説明

転写方法

【課題】 転写フィルムの剥離時における剥離角度を安定させ、転写品質を向上させることの可能な転写方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 被転写材表面に転写フィルム2を重ね合せ、それに転写パターンを描画した後、転写フィルムを剥がす転写方法において、転写フィルム2に転写パターンを描画する際、製品の必要範囲11内に所定の製品用転写パターン14を描画するのみならず、必要範囲外の領域に剥離角度安定化用のダミー転写パターン15を描画しておき、転写フィルムを剥がす際に、転写フィルムにダミー転写パターン15による剥離抵抗を作用させ、剥離時の剥離角度の変化を抑制して安定化させ、転写品質を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写方法に関し、特に、転写フィルムを被転写材表面に重ね合わせ、その転写フィルムに転写パターンを描画した後、前記転写フィルムを被転写材から剥がす工程を備えた転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ分野、包装分野、ビジネスフォーム分野などにおいて、転写が行われており、その一つの転写方法として、図3(a)に示すように、ガラス基板等の被転写材1に、基材フィルム2aに熱可塑性樹脂等の転写層2bを積層した構造の転写フィルム2を重ね合せ、その転写フィルム2に、レーザ光3aを用いた描画手段3によって、図4に示すように、所望の転写パターン4を描画して、その部分の転写層を溶融、転写し、その後、図3(b)に示すように、転写フィルム2の端部を吸着若しくはチャック等でつかんでローラ等の剥離手段5に巻き付け、剥がして行く方法が知られている。
【0003】
ところが、この転写方法において、転写フィルム2の剥離時に、転写フィルムの剥離角度が不安定となることがあり、転写の品質が悪化することがあった。このような剥離角度の不安定は、絵柄最外縁での剥離時に生じることが多かった。また、絵柄が多面付けされている場合の絵柄間や、終端部での剥離時に生じることも多かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、転写フィルムの剥離時において剥離角度を安定させ、転写品質を向上させることの可能な転写方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、転写フィルムの剥離時に生じる転写角度を安定させるため、被転写材表面に重ね合わせた転写フィルムに転写パターンを描画する際、製品の必要範囲内に所定の製品用転写パターンを描画するのみならず、その必要範囲外の領域に剥離角度安定化用のダミー転写パターンを描画しておくという構成としたものである。
【0006】
ここで、前記ダミー転写パターンとしては、前記必要範囲を取り囲む領域に、枠状に一定の描画密度で形成されたパターンを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の転写方法では、転写パターンの描画の際に製品用転写パターンのみならず、剥離角度安定化用のダミー転写パターンを描画しているため、転写フィルムの剥離時に、ダミー転写パターンが転写フィルムの剥離に対して適度な抵抗を与えており、このため、製品用転写パターンのみを描画していた場合には、剥離抵抗が急激に変化して剥離角度が不安定になる場合でも、ダミー転写パターンによる抵抗が加わることで、全体的には剥離抵抗の変化の度合いが小さくなり、剥離角度が安定する。かくして、転写品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1(a)、(b)は本発明の実施の形態に係る転写方法の手順を示す概略断面図であり、図3に示す従来例と同一部品には同一符号を付している。本発明の実施の形態に係る転写方法においても、図1(a)に示すように、ガラス基板等の被転写材1に、基材フィルム2aに熱可塑性樹脂等の転写層2bを積層した構造の転写フィルム2を重ね合せ、その転写フィルム2に、レーザ光3aを用いた描画手段3によって転写パターン(詳細は後述する)を描画して、その部分の転写層を溶融、転写し、その後、図1(b)に示すように、転写フィルム2の端部を吸着若しくはチャック等でつかんでローラ等の剥離手段5に巻き付け、剥がして行くという工程によって転写を行う。
【0009】
この転写方法において、被転写材に重ね合わせた状態の転写フィルム2に描画する転写パターンとして、図2に示すように、製品の必要範囲11内に描画した所定の製品用転写パターン14と、その必要範囲11の外側の余白領域に描画した剥離角度安定化用のダミー転写パターン15を用いる。このダミー転写パターン15は、転写フィルム2の剥離方向(矢印Aで示す方向)に関して、少なくとも製品用転写パターン14を描画した領域及びその前後の領域に形成するもので、この実施の形態では、製品の必要範囲11を取り囲む枠状に一定の描画密度で形成されたパターンが使用されている。このように、転写フィルム2に描画する転写パターンとして、製品用転写パターン14とダミー転写用パターン15を用いたことにより、転写フィルム2を剥がしてゆく際、まず、ダミー転写用パターン15の描画領域の剥離が始まり、その後、ダミー転写用パターン15と製品用転写パターン14との描画領域が剥離され、最後にダミー転写用パターン15の描画領域が剥離される。このため、転写フィルム2を剥がしてゆく際に、転写フィルム2には、まず、ダミー転写用パターン15による剥離抵抗Rが作用し、次いでそのダミー転写用パターン15による剥離抵抗Rと製品用転写パターン14による剥離抵抗Sを合せたものが作用し、最後にはダミー転写用パターン15による剥離抵抗Rが作用する。従って、製品用転写パターン14の描画領域の剥離開始時或いは終了時に転写フィルム2に作用する剥離抵抗は、従来のように、ゼロから剥離抵抗Sに急激に増加し、或いは、剥離抵抗Sからゼロに急激に減少するのではなく、或る程度の剥離抵抗Rから剥離抵抗R+Sに増加し、或いは剥離抵抗R+Sから剥離抵抗Rに減少することとなる。
