説明

転写装置および転写方法

【課題】繊維状基材への転写パターンの転写を効率良く行うことができる転写装置を提供する。
【解決手段】型Mに形成されている転写パターンM1を繊維状の基材Wに転写する転写装置1において、転写前の繊維状の基材が巻かれている原反リール11を設置する原反リール設置部3と、原反リール設置部に設置された原反リールから繰り出されている繊維状基材を巻き取る巻き取りリール15を設置する巻き取りリール設置部5と、原反リール設置部に設置された原反リールと巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリールとの間で延伸している繊維状基材を原反リール設置部に設置された原反リールから巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリール側へ移送する基材移送部7と、繊維状基材に、型に形成されている転写パターンを転写する転写部9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置および転写方法に係り、特に、繊維状(紐状)の基材に、型の転写パターンを転写するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子線描画法などで石英基板等に超微細な転写パターンを形成して型(モールド)を作製し、被成型品に前記型を所定の圧力で押圧して、当該型に形成された転写パターンを転写するナノインプリント技術が研究開発されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
ナノオーダーの微細なパターン(転写パターン)を低コストで成型する方法としてリソグラフィ技術を用いたインプリント法が考案されている。この成型法は大別して熱インプリント法とUVインプリント法とに分類される。
【0004】
熱インプリント法では、型を基板に押圧し、熱可塑性ポリマからなる樹脂(熱可塑性樹脂)が十分に流動可能となる温度になるまで加熱して微細パターンに樹脂を流入させたのち、型と樹脂をガラス転移温度以下になるまで冷却し、基板に転写された微細パターンを固化したのち型を引き離す。
【0005】
UVインプリント法では、光を透過できる透明な型を使用し、UV硬化性液に型を押しつけてUV放射光を加える。適当な時間放射光を加えて液を硬化させ微細パターンを転写したのち型を引き離す。
【0006】
上述したインプリント(転写)を、基板ではなく繊維状の基材に行う場合がある。この場合の転写パターンの大きさは、従来と同様か従来よりも大きくなる。
【0007】
繊維状基材に転写パターンを転写することにより、たとえば、繊維状基材に電気配線や液体流路等のパターン形成がなされる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−247191号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Precision Engineering Journal of the International Societies for Precision Engineering and Nanotechnology 25(2001) 192-199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、繊維状基材に型の転写パターンを転写する場合、転写の効率を高めたいという要請がある。
【0011】
本発明は、上記要請に応じてなされたものであり、繊維状基材への転写パターンの転写を効率良く行うことができる転写装置および転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、型(M)に形成されている転写パターン(M1)を繊維状の基材(W)に転写する転写装置(1)において、転写前の繊維状の基材が巻かれている原反リール(11)を設置する原反リール設置部(3)と、前記原反リール設置部に設置された原反リールから繰り出されている繊維状基材を巻き取る巻き取りリール(15)を設置する巻き取りリール設置部(5)と、前記原反リール設置部に設置された原反リールと前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリールとの間で延伸している繊維状基材を前記原反リール設置部に設置された原反リールから前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリール側へ移送する基材移送部(7)と、前記延伸している繊維状基材に、前記型に形成されている転写パターンを転写する転写部(9)とを有する転写装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の転写装置において、前記繊維状基材は、熱可塑性樹脂、ガラスの少なくともいずれかで構成されており、前記型は、第1のローラ(M7)と第2のローラ(M9)とで構成されており、前記転写パターンは、前記第1のローラ、前記第2のローラの少なくともいずれかに形成されている凸部(M11,M13)で構成されており、前記転写部には、前記延伸している繊維状基材を加熱する加熱部が設けられており、前記転写部が、前記加熱部で前記繊維状基材を加熱し、回転中心軸(C8,C9)が前記延伸している繊維状基材の延伸方向と直交している前記各ローラで前記延伸している繊維状基材を挟み込み、前記基材移送部で前記延伸している繊維状基材を所定の速度で移送し、前記各ローラを回転しつつ、前記転写をするように構成されているか、または、前記転写部が、前記加熱部で前記繊維状基材を加熱し、回転中心軸が前記延伸している繊維状基材の延伸方向と平行になっている前記各ローラで前記延伸している繊維状基材を挟み込み、前記基材移送部での前記延伸している繊維状基材の移送を停止したまま、前記各ローラを回転しつつ、前記転写をするように構成されている転写装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の転写装置において、前記転写部における前記各ローラの回転中心軸の延伸方向を、前記延伸している繊維状基材の延伸方向と直交する方向、もしくは、前記延伸している繊維状基材の延伸方向と平行な方向に、設定自在に構成されている転写装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の転写装置において、前記繊維状基材は、熱可塑性樹脂、ガラスの少なくともいずれかで構成されており、前記型は、第1の平板状の型(M3)と、第2の平板状の型(M5)とで構成されており、前記転写パターンは、前記第1の平板状の型の厚さ方向の一方の面、第2の平板状の型の厚さ方向の一方の面の少なくともいずれかに形成されている凸部で構成されており、前記転写部には、前記延伸している繊維状基材を加熱する加熱部が設けられており、前記転写部が、前記加熱部で前記繊維状基材を加熱し、前記第1の平板状の型の一方の面と前記第2の平板状の型の一方の面とをお互いに対向させ、前記基材移送部での前記延伸している繊維状基材の移送を停止したまま、前記各型で前記延伸している繊維状基材を挟み込み、前記第1の平板状の型を前記繊維状基材の延伸方向と直交する方向のうちの一方向に移動し、前記第2の平板状の型を前記繊維状基材の延伸方向と直交する方向のうちの逆方向に移動しつつ、前記転写をするように構成されている転写装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、型に形成されている転写パターンを繊維状の基材に設けられた成型材料(D)に転写する転写装置において、前記転写前の繊維状の基材が巻かれている原反リールを設置する原反リール設置部と、前記原反リール設置部に設置された原反リールから繰り出されている前記繊維状基材を巻き取る巻き取りリールを設置する巻き取りリール設置部と、前記原反リール設置部に設置された原反リールと前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリールとの間で延伸している繊維状基材に所定の張力を付与しつつ、前記延伸している繊維状基材を前記原反リール設置部に設置された原反リールから前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリール側へ移送する基材移送部と、前記延伸している繊維状基材の成型材料に、前記型に形成されている転写パターンを転写する転写部とを有する転写装置である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の転写装置において、前記成形材料は紫外線硬化樹脂であり、前記型は、紫外線が透過する材料で構成されており、前記転写パターンは、紫外線を遮断する薄膜(M21)で構成されているか、もしくは、凸部(M19)で構成されており、前記転写部には、紫外線発生装置が設けられており、前記転写部が、前記型の転写パターンが設けられている部位を前記延伸している繊維状基材の紫外線硬化樹脂に当接させ、この当接している紫外線硬化樹脂の部位に前記紫外線発生装置が発する紫外線を照射して、前記転写をするように構成されている転写装置である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1または請求項5に記載の転写装置において、前記転写部は、複数種類の転写態様から選択された1種類の転写をするように構成されている転写装置である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の転写装置を用いてなされる転写方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、繊維状基材への転写パターンの転写を効率良く行うことができる転写装置および転写方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】転写装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】転写装置の概略構成を示す正面図であって、図1におけるII矢視図である。
