説明

転写型インクジェット記録方法

【課題】 インクのドット形状の変形、再現解像度のばらつき及び画像のブリード等の発生を抑制できる転写型インクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】 凝集液を、親液部と撥液部とからなるパターンを有する中間転写体の画像形成面に付与する凝集液付与工程と、インクを中間転写体の画像形成面に付与して中間画像を形成する中間画像形成工程と、該中間画像を該画像形成面から該記録媒体へ転写して画像を形成する転写工程とを有する転写型インクジェット記録方法であって、前記親液部は、面積が異なる2種類以上の領域で構成されていることを特徴とする転写型インクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写型インクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
凝集液が付与された中間転写体の画像形成面にインクを付与して中間画像を形成し、中間画像を記録媒体へ転写して最終画像を形成する転写型インクジェット記録方法が知られている。中間画像を良好に転写するには、中間転写体の画像形成面の離型性が高い(即ちインクを弾きやすい)ことが求められるが、離型性の高い画像形成面に凝集液を均一に付与することは困難である。かかる課題を解決する方法として、特許文献1には、凝集液が濡れやすいパターン(親液部)を、中間転写体の画像形成面に一様に形成する方法が記載されている。この方法によれば、凝集液は親液部上にのみ付着し、結果として凝集液を均一に付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−18719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1の方法では凝集力を高めようと凝集液の量を多くした場合に課題が発生することがあった。具体的には、課題は以下の通りである。
【0005】
凝集液の量を多くするには、凝集液と親和性の高い親液部1つ当たりの面積を広くする方法が考えられる。親液部1つ当たりの面積を広くすることで、その親液部上に付与される凝集液は、底面積が広くなるのみではなく、記録媒体に対する垂直方向の高さも高くなる。結果的に、単純に親液部の数を増やして底面積を広くするのみの場合に比べ、親液部上の凝集液の量を多くすることができる。
【0006】
しかし、親液部の配置ピッチ(親液部の中心間距離)は、基本的に親液部の直径(最大径)よりも短くすることはできない。親液部の配置ピッチが親液部の直径よりも短いということは、親液部同士が重なることになる。即ち、親液部の面積が広くなると配置ピッチも連動して長くなる。このようになると、インクのドット形状に影響を及ぼす場合がある。図4(α)は、図3(α)に示したパターンの親液部に凝集液を付与し、その上にインクが着弾した瞬間を示す図である。図4(β)は、図4(α)から時間経過につれて発生するインクドットの動きを示す図である。親液部は凝集液が濡れやすい特性を有するため、インクに対しても濡れやすい特性を有する。この結果、インクドットが親液部の影響で領域内に広がってしまう部分ができる。逆に、撥液部はインクを弾きやすい特性をもつため、インクドットが収縮してしまう部分ができる。このように、インクのドット形状は、親液部1つ当たりの面積が広い場合に大きな影響を受けやすい。また、図3(β)は図4(β)と同じ状態を示す図であるが、図3(β)から分かるように再現解像度にばらつきが生じる。尚、再現解像度は、インクドットのエッジを基準としてピッチを評価した値である。
【0007】
逆に親液部1つ当たりの面積を狭くしていくと、インクのドット形状の変形や再現解像度のばらつきは抑制できるが、親液部上の凝集液の量は少なくなってしまい、インクを十分に凝集させることが困難となる。この結果、中間画像及び記録媒体上に得られる最終画像にブリード(色混じり)等が起こることがある。
【0008】
従って、本発明は、インクのドット形状の変形、再現解像度のばらつき及び画像のブリード等の発生を抑制できる転写型インクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成する本発明は、インクが含有する色材成分を凝集させる凝集液を、親液部と撥液部とからなるパターンを有する中間転写体の画像形成面に付与する凝集液付与工程と、該色材成分を含有するインクを該凝集液が付与された中間転写体の画像形成面に付与して中間画像を形成する中間画像形成工程と、該中間画像が形成された該画像形成面に記録媒体を圧着して該中間画像を該画像形成面から該記録媒体へ転写して画像を形成する転写工程とを有する転写型インクジェット記録方法であって、前記親液部は、面積が異なる2種類以上の領域で構成されていることを特徴とする転写型インクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクのドット形状の変形、再現解像度のばらつき及び画像のブリード等の発生を抑制できる転写型インクジェット記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の転写型インクジェット記録装置の一例を示す図である。
【図2】従来の親液部のパターンの一例を示す図である。
