説明

軽量気泡コンクリートの製造方法

【課題】湿式粉砕後に得られるサンドスラリーの沈降凝集・硬化を抑制し、成形性、物理的強度の発現性に優れた軽量気泡コンクリートを提供する。
【解決手段】本発明において、軽量気泡コンクリートは、珪酸質原料と石灰質原料とを主原料とする原料スラリーを成型用型枠に打設した後に、オートクレーブ養生することにより製造される。本発明においては、珪酸質原料として、SiO含有量が90質量%以上97質量%未満の珪酸質原料を用い、かつ、珪酸質原料を湿式粉砕してから原料スラリーを作製することで、湿式粉砕後に得られるサンドスラリーの沈降凝集・硬化を抑制し、成形性、物理的強度の発現性に優れた軽量気泡コンクリートを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪酸質原料と石灰質原料とを主原料とする原料スラリーを成型用型枠に打設した後に、オートクレーブ養生することにより製造される軽量気泡コンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」ともいう)は、その軽量性、耐火性、断熱性、施工性等の利点により、従来から建築材料として外壁、間仕切り、床、屋根などに幅広く用いられている。
ALCは、珪石・珪砂などの珪酸質原料と、生石灰、セメントなどの石灰質原料と、水とを混合させたものに、アルミニウム粉末を添加して原料スラリーとし、この原料スラリーを成型用型枠に打設した後に、発泡凝固して得られた半可塑性硬化体・ケークをオートクレーブ養生することにより製造することができる。
【0003】
上述のALCの製造方法においては、珪酸質原料と石灰質原料と水との反応により、珪酸カルシウム水和物・トバモライトが生成されることで、物理的強度の高い軽量気泡コンクリートが得られる。
【0004】
ALCの製造方法において、珪酸カルシウム水和物・トバモライトが早期に生成されると、より物理的強度の高い軽量気泡コンクリートを得ることができるため、珪石・珪砂などの珪酸質原料はブレーン値が1,500〜3,500cm/gとなるように粉砕され、生石灰・セメントなどの石灰質原料もブレーン値が3,000〜5,000cm/gとなるように粉砕されたものが用いられる。
【0005】
一般に、珪石・珪砂などの珪酸質原料の粉砕には、ボールミルが使用される。しかし、珪酸質原料は、2〜10質量%の付着水を含んでいるため、粉砕により、粒度が小さくなると、ボールミルの粉砕媒体であるボールに付着したり、ボール表面をコーティングし、これにより、それ以上の微粉砕が出来なくなるばかりか、ミル内で詰まる現象(腹詰まり)を引き起こす。
【0006】
そこで、珪酸質原料を、ロータリードライヤーで乾燥させた後に、ボールミル粉砕して、パウダー状のままでタンクに貯蔵する方法(乾式粉砕方式)や、珪酸質原料をボールミルに投入する際に、珪酸質原料に対して30〜50質量%の多量の水を注入して、粉砕媒体のボールへの付着防止と流動性を高めてボールミル粉砕し、得られた珪酸質原料スラリー(「サンドスラリー」ともいう)をスラリーポンプで輸送し、沈殿防止の攪拌機を付加したタンクに貯蔵する方法(湿式粉砕方式)が採られる。
【0007】
上記の粉砕方式のうち、乾式粉砕方式には、ドライヤー使用による乾燥コストがかかったり、乾式粉砕の際にスチールボールに破砕物がコーティングすることで粉砕効率が低下したり、ミル高温によりメタルが摩耗したり、ALC製造の際に、混練水や反応水として、結果として多量の水を必要とするという問題がある。したがって、珪酸質原料の粉砕方式としては、一般的に、湿式粉砕方式が選定される。
【0008】
珪酸質原料を湿式粉砕方式により粉砕した場合には、湿式粉砕後に得られるサンドスラリーを静置することで、珪酸質原料が沈降を起こして、水と分離し、底部に凝集する現象、すなわち沈降凝集が少なからず起きる。このようにして生じた沈降物は、サンドスラリーの静置時間が長くなると硬くなり、容易に攪拌混合できなくなるため、輸送配管の閉塞、貯蔵タンクでの沈降物の堆積等の問題が発生し得る。
【0009】
