説明

軽度ないし中等度のレベルの鎮静を誘発するためのプロポフォールプロドラッグの投与の方法

患者において軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するために必要なプロポフォールプロドラッグの投与量は患者の除脂肪体重に基づいて算出される。総体重に基づく投与量は、特に肥満患者において過量投与となる可能性があることが見出されている。もう一つの局面において、少なくとも60歳の患者において軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するための適切な投与量が求められる。患者における体重に適した投与量が求められて、続いて年齢に基づく因子によって調整される。例えば、60歳以上の患者において鎮静状態またはその他の効果をもたらすために必要な投与量は、同一体重のより若い患者において対応する効果をもたらすために必要な投与量の約0.6〜0.8倍であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この出願は、参照により本明細書に組み入れられる2005年7月12日に出願された暫定の米国特許出願番号60/698,404に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
鎮静を必要とする様々な種類の医学的手技において、外来の状況はますます一般的となってきている。外来での結腸内視鏡検査では、例えば、ベンゾジアゼピンが鎮静のために広く使用される。塩酸ミダゾラムと麻薬性鎮痛薬の組み合わせは、軽度ないし中等度の鎮静および鎮痛を提供するための極めて一般的な薬剤投与計画である。胃腸病専門医は、外来状況で使用するための、外来での外科的手技および診断的手技のための患者の鎮静後の回復時間が早く「街頭適応度(ストリートフィットネス:street-fitness)」の高い代替となる処置を模索している。
【0003】
全身麻酔の導入および維持における一般的な注射可能麻酔剤、特にプロポフォールの使用は、過去15年間にわたって麻酔管理において広く受け入れられるようになってきた。プロポフォールを用いた静脈麻酔は既存の方法よりも優れた複数の利点を持つことが示されており、例えば、患者がマスク、窒息または揮発性麻酔薬の強い臭いに対して恐れを抱く必要がないので導入が一層容易に耐用される;回復が速やかかつ予測可能である;プロポフォールの静注用量を調節することによって麻酔深度の調節が容易である;吸入麻酔に比べて副作用の発生率が低い;麻酔からの回復時の不快気分、悪心および嘔吐が少ないなどがある(Padfield NL, Introduction, history and development. In: Padfield NL(編)編、Total Intravenous Anesthesia. Butterworth Heinemann, Oxford 2000)。
【0004】
鎮静および麻酔効果に加えて、プロポフォールはその他にも様々な生物学的および医学的用途を持つ。例えば、本剤は制吐剤(McCollum JSC et al., Anesthesia 43 (1988) 239)、抗てんかん剤(Chilvers CR, Laurie PS, Anesthesia 45 (1990) 995)および鎮痒剤(Borgeat et al., Anesthesiology 76 (1992) 510)であることが報告されている。制吐作用および鎮痒作用は、一般的に催眠用量未満の用量、即ち、鎮静または麻酔に必要な濃度よりも低い血漿中プロポフォール濃度に到達する用量において認められる。一方、抗てんかん活性は、より幅広い血漿中濃度で認められる(Borgeat et al., Anesthesiology 80 (1994) 642)。麻酔用量未満の用量のプロポフォールの短期静脈内投与は、難治性偏頭痛および非偏頭痛性頭痛の治療において極めて有効であることも報告されている(Krusz JC, et al., Headache, 40 (2000) 224-230)。プロポフォールは抗不安薬(Kurt et al., Pol. J. Pharmacol. 55 (2003) 973-7)、神経保護剤(Velly et al., Anesthesiology 99 (2003) 368-75)、筋弛緩剤(O'Shea et al., J. Neurosci. 24 (2004) 2322-7)としても有用であり得て、また、生物学的な系における抗酸化特性から、プロポフォールは炎症状態、特に呼吸要素を伴う炎症状態の治療、および神経変性または外傷に関連する神経損傷の治療に有用である可能性があることも考えられている。このような状態は反応性酸素種の発生に関連し、従って、抗酸化剤を用いて治療し易いと考えられている。例えば、Hendlerらに対するU.S. Patent 6,254,853を参照されたい。
【0005】
プロポフォールは、一般的に水中油系のエマルジョンとして臨床使用のために製剤化される。この製剤は有効期間が限られていて、細菌または真菌汚染の影響を受け易いことが示されており、術後感染の例がある(Bennett SN et al., N Engl J Med 333 (1995) 147)。製剤が粘稠かつ白色であるために、細菌または真菌汚染を最初にバイアルの視認によって検出することはできない。
【0006】
プロポフォールは水溶性が低いばかりでなく、注射部位に疼痛を惹起し、この疼痛はしばしば局所麻酔薬を使用することによって軽減しなければならない(Dolin SJ, Drugs and pharmacology. In: N. Padfield, 編、Total Intravenous Anesthesia. Butterworth Heinemann, Oxford 2000)。製剤は脂質エマルジョンであるために、その静脈内投与は患者、特に長期間の輸液を受けている患者において望ましくない高トリグリセリド血症も伴う(Fulton BおよびSorkin EM, Drugs 50 (1995) 636)。脂質エマルジョンとしての製剤はさらに、他の静注剤との併用投与を困難とする。脂質滴サイズの変化などの製剤の何らかの物理的変化がこの薬剤の薬理学的特性の変化を引き起こし、肺塞栓症などの副作用を惹起する可能性がある。
【0007】
さらに、麻酔導入におけるプロポフォールの使用は無呼吸の顕著な発生を伴い、これは用量、注入速度および前投薬に依存すると考えられることが報告されている(Reves, JG, Glass, PSA, Lubarsky DA, Nonbarbiturate intravenous anesthetics. In: R.D. Miller et al., 編、Anesthesia. 第5版、Churchill Livingstone, Philadelphia, 2000)。一回換気量の減少および無呼吸を含む麻酔導入量のプロポフォール投与の呼吸に関する結果は、患者の最大83%において発生する(Brysonら、Drugs 50 (1995)、520頁)。プロポフォールの導入用量は顕著な血圧降下作用を示し、この作用は用量および血漿中濃度に依存性であることも公知である(Revesら、前記)。プロポフォールの急速ボーラス注射後の最高血漿中濃度に伴う低血圧は、時に、制御注入ポンプの使用または導入ボーラス用量の複数の少量の漸増用量への分割が必要である。さらに、ボーラス導入量によって惹起される意識消失の期間が短いために、プロポフォールはごく簡単な医学的手技に適している。上記のすべての理由により、麻酔の導入および/または維持のためのプロポフォールは通常は麻酔科医の監督下で入院状態で投与されなければならず、多くの場合は麻酔科医以外が外来または日帰りの状態で使用するには不適切と考えられている。
【0008】
麻酔の導入および維持における使用に加えて、プロポフォールは意識のある患者における局所または領域麻酔を伴う鎮静剤としてうまく使用されている。本剤の鎮静特性は、結腸内視鏡検査または画像検査などの意識のある患者を不安にさせるような診断的手技においても利用されている。プロポフォールは、診断的画像検査または放射線療法を受ける小児における鎮静剤としても使用されている。最近では、プロポフォールを用いた患者調節式の鎮静が開発されている。この手法は患者に好まれ、麻酔科医により行われる鎮静と同じくらい有効である。
【0009】
鎮静の質および/または患者が十分な鎮静レベルにある時間の長さを測定した結果、プロポフォールは、広く用いられている鎮静剤であるミダゾラムまたはその他の同様の物質と比較して、同等以上の鎮静効果を示した(Fulton BおよびSorkin EM, Drugs 50 (1995) 636を参照されたい)。回復が速やかであること、およびプロポフォールに伴う健忘が同等以下であることから、本剤は、特にごく短期の鎮静を必要とする患者において、他の鎮静剤の魅力的な代替品である。しかし、現在のプロポフォール製剤には高脂血症の可能性が伴うこと、およびその鎮静効果に対して耐性が発生することから、より長期の鎮静を必要とする患者におけるプロポフォールの有用性はそれほど十分には確立されていない.
【0010】
経口による生物学的利用能が極めて低いため、市販の製剤のプロポフォールは一般に経口投与には適していないと認識されており、一般に静脈内に注射または点滴されるべきである。臨床状況においてプロポフォールは静脈内に投与される一方、一部の適用においては、ネブライザーを用いた吸入、上部消化管の上皮を介した経粘膜、または坐剤の剤形での経直腸など、他の非経口的経路を介して送達できることが示唆されている(例えば、Cozanitis, D.A., et al., Acta Anaesthesiol. Scand. 35 (1991) 575-7を参照されたい;U.S. Patent 5,496,537および5,288,597も参照されたい)。しかし、静脈内経路以外のその他の任意の経路で投与された際のプロポフォールの生物学的利用能は低く、このような治療薬の開発が妨害されている。
【0011】
Stellaらに対するU.S. Patent 6,204,257に述べられているプロポフォールの水溶性の安定プロドラッグの開発は、これらのまだ満たされていない要求を検討することを可能とし、水溶性プロポフォールプロドラッグの治療用物質としての薬学的利点を探索することを可能とする。プロドラッグはプロポフォールとは異なり、プロポフォールの1-ヒドロキシ基がホスホノオキシメチルエーテル基で置換されている。

