説明

軸受け用潤滑油

【課題】−40℃における流動性を確保すると共に、低温における粘度が小さく且つ温度上昇による粘度の低下が小さい軸受け油を実現できるようにする。
【解決手段】軸受け油は、炭素数18の分岐を有する脂肪酸又は炭素数18の1価の不飽和脂肪酸とエチルヘキシルアルコールとのエステルである第1のモノエステルと、エチルヘキサン酸と炭素数6以上且つ18以下の1価アルコールとのエステルである第2のモノエステルとを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受け用潤滑油に関し、特に流体軸受け等に用いられるモノエステル系の潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音響機器及びパソコン等では小型化と共に、省電力化が求められている。このため、音響機器及びパソコン等に内蔵されるハードディスク等においては、待機時にはモーターを停止させ、アクセス時にのみモーターを回転させ省電力を図ることが求められている。モーターを頻繁に停止させたり起動させたりする場合には、モーターの起動時のトルクを小さくして電力消費を低減することが重要である。このため、低粘度の軸受け用潤滑油(軸受け油)が必要とされている。また、寒冷地においてハードディスク等の使用を可能とするために、−40℃においても固まらない低温における流動性に優れた軸受け油が求められている。一方、ハードディスクは50℃〜60℃程度の使用環境においても動作することが求められており、軸受け油の温度は90℃程度まで上昇するおそれがある。温度上昇により軸受け油の粘度が大きく低下すると、軸受け剛性が低下し、軸受けとして機能しなくなる。このため、ハードディスク用モーター等の軸受け油には、低温において低い粘度を示すだけでなく、高温においてある程度以上の粘度を示すという特性が求められる。このため、温度上昇による粘度低下が生じにくい、つまり粘度指数が大きいことが求められている。
【0003】
従来の軸受け油には、セバシン酸ジオクチルに代表されるジエステル及びトリメチロールプロパン等の多価アルコールと炭素数が4から8の直鎖脂肪酸とからなるポリオールエステル等が用いられていた。しかし、従来の軸受け油はハードディスク用モーター等に近年要求されるようになった特性を満足できなくなってきた。このため、複数のジエステル等を混合した軸受け油及び特殊なジエステル等からなる軸受け油等が検討されている(特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−91524号公報
【特許文献2】特開2005−154726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のジエステル及びポリオールエステル等を用いた軸受け油では、流動点、低温における粘度及び高温における粘度の条件を全てバランスよく満たすことができない。
【0006】
本願は、−40℃における流動性を確保すると共に、低温における粘度が小さく且つ温度上昇による粘度の低下が小さい軸受け油を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的に、本発明に係る軸受け油は、炭素数18の分岐を有する脂肪酸又は炭素数18の1価の不飽和脂肪酸とエチルヘキシルアルコールとのエステルである第1のモノエステルを含有している。
【0008】
本発明の軸受け油は、−40℃以下の流動点を有し、低温における動粘度が低く且つ粘度指数が大きい。
【0009】
本発明に係る軸受け油は、エチルヘキサン酸と炭素数6以上且つ18以下の1価のアルコールとのエステルである第2のモノエステルをさらに含有している。
【0010】
本発明の軸受け油において、第1のモノエステルと第2のモノエステルとの質量比は、60:40〜85:15とすればよい。このような構成とすることにより−20℃における動粘度が190mm2/s以下であり且つ粘度指数が150以上の軸受け油を実現できる。
【0011】
本発明の軸受け油において、第1のモノエステルは、オクタデセン酸エチルヘキシルエステルとし、第2のモノエステルは、エチルヘキサン酸オクタデシルエステルとすればよい。
【0012】
本発明の軸受け油は、酸化防止剤をさらに含有していてもよい。
【0013】
本発明の軸受け油は、粘度を調整するための粘度調整剤をさらに含有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る軸受け油によれば、−40℃における流動性を確保すると共に、低温における粘度が小さく且つ温度上昇による粘度の低下が小さい軸受け油を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基油にしめる第1のモノエステル及び第2のモノエステルの比率と、粘度指数との関係を示すグラフである。
【図2】基油にしめる第1のモノエステル及び第2のモノエステルの比率と、流動点との関係を示すグラフである。
【図3】基油にしめる第1のモノエステル及び第2のモノエステルの比率と、動粘度の変化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明者らは、特定の脂肪酸モノエステルを組み合わせることにより、低温におる粘度が低く且つ粘度指数が高い軸受け用潤滑油(軸受け油)を実現できることを見出した。具体的には、炭素数が18の脂肪酸とエチルヘキシルアルコールとのエステルである第1のモノエステルと、エチルヘキサン酸と炭素数が8以上且つ18以下の1価アルコールとのエステルである第2のモノエステルとの混合物を軸受け油の基油とすることにより、優れた特性を有する軸受け油を実現できる。
