説明

転炉出鋼口部へのブロックれんがの施工方法

【課題】転炉の炉体を垂直姿勢を保持したままの状態で、特別な設備を使用することなく、該ブロックれんがの全ての積み付けができるような方法を提案する。
【解決手段】炉体が垂直姿勢の状態において、出鋼口まわりの内張りれんが4aの積み付けを行った後、まず、炉内側端面にフランジ7fをもつ鉄製ダミーパイプ7を上記炉内側ブロックれんがに嵌め入れると共に、そのフランジ7fを炉内側ブロックれんが4aの稼動面に係止し、次いで、炉体は垂直姿勢のまま、出鋼口の炉外側に突出する上記ダミーパイプ7の先端部から炉外側ブロックれんが4b、4cの1〜複数個を順次に嵌め合わせて、上記炉内側ブロックれんが4aと同軸に繋ぎ合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉出鋼口部へのブロックれんがの施工方法に関し、特に、出鋼孔形成用ダミーパイプを使って、ブロックれんがを非傾動積み付け方式によって施工する方法を提案する。
【背景技術】
【0002】
転炉は、炉体の上部に精錬終了後の溶鋼を取鍋に流出(出鋼)させるためのスナウト状出鋼口を備えている。この出鋼口部内には、通常、永久れんがや内張りれんがと共に、取付け取外しの容易なブロックれんが(「スリーブれんが」ともいう)を施工するのが普通である。それは、出鋼口部のれんがは、最も損耗の激しい部分であることから、このブロックれんがおよびそのまわりに施工されているキャスタブル耐火物や一部の内張りれんが等の張り替え、即ち補修を頻繁に行わなければならないからである。この点、ブロックれんがを用いると、出鋼口部のれんがの補修が従来の一般的なれんが積み工法と比べて負担が比較的少ないからである。
【0003】
従来、転炉出鋼口部にブロックれんが(スリーブれんが)を施工する方法としては、まず、転炉の炉体を垂直姿勢(以下、このことを「炉垂」と言う)に保持した状態の下で、絞り部2を含む出鋼口1まわりの内張りれんが3および炉内側ブロックれんが4aを積み上げる築炉作業を行う。その後、転炉を90°傾転させて、図1に示すように、出鋼口スナウト5の軸線方向が垂直を指向する向きに姿勢制御する。そして、この傾転姿勢の下で、出鋼口部内の炉外側に積み重ねるべき複数のブロックれんが(図示例では2個)4b、4cをクレーン等の捲揚機を使って、出鋼口スナウト5内に落し入れて順次に積み重ねる。その後、出鋼口スナウト5とブロックれんが4との隙間にキャスタブル耐火物を流し込み、さらにフランジ蓋6を取付けて、出鋼口を形成するのが最も一般的である。
【0004】
このような施工方法に対し、築炉作業の半ばに、上述したように転炉の姿勢を傾転させると、既設れんががずれたり、脱落が発生しやすいという問題解消するための、幾つかの技術が提案されている。
【0005】
例えば、ブロックれんがを用いる改良技術に限ってみると、従来、特許文献1に開示されているような方法がある。この開示技術は、長手方向に継ぎ目のない一体成形された出鋼孔用ブロックれんがを、“炉垂”のままの転炉に対し、テーブルリフターならびにローラーテーブルを配置して、炉外より出鋼口内に水平方向から引き込む工法である。
【0006】
また、特許文献2には、スリーブれんが(ブロックれんが)の交換および補修に際し、複数個のスリーブれんがをフランジ付パイプ状の、れんが押さえ金物にて支持し、その押さえ金物のフランジ部を炉外において炉体フランジ部に溶着固定して、スリーブれんが取付け姿勢を調節することで、前記補修作業を容易にかつ短時間で行う方法について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−161093号公報
【特許文献2】特開平7−234078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示の方法は、図1に示すような既知技術の問題点の解消には有効な方法であるが、一体成形された大型の出鋼口ブロックれんがを移動させるためのテーブルリフター等の設備が別途必要になり、設備コストが過大になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示の方法は、スリーブれんがにフランジ付き押さえ金物を装着する方法を提案していて、出鋼口部にスリーブれんがそれ自体を該押さえ金物を使って積み付ける方法を提案するものではなく、本発明で求めているような、スリーブれんがの有効な積み付け工法までを開示するものではない点で、上述した課題がそのまま残っている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、出鋼口部用ブロックれんがの簡単な積み付け方法を提案することにある。