラックのトナー像に顕像化する。
【0022】
画像形成ユニット1B〜1Dは、画像形成ユニット1Aと同様の動作により、感光体ドラム11B〜11Dの表面にそれぞれシアン、マゼンタ、イエローのトナー像を形成する。
【0023】
中間転写ユニット2は、中間転写ベルト21、駆動ローラ22、従動ローラ23、クリーナ24を備えている。無端状の中間転写ベルト21は、この発明の像担持体であり、駆動ローラ22及び従動ローラ23によって張架され、駆動ローラ22の回転によって画像形成ユニット1A〜1Dをこの順に経由する循環経路に沿って移動する。
【0024】
画像形成ユニット1A〜1Dのそれぞれの転写ローラ15A〜15Dは、感光体ドラム11A〜11Dとの間に中間転写ベルト21を挟む位置に配置されている。転写ローラ15A〜15Dは、転写バイアスが印加されると感光体ドラム11A〜11Dとの間に転写電界を形成し、感光体ドラム11A〜11Dの表面のトナー像を中間転写ベルト21の外周面に一次転写する。一次転写後に感光体ドラム11A〜11Dの表面に残留しているトナーは、クリーナ16A〜16Dによって除去される。
【0025】
フルカラー画像形成時には、画像形成ユニット1A〜1Dで形成されたブラック、シアン、マゼンタ、イエローのトナー像が中間転写ベルト21の外周面で順次重ね合うように転写される。モノクロ画像形成時には、画像形成ユニット1Aのみでトナー像が形成され、ブラックのトナー像のみが中間転写ベルト21の外周面に転写される。モノクロ画像以外の単色画像形成時、3色以下の多色画像形成時には、画像形成ユニット1A〜1Dのうちで必要な色に対応するもののみでトナー像が形成されて中間転写ベルト21の外周面に転写される。
【0026】
二次転写ユニット3は、中間転写ベルト21を挟んで駆動ローラ22に対向する位置に配置されている。給紙カセット5は、画像形成ユニット1A〜1Dの下方に配置され、複数枚の用紙を収容する。用紙搬送路6は、給紙ローラ61、搬送ローラ62,63、レジストローラ64、排紙ローラ65を備え、給紙カセット5から駆動ローラ22と二次転写ユニット3との間及び定着ユニット4内を経由して排紙トレイ7に至る間に用紙を1枚ずつ搬送する。
【0027】
中間転写ベルト21の外周面に一次転写されたトナー像は、二次転写ユニット3によって用紙搬送路6内を搬送中の用紙に二次転写される。レジストローラ64は、給カセット5から給紙されてレジストローラ64に到達した用紙の前端が、二次転写ユニット3が駆動ローラ22に対向する位置で中間転写ベルト21の外周面に担持されたトナー像の先端に一致するように回転を開始する。トナー像が転写された用紙は、定着ユニット4内で加熱及び加圧され、表面にトナー像を定着させた後に、排紙トレイ7に排出される。
【0028】
図2に示すように、この発明の転写ベルトユニットである二次転写ユニット3は、転写ベルト31、駆動ローラ32、従動ローラ33、転写ローラ34、補助ローラ35、支持ローラ36、モータ37、電源を備えている。
【0029】
転写ベルト31は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフッ化ビリニデン樹脂、ポリウレタン樹脂等の誘電体樹脂を素材とするシームレスの無端ベルトである。転写ベルト31は、駆動ローラ32、従動ローラ33、転写ローラ34、補助ローラ35、支持ローラ36の複数のローラに張架されている。
【0030】
駆動ローラ32は、この発明の駆動源であるモータ37から回転の供給を受けて回転する。転写ベルト31は、駆動ローラ32の回転によって複数のローラによって規定される循環経路に沿って移動する。循環経路には、転写位置Nが含まれる。転写ベルト31の移動に伴って従動ローラ33、転写ローラ34、補助ローラ35、支持ローラ36が駆動ローラ32の回転に従動して回転する。
【0031】
転写ローラ34は、電源38から転写バイアスが印加され、中間転写ベルト21との間に転写電界を形成する。転写ローラ34は、転写ベルト31を駆動ローラ22に向かって転写ベルト31の内周面側から押圧する。
【0032】
補助ローラ35は、用紙搬送路6内の用紙搬送方向Pにおける転写ローラ34の上流側に配置されている。補助ローラ35は、転写ベルト31を駆動ローラ22に向かって転写ベルト31の内周面側から押圧する。
【0033】
例えば、駆動ローラ32、従動ローラ33、転写ローラ34、補助ローラ35、支持ローラ36を軸支する単一のフレームを、駆動ローラ32の中心位置を支点に揺動自在に支持する。画像形成時にのみ、転写ローラ34及び補助ローラ35が駆動ローラ22に接近する方向にフレームを揺動させる。