【0017】
炭素数が18の脂肪酸は、例えば直鎖飽和脂肪酸であるステアリン酸、分岐飽和脂肪酸であるオクチルデカン酸(イソステアリン酸)、ヘプチルウンデカン酸、ヘキシルドデカン酸、ペンチルトリデカン酸、ブチルテトラデカン酸、プロピルペンタデカン酸、エチルヘキサデカン酸及びメチルヘプタデカン酸及び1価の直鎖不飽和脂肪酸であるオクタデセン酸等とすればよい。分岐の位置は、2位が好ましいが、他の位置であってもよい。不飽和結合の位置は、9位(例えばオレイン酸)であることが好ましいが、他の位置であってもよい。また、シス型であっても、トランス型であっても、両者の混合であってもかまわない。
【0018】
エチルヘキシルアルコールは、2位に分岐を有するものが好ましいが、他の位置に分岐を有していてもよい。
【0019】
エチルヘキサン酸は、2位に分岐を有するものが好ましいが、他の位置に分岐を有していてもよい。
【0020】
炭素数が8以上且つ18以下の1価アルコールは、直鎖のアルコールであっても、分岐を有するアルコールであってもよい。分岐を有するアルコールの場合には、2位に分岐を有しているものが好ましいが他の位置に分岐を有していてもよい。炭素数は、8以上且つ18以下であればよいが、特に炭素数が18のものが好ましい。具体的には、直鎖のオクタデカノール(ステアリルアルコール)並びに分岐を有するオクチルデカノール(イソステアリルアルコール)、ヘプチルウンデカノール、ヘキシルドデカノール、ペンチルトリデカノール、プロピルペンタデカノール、エチルヘキサデカノール及びメチルヘプタデカノールが特に好ましい。また、1価の不飽和アルコールであるオクタデセノール等であってもよい。
【0021】
基油における第1のモノエステルと第2のモノエステルとの混合比は、質量比で40:60〜85:15程度とすることが好ましい。但し、使用する条件によっては、第2のモノエステルを混合せず第1のモノエステルだけでもかまわない。
【0022】
以上のような組成とすることにより、流動点が−40℃以下であり、−20℃における動粘度が180mm2/s以下であり、100℃における動粘度が2.5mm2/s以上で且つ3.0mm2/s以下の軸受け油を実現することができる。
【0023】
本実施形態の軸受け油は、第1のモノエステル及び第2のモノエステルに加えて、粘度調整剤をさらに含有していてもよい。粘度調整剤は、例えばジエステルであるセバシン酸ジオクチルエステル、アゼライン酸ジオクチルエステル及びアジピン酸ジオクチルエステル等を用いることができる。粘度調整剤は、必要とする粘度に応じて適宜添加すればよいが、粘度調整剤の量が増加しすぎると、流動点が上昇したり温度による粘度変化(粘度指数)が大きくなったりする。このため、基油と粘度調整剤との質量比率は、80:20〜90:10程度とすることが好ましい。
【0024】
本実施形態の軸受け油は、種々の添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤は、例えば、金属不活性化剤、酸化防止剤、極圧剤、重合安定剤、防錆剤及び性状安定剤等が挙げられる。
【0025】
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系及び没食子酸エステル系の化合物等を用いることができる。これらの金属不活性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよい。金属不活性化剤の添加量は、軸受け油全体を基準として0.05質量%〜0.5質量%程度とすればよい。
【0026】
酸化防止剤としては、例えばフェノール系又はアミン系の化合物を用いることができる。具体的には、フェノール系の化合物としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4,4'メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)'、4,4'−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−イソプロピリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−(メチレン−3−(3',5'―ジ−tert−ブチル−4'ヒドロキフェニル)プロピオネート)メタン等を用いることができる。アミン系の化合物としては、モノアルキルジフェニルアミン系、ジアルキルジフェニルアミン系、ポリアルキルジフェニルアミン系及びナフチルアミン系の化合物を用いることができる、具体的には、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、4,4'−ジブチルジフェニルアミン、4,4'−ジペンチルジフェニルアミン、4,4'−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4'−ジブチルジフェニルアミン、4,4'−ジオクチルジフェニルアミン及び4,4'−ビス(4−α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等を用いればよい。これらの酸化防止剤は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の添加量は、軸受け油全体を基準として0.01質量%〜5質量%程度とすればよい。
