輸液ポンプ
【課題】携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、医療従事者や患者が薬液の注入動作を行うことができないようにすることができる輸液ポンプを提供する。
【解決手段】ケース11と、このケース11に配置されて薬液を送出するための輸液送り部31を有する輸液ポンプ10であって、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、破損可能な破損対象部分であるコイル501が予め基板470に設定されている。
【解決手段】ケース11と、このケース11に配置されて薬液を送出するための輸液送り部31を有する輸液ポンプ10であって、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、破損可能な破損対象部分であるコイル501が予め基板470に設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に薬液を注入するための携帯型の輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に薬液を投入するために使用する医療機器としては、例えば輸液ポンプが知られており、この輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入するのに広く使用されている。このような輸液ポンプのうち、例えば、医療機関だけでなく、一般の家庭において在宅でも使用できるようにコンパクトに形成した携帯型の輸液ポンプが知られている(特許文献1参照)。特許文献1の携帯型の輸液ポンプは、外部から導入される薬液を通す可撓性の輸液チューブを着脱式のカセットに導く構成とされている。
【0003】
具体的には、該着脱式のカセットのケース内に可撓性の輸液チューブ(以下、「チューブ」と言う。)を導入し、このケースから一部露出させたチューブに対して、回転ローラを押しつけることにより、輸液チューブに蠕動様運動を与えて、輸液チューブから薬液を所定の流速(mL/h)で注液を行なうようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−506355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した携帯型の輸液ポンプの使用者の多くは、医療従事者や高齢者の患者である。携帯型の輸液ポンプは片手で持てるほどのサイズであるので携帯型の輸液ポンプは小さく、医療従事者や患者が輸液ポンプを手に持った状態から例えば床面に落下させてしまうおそれがある。このように、医療従事者や患者が携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後に、携帯型の輸液ポンプが故障しているのにもかかわらず、医療従事者や患者が、携帯型の輸液ポンプの故障に気付かずに携帯型の輸液ポンプを再度手で持って、故障したままの状態の携帯型の輸液ポンプを使い続けてしまうおそれがある。
このため、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプはこれ以上使用できないことを認知させて、医療従事者や患者が薬液の注入を続けて行うことができないようにしたいという要望がある。
そこで、本発明は、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、医療従事者や患者が薬液の注入動作を行うことができないようにすることができる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の輸液ポンプは、ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部を有する輸液ポンプであって、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部が、前記衝撃の衝撃履歴部として、予め設定されていることを特徴とする。
上記構成によれば、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを前記衝撃履歴部の存在により認知させて、医療従事者や患者が薬液の注入動作を行うことができないようにすることができる。すなわち、輸液ポンプには破損対象部が形成されるので、医療従事者や患者は、この破損対象部を認知することで、医療従事者や患者が薬液の注入動作を続けて行うことが無くなる。
【0007】
好ましくは、前記破損対象部は、回路基板に配置され前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記回路基板から脱落する電子部品であり、前記破損対象部は、脱落した前記電子部品を目視可能に留置する落下観察窓を有することを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、落下観察窓に保持された脱落した電子部品を目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
好ましくは、前記破損対象部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると電極から脱落する電源供給用のコイン電池であり、前記コイン電池が前記電極から外れたことを検出する制御部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、制御部はコイン電池が外れたことを検出できるので、制御部は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを、医療従事者や患者に認知させることができる。
【0008】
好ましくは、前記輸液送り部にカセットを装着するためのカバーを有し、前記カバーは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する薄肉部分を有し、前記薄肉部分が前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、カバーの破損した肉薄部分を目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
好ましくは、電源供給用の電池を受けている電極を有し、前記電極は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると脱落する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、電極が落下することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
【0009】
好ましくは、前記輸液送り部にカセットを装着するためにヒンジ部を用いて前記ケースに対して開閉可能に保持されているカバーを有し、前記ヒンジ部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、カバーの破損したヒンジ部を目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
好ましくは、前記ケースには、動作の開始と停止をさせる開始停止スイッチを有するスイッチカバー部材が配置され、前記スイッチカバー部材は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記本体から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、スイッチカバー部材が脱落したことを目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
【0010】
好ましくは、前記輸液送り部を駆動するモータを有し、前記モータは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記輸液送り部から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、モータが脱落することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の輸液ポンプの第1実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いた様子を示す概略正面図である。
【図3】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いて、カセットを収容する様子を示す概略斜視図である。
【図4】輸液ポンプの電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】本体の前筐体を後筐体から取り外して、前筐体の内部と後筐体の内部を露出させた状態を示す斜視図である。
【図6】前筐体と後筐体と、前筐体から取り外された駆動操作部を示す斜視図である。
