説明

転写要素を使用する、液晶フィルムの熱転写方法

本発明は、受容体表面上に熱転写するための、液晶材料を含む転写要素を採用するレーザー誘起方法に関する。この方法は、選択される表面上に種々の外観または光学的効果を有するマークを生成させるのに適する。この転写要素は、光熱変換層および転写層を含む。この転写層は、液晶材料、特に液晶ポリマーフィルムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、受容体表面上に熱転写するための、液晶材料を含む転写要素を採用するレーザー誘起方法に関する。この方法は、選択された物の表面上に種々の外観または光学的効果を有するマークを生成させるのに適する。この転写要素は、光熱変換層および転写層を含む。この転写層は、液晶材料、特に液晶ポリマーフィルムを含む。
【背景技術】
【0002】
背景および従来技術
セキュリティーデバイスとしての液晶ポリマーフィルムの使用は、従来技術で報告されてきた。EP0435029は、配向液晶ポリマーを含有する光学可変セキュリティー要素を有するデータキャリアについて開示している。US5678863(GB2268906に相当する)は、透過光および反射光で見た場合に異なる光学的効果を生ずるコレステリック液晶材料で被覆された透かしを含む、有価証券用のセキュリティーマークについて開示している。このコレステリック液晶材料は、例えば液晶ポリマーである。
【0003】
着色印刷を生成するためのレーザー誘起転写方法が、WO95/13195に記載されている。
【0004】
重合性液晶材料は、従来技術では、均一な配向を有する異方性ポリマーフィルムの製造用に知られている。これらのフィルムは、通常、重合性液晶混合物の薄層を基材上に被覆し、この混合物を均一な配向に配列し重合することによって調製される。
【特許文献1】EP0435029
【特許文献2】US5678863(GB2268906に相当する)
【特許文献3】WO95/13195
【発明の開示】
【0005】
本発明の一目的は、製造しやすく、広範な種類の基体、表面および物体に適用することができるマーク、特に装飾およびセキュリティー用途向けマークを提供することである。
【0006】
本発明者らは、上記目的が、液晶構造を含むマークを熱転写方法により作製することによって達成できることを見出した。この方法は、液晶転写層を含む新規の転写要素を利用する。
【0007】
本発明の光学可変マークは、後述するように製造しやすい。
【0008】
従来技術の要素と比較される本発明の光学可変マークの別の利点は、転写要素を、塗工、ラミネート、硬化処理および巻取を含む1つのロールツーロールプロセスに使用し得る状態にすることである。
【0009】
用語の定義
本発明で使用する場合の用語「光熱変換層」は、放射線を吸収し熱に変換できる、平坦要素中の層を意味する。この変換層は、他の層の上部またはその間にある薄層からなってもよい。これは、同時に、転写要素の支持層または基材であってもよい。
【0010】
本発明で使用する場合の用語「転写層」は、転写方法によって部分的または完全に転写される層を意味する。この転写部分は、通常、「マーク」の少なくとも一部を形成するか、またはマークの輪郭を画定する。
【0011】
本発明で使用する場合の用語「熱転写」は、熱または放射線を基材に当てることにより基材から受容体物に物質を転写する方法を意味する。用語「レーザー誘起転写」は、レーザーまたはレーザーにより発生した熱がこの方法に採用される場合、熱転写と同じ意味で使用される。
【0012】
1つの重合性基を有する重合性化合物は「単反応性(monoreactive)」化合物とも称し、2つの重合性基を有する化合物は「二反応性(direactive)」化合物とも称し、2つを超える重合性基を有する化合物は「多反応性(multireactive)」化合物とも称する。重合性基を有しない化合物は、「非反応性(non-reactive)」化合物とも称する。
【0013】
用語「反応性メソゲン」(RM)は、重合性メソゲン性または液晶性の化合物を意味する。
【0014】
本出願で使用する場合の用語「フィルム」は、明白な機械安定性および柔軟性を多かれ少なかれ示す、自己支持性、即ち自立性のフィルム、ならびに支持基材上または2つの基材間の被膜または層を包含する。
【0015】
用語「マーク」は、選択される物体の表面の一部または全体を変化させる、マーキング方法の生成物に通常的に使用される。本出願では、マークとは、制御された方法で表面上に転写された物質を特に意味する。用語「マーキング」は、表面領域全体を覆うフィルムまたは層、および例えばパターンまたはイメージの形状として、表面の不連続領域を覆うマーキングを包含する。
【0016】
用語「液晶材料またはメソゲン材料」あるいは「液晶化合物またはメソゲン化合物」は、1つまたは複数の棒状、板状または円盤状のメソゲン基、即ち液晶相挙動を生じさせる能力を有する基をある特定の比率(%)まで含む材料または化合物を意味するべきである。棒状または板状の基を有する液晶化合物は、当技術分野では「カラミチック」液晶としても知られている。円盤状基を有する液晶化合物は、当技術分野では「ディスコチック」液晶としても知られている。メソゲン基を含む化合物または材料は、必ずしも液晶相自体を表す必要はない。これらは、他の化合物との混合物中でのみ、あるいはメソゲン化合物もしくは材料またはこれらの混合物が重合される場合にのみ、液晶相挙動を示してもよい。
【0017】
簡略のために、用語「液晶材料」または「LC材料」は、以下では液晶材料およびメソゲン材料の双方に対して使用され、用語「メソゲン」は、材料のメソゲン基に対して使用される。
【0018】
ダイレクターは、液晶材料中のメソゲンの長い分子軸(カラミチック化合物の場合)または短い分子軸(ディスコチック化合物の場合)の好ましい配向方向を意味する。
【0019】
用語「平面構造」または「平面配向」は、ダイレクターが液晶材料のフィルムまたは層の平面に実質的に平行である、その層またはフィルムを指す。
【0020】
用語「樹脂」は、不定で大抵高い相対分子質量を有し、加熱するとある範囲の温度にわたって一般的に軟化または融解する固体、半固体、または擬固体の有機材料を指す。この用語は、ISO 4618-3:1984「Paints and varnishes-Vocabulary-Part 3: Terminology of resins」および「Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry」, Vol.A23, VCH(1995), 89-108で更に定義されている。