【0027】
極圧剤としては、例えばリン酸エステル及び亜リン酸エステル等を用いることができる。具体的には、リン酸エステルとして、トリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート及びジフェニルハイドロジェンフォスフェート等を用いることができる。亜リン酸エステルとして、トリス(トリデシル)フォスファイト、ジオレイルハイドロジェンフォスファイト及びトリノニルフォスファイト等を用いることができる。リン酸エステル及び亜リン酸エステルを軸受け油全体を基準として0.05質量%〜1.0質量%程度添加すれば、鉄系金属への耐摩耗性を大幅に向上することができる。これらの極圧剤は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
重合安定剤としては、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール及びN,N'−カルボニルイミダゾール等を用いることができる。これらの重合安定剤は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。重合安定剤の添加量は、軸受け油全体を基準として0.05質量%〜0.5質量%程度とすればよい。
【0029】
防錆剤又は性状安定剤としては、スルホン酸バリウム塩及びスルホン酸カルシウム塩並びにフェネート系化合物等を用いることができる。これらの防錆剤又は性状安定剤は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。防錆剤又は性状安定剤の添加量は、軸受け油全体を基準として0.05質量%〜0.5質量%程度とすればよい。
【0030】
(評価方法)
動粘度は、JIS−K−2283に準拠して−20℃、40℃及び100℃について測定した。粘度指数は、JIS−K−2283のB法に準拠して算出した。
【0031】
流動点は、JIS−K−2269に準拠して測定した。
【0032】
全酸価は、JIS−K2501に準拠して測定した。
【0033】
経時変化は、試料を直径が58mmのステンレスシャーレに採取し、120℃にて1000時間保持した。保持後の試料について、動粘度の変化率及び全酸価の変化量を測定した。動粘度の変化率は、保持前後の動粘度(40℃)の差を保持前の動粘度で割った値とした。全酸価の変化量は、保持前後の全酸価の差とした。
【0034】
(参考例1)
基油には、第1のモノエステルであるオレイン酸エチルヘキシルエステル(オクタデセン酸エチルヘキシルエステル)を用いた。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0035】
(実施例)
基油には、第1のモノエステルと第2のモノエステルとの混合油を用いた。第1のモノエステルはオレイン酸エチルヘキシルエステルとし、第2のモノエステルはエチルヘキサン酸イソステアリルエステル(エチルヘサン酸オクチルデシルエステル)とした。基油における第1のモノエステルと第2のモノエステルとの組成比は80:20とした。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0036】
(参考例2)
基油には、第1のモノエステルと第2のモノエステルとの混合油を用いた。第1のモノエステルはオレイン酸エチルヘキシルエステルとし、第2のモノエステルはエチルヘキサン酸イソステアリルエステルとした。基油における第1のモノエステルと第2のモノエステルとの組成比は20:80とした。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0037】
(参考例3)
基油には、第1のモノエステルであるオレイン酸エチルヘキシルエステルを用いた。基油には粘度調整剤としてセバシン酸ジオクチルエステルを添加した。基油における第1のモノエステルと粘度調整剤との組成比は80:20とした。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0038】
(比較例1)
基油には、第2のモノエステルであるエチルヘキサン酸イソステアリルエステルを用いた。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0039】
(比較例2)
基油には、ネオペンチルグリコールジノナン酸エステルを用いた。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0040】
(比較例3)
基油には、トリメチルールプロパントリヘキサン酸エステルを用いた。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0041】
(比較例4)
