説明

軸受装置

【課題】ジャーナル軸受に保持されるスラスト座金の延出部の応力集中を緩和し破損を防ぐ。
【解決手段】スラスト座金10の内縁部の半径方向内方に延出形成された延出部20がジャーナル軸受101に受け入れられて保持されることにより、当該スラスト座金が当該ジャーナル軸受に取付けられてなる軸受装置において、延出部は、先端部21とこれを基端側で支持する支持部22とを有し、ジャーナル軸受とスラスト座金との周方向の相対移動により、先端部の側辺21a(21b)がジャーナル軸受から周方向の荷重を受け、支持部22の側辺に、前記荷重による応力の集中を緩和する側辺凹部22a(22b)が形成され、先端部の側辺は、接触相手のジャーナル軸受の接触面101a(101b)の外端P1(P3)より内側に配置され、側辺凹部の内端P2(P4)は、前記接触面の外端より内側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、内燃機関のクランク軸を軸受けするために、ラジアル方向に軸受けするジャーナル軸受と、スラスト方向に軸受けするスラスト座金とを別々に製作しておき、スラスト座金をジャーナル軸受に取り付けて組み立てられる軸受装置が利用されている。
スラスト座金には、ジャーナル軸受に取り付けるために、ジャーナル軸受側に延出して接続する延出部が形成される。
この延出部の基部両側には、応力集中による破損を防ぐための凹部が形成される。例えばその凹部は、図3(a)に示すように延出部100aの基部両側それぞれにおいて円弧状に刳り抜かれるように形成される。
図3(a)(b)に示すように、ジャーナル軸受101とスラスト座金100との周方向の相対移動により延出部100aに荷重が負荷されても、凹部によって応力の集中が緩和され、延出部100aが破損することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−140612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図3(c)に示すように、延出部100aに直接荷重が負荷されるジャーナル軸受101との接触端100bにおいては、磨耗等の変形が生じ易く、ここに磨耗等が生じると依然応力集中が生じることから、延出部100aが破損するおそれがあることがわかった。
【0005】
本発明は、スラスト座金がジャーナル軸受に取付けられてなる軸受装置において、当該取り付けのためにジャーナル軸受に保持されるスラスト座金の延出部の応力集中を緩和し破損を防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、スラスト座金の内縁部の半径方向内方に延出形成された延出部がジャーナル軸受に受け入れられて保持されることにより、当該スラスト座金が当該ジャーナル軸受に取付けられてなる軸受装置において、
前記延出部は、先端部とこれを基端側で支持する支持部とを有し、
前記ジャーナル軸受と前記スラスト座金との周方向の相対移動により、前記先端部の側辺が前記ジャーナル軸受から周方向の荷重を受け、
前記支持部の側辺に、前記荷重による応力の集中を緩和する側辺凹部が形成され、
前記先端部の側辺は、接触相手の前記ジャーナル軸受の接触面の外端より内側に配置され、前記側辺凹部の内端は、前記接触面の外端より内側に配置されていることを特徴とする軸受装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記側辺凹部は軸方向に見て凹状曲線に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記側辺凹部と、前記支持部の基部両側に形成された基部凹部とが、軸方向に見て連続した凹状曲線に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の軸受装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記凹状曲線は円弧であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の軸受装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来、延出部に直接荷重が負荷されるジャーナル軸受との接触端において延出部との間に磨耗等が生じたとしても、応力集中が解消され、延出部の応力集中を緩和し、長期間に亘り破損を防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】軸受装置の軸方向視断面図である。
【図2】図1のA部詳細図で、本発明が適用された一例の構造を示す。
【図3】図1のA部詳細図で、従来の一例の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0013】