特に、本発明は、転炉の炉体を垂直姿勢を保持したままの状態で、特別な設備を使用することなく、該ブロックれんがの全ての積み付けができるような方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来技術が抱えている上述した課題を克服できる、出鋼口部にブロックれんがを施工する方法について鋭意研究した結果、発明者らは、次のような要旨構成に係る本発明に想到した。即ち、本発明は、炉体が垂直姿勢の状態において、出鋼口用炉内側ブロックれんがおよび絞り部ワークれんがを含む出鋼口まわりの内張りれんがの積み付けを行った後、まず、炉内側端面にフランジをもつ鉄製ダミーパイプを、上記炉内側ブロックれんがの出鋼孔内に嵌め入れると共に、そのフランジを炉内側ブロックれんがの稼動面にボルトで係止し、次いで、炉体を垂直姿勢のまま、出鋼口の炉外側に突出する上記ダミーパイプの先端部から炉外側ブロックれんがの1〜複数個を順次に嵌め合わせて、上記炉内側ブロックれんがと同軸に繋ぎ合わせることを特徴とする転炉出鋼口部へのブロックれんが施工方法である。
【0012】
また、本発明においては、炉外側ブロックれんがの取付けが終った後、ダミーパイプの余分な先端部を切断し、出鋼口スナウト先端に流し込み枠を仮付けして該ブロックれんがまわりの空隙部にキャスダブル耐火物を流し込むことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明においては、キャスダブル耐火物の流し込み充填の後、流し込み枠を外して、孔穿きフランジ蓋を出鋼口スナウト先端のフランジ部に取付けることがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
前記のように構成される本発明によれば、基本的に、出鋼口部へのブロックれんがの施工を短時間で容易にかつ低コストで行うことができる。さらに、本発明方法の場合、次のような効果が期待できる。
イ.複数のブロックれんがを分割施工する場合に有効である。
ロ.転炉の炉体を傾転させないので、絞り部などのワークれんがの脱落、ずれ、抜けなどが防止することができる。
ハ.鉄製のダミーパイプを使ってブロックれんがの接合を行うので、出鋼孔の芯ずれを防ぐことができる。
ニ.出鋼口スナウトが炉垂の状態において上向き傾斜しているような転炉の出鋼口部へのブロックれんが施工作業に適用して特に有効である。
ホ.非傾動積み施工を行うので、出鋼口部への炉外側ブロックれんが施工作業を、炉壁れんが積み作業と平行してできるので、築炉の施工時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の出鋼口部ブロックれんがの積み付け方法を説明する出鋼口まわりの部分断面図である。
【図2】本発明方法に従う出鋼口部ブロックれんがの積み付け方法を説明する出鋼口まわりの部分断面図である。
【図3】本発明方法に従う出鋼口部へのキャスタブル耐火物を流し込むときの形態を示す部分断面図である。
【図4】本発明方法を適用するのに好適な転炉の形態の一例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2は、本発明に係る転炉出鋼口部へのブロックれんが(出鋼孔用スリーブ形れんが)の施工方法の一例を説明する図である。本発明の最も特徴的なことは、転炉の炉体を、通常の炉壁れんが、即ち、パーマネントれんがやワークれんがの施工のみならず、出鋼口部へのブロックれんがの積み付け施工についても、炉体を垂直姿勢を保持させたまま、所謂、非傾動積み付け方式を採用している点にある。以下、この方法について、詳しく説明する。
【0017】
図2に示したように、本発明においては、まず、転炉の炉壁れんがのうち、出鋼口1まわりの、例えば、側壁ワークれんが3a、絞り部ワークれんが3b、および分割施工するスリーブ状ブロックれんが4のうちの、炉内側ブロックれんが4aを予め積み付けておく。
【0018】