【0034】
転写ベルト31の外周面は、転写位置Nの範囲内で、中間転写ベルト21の外周面に圧接する。画像形成時には、転写ベルト31は、循環経路内を移動することで、用紙搬送路6内の用紙を転写位置Nを経由して搬送する。
【0035】
転写ベルト31の素材となる樹脂製の無端ベルトは、外周面及び内周面を10点平均表面粗さRzが1μm〜3μm程度の鏡面にされている。転写ベルト31は、少なくとも外周面をRz=6μm〜10μmとなるように粗面化されている。
【0036】
画像形成時には、転写ベルト31の外周面は、駆動ローラ22の回転によって移動する中間転写ベルト21の外周面に用紙を挟んで圧接する。転写範囲N内で、転写ベルト31は、補助ローラ35の周面から離れた後、転写ローラ34の周面に接触するまでの間では、中間転写ベルト22側への押圧を受けておらず、中間転写ベルト22から離間する方向への移動を規制されていない。
【0037】
転写ベルト31の外周面が鏡面(Rz=1μm)のままであると、図3に示すように、特に転写ベルト31の寿命の初期において用紙上の画像にピッチ斑と呼ばれる画像の乱れを生じ易い。このピッチ斑は、転写位置N内、特に中間転写ベルト22から離間する方向への移動を規制されていない部分における転写ベルト31の振動によって生じたものであると考えられる。
【0038】
これに対して、転写ベルト31の外周面をRz=6μmに粗面化すると、転写位置nにおける転写ベルト31の移動が安定し、転写ベルト31の寿命の全期にわたってピッチ斑の発生を改善することができた。転写ベルト31の外周面をRz=10μmに粗面化した場合も同様の結果が得られた。
【0039】
なお、補助ローラ35は、トナー像の転写に十分な長さの転写位置Nを確保できることを条件に、省略することができる。また、転写ベルト31は、内周面を外周面と同様に粗面化することもできる。さらに、転写ベルト31が感光体ドラムの表面に接触する転写ベルトユニットについても、この発明を同様に実施できる。また、画像形成装置100は、画像読取機能等の他の機能を備えたものであってもよい。
【0040】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
3−二次転写ユニット(転写ベルトユニット)
22−中間転写ベルト(像担持体)
31−転写ベルト
32−駆動ローラ
34−転写ローラ
37−モータ(駆動源)
100−画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状を呈する樹脂製の転写ベルトを転写位置を経由する循環経路に沿って移動させ、前記転写位置で像担持体の表面に形成されたトナー像を前記担持体と前記転写ベルトとの間を通過する用紙に転写する転写ベルトユニットであって、
前記転写ベルトを張架する駆動ローラ及び転写ローラを含む複数のローラと、
前記駆動ローラに回転を供給する駆動源と、を備え、
前記転写ローラは、前記転写位置で、前記像担持体に向けて前記転写ベルトを前記転写ベルトの内周面側から押圧し、
前記転写ベルトは、前記像担持体に接触する外周面を粗面化した転写ベルトユニット。
【請求項2】
前記像担持体の移動方向における転写ローラの上流側で、前記像担持体に前記転写ベルトを挟んで前記転写ベルトの内周面側から圧接する補助ローラを備えた請求項1に記載の転写ベルトユニット。
【請求項3】
前記転写ベルトユニットは、内周面を粗面化した請求項1又は2に記載の転写ベルトユニット。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の転写ベルトユニットと、電子写真方式の画像形成処理によって前記像担持体の表面にトナー像を形成する画像形成部と、を備えた画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成部は、前記像担持体として中間転写ベルトを備えた請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−220538(P2012−220538A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82966(P2011−82966)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】