説明

軸不斉を有する光学活性アミノ酸誘導体及び該アミノ酸誘導体を不斉触媒として用いる光学活性化合物の製造方法

【課題】 高収率かつ高立体選択的な不斉反応を達成し得る非金属の新規不斉触媒を開発して、医薬等の合成中間体として有用な光学活性化合物の有利な製造方法を提供すること。
【解決手段】 一般式(I):
【化1】


(式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基または−COで表される基(ここで、Rは水素原子等を示す。)等を示し、RおよびRは同一または異なって、水素原子等を示す。)で表されるアミノ酸誘導体、およびその光学活性体を不斉触媒として用いる光学活性化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸不斉を有する新規な光学活性アミノ酸誘導体に関する。本発明のアミノ酸誘導体は、不斉合成用触媒として有用である。
さらに、本発明は、当該アミノ酸誘導体を不斉触媒として用いることを特徴とする光学活性化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発される医薬品は、薬効および安全性をより高めるため、そのほとんどがノンラセミックな医薬品になっている。これら光学活性医薬品を合成する上において従来は光学分割法が主流であったが、アトムエコノミーが高い不斉触媒合成に移行しつつあり、高収率かつ高光学純度を達成できる不斉触媒の開発がその根幹をなす技術として注目されている。また、不斉触媒合成は、医薬品のみならず、農薬や高機能性材料(例えば、液晶、非線形光学材料など)等様々な分野での応用も期待される。
【0003】
直接アルドール反応やO−ニトロソアルドール反応などのアルドール反応は、様々な医薬品の合成に使用されており(例えば、非特許文献1参照)、その不斉触媒合成への応用は極めて有用な技術となり得る。そのため、これまでに様々な不斉アルドール反応のための不斉触媒が報告されているが、そのほとんどは不斉配位子を有する遷移金属触媒を用いるものであった(例えば、非特許文献2参照)。
しかし、遷移金属触媒は毒性が強かったり、触媒活性が不安定なものが多く、その取扱いには注意を要する場合が多々ある。また反応に使用することにより触媒活性が劣化する場合が多く、その回収再利用は一般に困難である。さらには、金属廃液の処理が必要となるためコストが高くなる上に、環境上の問題もある。
【0004】
遷移金属を使用しない触媒的不斉アルドール反応として、L−プロリンなどのアミノ酸誘導体を不斉触媒として使用する方法が報告されている(非特許文献3または4参照)。しかし、その収率および立体選択性は低く、実用的に実施するには満足できるものではなかった。
【非特許文献1】「ヘルベチカケミカアクタ(Helvetica Chemica Acta)」,1987年,70巻,p.1412−1418
【非特許文献2】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,1999年,第121巻,p.669−685
【非特許文献3】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,2001年,第123巻,p.5260−5267
【非特許文献4】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,2003年,第125巻,p.10808−10809
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち本発明は、従来の不斉アルドール反応にみられる上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高収率かつ高立体選択的な不斉アルドール反応を達成し得る非金属の新規不斉触媒を開発して、当該不斉触媒を用いた新規不斉アルドール反応を提供することにより、医薬、農薬、高機能性材料等の合成中間体として有用な光学活性化合物の有利な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため、不斉アルドール反応の非金属不斉触媒として、軸不斉を有するアミノ酸誘導体に着目し、鋭意研究を行った。その結果、軸不斉源としてビナフチル構造を有する新規なアミノ酸誘導体が不斉アルドール反応の優れた非金属不斉触媒となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]一般式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または−COで表される基(ここで、Rは水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)を示し、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基、低級アルコキシ基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(I)ともいう。)またはその塩。
[2]Rが水素原子、原子置換基を有していてもよいフェニル基またはカルボキシル基である、上記[1]記載の化合物またはその塩。
[3]光学活性である、上記[1]または[2]記載の化合物またはその塩。
[4]上記[3]記載の化合物またはその塩を含有することを特徴とする不斉触媒。
[5]不斉アルドール反応、不斉マンニッヒ型反応、不斉ハロゲン化反応または不斉マイケル反応のための不斉触媒である、上記[4]記載の不斉触媒。
[6]不斉アルドール反応のための不斉触媒である、上記[5]記載の不斉触媒。
[7]不斉アルドール反応が、不斉直接アルドール反応または不斉O−ニトロソアルドール反応である、上記[6]記載の不斉触媒。
[8]上記[3]記載の化合物またはその塩の存在下、一般式(II):
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示すか、あるいはRとRとがつながり、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。)で表される化合物(以下、化合物(II)ともいう。)と、一般式(III):
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(III)ともいう。)を反応させることを特徴とする、一般式(IV):
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、*は不斉炭素を示し、他の記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(IV)ともいう。)の製造方法。
[9]Rが低級アルキル基であり、Rが水素原子であり、Rが置換基を有していてもよいアリール基である、上記[8]記載の製造方法。
[10]上記[3]記載の化合物またはその塩の存在下、一般式(V):
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示すか、あるいはRとRとがつながり、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。)で表される化合物(以下、化合物(V)ともいう。)と、一般式(VI):
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R10は置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物(以下、ニトロソ化合物(VI)ともいう。)とを反応させることを特徴とする、一般式(VII):
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、*は不斉炭素を示し、他の記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(VII)ともいう。)の製造方法。
[11]上記[10]記載の製造方法により得られる化合物(VII)を還元する工程を包含する、一般式(VIII):
【0021】
【化8】

【0022】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(VIII)ともいう。)の製造方法。
[12]Rが水素原子であり、Rが低級アルキル基であり、R10が置換基を有していてもよいアリール基である、上記[10]または[11]記載の製造方法。
[13]以下の工程(i-a)〜(vi-a)を包含することを特徴とする、一般式(Ia):
【0023】
【化9】

【0024】
(式中、Raは置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、RおよびRは前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(Ia)ともいう。)またはその塩の製造方法;
(i-a)一般式(IX):
【0025】
【化10】

【0026】
(式中、RおよびRは前記と同義を示し、OTfはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(IX)ともいう。)を、遷移金属触媒および塩基の存在下に、一般式(X):Ra−B(OH) (X)(式中、Raは前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(X)ともいう。)と反応させて、一般式(XI):
【0027】
【化11】

【0028】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XI)ともいう。)を得;
(ii-a)得られた化合物(XI)を遷移金属触媒および塩基の存在下、一酸化炭素および一般式(XII):R’OH (XII)(式中、R’は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表されるアルコール(以下、アルコール(XII)ともいう。)と反応させて、一般式(XIII):
【0029】
【化12】

【0030】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XIII)ともいう。)を得;
(iii-a)得られた化合物(XIII)を、ラジカル開始剤の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、一般式(XIV):
【0031】
【化13】

【0032】
(式中、Xはハロゲン原子を示し、他の各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XIV)ともいう。)を得;
(iv-a)得られた化合物(XIV)をアリルアミンと反応させて、一般式(XV):
【0033】
【化14】

【0034】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XV)ともいう。)を得;
(v-a)得られた化合物(XV)を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、一般式(XVI):
【0035】
【化15】

【0036】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XVI)ともいう。)を得;
(vi-a)得られた化合物(XVI)を加水分解して、化合物(Ia)を得る。
[14]Raが置換基を有していてもよいフェニル基である上記[13]記載の製造方法。
[15]以下の工程(i-b)〜(v-b)を包含することを特徴とする、一般式(Ib):
【0037】
【化16】

【0038】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(Ib)ともいう。)またはその塩の製造方法;
(i-b)化合物(IX)を、遷移金属触媒および塩基の存在下に、一酸化炭素およびアルコール(XII)と反応させて、一般式(XVII):
【0039】
【化17】

【0040】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XVII)ともいう。)を得;
(ii-b)得られた化合物(XVII)を、ラジカル開始剤の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、一般式(XVIII):
【0041】
【化18】

【0042】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XVIII)ともいう。)を得;
(iii-b)得られた化合物(XVIII)をアリルアミンと反応させて、一般式(XIX):
【0043】
【化19】

【0044】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XIX)ともいう。)を得;
(iv-b)得られた化合物(XIX)を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、一般式(XX):
【0045】
【化20】

【0046】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XX)ともいう。)を得;
(v-b)得られた化合物(XX)を加水分解して、化合物(Ib)を得る。
[16]光学活性な化合物(IX)を用いる、上記[13]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]以下の工程(i-c)〜(vii-c)を包含することを特徴とする、一般式(Ic):
【0047】
【化21】

【0048】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(Ic)ともいう。)またはその塩の製造方法;
(i-c)一般式(XXI):
【0049】
【化22】

【0050】
(式中、RおよびRは前記と同義を示し、R11は低級アルキル基を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXI)ともいう。)を、塩基の存在下に、ハロゲン化剤と反応させて、一般式(XXII):
【0051】
【化23】

【0052】
(式中、R、RおよびR11は前記と同義を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXII)ともいう。)を得;
(ii-c)得られた化合物(XXII)を還元して、一般式(XXIII):
【0053】
【化24】

【0054】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXIII)ともいう。)を得;
(iii-c)得られた化合物(XXIII)をハロゲン化剤と反応させて、一般式(XXIV):
【0055】
【化25】

【0056】
(式中、R、RおよびXは前記と同義を示し、Xは、Xと同一または異なってハロゲン原子を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXIV)ともいう。)を得;
(iv-c)得られた化合物(XXIV)をアリルアミンと反応させて、一般式(XXV):
【0057】
【化26】

