転炉への溶銑供給方法
【課題】転炉への溶銑供給を効率的に行う。
【解決手段】転炉設備1で、溶銑装入ピッチPtに応じて、前記取鍋3の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋3をクレーン4でハンドリングして、転炉2に溶銑を供給する。
【解決手段】転炉設備1で、溶銑装入ピッチPtに応じて、前記取鍋3の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋3をクレーン4でハンドリングして、転炉2に溶銑を供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉への溶銑供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、高炉で生産された溶銑は、混銑車(トーピートカー)に装入された上で、溶銑の成分調整を行う転炉工程へ移送される。また、該混銑車では、その中に装入されている溶銑に副原料を投入して脱りん、脱珪、脱硫を行い予備的に溶銑の成分調整処理を行うようにしている(溶銑予備処理工程)。
転炉工程では、溶銑を転炉に装入し、副原料添加と酸素吹込みを行うことで脱りん・脱炭を行って、りん濃度や炭素濃度が所定の値となっている溶鋼を生産するようにしている。転炉工程で得られた溶鋼は、その後、連続鋳造工程を経てスラブ等に成形され、このスラブが圧延されることで厚板や薄板等の鉄鋼製品が製造される(圧延工程)。
【0003】
鉄鋼製品の生産量を上げるためには、高炉工程に着目し、高炉からの溶銑の出鋼量を増やすことがもちろん重要であるが、他の工程、例えば、溶銑予備処理工程での生産能力を上げることも重要である。各工程の生産能力を向上させるための技術は、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、高炉工程に着目し、高炉・製鋼工場間における溶銑輸送容器の稼働状況(物流状況)を考慮することで、高炉・製鋼工場間の貯銑量のバランスを検証し、出鋼未達を防ぐ技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、溶銑予備工程に着目し、ロット単位の処理対象物を処理する工程パターンを複数有し、この複数の工程パターンによる処理を並列的に実行する溶銑予備処理ラインにおいて、払出し工程での仕掛り量を適正値とすることが可能な物流シミュレーション方法が開示されている。
特許文献3には、圧延工程に着目し、加熱炉投入までの圧延材の流れ(物流)に着目して、スラブ圧延工程における生産量向上を考えた物流計画の技術が開示されている。
一方、転炉工程に関して考えると、その溶鋼生産能力に関与するのは、転炉自体の処理能力と転炉への溶銑供給能力である。もし、複数の転炉を同時に稼働させた際には、転炉の処理能力が転炉への溶銑供給能力を上回ることになり、転炉への溶銑供給能力が律速となる。つまり、転炉への溶銑供給をいかに効率的に迅速に行うかが、非常に重要となる。
【0005】
特許文献4には、転炉への溶銑供給能力を向上させるべく、転炉工程の一部において取鍋を効率よく取り扱う物流技術が開示されている。この文献に開示された転炉設備は、2つの転炉間に、クレーン1基と、取鍋2基と、取鍋を搬送する運搬台車1台と、取鍋セット装置とを有しており、この取鍋セット装置は、走行レールを跨ぐように配置されていて、空の取鍋をクレーンから受けとった後当該取鍋を降下させて運搬台車に搭載する働きを備えている。
これにより、運搬台車1台に対して取鍋2基を交互に使用することができるようになり、一方の取鍋が脱炭用転炉への溶銑装入中であっても、他方の取鍋を速やかに脱燐用転炉の出銑口へ移動させることができるものとなっている。
【特許文献1】特開2003−82407号公報(第4頁〜第8頁)
【特許文献2】特開2002−62924号公報(第3頁〜第5頁)
【特許文献3】特開平10−272505号公報(第3頁〜第7頁)
【特許文献4】特許第3503938号公報(第4頁〜第5頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、転炉施設は、複数の転炉と、これらの転炉へ溶銑を装入する複数の取鍋と、該取鍋に混銑車から溶銑を払い出す「払い出しステーション(払い出しのための場所)」等とを備えており、溶銑を装入された取鍋は、図3(a)に示すように、クレーンにより複数の転炉や各ステーション間を移送され、取鍋の動きに着目しただけでも複雑な物流形態を呈するものとなっている。
本願発明者は、転炉工程での溶鋼生産能力を向上させる方法を探るために、図3(a)のガントチャート等を基に、取鍋並びにクレーンの稼働状況を詳細に検討した。その結果、「取鍋103への溶銑の払い出しの際に、クレーン104Aは払い出しステーション106Aの上空で待ちの状態となる」といったクレーンの遊び時間・待ち時間が存在する上に、稼働中の取鍋の数が2本と少なく、かかる待ち時間中に他の取鍋を把持することができない状況となっていることが問題であることを突き止めた。
【0007】
つまり、クレーンの稼働状況に応じた取鍋を使用することが、クレーンの稼働状況を良くし転炉への溶銑供給能力をあげることにつながることを明らかにした。
しかしながら、前述した特許文献4の技術は、転炉工程の一部にのみ着目したものであって、上記問題を解決し、転炉への溶銑供給能力を大幅に向上させることは難しい。転炉への溶銑供給を効率的に行うためには、転炉工程全体に亘って、取鍋を効率的に動かすことが重要であり、そのためにはクレーンの稼働状況を可能な限りよくすることが必要である。
【0008】
一方、特許文献1〜特許文献3の物流技術を当該転炉設備に応用しようとしても非常に困難である。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、クレーンの稼働状況に応じた取鍋を使用することにより、転炉への溶銑供給を効率的に行うことのできる転炉への溶銑供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉と、この転炉へ溶銑を装入する取鍋と、この取鍋へ溶銑払い出しが行われる払い出しステーションと、この払い出しステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋を所定のサイクルでハンドリングするクレーンとを有する転炉設備で、前記クレーンが転炉へ溶銑を装入する時間間隔を溶銑装入ピッチPtとして、この溶銑装入ピッチPtに応じて、前記取鍋の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋をクレーンでハンドリングして、転炉に溶銑を供給することを特徴とする。
【0010】
転炉設備でのクレーンは、空の取鍋を払い出しステーションに載置→払い出しが完了した取鍋を転炉まで搬送→空になった取鍋を再度払い出しステーションまで移送、といった所定の動作を周期的、すなわち所定のサイクルで行っている。したがって、転炉への溶銑供給も所定サイクルで行われることになり、その時間間隔が溶銑装入ピッチPt(転炉から溶鋼が出鋼される時間間隔である溶鋼出鋼ピッチと略同じ)である。
かかる溶銑装入ピッチPtを短くすることで、転炉へ頻繁に溶銑が装入される状況となるものの、短くなった溶銑装入ピッチPtに対応するためには、取鍋の稼働本数を増やす必要がある。逆に、溶銑供給ピッチが長くなった場合、現状の取鍋稼働数を運用すると、待ち状態となる取鍋が増えるため、取鍋の数を減らす必要がある。
【0011】
このことから判るように、取鍋の稼働本数は、溶銑装入ピッチPtとに密接な関係があるため、本技術的手段では、取鍋の稼働本数を溶銑装入ピッチPtを基に設定するようにしている。これにより、溶銑を転炉に運ぶ取鍋の稼働本数を適切なものにでき、溶銑を転炉への効率的に供給することが可能となる。
一方、図7(a)に示されるように、転炉の溶鋼生産量は、市場の需要動向や製鉄所内の関連施設の修理や点検トラブルなどによって左右されるため、転炉設備の稼働状況を常に一定にしておく必要はなく、柔軟に変更する必要がある。逆に、転炉設備の稼働状況を一定値に固定した状況で操業を継続すると、転炉からの出鋼量が過剰になったり、転炉工程の至る所で熱ロスが生じたり、取鍋や転炉内の耐火物の必要以上の劣化を招いたりすることになる。
【0012】
転炉設備の稼働状況を変更するためには、前述の如く、溶銑装入ピッチPtの増減に応じて前記取鍋の稼働本数を変更するようにすればよい。加えて、クレーンの1周期内で実際にクレーンが稼働している時間をクレーン正味サイクルタイムCnとし、このCnを短くしたり長くしたりして、転炉への溶銑供給能力を調整するとよい。クレーン正味サイクルタイムCnが増減した場合にも、それに対応するように取鍋の稼働本数を変更する必要がある。
これらのことを鑑み、前記取鍋の稼働本数を、溶銑装入ピッチPt及びクレーン正味稼働時間Cnを含む式(1)及び式(2)を満たすように決定するとよい。
ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)
・・・(1)
Pt ≧ Cn/R ・・・(2)
Cn:クレーン正味稼働時間 (分/サイクル)
Tn:正味サイクルタイム=溶銑払い出し、脱硫などの各工程にかかる時間の総和
+Cn (分/サイクル)
R :クレーン基数(基)
Pt:溶銑装入ピッチ (分/チャージ)
ROUND_UP(X):Xを切り上げる
例えば、クレーン正味サイクルタイムCnが30分であるとすると、前回の転炉への溶銑装入完了から、次の溶銑装入完了(1つの取鍋で混銑車から溶銑を払い出してもらい、転炉に装入する)まで、30分かかることになる。一方、溶銑装入ピッチPtが15分であるとすると、この間隔では間に合わないため、取鍋を2つに設定すると、理論上、溶銑供給が間にあうことになる。すなわち、取鍋の稼働本数はクレーン正味サイクルタイムCnを溶銑装入ピッチPtで割る(Cn/Pt)ことにより求めることができる。
【0013】