【図7】破損対象部の落下観察窓の構成例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態である輸液ポンプの電気的な構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態を示す図である。
【図12】本発明の第6実施形態を示す図である。
【図13】本発明の第7実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
<第1実施形態>
図1は、本発明の医療機器である携帯型の輸液ポンプのカセット収納部のカバー(透明)を閉じた概略斜視図であり、図2はそのカセット収納部のカバーを開いた状態を示す概略正面図、図3は輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開き、カセットを収納した状態を示す概略斜視図である。
図1から図3に示す輸液ポンプ10は、例えば、略矩形の本体(筐体)11を有している。本体11は、前筐体49と後筐体44を有する。本体11は、輸液ポンプ10の構成物を収容するためのケースであり、好ましくは、耐薬品性、耐衝撃性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばハイインパクトスチロールやABS樹脂で形成されている。
【0014】
図1に示すように、本体11は、本体11の上面側のほぼ半分程度の面積を閉めるように、開閉可能な透明のプラスチック製のカバー12を有しており、該カバー12はヒンジ部13を中心として回動可能に開閉できる。カバー12は、図示しない付勢手段、例えば、ヒンジ部13の軸周りにトーションコイル等を配設することにより、図2と図3に示すように、常時開方向に付勢されている。カバー12を閉じて押し込むことにより、カバー12は本体11側の図示しないラッチ等に係合されるようになっており、本体11の側部外縁に突出する左右位置の解除ボタン16を、矢印方向に手指にて押し込むことにより、該ラッチ等が解除されてカバー12を開けることができる。
【0015】
図1の前筐体49における符号17は、開始停止スイッチであり、この開始停止スイッチ17は、図1において横方向に「停止―開始」のスライド操作をすることができる。
図1に示すように、この開始停止スイッチ17と左右の解除ボタン16は、スイッチカバー部材1に設定されている。このスイッチカバー部材1は、長方形の部材であり、前筐体49の中央位置において、X方向に沿って組み付けられている。スイッチカバー部材1は、閉じた状態のカバー12の自由端部2に沿って配置されている。輸液ポンプ10が、例えば床面に落下して衝撃を受けると、このスイッチカバー部材1が前筐体49から外れるようになっているが、開始停止スイッチ17と解除ボタン16は、このスイッチカバー部材1とともに外れるようになっている。
【0016】
図1に示す符号18は液晶表示装置等で形成した表示部であり、運転状態や報知情報等を表示するようになっている。これらの他に、本体11は、図示しないモード選択スイッチ等を備えることができる。
前筐体49には、発光ダイオードランプのような点灯表示部LPが、表示部18の付近に配置されている。この点灯表示部LPは、例えば点滅することにより警報内容を、例えば患者あるいは周囲の家族の人に目視で報知するようになっている。
また、前筐体49の背面には、内蔵されたブザー88とスピーカ89からの音が使用者に聞き取れるように放音孔310が配置されている。ブザー88は警報内容を警報音で報知でき、スピーカ89は警報内容を鳴動することで音声で報知する機能を有する。
【0017】
図2と図3に示すように、本体11からカバー12を開くと、本体11のカセット収納部15が露出するようになっている。カセット収納部15は、本体11の厚みの約半分程度の寸法で形成された空間であり、この空間であるカセット収納部15には、図3に示すように、輸液チューブ21を引きこみかつ導出するためのカセット20を着脱可能にセットすることができる。
本体11のカセット収納部15の内側には、図1から図3には図示していないが駆動部としてのモータが配置されている。また、カセット収納部15上には、輸液送り部としてのロータユニット31と、閉塞検出部83が配置されている。このモータの出力軸からの駆動力が、ロータユニット31に対して図示しない皿歯車等を介して伝達されることにより、ロータユニット31が軸Lを中心にして回転する。
【0018】
図2に示すように、このロータユニット31の外周には、例えば、4か所以上の図示例では5つの回転ローラであるチューブ押圧部31Rが設けられており、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rが図2の矢印方向の回転することにより、図3に示すカセット20の輸液チューブ21を順次押圧して、輸液チューブ21に対して蠕動様運動を付与することができる。このロータユニット31は、外部から薬液を導入するための輸液チューブ21に対して圧接することでこの輸液チューブ21に対して蠕動様運動をさせて、薬液を送出するための輸液送り部の一例である。
なお、本発明の実施形態では、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出しているが、これに限らず、フィンガ方式で薬液を送出するようにしても良い。
【0019】
図1から図3に示す上記閉塞検出部83は、カセット20がカセット収納部15内に収納されたことを検出して、カセット20の輸液チューブ21の内部が閉塞されているか否かを検出する。この閉塞検出部83には、カセット検出用の突起部材99が設けられている。この突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力により、カセット収納部15内においてC方向に沿って突出している。しかし、図3に示すように、カセット20がカセット収納部15内に収納された状態では、突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力に抗してD方向に押されることで、図2に示すスイッチ134がオンとなり、このスイッチ134のオン信号は制御部100に通知されるようになっている。すなわち、閉塞検出部83は、輸液チューブ21内が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、輸液チューブ21内が閉塞していて、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知するものである。
【0020】
図2に示すように、カセット収納部15には、このロータユニット31の付近の上方位置に、第1のスライダ32と、該第1のスライダ32に隣接して第2のスライダ33が配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ33はそれぞれ係止片を備えており、これら係止片は、付勢手段により常時矢印C方向に付勢されている。しかも、第1のスライダ32と第2のスライダ33のそれぞれ係止片は、後述するカセット20がカセット収納部15にセットされる際に矢印D方向に移動されて、カセット20を保持するとともに、該カセット20に内蔵された可撓性の輸液チューブ21をロータユニット31に対して押圧することができる。図2において、第2のスライダ33の右方の下側には、カセット20をカセット収納部15に配置する際の目印となる傾斜部34aを有するマーク34と、該マーク34の下方にはカセット20を装着する際のストッパとして機能する突起部35が設けられている。
【0021】
図3を参照して、カセット20の構造例を説明する。
カセット20は、合成樹脂で形成された図示のような横長のケース体である。輸液チューブ21の一部分は、カセット20内に収容されており、輸液チューブ21は該ケース体の外縁に沿って矢印F方向から導入され、カセット20の右端部でほぼU字状に曲折され、そして矢印E方向に導出されている可撓性チューブ(輸液チューブともいう。)である。該輸液チューブ21に対しては、薬液が外部から矢印F方向に導入され、矢印E方向に導出され、輸液チューブ21の該矢印E方向の延長には留置針などが接続されており、輸液チューブ21内の薬液がこの留置針を通じて患者に対して輸液される。
【0022】
図3に示すように、輸液チューブ21内の輸液の移動を目視できるように、カバー12とカセット20は好ましくは透明部材で作られている。なお、カバー12には切欠き部19が設けられており、該切欠き部19から輸液チューブ21がカバー12の外部に導出されるようになっている。
また、図3に示すように、カセット20の下部の一端寄りには露出部24が形成されている。この露出部24は、カセット20の一部を切欠くことで形成されており、輸液チューブ21の一部を外部に露出させている。この輸液チューブ21の露出部分には、ロータユニット31のチューブ押圧部31R(図2を参照)が押圧されることで、図3に示すように蠕動様運動が輸液チューブ21に付与されるようになっている。
【0023】
図3のカセット20のほぼ中央部には、横に並んで2つの係合用スリット22,23が形成されており、これらスリット22,23はカセット20のケース体を貫通している。