【図3】従来の親液部のパターンの一例を示す図である。
【図4】従来の親液部上でのインクドットの動きの一例を示す図である。
【図5】本発明の親液部のパターンの一例を示す図である。
【図6】本発明の親液部のパターンの一例を示す図である。
【図7】本発明の親液部のパターンの一例を示す図である。
【図8】本発明の転写型インクジェット記録装置に対応して構成することのできる制御系の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。図5に、本発明の親液部のパターンの一例を示す。比較のために、従来の親液部のパターンの一例を図2及び図3に示す。これらの中間転写体の画像形成面は、親液部と撥液部とからなるパターンを有する。図中、円形の内部が親液部であり、円形の外側が撥液部である。尚、本明細書において、「親液部」とは、用いる凝集液及びインクが「撥液部」と比較して濡れやすい(付着しやすい)特性を有する部分を指す。凝集液の画像形成面に対する濡れやすさや弾きやすさは、凝集液の画像形成面に対する接触角で示すことができる。濡れやすい画像形成面は接触角が小さくなり、弾きやすい画像形成面は接触角が大きくなる傾向がある。本発明においては、撥液部の凝集液に対する接触角は60°以上であることが好ましい。撥液部の凝集液に対する接触角は原理的には上限が無く、接触角が高いほど分離しやすくなる。ただし、撥液部のインクに対する接触角が高すぎるとドット形状が乱れることがあるので、使用するインクや凝集液等に応じて考慮することが好ましい。その適正値は変動するが、一般的に撥液部のインクに対する接触角は90°以下であることが好ましい。但し、本発明において、親液部と撥液部の原理的概念は、凝集液が撥液部に付着しにくく親液部に付着しやすい状態とすることである。即ち、親液部と撥液部の凝集液に対する濡れ性に差があることが重要である。親液部に対する凝集液の接触角は、撥液部に対する接触角よりも5°以上低いことが好ましい。さらに、10°以上低いことが好ましい。親液部の凝集液に対する接触角は低いほど好ましい。撥液部と親液部の濡れ性に大きな差があれば、撥液部の凝集液に対する接触角が低くても十分効果が出やすい。
【0013】
理論的には、中間転写体の画像形成面に中間画像を形成する場合、インクに先んじて付与される凝集液パターンの均一性が高ければ高いほど中間画像の形状は乱れにくくなる。この概念をそのまま親液部のパターンに適応すると、同一の面積、形状の領域が、一面に等間隔で規則的に配置された一様のパターンであることが望ましく、これまではそのように設計されてきた。
【0014】
しかし、本発明者らは、上記のような一様のパターンでの制約事項を見出した。それは先に述べた通り、親液部1つ当たりの面積と、親液部上の凝集液の量、さらにインクのドット形状及び再現解像度の関係である。図2、図3及び図4に、これらの関係を最も単純化したモデルパターンを示す。各図(α)は中間転写体上の親液部のパターンを示す。各図(β)はそれぞれのパターンに凝集液を付与し、更にインクを付与して中間画像を形成した状態を示す。
【0015】
一般的に、インクジェット記録で高精細な写真画像を再現する場合、1200dpi以上の高解像度の出力が用いられている。図2は、親液部の配置ピッチ(中心間距離)を、出力解像度の1200dpiに合わせて形成した例である。1200dpiの場合、配置ピッチは21.16μmとなる。図2における親液部は、直径12μmの円形形状である。図2において、隣接する親液部間で凝集液が繋がらないためには、実用上、親液部間に8μm以上の撥液部が必要である。図2の場合、親液部に接触角40°で付着する凝集液の量は、計算上1平方インチあたり約0.19mgである。電子天秤を用いて実測を行ったところ、実測値もほぼ同じであった。
【0016】
一方、一般的に設計解像度1200dpiで使用するインクの付与量は、各色最大で1平方インチあたり約7mgとなる。この場合、凝集液に対するインクの量は質量基準で37倍程度であり、インクを十分に凝集することができる実用的な範囲となる。図2(β)に示す通り、インクドットの再現解像度は入力解像度の通りとすることができる。尚、入力解像度は、一般的な目標座標中心間の間隔を指標として用いた値である。
【0017】
しかし、実際のカラー画像ではインク3色が重なることもあり、濃色部は1平方インチあたり20mgを超えるので、凝集液に対するインクの量は質量基準で100倍にもなる。このため、インクが凝集不足になり、中間画像や最終画像にブリードが生じることがある。
【0018】
図3は、親液部の直径を25μmとした例である。親液部の直径は、1200dpiの配置ピッチ21.16μmより大きいので、入力解像度以下のピッチパターンとなる。図3では、説明上600dpiのピッチパターンで示す。図3の場合、親液部に接触角40°で付着する凝集液の量は、計算上1平方インチあたり約0.6mgである。電子天秤を用いて実測を行ったところ、実測値もほぼ同じであった。この場合、濃色部においても、凝集液に対するインクの量は質量基準で30倍程度となる。従って、図2のケースと比較すると、凝集液を親液部上に多く付与することで、濃色部においてもインクを良好に凝集させることができる。
【0019】