図1に示すように本実施形態の軸受装置は、スラスト座金10と、ジャーナル軸受101とを備えるもので、この点は、図3に示した従来の軸受装置と同様である。また、図2に示すようにジャーナル軸受101は、図3に示した従来のものと同様である。
本実施形態の軸受装置にあっては、スラスト座金10が図3に示した従来のものと異なっている。
【0014】
図2(a)に示すようにスラスト座金10は、延出部20を有する。延出部20はスラスト座金10の内縁部が半径方向内方に延出形成されてなる。ジャーナル軸受101に形成された溝に受け入れられて保持される。
延出部20は、先端部21とこれを基端側で支持する支持部22とを有する。
先端部21が、ジャーナル軸受101に形成された溝の側壁面101a,101b間に挿入される態様で、スラスト座金10がジャーナル軸受101に取付けられる。
したがって、ジャーナル軸受101とスラスト座金10との周方向の相対移動により、側壁面101aから先端部21の側辺21aに、又は側壁面101bから側辺21bに、ジャーナル軸受101からの周方向の荷重を受けることとなる。
【0015】
支持部22の側辺に、その荷重による応力の集中を緩和する側辺凹部22a,22bが形成されている。支持部22の基部両側にも同様に応力の集中を緩和する基部凹部30a,30bが形成されており、これらの側辺凹部22aと基部凹部30a、及び側辺凹部22bと基部凹部30bはそれぞれ連続した凹状曲線に形成されている。本実施形態においては、この凹状曲線は円弧である。応力集中を緩和する形状として理想的であるからである。
【0016】
側辺凹部22a,22bが形成されている結果、支持部22の平均幅は先端部21より細くされており、先端部21の側辺21a,21bが側方(=ジャーナル軸受101の周方向)に突出した側端面に形成された構造に構成されている。
【0017】
また、先端部21の側辺21a,21bは、接触相手であるジャーナル軸受101の接触面である側壁面101a,101bのジャーナル軸受の径方向で外側となる外端P1,P3より内側に配置されている。
さらに側辺凹部22a,22bの内端P2,P4は、接触面である側壁面101a,101bの外端P1,P3より内側に配置されている。
【0018】
したがって、図2(b)(c)に示すように、ジャーナル軸受101とスラスト座金10との周方向の相対移動により延出部20に荷重が負荷されても、直接荷重が入力される先端部21の側辺21a,21bから、先端部21、支持部22さらにスラスト座金10本体に荷重が伝達されるにあたり、際立った応力集中点もなく、応力はスラスト座金10材料中に分散され、さらに側辺21a,21bとその接触面となる側壁面101a,101bとの間に磨耗等による変形が生じたとしても、変形前と変わることなく応力集中点が生じずに、応力はスラスト座金10材料中に分散される。
図3(c)に示したような従来例の延出部100aに直接荷重が負荷されるジャーナル軸受101との接触端100bにおいて磨耗等による変形が生じた際に生じていた応力集中は解消されている。
したがって、延出部20に亀裂が入るなどの破損が防がれる。
【符号の説明】
【0019】
10 スラスト座金
20 延出部
21 先端部
21a,21b側辺
22 支持部
22a,22b側辺凹部
30a,30b基部凹部
101 ジャーナル軸受
101a,101b 側壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラスト座金の内縁部の半径方向内方に延出形成された延出部がジャーナル軸受に受け入れられて保持されることにより、当該スラスト座金が当該ジャーナル軸受に取付けられてなる軸受装置において、
前記延出部は、先端部とこれを基端側で支持する支持部とを有し、
前記ジャーナル軸受と前記スラスト座金との周方向の相対移動により、前記先端部の側辺が前記ジャーナル軸受から周方向の荷重を受け、
前記支持部の側辺に、前記荷重による応力の集中を緩和する側辺凹部が形成され、
前記先端部の側辺は、接触相手の前記ジャーナル軸受の接触面の外端より内側に配置され、前記側辺凹部の内端は、前記接触面の外端より内側に配置されていることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記側辺凹部は軸方向に見て凹状曲線に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記側辺凹部と、前記支持部の基部両側に形成された基部凹部とが、軸方向に見て連続した凹状曲線に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記凹状曲線は円弧であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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