説明

転写装置

【課題】アンダーカット部を有するワークに対応でき、かつアンダーカット部を有していないワークについては短時間で転写することができる転写装置を提供する。
【解決手段】ワークが載置される下側チャンバ部材22、下側チャンバ部材22の上に転写シートFを挟んで載置される上側チャンバ部材21、転写シートFの加熱手段、及び転写シートFで仕切られた上側チャンバ部材21内の空間及び下側チャンバ部材22内の空間の気体状態をコントロールすることにより転写シートFをワークの表面に密着させる密着手段を有する第1装置10と、ラバー部材55、ラバー部材55の昇降手段26、及びラバー部材55の加熱手段54を有し、第1装置10により転写シートFが密着されたワークをラバー部材55で押し付ける第2装置50と、下側チャンバ部材22を第1装置10から第2装置50に移動させる移動手段60とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表面に転写シートの絵柄層を転写する転写装置に関し、転写の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ワークの表面に転写シートの絵柄層を転写する転写装置として、例えば、特許文献1には、転写シートが上面に載置されたワークを加熱されたラバー部材で上方から押し付けることにより、転写シートの絵柄層をワークの表面に転写する転写装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、ワークが載置される下側チャンバ部材、該下側チャンバ部材の上に前記転写シートを挟んで載置される上側チャンバ部材、両チャンバ部材間に挟まれた前記転写シートを加熱する加熱手段、及び前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間を真空状態とする真空引き手段を有し、加熱された転写シートを上側チャンバ部材内の空間の気体の圧力によりワークの表面に密着させて、転写シートの絵柄層をワークの表面に転写する転写装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−120817号公報
【特許文献2】特開2007−168121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のものにおいては、転写できるワークの形状に制約がある。すなわち、特許文献1に記載のものはワークをラバー部材で上方から押し付ける構造とされているので、ワークが例えばアンダーカット部を有している場合、このアンダーカット部にラバー部材を当接させることができず、したがって、アンダーカット部に転写することができないのである。
【0006】
また、特許文献2に記載のものにおいては、上側チャンバ部材内の空間の気体の圧力により転写シートをワークの表面に密着させる構造とされているので、特許文献1に記載のラバー部材での押し付けの場合よりも転写圧力が小さく、したがって、確実な転写を行うためには、長時間真空状態で加熱する必要がある。すなわち、転写に長時間を要し、生産性が低いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、アンダーカット部を有するワーク等種々の形状のワークにに対応でき、かつアンダーカット部を有していないワークについては高い生産性を得ることができる転写装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、前記課題を解決するために、次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、ワークの表面に転写シートの絵柄層を転写する転写装置であって、ワークが載置される下側チャンバ部材、該下側チャンバ部材の上に前記転写シートを挟んで載置される上側チャンバ部材、両チャンバ部材間に挟まれた前記転写シートを加熱する加熱手段、及び前記転写シートにより仕切られた上側チャンバ部材内の空間及び下側チャンバ部材内の空間の気体の状態をコントロールすることにより前記転写シートをワークの表面に密着させる密着手段を有する第1の装置と、前記ワークの形状に対応する押し付け面を有するラバー部材、該ラバー部材を昇降させる昇降手段、及び前記ラバー部材を加熱する加熱手段を有し、前記第1の装置によって転写シートが密着されたワークを加熱されたラバー部材で押し付ける第2の装置と、前記下側チャンバ部材を第1の装置から第2の装置に移動させる移動手段とを有していることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の転写装置であって、下側チャンバ部材にワークを設