【0058】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXV)ともいう。)を得;
(v-c)得られた化合物(XXV)を遷移金属触媒および塩基の存在下、一酸化炭素およびアルコール(XII)と反応させて、一般式(XXVI):
【0059】
【化27】

【0060】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXVI)ともいう。)を得;
(vi-c)得られた化合物(XXVI)を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、一般式(XXVII):
【0061】
【化28】

【0062】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、化合物(XXVII)ともいう。)を得;
(vii-c)得られた化合物(XXVII)を加水分解して、化合物(Ic)を得る。
[18]光学活性な一般式(XXI)で表される化合物を用いる、上記[17]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、高収率かつ高立体選択性の不斉アルドール反応を可能とする非金属不斉触媒である新規なアミノ酸誘導体、すなわち化合物(I)が提供され、これを不斉アルドール反応の不斉触媒に用いることにより、医薬品などの合成中間体として有用な光学活性化合物の有利な製造方法が提供される。
また、本発明の不斉触媒は非金属であるため環境に優しく、金属廃液の処理等をする必要がないので、コスト的に有利である。さらに非金属であるため、触媒活性が安定しており、回収再利用も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.記号の説明
本発明におけるアルキルにおいて、語頭(例えば、イソ、ネオ、sec−、tert−など)を付していない限り直鎖状であり、例えば単にプロピルとあれば、直鎖状のプロピルのことである。
【0065】
、R、X、XおよびXに示される「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。RおよびRは好ましくは、塩素原子または臭素原子である。Xは好ましくは、塩素原子または臭素原子である。Xは好ましくは、臭素原子である。Xは好ましくは、塩素原子または臭素原子である。
【0066】
、RおよびR11に示される「低級アルキル基」としては、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、イソプロピルまたはtert−ブチルである。
【0067】
およびRに示される「低級アルコキシ基」としては、アルキル部分が上記で定義された「低級アルキル基」であるアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられ、好ましくはメトキシまたはエトキシである。
【0068】
、R’、R、R、R、RおよびRに示される「置換基を有していてもよい低級アルキル基」の「低級アルキル基」としては、上記で定義された「低級アルキル基」と同じアルキル基が挙げられる。
当該低級アルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記で定義された低級アルコキシ基、上記で定義されたハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0069】
、R、R、RおよびRに示される「置換基を有していてもよい低級アルケニル基」の「低級アルケニル基」としては、炭素数2〜12の直鎖または分枝のアルケニル基、例えばエテニル、1−プロペニル、アリル、1−メチル−2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、1−デセニル、2−デセニル等が挙げられ、好ましくはエテニルまたはアリルである。当該アルケニル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記の「置換基を有していてもよい低級アルキル基」で例示された置換基と同じ置換基;あるいは下記で定義する「置換基を有していてもよいアリール基」等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0070】
、Ra、R、R’、R、R、R、R、RおよびR10に示される「置換基を有していてもよいアリール基」の「アリール基」としては、炭素数6〜12のアリール基、例えばフェニル、1−または2−ナフチル、ビフェニル等が挙げられる。当該アリール基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記で定義された低級アルキル基、ハロ低級アルキル基(例、トリフルオロメチル基等);ハロゲン原子で置換されてもよいアリール基;上記の「置換基を有していてもよい低級アルキル基」で例示された置換基と同じ置換基等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0071】
、R’、R、R、R、RおよびRに示される「置換基を有していてもよいシクロアルキル基」の「シクロアルキル基」としては、炭素数3〜7個のシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル等が挙げられる。当該シクロアルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記の「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0072】
、R、R、RおよびRに示される「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」としては、上記で定義された「低級アルキル基」の任意の位置に上記で定義された「アリール基」が置換して形成されるアラルキル基、例えばベンジル、1−または2−フェニルエチル、1−、2−または3−フェニルプロピル、1−または2−ナフチルメチル、ベンゾヒドリル、トリチル等が挙げられる。当該アラルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0073】
、Ra、R、R、R、R、RおよびR10に示される「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」の「ヘテロアリール基」としては、例えば炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜2個含む5〜6員の芳香性を有する複素環基、及びその縮合ヘテロ環基等が挙げられる。例えば2−又は3−チエニル、2−又は3−フリル、1−、2−又は3−ピロリル、1−、2−、4−又は5−イミダゾリル、2−、4−又は5−オキサゾリル、2−、4−又は5−チアゾリル、1−、3−、4−又は5−ピラゾリル、3−、4−又は5−イソオキサゾリル、3−、4−又は5−イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾール−1、3、4又は5−イル、1,2,3−トリアゾール−1、2又は4−イル、1H−テトラゾール−1又は5−イル、2H−テトラゾール−2又は5−イル、2−、3−又は4−ピリジル、2−、4−又は5−ピリミジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−又は7−インドリル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾチエニル、1−、2−、4−、5−、6−又は7−ベンズイミダゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−イソキノリル等が挙げられる。当該ヘテロアリール基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0074】
、R、R、RおよびRに示される「置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基」の「ヘテロアリールアルキル基」としては、上記で定義された「低級アルキル基」の任意の位置に上記で定義された「ヘテロアリール基」が置換して形成される基、例えば、3−インドリルメチル、2−ピリジルメチル、2−チエニルメチル等が挙げられる。当該アラルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0075】
とRおよびRとRが、それぞれ結合する炭素原子と一緒になって形成してもよい環としては、5〜6員の同素環またはその縮合環(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、インダン等)または炭素原子以外に窒素原子、酸素原子または硫黄原子等のヘテロ原子を1〜2個含む、5〜6員の複素環またはその縮合環(例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、ピロリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ジヒドロベンゾフラン、クロマン、イソクロマン、チオクロマン等)が挙げられる。当該環は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は同一または異なっていてもよい。
【0076】
化合物(IV)、(VII)および(VIII)における*は、付された炭素原子が不斉炭素であることを示し、それぞれの化合物が光学活性な化合物であることを意味する。
【0077】
化合物(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(IX)、(XI)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)、(XXII)、(XXIII)、(XXIV)、(XXV)、(XXVI)および(XXVII)は、ナフタレン環を繋ぐ単結合の回転障害に基づく軸不斉を示し、室温において光学分割可能なアトロプ異性を示し、光学活性化合物及びラセミ体を包含する。
【0078】
光学活性とは、不斉炭素または軸不斉においてその立体配置が異なる異性体の等量混合物(例えば、ラセミ体)でないことを意味し、一方の立体異性体が過剰に存在する場合(例えば、6:4の混合物)であれば、光学活性と定義される。
【0079】
本明細書に記載の化合物が不斉炭素または軸不斉を2個以上有する場合は、あらゆる立体異性体またはその混合物(例えば、ジアステレオマーまたはその混合物等)を包含する。
【0080】
化合物(I)、(Ia)、(Ib)および(Ic)は、アミノ基とカルボキシル基を有するアミノ酸誘導体であり、塩の形態であってもよい。そのような塩としては、例えば無機酸塩(例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等);有機酸塩(例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、メタンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等);アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等);有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)等が挙げられる。
また、本明細書で定義される他の化合物も、同様の塩を形成する態様であってもよい。
【0081】
化合物(I)のRとしては、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基またはカルボキシル基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基またはカルボキシル基がより好ましい。
【0082】
化合物(II)のRとしては、低級アルキル基、置換基を有するアリール基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましく、Rとしては水素原子が好ましい。化合物(III)のRとしては置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、ニトロ基、シアノ基または塩素原子で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0083】
化合物(V)のRとしては水素原子が好ましい。Rとしては、置換基を有していてもよい低級アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。ニトロソ化合物(VI)のR10としては置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0084】
2.化合物(I)の製造方法
本発明の化合物(I)のうちRが置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基である化合物、すなわち化合物(Ia)は、下記工程(i-a)〜(vi-a)を包含する製法1によって製造することができる。
【0085】
【化29】

【0086】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
(i-a)化合物(IX)を、遷移金属触媒および塩基の存在下に、化合物(X)と反応させて、化合物(XI)を得る;
(ii-a)化合物(XI)を遷移金属触媒および塩基の存在下、一酸化炭素およびアルコール(XII)と反応させて、化合物(XIII)を得る;
(iii-a)化合物(XIII)を、ラジカル開始剤の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、化合物(XIV)を得る;
(iv-a)化合物(XIV)をアリルアミンと反応させて、化合物(XV)を得る;
(v-a)化合物(XV)を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、化合物(XVI)を得る;
(vi-a)化合物(XVI)を加水分解して、化合物(Ia)を得る。
【0087】
また、本発明の化合物(I)のうちRが−CO(Rは前記と同義を示す。)で表される基である化合物、すなわち化合物(Ib)は、下記工程(i-b)〜(v-b)を包含する製法2によって製造することができる。
【0088】
【化30】

