説明

載荷装置

【課題】所望する大きさの荷重を長時間、載荷することが可能な載荷装置を提供する。
【解決手段】力の発生源となる錘部11と、自由落下させた錘部11から力の付与を受ける受力部2と、杭Pに対して力を付与する加力部3と、受力部2と加力部3とを摩擦力が発生する状態でスライド可能に連結させる摩擦連結部4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対して外力を付与するための載荷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重錘を自由落下させて杭頭を打撃することで載荷をおこなう杭の急速載荷試験装置が知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
この急速載荷試験(スタナミック試験)は、静的載荷試験と動的載荷試験の欠点を解消するために考案された杭の載荷試験方法で、この方法によれば載荷時間を動的載荷試験の約10倍に当たる50〜200ms程度にすることで弾性波動の伝播による影響をなくし、静的載荷試験に近い信頼性の高い試験結果を得ることができる。
【0004】
この急速載荷試験の一例として、杭頭に荷重計を介してゴムやバネなどの緩衝材を載置し、その上に重錘を自由落下させて杭を打撃する方法がある。このように緩衝材を重錘と杭頭の間に介在させることによって、載荷時間を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−303570号公報
【特許文献2】特開平10−274576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の緩衝材を重錘と杭頭の間に介在させる方法では、載荷荷重の増加及び減少が放物線状になるため、最大荷重が載荷される時間は非常に短くなる。
【0007】
他方、杭の静的載荷試験は、一定の大きさの荷重を一定時間、連続して載荷する試験であるため、所定の大きさの荷重を長時間、載荷することができる載荷装置の開発が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、所望する大きさの荷重を長時間、載荷することが可能な載荷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の載荷装置は、力の発生源となる原力部と、前記原力部から力の付与を受ける受力部と、対象物に対して力を付与する加力部と、前記受力部と前記加力部とを摩擦力が発生する状態でスライド可能に連結させる摩擦連結部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記摩擦連結部は、前記摩擦力の大きさが調整可能であることが望ましい。また、前記摩擦連結部は、前記受力部と前記加力部との間に軸力を付与する軸力材を有し、前記軸力材の引張力を調整することによって前記摩擦力の大きさを調整する構成とすることができる。
【0011】
さらに、前記摩擦力による載荷時間を調整可能にすることができる。例えば、前記スライド可能な長さを調整することによって前記載荷時間の長さを調整することができる。
【0012】
また、前記受力部は、前記原力部から力の付与を受ける受け部と、その受け部から延設される伝達板部とを備え、前記加力部は、前記対象物に対して力を付与する載荷部と、その載荷部から前記受け部に向けて前記伝達板部に並行に延設される加力側板部とを備え、前記摩擦連結部は、前記伝達板部及び前記加力側板部を貫通する軸力材と、前記伝達板部と前記加力側板部との間に軸力を付与した状態で前記軸力材を定着させる定着部とを備えた構成とすることができる。
【0013】
また、前記伝達板部と前記加力側板部との間に摩擦材部を介在させる構成であってもよい。さらに、前記軸力材に引張力を導入する緊張装置を配置することもできる。
【0014】
また、前記伝達板部は、前記加力側板部を構成する2つの平行板に挟ませることができる。さらに、前記伝達板部及び前記加力側板部は、それぞれ複数の平行板によって形成されるとともに、前記伝達板部の平行板と前記加力側板部の平行板とが交互に配置される構成であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明の載荷装置は、原力部から力の付与を受ける受力部と対象物に対して力を付与する加力部とを、摩擦連結部によって摩擦力が発生する状態でスライド可能に連結させる。
【0016】
このため、受力部と加力部とのスライドによる相対変位が生じている間は、摩擦力によって加力部に伝達される荷重を、対象物に載荷し続けることができる。また、スライドが終了した時点で運動エネルギーが消失しているので、リバウンドが発生せず、載荷荷重が乱されたり、載荷装置が落下したりしない。