しかし、この表面にインク画像を形成しようとすると、図3(β)或いは図4(β)に示すように、インクドットが親液部及び凝集液に引かれるように変形する場合がある。また、再現解像度が等間隔にならなくなる現象が生じる場合がある。図3(β)或いは図4(β)のような状態になると、細線部のゆがみや文字のつぶれが目立つようになり、高品質な画像を再現することが困難となる。
【0020】
即ち、親液部の配置ピッチを短くして解像度を高めようとすると、インク付与量の多い部分では凝集不足となり画像が乱れ、親液部の面積を広くして凝集液を多く付与しようとすると、インクのドット形状の変形や、再現解像度のばらつきという課題がある。この課題は、インクジェット記録方法が入力解像度より大きなインクドットをずらし重ねて画像設計するという特殊性を有するのに加え、この画像を剥離可能な中間転写体上で形成しなければならない、転写型インクジェット記録方法特有の課題である。尚、図2、図3及び図4では特定の入力解像度及び凝集液の量の場合で説明したが、当然のことながら入力解像度や凝集液の量が変化しても同じ課題は存在する。
【0021】
本発明は、この課題に着目してなされた発明である。本発明の親液部は、例えば図5(α)に示す通り、面積が異なる2種類以上の領域で構成されている。図5(α)は、2種類の領域のサイズを下記の通りとした例である。
・親液部(小):直径12μm、ピッチ1200dpi(変則千鳥配置)
・親液部(大):直径25μm、ピッチ600dpi(千鳥配置)
図5(α)のパターンで親液部上に接触角40°で付着する凝集液の量は、図2(α)と図3(α)の中間の、1平方インチ当たり0.4mgとなる。インクの最大付与量を考えると、凝集液に対するインクの量は50倍程度となり、凝集液付与の自由度は図2(α)に比べて2倍以上もとることができる。さらに、この表面にインクを付与した状態を図5(β)に示す。図5(β)に示す通り、インクドットの変形も最小限にとどめつつ、再現解像度は図2のパターンに遜色ない値とすることができる。
【0022】
従来のように、親液部を面積が均一のパターンで形成した場合には、いくら面積が均一である親液部の面積を最適化したとしても、凝集液の量を維持しつつ、インクのドット形状の変形及び再現解像度のばらつきを高いレベルで抑制することは困難である。即ち、面積が広い親液部によって凝集液の量を維持しつつ、面性が狭い親液部でインクのドット形状の変形及び再現解像度のばらつきを抑制するという効果を、面積の異なる各親液部の働きによって初めて並立させたのが本発明である。
【0023】
本発明における親液部のパターンは、主に次の4種類に分けることができる。これらのパターンは求める画像、品質、用いるインク及び凝集液等の種類により、適宜選択することが好ましい。
1、配置:不規則、ピッチ:単一;図6(α)
2、配置:規則的、ピッチ:単一;図6(β)
3、配置:不規則、ピッチ:複数;図6(γ)
4、配置:規則的、ピッチ:複数;図5(α)
【0024】
親液部が繰返される周期としては、少なくとも用いるパターンの一つの周期は、インクジェット画像出力に用いる設計解像度に対して、同等以上に高いことが好ましい。2種類以上の領域(親液部)のうち、面積が広い方の領域の直径(最大径)は、インクジェットヘッドから吐出されるインクドットの最大広がり径以下であることが好ましい。直径(最大径)とは、領域の端部から端部までの長さを直線で最長となるように取ったときの長さである。インクドットの最大広がり径は80μm程度であるので、領域の直径は80μm以下であることが好ましい。また、面積が広い方の領域の面積は、インクドットの面積よりも狭いことが好ましく、5000μm以下であることが好ましい。これらの場合、当然のことながら面積が狭い方の領域の直径はインクドットの最大広がり径以下となり、面積もインクドットより狭くなる。一方、領域があまりに小さいと凝集液の安定的な保持が困難となる。従って、領域の直径は2μm以上であることが好ましく、面積は4μm以上であることが好ましい。領域(親液部)の形状は、図2〜図6に示す通り円形形状で統一されていることが好ましいが、図7に示すように円形以外の形状としてもよいし、これらを混在させてもよい。親液部は、面積が異なる2種類以上の領域で構成されているが、最も面積が大きい領域の面積は、最も面積が小さい領域の面積に対して1.4倍以上であることが好ましい。親液部と撥液部の境界部の段差は、付与した凝集液の膜厚以下とすることが好ましく、実質的に段差がないことが最も好ましい。
【0025】
本発明の親液部のパターンを形成する方法としては、例えば従来から用いられているパターニング方法が挙げられる。具体的には、レジスト法、マスク法、印刷法、レーザーによるダイレクト加工等がある。中でもレジスト法は、非常に微細なパターニングができる点で好ましい。これらのパターニング法等により、面積が異なる2種類以上の領域で構成されるように親液部を形成する。
【0026】
本発明の転写型インクジェット記録方法を、図1を用いて説明する。本発明の転写型インクジェット記録方法は、インクが含有する色材成分を凝集させる凝集液を、親液部と撥液部とからなるパターンを有する中間転写体の画像形成面に付与する凝集液付与工程を有する。次に、色材成分を含有するインクを凝集液が付与された中間転写体の画像形成面に付与して中間画像を形成する中間画像形成工程を有する。そして、中間画像が形成された画像形成面に記録媒体を圧着して中間画像を画像形成面から記録媒体へ転写して画像を形成する転写工程を有する。