【0021】
用語「放射線」は、マイクロ波、赤外線、可視光および紫外線放射線(cm〜nmの波長)を含む電磁放射線を指す。
【0022】
発明の概要
本発明は、受容体表面上に熱転写するための、液晶材料を含む転写要素を採用する方法に関する。熱転写はレーザー誘起されたものであることが好ましい。この方法は、選択される表面上に種々の外観または光学的効果を有するマークを生成させるのに適する。
【0023】
本発明は、更に、この方法、特にレーザー誘起方法に使用される転写要素に関する。この要素は、少なくとも光熱変換層および転写層を含む。この転写層は、液晶材料、特に液晶ポリマーフィルムを含む。
【0024】
本発明は、更に、転写要素の液晶材料として使用される液晶ポリマーフィルムに関する。本発明の更なる態様は、このようなフィルムを製造するための方法および組成物である。
【0025】
本発明は、最終的には、本発明による転写方法により製造される、表面に付与するマークに関する。このマークは、種々の外観または光学的効果を有する。これらは、また、肉眼では見られない。
【0026】
本発明は、更に、特にデータまたは情報の偽造防止、認証、照合、または識別を目的とする、本発明によるマークを含むセキュリティーマーク、セキュリティースレッドもしくはセキュリティーデバイス、押箔またはすかしに関する。
【0027】
本発明は、更に、本発明に従って作成されたマークを含むデータキャリアまたは有価証券に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の第1の実施形態は、受容体表面上に液晶(LC)材料を熱転写する方法に関する。この方法は、選択された物の表面上にマークを生成させるのに最も適する。LC材料は、好ましくはフィルムとして、最も好ましくは基材によって支持されたフィルムとして存在する。基材およびLC材料は、本質的に転写要素を形成する。転写方法中、LC材料は、熱または放射線、好ましくはレーザービームによって受容体表面上に基材から転写される。この工程では、転写要素および受容体表面は、互いの上部に密接して位置する。両者の間には隙間がないことが好ましい。これは、転写要素を受容体表面上に置くことによって、またはわずかな機械的圧力、ガス圧力をかけるかもしくは真空技術を適用することでさえも達成できる。放射線を採用した後、転写は、大抵は熱転写が生じなかった領域内での転写層の一部をなお支持し得る基材を取り除くことによって完結する。熱または放射線を転写要素の特定領域内に選択的に当てることにより、転写物質の任意のパターン形状が達成できる。このようにして、画定した形状のマークは、受容体表面上に作製される。マークは、例えば、Nd:YVOレーザー、Nd:YAGレーザー、COレーザーまたは様々な波長を有するエキシマレーザーを用いるレーザーマーキングによって生成することが好ましい。レーザーが適切な材料に当たる場所に熱を発生できる任意のレーザー装置は、本発明に有用となるはずである。
【0029】
マークの性質は、変化し得る。マークは、所定の条件下では肉眼で不可視とすることができる。マークは、隠しマークとして使用される場合、通常、偏光または偏光フィルターによって可視化できる。マークを可視マークとして使用する場合、その効果は、適切な背景またはマーク層上の追加層によって可視化される。幾つかのマークは、それ自体普通の背景で見える。最も有用な背景は、LCポリマーフィルムおよび更なる成分の性質に応じて、黒色面、白色面、透明面、反射面または発光面である。固体または半固体液晶層を用いて達成し得る全ての知られている光学的効果をマークに使用できる。
【0030】
ほとんどの場合では、熱またはレーザーは、転写要素の片側から当てられることになり、一方転写層は、その反対側となる。半透明物体がマーキングされているときにだけ、レーザーを、転写層の側からも用いることができる。
【0031】
転写要素に供給される熱または放射線は、短時間であることが好ましい。これは、敏速に移動する高エネルギーレーザービームを用いた照射によって達成されるか、または任意の他の放射線源を用いて短い照射時間によって達成されることが好ましい。転写要素の所望部分を走査する連続レーザーまたはパルスレーザーを採用することが最も好ましい。転写に採用されるエネルギーは、転写されるLC材料がその構造内で実質的に損傷されないように制限されるが、転写層の各部分を効果的に転写するのに十分強くあるように選択される。
【0032】
意外にも、転写層の転写が十分達成される一方で、転写物質および受容体表面の望ましくない変化を避けるように、放射線または熱のエネルギー量を調節できることが見出されている。パルスレーザーまたは連続レーザーの幾つかの波長を使用できる。
【0033】
転写要素は、放射線の少なくとも一部を吸収し得るように設計すべきである。このために、転写要素は光熱変換層を含む。この変換層は、個別の層として存在するか、または多機能性層中に組み込んでもよい。本発明の一実施形態では、転写層は、それ自体転写要素の基材である。これは最も簡単な形態であり、この場合、基材は、転写要素の支持部を形成するのと同時にレーザー光を吸収する機能を有する。基材は、光熱変換層の機能を有する場合、マークを形成するために使用される放射線を吸収し得るように選択される。吸収性基材は、レーザーの波長に対して透過性であるべきでない。この目的のための適切な基材は、通常、不透明物質、半不透明物質、有色物質または着色物質である。吸収性材料は、この吸収波長によって、この方法に採用される放射線源の波長に適合されるべきである。吸収剤としての適切な色素および顔料は、専門家に知られており、広範な種類の入手可能な製品から選択できるが、レーザー書き込みに使用するのに好適な吸収剤を明確に述べる。光熱変換層の役割をする基材としての例は、市販のレーザー源のほとんどを吸収する黒色ポリエチレンフィルムである。有用なフィルムは、取り扱うのに十分厚く、この方法で転写を生じさせるために十分薄くなろう。このようなフィルムは、例えば家庭用途から公知であり、採用されるレーザーに対して優れた吸収剤であるカーボンブラックを用いて着色される。このような支持フィルムの厚さは、15〜200マイクロメートル(μm)であることが好ましく、20〜80マイクロメートルであることがより好ましい。
【0034】