【0017】
また、摩擦力の大きさを調整することが可能な摩擦連結部の構成であれば、載荷荷重の大きさを容易に調整することができる。例えば、軸力材の引張力を調整することで受力部と加力部との間の軸力が増減し、摩擦力の大きさを変更することができる。
【0018】
さらに、摩擦力による載荷時間を容易に調整することができる。例えば、スライド可能な長さを調整することで載荷時間の長さを変更することができる。
【0019】
また、受力部の伝達板部と加力部の加力側板部とを並行させて軸力材を貫通させる構成であれば、非常に簡素で、故障しにくい載荷装置とすることができる。
【0020】
さらに、伝達板部と加力側板部との間に摩擦材部を介在させる構成であれば、摩擦係数が異なる材質の摩擦材部を採用することで摩擦力を調整することができる。
【0021】
また、軸力材に緊張装置を配置すれば、その装置を作動させることによって容易に軸力材に引張力を導入することができる。
【0022】
さらに、伝達板部を加力側板部の平行板で挟む構成であれば、受力部から加力部に左右の偏りなく荷重を伝達させることができる。また、伝達板部及び加力側板部を複数の平行板によって形成して交互に配置すれば、摩擦力が発生する面が増加して大きな摩擦力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の載荷装置の構成を示した説明図である。
【図2】本実施の形態の載荷装置の主要部の構成を説明する図であって、(a)は側面から見た図、(b)は(a)のA−A矢視方向で見た図である。
【図3】実施例1の載荷装置の主要部の構成を説明する側面図である。
【図4】実施例2の載荷装置の主要部の構成を説明する側面図である。
【図5】実施例2の載荷装置の主要部の構成を説明する図であって、(a)は受力部の構成を説明する図、(b)は加力部の構成を説明する図である。
【図6】載荷試験によって得られた載荷パターンを示した図である。
【図7】載荷試験によって得られた載荷パターンを示した図である。
【図8】載荷試験によって得られた載荷パターンを示した図である。
【図9】載荷試験によって得られた載荷パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態の載荷装置1を使っておこなわれる杭Pの載荷試験の構成を示した図である。すなわち、この載荷装置1によって外力を付与する対象物は、本実施の形態では杭Pである。
【0026】
まず、構成から説明すると、この載荷装置1は、力の発生源となる原力部としての錘部11と、その錘部11から受けた力を杭Pに伝達させる主要部10と、杭頭P1に作用する荷重の大きさを測定する荷重計12とを主に備えている。
【0027】
この錘部11は、吊りワイヤ15の下端に設けられた吊りフック14に切離し具14aを介して吊り下げられる。この切離し具14aには、切断が容易なテープ、又は遠隔操作によって開閉する開閉爪などが利用できる。
【0028】
また、この吊りワイヤ15は、杭Pを挟んで設置板18上に立設された支持柱17,17に架け渡される支持梁(図示省略)から吊り下げられている。そして、吊りワイヤ15を巻き上げることによって錘部11を所定の高さまで持ち上げ、そこから自由落下させることによって主要部10に対して力を付与することができる。
【0029】
この主要部10は、図2に示すように、錘部11から力の付与を受ける受力部2と、対象物である杭Pに対して力を付与する加力部3と、受力部2と加力部3とを摩擦力が発生する状態でスライド可能に連結させる摩擦連結部4とによって主に構成される。
【0030】
この受力部2は、力の付与を受ける平板状の受け部21と、その受け部21の下面中央から垂下される平板状の伝達板部22とによって、側面視略T字形に成形されている。
【0031】
一方、加力部3は、杭Pの杭頭P1に対して力を付与する平板状の載荷部31と、その載荷部31の上面中央から受け部21に向けて立設される加力側板部32とによって形成されている。また、加力側板部32は、伝達板部22の厚みだけ間隔を開けて平行に立設される平板状の2枚の平行板32a,32bによって形成される。
【0032】
そして、この受力部2の伝達板部22は、図2(a)に示すように、加力側板部32を構成する平行板32a,32bによって挟まれている。この伝達板部22と平行板32a,32bとを重ね合わせた面が、本実施の形態の摩擦力が発生するスライド面となる。
【0033】