【0010】
このように、ダミー転写用パターン15による剥離抵抗Rを作用させた状態で製品用転写パターン14の剥離を開始し、また終了することで、製品用転写パターン14の描画領域の剥離開始或いは剥離終了時の剥離抵抗の増加或いは減少の度合いが緩和され、剥離角度の急激な変化が抑制される。また、製品用転写パターン14が、多面付けされた複数の絵柄を備えたパターンのように、描画密度が急減に変化しているパターンの場合には、剥離抵抗が急激に増加或いは減少するところがあるが、その場合にも、ダミー転写用パターン15による剥離抵抗Rが常に作用しているため、製品用転写パターン14のみを剥離する場合に比べて剥離抵抗の変化の度合いが小さくなり、剥離角度の急激な変化が抑制される。かくして、転写フィルム2の剥離時の剥離角度が安定し、転写品質が向上する。なお、被転写材1にはダミー転写用パターン15が転写されるが、この転写領域は製品となる領域を外れた余白領域であるので、転写終了後に除去すればよく、何ら支障はない。
【0011】
ここで、ダミー転写用パターン15による剥離抵抗Rは、製品用転写パターン14の剥離抵抗Sの大きさ及びその変化量等によっても異なるが、或る程度の大きさがあれば、製品用転写パターン14の描画領域並びにその前後の領域の剥離時における剥離角度を安定化させて転写品質向上を図ることができ、剥離抵抗Rが大きいほど、転写品質向上の効果は増大する。そこで、ダミー転写用パターン15による剥離抵抗Rの大きさは、製品用転写パターン14の剥離抵抗Sの大きさ及びその変化度合い、及び製品に要求される転写品質等を考慮して定めればよい。ダミー転写用パターン15の剥離抵抗Rのおおよその目安としては、製品用転写パターン14の剥離抵抗Sの最大値の5%程度以上となるように、好ましくは10%以上となるように定めれば剥離角度のかなりの安定化を図ることができる。従って、ダミー転写用パターン15の大きさや転写密度は、このような剥離抵抗Rを確保できるように定めればよい。
【0012】
なお、上記した実施の形態では、図2に示すように、枠状のダミー転写用パターン15を用いているが、本発明に用いるダミー転写用パターン15の形状は枠状に限らず、単に剥離方向Aに延びるように形成された帯状のパターンを用いても良い。また、上記実施の形態では、ダミー転写用パターン15を一定の描画密度としているが、ダミー転写用パターン15内における描画密度は必ずしも一定とする必要はなく適当に変化させてもよい。例えば、製品用転写パターン14の描画密度の変化を考慮し、製品用転写パターン14とダミー転写用パターン15を形成した領域を剥がす際の剥離抵抗の変化を抑制するよう、ダミー転写用パターン15の描画密度に変化を持たせる構成としてもよい。更に、上記した実施の形態では、転写パターンの描画手段としてレーザ光を用いたレーザ方式のものを示したが、描画手段はこれに限らず、熱を用いたサーマルヘッド方式のものでもよい。
【0013】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の転写方法は、被転写材に転写フィルムを重ね合せ、転写パターンを描画した後、その転写フィルムを剥がす構成の転写方法を実施しうる任意の分野に使用可能であり、具体的には、ディスプレイ分野、包装分野、ビジネスフォーム分野等を好適な例として例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に転写方法の工程を示す概略側面図
【図2】転写フィルムに描画したパターンを示す概略平面図
【図3】(a)、(b)は、従来の転写方法の工程を示す概略側面図
【図4】従来の転写方法において転写フィルムに描画したパターンを示す概略平面図
【符号の説明】
【0016】
1 被転写材
2 転写フィルム
2a 基材フィルム
2b 転写層
3 描画手段
3a レーザ光
4 転写パターン
5 剥離手段
11 製品の必要範囲
14 製品用転写パターン
15 ダミー転写パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写層を備えた転写フィルムを被転写材表面に重ね合わせる工程と、該被転写材表面に重ね合わせた前記転写フィルムに対して、製品の必要範囲内に所定の製品用転写パターンを描画し且つ前記必要範囲外の領域に剥離角度安定化用のダミー転写パターンを描画する描画工程と、前記転写フィルムを被転写材から剥がす剥離工程とを備えた転写方法。
【請求項2】
前記ダミー転写パターンが、前記必要範囲を取り囲む領域に、枠状に一定の描画密度で形成されたパターンであることを特徴とする請求項1記載の転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−347097(P2006−347097A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178887(P2005−178887)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】