放射線のパラメーターは別として、転写要素の設計は、この方法の重要部分である。したがって、本発明の第2の実施形態は、この方法のための手段として使用される転写要素に関する。転写要素に関する1つの前提条件は、小さく細い部分さえも有するマークを達成する目的で転写層が薄いことである。したがって、光熱変換層に対して採用される放射線は、その手前側で精密なパターンとなろう。基材がレーザーに対して透過性であり、個別の光熱変換層が存在する場合(図2)、基材の厚さは、転写要素の有効厚の一因にはならないであろう。このように、更により硬質な基材を、高い解像度を低下させることなく方法中に採用できる。大まかには、この方法により得られるパターンの可能な最高解像度は、転写層の厚さの一桁以内にあり得る。転写層の厚さは、0.1〜20マイクロメートル(μm)の範囲内にあることが好ましい。
【0035】
熱転写は、レーザー誘起されたものであることが好ましいが、IR光、可視光またはUV光の範囲内の任意の知られている放射線源も同様に採用してもよい。
【0036】
基材は、プラスチック、ガラス、金属、紙またはシートとして利用できる任意の他の材料の薄いシートであってもよい。基材は、柔軟であり、任意の厚さで利用できることが好ましい。プラスチック基材および金属基材が好ましい。
【0037】
転写層および光熱変換層は、全般的に、転写要素中で互いに密着しているか、または1つもしくは2つの薄層、例えば変換層から転写層へ熱を急速に伝達し得る中間層によってのみ分離されている。中間層は、例えば転写層をその残りの要素から分離するのを容易にするために、転写要素の機能層同士間に位置し得る。中間層は、転写層を形成するために使用される材料の配向を生じさせるかまたは改良する転写要素を作製する方法に有用ともなり得る。中間層は、光熱変換層中に発生する極端な温度から転写層を断熱することもできる。中間層は、転写層と共に転写されてもよいし、または転写要素上に留まってもよい。転写層と光熱変換層との間に中間層がなく、中間層の機能のいずれも各機能層自体によって果たされることが好ましい。中間層の機能は、転写層をその残りの要素から分離するのを容易にすることにより転写要素の作製に役立つことか、LC材料を転写層中で配列させるのに役立つことか、変換層中に発生する過度の熱から転写層を遮蔽することか、または転写方法に採用される放射線から転写層もしくはマーキングされる表面を遮蔽することであり得る。任意選択の中間層は、マークまたはマーキングされる表面上への、光熱変換層の有色材料の如何なる転写も防ぎ得る。
【0038】
本発明の1つの改良点は、転写された材料が液晶材料であることである。したがって、作製したマークは、種々の用途に適用される光学的性質の特性のような、液晶材料に固有の特性を示す。例えば、転写されたフィルムは、偏光にフィルターをかけるか、特定の波長および偏光状態の光を選択的に反射し得る。この効果は、マークを見る角度方向によってか、温度によってか、または更には、マークを見るために使用される偏光フィルターによって変化し得る。
【0039】
更なる改良点は、転写された材料の液晶特性が、熱処理によって本質的に損傷されないことである。その処理では、材料上への熱応力が意外にも低いので、材料により液晶相を採用し得ることの永久的な喪失は避けられる。また、作製されるマークは、既に重合されて固体であるため、一旦表面上に転写されれば作製ステップを更に必要としない。
【0040】
最終的に、様々なサイズおよび形状で、マイクロメートル範囲内のサイズでさえもマークを形成することが可能である。この方法は、絵のような構造、書き込みまたは転写フィルムで覆われた表面全体を生成することができる。レーザー誘起転写方法は、従来の印刷方法と比較してより正確で欠陥がなく速い。印刷用マスクとは対照的に、連続方法で調製されるマークの形状は、製造用組立体のいずれの部品も変えずに、工程途中ですぐに変更できる。レーザーまたは熱源の経路のみを、異なる経路に再調節すればよい。
【0041】
本発明は、更に、光学要素、装飾またはセキュリティー用途での上記および下記のマークの使用に関する。更に、マークは、マークの上部に置かれる任意の更なるLC材料用の調整層(アライニング層)としても使用できる。
【0042】
本発明は、更に、特にデータまたは情報の偽造防止、認証、照合、または識別を目的とする、上記および下記の光学可変マークを含むセキュリティーマーク、セキュリティースレッドもしくはセキュリティーデバイス、ホログラム、熱押箔またはすかし(ウォーターマーク)に関する。
【0043】
本発明は、更に、上記のマーク、スレッド、デバイス、ホログラム、熱押箔または透かしを含むデータキャリアまたは有価証券に関する。
【0044】
この方法において転写要素およびマークの一部として採用されるLC材料は、例えば室温でネマチック相またはコレステリック相を有することになろうが、この材料は、任意の他の液晶相を有するか、または光学的に等方性となり得る。
【0045】
本発明の特別の実施形態では、LCフィルムまたは転写層は、コレステリック液晶(CLC)材料を含む。コレステリック相中のCLC材料は、らせん状にねじれた分子構造を示す。巨視的に平面配向に配列されている、即ちらせん軸がその層の平面に垂直であるCLC材料の層では、入射光は、CLC材料のらせん状にねじれた構造と相互作用する。結果としてCLC層は、ある特定波長の入射光の強度の50%を、コレステリックらせんと同じ掌性を有する円偏光として選択的に反射することが示される。残りの50%は、その反対の掌性を有する円偏光として透過する。したがって、CLC材料の反射色は、暗色または黒色下地に対して見ると暗い背景上ではっきり見える一方、透過で見るとCLC材料は透明であり、その反射特性は、変化する視角の下での干渉色のパターンとして主に視認できる。更に、的確な円偏光子(使用されるコレステリック材料のキラリティーに依存する)を用いて暗い背景に対してこの材料を見れば、液晶ポリマーフィルムは見えなくなろう。
【0046】
反射光の中心波長λは、式λ=n・pに従ってCLC材料のピッチpおよび平均屈折率nに依存する。
【0047】
入射光と相互作用するCLC層の有効らせんピッチおよびそれによる反射光の波長は、視角に応じて変化する。この結果、角度を通常から上げて見たとき、CLC層の反射色はより短い波長にシフトする。CLC材料は、可視波長範囲内の光を反射することが好ましい。CLC材料は、広い波長帯または可視スペクトル全体を反射するように選択することもでき、その結果、特定の反射色が、直視では見られないが円偏光子を通して観察することにより見えるようにできる。広い波長帯のCLCフィルムまたは被膜およびこれらの調製については、例えばEP0606940、WO97/35219、EP0982605およびWO99/02340に記載されている。
【0048】