【0089】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
(i-b)化合物(IX)を、遷移金属触媒および塩基の存在下に、一酸化炭素およびアルコール(XII)と反応させて、化合物(XVII)を得る;
(ii-b)化合物(XVII)を、ラジカル開始剤の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、化合物(XVIII)を得る;
(iii-b)化合物(XVIII)をアリルアミンと反応させて、化合物(XIX)を得る;
(iv-b)化合物(XIX)を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、化合物(XX)を得る;
(v-b)得られた化合物(XX)を加水分解して、化合物(Ib)を得る。
【0090】
製法1および2の原料である化合物(IX)は、例えば、J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, p.5139-5151に記載の方法により調製することができる。光学活性な化合物(IX)を用いることにより、光学活性な化合物(Ia)または(Ib)を製造することができる。
【0091】
化合物(I)のうちRが水素原子である化合物、すなわち化合物(Ic)は、下記工程(i-c)〜(vii-c)を包含する製法3によって製造することができる。
【0092】
【化31】

【0093】
(i-c)化合物(XXI)を、塩基の存在下に、ハロゲン化剤と反応させて、化合物(XXII)を得る;
(ii-c)化合物(XXII)を還元して、化合物(XXIII)を得る;
(iii-c)化合物(XXIII)をハロゲン化剤と反応させて、化合物(XXIV)を得る;
(iv-c)化合物(XXIV)をアリルアミンと反応させて、化合物(XXV)を得る;
(v-c)化合物(XXV)を遷移金属触媒および塩基の存在下、一酸化炭素およびアルコール(XII)と反応させて、化合物(XXVI)を得る;
(vi-c)化合物(XXVI)を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、化合物(XXVII)を得る;
(vii-c)化合物(XXVII)を加水分解して、化合物(Ic)を得る。
【0094】
製法の3の原料である化合物(XXI)は、市販品として入手可能な1,1’−ナフチル−2,2’−ジカルボン酸またはその誘導体を、自体公知の方法によりエステル化することにより、容易に調製することができる。光学活性な化合物(XXI)を用いることにより、光学活性な化合物(Ic)を製造することができる。
【0095】
以下、工程(i-a)〜(vi-a)、工程(i-b)〜(v-b)および工程(ic)〜(viic)について説明する。
各工程で得られる化合物は、通常の単離操作(例えば、濃縮、抽出、中和、洗浄、濾過等)または精製操作(例えば、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等)により、単離精製することができる。
2−1.工程(i-a)
工程(i-a)は、化合物(IX)の一方のOTfをRaで表される基に置換して、化合物(XI)を得る工程である。工程(i-a)は、鈴木カップリング反応(Synlett, 221(1990)参照)に準じて行なえばよく、例えば溶媒中において、化合物(IX)、化合物(X)、遷移金属触媒および塩基を混合することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0096】
工程(i-a)に使用される遷移金属触媒としては、0価または2価のパラジウムおよびニッケルから選ばれる遷移金属に1価または2価以上のホスフィン配位子が配位して形成される遷移金属錯体、例えばNi(PPh、NiCl(PPh、NiCl(dppe)、NiCl(dppp)、NiCl(dppb)、Pd(PPh、PdCl(PPh、PdCl(dppe)、PdCl(dppp)、PdCl(dppb)、Pd(OAc)(PPh、Pd(OAc)(dppe)、Pd(OAc)(dppp)、Pd(OAc)(dppb)(ここで、dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを示し、dpppは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンを示し、dppbは1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンを示す。)等が挙げられ、Pd(OAc)(dppp)、Pd(OAc)(PPhが好ましい。これら遷移金属錯体は、遷移金属塩(例えば、NiCl、PdCl、Pd(OAc)等)およびホスフィン配位子(例えば、PPh、dppe、dppp、dppb等)から反応系中で生成させてもよく、その場合の遷移金属塩に対するホスフィン配位子の比率は、1〜3当量の範囲とすればよい。
【0097】
遷移金属触媒の使用量は、化合物(IX)に対して通常0.001〜0.2当量、好ましくは0.005〜0.1当量である。遷移金属触媒の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が遅くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0098】
工程(i-a)に使用される塩基としては特に限定されないが、例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩基またはN−エチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、N、N−ジメチルアニリン等の有機塩基が挙げられ、リン酸カリウムが好ましい。当該塩基の使用量は、化合物(IX)に対して通常1〜10当量、好ましくは1.2〜3.5当量である。塩基の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応率が悪くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0099】
化合物(X)の使用量は、化合物(IX)に対して通常0.9〜2当量、好ましくは1〜1.5当量である。化合物(X)の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応率が悪くなり、多く使用すると、化合物(IX)の他方のOTfにも反応してジカップリング体が生成する場合がある。
【0100】
工程(i-a)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えば1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン、キシレン等の単独または混合溶媒が挙げられ、1,4−ジオキサンまたはTHFが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(IX)1kgに対して、通常3〜50Lの範囲である。
【0101】
工程(i-a)の反応温度は、通常は40℃〜120℃であるが、60℃〜100℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜24時間である。
【0102】
2−2.工程(ii-a)
工程(ii-a)は、化合物(XI)のOTfを−CO’(R’は前記と同義を示す。)で表される基に置換して、化合物(XIII)を得る工程であり、例えば溶媒中において、化合物(XI)、アルコール(XII)、遷移金属触媒および塩基の混合物を、一酸化炭素雰囲気下反応させることにより行なうことができる。試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0103】
工程(ii-a)に使用される遷移金属触媒としては、工程(i-a)と同じものが挙げられ、Pd(OAc)(dppp)、Pd(OAc)(PPhが好ましい。遷移金属触媒の使用量は、化合物(XI)に対して通常0.001〜0.5当量、好ましくは0.01〜0.3当量である。遷移金属触媒の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が遅くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0104】
工程(ii-a)に使用される塩基としては、工程(i-a)と同じものが挙げられ、N−エチルジイソプロピルアミンが好ましい。当該塩基の使用量は、化合物(XI)に対して通常1〜10当量、好ましくは2〜6当量である。塩基の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応率が悪くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0105】
アルコール(XII)の使用量は、化合物(XI)に対して通常2〜100当量、好ましくは5〜80当量である。アルコール(XVII)の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応速度が遅くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0106】
工程(ii-a)は通常、一酸化炭素の加圧条件下で行なわれる。一酸化炭素の圧力は、通常2〜30気圧、好ましくは5〜20気圧である。一酸化炭素の圧力がこの範囲外であっても行なうことができるが、この範囲より低いと反応が遅くなり、高い場合、高価な耐圧設備が必要となり、コストが高くなる。
【0107】
工程(ii-a)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の単独または混合溶媒が挙げられ、DMSOが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XI)1kgに対して、通常3〜100Lの範囲である。
【0108】
工程(ii-a)の反応温度は、通常は40℃〜130℃であるが、60℃〜100℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常3時間〜48時間である。
【0109】
2−3.工程(iii-a)
工程(iii-a)は、化合物(XIII)の二つのメチル基をハロゲン化して、化合物(XIV)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XIII)、ラジカル開始剤およびハロゲン化剤を混合することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0110】
ハロゲン化剤としては従来公知のものを特に制限なく使用することができ、例えばN−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−クロロコハク酸イミド(NCS)、等が挙げられ、NBSが好ましい。ハロゲン化剤の使用量は、化合物(XIII)に対して通常2〜3当量、好ましくは2〜2.5当量である。ハロゲン化剤の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しにくくなり、多い場合、過剰のハロゲン化が進行する場合がある。
【0111】
ラジカル開始剤としては従来公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMVN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(MeO−AMVN)等のアゾビス系化合物、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジt−ブチル等の過酸化物が挙げられ、好ましくはAIBNである。ラジカル開始剤の使用量は、化合物(XIII)に対して通常0.001〜0.2当量、好ましくは0.01〜0.15当量である。ラジカル開始剤の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しにくくなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0112】
工程(iii-a)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばベンゼン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の単独または混合溶媒が挙げられ、ベンゼン、クロロベンゼンまたは酢酸エチルが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XIII)1kgに対して、通常5〜50Lの範囲である。
【0113】
工程(iii-a)の反応温度は、通常は40℃〜150℃であるが、50℃〜110℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜24時間である。
【0114】
2−4.工程(iv-a)
工程(iv-a)は、化合物(XIV)をアリルアミンで閉環して、化合物(XV)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XIV)およびアリルアミンを混合することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0115】
アリルアミンの使用量は、化合物(XIV)に対して通常1〜5当量、好ましくは1.5〜3.5当量である。アリルアミンの使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しにくくなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0116】
工程(iv-a)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばアセトニトリル、DMSO、THF、1,4−ジオキサン等の単独または混合溶媒が挙げられ、アセトニトリルが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XIV)1kgに対して5〜50Lの範囲である。
【0117】
工程(iv-a)の反応温度は、通常は20℃〜100℃であるが、40℃〜70℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜24時間である。
【0118】
2−5.工程(v-a)
工程(v-a)は、化合物(XV)のアリル基を脱保護する工程であり、 "Protective Groups in Organic Synthesis", John Wiley: USA, 1999, 3rd Edithion p.574-575に挙げられた脱保護法と同様に行なえばよい。例えば、溶媒中において、好ましくは酸の共存下、化合物(XIV)および遷移金属触媒を混合することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0119】
工程(v-a)に使用される遷移金属触媒としては、工程(i-a)と同じものが挙げられ、Pd(OAc)(dppp)、Pd(OAc)(PPhが好ましい。遷移金属触媒の使用量は、化合物(XV)に対して通常0.001〜0.2当量、好ましくは0.01〜0.1当量である。遷移金属触媒の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が遅くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0120】
工程(v-a)は反応を促進するため、酸の共存下に行なうことが好ましい。当該塩基としては従来公知のものを特に制限なく使用することができ、例えばN,N−ジメチルバルビツール酸(NDMBA)、ギ酸、酢酸等が挙げられ、NDMBAが好ましい。当該酸の使用量は、化合物(XV)に対して通常0.005〜0.5当量、好ましくは0.02〜0.2当量である。酸の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が遅くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0121】
