説明

転写性反射防止用積層ポリエステルフィルム

【課題】 転写時の加熱による剥離力の低下が少ない離型層を有し、LCD、PDP、有機EL等の表示画面上に設けられる転写用反射防止フィルムに用いられるベースフィルムとして好適な転写性反射防止用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シリコーン化合物を含有する離型層を有することを特徴とする転写性反射防止用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写性反射防止用積層ポリエステルフィルムに関するものであり、例えば、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する)、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)等の表示画面上に設けられる転写用反射防止フィルムに用いられるベースフィルムとして好適な積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種ディスプレイの表面に、転写により反射防止能を付与することができる転写性反射防止フィルムが提案されている。例えば、ベースフィルムの上に離型層を積層し、反射防止層、ハードコート層、接着層が積層された転写性の反射防止積層体(反射防止層、ハードコート層、接着層、その他の機能性層等を離型層に積層した一連の反射防止能を有する積層体)が知られている(特許文献1〜3)。これらは被転写物に加熱転写し、ベースフィルムを型層と共に剥離することにより被転写物に反射防止能を付与するために反射防止積層体を形成するものとして使用される。
【0003】
しかし転写の際にかかる熱や圧力により離型層と反射防止積層体との間の離型性が悪くなり、スムーズにベースフィルムが剥がせなかったり、剥離の際に反射防止層にクラックが発生したり、離型層が反射防止積層体の方に転着して反射防止積層体を汚染したりするという問題があった。一般的に、転写時の温度を高くすることにより、反射防止積層体に設けた接着成分が被転写物の表面に浸透し易くなり、接着性が向上するので好ましい状態になるが、同時に離型層の成分が反射防止積層体の表面に浸透してしまう。これは反射防止積層体との接着性を高める、すなわち離型性を劣化させる方向にも働いており、それを防ぐにはより耐熱性の良好な離型層が必要とされていた。また、反射防止層を真空蒸着法やスパッタリング法等の物理的蒸着法で形成した場合には、蒸着時の蒸着材料の持つ高いエネルギーのため離型層と反射防止層間の密着がより強くなるため剥離しにくいものとなることも知られている(特許文献3第4頁段落0018)。
【0004】
これら課題を解決するために、離型層と反射防止層との間に防汚性、耐擦傷性を有し離型性もある機能性層を形成させる方法が提案されているが、機能性層の厚さによっては離型性が低下してしまう場合がある(特許文献3第4頁段落0017)。
【特許文献1】特開平8−248404号公報
【特許文献2】国際公開WO01/092006号公報
【特許文献3】特許第3615171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、転写時の加熱による剥離力の低下が少ない塗布層を有し、LCD、PDP、有機EL等の表示画面上に設けられる転写用反射防止フィルムに用いられるベースフィルムとして好適な積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シリコーン化合物を含有する塗布層を有することを特徴とする転写性反射防止用積層ポリエステルフィルムに存する。
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0009】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0010】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0011】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0012】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0013】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0014】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0015】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0016】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0017】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは25〜100μmの範囲である。
【0018】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0019】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0020】
次に本発明における転写性反射防止用積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。インラインコーティングにより塗布層を形成する場合は、フィルムの製造と共に塗布層を形成することができるため、工程の減少による安価化が可能となる。
【0021】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。その場合、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができ、離型性能を調節できるという利点がある。また塗布層を200℃以上で処理することが可能となり、耐熱性に優れた積層ポリエステルフィルムを作ることが可能であるため、オフラインコーティングより好ましい。一方、オフラインコーティングの場合、製膜設備とは異なる設備で塗布するため、乾燥機は製膜設備で使用する乾燥機と比べて小さいもので対応可能である。そのため、防爆設備や硬化設備等の備え付けが低コストで行え、溶剤系塗布剤も難なく使用でき、塗布可能な化合物の範囲は非常に幅広く、目的に合う塗布剤を選択することが可能である。オフラインコーティングの場合、200℃以上の熱処理を行うと、しわ等の不具合が発生し、使用できないものになってしまうが、材料の選択の幅が広いため、例えば、熱処理温度が低くても耐熱性、離型性、塗布性に優れた材料を選ぶことができる。