また、伝達板部22と加力側板部32とをスライド可能に連結させる摩擦連結部4は、伝達板部22と加力側板部32を貫通させる軸力材としてのボルト41と、ボルト41の端部を平行板32aに定着させる定着部としてのナット42とを備えている。なお、平行板32a側のボルト41の端部に設けられるボルトヘッド41aは、定着部としてボルト41を平行板32bに定着させる。
【0034】
このボルト41は、加力側板部32(平行板32a,32b)のボルト穴(図示省略)に挿通されるとともに、伝達板部22の上下方向に延設された長穴43に挿通される。この長穴43の延設方向が、受力部2のスライド方向となる。また、長穴43の長さが、受力部2のスライド可能な長さとなる。
【0035】
本実施の形態では、図2(b)に示すように、一つの長穴43に対して2本のボルト41,41が挿通される。そして、2つの長穴43,43に挿通された4本のボルト41,・・・のナット42,・・・の締結力の大きさによって、伝達板部22と加力側板部32との間の軸力の大きさが変化する。
【0036】
さらに、伝達板部22と加力側板部32との摩擦係数は、双方の材質によって異なることになる。例えば、伝達板部22と加力側板部32が鋼材によって形成されている場合は、摩擦係数が0.5程度となり、この摩擦係数にボルト41,・・・によって導入される軸力を乗じた値が、伝達板部22と加力側板部32との間のおおよその摩擦力の大きさとなる。
【0037】
また、この主要部10の上面(受力部2の上面)には、図1に示すようにゴム板や発泡ウレタンエラストマーなどの緩衝材16を設置する。さらに、主要部10の下面(加力部3の下面)は、台座13に当接させる。すなわち、台座13は杭頭P1に設置される荷重計12の上面に設置されており、主要部10はその台座13上に載置されることになる。
【0038】
ここで、荷重計12には、ロードセルやひずみゲージなどが利用できる。また、杭Pの載荷試験をおこなう際には、杭Pの沈下量を測定する光学式変位計などの変位計が必要であるが、ここでは説明を省略する。
【0039】
次に、本実施の形態の載荷装置1を使った杭Pの載荷試験、及び載荷装置1の作用について説明する。
【0040】
まず、図1に示すように、杭頭P1に荷重計12を設置し、その上に台座13及び主要部10を設置する。また、主要部10の上面には、緩衝材16を設置する。
【0041】
この主要部10の受力部2と加力部3とは、図2に示すように、長穴43の上端付近に上段のボルト41が配置される位置で固定される。また、ナット42の締結力を所定の大きさに設定することで、加力側板部32と伝達板部22との間の摩擦力の大きさを調整する。
【0042】
一方、錘部11は、切離し具14aを介して吊りフック14に引っ掛けて、吊りワイヤ15を巻き上げることによって所定の高さまで吊り上げる。そして、切離し具14aを解除して錘部11を自由落下させる。
【0043】
この自由落下した錘部11は、緩衝材16を介して受力部2の受け部21に下向きの力を付与する。そして、この受け部21に付与された力は、そのまま伝達板部22に伝達される。
【0044】
ここで、この伝達板部22に伝達された力が加力側板部32と伝達板部22との間の摩擦力よりも大きければ、受力部2は、伝達板部22に沿って下向きにスライド移動することになる。
【0045】
このスライド移動している間に受力部2から加力部3に伝達される力は、摩擦連結部4によって加力側板部32の平行板32a,32bと伝達板部22との間に導入される軸力と摩擦係数との積によって推定できる。
【0046】
このため、平行板32a,32bと伝達板部22とが接触する面積が一定であれば、スライド移動している間は、略一定の力が受力部2から加力部3に伝達されることになる。すなわち、摩擦力の大きさは速度に依存しないため、相対変位が生じている間(スライド移動中)は、理論的には常に同程度の大きさの摩擦力が発生することになる。
【0047】
図6は、この載荷装置1によって載荷をおこなったときに計測された時間tと載荷される荷重Fの関係を示した図である。ここで、錘部11の重さは1t、落下高さは0.3m、緩衝材16には10mmのゴム板を使用した。
【0048】
この図6に示すように、0.3〜0.45秒の間に20〜40kNの力が載荷され続けていることがわかる。なお、荷重Fが徐々に増加するのは、伝達板部22が下方にスライド移動することによって、加力側板部32と伝達板部22とが接触する面積が徐々に増加する影響と考えられる。
【0049】
このように構成された本実施の形態の載荷装置1は、錘部11から力の付与を受ける受力部2と杭Pに対して力を付与する加力部3とを、摩擦連結部4によって摩擦力が発生する状態でスライド可能に連結させる。
【0050】