【0027】
図1において、中間転写体1は円筒状の形状であり、その外周面は親液部と撥液部とからなるパターンを有する画像形成面2である。画像形成面2に対向する部位には、凝集液4を付与する塗布装置3、インクを吐出して中間画像6を形成するインクジェット記録ヘッド5、記録媒体9に転写を行う加圧ローラ10等が設けられている。
【0028】
中間転写体1は図中の矢印の方向に回転し、まずその表面に塗布装置3によって凝集液4が付与され、付与された凝集液は中間転写体表面の親液部に保持される。これにより、一定量の凝集液を転写体上に均一に存在させることができる。次いでインクジェット記録ヘッド5からインクが吐出され、中間転写体1の画像形成面2上に中間画像6(ミラー反転した画像)が形成される。インクと凝集液が接触すると、インクが含有する色材成分が凝集して色材成分の流動性が低下する。このため、中間画像のブリード等の発生を抑制できる。そして、中間画像6が形成された画像形成面2に記録媒体9を接触させ、加圧ローラ10により裏面側から加圧することで記録媒体9上に画像が転写され、最終画像が得られる。記録媒体9は、搬送ローラ11で搬送される。
【0029】
図1の装置では、中間画像6を構成するインク中の水分ないし溶剤成分を蒸発させて除去する目的で、送風機形態の水分除去促進装置7が配置されている。これにより、転写に先立って、インクの水分量を低減している。また、中間転写体1の裏面側に接触して加熱を行う加熱ローラ10を用いている。さらに、中間画像6を記録媒体9に転写した後の中間転写体1を複数回にわたって繰り返し使用するために、クリーニングユニット12で画像形成面を洗浄している。
【0030】
図8は図1の転写型インクジェット記録装置に対応して構成することのできる制御系の一例である。全体を符号100で示す画像形成装置において、101は系全体の主制御部をなすCPUであり、各部を制御する。103はメモリであり、CPU101の基本プログラムを格納したROMのほか、各種データの一時保存や画像データの処理その他ワーク用に使用されるRAM等により構成される。117はホストコンピュータその他の形態を可とする画像データの供給源である画像供給装置150との間でデータやコマンドなどの情報を授受するためのインターフェースである。110は中間転写体1を回転駆動するための駆動部である。115は記録媒体9の搬送系であり、加圧ローラ10および搬送ローラ11の駆動部等を含む。120はバスラインであり、以上の各部のほか、例えば上記実施例のいずれかの形態を可とする塗布装置3、インクジェット記録ヘッド5、水分除去促進装置7、加熱ローラ8、クリーニングユニット12を接続し、CPU101の制御信号を伝達する。また、制御対象である各部には、状態検出用センサが配設され、その検出信号をバスライン120を介してCPU101に伝達することができる。
【0031】
本発明の転写型インクジェット記録方法に用いる各構成を説明する。
【0032】
<中間転写体>
親液部と撥液部とからなるパターンを有する中間転写体は、表面が記録媒体と少なくとも線接触可能となるものであればいずれでもよい。即ち、適用する記録装置の形態ないしは記録媒体への転写の態様に合わせ、ローラ状のものでもよいし、例えばベルト状やシート状のものでもよい。また画像形成面には、ゴムやプラスチックなど、弾性を有する材料を用いることが好ましい。中間転写体は、タイプAのデュロメータ(JIS K 6253準拠)で測定したときに硬度10°〜100°の範囲の弾性を有するものであることが好ましい。さらには40°〜80°の範囲のものであれば、より様々な記録媒体に良好に対応できるため好ましい。図1は連続的に転写を行う例であるが、パッド印刷のようにバッチで記録を行う方式でもよい。
【0033】
中間転写体の画像形成面は、液体非吸収であることが好ましい。液体非吸収の表面はクリーニングユニットによってクリーニングされた状態を保ちやすく、またバリアブルプリントのようなインクジェット記録方法の特徴を活かすことができる。さらに、中間画像を安定的に記録媒体へ転写できる離型性を有することが好ましい。
【0034】
中間転写体としては、例えば一般的な印刷に用いるブランケットや、これの表面を加工したもの、各種ゴム(NBR、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等)をシート成型したもの等が挙げられる。これらで形成した中間転写体は、交換可能に配置することが好ましい。また、これら材料をベルトやローラ状に直接加工成型してもよい。中でも材料としてシリコーンゴムを用いたものが好ましい。
【0035】
<凝集液付与工程>
本発明の凝集液は、画像形成に用いるインクが含有する色材成分を凝集させるものである。凝集液付与工程では、凝集液を中間転写体の画像形成面に付与する。凝集液は、画像形成に使用するインクの種類によって適宜選択すればよい。例えば、染料インクに対しては高分子凝集剤を用いることが好ましく、顔料インクに対しては金属イオンを含有した凝集液を用いることが好ましい。さらに、染料インクに対して金属イオンと高分子凝集剤とを組み合わせて用いる場合には、インク中に染料と同一色相の顔料を混合させるか、色に影響の少ない白色もしくは透明色の微粒子を混合させることが好ましい。
【0036】