ここで、クレーン正味サイクルタイムCnが30分であったとしても、クレーン数Rが2基である場合には、仮想的にクレーン正味サイクルタイムは15分と考えて差し支えない。なお、取鍋数は整数である必要があるため、割り求めた値の切り上げ値(round up)を取鍋の稼働数とするとよい。
これらのことより、ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 によって取鍋の稼働本数の下限値を求めるとよいことがわかる(式(1)の左辺)。
一方、取鍋の稼働本数の上限値は、同様の考え方によって求められるが、クレーン正味サイクルタイムCnを用いるのではなく、クレーン正味稼働時間Cnに、溶銑払い出し、脱硫などの各工程にかかる時間の総和を加えた「正味サイクルタイムTn」を用いて求めるようにしている。正味サイクルタイムTnは、溶銑に対して何らかのアクションを起こしている時間と考えることもできる。
【0014】
例えば、正味サイクルタイムTnが45分であるとすると、1つの取鍋で混銑車から溶銑を払い出してもらい、脱硫等の溶銑処理を行った上で転炉に装入するまで、45分かかることになる。一方、溶銑装入ピッチPtが15分であるとすると、この間隔では間に合わないため、取鍋を3つに設定すると理論上、溶銑供給が間にあうことになる。すなわち、取鍋の稼働本数は正味サイクルタイムTnを溶銑装入ピッチPtで割ること(Tn/Pt)により求めることができる。
ここで、正味サイクルタイムTnが45分であったとしても、クレーン数Rが2基である場合には、仮想的に正味サイクルタイムTnは22.5分と考えて差し支えない。なお、取鍋数は整数である必要があるため、割り求めた値の切り上げ値(round up)を取鍋の稼働数とするとよい。
【0015】
これらのことより、取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)によって取鍋の稼働本数の上限値を求めるとよいことがわかる(式(1)の右辺)。溶銑を転炉に装入するまでの時間としては、正味サイクルタイムTn以上かかることはないので、Tnを基にして算出された取鍋の稼働本数が上限値となる。
式(1)は独立変数としてPtを含んでいるため、上述の取鍋の稼働本数は、溶銑装入ピッチPtの増減に応じて変動するようになっている。
なお、仮想的に考えたクレーン正味サイクルタイムCn/Rより、溶銑装入ピッチPtが短い場合、 ROUND_UP(Cn/R/Pt)が大きな値(例えば、5や6)になり、それにしたがえば、多数の取鍋を用いる必要が生じてくる。このような状況は、取鍋の処理待ち時間の増大につながり非現実的であるため、式(2)の如く、溶銑装入ピッチPtを、仮想的に考えたクレーン正味サイクルタイムCn/Rと等しいか、それより大きいものとしている。これにより、取鍋稼働本数が極端に多くなることはなくなる。
【0016】
以上述べた式(1)及び式(2)を満たす稼働本数の取鍋を用いることで、溶銑を転炉への効率的に供給することができるようになる。
さらに好ましくは、前記転炉設備は、取鍋の補修や地金取り作業を行う待機ステーションを有し、前記技術的手段のいずれかで設定された取鍋の稼働本数+1の取鍋を稼働させた上で、該取鍋のいずれか1つを前記待機ステーションに配置するようにクレーンを操作するとよい。
転炉への溶銑供給能力を向上させるためには、溶銑供給を行う取鍋の数を増加させるとよい。しかしながら、取鍋の稼働本数が増えることにより、取鍋1本あたりのサイクルタイムが延長し、取鍋のスラグライン等に地金やスラグが付着生成するようになる。そこで、これに対応して転炉操業を円滑に操業を行うためには、稼働している取鍋をさらに1本増やして、増やした取鍋を載置する待機ステーションを設けるとよい。待機ステーションに配置された取鍋に関し、その地金やスラグを定期的に除去するようにすることで、地金やスラグが付着せずに安定して使用できる取鍋を確実に確保することができるようになる。
【0017】
加えて、前記待機ステーションにある取鍋に対して加熱を行うようにすることは、非常に好ましい。
待機ステーションにある取鍋は、内部に溶銑を受けていない空の溶銑鍋であり、空鍋の状態が長時間続くと取鍋内側の耐火物の温度が下がり、「次に溶銑を受けた際に地金付着が発生して安定操業が難しくなる」、「熱ロスが大きくなり、転炉に装入する溶銑の温度が低くなる」、「耐火物が装入された溶銑により熱膨張し剥離したりする」等の不都合が生じる。そこで、待機ステーションにある取鍋内にバーナー等を差し入れ火炎を発生させたりして、取鍋内を加熱するようにするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、転炉設備で、転炉への溶銑供給を効率的に行うことのできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる転炉への溶銑供給方法の実施形態を、図を基に説明する。
図1は、転炉設備1を正面から見た際の概略を示したものであり、図2には、転炉設備1の平面概略図が示されている。
図1に示すように、本実施形態の転炉設備1は、3基の転炉2と、これら転炉2に溶銑を供給する取鍋3(溶銑鍋)と、この取鍋3を搬送する2基のクレーン4とを有している。さらに、取鍋3を載置した上で、混銑車5あるいは高炉鍋から該取鍋3に溶銑を移し替える場所である「払い出しステーション6(払い出しピット)」を2つ備えている。
【0020】
本発明は、このような転炉設備1で、転炉2への溶銑装入間隔(溶銑装入ピッチPt)とに応じて、前記取鍋3の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋3をクレーン4でハンドリングして、転炉2に溶銑を供給するものである。
以下、本実施形態にかかる転炉設備1の詳細について述べる。
本転炉設備1の上方側には、該転炉設備1を縦断するように走行レール7が設けられており、この走行レール7上を後述するクレーン4が2基走行するようになっている。走行レール7の一方側(図2の左側)には、前記払い出しステーション6A,6Bが走行レール7方向に並ぶように設けられており、走行レール7の他方側(図2の右側)には3基の転炉(転炉2A〜転炉2C)が走行レール7方向に並ぶように配設されている。なお、以降の説明における上下方向は、図1の上下方向と一致するものとする。
【0021】
図2に示すように、説明の便宜上、走行レール7を7つの区間に区切り番号を付している。区切り番号1,2に対応する走行レール7のほぼ下方側には払い出しステーション6A,6Bが対応するように設けられており、区切り番号4,5,6に対応する走行レール7の下側であって且つ走行レール7の側方側には、転炉2A,2B,2Cが設けられている。クレーン4Aは区切り番号0から6までを移動し、クレーン4Bは区切り番号1から7までを移動することになる。1つの区切り番号はクレーン1基の幅に対応している。
また、区切り番号0の位置であって、払い出しステーション6Aより上方側には、ノロカキ8A(スラグドラッガー)により取鍋3内の溶銑上面に浮かんでいるスラグを掻き出す場所である「除滓ステーション9A」が設けられている。同様に区切り番号3の場所にはノロカキ8Bが配置され除滓ステーション9Bとなっている。
【0022】
つまり、クレーン4の移動方向に沿って隣接する2つの払い出しステーション6が備えられ、これら払い出しステーション6の前記移動方向両側にはそれぞれ除滓ステーション9が備えられており、両ステーション6,9のそれぞれに2基のクレーン4A,4Bが同時に存在可能となっている。
走行レール7上には2基のクレーン4A,4Bが配備されている。詳しくは、走行レール7上をクレーン本体10が走行するものとなっており、このクレーン本体10からは、下方に吊り下げ索体11(ワイヤ)が延びており、該吊り下げ索体11の先端に設けられたフック12で取鍋3を吊り下げるようになっている。吊り下げ索体11をクレーン本体10へ巻き取ることで、取鍋3は上方へ引き上げられることになり、その上でクレーン本体10が走行レール7上を走行することで、取鍋3は、払い出しステーション6〜転炉2間を自在に移送される。
【0023】
本転炉設備1で使用する取鍋3の本数は、式(1)及び式(2)を満たすように決定する。
ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)
・・・(1)
Pt ≧ Cn/R ・・・(2)
Cn:クレーン正味サイクルタイム (分/サイクル)
Tn:正味サイクルタイム=溶銑払い出し、脱硫などの各工程にかかる時間の総和
+Cn (分/サイクル)
R :クレーン基数(基)
Pt:溶銑装入ピッチ (分/チャージ)
ROUND_UP(X):Xを切り上げる
図8は、本実施形態の条件のもと、式(1),式(2)を計算した結果であり、溶銑装入ピッチPtに応じた最適な取鍋3の稼働本数を示したものである。図8の横軸は溶銑装入ピッチPtであり、縦軸は取鍋3の稼働本数である。
【0024】
計算条件は、クレーン正味サイクルタイムが22分/サイクル、正味サイクルタイムが31分/サイクルであり、クレーン基数は2基、払い出しピット数は2である。
式(1)の右辺は破線で示されており、式(1)の左辺は実線で示されている。かかる実線と破線とで示された領域が取鍋3の稼働本数を示している。例えば、溶銑装入ピッチPtが13分の場合、取鍋3を2本または3本稼働すればよく、Pt=20分の場合、取鍋の稼働本数は2本とするとよい。
式(2)で示される範囲は、図中の縦線Lより右側の領域であり、このことから、転炉設備1に実際に適用できる取鍋3の稼働本数は、3本以下であることが判る。
【0025】
図7(b)には、上記考え方に基づいて、取鍋3の稼働数を変更した結果が示してある。通常の高生産時には溶銑払い出しピッチが15.2分であって、取鍋稼働数は3本であるものの、下工程にある連続鋳造機の点検時であって低生産時には、溶銑装入ピッチが19.0分となるため、図8の結果に基づき、取鍋稼働数を2本に減少させている。従来技術1や従来技術2では、高生産時と全く同じ稼働数であり、熱ロス等が生じる状況となっていると思われる。