【図3】転写装置の転写部の概略構成を示す側面図であって、図1におけるIII−III矢視図である。
【図4】変形例に係る転写部の概略構成を示す側面図であって、図3に対応した図である。
【図5】図3におけるV部の拡大図である。
【図6】図5におけるVI矢視図である。
【図7】図6において、一方のローラとベルチエ素子とを上昇させた状態を示す図である。
【図8】図5において、一対のローラを90°旋回した状態を示す図である。
【図9】図8におけるIX矢視図である。
【図10】図3におけるX部の拡大図である。
【図11】図10におけるXI矢視図である。
【図12】図3におけるXII部の拡大図である。
【図13】変形例に係る転写部の概略構成を示す側面図であって、図5に対応した図である。
【図14】図13におけるXIV矢視図である。
【図15】図13において、ローラを90°旋回した状態を示す図である。
【図16】図15におけるXVI矢視図である。
【図17】図6で示す転写部の各ローラと繊維状基材との位置関係等の詳細を示す図である。
【図18】図8で示す転写部の各ローラと繊維状基材との位置関係等の詳細を示す図である。
【図19】図8で示す転写部の各型と繊維状基材との位置関係等の詳細を示す図である。
【図20】(a)は図15で示す転写部の各ローラと繊維状基材との位置関係等の詳細を示す図であり、(b),(c)は(a)の変形例を示す図である。
【図21】変形例に係る転写部での型と繊維状基材との位置関係等の詳細を示す図であり、(c)は(a)におけるXXI−XXI矢視図である。
【図22】変形例に係る転写部での型と繊維状基材との位置関係等の詳細を示す図であり、(b)は(a)におけるXXII−XXII矢視図である。
【図23】図12で示す転写部の各型と繊維状基材との位置関係等の詳細を示す図であり、(b)は(a)におけるXXIIIB−XXIIIB断面図であり、(c)は(a)におけるXXIIIC−XXIIIC矢視図である。
【図24】図12で示す転写部での転写等の詳細を示す図である。
【図25】図24(c)での変形例を示す図である。
【図26】図24(c)での変形例を示す図である。
【図27】間欠送りユニットの概要を示す図である。
【図28】変形例に係る間欠送りユニットの概要を示す図である。
【図29】図5と図6で示す転写部の概要を示す斜視図である。
【図30】図5と図6で示す転写部のローラの変形例を示す斜視図である。
【図31】図12で示す転写部での転写で生成される生成物の一例を示す図であって、図24(g)で示した生成物に対応したものである。
【図32】図21、図22で示した転写がなされた繊維状基材の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1、図2等で示す転写装置1は、型Mに形成されている転写パターンM1を、小径の繊維状(糸状)の基材Wに転写する装置であって、原反リール設置部3と巻き取りリール設置部5と基材移送部(基材移送手段)7と転写部9とを備えて構成されている。
【0023】
以下、本明細書では、説明の便宜のために、水平な一方向をX軸方向とし、水平な他の一方向であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とする。
【0024】
原反リール設置部3に設置されている原反リール11には、転写前の繊維状基材Wが巻かれている。
【0025】
原反ロール13は、円柱状もしくは円筒状の原反リール(巻き枠)11とこの原反リール11の外周に巻かれている繊維状基材Wとを備えて構成されているものとする。原反リール設置部3に設置された原反リール11(原反ロール13)が、この中心軸C1を中心にして回転することによって、繊維状基材Wが原反リール11から繰り出されるようになっている。
【0026】
巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15は、原反リール設置部3に設置された原反リール11から繰り出されている繊維状基材Wを巻き取るようになっている。
【0027】
巻き取りロール17は、円柱状もしくは円筒状の巻き取りリール(巻き枠)15と、この巻き取りリール15の外周に巻き取られた繊維状基材Wとで構成されているものとする。巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15が、この中心軸C4を回転中心にして回転することによって、繊維状基材Wが巻き取りリール15に巻き取られて巻き取りロール17が生成されるようになっている。
【0028】
繊維状基材Wは、樹脂やガラス等の素材で小径の細長い線状に形成されている。繊維状基材Wの断面(繊維状基材Wの長手方向に対して直交する平面による断面)が、縦方向の寸法と横方向の寸法とがお互いに等しいか僅かに異なっている所定の形状になっている。
【0029】
たとえば、繊維状基材Wの断面は、直径が3mm程度の円形状になっている。また、図示はしていないが繊維状基材Wが円筒状等の筒状に形成されていてもよい。この場合、繊維状基材Wの断面の形状は、リング状(1つの平面上に第1の円とこの第1の円よりも小径で中心が第1の円と一致している第2の円とを描き、第1の円から第2の円を除去した形状)になっている。さらに、筒状の繊維状基材Wの内部空間は空洞になっているが、導電性材料等の材料が入っていてもよい。この場合、導電性材料が、内部空間の総てに充填されている場合もあるし、所定の間隔をあけて設けられている場合もあるし、さらに他の態様で設けられている場合もある。
【0030】
また、繊維状基材Wは、曲げに対して可撓性を備えており、原反リール11や巻き取りリール15に巻かれるようになっている。
【0031】
基材移送部7は、原反リール設置部3に設置された原反リール11と巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15との間で、たとえば、所定の張力が付与されて直線状に延伸している繊維状基材Wを、原反リール設置部3に設置された原反リール11から巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15側へ移送するものである。
【0032】
この移送は、原反リール設置部3に設置された原反リール11から繰り出している繊維状基材Wを、巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15で適宜巻き取ることによってなされるようになっている。
【0033】
詳しく説明すると、基材移送部7によって、たとえば、延伸している繊維状基材Wをこの延伸方向に一定の速度で移動させることができるようになっている。また、基材移送部7によって、たとえば、延伸している繊維状基材Wをこの延伸方向に一定の距離だけ移動した後、この移動後の位置(延伸方向における位置)を維持することができるようになっている。さらに、基材移送部7によって、繊維状基材Wを一定の距離だけ移動した後において、繊維状基材Wの長手方向に延びている中心軸CW(図8等を参照)を回動中心にして、延伸している繊維状基材Wを回動させることができるようになっている。基材移送部7でなされる上述した移送の形態は、詳細は後述するが、繊維状基材Wへの転写の形態によって適宜決められるものである。
【0034】
また、延伸している繊維状基材Wの移送は、すでに理解されるように、巻き取りリール設置部5に設置されている巻き取りリール15を回転させることでなされるようになっている。延伸している繊維状基材Wへの張力の付与は、原反リール設置部3に設置されている原反リール11に回転抵抗を付与することによってなされるようになっている。延伸している繊維状基材Wの移動後(移送後)の位置の維持は、巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15の回転を停止し、原反リール設置部3に設置されている原反リール11に所定の回転トルク(繰り出した繊維状基材Wを巻き取る方向のトルク)を付与することでなされるようになっている。この場合であっては、巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15は、ブレーキ(たとえば、サーボブレーキ)によって回転しないようになっている。
【0035】