この問題を回避するため、ボールミル停止時には、輸送配管内を水洗するとともに、貯蔵タンクを常時攪拌することで、輸送配管の閉塞、貯蔵タンクでの沈降物の堆積等を抑制している。また、ALC製造の際に使用するミキサー稼動時には、サンドスラリーが輸送される貯蔵タンクとミキサーとの間の輸送配管に、戻り配管を設けて、常時回流し、使用後は輸送配管を水洗することで、輸送配管の閉塞、貯蔵タンクでの沈降物の堆積等を抑制している。
【0010】
さらに、珪酸質原料についても検討がされている。ALCの製造に用いる珪酸質原料としては、例えば、SiOとAlとを所定量含有する珪石(特許文献1を参照)、明ばん石と粘土鉱物とを所定量含有する珪石(特許文献2を参照)および鋳物砂を混入した珪砂(特許文献3を参照)などが知られている。
【特許文献1】特開2007−63091公報
【特許文献2】特開2004−244279公報
【特許文献3】特開平6−321651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記特許文献1〜3に記載の珪石や珪砂をはじめとする公知の珪石・珪砂の中には、珪酸質原料としての成形性、トバモライトの生成による物理的強度の発現性等に優れていても、湿式粉砕後のサンドスラリーの沈降凝集が早い上に、沈降物の硬度が著しく高いため、湿式粉砕方式には不適と判断されるものもあった。
【0012】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、湿式粉砕後に得られるサンドスラリーの沈降凝集・硬化を抑制し、成形性、物理的強度の発現性に優れた軽量気泡コンクリートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、珪酸質原料として、SiO含有量が90質量%以上97質量%未満の珪酸質原料を用い、この珪酸質原料を湿式粉砕することにより得られる珪酸質原料スラリー(サンドスラリー)を輸送および貯蔵しながら用いると、使用上問題となるような沈降凝集・硬化が少なく、高い物理的強度の軽量気泡コンクリートを得ることができるという知見を得た。
【0014】
さらに、SiO含有量が90質量%以上97質量%未満の珪酸質原料を単独で用いた場合だけではなく、混合後のSiO含有量が90質量%以上97質量%未満となるような二種類以上の珪酸質原料を用いた場合であっても上記課題を解決できるという知見を得た。
【0015】
すなわち本発明は、珪酸質原料と石灰質原料とを主原料とする原料スラリーを成型用型枠に打設した後に、オートクレーブ養生することにより製造される軽量気泡コンクリートの製造方法であって、前記珪酸質原料中のSiO含有量は90質量%以上97質量%未満であり、かつ、前記珪酸質原料を湿式粉砕してから前記原料スラリーを作製することを特徴とする軽量気泡コンクリートの製造方法である。
【0016】
本発明によれば、SiO含有量が90質量%以上97質量%未満の珪酸質原料を湿式粉砕してサンドスラリーとしてから原料スラリーを作製するから、沈降凝集・硬化が少なく、高い物理的強度の軽量気泡コンクリートを得ることができる。
【0017】
さらに、珪酸質原料である天然の珪石・珪砂を供給する国内の鉱山は、年々少なくなり、単独鉱山のみからの供給が確保しにくい状況となっているが、珪酸質原料は単独でも二種以上を混合した場合であっても、SiO含有量が90質量%以上97質量%未満であれば上記効果を発揮できるから、異なる鉱山から供給される珪酸質原料を組み合わせて利用することができる。
【0018】
本発明は以下の構成とすることもできる。
珪酸質原料は、SiO含有量が97〜99.9質量%の珪酸質原料(a)と、SiO含有量が85〜95質量%の珪酸質原料(b)との混合物であってもよい。
【0019】
SiO含有量が97〜99.9質量%である珪石・珪砂などの珪酸質原料(a)のみを用いた湿式粉砕後のサンドスラリーは沈降凝集・硬化を引き起こし易いため、湿式粉砕には不適とされてきた。一方、SiO含有量が90質量%未満である珪石・珪砂などの珪酸質原料のみを用いて作製したALCは物理的強度が低いためALCの製造には不適とされてきた。
しかし、SiO含有量が97〜99.9質量%の珪酸質原料(a)と、SiO含有量が85〜95質量%の珪酸質原料(b)とを混合して、SiO含有量を90質量%以上97質量%未満とすれば、湿式粉砕後のサンドスラリーの沈降凝集・硬化が抑制でき、また、高い物理的強度の軽量気泡コンクリートを得ることができる。