高炉休風時に伴う低生産状態では、溶銑装入ピッチが38.0分となるため、取鍋稼働数を、図8の結果に基づき1本に減少させている。従来技術1や従来技術2では、高生産時と全く同じ稼働数(=3本)となっている。
【0026】
図10のケースKは、取鍋3の稼働数を3本とした場合の操業実績であり、従来(ケースFなど)のクレーンのサイクルタイムが45分/回に対して、取鍋3の数が適切であるため、クレーンサイクルが29分/回と短くなっている。
転炉設備1内での取鍋移動の概略は、次の通りである。
まず、混銑車5が転炉設備1に到着した後、該混銑車5から払い出しステーション6A,6Bに載置された取鍋3に溶銑が注ぎ込まれる。溶銑が装入された取鍋3は、クレーン4A,4Bにより引き上げられ、払い出しステーション6A,6Bの上方であって該払い出しステーション6A,6Bに隣接する除滓ステーション9A,9Bまで移動され、ノロカキ8A,8Bで溶銑の上面に浮いているスラグが掻き出されるものとなっている。
【0027】
スラグを掻き出された取鍋3は、クレーン4A,4Bにより3基の転炉2A,2B,2Cのいずれかの前に移送され、当該転炉2を傾動すると共に取鍋3を傾けることで、転炉2内に溶銑を装入する。
溶銑が装入された転炉2では、転炉2の炉口からランスを挿入し溶銑上面に近づけ、酸素ガスを吹き付けると同時に、炉底から吹き込みガスで溶銑を撹拌しつつ精錬(吹錬)を開始する。同時に、石灰CaO等の造滓材や酸化鉄FexOy等の冷却材、すなわち副原料を投入する。溶銑内のりんは投入された酸素と反応してスラグ相に移行し、溶銑の上方に浮いた状態で積層するようになり(脱りん)、さらに、溶銑内の炭素は酸素と反応し、COガスとして排出される(脱炭)。かかる吹錬処理により、所定のりん、炭素濃度の溶鋼を得ることができる。
【0028】
転炉2での吹錬処理が始まると、空になった取鍋3は、再び払い出しステーション6A,6Bにクレーン4A,4Bにより戻され、再度、溶銑を払い出し準備状態となる。
図3には、払い出しステーション6A,6Bに常時配置される取鍋3の数を1本とすると共に、取鍋3の総稼働数を3本(式(1)及び式(2)を満たす)とした場合の、クレーン4A,4Bの動きとそれに伴う取鍋3の動き(物流)を詳細に表したガントチャートが示してある。
図3(a)は、図11に示された従来の転炉設備101におけるガントチャートである。従来例の転炉設備101は、払い出しステーション106A,106Bの上方側に除滓ステーション109A,109Bが設けられており、平面視では、払い出しステーション106A,106Bと除滓ステーション109A,109Bとは同一の区切り番号位置に存在する点が、本転炉設備1とは大きく異なっている。加えて、従来例では取鍋103の稼働本数は2本である。
【0029】
クレーン104A,104Bの動き関しては、まず、クレーン104Aが空の取鍋103を把持し、払い出しステーション106A(ピットA)に据え付ける。その後、この取鍋103には、混銑車105から溶銑が払い出され、成分測定や温度測定が行われる。そして、該取鍋103はクレーン104Aで吊り下げられて上方へ持ち上げられ、除滓ステーション109Aへ移送される。
このとき、クレーン104Bで吊り下げられたままの取鍋103は、除滓ステーション109Bに配置されて、当該取鍋103内のスラグがノロカキ108Bで掻き出されるものとなっている。その後、クレーン104Bの取鍋103は、転炉102Aの位置に移送され、溶銑が転炉102Aに装入されることになる。溶銑装入が完了し、空になった取鍋103は払い出しステーション106Bに搬送されて据え付けられ、溶銑の払い出しが始まる。このとき、クレーン104Bは払い出しステーション106Bの上空で待ちの状態となる。
【0030】
払い出しステーション106Bでの溶銑払い出しがある程度進んだ状況下で、クレーン104Aに吊り下げられている取鍋103の除滓が完了するため、クレーン104Aを転炉102Bまで移動させ、クレーン104Aに吊り下げられている取鍋103から転炉102Bに溶銑を装入するようにする。このとき、クレーン104Aの移動をスムーズに行うため、同時にクレーン104Bを転炉102Cの前まで移動する。
転炉102Bへの溶銑装入を終えた取鍋103は、クレーン104Aにより再度払い出しステーション106Aの位置まで移動させられ据え付けられることになり、クレーン104Aの1サイクルが終了することになる。
【0031】
このとき、転炉102C前(区切り番号6)に待避していたクレーン104Bは、払い出しステーション106Bの上方へ移動してきて、成分測定や温度測定が終了した取鍋103を再度吊り上げる。これによりクレーン104Bの1サイクルが終了する。
本実施形態の場合、取鍋103とクレーン104と払い出しステーション106とは常に対応しており、ある取鍋103を把持するのは常に決まったクレーン104であり、取鍋103は、常に同一払い出しステーション106に配置される。なお、クレーン104の1サイクルにかかる時間、すなわちサイクルタイムは、図3(a)から33分であることが判る。
【0032】
払い出しステーション6に常時載置されている取鍋数について考えると、図3(a)から判るように、常時配置取鍋数は0本又は1本であり、払い出しステーション6に全く取鍋3が配置されていない状況が存在している。
一方、図3(b)には、本実施形態のクレーン4の動きとそれに伴う取鍋3の動き(物流)が示してある。
クレーン4の動きに関しては、まず、クレーン4Aは、払い出しステーション6Bに空の取鍋3を据え付けるようにする。その後、払い出しステーション6Aに移動し、溶銑払い出しが終わると共に溶銑の成分測定や温度測定が完了した取鍋3を吊り上げ、除滓ステーション9Aへ移送する。この除滓ステーション9Aでは、取鍋3は吊り下げられた状態であって、取鍋3内のスラグがノロカキ8Aで掻き出されるものとなっている。
【0033】
そのとき、クレーン4Bは別の取鍋3を吊り下げ中であり、その取鍋3は除滓ステーション9Bに配置され、ノロカキ8Bでスラグ除去が行われている。かかる除滓が完了すると、クレーン4Bは転炉2Aの前まで移動し、溶銑が取鍋3から転炉2Aに装入されることになる。溶銑装入が完了し空になった取鍋3は、クレーン4Bに吊られたまま、払い出しステーション6Aに搬送されて据え付けられ、溶銑の払い出しが始まる。
払い出しステーション6Aへ取鍋3が据え付けられる状況は、ガントチャート中のP部で示されており、これは、図3(a)のR’部がR部まで早まったことを意味している。P部の状況を別の観点で見ると、除滓ステーション9Aと払い出しステーション6Aとが平面視でクレーン1基分だけ離れているため、両ステーション同時にクレーン4が位置することが可能となっていることを意味し、除滓と溶銑払い出しがパラレルに行われて、溶銑供給処理を効率的に進めていることの現れとなっている。図10のケースCがこの状況に相当し、従来(ケースA)のクレーンのサイクルタイムが33分/回に対して、除滓ステーション9Aと払い出しステーション6Aとが離れているために差し合いが起こらず、クレーンサイクルが29分/回と短くなっている。
【0034】
この後、クレーン4Bは、払い出しステーション6Aにある取鍋3の溶銑払い出し完了を待つのではなく、すぐ隣の払い出しステーション6Bにある、溶銑が満たされた取鍋3を吊り下げに行く。その間、クレーン4Aはこの吊り上げを待つため、除滓ステーション9Aの位置で待機することになる。
払い出しステーション6Bの取鍋3を吊り上げたクレーン4Bは、そのまま、除滓ステーション9Bに移動すればベストであるが、除滓ステーション9Aにある取鍋3を転炉2Aの前に移動させる必要があるため、一旦、転炉2Cの前まで移動するようになる(逃げる)。
【0035】
そのクレーン4Bに追従するようにクレーン4Aは転炉2Bの前まで移動し、転炉2Bへの溶銑装入が行われる。装入が終わり、空になった取鍋3は必ず1つが空き状態となっている払い出しステーション6(この場合、払い出しステーション6B)に据え付けられ、次の溶銑が装入されることになる(図3(b)のQ部)。その後すぐに、クレーン4Aは、取鍋3への溶銑装入の終了を待つことなく、払い出しステーション6Aに配置された溶銑装入完了後の取鍋3を吊り下げるようにする。これによりクレーン4Bの1サイクルが終了する。本実施形態の場合、クレーン4の1サイクルにかかる時間(サイクルタイム)は、図3(b)から29分であることが判る。なお、転炉2Bの前(区切り番号5)に逃げていたクレーン4Bは、クレーン4Aが払い出しステーション6Bに移動した際に、それに隣接する除滓ステーション9Bに移動し、スラグの除滓をノロカキ8Bで行う。
【0036】
払い出しステーション6に常時載置されている取鍋数について考えると、図3(b)から判るように、転炉工程のどの部分をとっても、常時配置取鍋数は1本又は2本であり、払い出しステーション数−1=2−1=1以上となっている。
加えて、本実施形態では、さらなるクレーン4のサイクルタイム短縮のために、当該転炉設備1に、取鍋3の補修や地金取り作業を行う待機ステーション13を設けるようにしている。
併せて、取鍋3の稼働本数とは別に更に1本の取鍋3を用意し、両者を併せて稼働させ、該取鍋3のいずれか1つを前記待機ステーション13に配置するようにクレーン4を操作している。待機ステーション13に配置された取鍋3では、取鍋3に付着した地金やスラグを定期的に除去するようにする。
【0037】
すなわち、転炉2への溶銑供給能力を向上させるためには、溶銑供給を行う取鍋3の数を増加させるとよい。しかしながら、取鍋3の稼働本数が増えることにより、取鍋1本あたりの循環時間が延長し、取鍋3のスラグライン等に地金やスラグが付着生成するようになる。そこで、これに対応して転炉操業を円滑に行うためには、稼働している取鍋3をさらに1本増やして、増やした取鍋3を載置する待機ステーション13を設けるとよい。待機ステーション13に配置された取鍋3に関し、その地金やスラグを定期的に除去するようにすることで、地金やスラグが付着せずに安定して使用できる取鍋3を確実に確保することができるようになる。
【0038】