高分子凝集剤としては、例えば、陽イオン性高分子凝集剤、陰イオン性高分子凝集剤、非イオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等が挙げられる。また、金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+及びZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+及びAl3+等の三価の金属イオンが挙げられる。そして、これらの金属イオンを含有する凝集液を塗布する場合には、金属塩水溶液として塗布することが好ましい。金属塩の陰イオンとしては、Cl、NO、SO2−、I、Br、ClO、RCOO(Rはアルキル基)等が挙げられる。また、使用するインクと逆性を持つ材料は、凝集液として用いることができる。例えばインクがアニオン性もしくはアルカリ性であれば、その逆性であるカチオン性もしくは酸性の材料を用いることができる。
【0037】
凝集液は、中間転写体上に形成された親液部に付着しやすく、撥液部に弾かれやすい特性に調整することが好ましく、この調整は例えば界面活性剤を用いて行う。用いる界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。この中から適宜選択すればよいが、例えば凝集液がカチオン性であれば、アニオン性の界面活性剤を用いることは好ましくない。界面活性剤の多くは水中に拡散し、気体との界面に配向して特性を発現することが多い。また、極少量で効果を発現しやすいので、凝集液の組成をほとんど変えずに特性を調整することができる。水系の凝集液は、液特性を調整しやすいため好ましい。
【0038】
本発明では中間転写体の画像形成面には親液部と撥液部とからなるパターンが形成されているので、凝集液を極めて簡単な塗布装置で均一かつ安定に付与することができる。図1では、凝集液付与部としてロールコーター形態の塗布装置(塗布ローラ)3が例示されている。塗布ローラから供給された凝集液は、中間転写体上の親液部の上にのみに保持される。塗布ローラによる付与の場合、凝集液は親液部と撥液部の区別なく接触するが、撥液部の凝集液は弾かれ、画像形成時には大部分の凝集液が親液部に存在する状態となる。塗布ローラによる凝集液の付与量は親液部のパターンに対する凝集液の表面張力に依存するが、付与条件が一定であれば親液部のパターンに応じて自動的に一定量の凝集液が受容されることになる。親液部の微細なパターンにより凝集液の流動性を抑制できるため、画像形成面内で均一な付与が可能となる。
【0039】
その他の凝集液付与部としては、ドクターコート、ダイコート、ワイヤーバーコート、グラビアローラ等の接触式塗布によるものや、スプレーコート、インクジェットヘッドによる液滴吐出のような非接触塗布によるもの等を用いることができる。また、スピンコートや引き上げ塗布、エアナイフによる付与等を行うものであってもよい。これらの付与手段を適宜組み合わせてもよい。
【0040】
<中間画像形成工程>
中間画像形成工程では、色材成分を含有するインクを凝集液が付与された中間転写体の画像形成面に付与して中間画像を形成する。インクとしては、色材成分として染料を含有した染料インクや、顔料を含有した顔料インクが用いられる。特に顔料インクは、凝集液が金属塩を含有している場合、極めて速い反応速度で反応が起こるので、高速画像記録の点で好ましい。
【0041】
染料としては、広く一般的に使われる染料を用いることができる。例えば、C.Iダイレクトブルー6、8、22、34、70、71、76、78、86、142、199。C.Iアシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、117、120、167、229。C.Iダイレクトレッド1、4、17、28、83、227。C.Iアシッドレッド1、4、8、13、14、15、18、21、26、35、37、249、257、289。C.Iダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142。C.Iアシッドイエロー1、3、4、7、11、12、13、14、19、23、25、34、44、71。C.Iフードブラック1、2。C.Iアシッドブラック2、7、24、26、31、52、112、118等が挙げられる。
【0042】
顔料としても、広く一般的に使われる顔料を用いることができる。例えば、C.Iピグメントブルー1、2、3、15:3、16、22。C.Iピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、112、122。C.Iピグメントイエロー1、2、3、13、16、83。カーボンブラックNo2300、900、33、40、52。MA7、8、MCF88(三菱化成製)。RAVEN1255(コロンビア製)。REGAL330R、660R、MOGUL(キャボット製)。Color Black FW1、FW18、S170、S150、Printex35(デグッサ製)等が挙げられる。
【0043】
これらの顔料は、例えば、自己分散タイプ、樹脂分散タイプ、マイクロカプセルタイプ等のいずれでもよい。顔料の分散剤としては、水溶性で、重量平均分子量が1000以上15000以下の分散樹脂が好ましい。具体的には、例えば、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体からなるブロック共重合体あるいはランダム共重合体、また、これらの塩等が挙げられる。