スリット22,23には、図2で説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33がそれぞれ入り込むようになっている。そして、図3に示すヒンジ部13を中心として、カバー12を矢印A方向に閉じると、ヒンジ部13よりも該カバー12の内側に設けられた当接部14がカセット20を押すことにより、該カセット20がカセット収納部15において矢印B方向に移動される。
このカセット20の矢印B方向への移動により、各係合用スリット22,23に入り込んだ第1のスライダ32と第2のスライダ33の付勢方向(図2の矢印C方向)に働く付勢力に抗して、第1のスライダ32と第2のスライダ33を矢印D方向に移動させることができる。これにより、カセット20は、カバー12により閉じた状態においては、カバー12の当接部14と第1のスライダ32と第2のスライダ33により挟まれて固定されるとともに、輸液チューブ21の露出部分はロータユニット31側に押圧される。
【0024】
図3に示すカセット20には、縦スリット25a及び横スリット25bを有する逆L字状の規制用スリット25が形成されている。縦スリット25aにはストッパ26が収容されており、そのストッパ26の先端の当接部は付勢手段26aにより矢印C方向に常時押圧されており、カセット20内の図示しない箇所で、輸液チューブ21の一部分を押し潰して輸液チューブ21内の輸液の流れを止めている。横スリット25bには、スライダ29が配置されている。
【0025】
図3に示すように、本体11のカセット収納部15内にカセット20を収納してカバー12を閉じると、カセット20の横スリット25bのスライダ29が、ストッパ26を付勢手段26aの力に抗して矢印D方向に押し込むことにより、ストッパ26の先端部は輸液チューブ21から離れる。これにより、輸液チューブ21は開放されて輸液チューブ21内の輸液の流れ止めは解除でき、輸液チューブ21には輸液を導入でき、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rの動きにより患者に対して輸液チューブ21を通じて薬液を送液できる。この時に送液される設定流量の範囲は、例えば5〜300mL/hであり、輸液ポンプ10の総重量は、例えば電池を入れた状態で約320gである。
【0026】
次に、図4を参照して、上述した輸液ポンプ10の電気的な構成を説明する。図4は、輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図4に示すブロック図では、本体11の前筐体49と後筐体44と、カバー12を示しており、カバー12側にはカセット20とこのカセット20の輸液チューブ21が配置されている。後筐体44には、ジャック78と電源回路80と電池(乾電池もしくは充電池)Bが配置され、ジャック78と電池Bが電源回路80に対して電気的に接続されている。ジャック78は、電源コネクタ127を介して、例えば100Vの商用交流電源に接続可能である。電源コネクタ127は、100Vの交流電源を所定の直流電圧に変換して電源回路80に供給する。
【0027】
図4に示すように、前筐体49には、ロータユニット31と、空液検出部82と、閉塞検出部83を備えている。ロータユニット31は、減速ユニット444を介してモータMに連結されており、モータMはモータ駆動回路81からの駆動信号により、ロータユニット31を連続回転させることができる。回転検出回路81Tは、モータMの回転状態を検出して制御部100にモータの回転状態信号を送る。電源回路80は、モータ駆動回路18と制御部100に電気的に接続されており、モータ駆動回路81と制御部100に対して電源供給を行う。
【0028】
図4の空液検出部82と閉塞検出部83は制御部100に電気的に接続され、空液検出部82は、輸液チューブ21内が薬液により満たされているか気泡が存在するかを検出して、制御部100に通知する。閉塞検出部83は、輸液チューブ21が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知する。
開始停止スイッチ17は、開始停止検出回路84に電気的に接続され、開始停止検出回路84は、開始停止スイッチ17が、図1に示す開始位置に位置されているか停止位置に位置されているかを検出して、この開始停止スイッチ17の状態を制御部100に通知する。制御部100はCPU110を有しており、メモリ部111は、制御部100のCPU110に電気的に接続されている。メモリ部111は、CPU110との間で情報を記憶したり、記憶した情報を読み出したりするもので、しかもメモリ部111はCPU110により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)をも含んでいる。
【0029】
図4の表示部18は、制御回路18Tに電気的に接続され、点灯表示部LPは、制御回路85に電気的に接続されている。制御回路18Tと制御回路85は制御部100に電気的に接続され、制御部100の指令により、制御回路18Tは表示部18に必要な内容を表示させる。また、制御部100の指令により、制御回路85は点灯表示部18を例えば点滅させて、患者に点滅により警報があることを報知することができる。
ブザー88は、ブザー回路90に電気的に接続され、スピーカ89は、音声回路91に電気的に接続されている。ブザー回路90と音声回路91は、制御部100に電気的に接続されている。その他に、外部通信回路101が制御部100に電気的に接続されている。
【0030】
図5は、本体11の前筐体49を後筐体44から取り外して、前筐体49の内部と後筐体44の内部を露出させた状態を示す斜視図である。図6は、前筐体49と後筐体44と、前筐体49から取り外された駆動操作部770を示す斜視図である。
図5に示すように、前筐体49は、複数本のネジNを外すことで、後筐体44から取り外すことができる。前筐体49の内部には、メイン基板400と、メイン基板400に付属の回路基板401と、駆動操作部770等が配置されている。
図5に示すように、後筐体44の内部には、回路基板である電源基板470と、スピーカ89と、ブザー88と、電池収容部としての電池ボックス900と、モータMと減速ユニット444を機械的に保持するためのサポート部489が配置されている。
メイン基板400には、図4に示す前筐体49側の制御部100等の各要素が配置されており、電源基板470には、図4に示す後筐体44側の電源回路80等の各要素が配置されている。メイン基板400と電源回路470は、配線ハーネス499により電気的に接続されている。
【0031】
図6では、駆動操作部770は前筐体49から取り外されており、しかも駆動操作部770の表面側が示されている。
図6を参照すると、駆動操作部770が前筐体49から取り外されているので、前筐体49の内面49Nには、複数の開口部441,442,443が現れている。この開口部441は、第1のスライダ32を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるためのほぼ長方形の穴である。同様にして、開口部442は、第2のスライダ33を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるための長方形の穴である。そして、開口部443は、ロータユニット31を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるために、このロータユニット31を通している円形の穴である。このロータユニット31は、前筐体49内に固定されるベース445に搭載されている。
【0032】
図6に示すように、駆動操作部770は、ロータユニット31と、電動のモータMと、減速ユニット444と、すでに説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33と、ベース445を有している。駆動操作部770のプラスチック製のベース445の表面449には、ロータユニット31と第1のスライダ32と第2のスライダ33が搭載されている。ロータユニット31は、ベース445の第1端部446側に配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ33は、ベース445の第2端部447側に寄せてしかも並べて配置されている。
モータMと減速ユニット444からなる組み立て体は、取り付け具450を用いて、ベース445の第1端部446に取り付けられている。ベース445の第2端部447は、カバー12(図2を参照)側に連結されている。
【0033】
患者が主に在宅で使用することを想定している通常の携帯型の輸液ポンプは、チューブ内を通す薬液が、病院内で使用される場合に比べて、誤ってケースにかかってしまうリスクが高い。そのため、薬液が本体の例えばローラユニット31の付近の開口部441,442,443から本体の内部に侵入して、モータM等にかかってしまい内部故障を起こす可能性がある。このように、モータMに薬液がかかってモータMの動作が停止すると、輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入する輸液動作を行えなくなる。そこで、図5と図6に示す本発明の実施形態の携帯型の輸液ポンプ10は、本体(ケース)11内の要素であるモータM等に対する薬液等の液体の侵入を確実に防いで、輸液ポンプ10が内部故障を起こさないようにして薬液を注入する輸液動作を行うことができるようにするために、図6に示す幾つかのシール材700,750を用いている。なお、これらのシール材700,750は、薬液だけではなく、水分等の液体をも本体の内部に侵入させない機能を有する。