原反リール設置部3に設置された原反リール11と巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15との間で延伸している繊維状基材Wは、この長手方向(延伸方向;X軸方向)に移動し、延伸方向と直交する方向には移動しないようになっている。すなわち、延伸している繊維状基材Wは、Y軸方向には移動しないようになっていると共に、Z軸方向にも移動しないようになっている。
【0036】
転写部9では、延伸している繊維状基材Wに、型Mに形成されている転写パターン(たとえば微細な転写パターン)M1を転写するようになっている。転写によって繊維状基材Wに形成されたパターンW1(図29参照)は、型Mの転写パターンM1に対して反転している。
【0037】
転写部9は、原反リール設置部3と巻き取りリール設置部5との間に設けられている。転写部9は、第1の型(たとえば上型)Mが設置される第1の型設置部(たとえば上型設置部)19と、第2の型(たとえば下型)M5が設置される第2の型設置部(下型設置部)21とを備えて構成されている(図10等参照)。そして、上型設置部19に設置されている上型M3と下型設置部21に設置されている下型M5とで、延伸している繊維状基材Wを挟み込み、転写がなされるようになっている。
【0038】
転写部9での転写は、詳細は後述するが、基材移送部7によって、延伸している繊維状基材Wを一定の速度で移送しているとき、または、基材移送部7によって、延伸している繊維状基材Wをこの延伸方向に一定の距離だけ移動しこの移動後の位置を維持しているときになされるようになっている。
【0039】
転写装置1には、複数の転写部9A,9B,9Cが設けられている(図3参照)。そして、転写装置1では、各転写部9A,9B,9Cのうちの1つの転写部を選択することで、複数種類の転写態様から選択された1種類の転写をするように構成されている。
【0040】
なお、図3では、各転写部9A,9B,9Cのそれそれが、枠体53A,53B,53Cを備えているが、図4で示すように、各転写部9A,9B,9Cが1つの枠体53に設けられていてもよい。そして、繊維状基材WをX軸方向に延伸させたままで、各転写部9A,9B,9Cのうちの1つの転写部を選択することができるようにしてもよい。
【0041】
つまり、図4で示す態様では、転写部9Aと転写部9Bとの間、転写部9Bと転写部9Cとの間に障害物(枠体53の一部)が非存在であるので、繊維状基材WをX軸方向に延伸させたままで、各転写部9A,9B,9Cのうちの1つの転写部を選択することができるのである。
【0042】
また、転写装置1では、上述したように、転写部9A,9B,9C等のいずれかを用いて、図5で示す態様の転写、図8示す態様の転写、図10で示す態様の転写、図12で示す態様の転写等のうちの1つの態様の転写をすることができるように構成されている。
【0043】
繊維状基材Wは、より詳しくは、熱可塑性樹脂、ガラスの少なくともいずれか(たとえば、ガラス)で構成されている。
【0044】
転写部9Aで使用される型Mは、第1のローラ(円柱状もしくは円筒状の第1の型;上型M3に相当)M7と第2のローラ(円柱状もしくは円筒状の第2の型;下型M5に相当)M9とで構成されている(図5、図6、図8等参照)。
【0045】
転写パターンM1(図5、図6、図8等では図示せず)は、第1のローラ(上ローラ)M7の外周、第2のローラ(下ローラ)M9の外周の少なくともいずれかに形成されている凸部で構成されている。各ローラM7,M9はニッケル等の金属で構成されている。
【0046】
図5、図8等で示す転写部9Aは、熱インプリント法による転写をするものであり、図5等で示す転写部9Aには、延伸している繊維状基材Wを加熱する加熱部(図示せず)が設けられている。上記加熱部は、たとえば、上ローラM7や下ローラM9の内部に設けられたヒータ、上ローラM7や下ローラM9の近傍(原反リール設置部3側の近傍;繊維状基材Wの移動方向における上流側の近傍)に設けられているヒータの少なくともいずれかで構成されている。
【0047】
転写部9Aは、図5、図6等で示すように、上記加熱部で繊維状基材Wを加熱して軟化させ、各ローラM7,M9で延伸している繊維状基材Wを挟み込み、基材移送部7で延伸している繊維状基材Wを所定の速度で移送し、各ローラM7,M9を回転しつつ、転写をするように構成されている。なお、各ローラM7,M9の回転中心軸C8,C9は、延伸している繊維状基材Wの延伸方向と直交している(Y軸方向に延びている回転中心軸C8,C9が、X軸方向に延伸している繊維状基材Wから離れているので実際に交わっていないが、平面視すると直交している)。
【0048】
また、転写部9Aは、図8、図9等で示すように、上記加熱部で繊維状基材Wを加熱して軟化させ、各ローラM7,M9で延伸している繊維状基材Wを挟み込み、基材移送部7で延伸している繊維状基材Wの位置(繊維状基材Wの延伸方向とこれに直交する方向における位置)を維持したまま(基材移送部7での延伸している繊維状基材Wの移送を停止したまま)、各ローラM7,M9を回転しつつ、転写をするように構成されている。なお、各ローラM7,M9の回転中心軸C8,C9は、延伸している繊維状基材Wの延伸方向と平行になっている。
【0049】
ところで、図8、図9等で示す転写をする場合、延伸している繊維状基材Wをこの中心軸CWまわりに回転させてもよい。すなわち、原反リール設置部3に設置されている原反リール11を、軸C3を中心にして回転し、巻き取りリール設置部5に設置されている巻き取りリール15を、軸C6を中心にして回転してもよい。これによって、繊維状基材Wが捩れることを防止するのである。なお、軸C3と軸C6と軸CWとはX軸方向に延びた1本の直線上に存在している。
【0050】
また、転写部9Aには、上記加熱部で加熱され軟化した繊維状基材Wを冷却するための冷却部が設けられている。上記冷却部で冷却された繊維状基材Wが巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15で巻き取られるようになっている。上記冷却部は、たとえば、ノズル(図示せず)とペルチエ素子23(図6等参照)で構成されている。
【0051】
ノズルは、各ローラM7,M9の近傍で各ローラM7,M9の下流側(繊維状基材Wの移送方向で下流側)に設けられている。そして、冷却された圧縮空気もしくは常温の圧縮空気をノズルから噴射し、繊維状基材Wを冷やすようになっている。
【0052】
ペルチエ素子23は、各ローラM7,M9と巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15との間で、上記ノズルよりも下流側に設けられている。そして、繊維状基材Wに接触しもしくは非接触の状態で、繊維状基材Wを冷やすようになっている。
【0053】
なお、転写部9Aでは、各ローラM7,M9の回転中心軸C8,C9の延伸方向を、延伸している繊維状基材Wの延伸方向と直交する方向(図5〜図7参照参照)、もしくは、延伸している繊維状基材Wの延伸方向と平行な方向(図8、図9参照)に、設定自在に構成されている。
【0054】
ここで、転写装置1についてさらに詳しく説明する。
【0055】
転写装置1は、たとえば、ベース体25を備えている。ベース体25のX軸方向の一方の側には、原反リール設置部3が設けられており、ベース体25のX軸方向の他方の側には、巻き取りリール設置部5が設けられている。
【0056】
原反リール設置部3は、原反リール支持体27と原反リール回動体29と原反リール設置体31とを備えて構成されている。原反リール支持体27は、ベース体25の上部でベース体25に一体的に設けられている。
【0057】
原反リール回動体29は、図示しないベアリング等を介して原反リール支持体27に支持されており、軸C3を回動中心にして、原反リール支持体27に対して回動自在になっている。また、原反リール回動体29は、制御装置39の制御の下、サーボモータ35等のアクチュエータで、たとえば所定の角速度で回動すると共に回動位置決め自在になっている。
【0058】
原反リール設置体31は、図示しないベアリング等を介して原反リール回動体29に支持されており、Y軸方向に延びている軸C1を回転中心にして、原反リール回動体29に対して回転自在になっている。なお、軸C1と軸C3とは、Z軸方向では同じ高さに位置している。また、原反リール設置体31は、制御装置39の制御の下、モータ37等のアクチュエータで、回転するようになっている。
【0059】
また、原反リール回動体29には、原反リール補助ローラ33が設けられている。原反リール補助ローラ33は、転写部9等のところで延伸している繊維状基材Wの位置(Y軸方向とZ軸方向とにおける位置)を維持するために設けられているものである。
【0060】
原反リール補助ローラ33は、原反リール設置体31の下流側に設けられており、図示しないベアリング等を介して原反リール回動体29に支持されており、Y軸方向に延びている軸C2を回転中心にして、原反リール回動体29に対して回転自在になっている。
【0061】
巻き取りリール設置部5は、巻き取りリール支持体41と巻き取りリール回動体43と巻き取りリール設置体45とを備えて構成されている。巻き取りリール支持体41は、ベース体25の上部でベース体25に一体的に設けられている。
【0062】