本発明の別の特別な実施形態では、LCフィルムまたはその転写層は、ネマチック液晶材料を含む。転写要素およびマークのネマチックフィルムは、均一に配列するか、または配列方向の異なる各ドメインに分割することができる。いずれにせよ、マークは、反射表面上に位置する場合、直線偏光子または円偏光子を通して見ることによってはっきり見えるようにできる。
【0049】
偏光子は、視覚補助具として使用できるか、またはそれ自体マークに近接した追加フィルムのようにマークの一部として存在することによって、肉眼で見ることができる。
【0050】
本発明による方法によりマーキングされる適切な下地には、フィルム、紙、板、革、セルロースシート、織物、プラスチック、ガラス、セラミックスおよび金属が挙げられる。適切なプラスチックは、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)またはジアセチルセルロースもしくはトリアセチルセルロース(TAC)のポリマーフィルムである。
【0051】
転写層のLC材料は、ポリマーのLC材料を含むことが好ましい。これは、以下の節でより詳細に記載する重合性材料を含む混合物を重合することによって作製される。
【0052】
重合性LC材料は好ましくは2種以上の化合物の混合物であり、その少なくとも1種は重合性または架橋性化合物である。1つの重合性基を有する重合性化合物は、本明細書では以下で「単反応性」とも称する。架橋性化合物、即ち重合性基を2つ以上有する化合物は、は「二反応性または多反応性」とも称する。
【0053】
重合性LC材料は、少なくとも1種の単反応性化合物および少なくとも1種の二反応性または多反応性化合物を含むことが好ましい。
【0054】
重合性のメソゲン化合物またはLC化合物は、モノマーであることが好ましく、カラミチックモノマーであることが非常に好ましい。これらの材料は、通常、低色度のような良好な光学特性を有し、容易に素早く所望の配向に配列できるが、このことはポリマーフィルムを大規模に工業生産するために特に重要である。重合性材料は、1種または複数のディスコチックモノマーも含んでもよい。
【0055】
上記および下記の重合性材料を含む組成物は、本発明の別の態様である。
【0056】
特に述べない限り、上記および下記に示される重合性混合物の成分の比率(%)は、混合物中の固体の全量、即ち溶媒を含めない全量を指す。
【0057】
この組成物は、通常、5〜95%の単反応性メソゲンおよび10〜95%の二反応性または多反応性メソゲンを含む。他の重合性化合物がない場合、この組成物は、好ましくは10%以上〜80%以下、最も好ましくは15%以上〜45%以下の単反応性メソゲンを含む。更に、この組成物は、好ましくは10%以上〜90%以下、最も好ましくは25%以上〜80%以下の二反応性または多反応性メソゲンを含む。この組成物は、好ましくは20%以上〜40%以下の単反応性メソゲンを50%以上〜70%以下の二反応性または多反応性メソゲンと併せて含む。
【0058】
本発明に適する重合性の単反応性、二反応性および多反応性メソゲン化合物は、その方法自体知られており、例えばHouben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、Thieme−Verlag、Stuttgartのような、有機化学の標準的な出版物に記載されている方法によって調製できる。
【0059】
重合性LC混合物中のモノマーまたはコモノマーとしての使用に適切な、重合性のメソゲン化合物またはLC化合物は、例えばWO93/22397、EP0261712、DE19504224、WO95/22586、WO97/00600、US5518652、US5750051、US5770107およびUS6514578に開示されている。
【0060】
適切で好ましい重合性メソゲン化合物またはLC化合物(反応性メソゲン)の例は、以下のリストに示される。
【0061】
【化1】

【0062】
【化2】

【0063】
【化3】

【0064】
【化4】

【0065】
【化5】

【0066】
【化6】

【0067】
式中、
は、複数回出現する場合互いに独立に、重合性基、好ましくはアクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレンの基であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、互いに独立に、0または同じかもしくは異なる1〜12の整数であり、
zは、0または1であり、隣接するxまたはyが0ならばzは0であり、
は、複数回出現する場合互いに独立に、1、2、3もしくは4つのL基で置換されていてもよい1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
uおよびvは、互いに独立に0または1であり、
は、複数回出現する場合互いに独立に、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
は、C原子を1個もしくは複数個、好ましくは1〜15個有するフッ素化されていてもよいアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはアルコキシカルボニルオキシであるか、あるいはYまたはP−(CH)y−(O)−であり、
は、F、Cl、CN、NO、OCH、OCN、SCN、SF、1〜4個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、もしくはアルコキシカルボニルオキシ、またはモノ、オリゴもしくはポリフッ素化されている1〜4個のC原子を有するアルキルもしくはアルコキシであり、
01、02は、互いに独立にH、RまたはYであり、
は、2−メチルブチル、2−メチルオクチル、2−メチルブトキシまたは2−メチルオクトキシのような4個以上、好ましくは4〜12個のC原子を有するキラルなアルキル基またはアルコキシ基であり、
Chは、コレステリル、エストラジオール、またはメンチルもしくはシトロネリルのようなテルペノイド基から選択されるキラルな基であり、
Lは、複数回出現する場合互いに独立に、H、F、Cl、CNまたはハロゲン化されていてもよい1〜5個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、もしくはアルコキシカルボニルオキシであり、
また、ベンゼン環は、1個または複数個の同じかまたは異なるL基で更に置換されていてもよい。
【0068】