置するための作業ステーションを有し、前記移動手段は、該作業ステーションから前記第1の装置に下側チャンバ部材を移動させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間を真空状態とすることにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間を真空状態とすると共に、上側チャンバ部材内の空間に大気より高圧力の気体を導入することにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた上側チャンバ部材内の空間及び下側チャンバ部材内の空間を真空状態とした後、上側チャンバ部材内の空間に大気を導入することにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた上側チャンバ部材内の空間及び下側チャンバ部材内の空間を真空状態とした後、上側チャンバ部材内の空間に大気より高圧力の気体を導入することにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について説明する。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、第1の装置と、第2の装置とを有していることにより、第1の装置のみによる転写、第1、第2の装置の両方を用いた転写を行うことができる。また、両方の装置を用いる場合、第1の装置の加熱手段を作動させずに、密着手段のみを作動させることもできる。したがって、種々のワーク、種々の転写シートに対して柔軟に対応することができる。
【0017】
例えば、ワークがアンダーカット部を有するものである場合は、第1の装置の加熱手段及び密着手段を利用すればよい。こうすることにより、ワークの表面に転写シートが気体により押し付けられて密着すると共に、加熱手段による熱で転写シートの絵柄層がワークの表面に転写されることとなる。その場合に、ワークへの転写シートの密着は、気体の状態をコントロールすることにより、つまり気体によって行われるので、ワークがアンダーカット部を有している場合においても、転写シートがワークの表面に良好に密着することとなる。すなわち、アンダーカット部を有するワーク等、種々の形状のワークに対して転写を行うことができる。
【0018】
一方、ワークが、アンダーカット部を有しないものである場合は、第1の装置の密着手段、及び第2の装置を利用すればよい。こうすることにより、第1の装置の密着手段によりワークの表面に転写シートが密着させられた上で、ワークが第2の転写装置により加熱されたラバー部材で押し付けられて、該ワークの表面に転写シートの絵柄層が転写されることとなる。その場合に、第2の装置においては、ラバーで押し付けるので、気体の圧力で転写シートをワークに密着させる場合よりも、容易に強い圧力で押し付けることができる。したがって、絵柄層のワークへの転写が促進されて、短時間で転写を行うことができる。すなわち、高い生産性を得ることができる。なお、転写シートが例えば比較的厚いことによりワークの表面に密着しにくいものである場合は、第1の装置の加熱手段も利用することにより、第1の装置の密着手段による密着が一層良好に行われることとなる。
【0019】
また、本発明においては、下側チャンバ部材を第1の装置から第2の装置に移動させる移動手段を有しているので、作業員による下側チャンバ部材の運搬が不要となり、生産性が向上する。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、作業ステーションで下側チャンバ部材にワークを設置した後、該下側チャンバ部材が移動手段により第1の装置に移動させられることとなる。したがって、作業員による運搬が不要となり、生産性が向上する。
【0021】
次に、請求項3〜6に記載の発明は、密着手段を具体化したものである。
【0022】
まず、請求項3に記載の発明によれば、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間が真空状態とされることにより、転写シートが上側チャンバ空間の気体の圧力によりワークの表面に密着させられることとなる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間が真空状態とされると共に、上側チャンバ部材内の空間に大気より高圧力の気体が導入されることにより、転写シートが、上側チャンバ空間の気体の高い圧力によりワークの表面に密着させられることとなる。