【0020】
すなわち、上記構成とすることにより、今まで湿式粉砕には不適と思われたSiO含有量が97〜99.9質量%の珪酸質原料(a)や、ALC製造用の原料としては不適と思われたSiO含有量が90質量%未満の珪酸質原料も使用できるから、好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、湿式粉砕後に得られるサンドスラリーの沈降凝集・硬化を抑制し、成形性、物理的強度の発現性に優れた軽量気泡コンクリートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、珪酸質原料と石灰質原料と水とを混合したものに、アルミニウム粉末を添加して原料スラリーを作製し、この原料スラリーを成型用型枠に打設した後に、オートクレーブ養生することにより製造される軽量気泡コンクリートの製造方法である。
【0023】
本発明においては、まず、珪酸質原料をブレーン値が1,500〜3,500cm/gになるように湿式粉砕して珪酸質原料スラリー(サンドスラリー)を作製する。
【0024】
珪酸質原料としては珪石、珪砂などのSiOを含む原料が用いられる。本発明において、珪酸質原料中のSiO含有量は、珪酸質原料の全質量に対して、90質量%以上97質量%未満である。SiO含有量が、90質量%以上97質量%未満であると、珪酸質原料を湿式粉砕することにより得られるサンドスラリーの沈降凝集・硬化を抑制し、成形性、物理的強度の発現性に優れた軽量気泡コンクリートを提供することができるからである。
【0025】
珪酸質原料のSiO含有量が、90質量%未満であると、オートクレーブ養生後の軽量気泡コンクリートの物理的強度が低下し、SiO含有量が、97質量%を超えると、湿式粉砕後のサンドスラリーの沈降凝集・硬化が激しく、輸送配管の閉塞、貯蔵タンクの攪拌機の停止を招くので好ましくない。
【0026】
本発明においては、珪石・珪砂などの珪酸質原料を一種類用いてもよいし、SiO含有量が異なる珪石・珪砂などを二種類以上組み合わせて用いてもよい。二種類以上の珪酸質原料を用いる場合は、混合した後の珪酸質原料中のSiO含有量が、90質量%以上97質量%未満であればよい。
【0027】
したがって、例えば、SiO含有量が97〜99.9質量%の珪石・珪砂などの珪酸質原料(a)と、SiO含有量が、85〜95質量%の珪石・珪砂などの珪酸質原料(b)とを混合したものであっても、混合後の珪酸質原料のSiO含有量が、90質量%以上97質量%未満であればよい。
【0028】
このような構成とすることにより、今まで湿式粉砕には不適と思われたSiO含有量が97〜99.9質量%の珪酸質原料(a)や、ALC製造用の原料としては不適と思われたSiO含有量が90質量%未満の珪酸質原料も使用できるから、好適である。
【0029】
また、二種類以上の珪酸質原料を混合した後の珪酸質原料中のSiO含有量が、90質量%以上97質量%未満であればよいから、単独の鉱山からの珪酸質原料の供給が確保できない場合でも、二種以上の鉱山からの珪酸質原料を使用することで、サンドスラリーの沈降凝集・硬化を抑制し、成形性、物理的強度の発現性に優れたALCを製造することができる。
【0030】
本発明において、珪酸質原料の湿式粉砕には公知のボールミルを用いることができる。具体的には、珪酸質原料と水とをボールミルに充填して湿式粉砕を行う。湿式粉砕の際に使用する水の量は、珪酸質原料100質量部に対して30〜50質量部、好ましくは35〜45質量部である。水の量が30質量部未満であると湿式粉砕により得られるサンドスラリーの粘度が高くなりすぎて、ミル内の流動性が悪化し粉砕が困難になる場合があり、水の量が50質量部を超えるとミル内での流動性が良くなりすぎてミル内の滞留時間が短くなったり、粉砕エネルギーが水攪拌に取られて粉砕効率が低下し所定の粒度まで粉砕できない。
【0031】
次に、珪酸質原料の湿式粉砕により得られたサンドスラリーと、石灰質原料とアルミニウム粉末と水とを混合して原料スラリーを作製し、この原料スラリーを型枠に注入して発泡硬化させケーク状の半硬化体としたものを、180〜190℃で、7〜10時間オートクレーブ養生することで軽量気泡コンクリート(ALC)が得られる。
