説明

輪転印刷機の印刷装置のためのニスびき装置

【課題】ゴム胴と組み合わせて印刷装置の柔軟性をさらに改善し、輪転印刷機の導入可能性をさらに拡大するよう構成された、前述のニスびき装置を提供する。
【解決手段】印刷装置に、メータリング装置8付のニスびき装置30を、印刷装置の印刷用紙を排出する側で、ゴム胴2に押付けたり離したりできる状態で割り当て、版胴1およびゴム胴2は接触ゾーン6において分離可能にする。メータリング装置8は、ヒンジ継ぎ手12、13を備える側壁11にベアリングで取付けられ、これらヒンジ継ぎ手12、13はカプラメカニズム14、15の1つに連結し、そのカプラメカニズム14、15は、印刷装置フレーム20に固定されたヒンジ継ぎ手16、17に固定される。印刷装置フレーム20にはメータリング装置8をゴム胴2に押付けたり離したりする押付け・離し装置21が配置される。押付け・離し装置21は取外し可能な状態でメータリング装置8に連結可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による、輪転印刷機の印刷装置のためのニスびき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のニスびき装置は、特許文献1から既知である。オフセット印刷装置の使用価値を高めるために、チャンバドクターブレードおよびマス目付き着けローラで構成されるメータリング装置が、望ましくはフレームに水平に固定された複数のガイドにより、枚葉紙を処理する輪転印刷機の枚葉紙を排出する側(デリバリ側)の方から、オフセット印刷装置のゴム胴に押付けられたり離されたりする。版胴とゴム胴との接触ゾーンにおいて分離が行われるため、版胴はニスびき工程には関与しない。
【0003】
特許文献2により、枚葉紙を処理する輪転印刷機のデリバリ側の方から、傾斜した複数の直線ガイド上で最終印刷装置のゴム胴に接触できるニスびき装置が知られている。このメータリングシステムは、基本的に、ニスタンク、ニスタンク内に浸されるディップローラ、およびゴム胴に割り当てられた着けローラで構成される。
【0004】
特許文献3より、印刷装置が直列に配置された輪転印刷機が既知であり、各印刷装置には、版胴、ゴム胴、および圧胴が備わっている。これら印刷装置の少なくとも1つの印刷装置には、着けローラヘッドを備え、観覧車のゴンドラのように旋回するコーティング装置が配置されている。このコーティング装置は、版胴の上方で、マウント内で旋回可能なように印刷装置に取付けられている。このマウントの両側には旋回可能なアームがあり、このアームには、側壁のヒンジ継ぎ手を介して、前記着けローラヘッドがメータリングシステムとして接続されており、旋回可能な状態でデリバリ側の方から版胴またはゴム胴に押し付けられたり離されたりする。この着けローラヘッドは、チャンバドクターブレードおよび着けローラを備えており、これらを介して版胴またはゴム胴にインキまたはコーティング液が供給される。アームには、それぞれアクチュエータが配置されており、運転ポジションにあるときは、着けローラヘッドのロックとして機能する。
【0005】
特許文献4より、圧胴、ゴム胴、および版胴(インキ・湿し水装置が割り当てられている)を備え、選択的に使用できる2つのコーティング装置を備えた印刷装置が既知である。このうち、一方のコーティング装置は、印刷用紙の搬送方向において印刷装置の前方で版胴に押し付けられたり離されたりできる。もう一方のコーティング装置は、印刷用紙の搬送方向において印刷装置の後方でゴム胴に押し付けることができ、持ち上げ装置によりこれから離されることができる。
【特許文献1】独国特許出願公開第19729985号明細書
【特許文献2】米国特許第4617865号明細書
【特許文献3】欧州特許第0741025号明細書
【特許文献4】米国特許第5107790号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ゴム胴と組み合わせることにより、少なくとも1つの印刷装置の柔軟性をさらに改善し、輪転印刷機の導入可能性をさらに広範囲に広げるよう構成された、前記のようなニスびき装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の構成の特徴により解決できる。発展形は下位請求項に記載されている。