適切な非重合性キラル化合物は、例えばR−もしくはS−811、R−もしくはS−1011、R−もしくはS−2011、R−もしくはS−3011、R−もしくはS−4011、R−もしくはS−5011、またはCB15(全てMerck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手できる)のような標準のキラルドーパントである。
【0069】
適切な重合性キラル化合物は、例えば上記に挙げたもの、または重合性キラル材料Paliocolor(登録商標)LC756(BASF AG製、Ludwigshafen、Germany)である。
【0070】
高いらせんねじれ力(HTP)を有するキラル化合物、特に、例えばWO98/00428に記載のソルビトール基を含む化合物、例えばGB2328207に記載のヒドロベンゾイン基を含む化合物、例えばWO02/94805に記載のキラルビナフチル誘導体、例えばWO02/34739に記載のキラルビナフトールアセタール誘導体、例えばWO02/06265に記載のキラルなTADDOL誘導体、ならびに例えばWO02/06196またはWO02/06195に記載の、少なくとも1つのフッ素化されている結合基および末端または中心キラル基を有するキラル化合物は、非常に好ましい。
【0071】
特に述べない限り、本発明によるポリマーLCフィルムの一般的な調製は、文献から知られている標準的方法に従って行うことができる。通常、重合性LC材料は、基材上に被覆されるかそうでなければ塗布され、そこで均一な配向に配列し、LC相中において選択される温度でその場(in situ)重合することにより、例えば熱または化学線に暴露させることにより、好ましくは光重合することにより、非常に好ましくはUV−光重合することにより、LC分子の配列を固定する。必要ならば、LC材料のせん断もしくはアニール処理、基材の表面処理、またはLC材料への界面活性剤の添加のような追加の手段によって均一な配列を促進してもよい。
【0072】
基材として、例えば金属箔またはプラスチックフィルムを使用できる。第2の基材を、重合前、重合中および/または重合後に、被覆材料上に置くことも可能である。次いで、元の基材は、重合後に除去することができ、第2の基材によって置き換えられる。2つの基材を使用し、化学線により硬化処理する場合、少なくとも1つの基材は、重合に使用される化学線に対して透過性でなければならない。
【0073】
適切な基材は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、酢酸セルロース、前述のポリマーの公知のコポリマーのフィルム、アルミニウムフィルムおよび金属蒸着ポリマーフィルムである。
【0074】
重合性材料は、スピンコート、バーコートまたはブレードコートのような従来の塗工技術によって基材上に塗布できる。
【0075】
重合性材料を適切な溶媒中に溶解してもよい。次いで、この溶液を、例えばスピンコートまたは他の公知の技術により、基材上に被覆または印刷し、溶媒を蒸発させてから重合する。多くの場合では、混合物を加熱することにより溶媒の蒸発を促進することが適切である。溶媒として、例えば標準の有機溶媒を使用してもよい。溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン、メチルアセテート、エチルアセテートもしくはブチルアセテートまたはメチルアセトアセテートなどのエステル、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール、トルエンまたはキシレンなどの芳香族溶媒、ジクロロメタンまたはトリクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、グリコールまたはPGMEA(プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテート)などのグリコールのエステル、γ−ブチロラクトンなどから選択できる。上記溶媒の2元、3元または多元混合溶媒を使用することもできる。
【0076】
重合性LC材料の初期の配列(例:平面配列)は、例えば基材をラビング処理するか、塗工中もしくは塗工後に材料をせん断するか、重合前の材料をアニール処理するか、配列層を施すか、磁場もしくは電場を被覆材料にかけるか、または界面活性化合物を材料に添加することによって達成できる。配列技術の総説は、例えばI.Sageによる「Thermotropic Liquid Crystals」、G.W.Gray編、John Wiley & Sons、1987、75〜77頁、およびT.UchidaおよびH.Sekiによる「Liquid Crystals−Applications and Uses Vol.3」、B.Bahadur編、World Scientific Publishing、Singapore 1992、1〜63頁に提示されている。配列材料および技術の総説は、J.CognardによるMol.Cryst.Liq.Cryst.78、Supplement 1(1981)、1〜77頁に提示されている。
【0077】
LC分子の特定の表面配列を促進する1つまたは複数の界面活性剤を含む重合性材料は、特に好ましい。適切な界面活性剤は、例えばJ.Cognard、Mol.Cryst.Liq.Cryst.78、Supplement 1、1〜77(1981)に記載されている。平面配列のための好ましい配列剤は、例えば非イオン界面活性剤、好ましくは市販のFluorad FC−171(登録商標)(3M Co.製)またはZonyl FSN(登録商標)(DuPont製)などのフッ化炭素界面活性剤、GB2383040に記載のマルチブロック型界面活性剤またはEP1256617に記載の重合性界面活性剤である。
【0078】
配列層を基材上に施し重合性材料をこの配列層上に与えることもできる。例えばラビングしたポリイミドまたはUS5602661、US5389698もしくはUS6717644に記載の光配向により調製される配列層のような適切な配列層が、当技術分野で知られている。
【0079】
温度を上げて、好ましくは重合前にその重合温度で重合性LC材料をアニール処理することによって配列を生じさせるかまたは改良することも可能である。
【0080】
重合は、例えば重合性材料を熱または化学線に暴露することによって達成される。化学線は、UV光、IR光もしくは可視光のような光による照射、X線もしくはガンマ線による照射、またはイオンもしくは電子などの高エネルギー粒子による照射を意味する。重合はUV照射によって行われることが好ましい。化学線源として、例えば単一のUVランプまたは一連のUVランプを使用してもよい。高いランプ電力を使用する場合、硬化時間を削減できる。