工程(v-a)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばジクロロメタン、DMSO、THF、トルエン等の単独または混合溶媒が挙げられ、ジクロロメタンが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XV)1kgに対して2〜30Lの範囲である。
【0122】
工程(v-a)の反応温度は、通常は0℃〜80℃であるが、10℃〜50℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常2時間〜24時間である。
【0123】
2−6.工程(vi-a)
工程(vi-a)は、化合物(XVI)を加水分解して、化合物(Ia)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XVI)を塩基で処理することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0124】
工程(vi-a)に使用される塩基としては従来公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましい。当該塩基は、水溶液として反応系中に添加してもよく、その場合の水は、後掲の溶媒の一部となる。当該塩基の使用量は、化合物(XVI)に対して通常0.5〜5当量、好ましくは1〜3当量である。塩基の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しにくくなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0125】
工程(vi-a)で用いる溶媒は当該反応を阻害しないものであればよく、例えばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、THF、水等の単独または混合溶媒が挙げられ、メタノール、THFおよび水の混合溶媒が好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XIV)1kgに対して3〜30Lの範囲である。
【0126】
工程(vi-a)の反応温度は、通常は20℃〜130℃であるが、40℃〜100℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間〜10時間である。
【0127】
2−7.工程(i-b)
工程(i-b)は、化合物(IX)の両方のOTfを−CO’(R’は前記と同義を示す。)で表される基に置換して、化合物(XVII)を得る工程であり、例えば溶媒中において、化合物(IX)、アルコール(XII)、遷移金属触媒および塩基の混合物を、一酸化炭素雰囲気下反応させることにより行なうことができる。
工程(i-b)は、上記工程(ii-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0128】
2−8.工程(ii-b)
工程(ii-b)は、化合物(XVII)の二つのメチル基をハロゲン化して、化合物(XVIII)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XVII)、ラジカル開始剤およびハロゲン化剤を混合することにより行なうことができる。
工程(ii-b)は、上記工程(iii-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0129】
2−9.工程(iii-b)
工程(iii-b)は、化合物(XVIII)をアリルアミンで閉環して、化合物(XIX)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XVIII)およびアリルアミンを混合することにより行なうことができる。
工程(iii-b)は、上記工程(iv-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0130】
2−10.工程(iv-b)
工程(iv-b)は、化合物(XIX)のアリル基を脱保護する工程であり、例えば、溶媒中において、好ましくはNDMBAなどの酸共存下、化合物(XIX)および遷移金属触媒を混合することにより行なうことができる。
工程(iv-b)は、上記工程(v-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0131】
2−10.工程(v-b)
工程(v-b)は、化合物(XX)の両方または片方のエステルを加水分解して、化合物(Ib)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XX)を塩基で処理することにより行なうことができる。
工程(v-b)において、得られる化合物(Ib)のRが水素原子である態様(以下、化合物(Ib’)ともいう。)については、化合物(XX)の両方のエステルを加水分解すればよく、その場合、塩基の使用量を化合物(XX)に対して0.8〜2当量、好ましくは1〜1.5当量とする以外は、上記工程(vi-a)と同様の条件で行なうことができる。
一方、得られる化合物(Ib)のRが置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基である態様(以下、化合物(Ib”)ともいう。)については、化合物(XX)の片方のエステルを加水分解すればよく、その場合、塩基の使用量を化合物(XX)に対して0.8〜1.3当量、好ましくは0.9〜1.2当量とする以外は、上記工程(vi-a)と同様の条件で行なうことができる。
さらに、化合物(Ib”)は、化合物(Ib’)を常法に従い、部分エステル化することによっても得ることができる。
【0132】
2−11.工程(i-c)
工程(i-c)は、化合物(XXI)をハロゲン化して、化合物(XXII)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XXI)、塩基およびハロゲン化剤を混合することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよいが、化合物(XXI)のナフタレン環3位を選択的にハロゲン化するためには、化合物(XXI)を塩基と処理した後に、ハロゲン化剤を添加するのが好ましい。
【0133】
化合物(XXI)のR11で表される低級アルキル基は特に限定されないが、光学純度を上げるのためには、比較的立体的に嵩高いアルキル基が好ましく、例えば、ネオペンチル等が好ましい。
【0134】
工程(i-c)使用される塩基としては、例えば、テトラメチルピペリジンマグネシウム塩等が好ましい。当該塩基の使用量は、化合物(XXI)に対して通常2〜6当量、好ましくは3〜4当量である。塩基の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応率が悪くなり、この範囲より多く使用しても反応に悪影響はないが、収率の改善等の好影響も及ぼさないため、コストが高くなる。
【0135】
工程(i-c)使用されるハロゲン化剤としては特に限定されず、例えば、臭素、塩素、ヨウ素、フロン(例えば、BrCFCFBr等)等が挙げられ、臭素が好ましい。当該ハロゲン化剤の使用量は、化合物(XXI)に対して通常4〜12当量、好ましくは6〜8当量である。ハロゲン化剤の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応率が悪くなり、この範囲より多く使用しても反応に悪影響はないが、収率の改善等の好影響も及ぼさないため、コストが高くなる。
【0136】
工程(i-c)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えば1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン、キシレン等の単独または混合溶媒が挙げられ、THFが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XXI)1kgに対して、通常6〜10Lの範囲である。
【0137】
工程(i-c)の反応温度は、通常は−100℃〜60℃であるが、−78℃〜40℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜12時間である。
【0138】
2−11.工程(ii-c)
工程(ii-c)は、化合物(XXII)を還元して、化合物(XXIII)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XXII)を、還元剤と反応させることにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0139】
工程(ii-c)に使用される還元剤としてはエステル基をアルコールに還元しうるのもであれば特に限定されないが、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等が挙げられ、水素化アルミニウムリチウムまたは水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。当該還元剤の使用量は、化合物(XXII)に対して水素当量として通常8〜16当量、好ましくは8〜12当量である。還元剤の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応率が悪くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0140】
工程(ii-c)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えば1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン、キシレン等の単独または混合溶媒が挙げられ、THFが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XXII)1kgに対して、通常20〜100Lの範囲である。
【0141】
工程(ii-c)の反応温度は、通常は−20℃〜80℃であるが、0℃〜40℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常2時間〜6時間である。
【0142】
2−12.工程(iii-c)
工程(iii-c)は、化合物(XXIII)をハロゲン化して化合物(XXIV)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XXIII)およびハロゲン化剤を混合することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0143】
工程(iii-c)に使用されるハロゲン化剤としては水酸基をハロゲン原子に置換しうるのもであれば特に限定されないが、例えば、三臭化ホウ素等が挙げられる。当該ハロゲン化剤の使用量は、化合物(XXIII)に対して通常2〜50当量、好ましくは2〜30当量である。ハロゲン化剤の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応率が悪くなり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0144】
工程(iii-c)で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン、キシレン等の単独または混合溶媒が挙げられ、塩化メチレンが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(XXIII)1kgに対して、通常30〜90Lの範囲である。
【0145】
工程(iii-c)の反応温度は、通常は−20℃〜40℃であるが、0℃〜10℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜6時間である。
【0146】
2−13.工程(iv-c)
工程(iv-c)は、化合物(XXIV)をアリルアミンで閉環して、化合物(XXV)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XXIV)およびアリルアミンを混合することにより行なうことができる。
工程(iv-c)は、上記工程(iv-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0147】
2−14.工程(v-c)
工程(v-c)は、化合物(XXV)のXで表されるハロゲン原子を−CO’(R’は前記と同義を示す。)で表される基に置換して、化合物(XXVI)を得る工程であり、例えば溶媒中において、化合物(XXV)、アルコール(XII)、遷移金属触媒および塩基の混合物を、一酸化炭素雰囲気下反応させることにより行なうことができる。
工程(v-c)は、上記工程(ii-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0148】
2−15.工程(vi-c)
工程(vi-c)は、化合物(XXVI)のアリル基を脱保護する工程であり、例えば、溶媒中において、好ましくはNDMBAなどの酸共存下、化合物(XXVI)および遷移金属触媒を混合することにより行なうことができる。
工程(vi-c)は、上記工程(v-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0149】
2−16.工程(vii-c)
工程(iv-b)は、化合物(XXVII)を加水分解して、化合物(Ic)を得る工程であり、例えば、溶媒中において化合物(XXVII)を塩基で処理することにより行なうことができる。
工程(vii-c)は、上記工程(vi-a)と同様の条件で行なうことができるので、説明を省略する。
【0150】
3.不斉触媒
本発明の化合物(I)が光学活性である場合(以下、光学活性化合物(I)という。)は、不斉反応のための触媒、すなわち不斉触媒として用いることができる。
【0151】
光学活性化合物(I)は非金属であるため、分解等しない限り安定した触媒活性を示し、反応基質を追加等することにより連続的に不斉反応を行なうことも可能である。また、アミノ酸誘導体であるため、酸性または塩基性条件の分液操作等で反応基質および生成物から容易に分離回収することができ、何回でも再利用することができるので経済的にも有利である。
【0152】
光学活性化合物(I)で触媒される不斉反応としては特に限定はなく、例えば不斉アルドール反応、不斉マンニッヒ型反応、不斉ハロゲン化反応、不斉マイケル反応等が挙げられるが、なかでも、不斉アルドール反応が医薬、農薬などの合成中間体などにおいて汎用性が高いため好ましい。
【0153】
当該不斉アルドール反応としては、不斉直接アルドール反応、不斉O−ニトロソアルドール反応等が挙げられる。
【0154】
4.不斉反応(光学活性化合物(I)を不斉触媒として用いる光学活性化合物の製造)
光学活性化合物(I)により触媒される不斉反応においては、例えば溶媒中において基質を光学活性化合物(I)に接触させることにより光学活性化合物を得ることができる。
ここで、基質とは当該不斉反応の原料となる化合物を意味し、アキラルまたはプロキラルな化合物が好ましいが、不斉中心を有する光学活性化合物またはラセミ体等をも包含するものである。また、基質は単独の化合物でもよいし、2種以上の化合物の組み合わせであってもよい。
以下、不斉反応の好ましい態様である不斉直接アルドール反応および不斉O−ニトロソアルドール反応について説明するが、本発明の不斉触媒による不斉反応はこれに限定されるものではない。
【0155】
4−1.不斉直接アルドール反応
本発明の不斉直接アルドール反応は、例えば、基質として化合物(II)および化合物(III)を用い、光学活性化合物(III)の存在下に反応させることによって、光学活性な化合物(IV)を得る方法である。
【0156】
【化32】