本発明は何らかの理論によって固められるものではないが、このプロドラッグはアルカリホスファターゼによる加水分解を受けてプロポフォールを放出すると考えられている。
【0012】
Stellaの報告によると、このプロドラッグは薬学的製剤の製造に適したpHレベルにおいて優れた安定性を示し、静脈内投与されるとインビボにおいて生理学的条件下で速やかに分解する。プロドラッグは、鎮静および麻酔管理のための治療薬として、また偏頭痛、てんかん、そう痒症、不安、不眠症、悪心およびその他の医学的状態のような状態の治療にとって好ましい薬学的特性を持つ。
【発明の開示】
【0013】
発明の簡潔な概要
一つの局面において、本発明は、患者において軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するために有効な式Iの化合物の投与量を求める方法を目的とする。

ここで、それぞれのZは水素、アルカリ金属イオンおよびアミンからなる群より独自に選択される。方法は、患者の除脂肪体重を測定する工程および除脂肪体重に基づいて投与量を選択する工程を含む。短い外科的手技または直腸内視鏡検査のような診断的手技のために鎮静を必要とする対象の体重に比例した用量投与のためのプロドラッグ投与量の決定には、総体重ではなく除脂肪体重が有利なパラメータであることが見出されている。この知見は、特に過体重または肥満の対象の投与にとって治療上の重要な意味合いを持つと期待される。
【0014】
本発明のもう一つの局面において、少なくとも60歳である患者において軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するために適した式Iの化合物の投与量を求めるための方法を提供する。方法は、患者における体重に適した投与量を測定する工程、および続く体重に適した投与量を年齢に基づく因子によって調整する工程を含む。例えば、60歳またはこれよりも高齢の患者において軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するために必要な投与量は、同一体重のより若い患者において対応する効果をもたらすために必要な投与量の約0.6〜約0.8倍である可能性がある。
【0015】
発明の詳細な説明
鎮静を誘発するための活性物質は、式Iの水溶性化合物である。