しかしながら、待機ステーション13にある取鍋3は、内部に溶銑を受けていない空の取鍋であり、空鍋の状態が長時間続くと取鍋3の内側の耐火物の温度が下がり、「次に溶銑を受けた際に地金付着が発生して安定操業が難しくなる」、「熱ロスが大きくなり、転炉2に装入する溶銑の温度が低くなる」、「耐火物が装入された溶銑により熱膨張し剥離したりする」等の不都合が生じる。そこで、本実施形態の場合、待機ステーション13にある取鍋3内にバーナー等を差し入れ火炎を発生させることで、地金取り後などに取鍋3内を加熱し、上記の問題が発生することを防ぐようにしている。図10のケースDなどがこの状況に相当し、このケースでは、取鍋3の数を払い出しピット数+1とした上で、更にもう1本の取鍋3を用い、合計4本の取鍋3を使用している。
【0039】
図4,図5には、転炉設備の第2実施形態が示してある。
本転炉設備1は、脱硫ステーション14A、脱硫ステーション14Bを有し、該脱硫ステーション14A、脱硫ステーション14Bは、走行レール7の番号1,2の場所で、走行レール7の側方側にそれぞれ配置されている。加えて、区切り番号0の位置に前ノロカキを配置し除滓ステーション9としていると共に、転炉2Aと転炉2Bの2基を備えるものとなっている。その他の構成は第1実施形態と略同様である。
図9は、本実施形態の条件下で、式(1),式(2)に基づいて、溶銑装入ピッチPtに応じた最適な取鍋3の稼働本数を示したものである。図9の横軸は溶銑装入ピッチPtであり、縦軸は取鍋3の稼働本数である。
【0040】
計算条件は、クレーン正味サイクルタイムが30分/サイクル、正味サイクルタイムが66分/サイクルであり、クレーン基数は2基、払い出しピット数は2、除滓ステーション数も2である。
式(1)の右辺は破線で示されており、式(1)の左辺は実線で示されている。かかる実線と破線とで示された領域が取鍋3の稼働本数を示している。例えば、溶銑装入ピッチPtが40分の場合、取鍋3を1本または2本稼働すればよく、Pt=20分の場合、取鍋の稼働本数は2本〜4本の中のいずれかとするとよい。
【0041】
式(2)で示される範囲は、図中の縦線Lより右側の領域であり、転炉設備1に実際に適用できるのは、取鍋3の稼働本数が5本以下の場合である。
図10のケースLは、取鍋3の稼働数を4本とした場合の操業実績であり、従来(ケースFなど)のクレーンのサイクルタイムが45分/回に対して、取鍋3の数が適切であるため、クレーンサイクルが33分/回と短くなっている。
本転炉設備1内での取鍋3の移動は、まず、混銑車5が転炉設備1に到着した後、払い出しステーション6A,6Bに載置された取鍋3に、混銑車5から溶銑が注ぎ込まれる。溶銑が装入された取鍋3は、脱硫ステーション14A,14Bに移送され、かかる脱硫ステーション14で、溶銑にCaO等の副原料を投入することで、溶銑内の硫黄Sをスラグ層へ移行し、溶銑内の硫黄成分(S)を所定のものとする。各脱硫ステーション14A,14Bには、脱硫処理で生じたスラグを掻き出すためのノロカキ8A,8Bが設置してあり、生じたスラグを掻き出すようにしている。
【0042】
脱硫処理の終わった溶銑が装入されている取鍋3は、クレーン4A,4Bにより転炉2A,2Bのいずれかの前に移送され、該転炉2を傾動すると共に取鍋3を傾けることで、転炉2内に溶銑を払い出すようにする。
本実施形態では、前記脱硫ステーション14A,14Bに常時配置されている取鍋3の本数が「脱硫ステーション総数−1」以上となるように、クレーン4A、4Bで取鍋3のハンドリングを行うこととしている。すなわち、払い出しステーション6に適用した、クレーン4をもっとも効率的に使用するための考え方を、脱硫ステーション14に適用したものである。
【0043】
詳しくは、2つの脱硫ステーション14A又は14Bの一方に取鍋3が常に1本配置され(脱硫ステーション数−1=2−1=1)、いかなる状況下でも、脱硫処理待ち状態か、脱硫処理が行われている状態としている。同時に他方の脱硫ステーション14B又は14Aをいつも空き状態としている。ゆえに、クレーン4A,4Bは、取鍋3を脱硫ステーション14A又は14Bのいずれかに設置した後、隣すなわち14B又は14Aにある取鍋3をすぐ把持することができるため、取鍋3の物流が非常に効率的に行われ、転炉2への溶銑供給を効率的に行うことができるようになる。
【0044】
図6には、以上述べた転炉設備1の脱硫処理を詳細に表したガントチャートが示してある。本ガントチャートでの取鍋3の稼働本数は3本(式(1)及び式(2)を満たす)である。
このガントチャート中、例えば、P部に着目すると、クレーン4Aは、脱硫ステーション14Bに溶銑が装入された取鍋3を載置した後に、待ち時間なくすぐに、払い出しステーション6Aへ移動し、払い出しの終わった取鍋3を吊り下げるようにしている。
また、Q部に着目すると、クレーン4Bは、払い出しステーション6Bに空の取鍋3を据え付けた後すぐに、脱硫ステーション14Bのノロカキ8が終わった取鍋3を吊り下げに行っている。R部に着目すると、クレーン4Bは、空の取鍋3を払い出しステーション6Bに据え付けた後、すぐに、脱硫ステーション14Aにある脱硫処理完了後の取鍋3を吊り上げるようにしている。
【0045】
一方、ガントチャートのS部やT部に着目すると、取鍋3の稼働数を「払い出しステーション数+1=2+1=3」としていることにもなるため、脱硫ステーション14Aに第1の取鍋3が配置され、溶銑に対して処理が行われていると共に、第2の取鍋3から転炉2に溶銑装入が行われている際に、第3の取鍋3に対し前ノロカキ8Fで除滓処理が行われるようになっている。このように3つの取鍋3がパラレルに稼働しているため、非常に効率よく溶銑を転炉2に供給できるようになっている。図10のケースBがこの状況に相当し、取鍋3の数を払い出しピット数+1として、3本の取鍋3を使用している。これにより、従来(ケースA)のサイクルタイムが33分/回に対して、クレーンサイクルが31分/回と短くなっている。
【0046】
本脱硫処理においても、第1実施形態と同様に、払い出しステーション6と除滓ステーション9とをクレーン4の移動方向にクレーン1基分以上離して設け、該払い出しステーション6及び除滓ステーション9への同時配置を許すように取鍋3をクレーン4でハンドリングすることは非常に好ましい。詳しくは、図4に示すように、払い出しステーション6A(区切り番号1)に隣接する区切り番号0の場所に前ノロカキ8Fを配置し、除滓ステーション9として、2つの取鍋に対して溶銑払い出しと除滓を同時に行うとよい。同時に行ったとしても、払い出しステーション6Aと除滓ステーション9とは平面視で重なり合う部分がないため、クレーン4の差し合いは起こらないものとなっている。
【0047】
なお、本発明の転炉への溶銑供給方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。
すなわち、転炉は上吹き転炉、底吹き転炉、又は上底吹き転炉のいずれであってもよく、1つの転炉で脱りんと脱炭を行う、いわゆるダブルスラグ法を行っている転炉施設にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1実施形態にかかる転炉設備の正面概略図である。
【図2】第1実施形態にかかる転炉設備の平面概略図である。
【図3】第1実施形態にかかる転炉設備でのガントチャートであり、(a)は従来例、(b)は第1実施形態のものである。
【図4】第2実施形態にかかる転炉設備の平面概略図である。
【図5】第2実施形態にかかる転炉設備の平面概略図である。
【図6】第2実施形態の転炉設備における脱硫処理ガントチャートの一部である。
【図7】溶鋼生産状況と取鍋の稼働本数との関係を示した図である。
【図8】第1実施形態における溶銑装入ピッチと取鍋の稼働本数との関係を示した図である。
【図9】第2実施形態における溶銑装入ピッチと取鍋の稼働本数との関係を示した図である。
【図10】各実施形態における操業実績が示された図である。
【図11】従来例における転炉設備の平面概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 転炉設備
2 転炉(2A〜2C)
3 取鍋
4 クレーン(4A,4B)
5 混銑車
6 払い出しステーション(6A,6B)
9 除滓ステーション(9A,9B)
14 脱硫ステーション(14A,14B)
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉への溶銑供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、高炉で生産された溶銑は、混銑車(トーピートカー)に装入された上で、溶銑の成分調整を行う転炉工程へ移送される。また、該混銑車では、その中に装入されている溶銑に副原料を投入して脱りん、脱珪、脱硫を行い予備的に溶銑の成分調整処理を行うようにしている(溶銑予備処理工程)。
転炉工程では、溶銑を転炉に装入し、副原料添加と酸素吹込みを行うことで脱りん・脱炭を行って、りん濃度や炭素濃度が所定の値となっている溶鋼を生産するようにしている。転炉工程で得られた溶鋼は、その後、連続鋳造工程を経てスラブ等に成形され、このスラブが圧延されることで厚板や薄板等の鉄鋼製品が製造される(圧延工程)。
【0003】
鉄鋼製品の生産量を上げるためには、高炉工程に着目し、高炉からの溶銑の出鋼量を増やすことがもちろん重要であるが、他の工程、例えば、溶銑予備処理工程での生産能力を上げることも重要である。各工程の生産能力を向上させるための技術は、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、高炉工程に着目し、高炉・製鋼工場間における溶銑輸送容器の稼働状況(物流状況)を考慮することで、高炉・製鋼工場間の貯銑量のバランスを検証し、出鋼未達を防ぐ技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、溶銑予備工程に着目し、ロット単位の処理対象物を処理する工程パターンを複数有し、この複数の工程パターンによる処理を並列的に実行する溶銑予備処理ラインにおいて、払出し工程での仕掛り量を適正値とすることが可能な物流シミュレーション方法が開示されている。