【0034】
図6に示すシール材700のサイズはシール材750のサイズよりも大きく、シール材750はシール材700の内側に位置されている。
図6に示すシール材700は、本体11の密閉用のシール材である。すなわち、シール材700は、前筐体49の接合部49Sと後筐体44の接合部44Sの間に配置されることで、前筐体49と後筐体44の外側と前筐体49と後筐体44の内側との隙間を埋めて密閉して、薬液等の液体が、前筐体49と後筐体44の接合部49S、44Sを通じて、前筐体49と後筐体44の内部に入らないようにする機能を有する。
【0035】
図6に示すシール材750は、モータMや減速ユニット444付近に配置されて、モータMや減速ユニット444を薬液や水分等の液体から守るためのシール材である。図6に示すシール材750は、ベース445の表面449において、ロータユニット31と第1のスライダ32と第2のスライダ33を囲むようにして配置され、細長い材料によりエンドレス状に作られている。
このシール材750をベース445の表面449に配置して固定し、このシール材750を前筐体49に内面49Nを押し当てて潰す。これにより、薬液等の液体が、図6に示す前筐体49の外側から前筐体49の開口部441だけでなく、開口部442,443を通じて、前筐体49の内部に侵入したとしても、薬液等の液体はシール材750の存在により、シール材750の範囲外へ侵入することが阻止できる。従って、薬液等の液体が、シール材750の外側のモータMや減速ユニット444、メイン基板400と電源基板470等の本体11内の要素に対して侵入するのを防ぐことができる。
【0036】
次に、図5と図6を参照して、衝撃履歴部としての破損対象部500を説明する。
医療従事者や患者が上述した構造を有する輸液ポンプ10を手で持って使用中に、この輸液ポンプ10を手から落下させてしまい例えば床面に落としてしまった場合には、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプ10がこれ以上の使用ができないことを認知させて、薬液の注入動作を続けて行うことができないようにする必要がある。そこで、輸液ポンプ10が落下して所定の衝撃力を受けると破損可能な破損対象部500が、輸液ポンプ10には予め設定されている。
図5と図6を参照すると、破損対象部500は、1つの落下部品の一例としてのコイル501と、落下観察窓502を有している。このコイル501は、輸液ポンプ10を落下させてしまった場合に、あえて壊れやすいようにしている部分であり、例えば電源基板470に実装されている。コイル501は、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損する。このコイル501は、電源基板470に対して半田を用いて電気的に接続されているが、輸液ポンプ1が例えば床面に落下して所定の衝撃力を受けると、電源基板470から脱落するようになっている。この安価なコイル501は、例えば電源基板470に対して、脱落し易いように電気接続用の半田の量を減らしてある。
【0037】
輸液ポンプ10が落下する際の例えばフローリングのような床面までの高さの基準は、例えば1mであるが、特に限定されない。コイル501が電源基板470から脱落して、コイル501が電源基板470の電気回路を構成しなくなると、図4に示す電源基板470から制御部100へ電源電圧が供給されなくなる。
これにより、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、制御部100が確実に認識でき、制御部100は、輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、輸液ポンプ10のモータを能動的に停止させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる。従って、携帯型の輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
制御部100は、安価なコイル501が脱落することを利用して、輸液ポンプ10の落下衝撃を検出できるので、図4に示すメイン基板49には、落下の衝撃を検出するためのショックセンサとこのショックセンサを動作させるための内部バッテリを、別個に設定する必要が無いので、コストダウンが図れる。このとき、所定の衝撃力は、輸液ポンプ10が自然落下した場合を想定することにより、落下高さと輸液ポンプ10の重量によることになる。そのため、落下の高さを1mとして、そのときの衝撃力で落下衝撃を検出できるように、コイル501の取付け具合を調節する。つまり、所定の衝撃力は、例えば高さ50cmからの衝撃力に設定することも可能であり、破損対象部500を調節することで、使用状況に好ましい設定が可能である。
【0038】
コイル501が電源基板470から脱落すると、制御部100の指令により、図4に示す制御回路18Tは、表示部18において、「輸液ポンプが落下衝撃を受けて停止した旨」の警報内容を表示させて、医療従事者や患者に警報を発する。また、制御部100の指令により、制御回路85は、点灯表示部18を例えば点滅させて、医療従事者や患者に対して点滅により警報を発することができる。あるいは、制御部100の指令により、ブザー回路90は、ブザー88を鳴動させて、医療従事者や患者に対して音により警報を発することができる。このような表示部18における警報内容の表示と、点灯表示部18の点滅表示による警報と、ブザー88による音による警報は、1つを選択して、もしくは複数選択して使用することができる。
【0039】
図7(A)は、落下観察窓502の構成例を示しており、落下観察窓502は、落下したコイル501を留めておくための部品留置体503を有している。この部品留置体503は、透明の表面板504と、四方の側面板505を有している。部品留置体503は、本体11の前筐体49と後筐体44が形成する空間SP内に配置され、電源基板470上のコイル501が電源基板470から脱落した場合に、部品留置体503がコイル501を留めておくことができる。前筐体49には、例えば正方形の開口部506が形成されており、この開口部506には透明の表面板504が露出している。この開口部506は、図2に例示するように、カセット収納部15に形成されている。しかし、この開口部502の形成位置は、コイル501の搭載位置に対応していて脱落したコイルを留置できれば良いので、特に限定されることは無い。
図7(B)は、電源基板470上のコイル501が電源基板470から脱落した状態を示しており、コイル501が電源基板470から脱落すると、このコイル501は落下観察窓502内に留めておくことができる。これにより、医療従事者や患者は、落下観察窓502内に留まっているコイル501を、透明な表面板504を通して目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。すなわち、輸液ポンプ10を落下させてしまった後では、医療従事者や高齢者の患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、薬液の注入動作ができないようにすることができ、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0040】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態である輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図8に示す本発明の第2実施形態の電気的な構成を示すブロックは、図4に示す本発明の第1実施形態の電気的な構成を示すブロックとは異なり、制御部100には、内部バッテリ201が付加されている。内部バッテリ201は制御部100に対して、非常用の電源供給を行う。内部バッテリ201は、例えばコイン電池である。この内部バッテリ201は、衝撃履歴部として、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると電源供給機構の破損を行う破損対象部である。
図8に示すように、この内部バッテリ201は、電極211,212の間に電気的に接続されている。しかし、輸液ポンプ1が例えば床面に落下して所定の衝撃力を受けると、内部バッテリ201は、電極211,212の間から落下して、電源供給機構の破損を行うことから、内部バッテリ201からは制御部100に対して電源供給をしなくなる。
【0041】