【0044】
また、記録媒体上の最終画像の堅牢性を向上させるために、インク中に水溶性樹脂や水溶性架橋剤を添加してもよい。水溶性樹脂としては上記した分散樹脂等をさらに添加することが好ましい。水溶性架橋剤としては、反応性の遅いオキサゾリンやカルボジイミドがインク安定性の面で好ましい。
【0045】
インクが有機溶剤を含有している場合、有機溶剤の量はインク吐出性や乾燥性を決めるファクターの一つとなる。記録媒体9に転写するときのインクは、ほぼ色材と高沸点有機溶剤だけとなるので、その最適値に設計する。用いる有機溶剤は高沸点で蒸気圧の低い水溶性の材料が好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン等である。また、粘度、表面張力等を調整する成分として、エチルアルコールやイソプロピルアルコール等のアルコール類を添加してもよい。
【0046】
インクを構成する成分の配合比は、インクジェット記録方法や記録ヘッドの吐出力、ノズル径などから吐出可能な範囲、適宜に調製すればよい。色材成分0.1質量%以上10.0質量%以下、水溶性樹脂0.1質量%以上10.0質量%以下、有機溶剤5.0質量%以上40.0質量%以下、界面活性剤0.1質量%以上5.0質量%以下で、残りは純水を用いるような配合をすることが好ましい。
【0047】
インクは、インクジェット記録ヘッドから吐出され、中間転写体の画像形成面の凝集液と接触すると流動性が低下する。このため、ブリーディングやビーディングの発生を抑制できる。また、中間転写体上の凝集液は薄く、かつ均一に制御されているため、画像の乱れも起こりにくい。さらに、中間転写体上に一定間隔に配置されている撥液部の効果により、中間転写体上の中間画像は転写に至るまでの工程でずれが生じにくく、高品質で保持される。
【0048】
インクジェット記録方法は、インクを吐出するために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを用いるもの(サーマルジェット方式)や、機械的エネルギーを用いるもの(ピエゾ方式)等を利用できる。また、オンデマンドタイプだけでなく、コンティニュアスタイプのインクジェット記録方式等を用いてもよい。また、ディスペンサのような方式でもよい。インクジェット記録ヘッドの形態としては、例えば図1の構成では、中間転写体1の軸方向(図面に直交する方向)にインク吐出口を配列してなるラインヘッド形態のものを用いてもよい。また、中間転写体1の接線または周方向の所定範囲に吐出口が配列されたヘッドを用い、これを軸方向に走査しながら記録を行うものでもよい。加えて、画像形成に使用するインクの色に応じた数のヘッドを用いてもよい。
【0049】
形成する中間画像についても制約はなく、文字やイラスト、自然画のほか、単純なパターンや電子回路等の工業パターン等、あらゆるものに対応できる。画像を形成する際は、転写により像が反転することを考慮して、ミラー画像を形成すべくインク吐出を行うことが好ましい。
【0050】
<転写工程>
転写工程では、中間画像が形成された画像形成面に記録媒体を圧着して、中間画像を画像形成面から記録媒体へ転写して画像を形成する。図1では、記録媒体9は加圧ローラ10によって中間転写体1の画像形成面2と接触し、中間画像を転写する。中間転写体上のインク量が多い場合は、転写圧により画像が乱れてしまう場合がある。これを抑制するために、転写前にインク中の水分を減少させ、インクの体積を小さくすることが好ましい。水分を減少させることで、通常の水性インクであれば体積は1/10〜1/5程度にまで減少する。こうすることで、吸収性の小さい、もしくは非吸収性の記録媒体にも良好な画像を形成することが可能となる。また、水分除去により高粘度化したインク(濃縮されたインク)は転写効率にも優れ、中間転写体上に残存するインクも減少させることができる。さらに、薄紙を記録媒体として用いる場合等に発生しやすい、吸水による記録媒体の波打ちも抑制できる。
【0051】
体積を小さくするためには、中間転写体の回転速度を低減することによって水分蒸発の時間を確保する方法もある。記録の高速性が要求する場合を考慮すると、図1の構成のように水分除去促進装置7及び/または加熱ローラ8による水分除去工程を設けることが好ましい。図1では、水分除去促進装置7としては送風機形態のものを、加熱ローラ8としては中空状とした中間転写体1の裏面側に接触して熱伝導により加熱を行うものを例示している。これらに限らず、適宜の形態の水分除去手段を用いることができる。例えば、熱線を放射する熱源を用いるものでもよいし、温風等を送風して蒸発を促進させるものでもよい。
【0052】