【0157】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
具体的な操作としては、例えば溶媒中において光学活性化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)を混合することにより行なうことができる。各試薬の添加順序は特に限定はなく、順次または同時に添加すればよい。
【0158】
化合物(II)の使用量は、化合物(III)に対し、通常1〜10当量、好ましくは10〜3×10当量である。化合物(II)の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと副反応が進行し、反応が複雑になる傾向があり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0159】
光学活性化合物(I)の使用量は、化合物(III)に対し通常0.001〜0.5当量、好ましくは0.01〜0.2当量である。光学活性化合物(I)の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応速度が遅くなる傾向があり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0160】
不斉直接アルドール反応で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばDMF、DMSO、DMAc、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等の単独または混合溶媒が挙げられ、DMFまたはDMSOが好ましい。溶媒の使用量は、化合物(III)1kgに対して3〜100Lの範囲である。
【0161】
不斉直接アルドール反応の反応温度は、通常は0℃〜60℃であるが、10℃〜50℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常1時間〜24時間である。
【0162】
得られる化合物(IV)は通常の常法により単離精製することができる。例えば、抽出、乾燥、濃縮操作を行なった後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することができるが、これに限定されるものではない。
【0163】
4−2.不斉O−ニトロソアルドール反応
本発明の不斉O−ニトロソアルドール反応は、例えば、基質として化合物(V)およびニトロソ化合物(VI)を用い、光学活性化合物(I)の存在下に反応させることによって、光学活性な化合物(VII)を得る方法である。
化合物(VII)は不安定であるため通常、単離精製することなく、還元して化合物(VIII)として単離される。
【0164】
【化33】

【0165】
具体的な操作としては、例えば溶媒中において光学活性化合物(I)、化合物(V)および化合物(VI)を混合し、反応終了後、還元剤を添加することにより行なうことができる。
【0166】
化合物(V)の使用量は、ニトロソ化合物(VI)に対し、通常1〜10当量、好ましくは1.5〜5当量である。化合物(V)の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が遅くなり、副生物も増加する傾向があり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0167】
光学活性化合物(I)の使用量は、ニトロソ化合物(VI)に対し通常0.001〜0.5当量である。光学活性化合物(I)の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応速度が遅くなる傾向があり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0168】
不斉O−ニトロソアルドール反応で用いる溶媒は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えばメシチレン、トルエン、キシレン等の単独または混合溶媒が挙げられ、メシチレンまたはトルエンが好ましい。溶媒の使用量は、ニトロソ化合物(VI)1kgに対して5〜200Lの範囲である。
【0169】
不斉O−ニトロソアルドール反応の反応温度は、通常は−50℃〜50℃であるが、−30℃〜30℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間〜10時間である。
【0170】
反応終了後、混合物に還元剤を添加することにより化合物(VIII)へと誘導することができる。
還元剤としては従来公知のものを制限なく使用することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム等が挙げられ、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。当該還元剤の使用量は、ニトロソ化合物(VI)に対して通常1〜20当量、好ましくは2〜10当量である。還元剤の使用量がこの範囲外でも行なうことができるが、この範囲より少ないと反応が完結しないおそれがあり、多く使用してもそれに見合う効果は得られず、コストが高くなる。
【0171】
還元剤として水素化ホウ素ナトリウム等を使用する場合は、プロトン源としてアルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)または水を添加する。アルコール類の添加量は、還元剤に対し通常1〜10当量、好ましくは10〜10当量である。
【0172】
還元剤を添加した後の反応温度は、通常は−20℃〜80℃であるが、0℃〜50℃が好ましい。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常5分〜6時間である。
【0173】
得られる化合物(VIII)は通常の常法により単離精製することができる。例えば、抽出、乾燥、濃縮操作を行なった後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することができるが、これに限定されるものではない。
【0174】
本発明の不斉反応の後処理において、酸性または塩基性条件で分液操作を行うことによって、反応混合物から光学活性化合物(I)を回収することができる。例えば、抽出操作で、水層を重曹等で塩基性とすると光学活性化合物(I)は水層に移行し、基質および生成物から容易に分離することができる。当該水層を塩酸等で中和または酸性にした後、濾過または抽出等を行なうことにより、光学活性化合物(I)を回収することができる。
【実施例】
【0175】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0176】
実施例1:(S)−2,2’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−3,3’−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物2)
【0177】
【化34】

【0178】
(S)−3,3’−ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−2,2’−ジメチル−1,1’−ビナフチル(化合物1)(231mg, 0.40mmol)、酢酸パラジウム(4.5mg, 0.02mmol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(8.2mg, 0.02mmol)およびN−エチルジイソプロピルアミン(307μL, 1.76mmol)をDMSO(10 mL)及びメタノール(5 mL)に溶解し、オートクレーブ中で10気圧の一酸化炭素雰囲気下、80℃で12時間加熱した。その後、水を加え酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物(149mg, 0.37mmol)を収率93%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 2.21(s, 6H), 4.00(s, 6H), 6.95(d, J=8.4Hz, 2H), 7.28(app t, J=7.2Hz, 2H), 7.45(app t, J=7.0Hz, 2H), 7.96(d, J=8.0Hz, 2H), 8.54(s,2H).
【0179】
実施例2:(S)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ビナフチル−3,3’−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物3)
【0180】
【化35】

【0181】
(S)−2,2’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−3,3’−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物2)(149mg, 0.37mmol)、NBS(146mg, 0.82mmol)およびAIBN(6mg, 0.037mmol)を3mLのベンゼンに溶解し、脱気してアルゴン雰囲気下へと置換した後、4時間還流した。得られた反応溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物(187mg, 0.33mmol)を収率90%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 4.00(s, 6H), 4.66(d, J=10Hz, 2H), 4.78(d, J=10Hz, 2H), 7.01(d, J=8.8Hz, 2H), 7.36(app t, J=7.4Hz, 2H), 7.54(app t, J=7.4Hz, 2H), 8.01(d, J=8.0Hz, 2H), 8.68(s, 2H).
【0182】
実施例3:(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物4)
【0183】
【化36】

【0184】
(S)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ビナフチル−3,3’−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物3)(187mg, 0.33mmol)およびアリルアミン(76μL, 1.0mmol)を1.5mLのアセトニトリル中50℃で5時間攪拌した。得られた反応溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により精製して、表題化合物(138mg, 0.31mmol)を収率91%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 2.91−2.98(m, 3H), 3.31(dd, J=13, 6.0Hz, 1H), 4.00(s, 6H), 4.79(d, J=13Hz, 2H), 5.10−5.14(m, 2H), 5.92−6.01(m, 1H), 7.22−7.34(m, 4H), 7.50(app t, J=7.4Hz, 2H), 8.01(d, J=8.0Hz, 2H), 8.60(s, 2H).
【0185】
実施例4:(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物5)
【0186】
【化37】

【0187】
(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物4)(138mg, 0.31mmol)、NDMBA(143mg, 0.92mmol)、酢酸パラジウム(1.4mg, 0.0062mmol)およびトリフェニルホスフィン(6.6mg, 0.025mmol)を2mLのジクロロメタンに溶解し、アルゴン雰囲気下へと置換した後に35℃で12時間攪拌した。エバポレーターによって反応溶液から溶媒を除き、得られた固体をベンゼンに再び溶解した。次に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:50)により精製して、表題化合物(111mg, 0.27mmol)を収率89%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 3.21(d, J=12Hz, 2H), 4.02(s, 6H), 4.78(d, J=12Hz, 2H), 7.24−7.35(m, 4H), 7.50(app t, J=7.4Hz, 2H), 8.01(d, J=8.4Hz, 2H), 8.59(s, 2H).
【0188】
実施例5:(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸(化合物6)
【0189】
【化38】