【0008】
本発明の第1の長所は、輪転印刷機の少なくとも1つの印刷装置、望ましくはオフセット印刷装置またはフレキソ印刷装置にニスびき装置が配置されていること、および、この印刷装置内において印刷用紙に印刷するか、またはニスびき装置とゴム胴とを組み合わせてニスびき(全面ニスびきまたはスポットニスびき)を行うかを選択できることである。必要であれば、輪転印刷機の各印刷装置にこのようなニスびき装置を装備できる。したがって、このニスびき装置は、最終印刷装置のみに配置されると限定されるわけではない。このような選択可能性があることにより、印刷機のこのような印刷装置の少なくとも1つの柔軟性を高めることができ、ひいては、特に、塗工印刷注文の割合が低い印刷所にとってローコストの解決策となる。
【0009】
しかし、このような印刷機は、本発明のニスびき装置を少なくとも1つ備える印刷装置に限定されるわけではない。むしろ、このような印刷装置には、印刷用紙搬送方向において後方に、独立した、望ましくはモジュール式の少なくとも1つのニスびきユニットを配置できる。これらの印刷装置またはニスびきユニットには、必要に応じて乾燥装置を割り当てたり後置したりできる。望ましい発展形においては、印刷用紙の搬送方向に、印刷用紙の第1面のカラー印刷用の複数の印刷装置が、好適には少なくとも1つの本発明のニスびき装置を備えた状態で配置可能であり、望ましくはその後に、少なくとも1つの乾燥装置が配置され、必要であればその後に、独立した、好適にはモジュール式のニスびきユニットが配置され、その後に方向転換装置が続き、その後に好適には少なくとも1つの本発明のニスびき装置および望ましくは少なくとも1つの後置された乾燥装置を備えた、印刷用紙第2面のカラー印刷用印刷装置が続く。必要であればこの乾燥装置の後方には、独立した、好適にはモジュール式のニスびきユニットが配置される。この独立したニスびきユニットの後方にはそれぞれ、もう1つの乾燥装置を配置することができる。
【0010】
第2の長所としては、インキの代わりに油性印刷ニス、特に保護、光沢、マット、効果ニスを含むあらゆる種類のニス、および、必要であればフレキソインキを、ニスびき装置により印刷装置内に組み込めることが挙げられる。このとき、ニスはゴム胴により、全面または部分的(スポットニスびき)に、または予備ニスびきのために、印刷用紙上に塗布される。このとき、ゴム胴上には、表面に弾力のある平版印刷版、望ましくは圧縮性ゴムブランケット(切り落としをしたゴムブランケットを含む)または弾力のある凸版印刷版が取付けられる。望ましい構成では、このゴム胴には、ゴムブランケットのテンションシャフトまたはその他のテンション装置に加えて、フォーマットに合わせた下敷き(フォーマットシート)をつかむためのクランピングレールがある。この下敷きは、あらかじめ取付けた状態でクランピングレールにセットできる。このとき、ゴム胴は、印刷またはニスびきゾーンにおいて常に、印刷用紙を搬送する圧胴に隣接するように配置される。
【0011】
第3の長所は、このニスびき装置が、印刷装置の印刷用紙を排出する側(デリバリ側)で印刷装置のゴム胴に接触できるところにある。そのため、印刷装置の印刷用紙を給紙する側(フィーダ側)でゴム胴に押し付けられたり離れたりするゴムブランケット洗浄装置が、その取付け位置にとどまっていられるため、このゴム胴(またはその上に取付けられたゴムブランケットまたは柔軟な凸版印刷版)は、ニスびき工程直後に洗浄されることとなり、新たな交換時間が発生することはない。発展形においては、このゴムブランケット洗浄装置は、ゴム胴さらに圧胴も組み合わせて洗浄できる。
【0012】