または薬学的に許容されるその塩であり、それぞれのZは水素、アルカリ金属イオンおよびアミンからなる群より独立して選択される。各Zは好ましくはアルカリ金属イオンであり、特にナトリウムイオンが好ましく、従って、プロドラッグはO-ホスホノオキシメチルプロポフォール二ナトリウム塩である。
【0016】
式Iの化合物の化学的合成のための方法は、それぞれが参照により本明細書に組み入れられるStellaらに対するU.S. Patent 6,204,257およびWO 03/059255 A2に記載されている。式Iのプロポフォールプロドラッグは水溶性であり、水溶液またはその他の適切な薬学的組成物として製剤化することができる。
【0017】
式Iの化合物は、薬学的に許容される周知の担体と組み合わせることによって患者への投与のために容易に製剤化され得る。このような担体は、本発明の化合物を、治療されるべき患者による服用のためのタブレット、丸剤、カプセル、液剤、易溶性調製物、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能とする。経口使用のための薬学的調製物は、化合物を固体の賦形剤と混合し、任意で得られた混合物を粉砕し、所望ならば、タブレットを得るために適切な補助剤を加えた後に顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。特に、適切な賦形剤は、ラクトース、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物などの充填剤である。一般に、薬学的組成物は適切な固形またはゲル状の担体または賦形剤も含んでよい。このような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。所望ならば、架橋結合したポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩などの崩壊剤、または多くのその他の崩壊剤を加えてもよい(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing, Easton, PA, 第20版、2000を参照されたい)。液体製剤には、無菌水、生理食塩液、または水およびプロピレングリコール、エタノールなどの有機溶媒の混合物のような薬学的に許容される任意の水性媒質を用いてよい。製剤中の式Iの化合物の濃度は一般に約0.5〜約35%(w/v)の範囲であり、より一般的には約1〜約20%である。例えば、O-ホスホノオキシメチルプロポフォール二ナトリウム塩はi.v.投与に適切な20および35mg/mLの濃度の無菌溶液として製剤化され得る。International patent application publication WO 2003/057153は、非経口投与、特に静脈内投与に適した本発明のプロドラッグの水性製剤について開示する。
【0018】
当業者によって認識される通り、投与の適切な投与量、モードおよびスケジュールの選択には多くの要因が影響する。例えば、患者において軽度ないし中等度のレベルの鎮静を誘発するための適切な投与量は、患者がヒトもしくはもう一つの哺乳動物であるか否か、または患者が哺乳動物以外の患者であるか否かに依存し得て、患者の年齢、体重、性別、食事、健康状態、基礎的な医学的状態などに依存し得る。従って、麻酔医、獣医師、または当技術分野のその他の医療、科学もしくは健康の実践者は、本明細書に示される目安に照らして、過度の実験を行うことなく、適切な治療プロトコールを考案することができるであろう。
【0019】
図1Aおよび1Bは、初回投与後の時間の関数としての血漿中濃度を示す。血漿試料は、MDS Pharma Services, St. Laurent, Quebec, Canada H4R 2N6が分析した。プロポフォール濃度の分析には、定量限界下限(LOQ)5ng/mLのバリデートされた蛍光検出付き高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイが用いられた。O-ホスホノオキシメチルプロポフォール二ナトリウム塩濃度の分析には、LOQ 5ng/mLのバリデートされたHPLC質量分析法が用いられた。
【0020】
クエン酸フェンタニル注射剤(本明細書では時に「フェンタニル」と記載される)のような前投与物質は、好ましくは、例えば、注入開始後まもなく、肛門および生殖器領域に最も一般的に発現する灼熱感、熱感またはピリピリ感などの錯感覚を緩和するために投与される。その他のホスホノキシプロドラッグがこの鎮静感覚を発現することが公知であることから、錯感覚の原因はプロドラッグの症状であると考えられる。
【0021】
本明細書で用いられるように「除脂肪体重」という用語は除脂肪の体重を指して、総体重から体脂肪重量を差し引くことによって得られる。本発明のために、除脂肪体重はHallynckらの式(Hallynck, TH, Soep HH, et. al., Br. J. Clin. Pharmacol. 11, 1981, 523-526)に従って算出された。簡単に言うと、男性の対象の場合、除脂肪体重(LBW)は次式:LBW[kg],男性=1.10体重[kg]−128(体重[kg]/身長[cm])2に従って算出される。女性の対象の場合は次式:LBW[kg],女性=1.07体重[kg]−148(体重[kg]/身長[cm])2が適用される。
【0022】
本発明の1つの態様において、意識の鎮静された状態は式Iのプロポフォールプロドラッグの有効量の非経口投与によって患者において誘発または長時間維持される。この態様において、有効量は、患者の除脂肪体重を算出して、続いて患者の除脂肪体重に基づいて体重に比例した用量を選択することによって求められる。この態様の1つの好ましい局面において、患者は過体重または肥満である。
【0023】
本明細書で用いられる「過体重」および「肥満」は、当業者が所与の身長に対して健康と考える値よりも高い体重の範囲を示す。この用語は、さらに、一部の疾患およびその他の健康上の問題の可能性が高まることが示されている体重の範囲を示す。成人の場合、過体重および肥満の範囲は次式:BMI = 体重[kg]/身長[メートル]2に従って「ボディマス指数」を算出するために体重および身長を用いて求められる。小児および20歳までの青年の場合、BMIは年齢および性別チャートに従って求められる(例えば、Hammer LD, Kraemer HC, Wilson DM, Ritter PL, Dornbusch SM. Standardized percentile curves of body-mass index for children and adolescents. American Journal of Disease of Child. 1991; 145:259-263を参照されたい)。本明細書で用いられるように、BMI 25〜29.9の成人は過体重と判断される。BMI 30以上は肥満と判断される。大半の成人の場合、BMIは、信頼性のある測定値は与えないが、体脂肪と相関する。結果として、運動選手のような一部の個人は、たとえ過剰な体脂肪を有していなくても、過体重と識別されるBMIを示す可能性がある。太っていることとBMIの相関性は年齢および性別によって異なる。例えば、女性は、同一BMIの男性よりも高い体脂肪率を示す可能性がより高い。平均的に、高齢者は同一BMIのより若い成人よりも体脂肪が多い場合がある。
【0024】
式Iのプロドラッグの投与による患者における意識鎮静状態の誘発および維持に適した用量範囲については、先にinternational patent application publication WO 03/086413に記載されている。本発明において、過体重または肥満患者に特に適用可能な適切な用量は総体重よりもむしろこのような過体重または肥満患者の除脂肪体重に基づいて選択される。例えば、正常体重の患者の場合、意識鎮静状態は、式Iのプロドラッグの約2mg/kg〜約20mg/kg総体重の範囲、好ましくは約5mg/kg〜約15mg/kg、より好ましくは約5mg/kg〜約10mg/kg総体重の範囲の単回または反復ボーラス注射によって誘発または維持することができる。過体重または肥満患者の場合、適切な用量は約3mg/kg〜約30mg/kg除脂肪体重の範囲であり、好ましくは約7.5mg/kg〜約23mg/kg、より好ましくは約7.5mg/kg〜約15mg/kg除脂肪体重の範囲である。
【0025】
プロポフォールは、高齢者においてクリアランスおよび初期分布容積が小さいことが公知である。高齢者は任意の所与の効果のためにより低い用量を必要として、多くの場合、予想される(例えば、体重に基づく)用量の50%程度である。現在、65歳以上の患者はその本来の形で投与された場合、プロポフォールに対して感受性ではないが、式Iのプロドラッグの静脈内投与より派生するプロポフォールに対してはより感受性である傾向があることが発見されている。従って、高齢者における式Iのプロドラッグの厳密に体重に基づく投与量は、必要とされ得るまたは所望され得るよりも高い鎮静を引き起こす可能性がある。
【0026】
図5は、確率論(実践)および連続性(破線)モデルにおける効果-コンパートメント濃度に対する予測修正OAA/Sスコアを示す。これらのモデルは、>65歳の患者が<65歳の患者よりも低い効果-コンパートメント濃度において所与の修正OAA/Sスコアを達成することを予測した。図6は、予測および観測MOAA/Sスコアの相関性を示す。結果は、確率論および連続モデルの双方においてほぼ等しかった。
【0027】
少なくとも60歳の患者に軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するための式Iの化合物の投与量は、先ず患者における体重に適切な投与量を求める工程、およびその後の体重に適した投与量を年齢に基づく因子によって調整する工程によって算出することができる。一般的には、60歳から85歳の患者において鎮静された状態またはその他の効果をもたらすために必要な投与量は、より若い患者において対応する効果をもたらすために必要な投与量の約0.6〜0.8倍である。本発明の好ましい態様において、患者は少なくとも65歳である。例えば、65歳を超える患者は同一体重のより若いヒトよりも25%少ない投与量を必要とする可能性があり、即ち、投与量は体重に基づく投与量に0.75の因子を掛けることによって調整される。
【0028】
実施例
後期的結腸内視鏡検査を受ける患者に、鎮静のため、O-ホスホノオキシメチルプロポフォール二ナトリウム塩の35mg/mL無菌水溶液を静脈内投与した。患者は、プロドラッグの投与前に少なくとも12時間、カフェイン飲料および食物またはアルコールの摂取を控えた。オピオイドは72時間前に中止して、ベンズジアゼピンおよびバルビツール酸塩は開始前14日以内に中止した。但し、フェノバルビタールは21日前に中止した。各腕に1本の静脈内カテーテルを挿入して、1本のカテーテルは薬剤投与専用として、他方は採血用とした。
【0029】
溶液は、使用の準備ができるまで安全な冷蔵庫(2゜〜8℃)に入れて保存した。溶液を室温として(約1時間)、投与前に最長24時間にわたって室温にて維持した。フェンタニルは錯感覚を緩和するために前投与として使用した。2mLおよび5mL DOSETTE(登録商標)アンプル入りの1mL当たり50μg(0.05mg)フェンタニルベースに相当するフェンタニル(市販品)を1.5μg/kgの初回i.v.ボーラス投与として投与した。
【0030】
患者の一部を無作為化して、その他はより多くの投与情報が有効となったのでコホートとした。目的は、様々なフェンタニルおよびプロポフォールプロドラッグの用量に対する用量反応性を調べるために、10mg/kgおよび12.5mg/kgプロポフォールプロドラッグの各用量に<60歳の患者10名を組み入れることであった。同様に、>60歳の患者における目的は、7.5mg/kgおよび10mg/kgプロポフォールプロドラッグの用量およびフェンタニルの様々な前投与用量について探索することであった。
【0031】
修正観察者覚醒/鎮静評価(MOAA/S)スケールを鎮静レベルの臨床的判定に使用した。この評価は、表1に詳記する通り、反応性のカテゴリーにおける0(疼痛刺激に対して反応なし)から5(覚醒)までのグレード化スコアとする。修正OAA/Sスコアの評価はフェンタニル前投与の直前に行って、結腸内視鏡検査手技が開始されるまで1分毎に記録し、続いて手技中は2分毎に、その後は患者が完全に覚醒するまで1または3分毎に記録した。
【0032】
(表1)修正OAA/Sスケールの反応性スコア