これにより、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、制御部100が確実に認識でき、制御部100は、輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、輸液ポンプ10のモータを能動的に停止させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる。つまり、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や高齢者の患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
制御部100は、安価な内部バッテリ201が電極211,212の間から脱落することを利用して、輸液ポンプ10の落下衝撃を検出できるので、図4に示すメイン基板49に、ショックセンサを別個に設定する必要が無く、コストダウンが図れる。
【0042】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態である輸液ポンプ10を示す斜視図である。
図9に示す本発明の第3実施形態である輸液ポンプ10は、図1に示す本発明の第1実施形態の輸液ポンプ10に比べると、カバー12の構造が異なる。
図9の輸液ポンプ10のカバー12は、薄肉部分12Rを有している。薄肉部分12Rの厚みT1は、四方の周囲部分12Sの厚みT2に比べて、薄くなっている。この薄肉部分12Rは、四方の周囲部分12Sに比べて割れやすい部分、すなわち強度が弱い部分である。このカバー12の薄肉部分12Rは、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して所定の衝撃力を受けると破損可能な破損対象部である。輸液ポンプ1が例えば床面に落下して所定の衝撃を受けると、割れやすい部分である薄肉部分12Rが破損することから、医療従事者や患者は、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、目視で確認することができる。
これにより、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプ10のこれ以上の使用ができないことを認知させて、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0043】
<第4実施形態>
図10は、本発明の第4実施形態である輸液ポンプ10の電池ボックス900を示す斜視図である。
電池ボックス900は、図6にも示すように後筐体44側に設けられており、電池ボックス900には、蓋部材901がヒンジ部902を用いてRR方向に開閉可能に取り付けられている。この電池ボックス900内には、2本の電池Bが着脱可能に装着できる空間903を有している。シール材950が、後筐体44の表面であってこの電池ボックス900の周囲の4辺の溝部分905に固定されている。この電池ボックス900内に配置されている電極931,932の内の電極932は、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、SS方向に脱落するようになっているので、電池Bは、図4に示す制御部100等に電源供給できなくなる。この電極932は、本実施形態における衝撃履歴部として設けられているもので、具体的には、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
【0044】
これにより、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、制御部100が確実に認識でき、制御部100は、輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、輸液ポンプ10のモータを能動的に停止させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる。従って、携帯型の輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
制御部100は、電極932が脱落することを利用して、輸液ポンプ10の落下衝撃を検出できるので、図4に示すメイン基板49に、ショックセンサを別個に設定する必要が無く、コストダウンが図れる。
【0045】
<第5実施形態>
図11は、本発明の第5実施形態である輸液ポンプ10を示す図である。
図11に示す本発明の第5実施形態では、カバー12の左右の第1と第2ヒンジ部13,13を示しており、左側の第1ヒンジ部13は、通常の構造を有している。しかし、右側の第2ヒンジ部13は、第1ヒンジ部13の構造とは異なっており、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、第2ヒンジ部13は、破損するようになっている。すなわち、第2ヒンジ部13の支持ピン13Pの長さLL2が、第1ヒンジ部13の支持ピン13Rの長さLL1に比べて、短くなっており、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、第2ヒンジ部13の支持ピン13Pが挿入穴13Hから外れて、カバー12が本体11から外れた状態になる。この第2ヒンジ部13は、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
このように、医療従事者や患者は、カバー12が本体11から外れた状態を目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。これにより、カバー12が本体11から外れてしまうと、図3に示すようにカセット20をカセット収納部15に収納しても、カバー12によりカセット20を押して装着することができないので、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0046】
<第6実施形態>
図12は、本発明の第6実施形態である輸液ポンプ10を示す図である。
図12は、図1に示す輸液ポンプ10をJ方向から見た側面図であり、輸液ポンプ10の本体11と、スイッチカバー部材1を示している。
輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、スイッチカバー部材1は、本体11から脱落するようになっている。スイッチカバー部材11が脱落すると、開始停止スイッチ17と解除ボタン16,16は、スイッチカバー部材1とともに本体11から脱落するので、開始停止スイッチ17と解除ボタン16,16は操作できなくなる。このスイッチカバー部材1は、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
医療従事者や患者は、スイッチカバー部材1が本体11から外れた状態を目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。これにより、輸液ポンプ10は使用できないので、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0047】
<第7実施形態>
図13は、本発明の第7実施形態である輸液ポンプ10を示す図である。
図13は、図6に示すモータMと減速ユニット444の支持構造例を示している。モータMは、緩衝材478を介して本体11の後筐体44の内面477に対して支持されている。本体11の後筐体44の外面476には、溝部分475が形成されており、この溝部分475は、モータMに対応した位置にある。
図13(A)に示すように、モータMと減速ユニット444が、緩衝材478を介して本体11の後筐体44の内面477に対して支持されている状態で、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、図13(B)に示すように、後筐体44が溝部分475において折れてGF方向に変形することから、モータMと減速ユニット444はベース445からGF方向に外れてしまう。このため、モータMの駆動力は図6に示すロータユニット31を回転することができず、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出できない。このモータMと後筐体44の溝部分475は、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
このため、医療従事者や患者は、後筐体44が溝部分475において折れてGF方向に変形してしまった状態を目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。これにより、輸液ポンプ10は使用できないので、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0048】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
上述した本発明の各実施形態は、1つだけを適用するか、あるいは2つ以上もしくは全部を任意に組み合わせて適用することができる。
衝撃履歴部として設定される部材である輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると落下する電子部品としては、コイルに限らず、抵抗体やコンデンサ等であっても良く、特に限定されない。