第4の長所は、メータリング装置も含めたニスびき装置を、カプラメカニズムにより旋回可能な状態でゴム胴に押し付けたり離したりできるところにある。離れた状態では、印刷用紙を排紙する側(デリバリ側)から、ゴム胴または隣接する圧胴に簡単にアクセスすることができる。このとき、ニスびき装置、特にメータリング装置は、さまざまな位置(作動ポジション、サービスポジション、停止ポジション)にしておくことができる。このとき、カプラメカニズムは、印刷装置(印刷用紙を排出する側)の側方の、フレームに固定された2つのヒンジ継ぎ手に連結している。フレームに固定されたこの2つのヒンジ継ぎ手は望ましくは、版胴またはインキ着けローラの高さ付近において、同じ高さで印刷装置の側方に配置されている。望ましい構成においては、輪転印刷機の各印刷装置には、印刷装置の側方に、準備として、フレームに固定されたこれら2つのヒンジ継ぎ手またはこれらヒンジ継ぎ手を支持する1つの留め具を固定するための取付け穴が(両側に)設けられている。このヒンジ継ぎ手は、たとえばすばやく取外せる結合部品、たとえば、ストップボルトまたはスナップ式結合部品で構成することができ、少なくとも1つのニスびき装置、特にカプラメカニズムをメータリング装置と一緒に、必要に応じてあらゆる任意の印刷装置に選択的に取付けることができる。必要であれば複数のニスびき装置を輪転印刷機の1つの印刷装置にセットすることも、またはこれらを複数の印刷装置の間で付け替えることもできる。
【0013】
印刷装置の印刷用紙を排出する印刷装置側に、ニスびき装置をガイドするためのカプラメカニズムを配置することにより、ニスびき装置と後置された印刷装置または後置されたユニットとの間には、印刷工またはオペレータにとって十分なスペースが生まれる。ニスびき装置をこのように配置することにより、ヘッドまたは各印刷装置の上部に自由にアクセスできるため、印刷工またはオペレータは、たとえばインキダクト、インキダクトローラまたはインキメータリングシステムなどにアクセスしやすくなる。さらに、事故防止という観点からも、本発明のニスびき装置の構成は、印刷工またはオペレータが揺れる重量物の下で止まらなくてすむため特に長所がある。
【0014】
本発明のもう1つの長所は、ニスびき装置を備える印刷装置に、1つまたは複数のニスびきユニットを、印刷用紙の搬送方向において前方または後方に配置できることである。そのため、たとえば本発明のニスびき装置により、印刷用紙に対して、1つの印刷装置で予備ニスびき(全面または部分的ニスびき)を行い、その後(直接的または間接的に)、印刷用紙の搬送方向の後方に配置されたニスびきユニットで第2ニスびき(全面ニスびきまたはスポットニスびき)を行うことができる。このとき、同じニスまたは異なるニスを使用することができ、印刷用紙の光沢の度合いやマット効果および可塑効果を変えることができる。代替的に、印刷用紙に対して、追加的ニスびきを、たとえばもう1つのニスびきユニット内で行うこと、および/あるいは、もう1つの本発明のもう1つのニスびき装置により印刷装置において行うことができる。
【0015】
また、メータリング装置、特に着けローラにより、印刷装置の印刷用紙を排出する側で、ニスをゴム胴に供給するのも長所である。それにより、ゴム胴の回転方向(図1から3の矢印参照)において、ニスが、ゴム胴の表面またはゴムブランケット上に均一につけられ、その後はじめて印刷/ニスびきゾーン内で印刷用紙へ転移される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について1つの実施例をもとに詳しく説明する。
【0017】
輪転印刷機、特に枚葉紙オフセット印刷機において、多色印刷のための複数の印刷装置が直列に配置されている。少なくとも1つの印刷装置に本発明の構成のニスびき装置30が配置されている。1つの印刷装置は基本的に、印刷用紙をガイドする圧胴3、本例においては枚葉紙ガイド胴と、印刷/ニスびきゾーン7において圧胴3に接触するゴム胴2と、接触ゾーン6においてゴム胴2に接触する版胴1とから構成される。版胴1には、インキ装置4および必要であれば版胴1の回転方向においてインキ装置4の前に湿し装置5が、既知の方法で割り当てられている。ゴム胴2には、圧縮性ゴムブランケット(切り落としをしたゴムブランケットも含む)または柔軟な凸版印刷版が取付けられている。ゴム胴2には、ゴムブランケット洗浄装置10が、押し付けられたり離されたりする状態で、望ましくは印刷装置の印刷用紙を供給する側に割り当てられている。望ましくは、ニスびき装置30がゴム胴2から離れると、ゴム胴2は押付けられたゴムブランケット洗浄装置10により洗浄される。
【0018】