【0033】
結腸内視鏡検査の開始前に所定の用量において十分な鎮静レベルに達するため、および手技を通して十分な鎮静レベルを維持するためにプロポフォールプロドラッグの4回までの追加投与(それぞれ、1.5〜5.0mg/kg)が許可された。(例えば、十分な鎮静の存在下において心拍数および血圧の増大により示されるような)痛覚消失が不十分である場合は、必要に応じてフェンタニルの追加用量を投与することが可能であった。酸素飽和度(パルスオキシメトリによって測定されるSpO2)が90%を下回った場合、または医療介入が必要となった場合は、追加の酸素のみが投与された。追加酸素(経鼻的に2L/分)は、投与の直前に開始して患者が完全に回復と見なされるまで、すべての患者に対して投与された。
【0034】
実施例1A
この実施例では、93名の患者に対して、以下の表2にまとめる通り、フェンタニルおよびプロポフォールプロドラッグボーラス用量を投与した。
【0035】
(表2)プロポフォールプロドラッグボーラス投与群

* 1名の患者は、1.5μg/kgフェンタニル+8.5μg/kgプロポフォールプロドラッグボーラス用量を投与された。
【0036】
表3では、実施例1Aにおける患者の人口統計学データを投与群(mg/kg)へのオリジナルの割付別にまとめる。
【0037】
(表3)投与群別の人口統計学およびその他のベースラインの特徴(実施例1A)

N=人数;SD=標準偏差
【0038】
一般に、人口統計学およびベースラインの特徴は、年齢を除いて、3投与群を通してほぼ等しかった。7.5mg/kgボーラス投与群の患者は、10.0および12.5mg/kg投与群(それぞれ、51.0および51.5歳)に比して高齢であった(年齢中央値 59歳)。
【0039】
一般に、結果は、表4にまとめる通り、初回ボーラス用量(mg)の四分位数別に総括される人口統計学的データに関してほぼ等しかった。
【0040】
(表4)mgを単位とする初回ボーラス用量の四分位数別の人口統計学およびその他のベースラインの特徴(実施例1A)