図1の構成において、記録媒体上に形成された最終画像に対し、ヒートローラ等を接触させることにより堅牢性や光沢性を付与してもよい。また、図1の構成においては、クリーニングユニット12により、画像転写後の中間転写体の画像形成面を洗浄することで、紙粉などの塵埃や残留したインクが除去される。洗浄を行う手段としては、シャワー状に水をあてながらの水洗もしくは水拭き、水面に接触させる等の直接洗浄、或いは濡らしたモルトンローラを表面に当接させる等の払拭を行う手段を用いることが好ましい。これらの手段は併用してもよい。界面活性剤で洗浄することも可能である。さらに、必要であれば洗浄後に乾いたモルトンローラやゴムワイパーを当接させたり、送風を行ったりすること等により、画像形成面を即時乾燥させてもよい。このときのクリーニング性を良好にする上で、凹凸が少ない画像形成面であることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、転写型インクジェット記録方法の実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本実施例では、転写型インクジェット記録装置として図1に示す装置を用いた。尚、接触角は接触角測定装置(協和界面科学製、商品名;DM−701)で計測した値であり、凝集液の付与量は電子天秤にて重量変化を実測した値である。
【0054】
<実施例1>
(a)中間転写体の画像形成面にパターニングを施す工程
中間転写体の画像形成面に、親液部と撥液部とからなるパターンを形成する。まず、0.4mmのPETフィルム表面に、ゴム硬度40°のシリコーンゴム(信越化学製、商品名;KE−1310)を0.2mmの厚さでコーティングし、これを中間転写体とした。この中間転写体の表面(画像形成面)にポジレジスト(東京応化製、商品名;OFPR−700)を厚み0.5μmになるようスピンコーターで全面塗布してレジスト膜を形成し、乾燥させた。乾燥させたレジスト膜に、図5に示すパターンを有するフォトマスク(親液部が開口部)を介して露光、現像した。後に形成するパターンは、以下の通りとなるようにした。
・親液部(小):直径12μm、ピッチ1200dpi
・親液部(大):直径25μm、ピッチ600dpi
・親液部(小)と親液部(大)の個数比率=4:1
次に、レジストパターンが形成された中間転写体の表面に平行平板型プラズマ処理装置にて、下記条件で表面改質を行った。レジスト開口部はシリコーンゴム表面にプラズマガスが接触することで親液化がなされて親液部となり、レジスト部はレジストがマスクとなるため親液化がなされず撥液部となる。このようにして、中間転写体の画像形成面に、親液部と撥液部とからなる上記パターンを形成した。
【0055】
(表面改質条件)
・使用ガス;流量:air;1000cc/min、N;6000cc/min
・入力電圧:230V
・周波数:10kHz
・処理速度:100mm/min
次いで、レジストパターンに全面露光し、所定の現像工程を経て中間転写体表面からレジストを除去し、画像形成面に段差の無い親液部と撥液部とからなるパターンを有する中間転写体を得た。
【0056】
この中間転写体を支持体としてのアルミニウム製のドラムに巻き付け、図1に示す画像形成装置に固定した。次いで、ロールコーターを用いて中間転写体上に下記組成の凝集液を塗布したところ、凝集液は親液部に選択的に付与された。親液部の凝集液に対する接触角は38°、撥液部の凝集液に対する接触角は68°であった。中間転写体上に付与された凝集液量は1平方インチあたり0.37mgであった。
【0057】
(凝集液組成)
・Ca(NO・4HO:50質量部
・界面活性剤(川研ファインケミカル製、商品名;アセチレノールEH):1質量部
・ジエチレングリコール:9質量部
・純水:40質量部
【0058】
(b)中間画像形成工程
インクジェット装置(ノズル密度1200dpi、吐出量4.8pl、駆動周波数12kHz)にて、凝集液が塗布されている中間転写体上にインクを付与し、ミラー反転させた中間画像(解像度1200dpi)を形成した。インクの組成は下記の通り(色材として各色顔料をそれぞれ含む4色のインク)とした。
【0059】
(インク組成)
・下記顔料:3質量部
ブラック:カーボンブラック(三菱化学製、商品名;MCF88)、シアン:ビグメントブルー15、マゼンタ:ピグメントレッド7、イエロー:ピグメントイエロー74。
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(酸価240、重量平均分子量5000):1質量部
・グリセリン:10質量部
・エチレングリコール:5質量部
・界面活性剤(川研ファインケミカル製、商品名;アセチレノールEH):1質量部
・純水:80質量部
中間画像が中間転写体上に形成された時点で、目視によって画像の乱れ(ブリード)を判断したところ、濃色部(1平方インチあたりのインク付与量20mg)であっても画像の乱れは確認されなかった。また再現解像度は均一で、単色の細線画像や文字部での乱れも確認されなかった。
【0060】
(c)転写工程
中間画像の水分を除去し、流動性を低下させた後に、記録媒体(日本製紙製、商品名;オーローラコート、坪量63g)を加圧ローラにて接触させて中間画像を記録媒体へ転写した。この結果、記録媒体上に高品質な最終画像が記録されたことを目視で確認した。また、転写後の中間転写体表面には残存インクが殆どなく、そのまま次の記録を行っても影響はなかった。
【0061】
<実施例2>
(a)中間転写体の画像形成面にパターニングを施す工程
実施例1と同じ手順にて、図6(α)に示すパターンを有するフォトマスクを用いて、中間転写体の画像形成面に親液部と撥液部とからなる下記のパターンを形成した。
・親液部(小):直径10μm、ピッチ1200dpi