印刷装置の印刷用紙を排出する側の搬送方向26において、本発明に基づいて構成された、メータリング装置8付きのニスびき装置30が配置されている。メータリング装置8には少なくとも1つの着けローラ8.1があり、これは、望ましくはマス目をつけた着けローラ8.1としてチャンバドクターブレード8.2と組み合わせて用いられている。着けローラ8.1の回転方向において、チャンバドクターブレード8.2には、正向に押し付けられた閉じブレードおよび負向に押し付けられた作業ブレードがある。これらの作業ブレードおよび閉じブレードは、望ましくは偏心軸を持つドクターブレード高速交換ユニット内に取外し可能な状態で固定して配置されていることが望ましい。
このメータリング装置8は代替的に、着けローラ8.1を含み、ニスびき媒質を受け取るローラギャップを備える2ローラシステムとして、または、着けローラ8.1を含み、ニスびき媒質で満たされたタンクにひたされるディップローラシステムとして実施できる。
【0019】
メータリング装置8は両側で、2つのヒンジ継ぎ手12、13つまり第1ヒンジ継ぎ手12および第2ヒンジ継ぎ手13を備えた、ニスびき装置30の側壁11に、ベアリングで取付けられている。これらヒンジ継ぎ手12、13は、カプラメカニズム14、15に連結されており、これらカプラメカニズム14、15は、印刷装置フレーム20に固定された(フレームに固定された)2つのヒンジ継ぎ手16、17に連結されている。これらフレームに固定された第1および第2ヒンジ継ぎ手16、17は、印刷装置フレーム20の、印刷用紙を搬送方向26に排出する側に配置されている。この印刷装置フレーム20には押付け・離し装置21が配置されているが、これは、メータリング装置8をゴム胴2に押付けたり離したりする。望ましくはメータリング装置8、特に着けローラ8.1は、ほぼ線形の力によりゴム胴2に押付けられることができる。そのために、押付け・離し装置21は、作業ポジションにおいて取外し可能な状態でメータリング装置8に連結することができる。
【0020】
ニスびき装置30の側壁11には、2つのヒンジ継ぎ手12、13があり、第1ヒンジ継ぎ手12の端には、カプラメカニズム14、15の第1カプラ14が連結されているが、この第1カプラの反対側の端は、フレームに固定された第1ヒンジ継ぎ手16(機械フレーム20)に連結されている。第2ヒンジ継ぎ手13の端には、カプラメカニズム14、15の第2カプラ15が連結されており、この第2カプラの反対側の端は、フレーム(機械フレーム20)に固定された第2ヒンジ継ぎ手17に連結されている。必要であれば、側壁11および印刷装置フレーム20に、支持用または旋回動作実行用の作動装置18が連結されている。この作動装置18は望ましくは、たとえば両側に取付けられたガススプリングなど蓄エネルギー装置である。
1つの構成においては、この作動装置18は、側壁11またはヒンジ継ぎ手12、13のいずれか一方、および、フレームに固定された第3ヒンジ継ぎ手19に連結されている。フレームに固定された第3ヒンジ継ぎ手19は、フレームに固定された第1および第2のヒンジ継ぎ手16、17と同様、印刷装置フレーム20に取付けられている。
図1から3では、作動装置18は、第2ヒンジ継ぎ手13、および、フレームに固定された第3ヒンジ継ぎ手19に取付けられている。作動装置18は代替的に、フレームに固定されたヒンジ継ぎ手16、17のいずれか一方(第1または第2のヒンジ継ぎ手)に、および、たとえば別のもう1つのヒンジ継ぎ手で側壁11に連結することができる。作動装置18は、ニスびき装置30の旋回動作開始時に十分なモーメントが得られるように配置する必要がある。
【0021】
メータリング装置8の着けローラ8.1、好適にはマス目をつけた着けローラは、望ましくは独立した駆動装置9により駆動される。このために望ましくは電気、代替的には圧縮空気または油圧で駆動される駆動モータが、駆動技術的カプリングにより着けローラ8.1に連結されている。この駆動技術的カプリングは、たとえば歯車駆動または牽引駆動として構成することもできる。しかしながら、着けローラ8.1の駆動装置は、独立した駆動装置9に限定されるわけではなく、むしろメータリング装置8の着けローラ8.1(作業ポジションで連結される)は、印刷装置の駆動装置、たとえばゴム胴駆動装置、(ワンウェイ)クラッチ、補助駆動装置などにより駆動することができる。このときゴム胴2は、着けローラ8.1と駆動技術的に連結される歯車を備えることができる。