【0032】
本発明において、石灰質原料としては、生石灰、普通セメント、ポルトランドセメントなどを用いることができる。石灰質原料としてはブレーン値が3,000〜5,000cm/gのものを用いると、珪酸カルシウム水和物・トバモライトを早期に生成することができ、その結果、物理的強度の高いALCを得ることができるので好ましい。
【0033】
原料スラリーを作製する際には、上記の原料以外に、繰返し原料(原料スラリーを発泡硬化させて得られる半硬化体を、ピアノ線で切断した際に発生する不要な部分)や、不要となったALCの粉末(半硬化体を養生して得られるALCを切断した際に発生する不要な部分)を添加してもよい。これらの原料を添加すると、原料スラリーの発泡が安定する上に、原料費を節約できるので、好ましい。
【実施例】
【0034】
(1)サンドスラリーの作製
種々のSiO含有量の珪石・珪砂(珪酸質原料)を用いて、以下に示す方法により、サンドスラリーを作製した。表1に、各サンドスラリーを作製する際に用いた珪酸質原料中のSiO含有量、Al(酸化アルミニウム)含有量およびFeの含有量をそれぞれ質量%で示した。
表1には、珪酸質原料に含まれるSiO、AlおよびFe以外の成分(その他の成分)の詳細(種類、含有量)を示していないが、100質量%からSiO、AlおよびFeの含有量の合計を差し引いた量を、その他の成分の量とする。
【0035】
<作製例1>
珪酸質原料Aを30kgと水12kg(珪酸質原料に対し40質量%)とを、直径615mm、長さ615mmの内容積180リットルのボールミルに充填し、ブレーン値2,300cm/gになるまで湿式粉砕して実施例1のALCの作製に用いるサンドスラリーを作製した。
ボールミル内のスチールボール充填量は233kgで、ボール配列は50mmφ31%、40mmφ25%、30mmφ44%であった。また、ボールミルの回転数は41rpmとした。
【0036】
<作製例2〜13および比較作製例1〜7>
珪酸質原料Aに代えて、珪酸質原料B〜Tを各30kgずつ用いたこと以外は作製例1と同様にして、実施例2〜13および比較例1〜7のALCの作製に用いるサンドスラリーを作製した。
【0037】
<作製例14〜17>
珪酸質原料Aに代えて、二種類の珪酸質原料を等量(15kgずつ)混合したものを用いたこと以外は作製例1と同様にして、実施例14〜17のALCの作製に用いるサンドスラリーを作製した。
【0038】
作製例14では珪酸質原料Pと珪酸質原料Hとを用い、作製例15では珪酸質原料Pと珪酸質原料Tとを用い、作製例16では珪酸質原料Rと珪酸質原料Hとを用い、作製例17では珪酸質原料Rと珪酸質原料Tとを用いた。
なお、表1に記載の化学組成は、二種類の珪酸質原料(珪石・珪砂)を混合した状態での組成である。
【0039】
<作製例18>
珪酸質原料Aに代えて、10kgの珪酸質原料Rと、20kgの珪酸質原料Tとを混合したものを用いたこと以外は作製例1と同様にして、実施例18のALCの作製に用いるサンドスラリーを作製した。
なお、表1に記載の化学組成は、二種類の珪酸質原料(珪石・珪砂)を混合した状態での組成である。
【0040】
(2)サンドスラリー沈降凝集物の硬度の測定
作製例1〜18および比較作製例1〜7で作製した各サンドスラリーを1kgずつ、1リットルプラスチックビーカーで採取し、回転数700rpmの攪拌機で3分攪拌した後、500mlメスシリンダーに500ml注入して静置した。
【0041】
24時間静置した後、アイコーエンジニアリング(株)製プッシュプルゲージRX−10(最大計測100N)の先端をメスシリンダーの底部まで差し込み、沈降凝集物の最大硬度を測定し、以下の基準により評価し、表1に示した。
◎:0N以上10N未満、○:10N以上50N未満、×:50N以上
【0042】
(3)軽量気泡コンクリート(ALC)の作製および物理的強度(圧縮強度)の測定
作製例1〜18および比較作成例1〜7で作製した各サンドスラリーを用いて、以下の手順により実施例1〜18、比較例1〜7のALCをそれぞれ作製した。