N=人数;SD=標準偏差
【0041】
全体として、患者の51.6%が女性であり、患者の74.2%が白人であった。最低四分位数(<620mg)の患者は、その他の三つの四分位数の患者よりも高齢であった。患者の体重およびボディマス指数(BMI)の中央値は、四分位数の定義より予想される通り、初回ボーラス用量の四分位数の増加に伴って増大した。93名の投与患者の内、2名の患者が代替の(救済)薬の投与を受けて、治療不成功と判断された。
【0042】
実施例1B
この実施例では、初回投与スキームを2体重群に分割して、それぞれにフェンタニルおよびプロポフォールプロドラッグの固定用量を投与した。最初の患者の一部は体重 75〜80kgであり、980mg(28mL)を投与した。初回段階の期間中、これらの対象は、予想または所望よりも深く鎮静されて(MOAA/S <2)、軽度の低酸素血症(酸素飽和度 <90%)を発現した。その結果、高体重範囲の下限が>75kgから>80kgに変更された。表5は、調整した体重に基づく固定用量投与計画のまとめである。
【0043】
(表5)体重に基づく固定用量投与計画

【0044】
実施例1Bの患者の人口統計学的データは、表6に初回用量群(mg)別にまとめる。
【0045】
(表6)初回用量別の人口統計学およびその他のベースラインの特徴(実施例1B)

N=人数;SD=標準偏差
【0046】
630/700mg投与群の患者の年齢中央値(median age)は、805、910および980mg投与群の患者(範囲 47.0〜55.5歳)に比して高い値であった(71.0歳)。全体として、患者の59.4%が女性であり、患者の84.4%が白人であった。630/700mgおよび805mg投与群の患者は、高い用量群(910および980mg)に比して、男性よりも女性が多く、体重およびBMIの中央値は低い値であった。64名の投与患者の内、2名の患者が代替の(救済)薬の投与を受けて、治療不成功と判断された。
【0047】
結果
実施例1Aおよび1Bの双方において収集された薬効データを記述統計量を用いてまとめた。修正OAA/Sの結果は各時点での平均、中央値および頻度分布としてまとめて、各用量毎にグループ分けした。各患者について、中間点アプローチを用いて、修正OAA/Sスコアが≧2および≦4である区間を算出した。個々の修正OAA/Sスコアのデータを分(±30秒)間隔でまとめて、次の3区間について図に表した:手技前は1分間隔で表示する;手技中は2分間隔で示す;さらに回復期は3分間隔で示す。指定されたタイムウィンドウの観察が欠失している場合は、最終観測繰越法(last observation carried forward (LOCF))を用いた。
【0048】
結腸内視鏡検査手技中の修正OAA/Sスコアが≧2および≦4である時期のパーセントは、各患者について修正OAA/Sスコアが≧2および≦4であるすべての区間の合計を手技の期間で割って100%を掛けて算出し、用量群毎にまとめた。
【0049】
表7および8は、実施例1Aにおいて、鎮静に達するために初回ボーラス投与以降必要とされる、分を単位とする時間を、それぞれ、初回ボーラス用量(mg)の四分位数別および総用量(mg)別にまとめる。
【0050】
(表7)mgを単位とする初回ボーラス用量の四分位数別の、鎮静に達するためのプロポフォールプロドラッグ用量からの時間(分)(実施例1A)

SD=標準偏差
* 初回プロポフォールプロドラッグ投与から初回修正OAA/Sスコア ≦4までの時間(分)。
† 負の数値は、フェンタニルの後、プロポフォールプロドラッグの前に鎮静に達した患者を表す。
【0051】
(表8)mgを単位とする総用量の四分位数別の、鎮静に達するためのプロポフォールプロドラッグ投与からの時間(分)(実施例1A)

SD=標準偏差
* 初回プロポフォールプロドラッグ投与から初回修正OAA/Sスコア ≦4までの時間(分)。
† 負の数値は、フェンタニルの後、プロポフォールプロドラッグの前に鎮静に達した患者を表す。
【0052】
実施例1Aの全患者において、鎮静に達する(初回修正OAA/Sスコア ≦4)ための初回ボーラス投与以降の時間中央値は2.0分であった。鎮静に達する時間中央値は初回ボーラス用量の増加に伴って減少したが、データを総用量として解析した場合、用量-反応性は認められなかった。
【0053】
フェンタニルはプロトコールに従って初回ボーラス用量の投与約5分前に投与されたので、フェンタニル投与から鎮静に到達するまたは結腸内視鏡検査の開始までの時間はプロポフォールプロドラッグの初回ボーラス用量から算出された時間よりも約5分長かった。
【0054】
表9は、実施例1Bにおける鎮静に達するためのプロポフォールプロドラッグ投与からの時間および結腸内視鏡検査手技開始までの時間をまとめる。
【0055】
(表9)初回ボーラス用量別の、鎮静に達するおよび手技開始までのプロポフォールプロドラッグ投与からの時間(実施例1B)

SD=標準偏差
* 初回プロポフォールプロドラッグ投与から初回修正OAA/Sスコア ≦4までの時間(分)。
† 負の数値は、フェンタニルの後、プロポフォールプロドラッグの前に鎮静に達した患者を表す。
‡ 初回プロポフォールプロドラッグ投与から結腸内視鏡検査手技開始までの時間(分)
【0056】
全患者において、鎮静に達する(初回修正OAA/Sスコア ≦4として定義される)ための初回ボーラス投与以降の時間中央値は2.0分であった。大半の患者が2〜3分以内に鎮静に達した。初回ボーラス投与から手技開始までの時間中央値は3.0分であった。手技開始までの時間に、用量関連性の傾向は認められなかった。
【0057】
表10Aは、手技終了時の結腸内視鏡の回収から患者が完全な覚醒、完全な回復、および退院の準備に関する基準を満たすまでの時間(分)のまとめであり、試験の用量範囲の部分は初回ボーラス用量(mg)の四分位数別とした。
【0058】
(表10A)mgを単位とする初回ボーラス用量の四分位数別の、完全な覚醒、完全な回復、および退院の準備までの時間(分)(実施例1A)