特許文献3には、圧延工程に着目し、加熱炉投入までの圧延材の流れ(物流)に着目して、スラブ圧延工程における生産量向上を考えた物流計画の技術が開示されている。
一方、転炉工程に関して考えると、その溶鋼生産能力に関与するのは、転炉自体の処理能力と転炉への溶銑供給能力である。もし、複数の転炉を同時に稼働させた際には、転炉の処理能力が転炉への溶銑供給能力を上回ることになり、転炉への溶銑供給能力が律速となる。つまり、転炉への溶銑供給をいかに効率的に迅速に行うかが、非常に重要となる。
【0005】
特許文献4には、転炉への溶銑供給能力を向上させるべく、転炉工程の一部において取鍋を効率よく取り扱う物流技術が開示されている。この文献に開示された転炉設備は、2つの転炉間に、クレーン1基と、取鍋2基と、取鍋を搬送する運搬台車1台と、取鍋セット装置とを有しており、この取鍋セット装置は、走行レールを跨ぐように配置されていて、空の取鍋をクレーンから受けとった後当該取鍋を降下させて運搬台車に搭載する働きを備えている。
これにより、運搬台車1台に対して取鍋2基を交互に使用することができるようになり、一方の取鍋が脱炭用転炉への溶銑装入中であっても、他方の取鍋を速やかに脱燐用転炉の出銑口へ移動させることができるものとなっている。
【特許文献1】特開2003−82407号公報(第4頁〜第8頁)
【特許文献2】特開2002−62924号公報(第3頁〜第5頁)
【特許文献3】特開平10−272505号公報(第3頁〜第7頁)
【特許文献4】特許第3503938号公報(第4頁〜第5頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、転炉施設は、複数の転炉と、これらの転炉へ溶銑を装入する複数の取鍋と、該取鍋に混銑車から溶銑を払い出す「払い出しステーション(払い出しのための場所)」等とを備えており、溶銑を装入された取鍋は、図3(a)に示すように、クレーンにより複数の転炉や各ステーション間を移送され、取鍋の動きに着目しただけでも複雑な物流形態を呈するものとなっている。
本願発明者は、転炉工程での溶鋼生産能力を向上させる方法を探るために、図3(a)のガントチャート等を基に、取鍋並びにクレーンの稼働状況を詳細に検討した。その結果、「取鍋103への溶銑の払い出しの際に、クレーン104Aは払い出しステーション106Aの上空で待ちの状態となる」といったクレーンの遊び時間・待ち時間が存在する上に、稼働中の取鍋の数が2本と少なく、かかる待ち時間中に他の取鍋を把持することができない状況となっていることが問題であることを突き止めた。
【0007】
つまり、クレーンの稼働状況に応じた取鍋を使用することが、クレーンの稼働状況を良くし転炉への溶銑供給能力をあげることにつながることを明らかにした。
しかしながら、前述した特許文献4の技術は、転炉工程の一部にのみ着目したものであって、上記問題を解決し、転炉への溶銑供給能力を大幅に向上させることは難しい。転炉への溶銑供給を効率的に行うためには、転炉工程全体に亘って、取鍋を効率的に動かすことが重要であり、そのためにはクレーンの稼働状況を可能な限りよくすることが必要である。
【0008】
一方、特許文献1〜特許文献3の物流技術を当該転炉設備に応用しようとしても非常に困難である。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、クレーンの稼働状況に応じた取鍋を使用することにより、転炉への溶銑供給を効率的に行うことのできる転炉への溶銑供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉と、この転炉へ溶銑を装入する取鍋と、この取鍋へ溶銑払い出しが行われる払い出しステーションと、この払い出しステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋を所定のサイクルでハンドリングするクレーンとを有する転炉設備で、前記クレーンが転炉へ溶銑を装入する時間間隔を溶銑装入ピッチPtとして、この溶銑装入ピッチPtに応じて、前記取鍋の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋をクレーンでハンドリングして、転炉に溶銑を供給することを特徴とする。
【0010】
転炉設備でのクレーンは、空の取鍋を払い出しステーションに載置→払い出しが完了した取鍋を転炉まで搬送→空になった取鍋を再度払い出しステーションまで移送、といった所定の動作を周期的、すなわち所定のサイクルで行っている。したがって、転炉への溶銑供給も所定サイクルで行われることになり、その時間間隔が溶銑装入ピッチPt(転炉から溶鋼が出鋼される時間間隔である溶鋼出鋼ピッチと略同じ)である。
かかる溶銑装入ピッチPtを短くすることで、転炉へ頻繁に溶銑が装入される状況となるものの、短くなった溶銑装入ピッチPtに対応するためには、取鍋の稼働本数を増やす必要がある。逆に、溶銑供給ピッチが長くなった場合、現状の取鍋稼働数を運用すると、待ち状態となる取鍋が増えるため、取鍋の数を減らす必要がある。
【0011】
このことから判るように、取鍋の稼働本数は、溶銑装入ピッチPtとに密接な関係があるため、本技術的手段では、取鍋の稼働本数を溶銑装入ピッチPtを基に設定するようにしている。これにより、溶銑を転炉に運ぶ取鍋の稼働本数を適切なものにでき、溶銑を転炉への効率的に供給することが可能となる。
一方、図7(a)に示されるように、転炉の溶鋼生産量は、市場の需要動向や製鉄所内の関連施設の修理や点検トラブルなどによって左右されるため、転炉設備の稼働状況を常に一定にしておく必要はなく、柔軟に変更する必要がある。逆に、転炉設備の稼働状況を一定値に固定した状況で操業を継続すると、転炉からの出鋼量が過剰になったり、転炉工程の至る所で熱ロスが生じたり、取鍋や転炉内の耐火物の必要以上の劣化を招いたりすることになる。
【0012】
転炉設備の稼働状況を変更するためには、前述の如く、溶銑装入ピッチPtの増減に応じて前記取鍋の稼働本数を変更するようにすればよい。加えて、クレーンの1周期内で実際にクレーンが稼働している時間をクレーン正味サイクルタイムCnとし、このCnを短くしたり長くしたりして、転炉への溶銑供給能力を調整するとよい。クレーン正味サイクルタイムCnが増減した場合にも、それに対応するように取鍋の稼働本数を変更する必要がある。
これらのことを鑑み、前記取鍋の稼働本数を、溶銑装入ピッチPt及びクレーン正味稼働時間Cnを含む式(1)及び式(2)を満たすように決定するとよい。
ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)
・・・(1)
Pt ≧ Cn/R ・・・(2)
Cn:クレーン正味稼働時間 (分/サイクル)
Tn:正味サイクルタイム=溶銑払い出し、脱硫などの各工程にかかる時間の総和
+Cn (分/サイクル)
R :クレーン基数(基)
Pt:溶銑装入ピッチ (分/チャージ)
ROUND_UP(X):Xを切り上げる
例えば、クレーン正味サイクルタイムCnが30分であるとすると、前回の転炉への溶銑装入完了から、次の溶銑装入完了(1つの取鍋で混銑車から溶銑を払い出してもらい、転炉に装入する)まで、30分かかることになる。一方、溶銑装入ピッチPtが15分であるとすると、この間隔では間に合わないため、取鍋を2つに設定すると、理論上、溶銑供給が間にあうことになる。すなわち、取鍋の稼働本数はクレーン正味サイクルタイムCnを溶銑装入ピッチPtで割る(Cn/Pt)ことにより求めることができる。
【0013】
ここで、クレーン正味サイクルタイムCnが30分であったとしても、クレーン数Rが2基である場合には、仮想的にクレーン正味サイクルタイムは15分と考えて差し支えない。なお、取鍋数は整数である必要があるため、割り求めた値の切り上げ値(round up)を取鍋の稼働数とするとよい。
これらのことより、ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 によって取鍋の稼働本数の下限値を求めるとよいことがわかる(式(1)の左辺)。
一方、取鍋の稼働本数の上限値は、同様の考え方によって求められるが、クレーン正味サイクルタイムCnを用いるのではなく、クレーン正味稼働時間Cnに、溶銑払い出し、脱硫などの各工程にかかる時間の総和を加えた「正味サイクルタイムTn」を用いて求めるようにしている。正味サイクルタイムTnは、溶銑に対して何らかのアクションを起こしている時間と考えることもできる。
【0014】
例えば、正味サイクルタイムTnが45分であるとすると、1つの取鍋で混銑車から溶銑を払い出してもらい、脱硫等の溶銑処理を行った上で転炉に装入するまで、45分かかることになる。一方、溶銑装入ピッチPtが15分であるとすると、この間隔では間に合わないため、取鍋を3つに設定すると理論上、溶銑供給が間にあうことになる。すなわち、取鍋の稼働本数は正味サイクルタイムTnを溶銑装入ピッチPtで割ること(Tn/Pt)により求めることができる。
ここで、正味サイクルタイムTnが45分であったとしても、クレーン数Rが2基である場合には、仮想的に正味サイクルタイムTnは22.5分と考えて差し支えない。なお、取鍋数は整数である必要があるため、割り求めた値の切り上げ値(round up)を取鍋の稼働数とするとよい。
【0015】
これらのことより、取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)によって取鍋の稼働本数の上限値を求めるとよいことがわかる(式(1)の右辺)。溶銑を転炉に装入するまでの時間としては、正味サイクルタイムTn以上かかることはないので、Tnを基にして算出された取鍋の稼働本数が上限値となる。
式(1)は独立変数としてPtを含んでいるため、上述の取鍋の稼働本数は、溶銑装入ピッチPtの増減に応じて変動するようになっている。