したがって、請求項3に記載の発明と比べ、ワークの表面への転写シートの密着性が向上することとなる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間が真空状態とされた後、上側チャンバ部材内の空間に大気が導入されることにより、転写シートがワークの表面に密着させられることとなる。その場合に、上下のチャンバ部材内の空間が真空状態とされているときに、加熱手段を作動させれば、転写シートの加熱が効率的かつ、気体の状態に左右されずに行われ、したがって、ワークへの転写シートの転写が安定して行われることとなる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間が真空状態とされた後、上側チャンバ部材内の空間に大気より高圧力の気体が導入されることにより、前記転写シートがワークの表面に密着させられることとなる。したがって、請求項5に記載の発明と比べ、ワークの表面への転写シートの密着性が向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る転写装置について説明する。
【0027】
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る転写装置1においては、機台2上に間隔を空けて平行に配設されたベースプレート3,3の上方幅方向略中央に、転写及び転写準備工程が実行可能な第1装置10が、その一側方に、転写が実行可能な第2装置50が配設されていると共に、機台2における第1装置10の他側方には、下側チャンバ部材22に対して作業者が作業を行えるように該下側チャンバ部材22を配置可能に構成されており、これにより、作業者による下側チャンバ部材22に対する作業が行われる第1ステーションS1、第1装置10による転写または転写準備工程が実行可能な第2ステーションS2、第2装置50による転写が実行可能な第3ステーションS3の3つのステーションが構成されている。
【0028】
第2のステーションS2に配設された第1装置10は、前記各ベースプレート3,3に立設された支持壁部材11(図1に一方のみ図示)と、該支持壁部材11の上面に立設された支持ポール12,12と、該支持ポール12,12の上端に取り付けられた固定プレート13と、該固定プレート13に昇降可能に支持された移動ポール14,14と、該移動ポール14,14の下面に固定された上側チャンバ部材21と、後述する移動機構60の移動プレート63上に固定された下側チャンバ部材22と、前記固定プレート13の上面に固定され、ピストンロッド15aの先端が前記上側チャンバ31の上面に固着されたエアシリンダ15とを有し、該エアシリンダ15を作動させることにより、上側チャンバ部材21を昇降可能に構成されている。
【0029】
また、第1装置10には、転写フィルムFを上下のチャンバ部材21,22間に供給する転写フィルム供給装置17が備えられている(なお、図1には該転写フィルム供給装置17のフィルムチャック17a,17aのみを図示している)。この転写フィルム供給装置17は、転写フィルムロールから転写フィルムFを前記下側チャンバ部材22を上方から覆うように巻き出した後、枚葉状シートに切断し、この枚葉状シートの端部をフィルムチャック17a,17aで把持することにより上下のチャンバ部材21,22間に保持するようになっている。なお、本転写装置1で用いられる転写フィルムFは、ベースフィルムと、該ベースフィルム上に形成された絵柄層とを有しており、加熱された状態でワークに対して所定以上の圧力で押さえつけられることにより、絵柄層がワークに対して転写される構造とされている。
【0030】
また、第1装置10の機台2内には、真空ポンプ31及び圧空ポンプ32が設けられていると共に、図3に示すように、該真空ポンプ31及び圧空ポンプ32と前記上側及び下側の各チャンバ部材21,22との間には接続配管33が設けられていると共に、該接続配管33の第1通路33a、第2通路33b、及び第1通路33aと連絡通路33cとの接続部には、電気制御可能な第1〜第3開閉弁34,35,36が設けられている。
【0031】
第1開閉弁34は、接続配管33の第1通路33aを開状態、閉状態、または第1通路33aを大気と連通させる大気開放状態のいずれかを選択的に実現可能に構成されている。第2開閉弁35は、第1通路33aにおける該開閉弁35の左右の部分33a,33dを連通させる第1状態と、第1通路33aにおける該開閉弁35のチャンバ部材21側の部分33aと連絡通路33cとを連通させる第2状態とを選択的に実現可能に構成されている。第3開閉弁36は、接続配管33の第2通路33bの開状態、閉状態、または第2通路33bを大気と連通させる大気開放状態のいずれかを選択的に実現可能に構成されている。ここで、前記真空ポンプ31、圧空ポンプ32、接続配管33、及び第1〜第3開閉弁34,35,36は、密着機構30(特許請求の範囲における密着手段に相当する)を構成する。