このため、図6に示すように、受力部2と加力部3とのスライドによる相対変位が生じている間は、摩擦力の大きさに基づく荷重が、長穴43の長さによる制約を上限として比較的長い時間、台形状に載荷し続けることになる。また、スライド移動が終了した時点で運動エネルギーが消失しているので、リバウンドが発生せず、載荷荷重が乱されたり、載荷装置1が杭Pから落下したりしない。
【0051】
また、図7は、図6よりもナット42,・・・の締結力を大きくした場合の載荷試験結果を示した図である。この図7の載荷パターンでは、0.47〜0.55秒の間に30〜60kNの力が載荷され続けていることがわかる。
【0052】
この図6,7の載荷パターンを比較すると、ナット42,・・・の締結力を増加させることで摩擦力が大きくなって、載荷荷重Fを大きくすることができるといえる。
【0053】
さらに、受力部2の伝達板部22と加力部3の加力側板部32とを平行に重ね合わせてボルト41を貫通させ、ナット42で締結する構成であれば、非常に簡素で、故障しにくい載荷装置1とすることができる。
【0054】
また、載荷時間tの長さの調整は、長穴43の長さを調整することによっておこなうことができる。すなわち、受力部2がスライド移動している間は摩擦力による載荷がおこなわれるため、載荷時間tを長くしたい場合は長穴43を長くすればよい。
【0055】
さらに、載荷時間tの長さの調整は、錘部11から付与される力の大きさを調整することによってもおこなうことができる。すなわち、載荷時間tを長くしたい場合は、錘部11を高く持ち上げるか、又は錘部11の重量を増加させてもよい。
【0056】
また、伝達板部22を加力側板部32の2枚の平行板32a,32bで挟む構成であれば、対となる平行板32a,32bによって二面せん断となって左右の偏りを発生させることなく荷重を伝達させることができる。
【実施例1】
【0057】
以下、前記した実施の形態とは別の形態としての実施例1について、図3を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0058】
この実施例1の載荷装置1の主要部10Aは、図3に示すように、受力部2の伝達板部22と加力部3Aの加力側板部32Aとの間に摩擦材部54が介在されている。
【0059】
すなわち、前記実施の形態では、伝達板部22と加力側板部32の平行板32a,32bとが直接、接していたため、伝達板部22と平行板32a,32bとの摩擦係数によって摩擦力が設定されたが、この実施例1では、伝達板部22と摩擦材部54及び摩擦材部54と加力側板部32Aとの摩擦係数によって摩擦力が設定される。
【0060】
例えば、摩擦係数は、鉄同士では0.51、鉄とアルミでは0.54、鉄と鉛では0.60と接触させる材質によって変化する。また、摩擦材部54として、ゴム材や低降伏点鋼などの軟らかい材料を使用した場合、スライド面で発生する摩擦力よりも降伏点が小さければ、スライド面のずれによるスライドではなく、摩擦材部54の変形によるスライドが先に発生することになる。
【0061】
ここで図8は、伝達板部22と加力側板部32Aとの間に、摩擦材部54として10mmの厚さのゴム板を挟んだ場合の載荷パターンを示した図である。この図8より、ゴム板のように摩擦抵抗が大きく変形し易い摩擦材部54を介在させることにより、略一定の荷重Fを所定の時間、略台形状に載荷し続けることができることがわかる。
【0062】
これに対して図9は、伝達板部22と加力側板部32Aとの間に、摩擦係数が非常に小さい四フッ化エチレンを挟んだ場合の載荷パターンを示した図である。このように摩擦係数の非常に小さい部材を介在させて摩擦力がほとんど生じない構成にすると、受力部2のスライドが停止する位置での荷重Fのみが非常に大きくなって短時間載荷されるだけで、台形状の載荷パターンを得ることができない。
【0063】
また、実施例1の摩擦連結部5は、伝達板部22と摩擦材部54と加力側板部32Aを貫通する軸力材としてのボルト軸51と、ボルト軸51の端部を伝達板部22と加力側板部32Aとにそれぞれ定着させる定着部としてのナット52,52と、緊張装置として配置されるセンターホールジャッキ53とを主に備えている。
【0064】
この加力側板部32に定着させるナット52は、支圧板55を介して定着される。また、伝達板部22には、支圧板55を当接させるとともに、センターホールジャッキ53を介在させた状態でナット52を定着させる。
【0065】
そして、このセンターホールジャッキ53を伸長させると、ナット52,52間のボルト軸51が引っ張られ、その引張力が伝達板部22と加力側板部32Aとの間に軸力として導入される。
【0066】
このように摩擦連結部5にセンターホールジャッキ53を配置すれば、その装置を作動させることによって、容易にボルト軸51に所望する大きさの引張力を発生させて軸力を導入することができる。