巻き取りリール回動体43は、図示しないベアリング等を介して巻き取りリール支持体41に支持されており、軸C6を回動中心にして、巻き取りリール支持体41に対して回動自在になっている。また、巻き取りリール回動体43は、制御装置39の制御の下、サーボモータ49等のアクチュエータで、原反リール回動体29と同期して、たとえば所定の角速度で回動すると共に回動位置決め自在になっている。
【0063】
巻き取りリール設置体45は、図示しないベアリング等を介して巻き取りリール回動体43に支持されており、Y軸方向に延びている軸C4を回転中心にして、巻き取りリール回動体43に対して回転自在になっている。なお、軸C4と軸C6とは、Z軸方向では同じ高さに位置している。また、巻き取りリール設置体45は、制御装置39の制御の下、サーボモータ51等のアクチュエータで、たとえば所定の角速度で回動すると共に回転位置決め自在になっている。
【0064】
また、巻き取りリール回動体43には、巻き取りリール補助ローラ47が設けられている。巻き取りリール補助ローラ47は、転写部9等のところで延伸している繊維状基材Wの位置(Y軸方向とZ軸方向とにおける位置)を維持するために設けられているものである。
【0065】
巻き取りリール補助ローラ47は、巻き取りリール設置体45の上流側に設けられており、図示しないベアリング等を介して巻き取りリール回動体43に支持されており、Y軸方向に延びている軸C5を回転中心にして、巻き取りリール回動体43に対して回転自在になっている。
【0066】
そして、繊維状基材Wが原反リール補助ローラ33と巻き取りリール補助ローラ47とに巻き掛けられることによって、転写部9等のところ(原反リール補助ローラ33と巻き取りリール補助ローラ47と間)で延伸している繊維状基材Wの中心軸CWが各軸C3,C6と一致するようになっている。
【0067】
ここで、基材移送部7について詳しく説明する。
【0068】
基材移送部7での、繊維状記載Wへの所定の張力付与と繊維状基材Wの移送(X軸方向への所定速度での移動やX軸方向への所定量の移動)は、モータ37とサーボモータ47とを用いてなされるようになっている。
【0069】
詳しく説明すると、原反リール設置体31は、図示しないパウダークラッチ等のトルク制御クラッチを介してモータ37の回転出力軸に接続されている。巻き取りリール設置体45は、サーボモータ51の回転出力軸に直接的に接続されている。そして、制御装置39の制御の下、モータ37を逆転させ(原反リール設置部3に設置されている原反リール11が繊維状基材Wを巻き取る方向に原反リール設置体31を回転させ)、原反リール11が繊維状基材Wを実際に巻き取らないように、サーボモータ51で、巻き取りリール設置体45にトルクを付与することで、原反リール補助ローラ33と巻き取りリール補助ローラ47との間で延伸している繊維状記載Wに所定の張力が付与されるようになっている。
【0070】
このように繊維状基材Wに所定の張力が付与されている状態で、制御装置39の制御の下、サーボモータ51で、巻き取りリール設置体45を適宜回転させれば、延伸している繊維状基材Wが、巻き取りリール設置部5に一体的に設置されている巻き取りリール15で巻き取られるようになっている。また、制御装置39の制御の下、サーボモータ51の回転出力軸のトルクを適宜の値にすれば、原反リール補助ローラ33と巻き取りリール補助ローラ47との間で延伸している繊維状基材Wが、X軸方向に移動しないようにすることができる。
【0071】
なお、原反リール補助ローラ33と巻き取りリール補助ローラ47との間で延伸している繊維状基材Wの移動速度や移動量を所定の値にするために、たとえば、図示しないロータリエンコーダ等の検出装置が設けられている。上記ロータリエンコーダは、巻き取りリール補助ローラ47の回転速度や回転角度を検出することができるようになっている。
【0072】
そして、上記ロータリエンコーダの検出結果に応じて、制御装置39の制御の下、サーボモータ51の回転出力軸が適宜回転等するようになっている。
【0073】
次に、転写部9Aについてさらに詳しく説明する。
【0074】
転写部9Aは、図5、図6等で示すように、たとえば、枠体53Aと、枠体53Aの内側に設けられている下部テーブル55と下部ローラ支持体57と上部テーブル59と移動体61と上部ローラ支持体63とを備えて構成されている。
【0075】
下部テーブル55は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、枠体53Aの下側で枠体53Aに支持されており、Y軸方向で枠体53Aに対して移動自在になっている。また、下部テーブル55は、制御装置39の制御の下、サーボモータ65等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0076】
下部ローラ支持体57は、図示しないベアリングを介して、下部テーブル55の上側で下部テーブル55に支持されており、軸C7を中心にして回動自在になっている。軸C7は、下部ローラ支持体57(下ローラM9)の中心を通り、Z軸方向に延びている軸である。また、下部ローラ支持体57は、制御装置39の制御の下、サーボモータ67等のアクチュエータで、回動位置決め自在になっている。
【0077】
下部ローラ支持体57には、下ローラM9が設けられている。下ローラM9は、図示しないベアリングを介して、下部ローラ支持体57の上側で下部ローラ支持体57に支持されており、軸C9を中心にして回動自在になっている。軸C9は、下ローラM9の中心を通り、水平方向に延びている軸である。また、軸C9は、下部ローラ支持体57の回動に応じて、Y軸方向(図5、図6参照)もしくはX軸方向(図8、図9参照)に延びるようになっている。また、下ローラM9は、制御装置39の制御の下、サーボモータ69等のアクチュエータで、回転位置決め自在になっている。
【0078】
上部テーブル59は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、枠体53Aの上側で枠体53Aに支持されており、Y軸方向で枠体53Aに対して移動自在になっている。また、上部テーブル59は、制御装置39の制御の下、サーボモータ71等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0079】
移動体61は、図示しないベアリングを介して、上部テーブル59の下側で上部テーブル59に支持されており、Z軸方向で移動自在になっている。また、移動体61は、制御装置39の制御の下、サーボモータ73等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0080】
上部ローラ支持体63は、図示しないベアリングを介して、移動体61の下側で移動体61に支持されており、軸C7を中心にして回動自在になっている。また、上部ローラ支持体63は、制御装置39の制御の下、サーボモータ75等のアクチュエータで、回動位置決め自在になっている。
【0081】
上部ローラ支持体63には、上ローラM7が設けられている。上ローラM9は、下ローラM9の上方に位置していると共に、図示しないベアリングを介して、上部ローラ支持体63の下側で上部ローラ支持体63に支持されており、軸C8を中心にして回動自在になっている。軸C8は、上ローラM7の中心を通り、水平方向に延びている軸である。また、軸C8は軸C9とたとえば同期して、下部ローラ支持体57の回動に応じて、Y軸方向(図5、図6参照)もしくはX軸方向(図8、図9参照)に延びるようになっている。また、上ローラM7は、制御装置39の制御の下、サーボモータ77等のアクチュエータで、たとえば、下ローラM9と同期して、回転位置決め自在になっている。
【0082】
そして、図7で示す状態から、サーボモータ73を適宜駆動することにより、たとえば、図5、6で示すように、繊維状基材Wを上ローラM7と下ローラM9とで挟み込むようになっている。
【0083】
このように繊維状基材Wを上ローラM7と下ローラM9とで挟み込んだ状態で、各サーボモータ51,69,77等を適宜駆動すると、上ローラM7と下ローラM9が回転し、繊維状基材Wが図6の左から右側に所定の速度で移動し(移送され)、上ローラM7や下ローラM9の外周に形成されている転写パターンが、上記加熱部で加熱された繊維状基材Wに転写されるようになっている。
【0084】
なお、このように転写をしている場合においては、繊維状基材Wの移動速度と、上ローラM7と下ローラM9の外周の速度(周速度)とは等しくなっている。また、たとえば下ローラM9を回転駆動するサーボモータ69を削除し、下ローラM9が上ローラM7の回転に応じて回転するようにしてもよい。
【0085】
図5、図6、図7で示す転写についてさらに詳しく説明する。
【0086】
まず、図7で示すように、上ローラM7が上昇して下ローラM9から離れている場合には、図17(a)で示すように、下ローラM9とX軸方向に延伸している繊維状基材Wとの間が僅かな距離L1だけあいており、上ローラM7と繊維状基材Wとの間が距離L2だけあいている。なお、「d1」は、繊維状基材Wの直径である。
【0087】
図7に示す状態から上ローラM7を下降して、図5や図6で示すように、下ローラM9と上ローラM7とで繊維状基材Wを挟み込むと、図17(b)で示すように、各ローラM7,M9で繊維状基材Wを所定の押圧力で挟み込むようになる。