【0022】
望ましい構成においては、ゴム胴2の軸に対する着けローラ8.1の軸の相対的位置は、軸平行になるようにまたはこれを横切るように配置されている。そのために、フレームに固定されたヒンジ継ぎ手16、17の少なくとも1つに、調整可能な偏心29が備わっている。この偏心のおかげで、ゴム胴2に対して着けローラ8.1は斜めの位置(軸が交差するような配置)にくることができる。この構成は、ローラの均一な押し付けを実現する際に長所となる。発生する着けローラ8.1の曲がりは、フォーマット幅に応じて補償することができる。代替的に、着けローラ8.1とゴム胴2の軸とが軸平行になるよう配置することも可能である。
【0023】
もっとも単純な構成においては、押付け・離し装置21には、印刷装置フレームに連結された作業シリンダ22、たとえばエア・シリンダが備わっており、このシリンダは、取外し可能なようにメータリング装置に連結できる。本例においては、押付け・離し装置21には、印刷装置フレーム20に配置された作業シリンダ22と、そこに連結された連結リンク付クランク23とが備わっている。このとき、連結リンク付クランク23の端は、印刷装置フレーム20のヒンジ継ぎ手24(フレーム固定)に連結されており、連結リンク付クランク23のもう一方の端は、取外し可能な状態でメータリング装置8に接続するための連結ポイント25となっている。この連結ポイント25は、ニスびき装置30が作業ポジションにあるときに、ゴム胴2を押付けたり離したりするために取外し可能な状態でメータリング装置8に接続される。
【0024】
望ましい構成においては、メータリング装置8には、着けローラ8.1をゴム胴2に押付けるための、または、着けローラ8.1の筋の幅をゴム胴2について調整するための調整装置28が備わっている。この調整装置28には、たとえば手動またはモータで回転動作を起こして調整するための自由端を1つ設けることができる。調整装置28は(両側で)、着けローラ8.1のベアリングに取付けることができ、偏心的に構成されたそのベアリング機能に関わることができる。ゴム胴2に対する着けローラ8.1の配置を調整するために、各偏心ベアリングは、調整装置28を使ったひねりおよびセルフロックにより調整できる。望ましくは、好適にはマス目をつけた着けローラ8.1は、作業ポジションにあるときにゴム胴2のベアラリング(AおよびB側)に接している。
【0025】
ニスあふれを防止するために、メータリング装置8には、排出管つきのキャッチ・バン27が割り当てられている。チャンバドクターブレード8.2には、ニス供給管を備える少なくとも1つのニス供給装置および容器へのリターンラインが備わっている。ニス供給のために、少なくとも1つの供給ポンプが1つの供給管に連結されている。ニスのリターンは、重力または容器内の吸引ポンプにより行われる。ニス供給(ニス循環システム)は、望ましくはニス調整装置に連結されている。さらに、ニス循環システムは、ニスが付着した部品を洗浄するために自動洗浄装置に連結されている。望ましい構成においては、メータリング装置8、特に着けローラ8.1には、液状の潤滑剤供給装置が割り当てられている。このような供給装置は独国特許出願公開第10136028号明細書より既知である。
【0026】
本発明のニスびき装置30は、輪転印刷機の一般的な機械構成で実現可能である。ある1つの構成においては、輪転印刷機には、印刷用紙の第1面の印刷のための複数の印刷装置が備わっており、これら印刷装置の少なくとも1つにニスびき装置30を取外し可能な状態で配置できる。必要であれば、ニスびき装置30は、印刷用紙の搬送方向26において乾燥装置の後方に配置される。この乾燥装置は、印刷用紙をガイドする圧胴3の後方および/あるいは搬送方向26において各印刷装置の後方に配置される。
もう1つの構成においては、輪転印刷機には印刷用紙の第1面を印刷するための複数の印刷装置があり、これら印刷装置の少なくとも1つにニスびき装置30を配置できる。このニスびき装置30は、印刷用紙の搬送方向26において望ましくは乾燥装置の後方に配置される。その後に、枚葉紙形態の印刷用紙のための方向転換装置が、その後には印刷用紙の第2面を印刷するための複数の印刷装置が配置されている。望ましくは、印刷用紙の第2面を印刷するための印刷装置の少なくとも1つにニスびき装置30を配置できる。必要であれば、ニスびき装置30は、印刷用紙の搬送方向26において乾燥装置の後方に配置される。