【0190】
(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸 ジメチルエステル(化合物5)(111mg, 0.27mmol)をメタノール(1mL)およびTHF(0.6mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(1N,1mL)を加え、1時間還流した。得られた反応溶液にジクロロメタン(1mL)を加えた後、酸性になるまで塩酸(1N)を加えた。析出した固体を桐山ロートでろ過し、ヘキサンで洗うことで、表題化合物(64mg, 0.17mmol)を収率62%で得た。
H−NMR(400MHz, CDOD, MeSi): δ 3.52(d, J=12.8Hz, 2H), 5.40(d, J=13.2Hz, 2H), 7.24(d, J=9.2Hz, 2H), 7.39(app t, J=8.4Hz, 2H), 7.62(app t, J=7.2Hz, 2H), 8.14(d, J=8.0Hz, 2H), 8.69(s, 2H).
【0191】
実施例6:(S)−2,2’−ジメチル−3−フェニル−3’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1’−ビナフチル(化合物7)
【0192】
【化39】

【0193】
(S)−3,3’−ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−2,2’−ジメチル−1,1’−ビナフチル(化合物1)(3.8g, 6.6mmol)、フェニルボロン酸(805mg, 6.6mmol)、リン酸カリウムn水和物(4.19g, 19.8mmol)、酢酸パラジウム(74mg, 0.33mmol)およびトリフェニルホスフィン(346mg, 1.32mmol)を1,4−ジオキサン(65mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下へと置換した後に80℃で12時間攪拌した。反応溶液に塩化アンモニウム水溶液を加え、セライトろ過の後、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物及びジカップリング体である(S)−2,2’−ジメチル−3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチルの混合物(2.58g)を得た。
【0194】
実施例7:(S)−2,2’−ジメチル−3’−フェニル−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物8)
【0195】
【化40】

【0196】
(S)−2,2’−ジメチル−3−フェニル−3’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1’−ビナフチル(化合物7)及びジカップリング体の混合物(2.58g)、酢酸パラジウム(336mg, 1.5mmol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(619mg, 1.5mmol)およびN−エチルジイソプロピルアミン(5.2mL, 30mmol)をDMSO(20mL)及びメタノール(20mL)に溶解し、オートクレーブ中で10気圧の一酸化炭素雰囲気下、80℃で36時間加熱した。その後、水を加え酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エーテル:ヘキサン=1:30)により精製して、表題化合物(927mg, 2.2mmol)を収率33%(2段階)で得た。
【0197】
実施例8:(S)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3’−フェニル−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物9)
【0198】
【化41】

【0199】
(S)−2,2’−ジメチル−3’−フェニル−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物8)(927mg, 2.2mmol)、NBS(872mg, 4.9mmol)およびAIBN(36mg, 0.22mmol)を12mLのベンゼンに溶解し、脱気してアルゴン雰囲気下へと置換した後、4時間還流した。得られた反応溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)により精製して、表題化合物(1.26g, 2.2mmol)を収率>99%で得た。
【0200】
実施例9:(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−6−フェニル−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物10)
【0201】
【化42】

【0202】
(S)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3’−フェニル−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物9)(1.26g, 2.2mmol)およびアリルアミン(495μL, 6.6mmol)を10mLのアセトニトリル中50℃で12時間攪拌した。得られた反応溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物(888mg, 1.9mmol)を収率86%で得た。
【0203】
実施例10:(S)−4,5−ジヒドロ−6−フェニル−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物11)
【0204】
【化43】

【0205】
(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−6−フェニル−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物10)(888mg, 1.9mmol)、NDMBA(890mg, 5.7mmol)、酢酸パラジウム(21mg, 0.095mmol)およびトリフェニルホスフィン(100mg, 0.38mmol)を10mLのジクロロメタンに溶解し、アルゴン雰囲気下へと置換した後に35℃で2時間攪拌した。エバポレーターによって反応溶液から溶媒を除き、得られた固体をベンゼンに再び溶解した。次に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:50)により精製して、表題化合物(816mg, 1.9mmol)を収率>99%で得た。
【0206】
実施例11:(S)−4,5−ジヒドロ−6−フェニル−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸(化合物12)
【0207】
【化44】

【0208】
(S)−4,5−ジヒドロ−6−フェニル−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物11)(215mg, 0.5mmol)をメタノール(1.5mL)およびTHF(1.0mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(1N,1mL)を加え、1時間還流した。得られた反応溶液にジクロロメタン(1mL)を加えた後、酸性になるまで塩酸(1N)を加え、ジクロロメタンで3回抽出した。その後、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:15)により精製して、表題化合物(207mg, 0.5mmol)を収率>99%で得た。
H−NMR(400MHz, CDOD, MeSi): δ 3.54(d, J=12.8Hz, 1H), 3.64(d, J=13.2Hz, 1H), 4.44(d, J=13.2Hz, 1H), 5.14(d, J=13.2Hz, 1H), 7.24−7.61(m, 11H), 8.06−8.08(m, 3H), 8.42(s, 1H).
【0209】
実施例12:(S)−2,2’−ジメチル−3−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1’−ビナフチル(化合物13)
【0210】
【化45】

【0211】
(S)−3,3’−ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−2,2’−ジメチル−1,1’−ビナフチル(化合物1)(2.16g, 3.7mmol)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(651mg, 3.7mmol)、リン酸カリウムn水和物(2.3g, 11.1mmol)、酢酸パラジウム(42mg, 0.185mmol)およびトリフェニルホスフィン(194mg, 0.74mmol)をTHF(35mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下へと置換した後に80℃で12時間攪拌した。反応溶液に塩化アンモニウム水溶液を加え、セライトろ過の後、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物及びジカップリング体である(S)−3,3’−ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)−2,2’−ジメチル−1,1’−ビナフチルの混合物(1.76g)を得た。
【0212】
実施例13:(S)−2,2’−ジメチル−3’−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物14)
【0213】
【化46】

【0214】
(S)−2,2’−ジメチル−3−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1’−ビナフチル(化合物13)及びジカップリング体の混合物(1.76g)、酢酸パラジウム(162mg, 0.72mmol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(297mg, 0.72mmol)およびN−エチルジイソプロピルアミン(2.5mL, 14.4mmol)、をDMSO(10mL)及びメタノール(10mL)に溶解し、オートクレーブ中で10気圧の一酸化炭素雰囲気下、80℃で36時間加熱した。その後、水を加え酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エーテル:ヘキサン=1:30)により精製して、表題化合物(723mg, 1.5mmol)を収率42%(2段階)で得た。
【0215】
実施例14:(S)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3’−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物15)
【0216】
【化47】

【0217】
(S)−2,2’−ジメチル−3’−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物14)(723mg, 1.5mmol)、NBS(587mg, 3.3mmol)、AIBN(25mg, 0.15mmol)を8mLのベンゼンに溶解し、脱気してアルゴン雰囲気下へと置換した後、4時間還流した。得られた反応溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物(936mg, 1.5mmol)を収率>99%で得た。
【0218】
実施例15:(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−6−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物16)
【0219】
【化48】

【0220】
(S)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3’−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1,1’−ビナフチル−3−カルボン酸 メチルエステル(化合物15)(936mg, 1.5mmol)、アリルアミン(338μL, 4.5mmol)を7mLのアセトニトリル中50℃で12時間攪拌した。得られた反応溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物(724mg, 1.4mmol)を収率92%で得た。
【0221】
実施例16:(S)−4,5−ジヒドロ−6−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物17)
【0222】
【化49】

【0223】
(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−6−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物16)(724mg, 1.4mmol)、NDMBA(656mg, 4.2mmol)、酢酸パラジウム(16mg, 0.07mmol)およびトリフェニルホスフィン(73mg, 0.28mmol)を8mLのジクロロメタンに溶解し、アルゴン雰囲気下へと置換した後に35℃で2時間攪拌した。エバポレーターによって反応溶液から溶媒を除き、得られた固体をベンゼンに再び溶解した。次に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:50)により精製して、表題化合物(675mg, 1.4mmol)を収率>99%で得た。
【0224】
実施例17:(S)−4,5−ジヒドロ−6−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸(化合物18)
【0225】
【化50】

【0226】
(S)−4,5−ジヒドロ−6−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物17)(241mg, 0.5mmol)をメタノール(1.5mL)およびTHF(1.0mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(1N,1mL)を加え、1時間還流した。得られた反応溶液にジクロロメタン(1mL)を加えた後、酸性になるまで塩酸(1N)を加え、ジクロロメタンで3回抽出した。その後、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=1:15)により精製して、表題化合物(234mg, 0.5mmol)を収率>99%で得た。
H−NMR(400MHz, CDOD, MeSi): δ 3.51 d, J=13.2 Hz, 1H), 3.68 (d, J=13.6 Hz, 1H), 4.38(d, J=13.2Hz, 1H), 5.24(d, J=11.2Hz, 1H), 7.21−7.63(m, 8H), 8.05−8.09(m, 3H), 8.43(s, 1H).
【0227】
参考例1:(S)−1,1’−ナフチル−2,2’−ジカルボン酸 ジネオペンチルエステル(化合物20)
【0228】
【化51】