【0032】
また、上側チャンバ部材21の内面には、複数のヒータ41…41が取り付けられている。
【0033】
図1に戻り、第3ステーションS3に配設された第2の装置50は、機台2上のベースプレート3,3に立設された支持ポール51,51と、該支持ポール51,51の上端に取り付けられた固定プレート52と、前記支持ポール51,51に昇降可能に支持された昇降プレート53と、該昇降プレート53の下面に取り付けられたヒータ(熱盤)54と、該ヒータ54の下面に取り付けられたラバー部材55と、前記固定プレート52の上面に固定され、ピストンロッド56aの先端が前記昇降プレート53の上面に固着されたエアシリンダ56とを有し、該エアシリンダ56を作動させることにより、前記ラバー部材55を昇降可能に構成されている。ここで、ラバー部材55の下面には、ワークWの外面形状に対応して凹まされた押し付け面部が形成されている。また、ラバー部材55は、種々のワークWに対応したものが準備され、ワークWに応じて交換可能とされている。ここで、ラバー部材55としては、高熱伝導性、高耐久性を有するものを利用している。
【0034】
また、図1、図2に示すように、転写装置1は、下側チャンバ部材22を前記各ステーションS1,S2,S3間で移動させる移動機構60を有している。すなわち、前記各ベースプレート3,3の上面には、平行に一対のロワーレール61,61が配置されていると共に、該ロワーレール61,61の上部には、摺動可能にアッパーレール62,62がそれぞれ支持されている。そして、該アッパーレール62,62の上面には、前記下側チャンバ部材22が固定される移動プレート63が固着されている。
【0035】
また、機台2の上方には、前記ロワーレール61,61と平行に延びるネジ軸64が、その両端側において一対のブラケット65,65を介して回動可能に支持されている。また、機台2の内部には、モータ66が配設されており、前記ネジ軸の一端側と、モータ66の駆動軸66aとの間に駆動ベルト67が巻きかけられている。また、前記移動プレート63の下面には、前記ネジ軸64に螺合するネジ孔を有する移動ブラケット68が固着されている。そして、このような構成により、前記モータ66を作動させると、駆動ベルト67を介してネジ軸64が回転し、その結果、移動プレート63がネジ軸64の軸方向に移動するようになっている。
【0036】
ここで、このモータ66は、回転量及び回転方向が制御可能なサーボモータにより構成されており、これにより、前記移動プレート63、すなわち該プレート63上に固定された下側チャンバ部材22を、図1に仮想線で示すように、第2ステーションS2の第1装置10の上側チャンバ部材21の直下方位置、及び第3ステーションS3の第2装置50のラバー部材55の直下方位置に精度よく移動、停止させ、かつ第1ステーションS1との間で往復動させることが可能となっている。
【0037】
また、本実施の形態に係る転写装置1には、図4に示すように、前記駆動モータ66、ヒータ41、真空ポンプ31、圧空ポンプ32、第1〜第3開閉弁34,35,36、フィルム供給装置17、エアシリンダ15(第1装置10用)、及びエアシリンダ56(第2装置50用)等の作動を、入力装置71からの入力情報に基づいて制御するコントローラ80が設けられている。
【0038】
入力装置71においては、第1装置10の作動、第2装置50の作動の要否を個別に設定可能に構成されている。また、第1装置10を作動させる場合には、ヒータ41の作動要否、及び圧空ポンプ32の作動要否を個別に設定可能に構成されている。また、入力装置71には、転写作業開始ボタンが設けられている。そして、入力装置71において、転写作業開始ボタンをON操作することにより、前記第1、第2装置10,50及び移動機構60の前記駆動モータ66、ヒータ41等の各装置が入力装置71からの入力情報に基づいて作動するようになっている。
【0039】
次に、このコントローラ80によって達成される転写装置1の動作について、作業員の転写作業とあわせて説明する。ここで、作業開始前には、下側チャンバ部材22は第1ステーションS1に位置し、第2ステーションS2の第1装置10の上側チャンバ部材21は上方待機位置に位置し、第3ステーションS3の第2装置50のラバー部材55は上方待機位置に位置している。
【0040】
まず、作業員は、作業対象のワークW及び転写フィルムFに応じて、入力装置から第1、第2装置10,50の作動条件を入力する。本例では、第1、第2装置10,50の両方を作動させ、かつ第1装置50のヒータ41及び圧空ポンプ32の両方を作動させるように設定したものとする。なお、このように設定するのは、転写フィルムFが比較的厚く、ワークWに良好に密着させるためにこれらの全てを作動させることが望ましい場合である。