基油には、3ーメチル1,5−ペンタンジオールジノナン酸エステルを用いた。軸受け油全体に対してフェノール系酸化防止剤を0.5質量%、アミン系酸化防止剤を0.5質量%、極圧剤としてジオレイルハイドロジェンフォスファイトを0.5質量%、金属不活性化剤としてベンゾトリアゾール誘導体を0.1質量%、重合安定剤としてイミダゾール化合物を0.1質量%添加した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1は実施例、参考例及び比較例の動粘度及び流動点を示している。表1に示すように第1のモノエステル単独又は第1のモノエステルと第2のモノエステルとを混合した基油を用いた場合には、−20℃において180mm2/s以下の非常に低い粘度を示している。100℃における動粘度は2.6mm2/s〜2.9mm2/s程度の値を示している。また、流動点も−40℃以下である。
【0044】
一方、比較例1では、−20℃における動粘度が200mm2/s程度となり、100℃における動粘度が2.6mm2/s以下となった。比較例2及び4では、−20℃における動粘度は140mm2・s〜150mm2/s程度であるが、流動点が−30℃台であり、低温における十分な流動性を確保することができない。比較例3では、流動点が−65℃であるが、−20℃における動粘度が280mm2/s程度であり、低温における十分な流動性を確保できない。
【0045】
このように、実施例に示した軸受け油は、−40℃においても流動性を有し、低温において低い粘度を示すと共に、高温においても軸受け油として機能する粘度を有しており、軸受け油として非常に有用である。
【0046】
図1は、第1のモノエステルと第2のモノエステルとの混合比と粘度指数との関係を示している。横軸は、基油にしめる第1のモノエステルの質量比を示しており、0%の場合には第2のモノエステル単独であり、100%の場合には第1のモノエステル単独である。第2のモノエステル単独の場合には100程度であった粘度指数は、第1のモノエステルの比率が高くなり第2のモノエステルの比率が低くなるに従い次第に上昇し、第1のモノエステル単独の場合には190以上の値を示している。比較例の中では、トリメチロールプロパントリヘキサン酸エステルを基油とした場合に最も粘度指数が高くなり、その値は144であった。このように、基油にしめる第1のモノエステル比率を60%以上とすることにより、従来のジエステル又はポリオールエステルを基油とした軸受け油よりも遙かに粘度指数が高い軸受け油が実現できる。
【0047】
図2は、第1のモノエステルと第2のモノエステルとの混合比と流動点との関係を示している。図2に示すように、第1のモノエステルと第2のモノエステルとを混合することにより、第2のモノエステル単独の場合よりも流動点が低くなり、第1のモノエステルの比率が20%の場合には流動点は−60℃となる。さらに、第1のモノエステルの比率が高くなると次第に流動点が上昇し、第1のモノエステル単独の場合には、流動点は−40℃となる。
【0048】
【表2】

【0049】
表2は実施例、参考例及び比較例の経時変化を示している。表2に示すように、実施例においても、120℃で1000時間保持した後においても、十分な動粘度及び全酸価を示しており、十分な耐久性を有している。図3は、第1のモノエステルと第2のモノエステルとの混合比と動粘度の変化率との関係を示している。動粘度の変化率を30%以下とするためには、基油にしめる第1のモノエステルの比率を85%以下とすることが好ましい。
【0050】
実施例に示した軸受け油は、流動点が低く、低温における動粘度が低く且つ粘度指数が非常に大きいため、流体軸受け用軸受け油だけでなく含浸メタル軸受け用軸受け油としても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る軸受け油は、−40℃における流動性を確保すると共に、低温における粘度が小さく且つ温度上昇による粘度の低下が小さい軸受け油を実現でき、特にモーターの流体軸受け油等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数18の分岐を有する脂肪酸又は炭素数18の1価の不飽和脂肪酸とエチルヘキシルアルコールとのエステルである第1のモノエステルと、
エチルヘキサン酸と炭素数6以上且つ18以下の1価アルコールとのエステルである第2のモノエステルとを含有し、
前記第1のモノエステルと前記第2のモノエステルとの質量比は、60:40〜85:15であることを特徴とする軸受け油。
【請求項2】
前記第1のモノエステルは、オクタデセン酸エチルヘキシルエステルであり、
前記第2のモノエステルは、エチルヘキサン酸オクタデシルエステルであることを特徴とする請求項1に記載の軸受け油。
【請求項3】
酸化防止剤をさらに含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受け油。
【請求項4】
粘度を調整するための粘度調整剤をさらに含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸受け油。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−40350(P2013−40350A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257186(P2012−257186)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2010−213789(P2010−213789)の分割
【原出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(398050043)佐藤特殊製油株式会社 (3)
【Fターム(参考)】