【0027】
作動方法は、以下のとおりである。必要であれば、ゴム胴2は、押付けられたゴムブランケット洗浄装置10により洗浄できる。
ニスびきする際には、印刷運転に必要なゴム胴2と版胴1との接触は解除される。これは、たとえば、マウント内でゴム胴および/あるいは版胴1を離すことにより行われる。代替的には、版胴1上の版(刷版)を、望ましくは版交換装置により取外して、それによりゴム胴2と版胴1との接触を解除する。ゴム胴2と版胴1とにベアラリングが備わっている場合は、ゴム胴2と版胴1との間の動力接続は(版を取外しても)保持される。
さらに、ゴムブランケット洗浄装置10は、ゴム胴2から離される。ゴム胴2の範囲の機械保護部を外し、次にニスびき運転を行う。
【0028】
図1では、本発明のニスびき装置30がゴム胴2に接触している作業ポジションを示している。メータリング装置8、特にチャンバドクターブレード8.2にニスが供給され、ニスは、着けローラ8.1を介してゴム胴2(ゴムブランケットまたは柔軟な凸版印刷版を備える)に転移され、そこから印刷/ニスびきゾーン7において、圧胴3上でガイドされる印刷用紙に着けられる。そのために、マス目をつけた着けローラ8.1は、頻度が制御された(機械の速度の変更があった場合に速度が更新される)、独立した駆動装置9により回転する。必要であれば、この着けローラ8.1の回転方向を交互に変えて運転することもできる。
駆動装置9は、望ましくは機械制御装置および/あるいはコントロールステーションと回路技術的に連結されている。押付け・離し装置21が作動すると、メータリング装置8に連結される。着けローラ8.1は、特にゴム胴2のギャップ通過の際に、角度に応じて押付けられたり離されたりできる。
【0029】
ニスびき運転が終了すると、押付け・離し装置21の連結が解除され、メータリング装置8は、作動装置18により、またはこれに支援されて、フレームに固定されたヒンジ継ぎ手16、17を中心として旋回してサービスポジションに移行する(図2)。このポジションでは、チャンバドクターブレード8.2または着けローラ8.1の取付け/取外しが行える。さらに、メータリング装置8からニスを排出させたりまたはメータリング装置8を洗浄剤で洗浄して、第2のニスを供給することもできる。このとき、着けローラ8.1は、引き続き駆動装置9により回転駆動することができる。これは、中断時(印刷中断時)または着けローラ8.1を離したときにも行えるため、処理する媒質(ニス)が硬化し始めるのを防げる。
【0030】
機械制御装置および/あるいはコントロールステーションに連結されたニスびき装置30は、外部操作パネルを介して、または輪転印刷機に内蔵された操作モニタを介して各印刷装置をコントロールステーションで制御できる。ニスびき装置30をセットするために、ゴム胴2を望ましくは角度に応じてニスびき装置30に対して位置決めし、ニスびき装置30を押付けたり離したりできる。
【0031】
ゴム胴2は、ゴムブランケット洗浄装置10および/あるいは手動で洗浄できる。ゴムブランケット洗浄装置10を使うと、ゴム胴2を介して圧胴3も洗浄できる。また、機械保護部が開いているため、ゴム胴2での保守作業、たとえば胴の接触幅の設定などが行える。安全上の理由から、ニスびき装置30は、望ましくはこのサービスポジションにおいて取外し可能な状態でロックできる。
【0032】
保守作業が終了して、ニスびき装置30がもう必要ない場合は、フレームに固定されたヒンジ継ぎ手16、17を中心とする旋回がもう一度行われて、メータリング装置8が停止ポジションに移行する(図3)。
安全上の理由から、ニスびき装置30は、望ましくはこのサービスポジションでも取外し可能な状態でロックできる。このポジションでは、印刷機内のスペースを節約した配置が可能である。必要であれば、旋回させて短期的に再び図1の作業ポジションにすることができる。