【0067】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0068】
以下、前記した実施の形態とは別の形態としての実施例2について、図4,5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態及び実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0069】
この実施例2で説明する載荷装置1の主要部10Bは、図4に示すように、複数の平行板62a,・・・,62bを有する受力部6と、同じく複数の平行板72a,・・・,72bを有する加力部7と、受力部6と加力部7とをスライド可能に連結する摩擦連結部5Aとを主に備えている。
【0070】
この受力部6は、力の付与を受ける平板状の受け部61と、その受け部61の下面から平行に垂下される平板状の4枚の平行板62a,62a,62a,62bによって形成される伝達板部62とを備えている。
【0071】
この伝達板部62は、図4の最も右側に位置する平行板62bだけが受け部61の下面に溶接部623によって固着されており、その他の平行板62a,・・・は、受け部61に沿って平行板62a,・・・の間隔を狭める方向への移動が可能な構成となっている。
【0072】
すなわち、図5(a)に示すように、平行板62aの上部の両側面には凹部622,622が設けられ、一端が溶接によって受け部61に固定された側面視略L字形の連結吊り材63,63の他端が、その凹部622,622に挿入されている。このため、平行板62aは、連結吊り材63,63によって受け部61から吊り下げられた状態となり、連結吊り材63,63をガイドに水平方向に移動することができる。
【0073】
また、平行板62a(62b)の略中央には、図5(a)に示すように上下方向に長穴621が延設される。そして、この長穴621の延設方向が、載荷時の受力部6のスライド方向となる。
【0074】
一方、加力部7は、杭Pの杭頭P1に対して力を付与する平板状の載荷部71と、その載荷部71の上面から受け部61に向けて平行に立設される平板状の5枚の平行板72a,72a,72a,72a,72bによって形成される加力側板部72とを備えている。
【0075】
この加力側板部72は、図4の最も右側に位置する平行板72bだけが載荷部71の上面に溶接部722によって固着されており、その他の平行板72a,・・・は、載荷部71に沿って平行板72a,・・・の間隔を狭める方向への移動が可能な構成となっている。
【0076】
すなわち、図5(b)に示すように、平行板72aは、連結支持材73,73間に挟持されて立設されているだけなので、紙面直交方向となる水平方向には移動することができる。
【0077】
また、平行板72aの上半分の略中央には、図5(b)に示すようにボルト穴721,721が穿孔される。
【0078】
そして、図4に示すように加力部7の平行板72a,・・・,72bの間に受力部6の平行板62a,・・・,62bを差し込み、平行板72aと平行板62aとが交互に配置されるようにする。
【0079】
さらに、平行板62a,・・・,62bの長穴621,・・・と、平行板72a,・・・,72bのボルト穴721,・・・とをボルト軸51で貫通させる。また、ボルト軸51の一端には、支圧板55を介してナット52を装着する。
【0080】
さらに、ボルト軸51の他端には、支圧板55、センターホールジャッキ53及びナット52を装着する。そして、センターホールジャッキ53を伸長すると、平行板62a,・・・及び平行板72a,・・と平行板62b,72bとの間隔が縮まって、平行板62a,72a,・・・,62b,72bのそれぞれの間に軸力が導入される。
【0081】
このように構成された実施例3の載荷装置1の主要部10Bは、伝達板部62と加力側板部72とが複数の平行板62a,・・・,62b、72a,・・・,72bによって形成されている。
【0082】
このため、平行板62a,72a,62b,72bが接触する面ごとに摩擦力が発生する多面せん断構造となり、全体として大きな摩擦力を容易に確保することができる。
【0083】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0084】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0085】
例えば、前記実施の形態では、原力部として錘部11を自由落下させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ハンマーなどの打撃装置を原力部とする構成であってもよい。
【0086】