【0081】
重合は、化学線の波長で吸収性のある開始剤の存在下で行われることが好ましい。例えば、UV光により重合する際、UV照射下で分解して重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用することができる。アクリレート基またはメタクリレート基を重合するためには、ラジカル光開始剤を使用することが好ましい。ビニル基、エポキシド基またはオキセタン基を重合するために、カチオン光開始剤を使用することが好ましい。加熱すると分解して、重合を開始させるフリーラジカルまたはイオンを生成する熱重合開始剤を使用することもできる。典型的なラジカル光開始剤は、例えば市販のIrgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)(Ciba Geigy AG、Basel、Switzerland)である。典型的なカチオン光開始剤は、例えばUVI 6974(Union Carbide)である。
【0082】
重合性材料は、望ましくない自発的重合を防ぐために、例えば市販のIrganox(登録商標)(Ciba Speciality Chemicals、Basel、Switzerland)のような安定剤または抑制剤も1種または複数含んでもよい。
【0083】
硬化時間は、重合性材料の反応性、被覆層の厚さ、重合開始剤の種類およびUVランプの電力に特に依存する。硬化時間は、好ましくは5分以下、非常に好ましくは3分以下、最も好ましくは1分以下である。大量生産するためには30秒以下の短い硬化時間が好ましい。
【0084】
重合は、窒素またはアルゴンのような不活性ガス雰囲気中で行われることが好ましい。
【0085】
重合性材料は、重合に使用される放射線の波長に適合した最大吸収を有する色素、特に例えば4,4’’−アゾキシアニソールまたはTinuvin(登録商標)の色素(Ciba Speciality Chemicals製)のようなUV色素も1種または複数含んでもよい。
【0086】
転写方法を助けるために重合性材料、転写層またはLCフィルムに1種または複数の樹脂を添加することは、転写方法にとって有利となる。樹脂は、ポリマーマトリックス中には含まれず、加熱した際にLCポリマーの転写を促進するために遊離したままであることが好ましい。合成樹脂は好ましい。樹脂は、少なくとも、以下の種類:アルデヒド樹脂、ケトン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルコポリマーおよびPVCまたはPVAのコポリマーを含んでもよい。イソブチルアルデヒド−ホルムアルデヒド−尿素樹脂のようなアルデヒド樹脂は、特に適切である。多くの公知の樹脂の中でも、熱可塑性樹脂は、熱の影響をより受けやすい転写層を作製し得るので好ましい。それらの一般的機能により名付けられた樹脂の中でも粘着付与樹脂および可塑化樹脂が好ましい。適切な樹脂は、軟化点またはガラス転移温度を有することが好ましい。軟化温度は、好ましくは150℃未満、非常に好ましくは100℃未満である。ガラス転移温度は、好ましくは100℃未満、非常に好ましくは70℃未満である。軟化点は、通常、DIN 53180に従って定義され、ガラス転移温度はDSCによって測定される。樹脂の量は、重合性材料中で好ましくは1〜15%、より好ましくは3〜8%である。
【0087】
別の好ましい実施形態では、重合性材料は、1種または複数の単反応性の重合性非メソゲン化合物を好ましくは0〜50%、非常に好ましくは0〜20%の量で含む。その典型例は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである。
【0088】
別の好ましい実施形態では、重合性材料は、1種または複数の二反応性または多反応性の重合性非メソゲン化合物を、好ましくは0〜80%、非常に好ましくは0〜50%、最も好ましくは5〜20%の量で、二反応性または多反応性の重合性メソゲン化合物の代わりに、またはそれらに加えて含む。二反応性の非メソゲン化合物の典型例は、1〜20個のC原子のアルキル基を有するアルキルジアクリレートまたはアルキルジメタクリレートである。多反応性非メソゲン化合物の典型例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートである。この種類の化合物では、二反応性または多反応性の重合性メソゲンはあまり必要とせず、単反応性メソゲンが組成物により多く添加される。本出願の更なる背景に示される全ての範囲は、非メソゲン重合性化合物を添加しない場合に適合される。
【0089】
1種または複数の連鎖移動剤を重合性材料に添加することによりポリマーフィルムの物理特性を改変することもできる。チオール化合物、例えばドデカンチオールのような単官能チオールまたはトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)のような多官能チオールであることが特に好ましい。例えばWO96/12209、WO96/25470またはUS6420001に開示されているメソゲンまたはLCチオールは非常に好ましい。連鎖移動剤を使用することによって、ポリマーフィルム中の遊離のポリマー鎖長および/または2つの架橋間のポリマー鎖長を制御できる。連鎖移動剤の量を増やすと、ポリマーフィルム中のポリマー鎖長は短くなる。
【0090】
重合性材料は、ポリマーバインダーまたはポリマーバインダーを形成できる1種もしくは複数のモノマーおよび/あるいは1種または複数の分散助剤も含んでもよい。適切なバインダーおよび分散助剤は、例えばWO96/02597に開示されている。しかしながら、重合性材料は、バインダーまたは分散助剤を含有しないことが好ましい。
【0091】
重合性材料は、マーキングされる品目に主に応じて、例えば触媒、増感剤、安定剤、抑制剤、連鎖移動剤、共反応性モノマー、界面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱泡剤、希釈剤、反応性希釈剤、各助剤、着色剤、色素または顔料、特に湿潤剤、レオロジー調整剤および界面活性剤のような追加成分を1種または複数更に含んでもよい。
【0092】
本発明によるポリマーフィルムの厚さは、好ましくは0.1〜20マイクロメートル(μm)、より好ましくは0.2〜10マイクロメートル、最も好ましくは0.5〜5マイクロメートルである。コレステリックフィルムの場合、好ましい厚さは、2〜5マイクロメートルである。ネマチックフィルムの場合、好ましい厚さは、0.5〜2マイクロメートルである。配列層として使用する場合、0.05〜1、好ましくは0.1〜0.4マイクロメートルの厚さを有する薄いフィルムが好ましい。