なお、仮想的に考えたクレーン正味サイクルタイムCn/Rより、溶銑装入ピッチPtが短い場合、 ROUND_UP(Cn/R/Pt)が大きな値(例えば、5や6)になり、それにしたがえば、多数の取鍋を用いる必要が生じてくる。このような状況は、取鍋の処理待ち時間の増大につながり非現実的であるため、式(2)の如く、溶銑装入ピッチPtを、仮想的に考えたクレーン正味サイクルタイムCn/Rと等しいか、それより大きいものとしている。これにより、取鍋稼働本数が極端に多くなることはなくなる。
【0016】
以上述べた式(1)及び式(2)を満たす稼働本数の取鍋を用いることで、溶銑を転炉への効率的に供給することができるようになる。
さらに好ましくは、前記転炉設備は、取鍋の補修や地金取り作業を行う待機ステーションを有し、前記技術的手段のいずれかで設定された取鍋の稼働本数+1の取鍋を稼働させた上で、該取鍋のいずれか1つを前記待機ステーションに配置するようにクレーンを操作するとよい。
転炉への溶銑供給能力を向上させるためには、溶銑供給を行う取鍋の数を増加させるとよい。しかしながら、取鍋の稼働本数が増えることにより、取鍋1本あたりのサイクルタイムが延長し、取鍋のスラグライン等に地金やスラグが付着生成するようになる。そこで、これに対応して転炉操業を円滑に操業を行うためには、稼働している取鍋をさらに1本増やして、増やした取鍋を載置する待機ステーションを設けるとよい。待機ステーションに配置された取鍋に関し、その地金やスラグを定期的に除去するようにすることで、地金やスラグが付着せずに安定して使用できる取鍋を確実に確保することができるようになる。
【0017】
加えて、前記待機ステーションにある取鍋に対して加熱を行うようにすることは、非常に好ましい。
待機ステーションにある取鍋は、内部に溶銑を受けていない空の溶銑鍋であり、空鍋の状態が長時間続くと取鍋内側の耐火物の温度が下がり、「次に溶銑を受けた際に地金付着が発生して安定操業が難しくなる」、「熱ロスが大きくなり、転炉に装入する溶銑の温度が低くなる」、「耐火物が装入された溶銑により熱膨張し剥離したりする」等の不都合が生じる。そこで、待機ステーションにある取鍋内にバーナー等を差し入れ火炎を発生させたりして、取鍋内を加熱するようにするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、転炉設備で、転炉への溶銑供給を効率的に行うことのできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる転炉への溶銑供給方法の実施形態を、図を基に説明する。
図1は、転炉設備1を正面から見た際の概略を示したものであり、図2には、転炉設備1の平面概略図が示されている。
図1に示すように、本実施形態の転炉設備1は、3基の転炉2と、これら転炉2に溶銑を供給する取鍋3(溶銑鍋)と、この取鍋3を搬送する2基のクレーン4とを有している。さらに、取鍋3を載置した上で、混銑車5あるいは高炉鍋から該取鍋3に溶銑を移し替える場所である「払い出しステーション6(払い出しピット)」を2つ備えている。
【0020】
本発明は、このような転炉設備1で、転炉2への溶銑装入間隔(溶銑装入ピッチPt)とに応じて、前記取鍋3の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋3をクレーン4でハンドリングして、転炉2に溶銑を供給するものである。
以下、本実施形態にかかる転炉設備1の詳細について述べる。
本転炉設備1の上方側には、該転炉設備1を縦断するように走行レール7が設けられており、この走行レール7上を後述するクレーン4が2基走行するようになっている。走行レール7の一方側(図2の左側)には、前記払い出しステーション6A,6Bが走行レール7方向に並ぶように設けられており、走行レール7の他方側(図2の右側)には3基の転炉(転炉2A〜転炉2C)が走行レール7方向に並ぶように配設されている。なお、以降の説明における上下方向は、図1の上下方向と一致するものとする。
【0021】
図2に示すように、説明の便宜上、走行レール7を7つの区間に区切り番号を付している。区切り番号1,2に対応する走行レール7のほぼ下方側には払い出しステーション6A,6Bが対応するように設けられており、区切り番号4,5,6に対応する走行レール7の下側であって且つ走行レール7の側方側には、転炉2A,2B,2Cが設けられている。クレーン4Aは区切り番号0から6までを移動し、クレーン4Bは区切り番号1から7までを移動することになる。1つの区切り番号はクレーン1基の幅に対応している。
また、区切り番号0の位置であって、払い出しステーション6Aより上方側には、ノロカキ8A(スラグドラッガー)により取鍋3内の溶銑上面に浮かんでいるスラグを掻き出す場所である「除滓ステーション9A」が設けられている。同様に区切り番号3の場所にはノロカキ8Bが配置され除滓ステーション9Bとなっている。
【0022】
つまり、クレーン4の移動方向に沿って隣接する2つの払い出しステーション6が備えられ、これら払い出しステーション6の前記移動方向両側にはそれぞれ除滓ステーション9が備えられており、両ステーション6,9のそれぞれに2基のクレーン4A,4Bが同時に存在可能となっている。
走行レール7上には2基のクレーン4A,4Bが配備されている。詳しくは、走行レール7上をクレーン本体10が走行するものとなっており、このクレーン本体10からは、下方に吊り下げ索体11(ワイヤ)が延びており、該吊り下げ索体11の先端に設けられたフック12で取鍋3を吊り下げるようになっている。吊り下げ索体11をクレーン本体10へ巻き取ることで、取鍋3は上方へ引き上げられることになり、その上でクレーン本体10が走行レール7上を走行することで、取鍋3は、払い出しステーション6〜転炉2間を自在に移送される。
【0023】
本転炉設備1で使用する取鍋3の本数は、式(1)及び式(2)を満たすように決定する。
ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)
・・・(1)
Pt ≧ Cn/R ・・・(2)
Cn:クレーン正味サイクルタイム (分/サイクル)
Tn:正味サイクルタイム=溶銑払い出し、脱硫などの各工程にかかる時間の総和
+Cn (分/サイクル)
R :クレーン基数(基)
Pt:溶銑装入ピッチ (分/チャージ)
ROUND_UP(X):Xを切り上げる
図8は、本実施形態の条件のもと、式(1),式(2)を計算した結果であり、溶銑装入ピッチPtに応じた最適な取鍋3の稼働本数を示したものである。図8の横軸は溶銑装入ピッチPtであり、縦軸は取鍋3の稼働本数である。
【0024】
計算条件は、クレーン正味サイクルタイムが22分/サイクル、正味サイクルタイムが31分/サイクルであり、クレーン基数は2基、払い出しピット数は2である。
式(1)の右辺は破線で示されており、式(1)の左辺は実線で示されている。かかる実線と破線とで示された領域が取鍋3の稼働本数を示している。例えば、溶銑装入ピッチPtが13分の場合、取鍋3を2本または3本稼働すればよく、Pt=20分の場合、取鍋の稼働本数は2本とするとよい。
式(2)で示される範囲は、図中の縦線Lより右側の領域であり、このことから、転炉設備1に実際に適用できる取鍋3の稼働本数は、3本以下であることが判る。
【0025】
図7(b)には、上記考え方に基づいて、取鍋3の稼働数を変更した結果が示してある。通常の高生産時には溶銑払い出しピッチが15.2分であって、取鍋稼働数は3本であるものの、下工程にある連続鋳造機の点検時であって低生産時には、溶銑装入ピッチが19.0分となるため、図8の結果に基づき、取鍋稼働数を2本に減少させている。従来技術1や従来技術2では、高生産時と全く同じ稼働数であり、熱ロス等が生じる状況となっていると思われる。
高炉休風時に伴う低生産状態では、溶銑装入ピッチが38.0分となるため、取鍋稼働数を、図8の結果に基づき1本に減少させている。従来技術1や従来技術2では、高生産時と全く同じ稼働数(=3本)となっている。
【0026】
図10のケースKは、取鍋3の稼働数を3本とした場合の操業実績であり、従来(ケースFなど)のクレーンのサイクルタイムが45分/回に対して、取鍋3の数が適切であるため、クレーンサイクルが29分/回と短くなっている。
転炉設備1内での取鍋移動の概略は、次の通りである。
まず、混銑車5が転炉設備1に到着した後、該混銑車5から払い出しステーション6A,6Bに載置された取鍋3に溶銑が注ぎ込まれる。溶銑が装入された取鍋3は、クレーン4A,4Bにより引き上げられ、払い出しステーション6A,6Bの上方であって該払い出しステーション6A,6Bに隣接する除滓ステーション9A,9Bまで移動され、ノロカキ8A,8Bで溶銑の上面に浮いているスラグが掻き出されるものとなっている。
【0027】
スラグを掻き出された取鍋3は、クレーン4A,4Bにより3基の転炉2A,2B,2Cのいずれかの前に移送され、当該転炉2を傾動すると共に取鍋3を傾けることで、転炉2内に溶銑を装入する。
溶銑が装入された転炉2では、転炉2の炉口からランスを挿入し溶銑上面に近づけ、酸素ガスを吹き付けると同時に、炉底から吹き込みガスで溶銑を撹拌しつつ精錬(吹錬)を開始する。同時に、石灰CaO等の造滓材や酸化鉄FexOy等の冷却材、すなわち副原料を投入する。溶銑内のりんは投入された酸素と反応してスラグ相に移行し、溶銑の上方に浮いた状態で積層するようになり(脱りん)、さらに、溶銑内の炭素は酸素と反応し、COガスとして排出される(脱炭)。かかる吹錬処理により、所定のりん、炭素濃度の溶鋼を得ることができる。
【0028】
転炉2での吹錬処理が始まると、空になった取鍋3は、再び払い出しステーション6A,6Bにクレーン4A,4Bにより戻され、再度、溶銑を払い出し準備状態となる。
図3には、払い出しステーション6A,6Bに常時配置される取鍋3の数を1本とすると共に、取鍋3の総稼働数を3本(式(1)及び式(2)を満たす)とした場合の、クレーン4A,4Bの動きとそれに伴う取鍋3の動き(物流)を詳細に表したガントチャートが示してある。