N=患者数、SD=標準偏差
‡ 3名の患者についてはデータが収集されなかった。
【0059】
全体として、結腸内視鏡の回収から患者が完全な覚醒、完全な回復および退院の準備に関する基準を満たすまでの時間中央値は、それぞれ、11.0、20.0および37.0分であった。退院の準備までの時間中央値は初回ボーラス用量の増加に伴って増大した;しかし、完全な覚醒および完全な回復までの時間中央値は初回ボーラス用量の第2四分位数(620mg〜<777mg)において最も低い値であった(それぞれ、8.0および17.0分)。
【0060】
表10AAは、手技終了時の結腸内視鏡の回収から患者が完全な覚醒、完全な回復、および退院の準備に関する基準を満たすまでの時間(分)をパート1Aにおける患者の総用量(mg)の四分位数別にまとめる。
【0061】
(表10AA)mgを単位とする総用量の四分位数別の、完全な覚醒、完全な回復、および退院の準備までの時間(分)(実施例1A)

N=患者数;SD=標準偏差
【0062】
完全な覚醒までの時間中央値は最低四分位数(<762mgの総投与量)において最も低い値(8.0分)であり、用量の増加に伴って増大したが、完全な回復および退院の準備までの時間中央値は第2四分位数(762mg〜<891mg)において最も低い値(それぞれ、18および32分)であった。
【0063】
図2は、実施例1Aにおける初回ボーラス用量別の各手技期間における時間を通しての平均修正OAA/Sを示す。図は3つの分析に分割される:初回ボーラス用量の四分位数別の修正OAA/Sスコア;手技前の累積用量の四分位数別の修正OAA/Sスコア;および回復期間中の累積総投与量の四分位数別の修正OAA/Sスコア。
【0064】
初回用量について、軽度ないし中等度の鎮静は四分位数別の初回ボーラス用量が増加すればするほど、早期に達した。軽度ないし中等度の鎮静レベルの誘発は、620mg〜955mgプロポフォールプロドラッグの投与後2分以内に達成された。最も高い用量四分位数(955mg以上)のみが<2の平均修正OAA/Sに達して、それは4〜5分の間であった。
【0065】
同様に、累積用量を手技期間中のオリジナルの用量四分位数別に分析した結果、用量四分位数が高ければ高いほどより深い鎮静スコアがより長く持続することが実証された。手技期間中の軽度ないし中等度の鎮静レベル(修正OAA/S ≧2および≦4)の維持は、620mg〜955mgの投与後に達成された。累積用量が>777mgの場合、平均修正OAA/Sスコアは手技中に2を下回る値に減少した。重要な点であるが、≧2および≦4の平均修正OAA/Sスコアは、結腸内視鏡検査中、620mgから955mgの累積用量で維持された。
【0066】
軽度ないし中等度の鎮静から修正OAA/S 5までの回復は、620mgから955mgの累積用量では手技終了後9〜12分以内に発現した。平均修正OAA/Sスコアは、総用量が減少すると、より速やかに5に回復した。
【0067】
表10Bは、手技終了時の結腸内視鏡の回収から患者が完全な覚醒、完全な回復、および退院の準備に関する基準を満たすまでの時間を、実施例1Bにおける初回ボーラス用量別にまとめる。
【0068】
(表10B)初回ボーラス用量別の、完全な覚醒、完全な回復、および退院の準備までの時間(実施例1B)

SD=標準偏差
【0069】
全体として、結腸内視鏡の回収から患者が完全な覚醒、完全な回復および退院の準備に関する基準を満たすまでの時間中央値は、それぞれ、12.0、20.0および35.5分であった。結果は、完全な覚醒(範囲 12.0〜12.5分)、完全な回復(範囲 18.0〜20.0分)および退院の準備(範囲 35.0〜37.0分)までの時間中央値に関して、630/700mg、805mgおよび980mg投与群においてほぼ等しかった。910mg投与群は、他の3用量群よりも完全な覚醒(11.0分)および退院の準備(33.0分)までの時間中央値は短かったが、完全な回復までの時間(21.0分)は長かった。
【0070】
図3は、実施例1Bにおけるプロポフォールプロドラッグの初回ボーラス用量別の各手技期間における時間を通しての平均修正OAA/Sを示す。手技の開始後、平均修正OAA/Sスコアは980の初回ボーラス用量では4分以内に、また805mgの初回ボーラス用量では6分以内に2を下回る値に低下して、両用量とも手技の大半の時期を通して<2を維持した。
【0071】
630/700mgまたは910mgの初回ボーラス用量では、結腸内視鏡検査の大部分の期間中、≧2および≦4の平均修正OAA/Sスコアが維持された。805mgおよび980mg群の平均修正OAA/Sスコアは2を下回る範囲であった。結腸内視鏡検査終了時の平均修正OAA/Sスコアは、805mg初回ボーラス用量でより早い時期に5(覚醒)に回復した。
【0072】
図4Aは、手技開始までの累積用量によって四分位した、実施例1Aにおいて患者が結腸内視鏡検査期間中に各OAA/S鎮静レベルにあった時間のパーセントを示す。患者が修正OAA/Sスコアの2、3または4の鎮静レベル内を維持した時間のパーセントは手技開始までに<620mgを投与された患者において最も高い値(83.6%)であり、初回ボーラス用量の増加に伴って減少した(範囲 78.9%〜52.2%)。深い鎮静とより優れた一致を示すMOAA/Sレベルにおける手技時間のパーセントは、ボーラス用量の増加に伴って増大した(範囲 16.2%から43.2%)。
【0073】
図4Bは、初回ボーラス用量別の、結腸内視鏡検査期間中に患者が各修正OAA/Sスコアにあった時間のパーセントを示す。患者が手技の開始から手技の終了まで2、3または4の修正OAA/Sスコアの範囲内を維持した時間のパーセントは、805、910および980mgの初回ボーラス用量(範囲 61.9%〜67.3%)に比して、630/700mg用量群の患者で最も高い値であった(87.5%)。1または0の修正OAA/Sスコアでの経過時間パーセントは、630/700mgおよび910mg(それぞれ、12.5%および22.3%)に比して、805および980mgの初回ボーラス用量で最も高い値であった(それぞれ、31.0%および31.5%)。
【0074】
表11Aは、実施例1Aにおける結腸内視鏡検査手技の開始を可能とするために必要な初回ボーラス用量(mg)の四分位数別の投与回数をまとめる。
【0075】
(表11A)mgを単位とする初回ボーラス用量四分位数別の、手技の開始を可能とするために必要な投与回数(実施例1A)