・親液部(大):直径20μm、ピッチ1200dpi
・親液部(小)と親液部(大)の個数比率=83:17
次いで、実施例1と同様な手順で表面に実施例1と同じ組成の凝集液を付与した。実施例1と同様、凝集液は親液部に選択的に付与された。親液部の凝集液に対する接触角は35°、撥液部の凝集液に対する接触角は70°であり、接触角は実施例1の状態とほぼ同じであった。中間転写体上に付与された凝集液量は1平方インチあたり0.34mgであった。
【0062】
(b)中間画像形成工程
実施例1と同様の手順で凝集液が塗布されている中間転写体上に中間画像を形成した。
中間画像が中間転写体上に形成された時点で、目視によって画像の乱れ(ブリード)を判断したところ、濃色部(1平方インチあたりのインク付与量20mg)であっても画像の乱れは確認されなかった。また再現解像度は均一で、単色の細線画像や文字部での乱れも確認されなかった。
【0063】
(c)転写工程
中間画像の水分を除去し、流動性を低下させた後に、記録媒体(日本製紙製、商品名;オーローラコート、坪量63g)を加圧ローラにて接触させて中間画像を記録媒体へ転写した。この結果、記録媒体上に高品質な最終画像が記録されたことを目視で確認した。また、転写後の中間転写体表面には残存インクが殆どなく、そのまま次の記録を行っても影響はなかった。
【0064】
<比較例1>
(a)中間転写体の画像形成面にパターニングを施す工程
実施例1と同じ手順にて、図2に示すパターンを有するフォトマスクを用いて、中間転写体の画像形成面に親液部と撥液部とからなる下記のパターンを形成した。
・親液部:直径12μm、ピッチ1200dpi
次いで、実施例1と同様な手順で表面に実施例1と同じ組成の凝集液を付与した。実施例1と同様、凝集液は親液性パターンを施した親液部に選択的に付与された。親液部の凝集液に対する接触角は38°、撥液部の凝集液に対する接触角は68°であり、接触角は実施例1の状態とほぼ同じであった。中間転写体上に付与された凝集液量は1平方インチあたり0.16mgであった。
【0065】
(b)中間画像形成工程
実施例1と同様の手順で凝集液が塗布されている中間転写体上に中間画像を形成した。
中間画像が中間転写体上に形成された時点で、目視によって画像の乱れ(ブリード)を判断したところ、濃色部(1平方インチあたりのインク付与量20mg)では各色のインクが混ざり、明らかに凝集不足の状態が確認された。
【0066】
<比較例2>
(a)中間転写体の画像形成面にパターニングを施す工程
実施例1と同じ手順にて、図3に示すパターンを有するフォトマスクを用いて、中間転写体の画像形成面に親液部と撥液部とからなる下記のパターンを形成した。
・親液部:直径25μm、ピッチ600dpi
次いで、実施例1と同様な手順で表面に下記組成の凝集液を付与した。実施例1と同様、凝集液は親液性パターンを施した親液部に選択的に付与された。親液部の凝集液に対する接触角は38°、撥液部の凝集液に対する接触角は68°であり、接触角は実施例1の状態とほぼ同じであった。中間転写体上に付与された凝集液量は1平方インチあたり0.38mgであった。
【0067】
(凝集液組成)
・CaCl・2HO:50質量部
・界面活性剤(川研ファインケミカル製、商品名;アセチレノールEH):1質量部
・ジエチレングリコール:9質量部
・純水:40質量部
【0068】
(b)中間画像形成工程
実施例1と同様の手順で凝集液が塗布されている中間転写体上に中間画像を形成した。
中間画像が中間転写体上に形成された時点で、目視によって画像の乱れ(ブリード)を判断したところ、濃色部(1平方インチあたりのインク付与量20mg)であっても画像の乱れは確認されなかった。しかし、再現解像度はばらつき、単色の細線画像は乱れ、文字部でのゆがみやつぶれが多く確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが含有する色材成分を凝集させる凝集液を、親液部と撥液部とからなるパターンを有する中間転写体の画像形成面に付与する凝集液付与工程と、該色材成分を含有するインクを該凝集液が付与された中間転写体の画像形成面に付与して中間画像を形成する中間画像形成工程と、該中間画像が形成された該画像形成面に記録媒体を圧着して該中間画像を該画像形成面から該記録媒体へ転写して画像を形成する転写工程とを有する転写型インクジェット記録方法であって、
前記親液部は、面積が異なる2種類以上の領域で構成されていることを特徴とする転写型インクジェット記録方法。
【請求項2】
画像形成面に親液部と撥液部とからなるパターンを有し、転写型インクジェット記録方法に用いられる中間転写体であって、
前記親液部は、面積が異なる2種類以上の領域で構成されていることを特徴とする中間転写体。
【請求項3】
請求項2に記載の中間転写体と、凝集液を付与する凝集液付与部と、インクを付与するインクジェット記録ヘッドとを有する転写型インクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91454(P2012−91454A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242466(P2010−242466)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】