【0041】
次に、作業員は、図5(a)に示すように、第1ステーションS1で下側チャンバ部材22にワークW用の取付治具Tを固定すると共に、該取付治具TにワークWをセット(配置)する。そして、入力装置71の作動開始ボタンをON操作する。すると、コントローラ80は、前記第1、第2装置10,50及び移動機構60の前記駆動モータ66、ヒータ41等の各装置を以下のように自動的に制御する。
【0042】
まず、コントローラ80は、移動機構60の駆動モータ66を作動させて下側チャンバ部材22を、第2ステーションS2に移動させる。
【0043】
そして、第2ステーションS2において、第1装置10のフィルム供給装置17を作動させて上下のチャンバ部材21,22間に転写フィルムFを供給し、所定の状態にセットする。そして、エアシリンダ15を作動させて、図5(b)に示すように、上側チャンバ部材21を転写フィルムFを介して下側チャンバ部材22に対接する(載置されて、下方に押し付けられる)まで下方に移動させる。そして、第1、第3開閉弁34,36をそれぞれ開状態とすると共に、第2開閉弁35を、第1通路33aにおける該開閉弁35のチャンバ部材21側の部分33aと連絡通路33cとを連通させる第2状態とさせる。そして、真空ポンプ31を作動させて、転写フィルムFで上下に仕切られた上下のチャンバ空間X1,X2内をそれぞれ真空とさせ、その後、第1、第3の開閉弁34,36を閉状態とする。そして、所定時間ヒータ41,41,41を作動させる。
【0044】
そして、所定時間経過後、図5(c)に示すように、第1開閉弁34を開状態とすると共に、第2開閉弁35を、第1通路33aにおける該開閉弁35の左右の部分33a,33dを連通させる第1状態とした後、圧空ポンプ32を作動させて、上側チャンバ空間X1内にのみ大気より高圧力の圧縮空気を導入する。こうすることにより、転写フィルムFが圧縮空気の圧力により下側チャンバ部材22側に押し付けられ、ワークWの表面に密着することとなる。なお、この時間を長くすれば、転写フィルムFから絵柄層FcをワークWの表面に転写させることもできる。
【0045】
次に、第1、第3開閉弁34,35をそれぞれ大気解放状態とした後、上側チャンバ部材21を上方待機位置まで移動させる。そして、移動機構60の駆動モータ66を作動させて下側チャンバ部材22を第3ステーションS3に移動させる。
【0046】
そして、第3ステーションS3において、第2装置50のエアシリンダ56を作動させてラバー部材55を下降させて、所定時間、図6(a)に示すように、転写フィルムFが表面に密着した状態のワークWを押し付ける。
【0047】
そして、所定時間経過後、第2装置50のエアシリンダ56を作動させてラバー部材55を上方待機位置まで移動させた後、移動機構60の駆動モータ66を作動させて、下側チャンバ部材22を第1ステーションS1に移動させる。
【0048】
そして、第1ステーションS1において、作業員は、図6(b)に示すように転写フィルムFのベースフィルムを剥離した後、絵柄層Fcが転写されたワークWを下側チャンバ部材22の取付治具Tから取り外す。これにより、ワークW1個についての転写作業が完了する。
【0049】
このように本実施の形態においては、第2装置50において、転写フィルムFをラバー部材55で押し付けるので、気体の圧力で転写フィルムFをワークWに密着させる場合よりも、強い圧力で押し付けることができる。したがって、絵柄層FcのワークWへの転写が促進され、気体の圧力で押し付けるだけの場合よりも短時間で転写を行うことができる。すなわち、高い生産性を得ることができる。
【0050】
なお、ここまでで説明した動作及び作用例(以下、第1例という)においては、転写フィルムFが比較的厚い場合を想定して、第1、第2装置10,50の作動条件として、第1、第2装置10,50の作動要否を両方とも要に、かつ第1装置10のヒータ41及び圧空ポンプ32の作動要否を両方とも要に設定したが、例えば転写フィルムFが比較的薄く、ワークに密着しやすいものである場合は、第1装置10のヒータ41及び圧空ポンプ32の作動要否の少なくとも一方を否に設定してもよく、その場合、以下のように転写装置10は作動する。
【0051】
例えば、第1装置10のヒータ41の作動要否を否と設定した場合には、コントローラ80は、第2ステーションS2において、ヒータ41を作動させずに、それ以外の動作は同様に行う。
【0052】