ニスびき装置30がたとえば長時間必要とされない場合などは、この装置をヒンジ継ぎ手16、17のホルダから取外し可能な状態で外せるか、または、取外し可能な状態で両側で印刷装置に取付けられた、ヒンジ継ぎ手16、17を支えているホルダ全体を取外すことができる。必要であれば、移動ツールワゴンまたは一時保管場所を、たとえば通路またはデリバリ付近の輪転印刷機周りに保管しておくことができる。そこでは、たとえば洗浄作業などの保守作業を行える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】作業ポジションにあるニスびき装置を示す図である。
【図2】サービスポジションにあるニスびき装置を示す図である。
【図3】停止ポジションにあるニスびき装置を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 版胴
2 ゴム胴
3 圧胴
4 インキ装置
5 湿し装置
6 接触ゾーン
7 印刷/ニスびきゾーン
8 メータリング装置
8.1 着けローラ
8.2 チャンバドクターブレード
9 独立した駆動装置
10 ゴムブランケット洗浄装置
11 側壁
12 第1ヒンジ継ぎ手
13 第2ヒンジ継ぎ手
14 第1カプラ
15 第2カプラ
16 フレームに固定された第1ヒンジ継ぎ手
17 フレームに固定された第2ヒンジ継ぎ手
18 作動装置
19 フレームに固定された第3ヒンジ継ぎ手
20 印刷装置フレーム
21 押付け・離し装置
22 作業シリンダ
23 連結リンク付クランク
24 ヒンジ継ぎ手
25 連結ポイント
26 搬送方向
27 キャッチ・バン
28 調整装置
29 偏心
30 ニスびき装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの圧胴、1つのゴム胴、および1つの版胴を備えた輪転印刷機の印刷装置のためのニスびき装置であって、ニスびき装置を備えた、駆動可能な着けローラを含むメータリング装置が、印刷装置の印刷用紙を排出する側でゴム胴に押付けられたり離されたりするように割り当てられており、この版胴とこのゴム胴とが接触ゾーンにおいて分離可能であり、
前記メータリング装置(8)が、ヒンジ継ぎ手(12、13)を備えた側壁(11)にベアリングで取付けられ、
前記ヒンジ継ぎ手(12、13)が、カプラメカニズム(14、15)に連結され、そして、このカプラメカニズム(14、15)が、印刷用紙を排出する側で印刷装置フレーム(20)に固定されたヒンジ継ぎ手(16、17)に連結され、
印刷装置フレーム(20)に配置された押付け・離し装置(21)が、メータリング装置(8)をゴム胴(2)に押付けたり離したりするために、取外し可能な状態でメータリング装置(8)に連結可能であることを特徴とするニスびき装置。
【請求項2】
請求項1に記載のニスびき装置において、
側壁(11)に2つのヒンジ継ぎ手(12、13)が備わっており、第1ヒンジ継ぎ手(12)の端に第1カプラ(14)が連結され、この第1カプラのもう一方の端は、フレームに固定された第1ヒンジ継ぎ手(16)に連結され、
第2ヒンジ継ぎ手(13)には第2カプラ(15)が連結され、この第2カプラのもう一方の端は、フレームに固定された第2ヒンジ継ぎ手(17)に連結されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項3】
請求項2に記載のニスびき装置において、
側壁(11)および印刷装置フレーム(20)に1つの作動装置(18)が連結されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項4】
請求項3に記載のニスびき装置において、
作動装置(18)が蓄エネルギー装置であることを特徴とするニスびき装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のニスびき装置において、
作動装置(18)が、側壁(11)、およびフレームに固定された第3ヒンジ継ぎ手(19)に連結されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項6】
請求項1に記載のニスびき装置において、
メータリング装置(8)の着けローラ(8.1)が、独立した駆動装置(9)により駆動可能であることを特徴とするニスびき装置。