図13に示す本発明の実施形態では、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、本体11の後筐体44が溝部分475において折れてGF方向に変形する例を示しているが、これに限らず、本体11の前筐体49が変形する構造を採用しても良い。
本発明の各実施形態では、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けて輸液ポンプ10が動作しなくなったことを、図4に示す表示部18に表示したり、図4に示すブザー88により音で警報で報知したり、スピーカ89により音声で警報を報知するようにしても良い。
【符号の説明】
【0049】
1・・・スイッチカバー部材(破損対象部)、10・・・輸液ポンプ(医療機器の一例)、11・・・本体(ケースともいう)、12・・・カバー、12R・・・カバーの薄肉部分(破損対象部)、13・・・ヒンジ部(破損対象部)31・・・輸液送り部としてのロータユニット、44・・・後筐体、49・・・前筐体、201・・・内部バッテリ(コイン電池、破損対象部)、400・・・メイン基板、470・・・電源基板(回路基板)、475・・・後筐体44の溝部分(破損対象部)、501・・・コイル(破損対象部)、932・・・電極(破損対象部)、M・・・モータ(破損対象部)、B・・・電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に薬液を注入するための携帯型の輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に薬液を投入するために使用する医療機器としては、例えば輸液ポンプが知られており、この輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入するのに広く使用されている。このような輸液ポンプのうち、例えば、医療機関だけでなく、一般の家庭において在宅でも使用できるようにコンパクトに形成した携帯型の輸液ポンプが知られている(特許文献1参照)。特許文献1の携帯型の輸液ポンプは、外部から導入される薬液を通す可撓性の輸液チューブを着脱式のカセットに導く構成とされている。
【0003】
具体的には、該着脱式のカセットのケース内に可撓性の輸液チューブ(以下、「チューブ」と言う。)を導入し、このケースから一部露出させたチューブに対して、回転ローラを押しつけることにより、輸液チューブに蠕動様運動を与えて、輸液チューブから薬液を所定の流速(mL/h)で注液を行なうようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−506355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した携帯型の輸液ポンプの使用者の多くは、医療従事者や高齢者の患者である。携帯型の輸液ポンプは片手で持てるほどのサイズであるので携帯型の輸液ポンプは小さく、医療従事者や患者が輸液ポンプを手に持った状態から例えば床面に落下させてしまうおそれがある。このように、医療従事者や患者が携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後に、携帯型の輸液ポンプが故障しているのにもかかわらず、医療従事者や患者が、携帯型の輸液ポンプの故障に気付かずに携帯型の輸液ポンプを再度手で持って、故障したままの状態の携帯型の輸液ポンプを使い続けてしまうおそれがある。
このため、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプはこれ以上使用できないことを認知させて、医療従事者や患者が薬液の注入を続けて行うことができないようにしたいという要望がある。
そこで、本発明は、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、医療従事者や患者が薬液の注入動作を行うことができないようにすることができる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の輸液ポンプは、ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部を有する輸液ポンプであって、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部が、前記衝撃の衝撃履歴部として、予め設定されていることを特徴とする。
上記構成によれば、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを前記衝撃履歴部の存在により認知させて、医療従事者や患者が薬液の注入動作を行うことができないようにすることができる。すなわち、輸液ポンプには破損対象部が形成されるので、医療従事者や患者は、この破損対象部を認知することで、医療従事者や患者が薬液の注入動作を続けて行うことが無くなる。
【0007】
好ましくは、前記破損対象部は、回路基板に配置され前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記回路基板から脱落する電子部品であり、前記破損対象部は、脱落した前記電子部品を目視可能に留置する落下観察窓を有することを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、落下観察窓に保持された脱落した電子部品を目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
好ましくは、前記破損対象部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると電極から脱落する電源供給用のコイン電池であり、前記コイン電池が前記電極から外れたことを検出する制御部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、制御部はコイン電池が外れたことを検出できるので、制御部は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを、医療従事者や患者に認知させることができる。
【0008】
好ましくは、前記輸液送り部にカセットを装着するためのカバーを有し、前記カバーは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する薄肉部分を有し、前記薄肉部分が前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、カバーの破損した肉薄部分を目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
好ましくは、電源供給用の電池を受けている電極を有し、前記電極は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると脱落する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、電極が落下することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
【0009】
好ましくは、前記輸液送り部にカセットを装着するためにヒンジ部を用いて前記ケースに対して開閉可能に保持されているカバーを有し、前記ヒンジ部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、カバーの破損したヒンジ部を目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
好ましくは、前記ケースには、動作の開始と停止をさせる開始停止スイッチを有するスイッチカバー部材が配置され、前記スイッチカバー部材は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記本体から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者や患者は、スイッチカバー部材が脱落したことを目視することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
【0010】
好ましくは、前記輸液送り部を駆動するモータを有し、前記モータは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記輸液送り部から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする。
上記構成によれば、モータが脱落することで、医療従事者や患者は、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の輸液ポンプの第1実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いた様子を示す概略正面図である。
【図3】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いて、カセットを収容する様子を示す概略斜視図である。
