説明

軽量気泡コンクリートパネル

【課題】軽量気泡コンクリートパネルに十分な強度と、均質な内部補強を実施する。
【解決手段】軽量気泡コンクリート中にリブ鉄板付きエキスパンドメタルを補強材として埋設したことを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルとする。
【効果】リブ鉄板が鉄線補強と同等の曲げ強度を付与し、かつエキスパンドメタルにより繋がっている事で均質な補強効果を得る事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、十分な曲げ強度を有し、かつ、均質な補強を容易に実施できる軽量気泡コンクリートパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリートパネルは、鉄筋を籠状に編成したもの、あるいはエキスパンドメタル等の金網により内部補強され、パネル状に加工されて使用している。前者は強力なパネル曲げ強度を必要な場合に用いられ、図4に示すように通常パネル長手方向に補強の重きを置き、長手方向には鉄筋線径5〜7ミリ(直径)の鉄筋を80ミリピッチ以上の間隔で配置し、短辺方向では鉄筋線径5ミリ以下の鉄筋を200から500ミリピッチで配置することが一般的に行われている。補強鉄筋5の補強部が軽量気泡コンクリートパネル1内に偏在する為に不用意には切断等の加工は出来ず、寸法、必要強度に合わせたオーダーメイドで作られる。後者は比較的曲げ強度を必要としない部位に用いられる場合であり、このパネルは均質に補強されているのでいずれの場所で切断等の加工を行っても問題は無い。
一方、施工現場では現場合わせ加工が多く発生する為、両者の特性を兼ね備えた物が望まれており、鉄線と金網を溶接等の接着により一体化させて用いる提案が行われたりしている。(特開平08−170404号公報)
【特許文献1】特開平08−170404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エキスパンドメタルと鉄線の溶接が行われたが、しかし、その均質補強、補強効果向上の目的に対して、補強鉄筋の製作が煩雑な為等から、特殊な場合のみ実施されるに限られていた。そのため、これらを改善した軽量気泡コンクリートパネルの実現が待ち望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エキスパンドメタルを製作する際に鉄板の刻みを途中省略することでリブ鉄板を作り、このリブ鉄板付きエキスパンドメタルを補強材に用いる事で補強鉄筋と同様の補強効果を有する軽量気泡コンクリートパネルを得る事が出来るという知見に基づき、本発明に至った。すなわち、
本発明は軽量気泡コンクリート中にリブ鉄板付きエキスパンドメタルを補強材として埋設したことを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルである。
リブ鉄板部に長手方向の補強効果を担わせ、リブ鉄板とリブ鉄板の間を通常に刻んでエキスパンドメタルとすることによりエキスパンドメタルの均一補強効果も達成する事が出来る。
【発明の効果】
【0005】
リブ鉄板が補強鉄線と同等の曲げ強度を付与し、かつエキスパンドメタルにより鉄板同士が長手方向全長に渡って繋がっている事で、均質な補強効果を得る事が出来る。
また、製造も容易で、更に現場での切断も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の軽量気泡コンクリートパネル1は図1に示すように軽量気泡コンクリート中にリブ鉄板付きエキスパンドメタル2を補強材として埋設したものである。補強材として埋設することからパネル1枚の中にリブ鉄板付きエキスパンドメタルを両側2枚入れることが補強上有効である。本発明に記すリブ鉄板付きエキスパンドメタル2は例えば特開2001−47153に記される図2に示す様な、鋼板を山形の刃物で切り伸ばして行く製法の途中中断により鉄板を残す方法で得る事が出来る。
このリブ鉄板付きエキスパンドメタルの鉄板厚みは0.5ミリから2.0ミリが好ましく、この範囲より薄いと必要補強強度に合わせてリブ鉄板の面積が広くなってしまい実質的に軽量気泡コンクリートと鉄板のサンドイッチ構造になって軽量気泡コンクリートと鉄板の間で剥がれやすくなってしまう。また、厚すぎると現場切断を行う際に容易に切断出来るメリットが薄れてしまう。また、リブ鉄板の本数はパネル強度に応じて決定すればよいが、実施例で後述するように一般の鉄筋補強と同様にリブ鉄板部重量で決定することも可能となる。
【0007】
図3に示すリブ鉄板3の幅は、モルタル発泡の際に鉄板周囲に空洞が生じやすくなるので、50mm以下、鋼板の切断時のゆがみ易さから10mm以上とする事が好ましい。
また、エキスパンドメタル部4のメッシュ幅、メッシュ長さは任意であるが、パネル曲げ強度に目の粗さに関しては影響を与えない事から、コスト面およびリブ鉄板付きエキスパンドメタルを介した軽量気泡コンクリートとの一体化を考えるとより粗い方が好ましい。
本発明の軽量気泡コンクリートパネルはリブ鉄板付きエキスパンドメタルの補強材がセットされた型枠に、後述する軽量気泡コンクリートモルタルスラリーを注入し、発泡硬化させて形成させたモルタルブロックをピアノ線で所定の形状に切断し、オートクレーブ養生することにより得られる。
【0008】
軽量気泡コンクリートモルタルスラリーは珪酸成分となる珪石粉末や珪砂等の砂と、カルシウム分となる生石灰、および珪酸とカルシウムを併せもつセメントを水と混ぜ合わせ、更に硬化速度制御の為に二水石膏を加えて攪拌し、発泡材の金属アルミの粉を入れて粘度調整の水を加えて更に攪拌してスラリー状としたものである。内部リブ鉄板付きエキスパンドメタルの補強材のセットは従来から金網補強の軽量気泡コンクリートパネルの製造で用いられている例えば特開平08−301671の様に箸状の金属棒で挟んで吊るす金網(エキスパンドメタル)のセットと同方式がそのまま用いる事が出来る。すなわち、防錆処理されたリブ鉄板付きエキスパンドメタルを数箇所箸状鉄棒で挟持して、型枠の中にセットする。