【請求項7】
請求項1に記載のニスびき装置において、
メータリング装置(8)の着けローラ(8.1)が、印刷装置の駆動装置、カプリング、および補助駆動装置により駆動可能であることを特徴とするニスびき装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載のニスびき装置において、
ゴム胴(2)軸に対する着けローラ(8.1)軸の相対位置が、これを横切るように配置されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項9】
請求項1に記載のニスびき装置において、
メータリング装置(8)に、ゴム胴(2)に対する着けローラ(8.1)の押付けおよび/あるいは厚み均一化のための調整装置(28)が備わっていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項10】
請求項1に記載のニスびき装置において、
押付け・離し装置(21)が、印刷装置フレーム(20)に配置された作業シリンダ(22)と、そこに連結された連結リンク付クランク(23)とを備え、この連結リンク付クランク(23)の端は、印刷装置フレーム(20)のヒンジ継ぎ手(24)に連結され、もう一方の端は、メータリング装置(8)に取外し可能な状態で連結するための連結ポイント(25)を構成していることを特徴とするニスびき装置。
【請求項11】
少なくとも請求項1に記載のニスびき装置において、
ゴムブランケット洗浄装置(10)が、印刷用紙を供給する側においてゴム胴(2)に押付けられたり離されたりできるように割り当てられていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項12】
請求項11に記載のニスびき装置において、
ニスびき装置(30)がゴム胴(2)から離れており、このゴム胴(2)が、押付けられたゴムブランケット洗浄装置(10)により洗浄可能であることを特徴とするニスびき装置。
【請求項13】
少なくとも請求項1に記載のニスびき装置において、
輪転印刷機に、印刷用紙の第1面を印刷するための複数の印刷装置が備わっており、これら印刷装置の少なくとも1つにニスびき装置(30)が配置されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項14】
少なくとも請求項1および13に記載のニスびき装置において、
印刷用紙の搬送方向においてニスびき装置(30)の後に乾燥装置が配置されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項15】
少なくとも請求項1、13および14に記載のニスびき装置において、
輪転印刷機に、印刷用紙の第1面を印刷するための複数の印刷装置が備わっており、これら印刷装置の少なくとも1つにニスびき装置(30)が配置され、
印刷用紙の搬送方向においてこのニスびき装置(30)の後に乾燥装置が配置され、
その後に方向転換装置が、さらにその後に印刷用紙の第2面を印刷するための複数の印刷装置が配置されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項16】
請求項15に記載のニスびき装置において、
印刷用紙の第2面を印刷するための印刷装置の少なくとも1つにニスびき装置(30)が配置されていることを特徴とするニスびき装置。
【請求項17】
請求項16に記載のニスびき装置において、
印刷用紙の搬送方向においてニスびき装置の後ろに乾燥装置が配置されていることを特徴とするニスびき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−240300(P2006−240300A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56516(P2006−56516)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(599011584)エム・アー・エヌ・ローラント・ドルックマシーネン・アクチエンゲゼルシャフト (257)
【Fターム(参考)】