図3(a)は、図11に示された従来の転炉設備101におけるガントチャートである。従来例の転炉設備101は、払い出しステーション106A,106Bの上方側に除滓ステーション109A,109Bが設けられており、平面視では、払い出しステーション106A,106Bと除滓ステーション109A,109Bとは同一の区切り番号位置に存在する点が、本転炉設備1とは大きく異なっている。加えて、従来例では取鍋103の稼働本数は2本である。
【0029】
クレーン104A,104Bの動き関しては、まず、クレーン104Aが空の取鍋103を把持し、払い出しステーション106A(ピットA)に据え付ける。その後、この取鍋103には、混銑車105から溶銑が払い出され、成分測定や温度測定が行われる。そして、該取鍋103はクレーン104Aで吊り下げられて上方へ持ち上げられ、除滓ステーション109Aへ移送される。
このとき、クレーン104Bで吊り下げられたままの取鍋103は、除滓ステーション109Bに配置されて、当該取鍋103内のスラグがノロカキ108Bで掻き出されるものとなっている。その後、クレーン104Bの取鍋103は、転炉102Aの位置に移送され、溶銑が転炉102Aに装入されることになる。溶銑装入が完了し、空になった取鍋103は払い出しステーション106Bに搬送されて据え付けられ、溶銑の払い出しが始まる。このとき、クレーン104Bは払い出しステーション106Bの上空で待ちの状態となる。
【0030】
払い出しステーション106Bでの溶銑払い出しがある程度進んだ状況下で、クレーン104Aに吊り下げられている取鍋103の除滓が完了するため、クレーン104Aを転炉102Bまで移動させ、クレーン104Aに吊り下げられている取鍋103から転炉102Bに溶銑を装入するようにする。このとき、クレーン104Aの移動をスムーズに行うため、同時にクレーン104Bを転炉102Cの前まで移動する。
転炉102Bへの溶銑装入を終えた取鍋103は、クレーン104Aにより再度払い出しステーション106Aの位置まで移動させられ据え付けられることになり、クレーン104Aの1サイクルが終了することになる。
【0031】
このとき、転炉102C前(区切り番号6)に待避していたクレーン104Bは、払い出しステーション106Bの上方へ移動してきて、成分測定や温度測定が終了した取鍋103を再度吊り上げる。これによりクレーン104Bの1サイクルが終了する。
本実施形態の場合、取鍋103とクレーン104と払い出しステーション106とは常に対応しており、ある取鍋103を把持するのは常に決まったクレーン104であり、取鍋103は、常に同一払い出しステーション106に配置される。なお、クレーン104の1サイクルにかかる時間、すなわちサイクルタイムは、図3(a)から33分であることが判る。
【0032】
払い出しステーション6に常時載置されている取鍋数について考えると、図3(a)から判るように、常時配置取鍋数は0本又は1本であり、払い出しステーション6に全く取鍋3が配置されていない状況が存在している。
一方、図3(b)には、本実施形態のクレーン4の動きとそれに伴う取鍋3の動き(物流)が示してある。
クレーン4の動きに関しては、まず、クレーン4Aは、払い出しステーション6Bに空の取鍋3を据え付けるようにする。その後、払い出しステーション6Aに移動し、溶銑払い出しが終わると共に溶銑の成分測定や温度測定が完了した取鍋3を吊り上げ、除滓ステーション9Aへ移送する。この除滓ステーション9Aでは、取鍋3は吊り下げられた状態であって、取鍋3内のスラグがノロカキ8Aで掻き出されるものとなっている。
【0033】
そのとき、クレーン4Bは別の取鍋3を吊り下げ中であり、その取鍋3は除滓ステーション9Bに配置され、ノロカキ8Bでスラグ除去が行われている。かかる除滓が完了すると、クレーン4Bは転炉2Aの前まで移動し、溶銑が取鍋3から転炉2Aに装入されることになる。溶銑装入が完了し空になった取鍋3は、クレーン4Bに吊られたまま、払い出しステーション6Aに搬送されて据え付けられ、溶銑の払い出しが始まる。
払い出しステーション6Aへ取鍋3が据え付けられる状況は、ガントチャート中のP部で示されており、これは、図3(a)のR’部がR部まで早まったことを意味している。P部の状況を別の観点で見ると、除滓ステーション9Aと払い出しステーション6Aとが平面視でクレーン1基分だけ離れているため、両ステーション同時にクレーン4が位置することが可能となっていることを意味し、除滓と溶銑払い出しがパラレルに行われて、溶銑供給処理を効率的に進めていることの現れとなっている。図10のケースCがこの状況に相当し、従来(ケースA)のクレーンのサイクルタイムが33分/回に対して、除滓ステーション9Aと払い出しステーション6Aとが離れているために差し合いが起こらず、クレーンサイクルが29分/回と短くなっている。
【0034】
この後、クレーン4Bは、払い出しステーション6Aにある取鍋3の溶銑払い出し完了を待つのではなく、すぐ隣の払い出しステーション6Bにある、溶銑が満たされた取鍋3を吊り下げに行く。その間、クレーン4Aはこの吊り上げを待つため、除滓ステーション9Aの位置で待機することになる。
払い出しステーション6Bの取鍋3を吊り上げたクレーン4Bは、そのまま、除滓ステーション9Bに移動すればベストであるが、除滓ステーション9Aにある取鍋3を転炉2Aの前に移動させる必要があるため、一旦、転炉2Cの前まで移動するようになる(逃げる)。
【0035】
そのクレーン4Bに追従するようにクレーン4Aは転炉2Bの前まで移動し、転炉2Bへの溶銑装入が行われる。装入が終わり、空になった取鍋3は必ず1つが空き状態となっている払い出しステーション6(この場合、払い出しステーション6B)に据え付けられ、次の溶銑が装入されることになる(図3(b)のQ部)。その後すぐに、クレーン4Aは、取鍋3への溶銑装入の終了を待つことなく、払い出しステーション6Aに配置された溶銑装入完了後の取鍋3を吊り下げるようにする。これによりクレーン4Bの1サイクルが終了する。本実施形態の場合、クレーン4の1サイクルにかかる時間(サイクルタイム)は、図3(b)から29分であることが判る。なお、転炉2Bの前(区切り番号5)に逃げていたクレーン4Bは、クレーン4Aが払い出しステーション6Bに移動した際に、それに隣接する除滓ステーション9Bに移動し、スラグの除滓をノロカキ8Bで行う。
【0036】
払い出しステーション6に常時載置されている取鍋数について考えると、図3(b)から判るように、転炉工程のどの部分をとっても、常時配置取鍋数は1本又は2本であり、払い出しステーション数−1=2−1=1以上となっている。
加えて、本実施形態では、さらなるクレーン4のサイクルタイム短縮のために、当該転炉設備1に、取鍋3の補修や地金取り作業を行う待機ステーション13を設けるようにしている。
併せて、取鍋3の稼働本数とは別に更に1本の取鍋3を用意し、両者を併せて稼働させ、該取鍋3のいずれか1つを前記待機ステーション13に配置するようにクレーン4を操作している。待機ステーション13に配置された取鍋3では、取鍋3に付着した地金やスラグを定期的に除去するようにする。
【0037】
すなわち、転炉2への溶銑供給能力を向上させるためには、溶銑供給を行う取鍋3の数を増加させるとよい。しかしながら、取鍋3の稼働本数が増えることにより、取鍋1本あたりの循環時間が延長し、取鍋3のスラグライン等に地金やスラグが付着生成するようになる。そこで、これに対応して転炉操業を円滑に行うためには、稼働している取鍋3をさらに1本増やして、増やした取鍋3を載置する待機ステーション13を設けるとよい。待機ステーション13に配置された取鍋3に関し、その地金やスラグを定期的に除去するようにすることで、地金やスラグが付着せずに安定して使用できる取鍋3を確実に確保することができるようになる。
【0038】
しかしながら、待機ステーション13にある取鍋3は、内部に溶銑を受けていない空の取鍋であり、空鍋の状態が長時間続くと取鍋3の内側の耐火物の温度が下がり、「次に溶銑を受けた際に地金付着が発生して安定操業が難しくなる」、「熱ロスが大きくなり、転炉2に装入する溶銑の温度が低くなる」、「耐火物が装入された溶銑により熱膨張し剥離したりする」等の不都合が生じる。そこで、本実施形態の場合、待機ステーション13にある取鍋3内にバーナー等を差し入れ火炎を発生させることで、地金取り後などに取鍋3内を加熱し、上記の問題が発生することを防ぐようにしている。図10のケースDなどがこの状況に相当し、このケースでは、取鍋3の数を払い出しピット数+1とした上で、更にもう1本の取鍋3を用い、合計4本の取鍋3を使用している。
【0039】
図4,図5には、転炉設備の第2実施形態が示してある。
本転炉設備1は、脱硫ステーション14A、脱硫ステーション14Bを有し、該脱硫ステーション14A、脱硫ステーション14Bは、走行レール7の番号1,2の場所で、走行レール7の側方側にそれぞれ配置されている。加えて、区切り番号0の位置に前ノロカキを配置し除滓ステーション9としていると共に、転炉2Aと転炉2Bの2基を備えるものとなっている。その他の構成は第1実施形態と略同様である。
図9は、本実施形態の条件下で、式(1),式(2)に基づいて、溶銑装入ピッチPtに応じた最適な取鍋3の稼働本数を示したものである。図9の横軸は溶銑装入ピッチPtであり、縦軸は取鍋3の稼働本数である。
【0040】
計算条件は、クレーン正味サイクルタイムが30分/サイクル、正味サイクルタイムが66分/サイクルであり、クレーン基数は2基、払い出しピット数は2、除滓ステーション数も2である。
式(1)の右辺は破線で示されており、式(1)の左辺は実線で示されている。かかる実線と破線とで示された領域が取鍋3の稼働本数を示している。例えば、溶銑装入ピッチPtが40分の場合、取鍋3を1本または2本稼働すればよく、Pt=20分の場合、取鍋の稼働本数は2本〜4本の中のいずれかとするとよい。
【0041】
式(2)で示される範囲は、図中の縦線Lより右側の領域であり、転炉設備1に実際に適用できるのは、取鍋3の稼働本数が5本以下の場合である。
図10のケースLは、取鍋3の稼働数を4本とした場合の操業実績であり、従来(ケースFなど)のクレーンのサイクルタイムが45分/回に対して、取鍋3の数が適切であるため、クレーンサイクルが33分/回と短くなっている。