【図4】輸液ポンプの電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】本体の前筐体を後筐体から取り外して、前筐体の内部と後筐体の内部を露出させた状態を示す斜視図である。
【図6】前筐体と後筐体と、前筐体から取り外された駆動操作部を示す斜視図である。
【図7】破損対象部の落下観察窓の構成例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態である輸液ポンプの電気的な構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態を示す図である。
【図12】本発明の第6実施形態を示す図である。
【図13】本発明の第7実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
<第1実施形態>
図1は、本発明の医療機器である携帯型の輸液ポンプのカセット収納部のカバー(透明)を閉じた概略斜視図であり、図2はそのカセット収納部のカバーを開いた状態を示す概略正面図、図3は輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開き、カセットを収納した状態を示す概略斜視図である。
図1から図3に示す輸液ポンプ10は、例えば、略矩形の本体(筐体)11を有している。本体11は、前筐体49と後筐体44を有する。本体11は、輸液ポンプ10の構成物を収容するためのケースであり、好ましくは、耐薬品性、耐衝撃性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばハイインパクトスチロールやABS樹脂で形成されている。
【0014】
図1に示すように、本体11は、本体11の上面側のほぼ半分程度の面積を閉めるように、開閉可能な透明のプラスチック製のカバー12を有しており、該カバー12はヒンジ部13を中心として回動可能に開閉できる。カバー12は、図示しない付勢手段、例えば、ヒンジ部13の軸周りにトーションコイル等を配設することにより、図2と図3に示すように、常時開方向に付勢されている。カバー12を閉じて押し込むことにより、カバー12は本体11側の図示しないラッチ等に係合されるようになっており、本体11の側部外縁に突出する左右位置の解除ボタン16を、矢印方向に手指にて押し込むことにより、該ラッチ等が解除されてカバー12を開けることができる。
【0015】
図1の前筐体49における符号17は、開始停止スイッチであり、この開始停止スイッチ17は、図1において横方向に「停止―開始」のスライド操作をすることができる。
図1に示すように、この開始停止スイッチ17と左右の解除ボタン16は、スイッチカバー部材1に設定されている。このスイッチカバー部材1は、長方形の部材であり、前筐体49の中央位置において、X方向に沿って組み付けられている。スイッチカバー部材1は、閉じた状態のカバー12の自由端部2に沿って配置されている。輸液ポンプ10が、例えば床面に落下して衝撃を受けると、このスイッチカバー部材1が前筐体49から外れるようになっているが、開始停止スイッチ17と解除ボタン16は、このスイッチカバー部材1とともに外れるようになっている。
【0016】
図1に示す符号18は液晶表示装置等で形成した表示部であり、運転状態や報知情報等を表示するようになっている。これらの他に、本体11は、図示しないモード選択スイッチ等を備えることができる。
前筐体49には、発光ダイオードランプのような点灯表示部LPが、表示部18の付近に配置されている。この点灯表示部LPは、例えば点滅することにより警報内容を、例えば患者あるいは周囲の家族の人に目視で報知するようになっている。
また、前筐体49の背面には、内蔵されたブザー88とスピーカ89からの音が使用者に聞き取れるように放音孔310が配置されている。ブザー88は警報内容を警報音で報知でき、スピーカ89は警報内容を鳴動することで音声で報知する機能を有する。
【0017】
図2と図3に示すように、本体11からカバー12を開くと、本体11のカセット収納部15が露出するようになっている。カセット収納部15は、本体11の厚みの約半分程度の寸法で形成された空間であり、この空間であるカセット収納部15には、図3に示すように、輸液チューブ21を引きこみかつ導出するためのカセット20を着脱可能にセットすることができる。
本体11のカセット収納部15の内側には、図1から図3には図示していないが駆動部としてのモータが配置されている。また、カセット収納部15上には、輸液送り部としてのロータユニット31と、閉塞検出部83が配置されている。このモータの出力軸からの駆動力が、ロータユニット31に対して図示しない皿歯車等を介して伝達されることにより、ロータユニット31が軸Lを中心にして回転する。
【0018】
図2に示すように、このロータユニット31の外周には、例えば、4か所以上の図示例では5つの回転ローラであるチューブ押圧部31Rが設けられており、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rが図2の矢印方向の回転することにより、図3に示すカセット20の輸液チューブ21を順次押圧して、輸液チューブ21に対して蠕動様運動を付与することができる。このロータユニット31は、外部から薬液を導入するための輸液チューブ21に対して圧接することでこの輸液チューブ21に対して蠕動様運動をさせて、薬液を送出するための輸液送り部の一例である。
なお、本発明の実施形態では、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出しているが、これに限らず、フィンガ方式で薬液を送出するようにしても良い。
【0019】
図1から図3に示す上記閉塞検出部83は、カセット20がカセット収納部15内に収納されたことを検出して、カセット20の輸液チューブ21の内部が閉塞されているか否かを検出する。この閉塞検出部83には、カセット検出用の突起部材99が設けられている。この突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力により、カセット収納部15内においてC方向に沿って突出している。しかし、図3に示すように、カセット20がカセット収納部15内に収納された状態では、突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力に抗してD方向に押されることで、図2に示すスイッチ134がオンとなり、このスイッチ134のオン信号は制御部100に通知されるようになっている。すなわち、閉塞検出部83は、輸液チューブ21内が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、輸液チューブ21内が閉塞していて、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知するものである。
【0020】
図2に示すように、カセット収納部15には、このロータユニット31の付近の上方位置に、第1のスライダ32と、該第1のスライダ32に隣接して第2のスライダ33が配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ33はそれぞれ係止片を備えており、これら係止片は、付勢手段により常時矢印C方向に付勢されている。しかも、第1のスライダ32と第2のスライダ33のそれぞれ係止片は、後述するカセット20がカセット収納部15にセットされる際に矢印D方向に移動されて、カセット20を保持するとともに、該カセット20に内蔵された可撓性の輸液チューブ21をロータユニット31に対して押圧することができる。図2において、第2のスライダ33の右方の下側には、カセット20をカセット収納部15に配置する際の目印となる傾斜部34aを有するマーク34と、該マーク34の下方にはカセット20を装着する際のストッパとして機能する突起部35が設けられている。
【0021】
図3を参照して、カセット20の構造例を説明する。
カセット20は、合成樹脂で形成された図示のような横長のケース体である。輸液チューブ21の一部分は、カセット20内に収容されており、輸液チューブ21は該ケース体の外縁に沿って矢印F方向から導入され、カセット20の右端部でほぼU字状に曲折され、そして矢印E方向に導出されている可撓性チューブ(輸液チューブともいう。)である。該輸液チューブ21に対しては、薬液が外部から矢印F方向に導入され、矢印E方向に導出され、輸液チューブ21の該矢印E方向の延長には留置針などが接続されており、輸液チューブ21内の薬液がこの留置針を通じて患者に対して輸液される。
【0022】
図3に示すように、輸液チューブ21内の輸液の移動を目視できるように、カバー12とカセット20は好ましくは透明部材で作られている。なお、カバー12には切欠き部19が設けられており、該切欠き部19から輸液チューブ21がカバー12の外部に導出されるようになっている。