サンドスラリー9,450g(固形分6,750g)、生石灰2,250g、普通セメント1,500g、繰返し原料5,400g(固形分3,000g)、ALC粉末1,500g、アルミニウム粉末9gおよび水4,300gを混合し、型枠に注入して発泡硬化させた。2時間経過後のケーク状半硬化体を180℃10時間オートクレーブ養生行い、実施例1〜18および比較例1〜7の軽量気泡コンクリートをそれぞれ作製した。
【0043】
なお、本実施例および比較例においては、繰り返し原料として、その実施例または比較例に対応する半硬化体の不要部分を水で溶かして用いた。また、ALC粉末としては、その実施例または比較例に対応するALCの不要部分を粉末にして用いた。
すなわち、一実施例中(または一比較例中)で使用する珪酸質原料の化学組成と、繰返し原料中の珪酸質原料の化学組成と、ALC粉末中の珪酸質原料の化学組成は同じである。
【0044】
得られた軽量気泡コンクリートの圧縮強度を、JIS A 5416に準拠して測定した。
圧縮強度の評価基準は以下の通りである。
◎:5.0N/mm以上、
○:4.0N/mm以上5.0N/mm未満
×:4.0N/mm未満
【0045】
(総合評価)
総合評価の基準は以下の通りである。
【0046】
◎:サンドスラリー沈降凝集物の硬度の評価が◎で、かつ、圧縮強度の評価の結果が◎
○:いずれか一方の評価結果が○で他方が◎のもの、及び評価結果が双方とも○のもの
×:評価結果の一方または双方が×
【0047】
【表1】

【0048】
(4)結果と考察
表1からわかるように、実施例1〜13のように一種類の珪酸質原料を用いたものでも、実施例14〜18のように二種類の珪酸質原料を混合したものであっても、SiO含有量が90〜97質量%の珪酸質原料を予め湿式粉砕して得られたサンドスラリーを用いると、サンドスラリーの沈降凝縮硬度が低く、物理的強度の高い軽量気泡コンクリートを得ることができた。実施例5〜7、実施例14、16では特に良好な結果が得られた。
【0049】
本発明によれば、珪石・珪砂などの珪酸質粉末原料として、SiO含有量が90〜97質量%のものを使用することで、湿式粉砕後の沈降凝集・硬化が抑制でき、高い物理的強度の軽量気泡コンクリートを得ることができる。また、今まで湿式粉砕には不適と思われたSiO含有量が97〜99.9質量%の珪石・珪砂などの珪酸質原料(a)を使用することも可能であり、ALC製造の原料の選択の幅が広がる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例においては、珪酸質原料として1種類の原料または2種類の原料を混合したものを例示したが、珪酸質原料として3種類以上の珪石・珪砂などを混合したものを用いてもよい。要は、混合した後の珪酸質原料のSiO含有量が90質量%以上97質量%未満であればよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸質原料と石灰質原料とを主原料とする原料スラリーを成型用型枠に打設した後に、オートクレーブ養生することにより製造される軽量気泡コンクリートの製造方法であって、
前記珪酸質原料中のSiO含有量は90質量%以上97質量%未満であり、かつ、前記珪酸質原料を湿式粉砕してから前記原料スラリーを作製することを特徴とする軽量気泡コンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記珪酸質原料は、SiO含有量が97〜99.9質量%の珪酸質原料(a)と、SiO含有量が85〜95質量%の珪酸質原料(b)との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の軽量気泡コンクリートの製造方法。

【公開番号】特開2009−96665(P2009−96665A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269172(P2007−269172)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000185949)クリオン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】