また、前記実施の形態では、鉛直方向の載荷をおこなう場合について説明したが、これに限定されるものではなく、水平方向など他の方向の載荷にも本発明の載荷装置1の主要部10,10A,10Bを適用することができる。
【0087】
さらに、前記実施の形態では、伝達板部22に長穴43を設けたが、これに限定されるものではなく、加力側板部32に長穴を設け、伝達板部22にボルト穴を設ける構成であってもよい。また、実施例2についても長穴621とボルト穴721を設ける位置を逆にしてもよい。
【0088】
また、前記実施の形態では加力側板部32を2枚の平行板32a,32bによって構成したが、これに限定されるものではなく、平板一枚の加力側板部であってもよい。さらに、前記実施例1では、平板一枚の加力側板部32Aについて説明したが、これに限定されるものではなく、前記実施の形態と同様に2枚の平行板32a,32bで伝達板部22を挟む構成であってもよい。
【0089】
さらに、前記実施例1,2では、センターホールジャッキ53を使って軸力を導入したが、これに限定されるものではなく、アクチュエータを使って任意に調整された軸力を導入することで、載荷荷重の大きさや載荷時間の長さを調整して所望する形状(載荷パターン)の載荷をおこなうことができる。
【符号の説明】
【0090】
P 杭(対象物)
1 載荷装置
10 主要部
11 錘部(原力部)
2 受力部
21 受け部
22 伝達板部
3 加力部
31 載荷部
32 加力側板部
32a,32b 平行板
4 摩擦連結部
41 ボルト(軸力材)
41a ボルトヘッド(定着部)
42 ナット(定着部)
10A 主要部
3A 加力部
32A 加力側板部
5,5A 摩擦連結部
51 ボルト軸(軸力材)
52 ナット(定着部)
53 センターホールジャッキ(緊張装置)
54 摩擦材部
10B 主要部
6 受力部
61 受け部
62 伝達板部
62a,62b 平行板
7 加力部
71 載荷部
72 加力側板部
72a,72b 平行板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力の発生源となる原力部と、前記原力部から力の付与を受ける受力部と、対象物に対して力を付与する加力部と、前記受力部と前記加力部とを摩擦力が発生する状態でスライド可能に連結させる摩擦連結部とを備えたことを特徴とする載荷装置。
【請求項2】
前記摩擦連結部は、前記摩擦力の大きさが調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の載荷装置。
【請求項3】
前記摩擦連結部は、前記受力部と前記加力部との間に軸力を付与する軸力材を有し、前記軸力材の引張力を調整することによって前記摩擦力の大きさを調整することを特徴とする請求項2に記載の載荷装置。
【請求項4】
前記摩擦力による載荷時間が調整可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の載荷装置。
【請求項5】
前記スライド可能な長さを調整することによって前記載荷時間の長さを調整することを特徴とする請求項4に記載の載荷装置。
【請求項6】
前記受力部は、前記原力部から力の付与を受ける受け部と、その受け部から延設される伝達板部とを備え、前記加力部は、前記対象物に対して力を付与する載荷部と、その載荷部から前記受け部に向けて前記伝達板部に並行に延設される加力側板部とを備え、
前記摩擦連結部は、前記伝達板部及び前記加力側板部を貫通する軸力材と、前記伝達板部と前記加力側板部との間に軸力を付与した状態で前記軸力材を定着させる定着部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の載荷装置。
【請求項7】
前記伝達板部と前記加力側板部との間に摩擦材部を介在させることを特徴とする請求項6に記載の載荷装置。
【請求項8】
前記軸力材に引張力を導入する緊張装置を配置したことを特徴とする請求項6又は7に記載の載荷装置。
【請求項9】
前記伝達板部は、前記加力側板部を構成する2つの平行板に挟まれていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の載荷装置。
【請求項10】
前記伝達板部及び前記加力側板部は、それぞれ複数の平行板によって形成されるとともに、前記伝達板部の平行板と前記加力側板部の平行板とが交互に配置されることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の載荷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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