【0088】
図17(b)で示す状態では、繊維状基材WがX軸に対してごく僅かに斜めになっているが、各ローラM7,M9と原反リール補助ローラ33との距離が距離L1に比べて十分に大きく、また、各ローラM7,M9と巻き取りリール補助ローラ47との距離が距離L1に比べて十分に大きいので、繊維状基材Wへの転写が悪影響を受けることはない。
【0089】
なお、下ローラM9をZ軸方向で移動位置決め自在にして、繊維状基材Wを各ローラM7,M9で挟み込むとき、下ローラM9が僅かな距離L1だけ移動し、各ローラM7,M9で繊維状基材Wを挟み込むようにしてもよい。
【0090】
ここで、上ローラM7や下ローラM9の具体例について説明する。
【0091】
図5、図6、図7、図17で示す上ローラM7,下ローラM9は、概ね円柱状に形成されており、上ローラM7の側面、下ローラM9の側面の少なくともいずれかに、ローラM7,M9の直径に対してかなり小さい凸部がたとえば多数設けられているものとする。
【0092】
図5、図6、図7、図17で示す上ローラM7,下ローラM9を用いて転写がされた後の繊維状基材Wは、円柱状もしくは円筒状の形態を保っている。
【0093】
図29で示す下ローラM9は、円柱状に形成されており、下ローラM9には、転写パターンが形成されていない。この場合、下ローラM9は、バックアップロールとして機能する。図29で示す上ローラM7には、転写パターンM1が形成されている。
【0094】
図29で示す上ローラM7の転写パターンM1は、大きな転写パターンM11と小さな転写パターンM13とで構成されている。大きな転写パターンM1は、所定の幅と所定の高さを備えた複数の凸部で形成されている。大きな転写パターンM1は、幅方向が上ローラM7の周方向と一致し、高さ方向が上ローラM7の径方向と一致し、長手方向が上ローラM7の軸C8の延伸方向と一致するようにして、上ローラM7の側面に設けられている。大きな転写パターンM1のそれぞれは、上ローラM7の周方向で所定の間隔をあけて設けられている。
【0095】
小さな転写パターンM13は、上ローラM7の外径に対して十分に小さい多数の凸部で構成されており、大きな転写パターンM1の凸部の頂上に設けられている。
【0096】
図29で示す各ローラM7,M9を用いて転写がされた後の繊維状基材Wには、転写パターンW1として、大きな凹部W3と小さな凹部W5とが形成される。なお、図29で示す下ローラM9を、上ローラM7と同様な形態にしてもよい。
【0097】
図30で示す各ローラM7,M9には、転写パターンM1として凹部(たとえば「V」字状の溝)M15が形成されている。図30で示す各ローラM7,M9を用いて転写がされた後の繊維状基材Wは、この断面がたとえば矩形状になる。
【0098】
図5、図6、図7、図17で示す態様では、既に述べたように、各ローラM7,M9の回転中心軸C8,C9がY軸方向に延びており、繊維状基材Wの延伸方向(X軸方向)と直交しているが、転写部9Aで、図8、図9で示すように、各ローラM7,M9の回転中心軸C8,C9をX方向に延伸させて(繊維状基材Wと平行に延伸させて)、各ローラM7,M9で繊維状基材Wへの転写を行うこともできる。この場合、既に述べように、繊維状基材WのX軸方向(長手方向)への移動はなされていない。
【0099】
図8、図9で示すで示す転写についてさらに詳しく説明する。
【0100】
まず、図18(a)で示すように、Y軸方向では、上ローラM7が繊維状基材Wから離れて繊維状基材Wの右側に位置しており、下ローラM9が繊維状基材Wから離れて繊維状基材Wの左側に位置している。また、Z軸方向では、上ローラM7が繊維状基材Wから離れて繊維状基材Wの上側に位置しており、下ローラM9が繊維状基材Wから離れて繊維状基材Wの下側に位置している。上ローラM7と繊維状基材Wとの間の距離L4は、繊維状基材Wの直径d1とほぼ等しいか僅かに小さくなっている。下ローラM9と繊維状基材Wは、ごく僅かな距離L3だけあいている。
【0101】
図18(a)に示す状態から、上ローラM7を、軸C8を中心に所定の角速度で回転しつつ、上ローラM7を所定の速度で左方向に移動する。これと同時に(同期させて)、下ローラM9を、軸C9を中心に所定の角速度で回転しつつ、下ローラM9を所定の速度で右方向に移動する。
【0102】
各ローラM7,M9を上述したように回転し移動することによって、図18(b)で示すように、各ローラM7,M9で繊維状基材Wが挟まれ、このときに、繊維状基材Wに転写がなされる。この転写がなされた後、各ローラM7,M9を上述したように回転し移動することによって、図18(c)で示す状態になる。
【0103】
なお、図8、図9、図18で示す態様で転写をするときに、繊維状基材Wが捩れるおそれがあるときは、軸CWを中心にして、繊維状基材W(原反リール回動体29、巻き取りリール回動体43)を回動させてもよい。
【0104】
ところで、転写装置1には、転写部9Aの他に、転写部9Bと転写部9Cとが設けられている。転写部9Bと転写部9Cとの詳細については後述する。
【0105】
各転写部9A,9B,9Cは、転写部載置体79の上に載置されてY軸方向に並んで設けられている。なお、転写部9Aの枠体53A、転写部9Bの枠体53B、転写部9Cの枠体53Cは、転写部載置体79に一体的に設けられている。
【0106】
転写部載置体79(各転写部9A,9B,9C)は、X軸方向では、原反リール設置部3と巻き取りリール設置部5との間に設けられている。また、転写部載置体79は、リニアガイドベアリング81を介して、ベース体25の上側でベース体25に支持されており、Y軸方向でベース体25に対して移動自在になっている。そして、転写部載置体79が、制御装置39の制御の下、サーボモータ83等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0107】
これにより、転写装置1では、各転写部9A,9B,9Cのうちの1つの転写部を用いて、繊維状基材Wに転写をすることができるようになっている。
【0108】
ところで、転写装置1に間欠送りユニット85を設けて、基材移送部7を構成してもよい。間欠送りユニット85は、繊維状基材WのX軸方向での移動速度や送り量の制御を、巻き取りリール設置体45のサーボモータ51に代わって、より正確に行うためののものである。
【0109】
間欠送りユニット85は、たとえば、転写部9と巻き取りリール設置部5との間に設けられており、把持体支持体87と下把持体89と上把持体91とを備えて構成されている。
【0110】
把持体支持体87は、ベース体25に一体的に設けられている。下把持体89は、把持体支持体87の上部で、図示しないリニアガイドベアリングを介し把持体支持体87に支持されており、X軸方向で把持体支持体87に対して移動自在になっている。また、下把持体89は、制御装置39の制御の下、リニアモータ等のアクチュエータにより、把持体支持体87に対して移動位置決め自在になっている。
【0111】
上把持体91は、下把持体89の上部で、図示しないリニアガイドベアリングを介して下把持体89に支持されており、Z軸方向で下把持体89に対して移動自在になっている。また、上把持体91は、制御装置39の制御の下、エアーシリンダ等のアクチュエータにより、下把持体89に対して移動自在になっている。
【0112】
間欠送りユニット85の繊維状基材WのX軸方向への移送は、次のようにしてなされる。まず、図27(a)で示すように、各把持体87,89が繊維状基材Wの上流側に位置し、上把持体91が上昇している状態で、上把持体91を下降して、各把持体89,91で繊維状基材Wを把持する(図27(b)参照)。
【0113】
続いて、各把持体89,91を、繊維状基材Wの下流側に所定の距離だけ移動する(図27(c))。この移動によって繊維状基材Wが移送される。移送が終了した後、上把持体91を上昇して、各把持体89,91による繊維状基材Wの把持を解除する。
【0114】
なお、図27に示す間欠送りユニット85では、繊維状基材Wの移送が間欠的になってしまう(各把持体89,91を図27(d)で示す状態から図27(a)で示す状態に戻すとき、繊維状基材Wの移送を停止せざるを得ない)。そこで、図28で示すように、各把持体89,91を2セット等の複数セット、X軸方向に並べて配置し、各把持体89,91のそれぞれを適宜移動して、繊維状基材Wの移送を連続的に行える送りユニット85Aを構成し、間欠送りユニット85の変わりに転写装置1に設けてもよい。
【0115】
また、間欠送りユニット85もしくは送りユニット85Aを、転写部9の上流側に設けてもよい。すなわち、間欠送りユニット85もしくは送りユニット85Aを、転写部9と原反リール補助ローラ33との間に設けてもよい。この場合、間欠送りユニット85もしくは送りユニット85Aと、原反リール設置部3に設置された原反リール11との間で延伸している繊維状基材Wに所定の張力を付与する必要があるので、モータ51の回転出力軸と巻き取りリール設置体45とがパウダークラッチを介して接続されているものとする。
【0116】
次に、転写部9Bについて詳しく説明する。
【0117】