【0229】
(S)−1,1’−ナフチル−2,2’−ジカルボン酸(化合物19)(1.71g, 5.0mmol)に塩化チオニル(5mL)を加え、2時間還流下攪拌した。反応終了後、余剰の塩化チオニルを減圧下留去、残渣にジエチルエーテルを加えて、さらに濃縮を行ない得られた残渣を減圧乾燥し、酸クロライドを得た。得られた酸クロライドをテトラヒドロフランに溶解させた後、ネオペンタノール(1.3g)およびピリジン(1.1mL)を加え3時間還流下攪拌を行なった。反応終了後、反応混合物に1N塩酸を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:30)により精製して、表題化合物(2.2g, 4.6 mmol)を収率91%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 0.65(s, 18H), 3.60(d, J=10.4Hz, 2H), 3.64(d, J=10.4 Hz, 2H), 7.06(d, J=8.4Hz, 2H), 7.22(appt t, J=8.0Hz, 2H), 7.49(appt t, J=7.6Hz, 2H), 7.92(d, J=8.4Hz, 2H), 7.99(d, J=8.4Hz, 2H), 8.21(d, J=8.8Hz, 2H).
【0230】
実施例18:(S)−3−ブロモ−1,1’−ナフチル−2,2’−ジカルボン酸 ジネオペンチルエステル(化合物21)
【0231】
【化52】

【0232】
J. Org. Chem. 2003, 68, 4576-4578.に従って調製したテトラメチルピペリジンマグネシウム塩のテトラヒドロフラン−ヘキサン溶液(14.7mL, 4.0mmol)に(S)−1,1’−ナフチル−2,2’−ジカルボン酸 ジネオペンチルエステル(化合物20)(482mg, 1mmol)をテトラヒドロフラン(3.8mL)に溶解させた溶液を0℃にて滴下した。室温にて3時間攪拌後、−78℃まで冷却し、臭素(411μL, 8.0mmol)を滴下した。室温で1時間攪拌後、反応溶液を冷却した1N塩酸に加え、酢酸エチルにて抽出を行なった。得られた有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:10)により精製して、表題化合物、無置換体およびジブロミド体との混合物を得た(548mg)。更なる分離が困難であったためこれ以上の精製を行なうことなくそのまま次工程に使用した。
【0233】
実施例19:(S)−3−ブロモ−1,1’−ナフチル−2,2’−ジメタノール(化合物22)
【0234】
【化53】

【0235】
実施例18で得られた混合物をテトラヒドロフラン(20mL)に溶解させた溶液を、あらかじめ仕込んでおいた水素化リチウムアルミニウム(114mg, 3.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液に0℃で滴下した。滴下終了後、室温にて2時間反応を行ない、反応液を0℃に冷却した後、1N塩酸水に注意しながら加え分解し、ジエチルエーテルにて抽出を行なった。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2:8)により精製して、表題化合物(166mg, 0.42mmol)を収率42%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 3.31(bs, 1H), 3.60(bs, 1H ), 4.06(d, J=11.6Hz, 1H), 4.07(d, J=11.6Hz, 1H), 4.38(d, J=11.6Hz, 1H), 4.76(d, J=12.4Hz, 1H), 6.95−6.99(m, 2H), 7.22−7.27(m, 2H), 7.45−7.50(m, 2H), 7.74 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.83(d, J=8.4Hz, 2H), 7.92(d, J=8.4Hz, 2H), 7.99(d, J=8.8Hz, 2H), 8.26 (s, 1H).
【0236】
実施例20:(S)−3−ブロモ−2,2’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ナフチル(化合物23)
【0237】
【化54】

【0238】
(S)−3−ブロモ−1,1’−ナフチル−2,2’−ジメタノール(化合物22)(86mg, 0.22mmol)および三臭化ホウ素(500μL, 5.3mmol)を5mLの塩化メチレン中で、0℃で1時間攪拌した。得られた反応溶液に注意深く水を加え、塩化メチレンで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製して、表題化合物(98mg, 0.19mmol)を収率86%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 4.18(d, J=10.8Hz, 1H), 4.25(d, J=10.0Hz, 1H), 4.33(d, J=10.8Hz, 1H), 4.48(d, J=10.4Hz, 1H), 7.03(appt t, J=7.2Hz, 2H), 7.26−7.30(m, 2H), 7.48−7.53(m, 2H), 7.76(d, J=8.8Hz, 1H), 7.83(d, J=8.4Hz, 1H), 7.92(d, J=8.4Hz, 1H), 8.04(d, J=8.4Hz, 1H), 8.32(s, 1H).
【0239】
実施例21:(S)−4−アリル−2−ブロモ−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン(化合物24)
【0240】
【化55】

【0241】
(S)−3−ブロモ−2,2’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ナフチル(化合物23)(77mg, 0.15mmol)およびアリルアミン(56μL, 0.74 mmol)を3mLのTHF中で、50℃で5時間攪拌した。得られた反応溶液に水を加え酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:20〜2:8)により精製して、表題化合物(54.5mg, 0.13mmol)を収率89%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 3.03−3.13 (m, 3H), 3.42(dd, J=13.6, 6.4Hz, 1H), 3.77(d, J=12.6Hz, 1H), 4.35(d, J=12.6Hz, 1H), 5.19(dd, J=10.4, 1.6Hz, 1H), 5.25(dd, J=17.2, 1.6Hz, 1H), 5.95−6.05(m, 1H), 7.21−7.27(m, 2H), 7.35(dd, J=8.8, 1.2Hz, 2H), 7.43−7.48(m, 2H), 7.54(d, J=8.0Hz, 1H), 7.83(d, J=8.4 Hz, 2H), 7.95(t, J=8.4Hz, 1H), 8.26(s, 1H).
【0242】
実施例22:(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物25)
【0243】
【化56】

【0244】
(S)−4−アリル−2−ブロモ−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン(化合物24)(238mg, 0.57mmol)、酢酸パラジウム(13 mg, 0.057mmol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(24mg, 0.057mmol)およびN−エチルジイソプロピルアミン(427μL, 2.5mmol)をジメチルスルホキシド(10mL)及びメタノール(5mL)に溶解し、オートクレーブ中で10気圧の一酸化炭素雰囲気下、80℃で24時間加熱した。その後、水を加え、塩化メチレンで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:9〜2:8)により精製して、表題化合物(150mg, 0.38mmol)を収率67%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 2.98−3.04(m, 2H), 3.14(d, J=12.4Hz, 1H), 3.23(dd, J=13.2, 6.4Hz, 1H), 3.75(d, J=12.4Hz, 2H), 4.00(s, 3H), 4.75(d, J=13.2 Hz, 2H), 5.16−5.21 (m, 2H), 5.95−6.02(m, 1H), 7.23−7.37(m, 4H), 7.39−7.55(m, 3H), 7.95−8.01(m, 3H), 8.57(s, 1H).
【0245】
実施例23:(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物26)
【0246】
【化57】

【0247】
(S)−4−アリル−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物25)(1.06g, 2.7mmol)、NDMBA(1.26g, 8.1mmol)、酢酸パラジウム(30mg, 0.135mmol)およびトリフェニルホスフィン(142mg, 0.50mmol)を15mLのジクロロメタンに溶解し、アルゴン雰囲気下へと置換した後に35℃で2時間攪拌した。エバポレーターによって反応溶液から溶媒を除き、得られた固体をベンゼンに再び溶解した。次に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液をエバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン=1:50)により精製して、表題化合物(0.95g, 2.7mmol)を収率>99%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,MeSi): δ 3.25 (d, J=13.2Hz, 1H), 3.48(d, J=11.6Hz, 1H), 3.89(d, J=11.2Hz, 1H), 4.01(s, 3H), 4.65(d, J=12.8Hz, 1H), 7.31−7.52(m, 6H), 7.62(d, J=8.4Hz, 1H), 7.94−8.03(m, 3H), 8.54(s, 1H).
【0248】
実施例24:(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸(化合物27)
【0249】
【化58】

【0250】
(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸 メチルエステル(化合物26)(177mg, 0.5mmol)をメタノール(1.5mL)およびTHF(1.0mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(1N,1mL)を加え、1時間還流した。得られた反応溶液にジクロロメタン(1mL)を加えた後、酸性になるまで塩酸(1N)を加え、減圧濃縮し、残渣を得た。得られた残渣をジクロロメタンで3回抽出し、その後、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムによって乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液を減圧濃縮した後、濃縮残渣を陽イオン交換樹脂カラム(Dowex 50W−X, ダウケミカル社製)に吸着させ、陽イオン交換樹脂カラムを適当量の精製水で洗浄した後、5%アンモニア水にて目的物溶出させた。得られたアンモニア水溶液を減圧濃縮して、表題化合物(153mg, 0.45mmol)を収率90%で得た。
H−NMR(400MHz, CDOD, MeSi): δ 3.49(d, J=13.2Hz, 1H), 3.77(d, J=12.8Hz, 1H), 4.36(d, J=13.2Hz, 1H), 5.15(d, J=12.8 Hz, 1H), 7.23−7.36(m, 4H), 7.57(t, J=8.0Hz, 2H), 7.74(d, J=8.8Hz, 1H), 8.05−8.09(m, 2H), 8.16(d, J=8.8Hz, 1H), 8.42(s, 1H).
【0251】
実施例25:(R)−1−ヒドロキシ−1−(4−ニトロフェニル)−ブタン−3−オン(不斉直接アルドール反応)
5mL反応容器中室温で、実施例5で得られた(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸(9.6mg, 0.025mmol)をDMSO(2.5mL)に加えた後、アセトン(500mL)およびp−ニトロアルデヒド(37.8mg, 0.25mmol)を順次加えた。その後反応容器にアルゴンガスを吹込み、不活性ガス雰囲気へと置換した。室温10時間攪拌の後、塩化アンモニウム飽和水溶液を加え、酢酸エチルで三度抽出した。得られた酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、エバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製して、表題化合物(39.2 mg)を得た。結果(収率、光学純度)を表1に示す。
HPLC測定条件:
カラム : ダイセル Chiral Column AS
移動相 : n−ヘキサン/イソプロパノール=2/1
流速 : 1mL/min.
検出 : 254nm
保持時間: 9min.(Major), 12min.(Minor)
【0252】
実施例26:(R)−1−ヒドロキシ−1−(4−ニトロフェニル)−ブタン−3−オン(不斉直接アルドール反応)
(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸の使用量を19.2mg, 0.05mmolとし、DMSOの代わりにDMFを使用したこと以外は、実施例25と同様に行い、表題化合物を得た。結果(収率、光学純度)を表1に示す。
【0253】
実施例27:(R)−1−ヒドロキシ−1−(4−ニトロフェニル)−ブタン−3−オン(不斉直接アルドール反応)
(S)−4,5−ジヒドロ−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2,6−ジカルボン酸の代わりに実施例11で得られた(S)−4,5−ジヒドロ−6−フェニル−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸を使用したこと以外は、実施例25と同様に行い、表題化合物を得た。結果(収率、光学純度)を表1に示す。
【0254】
【表1】