【0076】
73名(80.2%)の患者において、初回ボーラス用量は手技を開始するために十分であった。手技の開始を可能とするために追加投与が必要であった患者の数は、初回ボーラス用量の増加に伴って減少した:<620mg、620〜<777mg、777〜<955および≧955の投与群において、それぞれ、12名(54.5%)、3名(13.0%)、2名(8.7%)および1名(4.3%)であった。
【0077】
表11Bは、実施例1Bにおける結腸内視鏡検査手技の開始を可能とするために必要な投与回数を初回ボーラス用量(mg)別にまとめる。
【0078】
(表11B)手技開始を可能とするために必要な投与回数(実施例1B)

【0079】
56名(90.3%)の患者において、初回ボーラス用量は手技を開始するために十分であった。805mg群の2名(12.5%)および910mg群の4名(23.5%)が手技を開始するために1回の追加投与を必要とした。
【0080】
表12Aは、実施例1Aにおける結腸内視鏡検査手技を通して鎮静を維持するために必要な初回ボーラス用量(mg)の四分位数別の投与回数をまとめる。
【0081】
(表12A)mgを単位とする初回ボーラス用量の四分位数別の、手技を通して鎮静を維持するために必要な追加投与の回数(実施例1A)

SD=標準偏差
【0082】
大半の患者は追加投与を必要とせず、8名(8.8%)のみが1回よりも多い追加投与を必要とした。鎮静を維持するために追加投与を必要とする患者の頻度は初回ボーラス用量の増加に伴って減少した:<620mg、620〜<777mg、777〜<955および≧955において、それぞれ、15名(68.2%)、12名(52.2%)、7名(30.4%)および2名(8.7%)であった。
【0083】
表12Bは、実施例1Bにおける結腸内視鏡検査手技を通して鎮静を維持するために必要な初回ボーラス用量(mg)別の投与回数をまとめる。
【0084】
(表12B)初回ボーラス用量別の、手技を通して鎮静を維持するために必要な追加投与の回数(実施例1B)

【0085】
大半の患者が追加投与を必要としなかった。23名(37.1%)の患者は鎮静を維持するために少なくとも1回の追加投与を必要とした。15名(24.2%)が1回の追加投与を必要とした;7名(11.3%)が2回の追加投与を必要とした;さらに910mg群の1名(1.6%)が3回の追加投与を必要とした。追加投与の要求に、用量関連性の傾向を認めることはできなかった。
【0086】
表13Aは、実施例1Aにおいて手技全体の期間中に必要とされた初回ボーラス用量(mg)の四分位数別の総投与回数(初回および追加)をまとめる。
【0087】
(表13A)mgを単位とする初回ボーラス用量四分位数別の総投与回数(実施例1A)

* 初回および追加投与。
【0088】
鎮静を開始および維持するために1回の投与のみを必要とした患者のパーセントは初回ボーラス用量の増加に伴って増加した:それぞれ、4名(18.2%)、10名(43.5%)、15名(65.2%)、および20名(87.0%)。
【0089】
表13Bは、実施例1Bにおいて手技全体の期間中に必要とされた初回ボーラス用量(mg)別の総投与回数(初回および追加)をまとめる。
【0090】
(表13B)mgを単位とする初回ボーラス用量別の総投与回数(実施例1B)