【0022】
本発明においては、少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シリコーン化合物を含有する塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0023】
シリコーン化合物を含有する塗布層の場合、200℃以上で熱処理をしなくても、転写時の剥離が軽いという特徴を有している。そのため、インラインコーティング、オフラインコーティングのいずれで設けてもよい。
【0024】
インラインコーティングにより塗布層を設ける場合は、水系シリコーンを使用することが好ましい。シリコーンとしては、シリコーンエマルション、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。また、フィルム製造時に高温をかけることが可能であるため、熱硬化型シリコーンを含有することも可能である。
【0025】
オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合は、硬化型シリコーン樹脂を含有することが好ましい。硬化型シリコーンを主成分とするタイプでも良いし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0026】
前記硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387、KNS−3051、X−62−1496、KNS320A、KNS316、X−62−1574A/B、X−62−7052、X−62−7028A/B、X−62−7619、X−62−7213、KM765、KM766、KM768、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、GE東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56−A2775、XS56−A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、SM3200、SM3030、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SRX357、SRX211、SD7220、LTC750A、LTC760A、SP7259、BY24−468C、SP7248S、BY24−452、SP7268S、SP7265S、LTC1000M、LTC1050L、SYLOFF7900、SYLOFF7198、SYLOFF22A等が例示される。また塗布層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。さらに反射防止積層体の塗布性を向上させるために、非シリコーン系の有機化合物を含有させてもよい。
【0027】
これらのシリコーン化合物は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また硬化を促進させるために触媒と共に用いることも可能である。
【0028】
シリコーン化合物以外の離型剤を含有させても良いし、加熱転写時の耐熱性を向上させるためにメラミン等の熱硬化性化合物を含有させても良い。またポリエステルフィルムと塗布層との密着性を向上させたり、塗布層の面状を良化させたりするためにバインダーポリマーを使用することも可能である。
【0029】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0030】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0031】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては、「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0032】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常200℃以上で3秒間以上を目安として熱処理を行うのが良い。一方、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、50〜200℃で3〜60秒間、好ましくは80〜180℃で3〜60秒間を目安として熱処理を行うのが良い。また、インラインコーティングあるいはオフラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。尚、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。
【0033】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗布量(乾燥後)に制限はないが、通常0.001〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗布量が0.001g/m未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、他方、1g/mを超えて塗布する場合には、滑り性低下等の不具合を生じる場合がある。
【0034】
本発明における塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの片面のみに積層してもよいし、転写時における反射防止積層体とは逆側に加熱圧着体を利用する場合、当該加熱圧着体との離型性をよくするために両面に積層してもよい。また、ポリエステルフィルムの反射防止積層体とは逆側の面は、塵埃付着性を防止するために帯電防止性のある層を積層してもよい。
【0035】
また、本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0036】
塗布層が積層されたポリエステルフィルムの長手方向の熱収縮率は180℃―5分の条件下で5%以下であることが好ましい。長手方向の熱収縮率が上記条件で5%を超える場合は、反射防止積層体の加熱転写時において、シワ等が発生し、ポリエステルフィルムが剥がしにくくなる場合や、ポリエステルフィルムを剥離したときの反射防止積層体の表面状態を悪化させてしまう場合がある。
【0037】
本発明における塗布層の上に形成される反射防止積層体は、反射防止能が付与されていればよく、一般的には反射防止層、ハードコート層、接着層の順に積層されたものであり、塗布層と反射防止層の間に防汚性や耐擦傷性を有する層を設けたり、ハードコート層に接着性の化合物を含有させる、あるいはハードコート性のある接着剤を使用することによりハードコート層と接着層を1層にしたり、反射防止層にハードコート性のあるものを使用したりしても良い。
