説明

軸受装置

【課題】 ブラケットとボス部材から連結ピンを抜取るときの作業性を高める。
【解決手段】 連結ピン15の一端側にブラケット12と対面する鍔部16を設け、この鍔部16にはピン抜取りボルト21が螺合する雌ねじ孔20を設ける。そして、雌ねじ孔20に螺合したピン抜取りボルト21の先端部21Aを、ブラケット12のボルト当接部位12Cに当接させた状態で、ピン抜取りボルト21の頭部21Bを回転させることにより、鍔部16を連結ピン15と一緒にブラケット12から離間する方向に移動させる構成とする。これにより、ピン抜取りボルト21に付与した回転力を利用して、各ブラケット12、ブームボス13から連結ピン15を容易に抜取ることができるので、例えばハンマー等を用いて連結ピンを叩き出す方法に比較して、連結ピンを抜取るときの作業性、安全性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベルに装備される作業装置のピン結合部等に用いて好適な軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、油圧ショベルの作業装置は、ブーム、アーム、バケットによって大略構成され、上部旋回体とブームとの間、ブームとアームとの間、アームとバケットとの間は、それぞれ軸受装置を用いて互いに回動可能に連結されている。
【0003】
ここで、油圧ショベルの作業装置等に用いられる軸受装置は、通常、一側部材に設けられ互いに対面する一対のブラケットと、他側部材に設けられ該各ブラケット間に配置されるボス部材と、該ボス部材と各ブラケットとの間を相対回転可能に連結する連結ピンとにより大略構成されている。そして、連結ピンの軸方向の端部には、通常、ブラケットに対して連結ピンを軸方向に抜止めすると共に、連結ピンを軸廻りに廻止めする板状の鍔部が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−65037号公報
【0005】
ところで、軸受装置に対するメンテナンス作業を行うに際して、各ブラケットとボス部材とから連結ピンを抜取る場合には、例えば鍔部が設けられた連結ピンの端部にアイボルトを取付け、このアイボルトにバール等の工具を引掛けて連結ピンを引抜く方法、あるいは、鍔部とは反対側となる連結ピンの端部に対し、棒材等を介してハンマーによる打撃力を与えて連結ピンを叩き出す方法が用いられる。
【0006】
しかし、上述した連結ピンの抜取り方法は、いずれも作業者の人力に頼る方法であるため、連結ピンを抜取るときの作業性が悪い上に、作業者にとって大きな負担になるという問題がある。
【0007】
一方、構造物に打込まれたノックピンを抜出すため、ノックピンの端部に螺着される抜き用ボルトと、この抜き用ボルトを収容した状態で軸方向の一端側を構造物に当接させるパイプと、前記抜き用ボルトに螺合しパイプの他端側に当接する抜き用ナットとによって構成されたノックピン抜き用治具が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献2】特開平3−281178号公報
【0009】
このノックピン抜き用治具によってノックピンを抜取るときには、抜き用ボルトに抜き用ナットを螺合させ、構造物と抜き用ナットとの間にパイプを介在させた状態で、抜き用ボルトの先端をノックピンの端部に螺着する。この状態で、工具を用いて抜き用ナットと抜き用ボルトとを互いに逆方向に回転させることにより、ノックピンをボルトの推進力によって構造物から引抜くことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した特許文献2によるノックピン抜き用治具は、ノックピンの端部に、抜き用ボルトを螺着するための雌ねじ穴を形成する構成となっている。このため、従来技術によるノックピン抜き用治具を、油圧ショベルに用いられる連結ピンに適用する場合には、連結ピンの端部に雌ねじ穴を形成することにより、連結ピンの加工工数が増大してしまうという問題がある。また、連結ピンの端部に雌ねじ穴を形成した場合には、この雌ねじ穴からの腐食によって連結ピン全体の強度が低下してしまう虞れがある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑み、一対のブラケットとボス部材とから連結ピンを抜取るときの作業性を高めることができるようにした軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため本発明は、一側部材に設けられ互いに対面する一対のブラケットと、他側部材に設けられ該一対のブラケット間に配置されるボス部材と、該ボス部材と前記各ブラケットとに挿嵌され両者間を相対回転可能に連結する連結ピンとを備えてなる軸受装置に適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明の特徴は、前記連結ピンの軸方向の一端側には前記ブラケットと対面する鍔部を設け、前記鍔部には当該鍔部を板厚方向に貫通する雌ねじ孔を設け、該雌ねじ孔に螺合したピン抜取りボルトの先端部を前記ブラケットに当接させた状態で当該ピン抜取りボルトを回転させることにより、前記連結ピンを前記ボス部材と各ブラケットから抜取り可能に構成したことにある。
【0014】
請求項2の発明は、前記ピン抜取りボルトの長さ寸法は、前記連結ピンの長さ以下に設定したことにある。
【0015】
請求項3の発明は、前記ブラケットには前記ピン抜取りボルトが当接する部位とは異なる部位にブラケット側ストッパを設け、前記鍔部には該ブラケット側ストッパに係合する鍔部側ストッパを設け、前記ブラケット側ストッパと鍔部側ストッパとの間には前記連結ピンを軸方向に抜止めする抜止め部材を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、連結ピンの鍔部に設けた雌ねじ孔に抜取りボルトを螺合すると、この抜取りボルトの先端部はブラケットに当接する。この状態で抜取りボルトを回転させると、抜取りボルトの先端部はブラケットに当接した状態を保持するので、抜取りボルトが雌ねじ孔に螺合した鍔部を、連結ピンと一緒にブラケットから離間する方向に移動させることができる。
【0017】
これにより、抜取りボルトに付与される回転力を利用して、各ブラケット及びボス部材から連結ピンを容易に抜取ることができるので、例えば連結ピンに取付けたアイボルトに工具を引っ掛けて連結ピンを引抜く方法や、ハンマー等を用いて連結ピンを叩き出す方法に比較して、連結ピンを抜取るときの作業性、安全性を高めることができる。また、連結ピンの端部に雌ねじ孔等を設ける必要がないので、この雌ねじ孔の腐食に伴う連結ピンの強度低下を招くことがなく、連結ピンの強度を適正に保持することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、ピン抜取りボルトの長さ寸法を、連結ピンの長さ以下に設定することにより、ピン抜取りボルトが必要以上に長くなるのを抑えることができ、このピン抜取りボルトを用いて連結ピンを抜取るときの作業性を一層高めることができる。また、仮にピン抜取りボルトの全長に亘って鍔部を移動させたとしても、連結ピンが不用意にブラケットから離脱してしまうのを抑えることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、ブラケットに設けたブラケット側ストッパと鍔部に設けた鍔部側ストッパとにより、連結ピンの抜止めと廻止めとを行うことができる。この場合、ブラケット側ストッパは、ピン抜取りボルトが当接する部位とは異なる部位に設けられているので、単一の鍔部に鍔部側ストッパと雌ねじ孔との両方を設けることができる。このため、連結ピンに鍔部側ストッパを設けるための鍔部と、雌ねじ孔を設けるための鍔部とを別々に設ける必要がなく、鍔部を含む連結ピン全体の構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る軸受装置の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図中、1は油圧ショベルで、該油圧ショベル1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。
【0022】
そして、上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム4と、該旋回フレーム4上に搭載されたエンジン等の搭載機器(図示せず)を覆う建屋カバー5と、該建屋カバー5の後側に位置して旋回フレーム4の後端側に取付けられたカウンタウエイト6と、旋回フレーム4の前部左側に設けられ運転室を画成するキャブ7とにより大略構成されている。
【0023】
ここで、旋回フレーム4は、厚板材からなる底板(図示せず)と、該底板上に立設され左,右方向で対面しつつ前,後方向に延びた左,右の縦板4Aと、底板を挟んで左,右両側に配置され前,後方向に延びた左,右のサイドフレーム4Bとにより構成され、強固な支持構造体をなしている。そして、左,右の縦板4Aの前部側は、後述する軸受装置11を構成するブームブラケット12となっている。
【0024】
8は上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置で、該作業装置8は、土砂等の掘削作業を行うものである。ここで、作業装置8は、旋回フレーム4を構成する各縦板4Aの前部側に回動可能にピン結合されたブーム8Aと、該ブーム8Aの先端側に回動可能にピン結合されたアーム8Bと、該アーム8Bの先端側に回動可能にピン結合されたバケット8Cとにより大略構成されている。そして、作業装置8のブーム8Aはブームシリンダ8Dによって駆動され、アーム8Bはアームシリンダ8Eによって駆動され、バケット8Cはバケットシリンダ8Fによって駆動される構成となっている。
【0025】
ここで、作業装置8の各ピン結合部のうち、例えば旋回フレーム4の各縦板4Aとブーム8Aとの間のピン結合部には軸受装置11が設けられており、以下、この軸受装置11について図2ないし図6を参照して説明する。
【0026】
11は本実施の形態による軸受装置で、該軸受装置11は、一側部材としての旋回フレーム4と他側部材としてのブーム8Aとの間に設けられている。そして、この軸受装置11は、旋回フレーム4を構成する各縦板4Aの前部側でブーム8Aを回動可能に支持するものである。また、軸受装置11は、後述する左,右のブームブラケット12、ブームボス13、連結ピン15等により構成されている。
【0027】
12,12は旋回フレーム4を構成する縦板4Aの前部側に設けられたブラケットとしての左,右一対のブームブラケットで、これら左,右のブームブラケット12は、旋回フレーム4の底板(図示せず)から山形状に立上がり一定の間隔をもって左,右方向で対面している。そして、左,右のブームブラケット12間には、後述のブームボス13が連結ピン15を用いて回転可能に連結される構成となっている。
【0028】
ここで、図2及び図3に示すように、各ブームブラケット12には補強板12Aが溶接等の手段を用いて固着され、これらブームブラケット12と補強板12Aとには、後述の連結ピン15が挿嵌されるピン挿嵌孔12Bが穿設されている。また、一方のブームブラケット12に固着された補強板12Aの外側面には、後述のブラケット側ストッパ17が固着して設けられている。さらに、一方のブームブラケット12(補強板12A)の外側面のうち、ピン挿嵌孔12Bとブラケット側ストッパ17との間に位置する部位は、図3中に二点鎖線で示すボルト当接部位12Cとなり、このボルト当接部位12Cは、後述するピン抜取りボルト21の先端部21Aが当接するものである。
【0029】
13は他側部材となるブーム8Aの基端側に設けられたボス部材としてのブームボスで、該ブームボス13は、左,右のブームブラケット12間に配置されるものである。ここで、ブームボス13は、図2に示す如く左,右方向に延びる円筒状をなし、ブームボス13の左,右方向の両端部内周側には、円筒状のブッシュ14がそれぞれ嵌合して設けられている。そして、これらブッシュ14の内周側には、後述の連結ピン15が摺動可能に挿嵌される構成となっている。
【0030】
15はブームボス13と各ブームブラケット12との間を相対回転可能に連結する連結ピンで、該連結ピン15は、ブームボス13に設けられた各ブッシュ14と、各ブームブラケット12のピン挿嵌孔12Bとに挿嵌されている。そして、連結ピン15は、ブッシュ14の内周面に常時摺接し、各ブームブラケット12に対してブームボス13を回転可能に支持している。また、連結ピン15の軸方向の一端側には、後述の鍔部16が設けられている。
【0031】
16は連結ピン15の軸方向の一端側に固着して設けられた鍔部で、該鍔部16は、ブームブラケット12の補強板12Aと対面するものである。ここで、鍔部16は、図2ないし図4に示すように、連結ピン15の軸方向と直交する方向に延びる略長方形の平板状に形成されている。そして、鍔部16の長さ方向の一側にはピン挿嵌孔16Aが穿設され、該ピン挿嵌孔16A内に連結ピン15の一端側を挿嵌して溶接することにより、連結ピン15の一端側に鍔部16が一体的に固着されている。また、鍔部16の長さ方向の他側には、後述の鍔部側ストッパ18が設けられている。
【0032】
17はブームブラケット12の補強板12Aに設けられたブラケット側ストッパで、該ブラケット側ストッパ17は、図2及び図3に示すように、補強板12Aの外側面のうちボルト当接部位12Cとは異なる部位に突設されている。ここで、ブラケット側ストッパ17は、補強板12Aの外側面に溶接によって固着された大径部17Aと、該大径部17Aよりも小径な小径部17Bとにより段付き円筒状に形成され、小径部17Bの内周側には雌ねじ部17Cが螺設されている。
【0033】
18は連結ピン15の鍔部16に設けられた鍔部側ストッパで、該鍔部側ストッパ18は、ブラケット側ストッパ17に係合するものである。ここで、鍔部側ストッパ18は、図3及び図4に示すように、鍔部16を板厚方向に貫通し該鍔部16の長さ方向に延びる長溝孔によって構成され、ブラケット側ストッパ17に対応する位置に配置されている。そして、鍔部側ストッパ18は、各ブラケット12とブームボス13との間を連結ピン15によって連結した状態で、ブラケット側ストッパ17に係合することにより、連結ピン15を軸廻りに廻止めするものである。
【0034】
19はブラケット側ストッパ17と鍔部側ストッパ18との間に設けられた抜止め部材で、該抜止め部材19は、連結ピン15を軸方向に抜止めするものである。ここで、抜止め部材19は、図2及び図3に示すように、鍔部側ストッパ18の溝幅よりも大径な円板状の押え板19Aと、該押え板19Aをブラケット側ストッパ17の小径部17Bに固定する取付ボルト19Bと、ブラケット側ストッパ17の小径部17Bと鍔部側ストッパ18との間に設けられる中空な四角形状のブロック19Cとにより構成されている。
【0035】
そして、図2及び図3に示すように、左,右のブームブラケット12のピン挿嵌孔12Bと、ブームボス13の各ブッシュ14とに連結ピン15を挿嵌した状態で、鍔部16の鍔部側ストッパ18は、ブラケット側ストッパ17の小径部17Bに挿通され、鍔部16はブラケット側ストッパ17の大径部17Aに当接する。この状態で、ブラケット側ストッパ17の小径部17Bと鍔部16の鍔部側ストッパ18との間にブロック19Cを配置し、小径部17Bの端部に取付ボルト19Bによって押え板19Aを固定することにより、連結ピン15を軸廻りに廻止めすると共に、軸方向に抜止めすることができる構成となっている。
【0036】
20はブームブラケット12と対面する鍔部16に設けられた雌ねじ孔で、該雌ねじ孔20は、鍔部16を板厚方向に貫通して設けられている。ここで、雌ねじ孔20は、図2及び図3に示すように、鍔部16のうちピン挿嵌孔16Aと鍔部側ストッパ18との間となる部位に1個設けられ、ブームブラケット12のボルト当接部位12Cと正対している。そして、雌ねじ孔20は、各ブームブラケット12及びブームボス13から連結ピン15を抜取るときに、後述のピン抜取りボルト21が螺合するものである。
【0037】
21は鍔部16の雌ねじ孔20に螺合するピン抜取りボルトで、該ピン抜取りボルト21は、各ブームブラケット12及びブームボス13から連結ピン15を抜取るものである。ここで、ピン抜取りボルト21は、図5に示すように、その長さ寸法aの全域に亘って雄ねじが螺設された全ねじ六角ボルトにより構成されている。このピン抜取りボルト21の長さ寸法aは、連結ピン15の長さ寸法A以下(a≦A)に設定され、例えば連結ピン15の長さ寸法Aに対して70〜80%の長さを有している。
【0038】
そして、各ブームブラケット12及びブームボス13から連結ピン15を抜取るときには、図5及び図6に示すように、ブラケット側ストッパ17の小径部17Bから押え板19Aとブロック19Cを取外した状態で、鍔部16の雌ねじ孔20にピン抜取りボルト21を螺合させ、このピン抜取りボルト21の先端部21Aを、ブームブラケット12のボルト当接部位12Cに当接させる。
【0039】
この状態で、ピン抜取りボルト21の頭部21Bを、スパナ等の工具(図示せず)を用いて矢示R方向に回転させると、ピン抜取りボルト21の先端部21Aは、ブームブラケット12のボルト当接部位12Cに当接した位置を保持するので、ピン抜取りボルト21に付与された回転力を利用して、雌ねじ孔20が形成された鍔部16を、連結ピン15と一緒にブームブラケット12から離間する方向に移動させることができる構成となっている。
【0040】
本実施の形態による軸受装置11は上述の如き構成を有するもので、この軸受装置11によって旋回フレーム4の前部側にブーム8Aを取付ける場合には、旋回フレーム4(縦板4A)の前部側に設けた左,右のブームブラケット12間に、ブーム8Aの基端側に設けたブームボス13を配置する。
【0041】
次に、一端側に鍔部16が固着された連結ピン15の他端側を、一方のブームブラケット12のピン挿嵌孔12Bから、ブームボス13の各ブッシュ14、他方のブームブラケット12のピン挿嵌孔12Bへと挿嵌する。そして、鍔部16の鍔部側ストッパ18をブラケット側ストッパ17の小径部17Bに挿通し、鍔部16をブラケット側ストッパ17の大径部17Aに当接させる。この状態で、ブラケット側ストッパ17の小径部17Bと鍔部側ストッパ18との間にブロック19Cを配置し、小径部17Bの端部に取付ボルト19Bによって押え板19Aを固定する。
【0042】
これにより、連結ピン15は、ブラケット側ストッパ17と鍔部側ストッパ18とによって軸方向に抜止めされると共に、抜止め部材19によって軸方向に抜止めされ、この連結ピン15を介して、左,右のブームブラケット12にブームボス13を回転可能に連結することができる。
【0043】
次に、本実施の形態による軸受装置11は、各ブームブラケット12とブームボス13から連結ピン15を抜取るときの作業性を高めることができる構成となっており、以下、この連結ピン15の抜取り作業について説明する。
【0044】
まず、図2に示す如く各ブームブラケット12とブームボス13とを連結ピン15で連結した状態において、ブラケット側ストッパ17の小径部17Bから、抜止め部材19の押え板19Aとブロック19Cとを取外す。
【0045】
次に、鍔部16の雌ねじ孔20にピン抜取りボルト21を螺合させ、このピン抜取りボルト21の先端部21Aを、ブームブラケット12のボルト当接部位12Cに当接させる。この状態で、図5及び図6に示すように、ピン抜取りボルト21の頭部21Bを、スパナ等の工具(図示せず)を用いて矢示R方向に回転させる。
【0046】
このとき、ピン抜取りボルト21の先端部21Aは、ブームブラケット12のボルト当接部位12Cに当接した状態を保持するので、雌ねじ孔20を有する鍔部16は、ピン抜取りボルト21の回転に応じてブームブラケット12から離間する方向に移動するようになる。これにより、鍔部16と一緒に連結ピン15を軸方向に移動させ、この連結ピン15を、各ブームブラケット12のピン挿嵌孔12B、ブームボス13の各ブッシュ14から抜取ることができる。
【0047】
このように、ピン抜取りボルト21に付与した回転力を利用して、各ブームブラケット12、ブームボス13から連結ピン15を容易に抜取ることができるので、例えば従来技術のように、連結ピンに取付けたアイボルトに工具を引っ掛けて連結ピンを引抜く方法や、ハンマー等を用いて連結ピンを叩き出す方法に比較して、連結ピンを抜取るときの作業性、安全性を高めることができる。
【0048】
ここで、上述した連結ピン15の抜取り作業時に、ピン抜取りボルト21を回転させて一方のブームブラケット12のピン挿嵌孔12Bとブームボス13の各ブッシュ14から連結ピン15を抜取った後には、例えばこの連結ピン15を軸方向に引っ張ることにより、ピン抜取りボルト21を用いることなく、連結ピン15の残りの部分を他方のブームブラケット12のピン挿嵌孔12Bから抜取ることができる。
【0049】
このため、本実施の形態では、ピン抜取りボルト21の長さ寸法aを、連結ピン15の長さ寸法A以下、例えば連結ピン15の長さ寸法Aに対して70〜80%の長さに設定している。これにより、ピン抜取りボルト21が必要以上に長くなるのを抑えることができ、このピン抜取りボルト21を用いて連結ピン15を抜取るときの作業性を一層高めることができる。
【0050】
しかも、ピン抜取りボルト21の長さ寸法aを、連結ピン15の長さ寸法A以下に設定することにより、仮にピン抜取りボルト21の全長に亘って鍔部16を移動させたとしても、連結ピン15が不用意にブラケット12から離脱してしまうのを抑えることができ、作業の安全性を高めることができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、連結ピン15の一端側に設けた1枚の鍔部16に、鍔部側ストッパ18と雌ねじ孔20との両方を設ける構成としている。これにより、連結ピン15に鍔部側ストッパ18を設けるための鍔部と、雌ねじ孔20を設けるための鍔部とを別々に設ける必要がない。この結果、鍔部16を含む連結ピン15全体の構成を簡素化することができ、軸受装置11の組立て工数を低減することにより、製造コストの低減にも寄与することができる。
【0052】
かくして、本実施の形態によれば、連結ピン15の一端側にブームブラケット12と対面する鍔部16を設け、この鍔部16にはピン抜取りボルト21が螺合する雌ねじ孔20を設ける構成としている。そして、雌ねじ孔20に螺合したピン抜取りボルト21の先端部21Aをブームブラケット12に当接させた状態で、ピン抜取りボルト21の頭部21Bを回転させることにより、鍔部16を連結ピン15と一緒にブームブラケット12から離間する方向に移動させることができる。
【0053】
これにより、ピン抜取りボルト21に付与した回転力を利用して、各ブームブラケット12、ブームボス13から連結ピン15を容易に抜取ることができるので、例えば連結ピンに取付けたアイボルトに工具を引っ掛けて連結ピンを引抜く方法や、ハンマー等を用いて連結ピンを叩き出す方法に比較して、連結ピンを抜取るときの作業性、安全性を高めることができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態による軸受装置11は、連結ピン15の軸方向の一端側に1枚の鍔部16を設け、この1枚の鍔部16に鍔部側ストッパ18と雌ねじ孔20とを設ける構成としている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図7に示す第1の変形例のように構成してもよい。
【0055】
即ち、左,右のブームブラケット12とブームボス13とを連結する連結ピン31の一端側に、溶接等の手段によって鍔部32を固着し、この鍔部32にはピン抜取りボルト21が螺合する雌ねじ孔33を形成する。また、連結ピン31の他端側には、ボルト34を用いて他の鍔部35を着脱可能に取付け、この鍔部35には、ブームブラケット12に設けたブラケット側ストッパ17に係合する鍔部側ストッパ36を設ける構成としてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態では、鍔部16に1個の雌ねじ孔20を設け、この雌ねじ孔20に螺合した1本のピン抜取りボルト21を用いて連結ピン15の抜取り作業を行う場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図8に示す第2の変形例のように、鍔部16に2個の雌ねじ孔20,20を設け、これら2個の雌ねじ孔20にそれぞれ螺合した2本のピン抜取りボルト21を用いて連結ピン15の抜取り作業を行う構成としてもよい。
【0057】
さらに、上述した実施の形態では、旋回フレーム4の各縦板4Aと作業装置8のブーム8Aとのピン結合部に用いた軸受装置11を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブーム8Aとアーム8Bとのピン結合部、アーム8Bとバケット8Cとのピン結合部等、2部材間を相対回転可能に連結するピン結合部に広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態による軸受装置が適用された油圧ショベルを示す一部破断の正面図である。
【図2】旋回フレームとブームとのピン結合部に適用された軸受装置を図1中の矢示II―II方向からみた断面図である。
【図3】ブラケット、ブームボス、連結ピン等を示す分解斜視図である。
【図4】連結ピンを単体で示す斜視図である。
【図5】ピン抜取りボルトを用いて連結ピンを抜取る状態を示す図2と同様の断面図である。
【図6】ピン抜取りボルトを用いて連結ピンを抜取る状態を示す斜視図である。
【図7】軸受装置の第1の変形例を示す図2と同様な断面図である。
【図8】軸受装置の第2の変形例を示す図6と同様な斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
4 旋回フレーム(一側部材)
8A ブーム(他側部材)
11 軸受装置
12 ブームブラケット(ブラケット)
12C ボルト当接部位
13 ブームボス(ボス部材)
15,31 連結ピン
16,32,35 鍔部
17 ブラケット側ストッパ
18,36 鍔部側ストッパ
19 抜止め部材
20,33 雌ねじ孔
21 ピン抜取りボルト
21A 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側部材に設けられ互いに対面する一対のブラケットと、他側部材に設けられ該一対のブラケット間に配置されるボス部材と、該ボス部材と前記各ブラケットとに挿嵌され両者間を相対回転可能に連結する連結ピンとを備えてなる軸受装置において、
前記連結ピンの軸方向の一端側には前記ブラケットと対面する鍔部を設け、前記鍔部には当該鍔部を板厚方向に貫通する雌ねじ孔を設け、該雌ねじ孔に螺合したピン抜取りボルトの先端部を前記ブラケットに当接させた状態で当該ピン抜取りボルトを回転させることにより、前記連結ピンを前記ボス部材と各ブラケットから抜取り可能に構成したことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記ピン抜取りボルトの長さ寸法は、前記連結ピンの長さ以下に設定してなる請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記ブラケットには前記ピン抜取りボルトが当接する部位とは異なる部位にブラケット側ストッパを設け、前記鍔部には該ブラケット側ストッパに係合する鍔部側ストッパを設け、前記ブラケット側ストッパと鍔部側ストッパとの間には前記連結ピンを軸方向に抜止めする抜止め部材を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−36294(P2009−36294A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200773(P2007−200773)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】