図10、図11等で示す転写部9Bも、転写部9Aと同様にして熱インプリント法による転写をするものであり、図10等で示す転写部9Bには、延伸している繊維状基材Wを加熱する加熱部(図示せず)が設けられている。上記加熱部は、転写部9Aの場合と同様にして、平板状の上型M3や平板状の下型M5の内部に設けられたヒータ等で構成されている。上型M3や下型M5も、ニッケル等の金属で構成されている。
【0118】
なお、転写パターン(図示せず)は、図10、図11で示す上型M3の平面状の下面(厚さ方向の一方の面)、下型M5の平面状の上面(厚さ方向の一方の面)の少なくともいずれかに形成されている凸部(たとえば多数の微細な凸部)で構成されている。
【0119】
そして、転写部9Bでは、上記加熱部で繊維状基材Wを加熱し、上型M3の下面と下型型M3の上面とをお互いに対向させ、基材移送部7で延伸している繊維状基材Wの位置(X軸方向における位置)を維持したまま、各型M3,M5で延伸している繊維状基材Wを挟み込んで押圧し、転写をするように構成されている。
【0120】
なお、上記転写をするときに、上型M3を繊維状基材Wの延伸方向と直交する方向(Y軸方向)のうちの一方向に移動し、下型M5をY軸方向のうちの逆方向に移動するようになっている。
【0121】
ところで、図10、図11等で示す転写をする場合、図8や図9で示した場合と同様にして、延伸している繊維状基材Wをこの中心軸CWまわりに回転させてもよい。また、転写部9Bには、転写部9Aの場合と同様にして、上記加熱部で加熱され軟化した繊維状基材Wを冷却するための冷却部が設けられている。
【0122】
転写部9Bについてさらに詳しく説明する。
【0123】
転写部9Bは、図10、図11等で示すように、たとえば、枠体53Bと、枠体53Bの内側に設けられている下部テーブル93と上部テーブル95と移動体97とを備えて構成されている。
【0124】
下部テーブル93は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、枠体53Bの下側で枠体53Bに支持されており、Y軸方向で枠体53Bに対して移動自在になっている。また、下部テーブル93は、制御装置39の制御の下、サーボモータ99等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0125】
上部テーブル95は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、枠体53Bの上側で枠体53Bに支持されており、Y軸方向で枠体53Bに対して移動自在になっている。また、上部テーブル95は、制御装置39の制御の下、サーボモータ101等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0126】
移動体97は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、上部テーブル95の下側で上部テーブル95に支持されており、Z軸方向で上部テーブル95に対して移動自在になっている。また、移動体97は、制御装置39の制御の下、サーボモータ103等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0127】
移動体97の下端部には、上型M3が一体的に設置されるようになっており、下部テーブル93の上端部には、下型M5が一体的に設置されるようになっている。
【0128】
そして、サーボモータ103を適宜駆動することにより、たとえば、図10、図11で示すように、繊維状基材Wを上型M3と下型M5とで挟み込むようになっている。
【0129】
このように繊維状基材Wを上型M3と下型M5とで挟み込んだ状態で、各サーボモータ99,101を適宜駆動することで、繊維状基材WのX軸方向への移動が停止されている状態で、上型M3と下型M5とによる上述した転写がなされるようになっている。
【0130】
図10、図11で示す転写についてさらに詳しく説明する。
【0131】
まず、上型M3が上昇して下型M5から離れている場合には、図19(a)で示すように、Y軸方向では、上型M3が繊維状基材Wから離れて繊維状基材Wの右側に位置しており、下型M5が繊維状基材Wから離れて繊維状基材Wの左側に位置している。また、Z軸方向では、上型M3が繊維状基材Wから離れて繊維状基材Wの上側に位置しており、下型M5が繊維状基材Wから僅かな距離L5だけ離れて繊維状基材Wの下側に位置している。「d1」は、繊維状基材Wの直径である。
【0132】
図19(a)に示す状態から、上型M3を所定の距離だけ左側に移動し、下型M5を所定の距離だけ右側に移動すると、図19(b)に示す状態になる。図19(b)に示す状態では、Y軸方向で、上型M3の左側の部位が繊維状基材Wの真上に位置しており、下型M5の右側の部位が繊維状基材Wの真下に位置している。
【0133】
図19(b)に示す状態から、上型M3を下降して、各型M3,M5で繊維状基材Wを所定の押圧力で挟み込む。このときの各型M3,M5間の寸法L6は、繊維状基材Wの直径d1とほぼ等しいか僅かに小さくなっている。
【0134】
各型M3,M5で繊維状基材Wを挟み込んでいる状態で、上型M3を左側に所定の速度で移動し、下型M5を右側に所定の速度で上型M3と同期させて、図19(d)で示す状態になるまで移動する。これにより型M3,M5に形成さている転写パターンが繊維状基材Wに転写されるようになっている。
【0135】
なお、図10、図11、図19で示す態様で転写をするときに、繊維状基材Wが捩れるおそれがあるときは、軸CWを中心にして、繊維状基材W(原反リール回動体29、巻き取りリール回動体43)を回動させてもよい。
【0136】
ところで、転写部9A,9Bに変えてもしくは加えて、他の態様の転写(たとえば熱インプリント法による転写)をするようにしてもよい。
【0137】
たとえば、図13〜図16で示すように、上ローラM7と下型M5とで(下ローラM9と上型M3でもよい)繊維状基材Wを挟み込み、繊維状基材Wへの転写を行ってもよい。図14、図16では、繊維状基材Wが、左から右に移送されつつ転写がなされる。
【0138】
図15、図16で示す転写の態様において、図20(a)で示すように、下型M5を固定しておき、上ローラM7を回転すると共に移動して転写をしてもよい。
【0139】
また、図15、図16で示す転写の態様において、図20(b)で示すように、上ローラM7を回転し移動すると共に、下型M5を移動して転写をしてもよい。このときに、繊維状基材Wが捩れることを防止するために、繊維状基材Wを、軸CWを中心にして回動させてもよい。
【0140】
また、図15、図16、図20(a)で示す転写の態様において、図20(c)で示すように、下型M5にV溝M17を設け、このV溝W17に繊維状基材Wを入り込ませて、転写をするようにしてもよい。
【0141】
また、図21で示すように、上型M3と下型M5とで繊維状基材Wを挟み込み、繊維状基材Wに小径部W7を形成するようにしてもよい。
【0142】
さらに、図22で示すように、上型M3と下型M5とに凸部M19を設け、上型M3と下型M5とを移動して、各凸部M19で、繊維状基材Wの小径部W7を形成するようにしてもよい。
【0143】
このようにして小径部W7が形成された繊維状基材Wは、たとえば、図32で示すようにして、織物状部材の横糸状部材として使用される。図32で示す縦糸状部材は、たとえば図29で示す転写により生成された繊維状基材Wである。
【0144】
次に、転写部9Cについて詳しく説明する。
【0145】
転写部9Cは、UVインプリント法による転写をするものである。転写部9Cを使用した転写装置1は、型Mに形成されている転写パターンM1を成型材料(たとえば紫外線硬化樹脂)Dに転写する装置である。紫外線硬化樹脂Dは、小径の繊維状基材Wに設けられている。
【0146】
さらに説明すると、紫外線硬化樹脂Dは、たとえば、繊維状基材Wの外周の総てを覆うように設けられている。すなわち、繊維状基材Wが細長い円柱状もしくは円筒状に形成されている場合にあっては、紫外線硬化樹脂Dは、円筒状になって繊維状基材Wを覆っている。そして、紫外線硬化樹脂Dの内周が繊維状基材Wの外周に密着している。
【0147】
転写装置1には、図12で示すように、硬化前の紫外線硬化樹脂Dを繊維状基材Wに設けるための紫外線硬化樹脂供給装置(成型材料設置部)105と、未硬化の紫外線硬化樹脂Dを繊維状基材Wから除去するための紫外線硬化樹脂除去装置107とが設けられている。
【0148】
紫外線硬化樹脂供給装置105は、転写部9C(型M)の上流側に設けられており、紫外線硬化樹脂除去装置107は、転写部9C(型M)の下流側に設けられている。
【0149】
転写部9Cは、図12等で示すように、たとえば、枠体53C内側に設けられている第1の下部テーブル109と第2の下部テーブル111と第1の回動体113と第2の回動体115と上部テーブル117と移動体119とを備えて構成されている。
【0150】
第1の下部テーブル109は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、枠体53Cの下側で枠体53Cに支持されており、Y軸方向で枠体53Cに対して移動自在になっている。また、第1の下部テーブル109は、制御装置39の制御の下、サーボモータ121等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0151】
