説明

転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造

【課題】 転炉設置個所に足場組みを必要とせず安全かつ迅速に熱電対の設置可能な転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造を提案することを目的とする。また、本発明は、転炉鉄皮の任意の個所において鉄皮温度を測定可能とする転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造を提案する。
【解決手段】 転炉炉体鉄皮4の内面側において測温接点を接触させたシース熱電対取付け部20と、前記転炉炉体鉄皮の炉口防滓板7の下側に位置する箇所から前記シース熱電対のシース線を前記転炉炉体鉄皮の外面側に引出すシース線引出し部Qと、前記シース熱電対のシース線を前記転炉炉体鉄皮と永久張り耐火物の間を通してシース熱電対取付け部20からシース線引出し部Qまで配線するシース線配線部26から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼用転炉は、鉄皮の内側に耐火物を施工して構築されており、炉内に挿入された銑鉄に酸素を供給して鋼に精錬する冶金炉である。かかる転炉の内張り耐火物は、精錬チャージを重ねるにしたがって次第に溶損してその厚さが薄くなる。耐火物の厚みが薄くなると鉄皮の受ける熱負荷が大きくなり、炉体の変形が加速され、転炉の傾動操作に支障を来たすなど、転炉の円滑操業の妨げになる。そこで、上記転炉本体の操業時の温度を実測し、あるいは推定して転炉本体の交換時期を適切化することが行われている。
【0003】
このような転炉炉体鉄皮の測定手段としては、例えば、特許文献1の第1図に開示されているように、転炉炉体鉄皮の適当箇所に温度センサー、例えば熱電対を取付けることが一般的に行われている。同様の手段が特許文献2にも示されており、この手段では多数の測定センサーのケーブルが纏められた上で、転炉のトラニオン軸を通して測定値変換装置に接続されている。
【0004】
【特許文献1】実開昭63−131746号公報
【特許文献2】特開平1−104712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の箇所への熱電対の取付け作業は、転炉周りに足場を組み、作業員がトラニオンの空気孔の内側や防滓板下側などの取付け箇所に入り込んで行う高所危険作業である。加えて、これらの取付け箇所には、転炉鉄皮の構造物が重なり合うように覆い被さっているなど、取付け箇所が狭隘であり、そのため取付け作業が難渋する。このため、熱電対の取付け作業には上記足場組みの作業を含めて半日以上を要するなど、作業能率の低さが指摘されてきた。
【0006】
また、熱電対の測定箇所もトラニオンの空気孔の内側や防熱板下側など、操業上の支障を来たさず、かつ、熱電対が容易に脱落しない箇所に限定されており、任意の個所の温度変動を連続的に測定することが困難であり、転炉の状態を十分察知することができないという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記転炉鉄皮温度測定のための熱電対取付け作業にかかる問題の根本的解決を図ることを目的とし、転炉設置個所に足場組みを必要とせず安全かつ迅速に熱電対の取付け可能な転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造を提案することを目的とする。また、本発明は、転炉鉄皮の任意の個所において鉄皮温度を測定可能とする転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造は、転炉炉体鉄皮の内面側に位置し、測温接点を接触させたシース熱電対取付け部と、前記転炉炉体鉄皮の炉口防滓板の下側に位置し、前記シース熱電対のシース線を前記転炉炉体鉄皮の外面側に引出すシース線引出し部と、前記シース熱電対のシース線を前記転炉炉体鉄皮と永久張り耐火物の間を通してシース熱電対取付け部からシース線引出し部まで配線するシース線配線部から構成されている。
【0009】
上記発明において、上記シース線引出し部は、転炉炉体鉄皮の貫通孔に、内部をガスパージ可能に構成したシース線引出し管を備えたものであるものとするのが好適である。
【0010】
また、上記に代えて、シース線引出し部を、転炉炉体鉄皮の貫通孔にシース線を気密に引出し可能な耐熱シール部を備えたものとすることもできる。
【0011】