【0038】
前記の反射防止層は、反射防止性を有するもので、塗布層上に低屈折率層だけの単層構成、低屈折率層および高屈折率層からなる2層構成、あるいは低屈折率層と高屈折率層を組み合わせた3層以上の構成のものでも良い。
【0039】
反射防止層中の低屈折率層に用いられる材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化ケイ素、アルコキシシラン等のケイ素化合物、アクリル系化合物、フッ素原子含有化合物等が挙げられる。
【0040】
反射防止層中の高屈折率層に用いられる材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化インジウムスズ等の金属酸化物、チタンキレート、ジルコニウムキレート等の金属元素を含有する有機化合物、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格等の共役系が多数存在するものや、硫黄等を含有させた高屈折率な有機化合物等が挙げられる。
【0041】
反射防止層に用いられる各層の厚みは、反射防止積層体の構成、反射防止層各層の屈折率により異なるが、一般的には0.05〜0.2μmの範囲であることが好ましい。
【0042】
反射防止層を設ける方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法等のドライコーティング法や、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スピンコート、スプレーコート法等のウェットコーティング法が挙げられる。
【0043】
前記のハードコート層に用いられる材料としては、実用上問題のない程度のハードコート性があれば特に限定されるものではなく、例えば、メラミン化合物、シリコーン化合物等の熱硬化性化合物や、アクリル化合物、シリコーン化合物等の紫外線硬化性化合物等が挙げられる。
【0044】
ハードコート層に接着性を持たせるために、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂等で加熱溶融可能な樹脂を含有させても良いし、紫外線硬化性接着剤を使用することも可能である。
【0045】
ハードコート層を設ける方法は、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スピンコート、スプレーコート法等、従来公知の方法を用いることができる。
【0046】
前記の接着層に用いられる材料としては、接着性に問題なければ特に限定されるものではなく、アクリル化合物、ポリエステル化合物、エポキシ化合物等、従来公知のものを使用することができる。
【0047】
接着層を設ける方法は、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スピンコート、スプレーコート法等、従来公知の方法を用いることができる。
【0048】
また、反射防止積層体に転写したとき最表面、すなわち、塗布層と反射防止層の間に防汚性や耐擦傷性を有する層を設けても良い。材料としては、例えばアルコキシシラン、フッ素原子含有化合物、アクリル化合物等が挙げられる。
【0049】
前記により形成された反射防止積層体を転写する被転写物としては、特に限定されるものではない。プラスチック類やガラス等で形成されたLCD、PDP、有機EL等の各種ディスプレイの表示画面上等、反射防止能を必要とするものに好適に用いられる。
【0050】
前記により形成された反射防止積層体を支持体であるポリエステルフィルムと反対側から被転写物に密着させた状態で、ポリエステルフィルム側または被転写物側から加熱・加圧することにより、被転写物上に反射防止積層体を接着させて、その後ポリエステルフィルムを塗布層と共に剥離することにより、被転写物に反射防止能を付与することができる。
【0051】
転写時の加熱条件は被転写物や反射防止積層体の構成により適宜選択することが好ましいが、例えば、シリコーンゴムやステンレス鋼板を用いて、40〜250℃程度の温度で行うことができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の転写性反射防止用積層ポリエステルフィルムによれば、耐熱性のある塗布層を有しているので、転写の際の離型性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0054】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0055】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0056】
(3)熱収縮率(%)
フィルムを長手方向に幅15mm長さ150mmに切り出し、100mm間隔にマーキングし、無張力状態で180℃の熱風循環式オーブン内で5分間熱処理した。熱処理前のマーキング間隔:a、熱処理後のマーキング間隔:bを測定し、下記式により熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=(a−b)×100/a
【0057】
(4)転写におけるポリエステルフィルムの離型性の評価方法
積層ポリエステルフィルムの塗布層側(塗布層が無い場合は片面上)にγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにより修飾されたコロイダルシリカ90重量部、ジペンタヘキサアクリレート10重量部、紫外線重合開始剤2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン5重量部に、イソプロピルアルコール2000重量部を加えたものからなる液を塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.10μm厚の低屈折率層を形成した。さらにその上に平均粒子径が約50nmの酸化インジウムスズ超微粒子90重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量部、紫外線重合開始剤2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン3重量部からなる固形分を含むイソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エタノール混合溶媒分散液(固形分35重量%)60重量部に、イソプロピルアルコール340重量部を加えたものからなる液を塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.09μm厚の高屈折率層を形成した。