説明

軸受潤滑機構

【課題】ジェット潤滑に際し、潤滑油の漏れ量を抑えることで最適な速度で適量の潤滑油を軸受内部に吐出することが可能な軸受潤滑機構を提供する。
【解決手段】ハウジング内径部に複列に配置された軸受に対し、外輪間座を介してジェット潤滑する軸受潤滑機構であって、ハウジングには軸受に向けて形成された複数の潤滑油供給口が形成されており、外輪間座には潤滑油供給口に所定圧で供給された潤滑油を軸受内部に向けて所定速度で吐出する複数のノズル孔が形成され、さらに、外輪間座の外径面には供給口とノズル孔を連通させる円環溝が形成されており、外輪間座の外径面には円環部材が嵌合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受をジェット潤滑するための軸受潤滑機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大容量の空調設備に組み込まれたターボ冷凍機には、その機械損失を低減するために種々の軸受が用いられているが、当該軸受の例えば焼付きや摩耗を低減して、長期に亘って一定の潤滑性能を維持するために、例えば特許文献1をはじめとする各種の軸受潤滑機構が設けられている。その一例として図2及び図3には、軸受をジェット潤滑するための軸受潤滑機構が示されている。
【0003】
図2及び図3に示された軸受潤滑機構は、回転軸2を支持する複列の軸受4,6相互間から潤滑油を吐出するように構成されており、ハウジング8の潤滑油供給口Mに所定圧で供給された潤滑油は、軸受4,6相互間の外輪間座10に形成されたノズル孔Nからそれぞれの軸受4,6内部に向けて所定速度で吐出される。このとき、潤滑に供された排気油は、ハウジング8の排気口8a,8bから外部に排油される。なお、外輪間座10とハウジング8との間には、当該ハウジング8に対する外輪間座10の組立を容易にするためにすきまGが構成されている。この場合、かかるすきまGから潤滑油が漏れ、軸受内部へ導入されずに例えば外輪間座10の面取り部を伝って排油されることが想定されるが、通常、漏れる潤滑油は極微量であるため、軸受の潤滑性能に影響することは無い。
【0004】
ところで、従来の軸受潤滑機構では、1つの潤滑油供給口Mのみがハウジング8に形成されている場合がある。この場合、潤滑油の給油圧の大きさによっては外輪間座10が移動して偏心し、外輪間座10とハウジング8との間のすきまGが大きくなり、その結果、当該すきまGから潤滑油が漏れてしまう場合がある。
【0005】
そこで、かかる不具合を回避するために、例えば特許文献2には、外輪間座10を介して複列に配置された軸受4,6をジェット潤滑する軸受潤滑機構であって、軸受4,6に向けて形成された複数の潤滑油供給口Mと、当該潤滑油供給口Mに所定圧で供給された潤滑油を軸受内部に向けて所定速度で吐出する複数のノズル孔Nとを備えており、複数の潤滑油供給口M相互の位置関係、及び、複数のノズル孔N相互の位置関係、並びに、潤滑油供給口Mとノズル孔Nとの位置関係は、共に、軸受4,6に沿って周方向に等間隔に位置決めされている軸受潤滑機構が提案されている。
【0006】
上記のように構成された軸受潤滑装置によれば、各潤滑油供給口Mから外輪間座10に対して相対する向きで潤滑油が供給されるため、その際の潤滑油の給油圧が互いに相殺されることになる。このとき、外輪間座10には給油圧が互いに相対する向きで均一に作用するため、当該給油圧により外輪間座10が偏心することは無い。この場合、外輪間座10とハウジング8との間のすきまGが大きくなることは無いため、当該すきまGから潤滑油が漏れてしまうといったような従来の問題も発生しない。これにより、ジェット潤滑に必要な吐出速度で適量の潤滑油を軸受4,6内部に吐出することができるため、当該軸受4,6の潤滑性能を一定に維持することが可能となる。
【0007】
しかしながら、温度変化による回転軸2の伸縮を軸方向に移動して吸収する自由側軸受の場合は、軸受4,6の移動をスムーズに行わせるために、軸受4,6外径とハウジング8内径との嵌め合いをすきま嵌めに設定しておく必要があり、その結果、外輪間座10外径面とハウジング8内径面の間に大きなすきまが生じる。
そのため、特許文献2の構成であっても、供給された潤滑油が上記のすきまから軸方向、円周方向に漏出して所定の潤滑油量が軸受4,6内部に給油されない状態となり、予期しない温度上昇や焼き付きによる軸受4,6の早期損傷の発生が懸念される。