型枠にリブ鉄板付きエキスパンドメタルがセットされた状態のところへ軽量気泡コンクリートモルタルスラリーを注入し、金属アルミの反応で発生する水素による発泡膨張と、水熱硬化を並行して進めて、嵩高のモルタルブロック硬化体を得る。
【0009】
このモルタルブロック硬化体がハンドリング強度に達した時にセットに用いていた箸状の金属棒を引き抜き、ピアノ線で所定寸法に切断する。
この切断によりほぼパネル状となったモルタル硬化体を、この後オートクレーブ養生する。オートクレーブ養生では高温高圧の水蒸気をオートクレーブに導入して水和反応を完了させる。このオートクレーブ養生は180℃以上の状態を4時間以上保持する事が好ましい。
オートクレーブ養生後は、端部や表面に切断や切削で様々な形状を付与されて軽量気泡コンクリートパネル製品となる。
リブ鉄板付きエキスパンドメタルを用いる事は、従来の金網(エキスパンドメタル)をリブ鉄板付きエキスパンドメタルに取り替えた以外は製法に全く変更は無く、既存の生産ラインを使用する事が出来る。
なお、補強鉄筋をリブ鉄板付きエキスパンドメタルに貼付して補強効果を更に高める事も考えられる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例、比較例で詳細に説明する。
長さ1800mm、幅600mm、厚さ75mmの軽量気泡コンクリートパネルの補強鉄筋を、リブ鉄板付きエキスパンドメタルと通常の鉄線編成籠にして作製した。
厚さ1.2ミリの鉄板を使用し、リブ部の幅は4.8センチ、メッシュのサイズは長さ75ミリ、幅22ミリで1.8ミリの刻み間隔で作製した。このリブ付きエキスパンドメタルを防錆処理して用いた。また、同一鉄板からリブ部の幅は4.8センチ、メッシュのサイズは長さ30.5ミリ、幅12ミリで1.2ミリの刻みでも作製した。これらのメッシュ寸法は、現在市販されているエキスパンドメタルの金型に合わせて作製した為であり、寸法に関しては特にこれらに限定されるものではない。
【0011】
比較例には通常用いている線径7ミリの鉄線を長辺方向、線径5ミリの鉄線を短辺方向の補強方向となるように籠状となる様に溶接して組み立てた。これをリブ付きメタルラスと同一の防錆材を用いて処理した。
軽量気泡コンクリート原料は珪石粉末、生石灰、普通ポルトランドセメント、二水石膏、オートクレーブ養生前の軽量気泡コンクリートモルタルブロック解砕物、オートクレーブ養生後の軽量気泡コンクリート粉砕物それに水と金属アルミ粉末を用いた。内部補強材をセットした型枠に上記原材料からなるモルタルスラリーを注入して発泡および硬化させ、パネルを形成させた。
【0012】
[実施例1]
メッシュのサイズは長さ75ミリ、幅22ミリで1.6ミリの刻み間隔で作製したリブ鉄板付きエキスパンドメタルを用いた。パネル1枚の中にリブ鉄板付きエキスパンドメタルは2枚入れ、1枚はリブ鉄板を4本、他方はリブ鉄板を6本とした。このリブ鉄板付きエキスパンドメタルをセットした型枠にモルタルを注入・発泡させ、軽量気泡コンクリートパネルを得た。
[実施例2]
メッシュのサイズは長さ30.5ミリ、幅12ミリで1.3ミリの刻み間隔で作製したリブ鉄板付きエキスパンドメタルを用いた。実施例1同様にパネル1枚の中にリブ鉄板付きエキスパンドメタルは2枚入れ、1枚はリブ鉄板を4本、他方はリブ鉄板を6本とした。このリブ鉄板付きエキスパンドメタルをセットした型枠にモルタルを注入・発泡させ、軽量気泡コンクリートパネルを得た。
[比較例1]
U字形に曲げられた線径5ミリの鉄筋に対して線径7ミリの鉄筋を溶接して、籠状に組み立てる。U字の片面には線径7ミリ鉄筋が6本、他方には9本が溶接され、U字形の線径5ミリの鉄筋は7本用いられた。
この補強鉄筋をセットした型枠にモルタルを注入・発泡させ、軽量気泡コンクリートパネルを得た。
表1に実施例、比較例各々のパネル曲げ強度と、補強鉄筋の重量、切断加工性を示す。
曲げ強度の測定はJIS A 5416に準じ、載荷スパンは1750ミリとした。
これらの結果から鉄筋と同等のリブ鉄板部重量があればパネル曲げ強度は得られる事が分かる。また、メッシュの大きさは強度に大きな影響は与えておらず、リブを付ける事が軽量気泡コンクリートパネル補強に大きな効果のある事が分かる。
更に切断試験から、切断性が優れており、現場で容易に切断できる事が分かった。
【0013】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は軽量気泡コンクリートパネルとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のリブ鉄板付きエキスパンドメタルを補強材として埋設した軽量気泡コンクリートパネルの説明図である。
【図2】リブ鉄板付きエキスパンドメタルの説明図である。
【図3】リブ鉄板付きエキスパンドメタルの一部拡大説明図である。
【図4】従来の補強鉄筋を補強材として埋設した軽量気泡コンクリートパネルの説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1:軽量気泡コンクリートパネル
2:リブ鉄板付きエキスパンドメタル
3:リブ鉄板
4:エキスパンドメタル(部)
5:補強鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリート中にリブ鉄板付きエキスパンドメタルを補強材として埋設したことを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−175773(P2006−175773A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372680(P2004−372680)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】