さらに、上記発明において、シース熱電対を複数個取付けるとともに、該複数のシース熱電対のシース線を鉄皮下においてシース線群に纏める鉄皮下シース線結束部と、該鉄皮下シース線結束部で結束されたシース線群を転炉炉体鉄皮の外面上に引出すシース線引出し部とを有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造は、基本的に築炉作業時に熱電対取付け作業を行うことが可能となり、その取付けのための足場組みの作業が不要となり、作業能率の向上を図ることができる。また、熱電対の取付け箇所を任意に幅広く選定することができ、転炉鉄皮の測温ひいては転炉の使用管理をより的確に行い得るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の適用された転炉の概略構成を示す側面図である。本例では、転炉本体1において、その鉄皮4の所定箇所に測温部P(P,P,P等)が置かれ、これら測温部Pに対応してシース線引出し部Q(Q,Q,Q等)が配置されている。これら引出し部Qは、図示のように各測温部に対応させて設けることができるほか、各測温部から延びるシース線を一箇所にまとめるように構成することもできる。測温部Pの鉄皮直下が熱電対取付け部20となっており、ここから前記シース線引出し部Qとの間にはシース線23が延びている。また、シース線引出し部Q(Q,Q,Q等)からは、補償導線12が延び、トラニオン軸3の中心に穿たれた貫通孔11を通して図示しない表示装置などに連結され、測温箇所P(P,P,P等)の温度を表示し、あるいは、その結果を利用して、炉体冷却などの制御ができるように構成されている。
【0014】
測温箇所P(P,P,P等)に対応する鉄皮直下の熱電対取付け部20には、図2及び図3に示すように、鉄皮4とその下に施工された永久レンガ5との間にシース線配線部26となるようにシース線敷設溝21が設けられ、このシース線敷設溝21内にシース熱電対24のシース線23が配線されている。シース熱電対24の先端部は測温接点22であり、該測温接点22が鉄皮4の内面側に接して鉄皮の温度を感知できるようになっている。この例では、シース線敷設溝21は永久レンガ5を僅かに削ることにより形成されているが、これに限られることなく、例えば鉄皮4の方を削ってシース線敷設溝21を形成することもできる。なお、永久レンガ5の内面側にはワークレンガ8が施工されている。
【0015】
上記シース線敷設溝21は、鉄皮4の直下において測温接点22からシース線引出し部Qの直下まで延伸される。延伸手段は、特に問うものではなく、例えば、図4の鉄皮直下の展開図によって示す経路aのように鉄皮4の直下を直線的に任意のシース線引出し部Qに至らしめてもよく、あるいは経路bのように適当な迂曲路を描いてシース線引出し部Qに至らしめてもよい。これらのほか、例えば経路cのように永久レンガ5の目地内を通してシース線引出し部Qに至らしめてもよい。
【0016】
シース線引出し部Qの位置は厳密に特定する必要はないが、少なくとも転炉の防滓板7の下側とする必要がある。シース線引出し部Qにおいては、シース熱電対24のシース線23が転炉外面上に露出しており、転炉操業時に炉口からスラグや地金が噴出するとシース線がこれらスラグや地金の熱により損傷する可能性があるので、これを防止するためである。なお、その効果を確実にするために、シース線引出し部Qの位置はできれば防滓板7の直下とするのが好ましい。
【0017】
シース線引出し部Qは、シース線引出し部Qに当たる位置において鉄皮4に適当な大きさのシース線引出し孔を設け、その孔から単にシース線を引出すようにするだけでもよいが、転炉鉄皮下の内張りレンガ(永久レンガ及びワークレンガ)からガスが噴出するおそれがあり、また、ガスによりシース線引出し部が局部的に高温になるおそれがあるので、たとえば、図5に示すように、シース線引出し部Qに転炉炉体鉄皮4の貫通孔31を設け、この貫通孔31内にシース線引出し管32を取付け、その内部に不活性ガス(例えば窒素ガス)吹き込み管33を臨ませたものとするのが好ましい。これにより、シース管23をガス漏れのおそれなく、かつシース線引出し部Qの温度上昇を抑制しながら鉄皮下のシース線敷設溝21から鉄皮上に取出すことができる。
【0018】
あるいは、これに代えて、図6に示すように、シース線引出し部Qに転炉炉体鉄皮4の貫通孔31を設け、該貫通孔31の内部に耐熱性の板状体34を嵌め込み、これを蓋体37とガスシール性のパテ35によってガスタイトに固定し、その中心孔38からガスシール性のパテ36を介してシース線23を炉外に引出すようにすることもできる。
【0019】
上述のようにして、シース線引出し部Qにおいて転炉外面側に引出されたシース線には、補償導線12がつなぎ込まれ、先に説明したように、トラニオン軸3を通して図示しない表示装置等に鉄皮4の温度情報が伝達されるようになっている。
【0020】
上記実施形態においては、シース線引出し部Qは、1対の熱電対に対応して1箇所設けられるようになっているが、シース線引出し部Qはガスタイトにかつ耐熱性を維持することが求められるので、これを数多く設けることは、経済上また保守点検の工数上、必ずしも好ましくない。かかる課題を解決するためには、鉄皮下に複数個取付けられたシース熱電対のシース線を鉄皮下においてシース線群に纏めた上で1箇所のシース線引出し部から転炉外に引出すようにするのがよい。