このため、軸受4,6外径とハウジング8内径との嵌め合いがすきま嵌めであっても、外輪間座10外径面とハウジング8内径面との間からの潤滑油の漏出を確実に防止する方策が嘱望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−17834号公報
【特許文献2】特開2008−39075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、ジェット潤滑に際し、潤滑油の漏れ量を抑えることで最適な速度で適量の潤滑油を軸受内部に吐出することが可能な軸受潤滑機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、ハウジング内径部に複列に配置された軸受に対し、外輪間座を介してジェット潤滑する軸受潤滑機構であって、ハウジングには軸受に向けて形成された複数の潤滑油供給口が形成されており、外輪間座には潤滑油供給口に所定圧で供給された潤滑油を軸受内部に向けて所定速度で吐出する複数のノズル孔が形成され、さらに、外輪間座の外径面には供給口とノズル孔を連通させる溝が形成されており、外輪間座の外径面には円環部材が嵌合されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ジェット潤滑に際し、潤滑油の漏れ量を抑えることで最適な速度で適量の潤滑油を軸受内部に吐出することが可能な軸受潤滑機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軸受潤滑機構の主要な構成を示す図。
【図2】従来の軸受潤滑機構の主要な構成を示す図。
【図3】軸受をジェット潤滑するための軸受潤滑機構の全体の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る軸受潤滑機構について説明する。なお、本実施の形態は、上述した軸受潤滑機構(図2及び図3)の改良であり、その基本的な構成は同一であるため、以下では改良部分の説明にとどめる。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態の軸受潤滑機構は、ハウジング8内径部に複列に配置された軸受4,6に対し、外輪間座10を介してジェット潤滑する軸受潤滑機構であって、ハウジング8には軸受4,6に向けて形成された複数の潤滑油供給口M(図2)が形成されており、外輪間座10には潤滑油供給口Mに所定圧で供給された潤滑油を軸受内部に向けて所定速度で吐出する複数のノズル孔Nが形成され、さらに、外輪間座10の外径面には潤滑油供給口Mとノズル孔Nを連通させる溝12が形成されており、外輪間座の外径面には円環部材14が嵌合されている。
【0015】
このような構成によれば、外輪間座10の外径面に設けられた溝12と、外輪間座10の外径面に嵌合させた円環部材14によって潤滑油用の空間が形成されるため、軸受4,6外径とハウジング8内径との嵌め合いがすきま嵌めであっても、ハウジング8に設けられた潤滑油供給口Mから供給された潤滑油は、上記の潤滑油用の空間を通過して外輪間座10のノズル孔Nに至ることになり、その後軸受4,6へ給油される。以上のように、本実施の形態では、潤滑油用の空間を通して潤滑油を給油させるため、潤滑油用の空間がない従来の構造に比べ、潤滑油供給口Mからノズル孔Nへ至る過程において漏出する油量を確実に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0016】
2 回転軸
4,6 軸受
8 ハウジング
8a,8b 排気口
10 外輪間座
12 溝
14 円環部材
M 潤滑油供給
N ノズル孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内径部に複列に配置された軸受に対し、外輪間座を介してジェット潤滑する軸受潤滑機構であって、
前記ハウジングには前記軸受に向けて形成された複数の潤滑油供給口が形成され、
前記外輪間座には前記潤滑油供給口に所定圧で供給された潤滑油を前記軸受内部に向けて所定速度で吐出する複数のノズル孔が形成され、さらに、前記外輪間座の外径面には前記供給口と前記ノズル孔を連通させる円環溝が形成され、前記外輪間座の外径面には円環部材が嵌合されていることを特徴とする軸受潤滑機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate