説明

軸受装置

【課題】 一対の支持ブラケットとボス部材との間の位置決め作業を行うことなく、簡単な作業で第1の部材と第2の部材とを回動自在に連結できるようにする。
【解決手段】 ブーム6側の左,右の支持ブラケット12は、ピン孔15を形成する半割溝13Cを有する固定側ブラケット部13と、この固定側ブラケット部13に対して回動可能に設けられピン孔15を形成する半割溝14Dを有する可動側ブラケット部14と、各ブラケット部13,14間を固定する固定ピン18,19とにより構成する。従って、各半割溝13C,14Dからなるピン孔15によりアームボス21に挿嵌された連結ピン23の突出部位23Aを挟んで支持することにより、ブーム6側の各支持ブラケット12とアーム7側のアームボス21とを連結ピン23を介して簡単に連結することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベルに装備される作業装置のピン結合部等に用いて好適な軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、油圧ショベルの作業装置は、ブーム、アーム、バケットによって大略構成され、上部旋回体の旋回フレームとブームとの間、ブームとアームとの間、アームとバケットとの間は、それぞれ軸受装置を用いて互いに回動可能に連結されている。
【0003】
ここで、油圧ショベルの作業装置等に用いられる軸受装置は、例えばブームの先端側に設けられ互いに対面する一対のブラケットと、アームの基端側に設けられ該各ブラケット間に配置されるボス部材と、該ボス部材と各ブラケットとの間を相対回転可能に連結する連結ピンとにより大略構成されている。そして、軸受装置は、各ブラケットに左,右方向に貫通して設けたピン穴とボス部材に左,右方向に貫通して設けたピン穴とに亘って連結ピンを挿着するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−300033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1によるものでは、ブームの先端側にアームを連結する場合、連結ピンを挿嵌するために一対のブラケットのピン穴とボス部材のピン穴とを同一軸線上に配置しなくてはならない。
【0006】
しかし、各ブラケットのピン穴とボス部材のピン穴との位置決め作業では、重量物であるブームやアームを細かく移動して位置決めしなくてはならず、この位置決め作業に多大な手間と労力を要してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、一対の支持ブラケットとボス部材との間の位置決め作業を省略することにより、簡単な作業で第1の部材と第2の部材を回動自在に連結できるようにした軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による軸受装置は、第1の部材の先端側に設けられピン孔が形成される左,右一対の支持ブラケットと、前記第1の部材に対向して第2の部材の基端側に設けられ前記支持ブラケットのピン孔と同一軸線をなすようにピン挿通孔を有するボス部材と、前記各支持ブラケット間に該ボス部材を組付けるとき前記ボス部材のピン挿通孔に回転可能に挿嵌されると共に軸方向の両端部位が前記各支持ブラケットに形成されるピン孔によって支持される連結ピンとを備え、前記一対の支持ブラケットは、前記第1の部材の先端に設けられ前記ピン孔を形成する半割溝を有する固定側ブラケット部と、該固定側ブラケット部に対して回動可能に設けられ前記ピン孔を形成する半割溝を有する可動側ブラケット部と、前記固定側ブラケット部の半割溝と可動側ブラケット部の半割溝とにより形成される前記ピン孔により前記連結ピンの両端部位を挟んだ状態で前記固定側ブラケット部に対し可動側ブラケット部を固定する固定ピンとにより構成してなる。
【0009】
請求項2の発明は、前記支持ブラケットには、当該支持ブラケットに対する前記連結ピンの回転を規制する回止めピンを設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、一対の支持ブラケットは、ピン孔を形成する半割溝を有する固定側ブラケット部と、該固定側ブラケット部に対して回動可能に設けられピン孔を形成する半割溝を有する可動側ブラケット部とによりボス部材に挿嵌された連結ピンの両端部位を挟んで支持することができる。また、固定側ブラケット部と可動側ブラケット部とにより連結ピンを挟んだ状態では、固定ピンにより各ブラケット部間を固定することができる。
【0011】
従って、第1の部材と第2の部材とを相対回転可能に連結する場合には、両端部位が突出するように連結ピンをボス部材に挿嵌したら、連結ピンの両端部位を固定側ブラケット部の半割溝と可動側ブラケット部の半割溝との間に配置する。この状態で、可動側ブラケット部を固定側ブラケット部側に回動させ、前記各半割溝を合わせることで形成されるピン孔により連結ピンの両端部位を挟持する。
【0012】
そして、各半割溝からなるピン孔によって連結ピンの両端部位を挟持したら、各ブラケット部間に固定ピンを取付けることにより、該固定ピンによって固定側ブラケット部に対し可動側ブラケット部を簡単に固定することができ、第1の部材側の各支持ブラケットと第2の部材側のボス部材とを連結ピンを介して相対回転可能に連結することができる。一方、各ブラケット部から固定ピンを取外すことにより第1の部材と第2の部材とを分離することもできる。
【0013】
この結果、手間を要する位置決め作業を行う必要がなくなるから、一対の支持ブラケット間にボス部材を配置するだけで、各支持ブラケットとボス部材とを連結ピンを介して回転可能に連結することができる。これにより、第1の部材と第2の部材との連結作業を容易に行うことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、支持ブラケットには回止めピンを設ける構成としているから、各支持ブラケットとボス部材とを連結ピンを介して連結したときに、回止めピンは、支持ブラケットに対する連結ピンの回転を規制することができ、支持ブラケットと連結ピンの摩耗等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による軸受装置が適用される作業装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】ブームとアームとの連結部分に適用された軸受装置を示す要部拡大の正面図である。
【図3】支持ブラケット、ボス部材、連結ピン、固定ピン等を図2中の矢示III−III方向からみた拡大断面図である。
【図4】支持ブラケットによってボス部材に挿嵌した連結ピンを支持している状態を示す一部破断の組立斜視図である。
【図5】固定側ブラケット部に対し可動側ブラケット部、固定ピン、回止めピンを分離した状態を示す一部破断の分解斜視図である。
【図6】図5中の固定側ブラケット部を単体で示す外観斜視図である。
【図7】図5中の可動側ブラケット部を単体で示す外観斜視図である。
【図8】図5中の大型の支点ピン、固定ピンを単体で示す外観斜視図である。
【図9】図5中の小型の固定ピン、回止めピンを単体で示す外観斜視図である。
【図10】変形例による軸受装置を旋回フレームとブームとの連結部分に設けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る軸受装置を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0017】
図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成され、上部旋回体3の前側には後述の作業装置5が設けられている。
【0018】
また、上部旋回体3は、旋回フレーム4を支持構造体として下部走行体2上に設けられている。ここで、旋回フレーム4は、厚肉な鋼板等からなる底板(図示せず)と、該底板上に立設され左,右方向で対面しつつ前,後方向に延びた左,右の縦板4A(右側のみ図示)と、前記底板を挟んで左,右両側に配置され前,後方向に延びた左,右のサイドフレーム4B(右側のみ図示)とにより大略構成されている。そして、左,右の縦板4Aの前側位置には作業装置5が俯仰動可能に設けられている。
【0019】
5は上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置で、該作業装置5は、土砂の掘削作業等を行うものである。ここで、作業装置5は、基端側が旋回フレーム4の各縦板4Aの前側位置に回動可能にピン結合されたブーム6と、該ブーム6の先端側に回動可能にピン結合されたアーム7と、該アーム7の先端側に回動可能にピン結合されたバケット8とにより大略構成されている。そして、作業装置5のブーム6,アーム7,バケット8は、各シリンダ9A,9B,9Cによって駆動されものである。
【0020】
ここで、作業装置5のブーム6は、第1の実施の形態による第1の部材を構成するものである。このブーム6は、図2ないし図5に示すように、左,右方向で対面する左,右のウェブ(縦板)6Aと、該各ウェブ6Aの上端側に溶接された上フランジ板6Bと、前記各ウェブ6Aの下端側に溶接された下フランジ板6Cとにより強固な角筒状をなし、前,後方向に延びて形成されている。そして、左,右のウェブ6Aと上,下のフランジ板6B,6Cの先端側には、略V字に折り曲げられたエンドプレート6Dが溶接されている。
【0021】
一方、アーム7は、第1の実施の形態による第2の部材を構成するものである。このアーム7は、前述したブーム6とほぼ同様に、左,右のウェブ7Aと、上,下のフランジ板7B(ブーム6側のみ図示)とにより角筒状に形成されている。
【0022】
さらに、作業装置5の各ピン結合部位のうち、例えばブーム6の先端側とアーム7の基端側との間のピン結合部には、後述の軸受装置11が設けられており、以下、この軸受装置11について図2ないし図9を参照しつつ説明する。
【0023】
11は第1の部材をなすブーム6の先端側と第2の部材をなすアーム7の基端側との間に設けられた第1の実施の形態による軸受装置を示している。この軸受装置11は、ブーム6の先端側でアーム7を相対回転(回動)可能に支持するものである。そして、軸受装置11は、後述する左,右一対の支持ブラケット12、アームボス21、連結ピン23等により構成されている。
【0024】
12はブーム6の先端側に設けられた左,右一対の支持ブラケットである。この左,右の支持ブラケット12は、図3、図4に示すように、後述のアームボス21を左,右方向で挟む位置に互いに対面して配置され、後述の連結ピン23の突出部位23Aを支持するものである。ここで、各支持ブラケット12は、左,右方向で対称形状をなしているから、右側の支持ブラケット12について説明し、左側の支持ブラケット12の説明を省略するものとする。そして、支持ブラケット12は、後述の固定側ブラケット部13、可動側ブラケット部14、ピン孔15、支点ピン16、第1の固定ピン18、第2の固定ピン19、回止めピン20により大略構成されている。
【0025】
13は支持ブラケット12のベースとなる固定側ブラケット部である。この固定側ブラケット部13は厚肉で強度をもった鋼板等から所定の形状に加工され、先端側に向けて先細り形状となっている。また、固定側ブラケット部13の基端側は、図3等に示すようにブーム6の右側のウェブ6Aに溶接され、左,右方向の内側面(右側の固定側ブラケット部13の場合には左側面)は各フランジ板6B,6C、エンドプレート6Dの右端部に溶接されている。
【0026】
また、固定側ブラケット部13には、図5、図6等に示す如く、前,後方向の中間部から先端までの間で上側のほぼ半分をステップ状に切除することにより切欠段部13Aが形成されている。この切欠段部13Aは、前,後方向の中間に位置する浅底な浅底部13A1と、該浅底部13A1よりも先端側に位置して深底な深底部13A2となっている。また、浅底部13A1には、左,右方向の外側となる右側の半分に取付板部13Bが突設されている。
【0027】
一方、深底部13A2の先端側には半円弧状の半割溝13Cが形成され、該半割溝13Cは、後述する可動側ブラケット部14の半割溝14Dと対面することにより後述のピン孔15を形成するもので、このピン孔15のほぼ半分を構成している。ここで、半割溝13Cは、後述する連結ピン23の突出部位23Aが嵌まるもので、この連結ピン23の直径寸法よりも僅かに大きな直径寸法(がたつきを生じない寸法)をもったほぼ半円形の円弧溝として形成されている。
【0028】
また、深底部13A2の先端には、右側の約半分を突出させることにより固定板部13Dが形成されている。この固定板部13Dは、固定側ブラケット部13と可動側ブラケット部14とによって連結ピン23を挟持したときに、可動側ブラケット部14の固定板部14Cと左,右方向で重なるものである。
【0029】
さらに、固定側ブラケット部13には、取付板部13Bの基端側寄りに位置して左,右方向に貫通した支点ピン孔13Eと、該支点ピン孔13Eよりも先端側に位置して取付板部13Bを左,右方向に貫通し、可動ブラケット部14が切欠段部13Aに当接した閉塞状態で第1の固定ピン孔14Fと同一軸線上に位置する第1の固定ピン孔13Fと、先端側の固定板部13Dに位置して左,右方向に貫通し、可動ブラケット部14の閉塞状態で第2の固定ピン孔14Gと同一軸線上に位置する第2の固定ピン孔13Gと、前記支点ピン孔13E、第1の固定ピン孔13Fの近傍に配置された2個のねじ孔13Hとが設けられている。
【0030】
ここで、固定側ブラケット部13に設けた3個のピン孔13E,13F,13Gのうち、可動側ブラケット部14の回動支点(中心)となる支点ピン孔13Eと、可動側ブラケット部14の回動支点に近い第1の固定ピン孔13Fは、比較的に大きな荷重(曲げ荷重、せん断荷重等)が作用するから、後述する太い支点ピン16、第1の固定ピン18を挿着できるように大径孔として形成されている。一方、可動側ブラケット部14の回動支点から遠い第2の固定ピン孔13Gは、比較的に小さな荷重が作用するだけであるから、後述する細い第2の固定ピン19に合わせて小径孔として形成されている。
【0031】
14は固定側ブラケット部13に対して回動可能に設けられた可動側ブラケット部である。この可動側ブラケット部14は、固定側ブラケット部13の切欠段部13Aに収められることにより、固定側ブラケット部13と共に支持ブラケット12の外形を構成している。
【0032】
そして、可動側ブラケット部14は、図5、図7に示すように、基端側に位置して取付板部13Bの左側(内側)に重なって対面するように切欠段部13Aの浅底部13A1の左寄りに配置された取付板部14Aと、該取付板部14Aの先端に設けられ、切欠段部13Aの深底部13A2の全幅に亘って収まる本体部14Bと、該本体部14Bの先端左側寄りに設けられ、固定板部13Dの左側に重なって対面する固定板部14Cとにより構成されている。
【0033】
また、本体部14Bの先端側には、半円弧状の半割溝14Dが形成されている。この半割溝14Dは、前述した固定側ブラケット部13の半割溝13Cと可動側ブラケット部14の回動方向で対面することにより後述のピン孔15を形成するもので、このピン孔15のほぼ半分を構成している。ここで、可動側ブラケット部14の半割溝14Dは、固定側ブラケット部13の半割溝13Cと同様に、後述する連結ピン23の突出部位23Aが嵌まるもので、この連結ピン23の直径寸法よりも僅かに大きな直径寸法をもったほぼ半円形の円弧溝として形成されている。
【0034】
さらに、可動側ブラケット部14には、取付板部14Aの基端側寄りに位置して左,右方向に貫通した支点ピン孔14Eと、該支点ピン孔14Eよりも先端側に位置して取付板部14Aを左,右方向に貫通した第1の固定ピン孔14Fと、先端側の固定板部14Cに位置して左,右方向に貫通した第2の固定ピン孔14Gと、本体部14Bの先端側に位置して半割溝14Dの円弧中心に向け半径方向に貫通した回止めピン孔14Hと、前記第2の固定ピン孔14Gと回止めピン孔14Hの近傍に配置された2個のねじ孔14Jとが設けられている。
【0035】
ここで、可動側ブラケット部14に設けた4個のピン孔14E,14F,14G,14Hのうち、支点ピン孔14Eと第1の固定ピン孔14Fは、後述する太い支点ピン16、第1の固定ピン18を挿着できるように大径孔として形成されている。一方、第2の固定ピン孔14Gと回止めピン孔14Hは、後述する細い第2の固定ピン19に合わせて小径孔として形成されている。
【0036】
このように、固定側ブラケット部13と可動側ブラケット部14とは、1つの支持ブラケット12を後述の連結ピン23を支持する位置で2分割することにより形成され、可動側ブラケット部14は、先端側に向け開閉するように固定側ブラケット部13に回動可能に取付けられている。
【0037】
15は支持ブラケット12の先端側に設けられたピン孔で、該ピン孔15は、後述する連結ピン23の突出部位23Aを支持することができる。そして、ピン孔15は、図2、図4に示す如く、固定側ブラケット部13に対し可動側ブラケット部14を閉じて一体形状をなしたときに、固定側ブラケット部13の半割溝13Cと可動側ブラケット部14の半割溝14Dとにより1個の円形孔として形成されるものである。また、ピン孔15は、各半割溝13C,14D間で連結ピン23の突出部位23Aを外径側から挟んで固定することができる。
【0038】
16は固定側ブラケット部13に対し可動側ブラケット部14を回動可能に取付けるための支点ピンである。この支点ピン16は、固定側ブラケット部13の支点ピン孔13Eと可動側ブラケット部14の支点ピン孔14Eとに挿嵌され、これにより、可動側ブラケット部14の基端側を固定側ブラケット部13に対し上,下方向に開閉するように回動可能に連結することができる。ここで、支点ピン16は、可動側ブラケット部14の回動支点(中心)として機能するものであり、比較的に大きな荷重(曲げ荷重、せん断荷重等)が作用するから、図8に示すように、大径な円柱体として形成されている。
【0039】
また、支点ピン16の基端側には、長さ方向と直交するように略長方形状の抜止め板16Aが固着され、該抜止め板16Aには、ボルト挿通孔16Bが穿設されている。そして、図5に示すように、支点ピン16を固定側ブラケット部13の支点ピン孔13Eと可動側ブラケット部14の支点ピン孔14Eとに亘って挿嵌し、この状態で、ボルト挿通孔16Bに挿通したボルト17を固定側ブラケット部13のねじ孔13Hに螺着する。これにより、支点ピン16は、固定側ブラケット部13に対し可動側ブラケット部14を図2中の矢示方向に回動可能に支持することができる。
【0040】
18は支点ピン16よりも先端側(前側)に位置して設けられた第1の固定ピンを示している。この第1の固定ピン18は、固定側ブラケット部13の半割溝13Cと可動側ブラケット部14の半割溝14Dとにより形成されるピン孔15により後述する連結ピン23の突出部位23Aを挟んだ状態で、固定側ブラケット部13に対し可動側ブラケット部14が回動しないように固定するものである。
【0041】
また、第1の固定ピン18は、固定側ブラケット部13の第1の固定ピン孔13Fと可動側ブラケット部14の第1の固定ピン孔14Fとに挿嵌されている。これにより、第1の固定ピン18は、固定側ブラケット部13に対する可動側ブラケット部14の回動を規制し、各半割溝13C,14Dからなるピン孔15による連結ピン23の挟持状態を維持することができる。ここで、第1の固定ピン18は、可動側ブラケット部14の回動支点に近いから、先端側が開かないようにするために大きな荷重に耐える必要がある。従って、第1の固定ピン18は、図8に示すように、大径な円柱体として形成されている。
【0042】
また、第1の固定ピン18は、前述した支点ピン16とほぼ同様に、その基端側に略長方形状の抜止め板18Aを有し、該抜止め板18Aにはボルト挿通孔18Bが穿設されている。
【0043】
一方、19は各ブラケット部13,14の先端部に位置して設けられた第2の固定ピンを示している。この第2の固定ピン19は、各ブラケット部13,14の半割溝13C,14Dからなるピン孔15により連結ピン23の突出部位23Aを挟んだ状態で、可動側ブラケット部14を固定するものである。また、第2の固定ピン19は、各ブラケット部13,14の第1の固定ピン孔13F,14Fに挿嵌され、これにより、第2の固定ピン19は、第1の固定ピン18と一緒に、固定側ブラケット部13に対する可動側ブラケット部14の回動を規制し、各半割溝13C,14Dからなるピン孔15による連結ピン23の挟持状態を維持することができる。
【0044】
ここで、第2の固定ピン19は、可動側ブラケット部14の回動支点から遠いから、先端側が開かないようにするための荷重は小さくて済む。従って、第2の固定ピン19は、図9に示すように、小径な円柱体として形成することができる。そして、第2の固定ピン19は、第1の固定ピン18とほぼ同様に、略長方形状の抜止め板19Aとボルト挿通孔19Bとを有している。
【0045】
そして、図2、図4に示すように、各ブラケット部13,14の半割溝13C,14Dからなるピン孔15により連結ピン23の突出部位23Aを挟んだ状態で、第1の固定ピン18を固定側ブラケット部13の第1の固定ピン孔13Fと可動側ブラケット部14の第1の固定ピン孔14Fとに亘って挿嵌し、第2の固定ピン19を第2の固定ピン孔13Gと第2の固定ピン孔14Gとに亘って挿嵌したら、これらの固定ピン18,19のボルト挿通孔18B,19Bに挿通したボルト17を固定側ブラケット部13のねじ孔13H,可動側ブラケット部14のねじ孔14Jに螺着する。これにより、各固定ピン18,19は、連結ピン23を挟持した状態で固定側ブラケット部13に対する可動側ブラケット部14の回動を規制することができる。
【0046】
20は可動側ブラケット部14の先端側に設けられた回止めピンで、該回止めピン20は、支持ブラケット12に対する連結ピン23の回転を規制するものである。また、回止めピン20は、支持ブラケット12に対する連結ピン23の回転を規制するだけであるから、図9に示すように、小径な円柱体として形成されている。また、回止めピン20は、略長方形状の抜止め板20Aとボルト挿通孔20Bとを有している。
【0047】
そして、各ブラケット部13,14により連結ピン23を挟んだ状態で、回止めピン20を可動側ブラケット部14の回止めピン孔14Hと連結ピン23のピン挿嵌穴23Bとに亘って挿嵌し、ボルト挿通孔20Bに挿通したボルト17を可動側ブラケット部14のねじ孔14Jに螺着する。これにより、回止めピン20は、可動側ブラケット部14と連結ピン23とを一体的に連結し、該連結ピン23の回転を規制することができる。
【0048】
このように構成された各支持ブラケット12によって後述する連結ピン23の突出部位23Aを挟持する場合の手順について説明する。
【0049】
まず、可動側ブラケット部14を支点ピン16を中心にして上側に回動し、固定側ブラケット部13と可動側ブラケット部14との間を開いたら、固定側ブラケット部13の半割溝13Cに連結ピン23の突出部位23Aを嵌合させる。次に、半割溝14Dで突出部位23Aを上側から押えるように可動側ブラケット部14を下向きに回動し、各半割溝13C,14Dからなるピン孔15で連結ピン23の突出部位23Aを挟持したら、各ブラケット部13,14の第1の固定ピン孔13F,14Fに第1の固定ピン18を挿着し、ボルト17で固定する。また、各ブラケット部13,14の第2の固定ピン孔13G,14Gに第2の固定ピン19を挿着し、ボルト17で固定する。さらに、ピン孔15によって連結ピン23の突出部位23Aを挟持したら、回止めピン20を可動側ブラケット部14の回止めピン孔14Hに挿通し、先端部を連結ピン23のピン挿嵌穴23Bに挿嵌し、ボルト17で固定する。これにより、各支持ブラケット12によって連結ピン23の突出部位23Aを簡単に挟持することができる。
【0050】
21は第1の部材としてのブーム6に対向して第2の部材となるアーム7の基端側に設けられたボス部材としてのアームボスを示している。このアームボス21は、左,右の支持ブラケット12間に配置されるもので、図3に示すように、左,右方向に延びる円筒状をなしている。そして、アームボス21は、軸方向に貫通するようにピン挿通孔21Aを有し、該ピン挿通孔21Aは、各支持ブラケット12のピン孔15と同一軸線をなすように配置され、その内周側には後述の連結ピン23を摺動回転可能に支持するブッシュ22が軸方向に離間して挿嵌されている。
【0051】
23はアームボス21に回転可能に設けられた連結ピンで、該連結ピン23は、左,右の支持ブラケット12とアームボス21とを回転(回動)可能に連結するものである。また、連結ピン23は、アームボス21の左,右方向の幅寸法よりも長尺な棒状体として形成され、これにより、アームボス21のピン挿通孔21Aに挿通したときに、軸方向の両端部位がアームボス21(ピン挿通孔21A)から突出している。
【0052】
ここで、連結ピン23の両端部位をなす各突出部位23Aは、左,右の支持ブラケット12によって径方向の外側から挟持できるように、該支持ブラケット12の厚さ寸法(左,右方向寸法)とほぼ同じ寸法だけアームボス21から突出している。また、連結ピン23の各突出部位23Aには、可動側ブラケット部14の回止めピン孔14Hに対応する位置に半径方向のピン挿嵌穴23Bが形成され、該ピン挿嵌穴23Bには回止めピン20が挿嵌される。これにより、連結ピン23は、アームボス21に対して回転可能に挿嵌され、各支持ブラケット12に対して回転不能に取付けられている。
【0053】
第1の実施の形態による軸受装置11は上述の如き構成を有するもので、この軸受装置11を用いたブーム6とアーム7との連結作業について述べる。
【0054】
まず、アームボス21のピン挿通孔21Aに連結ピン23を挿入し、該連結ピン23の両端側が突出部位23Aとなってアームボス21から突出した状態とする。このときに、連結ピン23は、1つのピン挿通孔21Aに挿入するだけであるから、このピン挿通孔21Aだけを狙って簡単に挿入することができる。
【0055】
一方、左,右の支持ブラケット12では、固定側ブラケット部13に対し可動側ブラケット部14を支点ピン16を中心にして上側に回動させて開き、前記固定側ブラケット部13の切欠段部13Aと可動側ブラケット部14との間に連結ピン23の直径寸法よりも大きな隙間を形成する。
【0056】
次に、連結ピン23の突出部位23Aが固定側ブラケット部13と可動側ブラケット部14との開口部に収まるように、アームボス21を左,右の支持ブラケット12間に移動し、連結ピン23の突出部位23Aを固定側ブラケット部13の半割溝13Cに嵌合する。このときに、ブーム6に対してアーム7を多少移動するだけで、凹陥した半割溝13Cに突出部位23Aを容易に嵌合させることができる。
【0057】
そして、連結ピン23を固定側ブラケット部13の半割溝13Cに嵌合したら、可動側ブラケット部14を閉じるように下向きに回動し、該可動側ブラケット部14の半割溝14Dを突出部位23Aの上側から嵌合させる。これにより、各半割溝13C,14Dからなるピン孔15によって連結ピン23の突出部位23Aを挟持することができる。
【0058】
さらに、第1の固定ピン18を各ブラケット部13,14の第1の固定ピン孔13F,14Fに挿着し、第2の固定ピン19を第2の固定ピン孔13G,14Gに挿着することにより、ピン孔15によって連結ピン23を挟持した状態で固定側ブラケット部13に対する可動側ブラケット部14の回動を規制し、この挟持状態を維持する。また、回止めピン20を可動側ブラケット部14の回止めピン孔14H、連結ピン23のピン挿嵌穴23Bに挿嵌することにより、支持ブラケット12に対する連結ピン23の回転を規制することができる。
【0059】
かくして、第1の実施の形態によれば、ブーム6側の左,右一対の支持ブラケット12は、ピン孔15を形成する半割溝13Cを有する固定側ブラケット部13と、該固定側ブラケット部13に対して回動可能に設けられ前記ピン孔15を形成する半割溝14Dを有する可動側ブラケット部14とを備え、各半割溝13C,14Dからなるピン孔15によりアームボス21に挿嵌された連結ピン23の突出部位23Aを挟んで支持する構成としている。また、固定側ブラケット部13と可動側ブラケット部14とにより連結ピン23を挟んだ状態では、第1の固定ピン18、第2の固定ピン19により各ブラケット部13,14間を固定する構成としている。
【0060】
従って、第1の部材をなすブーム6と第2の部材をなすアーム7とを相対回転可能に連結する場合には、アームボス21に挿着した連結ピン23の突出部位23Aを固定側ブラケット部13の半割溝13Cに嵌合し、可動側ブラケット部14を固定側ブラケット部13側に回動させ、その半割溝14Dによって連結ピン23の突出部位23Aを上側から押えて挟持する。これにより、各半割溝13C,14Dを合わせることで形成されるピン孔15により連結ピン23の両端部位となる突出部位23Aを挟持することができる。
【0061】
しかも、ピン孔15によって連結ピン23の突出部位23Aを挟持した状態では、各ブラケット部13,14間に固定ピン18,19を取付けることにより、該固定ピン18,19によって固定側ブラケット部13に対し可動側ブラケット部14を簡単に固定することができ、ブーム6側の各支持ブラケット12とアーム7側のアームボス21とを連結ピン23を介して相対回転可能に連結することができる。一方、各ブラケット部13,14から固定ピン18,19を取外すことによりブーム6とアーム7とを分離することもできる。
【0062】
この結果、手間を要するブーム6とアーム7との位置決め作業を行う必要がなくなるから、一対の支持ブラケット12間にアームボス21を配置するだけで、各支持ブラケット12とアームボス21とを連結ピン23を介して回転可能に連結することができる。これにより、ブーム6とアーム7との連結作業を容易に行うことができる。
【0063】
また、各支持ブラケット12には、可動側ブラケット部14と連結ピン23に亘って挿嵌される回止めピン20を設けているから、各支持ブラケット12とアームボス21とを連結ピン23を介して連結したときに、回止めピン20によって支持ブラケット12に対する連結ピン23の回転を規制することができ、支持ブラケット12と連結ピン23の摩耗等を防止することができる。
【0064】
次に、図10は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第1の部材としての旋回フレームの縦板の先端側に対し、第1の部材としてのブームの基端側を連結ピンを用いて相対回転可能に連結する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0065】
図10において、31は第1の部材をなす旋回フレーム4の各縦板4A′と第2の部材をなすブーム6の基端側との間に設けられた第2の実施の形態による軸受装置を示している。この軸受装置31は、各縦板4A′の先端側(前側位置)でブーム6を相対回転(回動)可能に支持するものである。そして、軸受装置31は、後述する左,右一対の支持ブラケット32、ブームボス40、連結ピン41等により構成されている。
【0066】
32は旋回フレーム4の縦板4A′の先端側に設けられた左,右一対の支持ブラケット(右側のみ図示)である。この左,右の支持ブラケット32は、前記述した第1の実施の形態による支持ブラケット12とほぼ同様に、後述のブームボス40を左,右方向で挟む位置に互いに対面して配置され、後述の連結ピン41の突出部位41Aを支持するものである。そして、支持ブラケット32は、縦板4A′の一部として形成された固定側ブラケット部33と、該固定側ブラケット部33に対して回動可能に設けられた可動側ブラケット部34とを有し、各ブラケット部33,34には、ピン孔35のほぼ半分を構成する半割溝33A,34が対向して設けられている。
【0067】
また、支持ブラケット32には、可動側ブラケット部34の基端側を固定側ブラケット部33に対し回動可能に取付ける支点ピン36と、該支点ピン36よりも先端側(前側)に配置され固定側ブラケット部33に対し可動側ブラケット部34が回動しないように固定する第1の固定ピン37および第2の固定ピン38と、可動側ブラケット部34の先端側に配置され支持ブラケット32に対する連結ピン41の回転を規制する回止めピン39とが設けられている。
【0068】
40は第2の部材となるブーム6の基端側に設けられたボス部材としてのブームボス、41はブームボス40のピン挿通孔に回転可能に挿嵌された連結ピンをそれぞれ示している。また、連結ピン41は、前述した第1の実施の形態による連結ピン23とほぼ同様に、軸方向の両端部位が突出部位41Aとなり、この突出部位41Aが各ブラケット部33,34間のピン孔35によって挟持されている。
【0069】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、旋回フレーム4の縦板4A′とブーム6との間を軸受装置31を用いて連結することにより、第1の実施の形態と同様に、位置決め作業を省略した簡単な作業で連結することができる。
【0070】
なお、第1の実施の形態では、支持ブラケット12に第1の固定ピン18と第2の固定ピン19とを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、支持ブラケット12に第1の固定ピン18と第2の固定ピン19とのいずれか一方だけを設ける構成としてもよい。また、3個以上の固定ピンを設ける構成としてもよい。
【0071】
また、第1の実施の形態では、作業装置5を構成するブーム6とアーム7とのピン結合部に軸受装置11を設けた場合を例示し、第2の実施の形態では、旋回フレーム4の縦板4A′と作業装置5のブーム6とのピン結合部に軸受装置31を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば軸受装置を作業装置5のアーム7とバケット8との間に適用してもよく、2部材間を回動可能に連結するピン結合部に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 油圧ショベル
3 上部旋回体
4 旋回フレーム
4A′ 縦板(第1の部材)
5 作業装置
6 ブーム(第1の部材、第2の部材)
7 アーム(第2の部材)
11,31 軸受装置
12,32 支持ブラケット
13,33 固定側ブラケット部
13C,14D,33A,34A 半割溝
14,34 可動側ブラケット部
15,35 ピン孔
16,36 支点ピン
18,37 第1の固定ピン
19,38 第2の固定ピン
20,39 回止めピン
21 アームボス(ボス部材)
21A ピン挿通孔
23,41 連結ピン
23A,41A 突出部位(両端部位)
40 ブームボス(ボス部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の先端側に設けられピン孔が形成される左,右一対の支持ブラケットと、前記第1の部材に対向して第2の部材の基端側に設けられ前記支持ブラケットのピン孔と同一軸線をなすようにピン挿通孔を有するボス部材と、前記各支持ブラケット間に該ボス部材を組付けるとき前記ボス部材のピン挿通孔に回転可能に挿嵌されると共に軸方向の両端部位が前記各支持ブラケットに形成されるピン孔によって支持される連結ピンとを備え、
前記一対の支持ブラケットは、前記第1の部材の先端に設けられ前記ピン孔を形成する半割溝を有する固定側ブラケット部と、該固定側ブラケット部に対して回動可能に設けられ前記ピン孔を形成する半割溝を有する可動側ブラケット部と、前記固定側ブラケット部の半割溝と可動側ブラケット部の半割溝とにより形成される前記ピン孔により前記連結ピンの両端部位を挟んだ状態で前記固定側ブラケット部に対し可動側ブラケット部を固定する固定ピンとにより構成してなる軸受装置。
【請求項2】
前記支持ブラケットには、当該支持ブラケットに対する前記連結ピンの回転を規制する回止めピンを設ける構成としてなる請求項1に記載の軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−106110(P2011−106110A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259901(P2009−259901)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】