【0093】
本発明によるネマチックポリマーフィルムの光軸上のリタデーション(即ち視角0°での)は、好ましくは0を超えて400nmまで、特に好ましくは100nm〜250nmである。
【0094】
得られるポリマーフィルムの光学特性を適合させるために、例えば20重量%以下の量の非重合性液晶化合物を添加することもできる。
【0095】
本発明のポリマーフィルムは、LC材料用の配列層としても使用できる。例えば、このポリマーフィルムは、LCディスプレーに使用して、切替え可能なLC媒体の配列を引き起こすかもしくは改良するか、またはその上に被覆した次の重合性LC材料の層を配列することができる。このようにして、重合性LCフィルムの積層を用意してもよい。
【0096】
特に、本発明によるキラルな化合物、混合物、ポリマーおよびポリマーフィルムは、GB2315072またはWO97/35219に開示されている反射偏光子、EP1376163に開示されている配列層、GB2315760、WO02/85642、EP1295929またはEP1381022に開示されている装飾またはセキュリティー用途向け複屈折マークまたは像に使用できる。
【0097】
本発明による光学可変マークは、データキャリアまたは有価証券のような物体を認証、照合または偽造防止するためのセキュリティーマークまたはセキュリティースレッドでの使用、およびこのような物体上での隠し像、情報またはパターンの生成に特に適する。この光学可変マークは、照合または偽造防止のために前記物体上に直接付与してもよい。あるいは、これは、例えば情報表示層、ホログラム、すかし、エンボスまたはインプリントのパターンまたはデザインなどの形態で物体に付与された追加のデータおよび/または情報を含む、データキャリアまたは有価証券などの物体上に付与してもよい。このマークは、追加のデータおよび/もしくは情報を部分的にもしくは完全に覆うように前記物体上に付与するか、または追加のデータおよび/もしくは情報を含有しない前記物体の一部もしくは領域上に付与してもよい。
【0098】
本発明による光学可変マークは、消費財または家庭用品、車体、箔、梱包材料、衣類または織物に付与するか、プラスチック中に組み込むか、あるいは、銀行券のような有価証券、クレジットカードもしくはIDカード、国民身元確認資料、免許証または切手、チケット、株、小切手などのような貨幣価値を有する任意の製品上のセキュリティーマークまたはセキュリティースレッドとして適用することができる。
【0099】
本発明によるマークは、透過および反射で見たときのその異なる効果のため、特に可視光に対して透光性である物体、または前記物体の透光性部分に対しての上記目的に特に適する。
【0100】
本発明の方法に使用される適切なレーザーは、一般に、157nm〜10.6μm、好ましくは532nm〜10.6μmの範囲内の波長を有する。ここでは、例としてCOレーザー(10.6μm)ならびにNd:YAGおよびNd:YVOレーザー(それぞれ1064nmおよび532nm)またはパルスUVレーザーを挙げることができる。エキシマレーザーは、以下の波長:Fエキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、XeFエキシマレーザー(351nm)を有する。複数倍周波数Nd:YAGレーザーは、355nm(3倍の周波数)または265nm(4倍の周波数)の波長を有する。Nd:YAGおよびYVOレーザー(それぞれ1064および532nm)ならびにCOレーザーを使用することは特に好ましい。パルスレーザーを使用する際、パルス周波数は、一般に1〜100kHzの範囲内にある。本発明による方法に採用し得る該当するレーザーは、市販されている。
【0101】
Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザーまたはCOレーザーは、種々のレーザー波長1064nmまたは808〜980nmで使用することが好ましい。マーキング方法は、連続およびパルス操作の双方でできる。レーザーの適切な電力は2〜100Wの範囲にあることが好ましく、パルス周波数は通常1〜200kHzの範囲内にある。
【0102】
以上および以下では、特に述べない限り、全ての温度は摂氏温度で示され、全ての比率(%)は重量で示される。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって限定するものではない。
以下に定義する以下の化合物は、実施例中で使用する。
【0104】
【化7】

【0105】
重合性メソゲン化合物(A)、(B)および(C)は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190、3201〜3215(1989)に記載の方法に従ってまたはこれと同様に調製できる。
【0106】
キラルドーパント(D)は、文献GB2328207に記載のように調製できる。
【0107】
尿素と脂肪族アルデヒドとからの縮合生成物であるLaropal(登録商標)A81は、市販のアルデヒド樹脂(BASF AG)である。
【0108】
Irgacure(登録商標)651は、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンであって、市販の光開始剤(Ciba Specialty Chemicals)である。
【0109】
Irganox(登録商標)1076は、(オクタデシル−3,5)−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートであって、市販の安定剤(Ciba Specialty Chemicals)である。
【0110】
酢酸エチルは、不活性溶媒として使用する。
【0111】
レーザー装置は、1064nmの波長および0〜100kHzのパルス周波数を有するダイオード励起Nd:YAGレーザーを有する。最大出力は12Wであり、この出力は広範な比率(%)内で制御できる。このビームは、20kHzで約1.5GW/cmの強度および20nsのパルス長を有する。このビームの直径は、約50μmである。レーザー速度は、最大5ms−1、好ましくは1〜2ms−1に設定する。この種の装置は、コンピュータ支援ビーム変調器と併せて一連のプロバイダーから市販されている。
【0112】
実施例1
以下の重合性コレステリック液晶(CLC)混合物を調製する。
【0113】
化合物(A) 7.48%