第2の下部テーブル111は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、第1の下部テーブル109の上側で第1の下部テーブル109に支持されており、X軸方向で第1の下部テーブル109に対して移動自在になっている。また、第2の下部テーブル111は、制御装置39の制御の下、サーボモータ123等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0152】
第1の回動体113は、図示しないベアリングを介して、第2の下部テーブル111の上側で第2の下部テーブル111に支持されており、軸C10を中心にして回動自在になっている。軸C10は、第2の下部テーブル111の中心を通り、Z軸方向に延びている軸である。また、第1の回動体113は、制御装置39の制御の下、サーボモータ125等のアクチュエータで、回動位置決め自在になっている。
【0153】
第2の回動体115は、球面軸受け131を備えたジンバル機構133を介して、第1の回動体113の上側で第1の回動体113に支持されている。第2の回動体115の平面状の上面に下型M5が一体的に設置されるようになっている。なお、シンバル機構133が設けられていることにより、第2の回動体115の平面状の上面は常態では図示しない弾性体等によって水平に展開しているが、転写により第2の回動体115に外力が加わったときには、第2の回動体115が適宜僅かに揺動し、第2の回動体115の平面状の上面が僅かに傾くようになっている。
【0154】
上部テーブル117は、図示しないリニアガイドベアリングを介して、枠体53Cの上側で枠体53Cに一体的に設けられている。
【0155】
移動体119は、図示しないベアリングを介して、上部テーブル117の下側で上部テーブル117に支持されており、Z軸方向で移動自在になっている。また、移動体119は、制御装置39の制御の下、サーボモータ127等のアクチュエータで、移動位置決め自在になっている。
【0156】
上型M3は、移動体119の下部で移動体119に一体的に設置されるようになっている。なお、移動体119に設置された上型M3は、第2の回動体115に設置された下型M5の上方に位置している。
【0157】
また、転写部9Cには、カメラ129と紫外線発生装置(図12では図示せず)とが設けられている。カメラ129は、たとえば、枠体53Cの上側に設けられており、水平方向で枠体53Cに移動位置決め自在になっている。
【0158】
また、上型M3と下型M5とのそれぞれには、アイマーク(図示せず)が設けられており、カメラ129でアイマークを撮影することができるようになっている。
【0159】
そして、カメラ129でのアイマークの撮影結果に応じて、制御装置39の制御の下、各サーボモータ121,123,125を適宜駆動し、転写前に上型M3に対する下型M5の位置決めをすることができるようになっている。
【0160】
各型M3,M5は、紫外線が透過する材料(たとえば石英ガラス)で構成されており、転写パターンM1は、紫外線を遮断するクロム等の金属の薄膜(厚さがほとんど無い遮光膜)M21で構成されている。
【0161】
そして、転写部9Cでは、型M3,M5の転写パターンM1(遮光膜M21)が設けられている部位(半円柱状を2つ組み合わせた円柱状の部位)を延伸している繊維状基材Wの紫外線硬化樹脂Dに当接させ、この当接している紫外線硬化樹脂Dの部位に上記紫外線発生装置が発する紫外線を照射して、転写をするように構成されている。
【0162】
図24(繊維状基材Wや型M3,M5をX軸方向から見た図)を用いて詳しく説明する。
【0163】
図24(a)で示すように、繊維状基材Wの外周には、クロム等の金属の薄膜W9が設けられている。
【0164】
図24(a)で示す繊維状基材Wに、基材移送部7で繊維状基材Wを移送しつつ、紫外線硬化樹脂供給装置105を用いて硬化前の紫外線硬化樹脂Dを設ける(図24(b)参照)。
【0165】
続いて、繊維状基材Wの移送を停止し、矩形状(直方体状)の上型M3と矩形状(直方体状)の下型M5とで、紫外線硬化樹脂Dと繊維状基材Wとを挟み込み、上記紫外線発生装置を構成するLED135が発する紫外線を、紫外線硬化樹脂Dに照射する。そして、紫外線硬化樹脂Dの一部を硬化させる(図24(c)参照)。なお、図24(c)では、LED135を型M3,M5の全周に配置してあるが、一部(たとえば、型M3の上辺部と、型M5の下辺部)にのみ設けた構成であってもよい。
【0166】
また、図25で示すように、型M3,M5を円形状(円筒状)に形成し、LED135を、型M3,M5を囲むように放射状に配置してもよい。
【0167】
型M3,M5を通して紫外線硬化樹脂Dに紫外線を照射することにより、図24で示すように、紫外線硬化樹脂Dにおいて、硬化した部位(硬化部)D1と硬化しない部位(非硬化部)D3とが形成される。硬化部D1は、紫外線が照射されて硬化した部位であり、非硬化部D3は、遮光膜M21に邪魔されて硬化しなかった部位である。
【0168】
続いて、基材移送部7で繊維状基材Wを移送しつつ、紫外線硬化樹脂除去装置107で非硬化部D3を除去すると、繊維状基材Wの外周に硬化部D1が残る(図24(e)参照)。紫外線硬化樹脂除去装置107での非硬化部D3の除去は、たとえば、非硬化部D3を溶剤で溶かすことでなされる。
【0169】
図24(e)で示す工程までが、転写装置1でなされる。図24(e)で示す、硬化部D1が残っている繊維状基材Wは、巻き取りリール設置部5に設置された巻き取りリール15で巻き取れる。
【0170】
巻き取りリール15で巻き取れた、硬化部D1が残っている繊維状基材Wは、たとえば、巻き取りリール15から繰り出されて、転写装置1とは別の装置で、図24(f),(g)で示す処理がさなれる。
【0171】
図24(f)では、硬化部D1をマクキング部材として、薄膜W9をエッチングしている。図24(g)では、硬化部D1を除去している。これにより、外周に薄膜W9に基づいた所定のパターンが形成された繊維状基材Wが生成される。この繊維状基材を所定の長さに切断することで、図31で示すような所定の回路W11が形成された円筒状部材が生成される。
【0172】
ところで、紫外線硬化樹脂供給装置105、紫外線硬化樹脂除去装置107の少なくともいずれかを除去し、繊維状基材Wへの硬化前の紫外線硬化樹脂Dの設置や繊維状基材Wから非硬化部D3の除去を、転写装置以外の装置で行うように構成してもよい。
【0173】
また、転写部9C、型M3,M5の転写パターンM1を、凸部で構成してあってもよい(図26参照)。転写パターンM1を凸部で構成した場合、型Mが2分割(上型M3と下型M5)であると、離型するとき(型Mを転写後の繊維状基材Wや紫外線硬化樹脂Dから離すとき)、硬化した紫外線硬化樹脂Dの凸部が型Mの転写パターンM1に引っかかってしまう場合がある。このような場合には、図26に破線で示すように、型Mを3分割以上の複数に分割すればよい。たとえば、型Mを型M23と型M25と型M27と型M29との4つに分割すればよい。
【0174】
ここで、転写装置1の動作について説明する。
【0175】
まず、初期状態として、原反リール設置部3に原反ロール13が設置されており、巻き取りリール設置部5に巻き取りリール15が設置されていて、原反ロール13と巻き取りリール15の間で繊維状基材WがX軸方向に延伸しているものとする。
【0176】
上記初期状態において、いずれの形態を転写を行うかに応じて、各転写部9A,9B,Cのいずれかが選択される。
【0177】
転写部9Aを用い、しかも、図5、図6に示す態様の転写が選択された場合には、基材移送部7で繊維状基材Wを所定の速度で移動させつつ各ローラM7,M9を回転させて、転写を行う。
【0178】
転写部9Aを用い、しかも、図8、図9に示す態様の転写が選択された場合、転写部9Bを用いた転写が選択された場合、転写部9Cを用いた転写が選択された場合には、基材移送部7で繊維状基材Wの移送を停止しておいて、転写を行う。
【0179】
転写装置1によれば、原反リール11と巻き取りリール15との間に繊維状基材Wを延伸させ、この延伸している繊維状基材Wに転写パターンM1を転写するように構成されているので、繊維状基材Wの長手方向に沿った転写をほぼ連続的に行うことができ、繊維状基材Wへの転写パターンM1の転写を効率良く行うことができる。
【0180】
また、転写装置1によれば、図5、図6等で示すように、一対のローラM7,M9(回転中心軸C8,C9がY軸方向に延伸しているローラ)で繊維状基材Wを挟み込み、ローラM7,M9を連続的に回転し繊維状基材Wを連続的に移送しつつ転写をするので、一層効率の良い転写をすることができる。
【0181】
また、転写装置1によれば、図8、図9等で示すように、一対のローラM7,M9(回転中心軸C8,C9がX軸向に延伸しているローラ)で繊維状基材Wを挟み込み、繊維状基材Wの移送を停止したまま、各ローラM7,M9を回転しつつ転写をするので、繊維状基材Wの所定の長さの部位(ローラM7,M9が当接する部位;ローラM7,M9の長さとほぼ等しいか僅かに短い長さの部位)の外周のほぼ全周に、ローラM7,M9の外周に形成されている転写パターンM1を転写することができる。