【0021】
図7は、かかる要求を満たすためのシース熱電対及びシース線の取付け状態を示す転炉炉体鉄皮内面側の展開図である。この例では、転炉鉄皮4の直下に配置されたシース熱電対の測温接点21A,21B,21Cから延びるシース線23A,23B,23Cが鉄皮下に置かれたシース線結束部25において1本のケーブル状のシース線群27に纏められ、該ケーブル27がシース線引出し部Q(この場合はケーブル引出し部になっている)に接続されるようになっている。
【0022】
本発明を実施するためには、転炉の構築時又は永久レンガ5の交換時に、鉄皮4の測温予定位置Pからシース線引出し部Qに至る適当なシース線敷設溝を設け、ここに熱電対24を敷設した後、シース線引出し部Qからシース線23を引出すことができるように鉄皮4を覆えばよい。なお、好ましくは、この際、図5,図6に示したガスパージ部材や耐熱ガスシール部材を設置するのが好ましい。
【0023】
上記のようにして、鉄皮下から転炉外に引出されたシース線23は、転炉上の適当な個所において補償導線12に接続され、前述のように、トラニオン軸3の中心に穿たれた貫通孔11を通して図示しない表示装置などに連結・配管され、測温箇所P(P,P,P等)の温度を表示し、あるいは、その結果を利用して、炉体冷却などの制御ができるように構成される。この際、補償導線を適宜まとめて耐熱管に収納して、前記配管を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の適用された転炉の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示した転炉のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B部分の拡大断面図であり、本発明に従うシース熱電対及びシース線の取付け部を示す。
【図4】転炉炉体鉄皮内面側のシース線敷設溝の配置状態を示す展開図である。
【図5】シース線引出し部Qの1実施形態を示す部分断面図である。
【図6】引出し部Qの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図7】本発明に従うシース熱電対及びシース線の取り付け状態の変形例を示す転炉炉体鉄皮内面側の展開図である。
【符号の説明】
【0025】
1:転炉本体
2:トラニオン
3:トラニオン軸
4:鉄皮
5:永久レンガ
7:防滓板
8:ワークレンガ
11:(トラニオン軸の)貫通孔
12:補償導線
20:熱電対取付け部
21:シース線敷設溝
22:測温接点
23:シース線
24:シース熱電対
25:シース線結束部
27:シース線群(ケーブル)
31:(鉄皮の)貫通孔
32:シース管引出し管
33:不活性ガス吹き込み管
34:板状体
35,36:(ガスシール性の)パテ
37:蓋体
38:中心孔
P:測温箇所
Q:シース線引出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉炉体鉄皮の内面側に位置し、測温接点を接触させるシース熱電対取付け部と、
前記転炉炉体鉄皮の炉口防滓板の下側に位置し、前記シース熱電対のシース線を前記転炉炉体鉄皮の外面側に引出すシース線引出し部と、
前記シース熱電対のシース線を前記転炉炉体鉄皮と永久張り耐火物の間を通してシース熱電対取付け部からシース線引出し部まで配線するシース線配線部からなることを特徴とする転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造。
【請求項2】
シース線引出し部は、転炉炉体鉄皮の貫通孔に、内部をガスパージ可能に構成したシース線引出し管を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造。
【請求項3】
シース線引出し部は、転炉炉体鉄皮の貫通孔にシース線を気密に引出し可能な耐熱シール部を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造。
【請求項4】
シース熱電対を複数個設置するとともに、該複数のシース熱電対のシース線を鉄皮下においてシース線群に纏める鉄皮下シース線結束部と、該鉄皮下シース線結束部で結束されたシース線群を転炉炉体鉄皮の外面上に引出すシース線引出し部とを有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の転炉炉体鉄皮温度測定用熱電対の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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