【0255】
実施例28:(R)−2−(N−フェニルアミノオキシ)−プロパノール(不斉O−ニトロソアルドール反応)
5mL反応容器中室温で、実施例17で得られた(S)−4,5−ジヒドロ−6−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3H−4−アザ−シクロヘプタ[2,1−a:3,4−a’]ジナフタレン−2−カルボン酸(11.7mg, 0.025mmol)をメシチレン(2.5mL)に加えた後、反応溶液を0℃に冷却し、ニトロソベンゼン(53.6mg, 0.5mmol)を加えた。3分間攪拌の後、反応溶液にプロピオンアルデヒド(108μL, 1.5mmol)を加えた。その後反応容器にアルゴンガスを吹込み、不活性ガス雰囲気へと置換した。0℃、1.5時間攪拌の後、エチルアルコール(1mL)、水素化ホウ素ナトリウム(100mg)を加え10分攪拌した。得られた反応溶液に重曹の飽和水溶液を加え、ジクロロメタンで三度抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、エバポレーターにより濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5〜1:3)により精製して、表題化合物(55.0mg)を得た。結果(収率、光学純度)を表2に示す。
HPLC測定条件:
カラム : ダイセル Chiral Column AS
移動相 : n−ヘキサン/エタノール=10/1
流速 : 1mL/min.
検出 : 254nm
保持時間: 18min.(Major), 21min.(Minor)
【0256】
実施例29:(R)−2−(N−フェニルアミノオキシ)−プロパノール(不斉O−ニトロソアルドール反応)
メシチレンの使用量を5mLとしたこと以外は、実施例28と同様に行なった。結果(収率、光学純度)を表2に示す。
【0257】
実施例30:(R)−2−(N−フェニルアミノオキシ)−プロパノール(不斉O−ニトロソアルドール反応)
メシチレンの代わりにトルエンを用い、反応時間を1時間にしたこと以外は、実施例29と同様に行なった。結果(収率、光学純度)を表2に示す。
【0258】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または−COで表される基(ここで、Rは水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)を示し、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基、低級アルコキシ基を示す。)で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
が水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基またはカルボキシル基である、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
光学活性である、請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
請求項3記載の化合物またはその塩を含有することを特徴とする不斉触媒。
【請求項5】
不斉アルドール反応、不斉マンニッヒ型反応、不斉ハロゲン化反応または不斉マイケル反応のための不斉触媒である、請求項4記載の不斉触媒。
【請求項6】
不斉アルドール反応のための不斉触媒である、請求項5記載の不斉触媒。
【請求項7】
不斉アルドール反応が、不斉直接アルドール反応または不斉O−ニトロソアルドール反応である、請求項6記載の不斉触媒。
【請求項8】
請求項3記載の化合物またはその塩の存在下、一般式(II):
【化2】


(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示すか、あるいはRとRとがつながり、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。)で表される化合物と、一般式(III):
【化3】


(式中、Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示す。)で表される化合物を反応させることを特徴とする、一般式(IV):
【化4】


(式中、*は不斉炭素を示し、他の記号は前記と同義を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項9】
が低級アルキル基であり、Rが水素原子であり、Rが置換基を有していてもよいアリール基である、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
請求項3記載の化合物またはその塩の存在下、一般式(V):
【化5】


(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示すか、あるいはRとRとがつながり、それぞれが結合する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。)で表される化合物と、一般式(VI):
【化6】


(式中、R10は置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物とを反応させることを特徴とする、一般式(VII):
【化7】


(式中、*は不斉炭素を示し、他の記号は前記と同義を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法により得られる一般式(VII)で表される化合物を還元する工程を包含する、一般式(VIII):
【化8】


(式中、各記号は請求項10と同義を示す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項12】
が水素原子であり、Rが低級アルキル基であり、R10が置換基を有していてもよいアリール基である、請求項10または11記載の製造方法。
【請求項13】
以下の工程(i-a)〜(vi-a)を包含することを特徴とする、一般式(Ia):
【化9】


(式中、Raは置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法;
(i-a)一般式(IX):
【化10】


(式中、RおよびRは前記と同義を示し、OTfはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を示す。)で表される化合物を、遷移金属触媒および塩基の存在下に、一般式(X):Ra−B(OH) (X)(式中、Raは前記と同義を示す。)で表される化合物と反応させて、一般式(XI):
【化11】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(ii-a)得られた一般式(XI)で表される化合物を遷移金属触媒および塩基の存在下、一酸化炭素および一般式(XII):R’OH (XII)(式中、R’は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表されるアルコールと反応させて、一般式(XIII):
【化12】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(iii-a)得られた一般式(XIII)で表される化合物を、ラジカル開始剤の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、一般式(XIV):
【化13】


(式中、Xはハロゲン原子を示し、他の各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(iv-a)得られた一般式(XIV)で表される化合物をアリルアミンと反応させて、一般式(XV):
【化14】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(v-a)得られた一般式(XV)で表される化合物を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、一般式(XVI):
【化15】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(vi-a)得られた一般式(XVI)で表される化合物を加水分解して、上記一般式(Ia)で表される化合物を得る。
【請求項14】
Raが置換基を有していてもよいフェニル基である請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
以下の工程(i-b)〜(v-b)を包含することを特徴とする、一般式(Ib):
【化16】


(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示し、RおよびRは、同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法;
(i-b)一般式(IX):
【化17】


(式中、RおよびRは前記と同義を示し、OTfはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を示す。)で表される化合物を、遷移金属触媒および塩基の存在下に、一酸化炭素および一般式(XII):R’OH (XII)(式中、R’は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表されるアルコールと反応させて、一般式(XVII):
【化18】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(ii-b)得られた一般式(XVII)で表される化合物を、ラジカル開始剤の存在下、ハロゲン化剤と反応させて、一般式(XVIII):
【化19】


(式中、Xはハロゲン原子を示し、他の各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(iii-b)得られた一般式(XVIII)で表される化合物をアリルアミンと反応させて、一般式(XIX):
【化20】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(iv-b)得られた一般式(XIX)で表される化合物を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、一般式(XX):
【化21】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(v-b)得られた一般式(XX)で表される化合物を加水分解して、上記一般式(Ib)で表される化合物を得る。
【請求項16】
光学活性な一般式(IX)で表される化合物を用いる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
以下の工程(i-c)〜(vii-c)を包含することを特徴とする、一般式(Ic):
【化22】


(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法;
(i-c)一般式(XXI):
【化23】


(式中、RおよびRは前記と同義を示し、R11は低級アルキル基を示す。)で表される化合物を、塩基の存在下に、ハロゲン化剤と反応させて、一般式(XXII):
【化24】


(式中、R、RおよびR11は前記と同義を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物を得;
(ii-c)得られた一般式(XXII)で表される化合物を還元して、一般式(XXIII):
【化25】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(iii-c)得られた一般式(XXIII)で表される化合物をハロゲン化剤と反応させて、一般式(XXIV):
【化26】


(式中、R、RおよびXは前記と同義を示し、Xは、Xと同一または異なってハロゲン原子を示す。)で表される化合物を得;
(iv-c)得られた一般式(XXIV)で表される化合物をアリルアミンと反応させて、一般式(XXV):
【化27】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(v-c)得られた一般式(XXV)で表される化合物を遷移金属触媒および塩基の存在下、一酸化炭素および一般式(XII):R’OH (XII)(式中、R’は置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表されるアルコールと反応させて、一般式(XXVI):
【化28】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(vi-c)得られた一般式(XXVI)で表される化合物を、遷移金属触媒の存在下脱保護して、一般式(XXVII):
【化29】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物を得;
(vii-c)得られた一般式(XXVII)で表される化合物を加水分解して、上記一般式(Ic)で表される化合物を得る。
【請求項18】
光学活性な一般式(XXI)で表される化合物を用いる、請求項17記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−143627(P2006−143627A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333798(P2004−333798)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】