さらにその上に加熱接着性を有するハードコート層として、紫外線効果性ハードコート剤(主成分:修飾コロイダルシリカ50重量部、ウレタンアクリレート50重量部)のメチルエチルケトン溶液(固形分50重量%)100重量部に、メタクリル酸メチルポリマー(n≒7000〜7500、東京化成工業(株)製)50重量部とメチルエチルケトン450重量部を加えた液を塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化し、5μm厚の層を形成した。以上のようにして転写用反射防止フィルムを得た。得られた転写用反射防止フィルムの加熱接着性を有するハードコート層がアクリル樹脂板よりなる被転写物に接するようにして表面が鏡面状のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、130℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、積層ポリエステルフィルムを剥がした。剥離強度が軽かった場合を○、剥離強度がやや重い場合を△、剥離強度が重くて剥離しにくい場合や、剥離しない部分がある場合を×とした。
【0058】
(5)転写後の反射防止積層体の表面状態の評価方法
転写におけるポリエステルフィルムの離型性の評価方法(4)と同様にして積層ポリエステルフィルム上に反射防止積層体を形成し、加熱転写を行った。その後、積層ポリエステルフィルムを剥がし、剥離後の反射防止積層体にクラック等の欠陥や塗布層の転写による汚染物が存在しない場合を○、クラック等の欠陥や塗布層の転写による汚染物が存在する場合を×とした。
【0059】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
〈ポリエステルの製造〉
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.03部、平均粒径2.5μmのシリカ粒子を0.06部添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0060】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(塗布液組成)
<塗布液1>
アクリルグラフトシリコーン(竹本油脂株式会社製パイオニン):80重量%
アルキロールメラミン/尿素共重合の架橋性樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製ベッカミン):20重量%
上記塗布剤を水で希釈し、濃度2重量%の塗布液1を作成した。
【0061】
<塗布液2>
シリコーン化合物(信越化学工業株式会社製KS−723A):50重量%
シリコーン化合物(信越化学工業株式会社製KS−723B):45重量%
硬化剤(信越化学工業株式会社製PS−3):5重量%
上記塗布剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度2重量%の塗布液2を作成した。
【0062】
実施例1:
製造したポリエチレンテレフタレートを180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度90℃で縦方向に3.6倍延伸した後、この縦延伸フィルムに塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に4.3倍延伸し、230℃で熱処理を行なった後、横方向に2%弛緩し、塗工量(乾燥後)が0.03g/mの塗布層が形成された厚さ38μmのポリエステルフィルムを得た。
【0063】
でき上がった転写性反射防止用積層ポリエステルフィルムは反射防止積層体の転写において良好な離型性を示し、また反射防止積層体の表面状態はクラック等の欠陥や塗布層の転写による汚染がなかった。このフィルムの特性を下記表1に示す。
【0064】
実施例2:
実施例1において、塗布液1を塗布しなかった以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルム上に塗布液2を塗布量(乾燥後)が0.1g/mとなるようにリバースグラビアコート方式により塗設し、120℃、30秒間熱処理した後に塗布層を有するポリエステルフィルムを得た。このフィルムの特性を下記表1に示す。
【0065】
実施例3:
製造したポリエチレンテレフタレートを180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度90℃で縦方向に3.6倍延伸した後、この縦延伸フィルムに塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に4.3倍延伸し、200℃で熱処理を行なった後、横方向に2%弛緩し、塗工量(乾燥後)が0.03g/mの塗布層が形成された厚さ38μmのポリエステルフィルムを得た。このフィルムの特性を下記表1に示す。
【0066】
比較例1:
実施例1において、塗布層を設けなかった以外は実施例1と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表1に示すとおり、離型性や表面状態が良くなかった。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のフィルムは、例えば、LCD、PDP、有機EL等の表示画面上に設けられる転写用反射防止フィルムに用いられるベースフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シリコーン化合物を含有する塗布層を有することを特徴とする転写性反射防止用積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
180℃で5分における長手方向の熱収縮率が5%以下であることを特徴とする請求項1記載の転写性反射防止用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2008−114430(P2008−114430A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298401(P2006−298401)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】