また、圧空ポンプ32の作動要否を否と設定した場合には、コントローラ80は、第2ステーションS2において、第1装置10のヒータ41を作動させて所定時間経過後、第1、第2開閉弁34,35のみを大気解放状態とさせる。こうすることにより、転写フィルムFが大気の圧力によりワークWの表面に密着することとなる。そして次に、上側チャンバ部材21を上方所待機置まで移動させる。そして、移動機構60の駆動モータ66を作動させて下側チャンバ部材22を第3ステーションS3の所定位置まで移動させる。
【0053】
ところで、第1例は、ワークWがアンダーカット部を有しないものの場合であるが、図7(図5(c)に対応する)に示すように、側面にアンダーカット部を有するワークW′の場合は、第1装置10のみを利用すればよい。すなわち、前記例における図5(a)〜(c)に対応する工程を実行した後、第1ステーションS1に下側チャンバ部材22を戻すようにすればよい。こうすることにより、ワークW′の表面に転写フィルムF′が気体により押し付けられて密着すると共に、ヒータ41による熱で転写フィルムF′の絵柄層がワークW′の表面に転写されることとなる。その場合に、ワークW′への転写フィルムF′の密着は、気体の状態をコントロールすることにより、つまり気体によって行われるので、ワークW′がアンダーカット部を有している場合においても、転写フィルムF′がワークW′の表面に良好に密着することとなる。すなわち、アンダーカット部を有するワークW′に対して転写が良好に行われることとなる。なお、ワークW′への転写フィルムF′の絵柄層の密着をより向上させるために、ヒ−タ41…41による加熱時間、及び真空状態の時間を第1例の場合よりも長くしてもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態に係る転写装置によれば、第1装置10と、第2装置50とを有していることにより、第1装置10のみによる転写、第1、第2装置10,50の両方を用いた転写を行うことができる。また、両方の装置10,50を用いる場合、第1装置10のヒータ41を作動させずに、密着機構30のみを作動させることもできる。したがって、種々のワーク、種々の転写シートに対して柔軟に対応することができる。
【0055】
例えばアンダーカット部を有するワーク等種々の形状のワークに対して、形状に制約されることなく転写することができる。また、アンダーカット部を有していないワークに対しては、短時間で転写を行うことができ、高い生産性を得ることができる。
【0056】
また、下側チャンバ部材22を第1装置10から第2装置50に移動させる移動機構60を有しているので、作業員による下側チャンバ部材22の運搬が不要となり、生産性が向上する。
【0057】
また、第1作業ステーションS1で下側チャンバ部材22にワークWを設置した後、該下側チャンバ部材22が移動機構60により第1装置10に移動させられることとなる。したがって、作業員による運搬が不要となり、生産性が向上する。
【0058】
また、上下のチャンバ部材21,22内の空間X1,X2が真空状態とされているときに、ヒータ41が作動するので、転写フィルムFの加熱が効率的かつ、気体の状態に左右されずに行われる。したがって、ワークWへの転写フィルムFの転写が安定して行われることとなる。
【0059】
また、上側チャンバ部材22内の空間X1に大気より高圧力の気体を導入することにより、転写フィルムFをワークWの表面に密着させることができ、単に大気を導入する場合よりも、ワークWの表面への転写フィルムFの密着性を向上させることができる。
【0060】
なお、前記実施の形態においては、密着手段として圧空ポンプ32が設けられているが、請求項1に係る発明は、圧空ポンプ32を設けていないものにも適用可能である。その場合、図8に示すように、真空ポンプ31と上下のチャンバ部材21,22とを、チャンバ部材21,22側において分岐した接続管33′を介して接続すると共に、接続管33′の各分岐通路33a′,33b′上に前記実施の形態の第1、第3開閉弁34,36同様の作動が可能な開閉弁34′,36′を設ければよい。このような構成によれば、前記実施の形態と比べて構成が簡素化される。なお、このように、圧空ポンプ32を省略する構成は、使用する転写シートが薄く、延びやすい場合に適している。
【0061】
また、前記実施の形態においては、転写フィルムFにより仕切られた上側チャンバ部材21内の空間X1、及び下側チャンバ部材22内の空間X2の両方を真空状態とした上で、上側チャンバ部材21内の空間X1に大気、または大気よりも圧力の高い気体を導入するようにしたが、転写フィルムFにより仕切られた下側チャンバ部材22内の空間X2のみを真空状態とすることにより、上側チャンバ空間X1の気体の圧力により転写シートをワークの表面に密着させることもできる。このような構成によれば、前記実施の形態と比べて構成が簡素化される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、アンダーカット部を有するワークに対応でき、かつアンダーカット部を有していないるワークについては短時間で転写することができる転写装置を提供することができ、転写装置において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係る転写装置の正面図である。