SD=標準偏差
* 初回および追加投与。
【0091】
全体として、62名中52名(83.9%)の患者が手技を完結するための鎮静を開始および維持するために≦2回の投与を必要とした。
【0092】
手技中および手技後の複数の時点で実施例1AおよびBの患者から採取した静脈血試料を、プロポフォールプロドラッグおよびプロポフォールプロドラッグから派生したプロポフォールの濃度について分析して、得られた値(図1を参照)を静脈血試料中の両化合物の濃度を予測するための集団ファーマコキネティクスモデル、ならびに鎮静レベル(MOAA/Sスコア)に関するファーマコキネティクス/薬力学モデルを開発するためにデータプールに統合した。これらのモデルの開発において、次のパラメータが共変量として含められた:性別、身長、体重、年齢、人種、体表面積、除脂肪体重、ボディマス指数、臨床検査値(アルブミン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、ビリルビン、血清クレアチニン、アルカリホスファターゼ、アラニントランスアミナーゼ)、フェンタニル(初回および総用量、体重について正規化した初回および総用量、投与後6および14分における血漿中フェンタニル濃度)、およびプロポフォールプロドラッグ。
【0093】
静脈血試料中のプロポフォールおよびプロドラッグの濃度を予測するため、市販のソフトウェア(NONMEM, Version V, Level 1.1, Globomax L.L.C., East Hanover, MD)を用いて線形5コンパートメントモデルを適用した。500回の予測的チェックシミュレーションにより、予測値と観察データの良好な一致が得られて、プロポフォールおよびプロドラッグ濃度が若干過小評価され、プロドラッグの可変性が若干過大評価されたのみであった。このファーマコキネティクスモデルの結果は、予測血漿中濃度に対する除脂肪体重(LBW)の影響を示した。具体的には、プロドラッグ、プロドラッグから生じるプロポフォール、およびプロドラッグのクリアランスの中心容積は、それぞれ、55kgを超えるLBW 1kg当たり1.8%、2.5%および1.4%増大した。性別および体重は強い相関関係を示したが、独立した性の影響はなかった。さらに、モデルからはフェンタニル総用量または年齢の顕著な影響も得られなかった。
【0094】
線形ファーマコキネティクスモデルは実施例1AおよびBから得られる観察データを適切に説明すると結論付けることができる。除脂肪体重は、プロポフォールプロドラッグの投与から生じるプロポフォール濃度の最も優れた予測子であった。この知見は、軽度ないし中等度の意識鎮静のための過体重の個人の投与に関して重要な意味合いを持つ。具体的には、プロドラッグが厳密に体重に比例して投与されると、肥満患者はそれらの具体的な医療上の要求のために必要とされるまたは所望され得るよりも、高めの血漿中プロポフォール濃度および深めの鎮静レベルに達すると予測される。
【0095】
プロドラッグの静脈内投与後に到達する鎮静レベル(MOAA/Sスコア)の予測のため、市販のソフトウェア(NONMEM, Version V, Level 1.1, Globomax L.L.C., East Hanover, MD)を用いて2つのモデルが適用された。最初は、確率論(比例オッズ)モデルにより一定のレベル(0、1、…5)に達するためのMOAA/Sスコアの確率に関するロジット関数が効果コンパートメントにおける(プロドラッグから生じる)プロポフォールの濃度の線形関数であるかどうかを検定した。次に、連続集団モデルにより、予測されたMOAA/Sスコアがプロドラッグから生じるプロポフォールの効果部位濃度のHill関数であるかどうかを検定した。
【0096】
確率論および連続モデルは、観察データおよび共変量効果を適切に説明して、結果は概ね同等であることが明らかとなった。実施例1AおよびBで用いられた用量では、フェンタニルの鎮静に対する影響は小さく、モデルはフェンタニルの効果をプロドラッグから生じるプロポフォールの効果と区別することはできなかった。モデルより、性の影響は検出されなかった。重要な点として、両モデルとも、65歳を超える対象はこれよりも若い対象に比してプロドラッグの静脈内投与後に形成されるプロポフォールに対してより感受性であることを予測した。具体的には、モデルは、65歳よりも高齢の対象の場合、所与のMOAA/Sスコアは若い対象よりも約33%(確率論モデル)ないし約25%(連続モデル)低い効果部位濃度において達成されると予測されることを見出した。十分な安全域を考慮に入れると、短い外科的手技および診断的手技の期間中に十分な意識鎮静が望まれる60歳を超える患者の場合は約20%〜約40%の用量の減量が正当化される。
【0097】
本発明の特定の態様について説明および例示が行われているが、当業者によって変更を加えることが可能であり、本発明をそれらに限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の出願は、本明細書に開示される基本的発明の精神および範囲内にあるあらゆるすべての変更を意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1Aおよび1Bは、O-ホスホノオキシメチルプロポフォール二ナトリウム塩(図1A)およびプロポフォール(図1B)の初回投与後の時間の関数としての血漿中濃度を示す。
【図2】図2は、実施例1Aにおける初回ボーラス用量別の、各手技期間における時間を通しての平均修正OAA/Sを示す。
【図3】図3は、実施例1Bにおける初回ボーラス用量別の、各手技期間における時間を通しての平均修正OAA/Sを示すグラフである。
【図4】図4Aおよび4Bは、それぞれ、実施例1Aおよび1Bの初回ボーラス用量別の、結腸内視鏡検査中に患者が各修正OAA/Sスコアであった時間のパーセントを示す。
【図5】図5は、確率論モデル(実線)および連続モデル(破線)における予測修正OAA/Sスコア対効果-コンパートメント濃度を示す。
【図6】図6は、予測および観察MOAA/Sスコアの相関関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するために有効な式Iの化合物の用量を求めるための方法であって、

それぞれのZは水素、アルカリ金属イオンおよびアミンからなる群より独立して選択されて、患者の除脂肪体重を測定する工程および除脂肪体重に基づいて用量を算出する工程を含む方法。
【請求項2】
用量が患者において≧2および≦4の修正観察者覚醒/鎮静評価(MOAA/S)スコアをもたらすために有効である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患者が過体重または肥満である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
用量が1回またはそれよりも多い非経口的ボーラス注射による投与後に軽度ないし中等度の鎮静を誘発するために有効である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
軽度ないし中等度の鎮静を誘発するための用量が約3mg/kg除脂肪体重から約30mg/kg除脂肪体重の範囲である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
用量が約3mg/kg除脂肪体重から23mg/kg除脂肪体重よりも低い範囲である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
用量が約7.5mg/kg除脂肪体重から約15mg/kg除脂肪体重までの範囲である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
過体重または肥満患者において軽度ないし中等度の鎮静を誘発するための方法であって、請求項1記載の式Iの化合物を請求項1〜7のいずれか一項に従って求められる用量で該患者に投与する工程を含む方法。
【請求項9】
てんかん状態の治療、悪心または嘔吐の治療、そう痒症の治療、偏頭痛の治療、筋弛緩の誘発、意識消失の誘発、および意識鎮静状態の誘発からなる群より選択される薬学的効果を必要とする過体重または肥満患者において薬学的効果を誘発するための方法であって、患者の除脂肪体重を測定する工程、および該患者に請求項1記載の式Iの化合物の薬学的に有効な非経口用量を該患者の除脂肪体重に比例した量で投与する工程を含む方法。
【請求項10】
少なくとも60歳の患者において軽度ないし中等度の鎮静レベルを誘発するために適切な式Iの化合物の用量を求めるための方法であって、

それぞれのZは水素、アルカリ金属イオンおよびアミンからなる群より独立して選択されて、患者の体重に適した用量を求める工程、およびその後の体重に適した用量を年齢に基づく因子によって調整する工程を含む方法。
【請求項11】
用量が体重に適した用量に約0.6から約0.8までの年齢に基づく因子を掛けることによって求められる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
患者が少なくとも65歳である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
年齢に基づく因子が約0.75である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
用量が患者において≧2および≦4の修正観察者覚醒/鎮静評価(MOAA/S)スコアをもたらすために有効である、請求項10記載の方法。
【請求項15】
用量が1回またはそれよりも多い非経口ボーラス注射による投与後に軽度ないし中等度の鎮静を誘発するために有効である、請求項11記載の方法。
【請求項16】
少なくとも60歳の患者において軽度ないし中等度の鎮静を誘発するための方法であって、請求項10記載の式Iの化合物を請求項10〜15のいずれか一項に従って求められる用量で該患者に投与する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−501226(P2009−501226A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521513(P2008−521513)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/026840
【国際公開番号】WO2007/008869
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(508004177)エムジーアイ ジーピー インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】