化合物(B) 30.00%
化合物(C) 7.48%
化合物(D) 2.50%
Laropal(登録商標)A81 2.00%
Irgacure(登録商標)651 0.50%
Irganox(登録商標)1076 0.04%
酢酸エチル 50.00%
【0114】
次いで、この溶液を、約50マイクロメートル厚の黒色ポリエチレン基材上にバーコートによって塗工厚12μmで塗布する。この塗膜を室温で放置して残留溶媒を蒸発させる。次いで、残った液晶フィルムを無酸素状態でUV放射線に露光することにより固体のポリマーフィルムを残す。
【0115】
次いで、このフィルムの試料を、受容体表面としての黒色ポリプロピレンタイルの上に、液晶ポリマー層が2つのプラスチック層間に挟まれる状態で置く。レーザー光(Nd:YAGレーザー)を90%の強度および1.5ms−1の通過速度でフィルムに当てる。エネルギーの吸収は、レーザーを当てる部位にのみ液晶ポリマーフィルムの転写を生じさせるのに十分である。最終的なデバイスは、個別のデザインの光学可変液晶ポリマー層を有する。更に、的確な円偏光子(使用されるコレステリック材料のキラリティーに依存する)を通してこのデバイスを見れば、液晶ポリマーフィルムは見えなくなろう。
【0116】
実施例2
以下の重合性ネマチック液晶混合物を調製する。
【0117】
化合物(A) 8.73%
化合物(B) 30.00%
化合物(C) 8.73%
Laropal(登録商標)A81 2.00%
Irgacure(登録商標)651 0.50%
Irganox(登録商標)1076 0.04%
酢酸エチル 50.00%
【0118】
次いで、この溶液を、約50マイクロメートル厚の黒色ポリエチレン基材上にバーコートによって塗工厚4μmで塗布する。この塗膜を室温で放置して残留溶媒を蒸発させる。次いで、残った液晶フィルムを無酸素状態でUV放射線に露光することにより固体のポリマーフィルムを残す。
【0119】
次いで、このフィルムの試料を、金属箔または反射性の箔の上に、液晶ポリマー層がその金属箔に接触する状態で置く。レーザー光(Nd:YAGレーザー)を90%の強度および1.5ms−1の通過速度でフィルムに当てる。エネルギーの吸収は、レーザーを当てる部位にのみ液晶ポリマーフィルムの転写を生じさせるのに十分である。円偏光子を通して金属箔を見ると、ネマチック転写を有するマーク領域が、マークの存在しないより暗い背景に対してはっきりと見える。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】転写層(1)と支持基材または支持層として同時に機能する光熱変換層(2)とを含む転写要素を示す図である。
【図2】転写層(1)、それ自体構造強度を有しない光熱変換層(2)、およびこの要素を支持するための個別の基材(3)を含む転写要素の第2の実施形態を示す図である。この要素中の基材(3)は、この方法で採用する放射線に対して半透明であることが好ましい。 他の任意選択の層は、明確にするために図中では省略してある。各層の厚さは変えてもよい。
【図3】2段階のマーキング方法を示す図である。左側には、図1による転写要素が、表面(4)と接触した状態で置かれている。レーザービーム(5)は、その要素上に垂直方向から発射される。右側には、表面上に付与されたマーク(1’’)が、その要素の除去後に現れる。マーク(1’’)は、元の転写層(1)の一部であり、レーザーが転写要素に当たった場所に位置する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上にマークを形成するための転写方法であって、
a)光熱変換層と、液晶材料を含む転写層とを含む転写要素を準備する工程と、
b)前記転写層を受容体表面に向けて、前記転写要素を前記表面上に配置する工程と、
c)該組立物を、前記表面上の照射領域に対応する前記転写層の部分を転写するのに有効な様式で、放射線源を用いて選択的に照射する工程と
を含む転写方法。
【請求項2】
前記放射線源がレーザービームである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転写層中に含まれる前記液晶材料が架橋性液晶材料を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記転写層が樹脂を更に含む、請求項1から3の一項または複数項に記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項1から4の一項または複数項に記載の方法。
【請求項6】
前記転写層が、
1種または複数の重合性メソゲンと、
樹脂と、
重合開始剤と
を含む組成物を基材上に塗り、これを重合することによって用意される、請求項1から5の一項または複数項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも
光熱変換層と、
少なくとも液晶材料を含む転写層と
を含む熱転写要素。
【請求項8】
前記転写層が、1種または複数の樹脂を少なくとも1〜15%含む、請求項7に記載の転写要素。
【請求項9】
前記熱転写層が、1種または複数の架橋性液晶成分を少なくとも30%含む、請求項7または8に記載の転写要素。
【請求項10】
前記光熱変換層が、放射線吸収性ポリマー基材または非反射性金属箔である、請求項7から9の一項または複数項に記載の転写要素。
【請求項11】
少なくとも
1種または複数の重合性メソゲンと、
樹脂と、
重合開始剤と
を含む、液晶熱転写層を形成するための組成物。
【請求項12】
請求項1から6の一項または複数項に記載の方法によって形成される、表面上のポリマー液晶マーク。
【請求項13】
セキュリティー用途、識別、ラベル表示、偽造防止または装飾のための、請求項1から6の一項または複数項に記載の方法によって形成されるポリマー液晶マークの使用。
【請求項14】
請求項12に記載のマークを含むデータキャリアまたは有価証券。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−516604(P2009−516604A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541613(P2008−541613)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010500
【国際公開番号】WO2007/059853
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】