【0182】
また、転写装置1によれば、ローラM7,M9の回転中心軸C8,C9の延伸方向を設定自在(変更自在)に構成されているので、転写装置1での転写態様の変更が容易になる。
【0183】
また、転写装置1によれば、図10等で示すように、型Mが一対の平板状の型M3,M5で構成されており、一対の型M3,M5で繊維状基材Wを挟み込み、繊維状基材Wの移送を停止したまま、一対の型M3,M5をお互いに異なる方向に移動しつつ転写をするように構成されるので、前述した場合と同様にして、繊維状基材Wの外周のほぼ全周に、型Mに形成されている転写パターンM1を転写することができる。また、型Mが平板状に形成されているので、型へMの転写パターンM1の形成が容易になる。
【0184】
また、転写装置1によれば、図12等で示すように、型Mに形成されている転写パターンM1を繊維状基材Wに設けられた成型材料Dに転写する場合においても、上述した場合と同様にして、効率良く転写をすることができる。
【0185】
また、転写装置1によれば、転写部9が、複数種類の転写態様から選択された1種類の転写をするように構成されているので、転写装置1での転写態様の変更が容易になる。
【0186】
なお、上記説明では、原反リール設置部3に設置されている原反リール11と巻き取りリール設置部5に設置されている巻き取りリール15との間で、繊維状基材Wが水平方向であるX軸方向に延伸しており、この延伸している繊維状基材Wを、繊維状基材Wの上方に位置している上型M3(M7)と繊維状基材Wの下方に位置している下型M5(M9)とで挟み込んで転写をしている。
【0187】
このような態様に代えて、水平方向に延伸している繊維状基材Wを、繊維状基材Wの一方の側(たとえば、繊維状基材Wの横方向の一方の側である左側)に位置している第1の型と繊維状基材Wの他方の側(たとえば、繊維状基材Wの横方向の他方の側である左側)に位置している第2の型とで挟み込んで転写をするようにしてもよい。
【0188】
さらに、上述した態様に代えて、原反リール設置部3に設置されている原反リール11と巻き取りリール設置部5に設置されている巻き取りリール15との間で、繊維状基材W
を鉛直方向であるZ軸軸方向(斜め方向でもよい。)に延伸させ、この延伸している繊維状基材Wを、繊維状基材Wの一方の側に位置している第1の型と繊維状基材Wの他方に位置している第2の型とで挟み込んで転写をするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0189】
1 転写装置
3 原反リール設置部
5 巻き取りリール設置部
7 基材移送部
9、9A、9B、9C 転写部
11 原反リール
15 巻き取りリール
C8、C9 回転中心軸
D 成型材料
M 型
M1 転写パターン
M3 上型
M5 下型
M7 上ローラ
M9 下ローラ
M11、M13、M19 凸部
M21 薄膜
W 繊維状基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型に形成されている転写パターンを繊維状の基材に転写する転写装置において、
転写前の繊維状の基材が巻かれている原反リールを設置する原反リール設置部と、
前記原反リール設置部に設置された原反リールから繰り出されている繊維状基材を巻き取る巻き取りリールを設置する巻き取りリール設置部と、
前記原反リール設置部に設置された原反リールと前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリールとの間で延伸している繊維状基材を前記原反リール設置部に設置された原反リールから前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリール側へ移送する基材移送部と、
前記延伸している繊維状基材に、前記型に形成されている転写パターンを転写する転写部と、
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記繊維状基材は、熱可塑性樹脂、ガラスの少なくともいずれかで構成されており、
前記型は、第1のローラと第2のローラとで構成されており、
前記転写パターンは、前記第1のローラ、前記第2のローラの少なくともいずれかに形成されている凸部で構成されており、
前記転写部には、前記延伸している繊維状基材を加熱する加熱部が設けられており、
前記転写部が、前記加熱部で前記繊維状基材を加熱し、回転中心軸が前記延伸している繊維状基材の延伸方向と直交している前記各ローラで前記延伸している繊維状基材を挟み込み、前記基材移送部で前記延伸している繊維状基材を所定の速度で移送し、前記各ローラを回転しつつ、前記転写をするように構成されているか、
または、前記転写部が、前記加熱部で前記繊維状基材を加熱し、回転中心軸が前記延伸している繊維状基材の延伸方向と平行になっている前記各ローラで前記延伸している繊維状基材を挟み込み、前記基材移送部での前記延伸している繊維状基材の移送を停止したまま、前記各ローラを回転しつつ、前記転写をするように構成されていることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2に記載の転写装置において、
前記転写部における前記各ローラの回転中心軸の延伸方向を、前記延伸している繊維状基材の延伸方向と直交する方向、もしくは、前記延伸している繊維状基材の延伸方向と平行な方向に、設定自在に構成されていることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1に記載の転写装置において、
前記繊維状基材は、熱可塑性樹脂、ガラスの少なくともいずれかで構成されており、
前記型は、第1の平板状の型と、第2の平板状の型とで構成されており、
前記転写パターンは、前記第1の平板状の型の厚さ方向の一方の面、第2の平板状の型の厚さ方向の一方の面の少なくともいずれかに形成されている凸部で構成されており、
前記転写部には、前記延伸している繊維状基材を加熱する加熱部が設けられており、
前記転写部が、前記加熱部で前記繊維状基材を加熱し、前記第1の平板状の型の一方の面と前記第2の平板状の型の一方の面とをお互いに対向させ、前記基材移送部での前記延伸している繊維状基材の移送を停止したまま、前記各型で前記延伸している繊維状基材を挟み込み、前記第1の平板状の型を前記繊維状基材の延伸方向と直交する方向のうちの一方向に移動し、前記第2の平板状の型を前記繊維状基材の延伸方向と直交する方向のうちの逆方向に移動しつつ、前記転写をするように構成されていることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
型に形成されている転写パターンを繊維状の基材に設けられた成型材料に転写する転写装置において、
前記転写前の繊維状の基材が巻かれている原反リールを設置する原反リール設置部と、
前記原反リール設置部に設置された原反リールから繰り出されている前記繊維状基材を巻き取る巻き取りリールを設置する巻き取りリール設置部と、
前記原反リール設置部に設置された原反リールと前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリールとの間で延伸している繊維状基材に所定の張力を付与しつつ、前記延伸している繊維状基材を前記原反リール設置部に設置された原反リールから前記巻き取りリール設置部に設置された巻き取りリール側へ移送する基材移送部と、
前記延伸している繊維状基材の成型材料に、前記型に形成されている転写パターンを転写する転写部と、
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項5に記載の転写装置において、
前記成形材料は紫外線硬化樹脂であり、
前記型は、紫外線が透過する材料で構成されており、
前記転写パターンは、紫外線を遮断する薄膜で構成されているか、もしくは、凸部で構成されており、
前記転写部には、紫外線発生装置が設けられており、
前記転写部が、前記型の転写パターンが設けられている部位を前記延伸している繊維状基材の紫外線硬化樹脂に当接させ、この当接している紫外線硬化樹脂の部位に前記紫外線発生装置が発する紫外線を照射して、前記転写をするように構成されていることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1または請求項5に記載の転写装置において、
前記転写部は、複数種類の転写態様から選択された1種類の転写をするように構成されていることを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の転写装置を用いてなされることを特徴とする転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−61817(P2012−61817A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209760(P2010−209760)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新技術イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】