本転炉設備1内での取鍋3の移動は、まず、混銑車5が転炉設備1に到着した後、払い出しステーション6A,6Bに載置された取鍋3に、混銑車5から溶銑が注ぎ込まれる。溶銑が装入された取鍋3は、脱硫ステーション14A,14Bに移送され、かかる脱硫ステーション14で、溶銑にCaO等の副原料を投入することで、溶銑内の硫黄Sをスラグ層へ移行し、溶銑内の硫黄成分(S)を所定のものとする。各脱硫ステーション14A,14Bには、脱硫処理で生じたスラグを掻き出すためのノロカキ8A,8Bが設置してあり、生じたスラグを掻き出すようにしている。
【0042】
脱硫処理の終わった溶銑が装入されている取鍋3は、クレーン4A,4Bにより転炉2A,2Bのいずれかの前に移送され、該転炉2を傾動すると共に取鍋3を傾けることで、転炉2内に溶銑を払い出すようにする。
本実施形態では、前記脱硫ステーション14A,14Bに常時配置されている取鍋3の本数が「脱硫ステーション総数−1」以上となるように、クレーン4A、4Bで取鍋3のハンドリングを行うこととしている。すなわち、払い出しステーション6に適用した、クレーン4をもっとも効率的に使用するための考え方を、脱硫ステーション14に適用したものである。
【0043】
詳しくは、2つの脱硫ステーション14A又は14Bの一方に取鍋3が常に1本配置され(脱硫ステーション数−1=2−1=1)、いかなる状況下でも、脱硫処理待ち状態か、脱硫処理が行われている状態としている。同時に他方の脱硫ステーション14B又は14Aをいつも空き状態としている。ゆえに、クレーン4A,4Bは、取鍋3を脱硫ステーション14A又は14Bのいずれかに設置した後、隣すなわち14B又は14Aにある取鍋3をすぐ把持することができるため、取鍋3の物流が非常に効率的に行われ、転炉2への溶銑供給を効率的に行うことができるようになる。
【0044】
図6には、以上述べた転炉設備1の脱硫処理を詳細に表したガントチャートが示してある。本ガントチャートでの取鍋3の稼働本数は3本(式(1)及び式(2)を満たす)である。
このガントチャート中、例えば、P部に着目すると、クレーン4Aは、脱硫ステーション14Bに溶銑が装入された取鍋3を載置した後に、待ち時間なくすぐに、払い出しステーション6Aへ移動し、払い出しの終わった取鍋3を吊り下げるようにしている。
また、Q部に着目すると、クレーン4Bは、払い出しステーション6Bに空の取鍋3を据え付けた後すぐに、脱硫ステーション14Bのノロカキ8が終わった取鍋3を吊り下げに行っている。R部に着目すると、クレーン4Bは、空の取鍋3を払い出しステーション6Bに据え付けた後、すぐに、脱硫ステーション14Aにある脱硫処理完了後の取鍋3を吊り上げるようにしている。
【0045】
一方、ガントチャートのS部やT部に着目すると、取鍋3の稼働数を「払い出しステーション数+1=2+1=3」としていることにもなるため、脱硫ステーション14Aに第1の取鍋3が配置され、溶銑に対して処理が行われていると共に、第2の取鍋3から転炉2に溶銑装入が行われている際に、第3の取鍋3に対し前ノロカキ8Fで除滓処理が行われるようになっている。このように3つの取鍋3がパラレルに稼働しているため、非常に効率よく溶銑を転炉2に供給できるようになっている。図10のケースBがこの状況に相当し、取鍋3の数を払い出しピット数+1として、3本の取鍋3を使用している。これにより、従来(ケースA)のサイクルタイムが33分/回に対して、クレーンサイクルが31分/回と短くなっている。
【0046】
本脱硫処理においても、第1実施形態と同様に、払い出しステーション6と除滓ステーション9とをクレーン4の移動方向にクレーン1基分以上離して設け、該払い出しステーション6及び除滓ステーション9への同時配置を許すように取鍋3をクレーン4でハンドリングすることは非常に好ましい。詳しくは、図4に示すように、払い出しステーション6A(区切り番号1)に隣接する区切り番号0の場所に前ノロカキ8Fを配置し、除滓ステーション9として、2つの取鍋に対して溶銑払い出しと除滓を同時に行うとよい。同時に行ったとしても、払い出しステーション6Aと除滓ステーション9とは平面視で重なり合う部分がないため、クレーン4の差し合いは起こらないものとなっている。
【0047】
なお、本発明の転炉への溶銑供給方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。
すなわち、転炉は上吹き転炉、底吹き転炉、又は上底吹き転炉のいずれであってもよく、1つの転炉で脱りんと脱炭を行う、いわゆるダブルスラグ法を行っている転炉施設にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1実施形態にかかる転炉設備の正面概略図である。
【図2】第1実施形態にかかる転炉設備の平面概略図である。
【図3】第1実施形態にかかる転炉設備でのガントチャートであり、(a)は従来例、(b)は第1実施形態のものである。
【図4】第2実施形態にかかる転炉設備の平面概略図である。
【図5】第2実施形態にかかる転炉設備の平面概略図である。
【図6】第2実施形態の転炉設備における脱硫処理ガントチャートの一部である。
【図7】溶鋼生産状況と取鍋の稼働本数との関係を示した図である。
【図8】第1実施形態における溶銑装入ピッチと取鍋の稼働本数との関係を示した図である。
【図9】第2実施形態における溶銑装入ピッチと取鍋の稼働本数との関係を示した図である。
【図10】各実施形態における操業実績が示された図である。
【図11】従来例における転炉設備の平面概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 転炉設備
2 転炉(2A〜2C)
3 取鍋
4 クレーン(4A,4B)
5 混銑車
6 払い出しステーション(6A,6B)
9 除滓ステーション(9A,9B)
14 脱硫ステーション(14A,14B)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉と、この転炉へ溶銑を装入する取鍋と、この取鍋へ溶銑払い出しが行われる払い出しステーションと、この払い出しステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋を所定のサイクルでハンドリングするクレーンとを有する転炉設備で、
前記クレーンが転炉へ溶銑を装入する時間間隔を溶銑装入ピッチPtとして、この溶銑装入ピッチPtに応じて、前記取鍋の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋をクレーンでハンドリングして、転炉に溶銑を供給することを特徴とする転炉への溶銑供給方法。
【請求項2】
前記取鍋の稼働本数を、溶銑装入ピッチPt及びクレーン正味稼働時間Cnを含む次式を満たすように決定することを特徴とする請求項1に記載の転炉への溶銑供給方法。
ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)
・・・(1)
Pt ≧ Cn/R ・・・(2)
Cn:クレーン正味サイクルタイム (分/サイクル)
Tn:正味サイクルタイム
=溶銑払い出し、脱硫処理などの各工程にかかる時間の総和
+Cn(分/サイクル)
R :クレーン基数(基)
Pt:溶銑装入ピッチ (分/チャージ)
ROUND_UP(X):Xを切り上げる
【請求項3】
前記転炉設備は取鍋の補修や地金取り作業を行う待機ステーションを有しており、請求項1又は2で設定された取鍋の稼働本数+1の取鍋を稼働させ、該取鍋のいずれか1つを前記待機ステーションに配置するようにしていることを特徴とする転炉への溶銑供給方法。
【請求項4】
前記待機ステーションにある取鍋に対して加熱を行うようにしていることを特徴とする請求項3に記載の転炉への溶銑供給方法。
【請求項1】
転炉と、この転炉へ溶銑を装入する取鍋と、この取鍋へ溶銑払い出しが行われる払い出しステーションと、この払い出しステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋を所定のサイクルでハンドリングするクレーンとを有する転炉設備で、
前記クレーンが転炉へ溶銑を装入する時間間隔を溶銑装入ピッチPtとして、この溶銑装入ピッチPtに応じて、前記取鍋の稼働本数を設定し、該設定された稼働本数分の取鍋をクレーンでハンドリングして、転炉に溶銑を供給することを特徴とする転炉への溶銑供給方法。
【請求項2】
前記取鍋の稼働本数を、溶銑装入ピッチPt及びクレーン正味稼働時間Cnを含む次式を満たすように決定することを特徴とする請求項1に記載の転炉への溶銑供給方法。
ROUND_UP(Cn/R/Pt)≦ 取鍋の稼働本数 ≦ ROUND_UP(Tn/R/Pt)
・・・(1)
Pt ≧ Cn/R ・・・(2)
Cn:クレーン正味サイクルタイム (分/サイクル)
Tn:正味サイクルタイム
=溶銑払い出し、脱硫処理などの各工程にかかる時間の総和
+Cn(分/サイクル)
R :クレーン基数(基)
Pt:溶銑装入ピッチ (分/チャージ)
ROUND_UP(X):Xを切り上げる
【請求項3】
前記転炉設備は取鍋の補修や地金取り作業を行う待機ステーションを有しており、請求項1又は2で設定された取鍋の稼働本数+1の取鍋を稼働させ、該取鍋のいずれか1つを前記待機ステーションに配置するようにしていることを特徴とする転炉への溶銑供給方法。
【請求項4】
前記待機ステーションにある取鍋に対して加熱を行うようにしていることを特徴とする請求項3に記載の転炉への溶銑供給方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−117971(P2006−117971A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304861(P2004−304861)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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