【図2】同転写装置の第1ステーション側の側面図である(第1、第2装置の側面は省略している)。
【図3】密着機構の構成図である。
【図4】同転写装置のシステム構成図である。
【図5】同転写装置の動作、及び作用の説明図である(その1)。
【図6】同転写装置の動作、及び作用の説明図である(その2)。
【図7】アンダーカット部を有するワークの場合の作用の説明図である。
【図8】圧空ポンプが備えられていない密着機構の構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 転写装置
10 第1装置(第1の装置)
21 上側チャンバ部材
22 下側チャンバ部材
30 密着機構(密着手段)
31 真空ポンプ
32 圧空ポンプ
41 ヒータ(第1の装置の加熱手段)
50 第2装置(第2の装置)
55 ラバー部材(ラバー部材)
54 ヒータ(第2の装置の加熱手段)
56 エアシリンダ(昇降手段)
60 移動機構(移動手段)
F 転写フィルム(転写シート)
Fc 絵柄層
S1 第1作業ステーション(下側チャンバ部材にワークを設置するための作業ステーション)
W ワーク
X1 上側チャンバ空間(転写シートで仕切られた上側チャンバ部材内の空間)
X2 下側チャンバ空間(転写シートで仕切られた下側チャンバ部材内の空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面に転写シートの絵柄層を転写する転写装置であって、
ワークが載置される下側チャンバ部材、該下側チャンバ部材の上に前記転写シートを挟んで載置される上側チャンバ部材、両チャンバ部材間に挟まれた前記転写シートを加熱する加熱手段、及び前記転写シートにより仕切られた上側チャンバ部材内の空間及び下側チャンバ部材内の空間の気体の状態をコントロールすることにより前記転写シートをワークの表面に密着させる密着手段を有する第1の装置と、
前記ワークの形状に対応する押し付け面を有するラバー部材、該ラバー部材を昇降させる昇降手段、及び前記ラバー部材を加熱する加熱手段を有し、前記第1の装置によって転写シートが密着されたワークを加熱されたラバー部材で押し付ける第2の装置と、
前記下側チャンバ部材を第1の装置から第2の装置に移動させる移動手段とを有していることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の転写装置であって、
下側チャンバ部材にワークを設置するための作業ステーションを有し、
前記移動手段は、該作業ステーションから前記第1の装置に下側チャンバ部材を移動させることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、
前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間を真空状態とすることにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、
前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた下側チャンバ部材内の空間を真空状態とすると共に、上側チャンバ部材内の空間に大気より高圧力の気体を導入することにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、
前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた上側チャンバ部材内の空間及び下側チャンバ部材内の空間を真空状態とした後、上側チャンバ部材内の空間に大気を導入することにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
前記請求項1または請求項2に記載の転写装置であって、
前記第1の装置の密着手段は、前記転写シートにより仕切られた上側チャンバ部材内の空間及び下側チャンバ部材内の空間を真空状態とした後、上側チャンバ部材内の空間に大気より高圧力の気体を導入することにより、前記転写シートをワークの表面に密着させることを特徴とする転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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