次に、前記炉内側ブロックれんが4aの孔内に、炉内側から、装着時において炉内側となる端面に、図2(b)に示すようなフランジ7fを有する鉄製のダミーパイプ7を炉外方向に向けて挿入する。なお、このダミーパイプ7はブロックれんが4a〜4cの取付ガイドの役目を担うものである。次に、該フランジ7fを、アイボルト8の如き鋲着手段を介して、敷設後の炉内側ブロックれんが4aの稼動面(炉内側端面)に係止して、所定の向きに固定する。因みに、これらの作業は既設のクレーンを使って施工する。このように利用されるダミーパイプ7は、出鋼時に溶解してやがて消滅するものである。
【0019】
次に、図示しないクレーンおよび/または、チェーンブロック9を使って、出鋼口スナウト5の炉外側から、炉外側ブロックれんが4b、4cを前記ダミーパイプに順次に装着する。即ち、出鋼口スナウト5から、望ましくは炉外に突出しているダミーパイプ7に炉外側ブロックれんが4bを外嵌めする態様で嵌合して、前記炉内側ブロックれんが4aの端面に接合し、その後、炉外側ブロックれんが4cを同様の作業を繰り返して接合し、出鋼孔を形成する。
【0020】
このようにして、ブロックれんが4a〜4cの接合が終ったら、ダミーパイプの先端部、即ち、出鋼口スナウト5の先端部フランジ5aから突出している部分を切断し、これらの端面どうしが略揃うように加工する。
【0021】
その後、出鋼口スナウトのフランジ5aの部分に、ベニヤ板などからなる注ぎ口10aを形成してなる流し込み枠10を仮付け固定する。そして、出鋼口スナウト5とブロックれんが4b、4cとの間に生じている空隙部に、キャスタブル耐火物を流し込んで充填する。
【0022】
前記空隙部へのキャスタブル耐火物11の充填が終ったら、前記流し込み枠10を取り外し、その代わりに、出鋼口スナウト5のフランジ5a外端面に、孔穿きフランジ蓋12を溶着固定することにより出鋼孔をのぞく出鋼口部を塞いで施工を終了する。
【0023】
本発明の前述の施工方法は、図4に示すような、例えば、転炉上部の絞り部傾斜面に出鋼口5を突設した態様の転炉に適用した場合に効果が大きい。
その理由は、このような転炉の場合、出鋼口が上向きに傾いているために、分割ブロックれんがどうしの位置合わせ時にずれが生じやすく、その防止のための作業に時間を必要とするところ、本発明方法ではこのような余分な作業が不要になるからである。
【0024】
発明者らが、実際に本発明方法に従う施工方法を実施したところによると、炉内側ブロックれんが稼動面へのダミーパイプの固定、炉外側ブロックれんがの取付け、ダミーパイプ先端部の切断、流し込み枠の取り付けおよびキャスタブル耐火物の流し込み、枠外し、フランジ蓋取付け固定の作業を、従来方法の下では30時間程度かかっていたものを、約6時間に短縮することができた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
前述した本発明にかかるブロックれんが施工方法の技術は、転炉出鋼口部のブロックれんがの積み付け作業のみならず、他の冶金炉等の同様の構造からなるれんが積み工法への応用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体が垂直姿勢の状態において、出鋼口用炉内側ブロックれんがおよび絞り部ワークれんがを含む出鋼口まわりの内張りれんがの積み付けを行った後、まず、炉内側端面にフランジをもつ鉄製ダミーパイプを、上記炉内側ブロックれんがの出鋼孔内に嵌め入れると共に、そのフランジを炉内側ブロックれんがの稼動面にボルトで係止し、次いで、炉体は垂直姿勢のまま、出鋼口の炉外側に突出する上記ダミーパイプの先端部から炉外側ブロックれんがの1〜複数個を順次に嵌め合わせて、上記炉内側ブロックれんがと同軸に繋ぎ合わせることを特徴とする転炉出鋼口部へのブロックれんが施工方法。
【請求項2】
炉外側ブロックれんがの取付けが終った後、ダミーパイプの余分な先端部を切断し、出鋼口スナウト先端に流し込み枠を仮付けして該ブロックれんがまわりの空隙部にキャスダブル耐火物を流し込むことを特徴とする請求項1に記載の転炉出鋼口部へのブロックれんが施工方法。
【請求項3】
キャスダブル耐火物の流し込み充填の後、流し込み枠を外して、孔穿きフランジ蓋を出鋼口スナウト先端のフランジ部に取付けることを特徴とする請求項2に記載の転炉出鋼口部へのブロックれんが施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−162784(P2012−162784A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25628(P2011−25628)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】