また、図3に示すように、カセット20の下部の一端寄りには露出部24が形成されている。この露出部24は、カセット20の一部を切欠くことで形成されており、輸液チューブ21の一部を外部に露出させている。この輸液チューブ21の露出部分には、ロータユニット31のチューブ押圧部31R(図2を参照)が押圧されることで、図3に示すように蠕動様運動が輸液チューブ21に付与されるようになっている。
【0023】
図3のカセット20のほぼ中央部には、横に並んで2つの係合用スリット22,23が形成されており、これらスリット22,23はカセット20のケース体を貫通している。
スリット22,23には、図2で説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33がそれぞれ入り込むようになっている。そして、図3に示すヒンジ部13を中心として、カバー12を矢印A方向に閉じると、ヒンジ部13よりも該カバー12の内側に設けられた当接部14がカセット20を押すことにより、該カセット20がカセット収納部15において矢印B方向に移動される。
このカセット20の矢印B方向への移動により、各係合用スリット22,23に入り込んだ第1のスライダ32と第2のスライダ33の付勢方向(図2の矢印C方向)に働く付勢力に抗して、第1のスライダ32と第2のスライダ33を矢印D方向に移動させることができる。これにより、カセット20は、カバー12により閉じた状態においては、カバー12の当接部14と第1のスライダ32と第2のスライダ33により挟まれて固定されるとともに、輸液チューブ21の露出部分はロータユニット31側に押圧される。
【0024】
図3に示すカセット20には、縦スリット25a及び横スリット25bを有する逆L字状の規制用スリット25が形成されている。縦スリット25aにはストッパ26が収容されており、そのストッパ26の先端の当接部は付勢手段26aにより矢印C方向に常時押圧されており、カセット20内の図示しない箇所で、輸液チューブ21の一部分を押し潰して輸液チューブ21内の輸液の流れを止めている。横スリット25bには、スライダ29が配置されている。
【0025】
図3に示すように、本体11のカセット収納部15内にカセット20を収納してカバー12を閉じると、カセット20の横スリット25bのスライダ29が、ストッパ26を付勢手段26aの力に抗して矢印D方向に押し込むことにより、ストッパ26の先端部は輸液チューブ21から離れる。これにより、輸液チューブ21は開放されて輸液チューブ21内の輸液の流れ止めは解除でき、輸液チューブ21には輸液を導入でき、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rの動きにより患者に対して輸液チューブ21を通じて薬液を送液できる。この時に送液される設定流量の範囲は、例えば5〜300mL/hであり、輸液ポンプ10の総重量は、例えば電池を入れた状態で約320gである。
【0026】
次に、図4を参照して、上述した輸液ポンプ10の電気的な構成を説明する。図4は、輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図4に示すブロック図では、本体11の前筐体49と後筐体44と、カバー12を示しており、カバー12側にはカセット20とこのカセット20の輸液チューブ21が配置されている。後筐体44には、ジャック78と電源回路80と電池(乾電池もしくは充電池)Bが配置され、ジャック78と電池Bが電源回路80に対して電気的に接続されている。ジャック78は、電源コネクタ127を介して、例えば100Vの商用交流電源に接続可能である。電源コネクタ127は、100Vの交流電源を所定の直流電圧に変換して電源回路80に供給する。
【0027】
図4に示すように、前筐体49には、ロータユニット31と、空液検出部82と、閉塞検出部83を備えている。ロータユニット31は、減速ユニット444を介してモータMに連結されており、モータMはモータ駆動回路81からの駆動信号により、ロータユニット31を連続回転させることができる。回転検出回路81Tは、モータMの回転状態を検出して制御部100にモータの回転状態信号を送る。電源回路80は、モータ駆動回路18と制御部100に電気的に接続されており、モータ駆動回路81と制御部100に対して電源供給を行う。
【0028】
図4の空液検出部82と閉塞検出部83は制御部100に電気的に接続され、空液検出部82は、輸液チューブ21内が薬液により満たされているか気泡が存在するかを検出して、制御部100に通知する。閉塞検出部83は、輸液チューブ21が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知する。
開始停止スイッチ17は、開始停止検出回路84に電気的に接続され、開始停止検出回路84は、開始停止スイッチ17が、図1に示す開始位置に位置されているか停止位置に位置されているかを検出して、この開始停止スイッチ17の状態を制御部100に通知する。制御部100はCPU110を有しており、メモリ部111は、制御部100のCPU110に電気的に接続されている。メモリ部111は、CPU110との間で情報を記憶したり、記憶した情報を読み出したりするもので、しかもメモリ部111はCPU110により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)をも含んでいる。
【0029】
図4の表示部18は、制御回路18Tに電気的に接続され、点灯表示部LPは、制御回路85に電気的に接続されている。制御回路18Tと制御回路85は制御部100に電気的に接続され、制御部100の指令により、制御回路18Tは表示部18に必要な内容を表示させる。また、制御部100の指令により、制御回路85は点灯表示部18を例えば点滅させて、患者に点滅により警報があることを報知することができる。
ブザー88は、ブザー回路90に電気的に接続され、スピーカ89は、音声回路91に電気的に接続されている。ブザー回路90と音声回路91は、制御部100に電気的に接続されている。その他に、外部通信回路101が制御部100に電気的に接続されている。
【0030】
図5は、本体11の前筐体49を後筐体44から取り外して、前筐体49の内部と後筐体44の内部を露出させた状態を示す斜視図である。図6は、前筐体49と後筐体44と、前筐体49から取り外された駆動操作部770を示す斜視図である。
図5に示すように、前筐体49は、複数本のネジNを外すことで、後筐体44から取り外すことができる。前筐体49の内部には、メイン基板400と、メイン基板400に付属の回路基板401と、駆動操作部770等が配置されている。
図5に示すように、後筐体44の内部には、回路基板である電源基板470と、スピーカ89と、ブザー88と、電池収容部としての電池ボックス900と、モータMと減速ユニット444を機械的に保持するためのサポート部489が配置されている。
メイン基板400には、図4に示す前筐体49側の制御部100等の各要素が配置されており、電源基板470には、図4に示す後筐体44側の電源回路80等の各要素が配置されている。メイン基板400と電源回路470は、配線ハーネス499により電気的に接続されている。
【0031】
図6では、駆動操作部770は前筐体49から取り外されており、しかも駆動操作部770の表面側が示されている。
図6を参照すると、駆動操作部770が前筐体49から取り外されているので、前筐体49の内面49Nには、複数の開口部441,442,443が現れている。この開口部441は、第1のスライダ32を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるためのほぼ長方形の穴である。同様にして、開口部442は、第2のスライダ33を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるための長方形の穴である。そして、開口部443は、ロータユニット31を前筐体49の内部から前筐体49の表側に露出させるために、このロータユニット31を通している円形の穴である。このロータユニット31は、前筐体49内に固定されるベース445に搭載されている。
【0032】
図6に示すように、駆動操作部770は、ロータユニット31と、電動のモータMと、減速ユニット444と、すでに説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33と、ベース445を有している。駆動操作部770のプラスチック製のベース445の表面449には、ロータユニット31と第1のスライダ32と第2のスライダ33が搭載されている。ロータユニット31は、ベース445の第1端部446側に配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ33は、ベース445の第2端部447側に寄せてしかも並べて配置されている。
モータMと減速ユニット444からなる組み立て体は、取り付け具450を用いて、ベース445の第1端部446に取り付けられている。ベース445の第2端部447は、カバー12(図2を参照)側に連結されている。
【0033】
患者が主に在宅で使用することを想定している通常の携帯型の輸液ポンプは、チューブ内を通す薬液が、病院内で使用される場合に比べて、誤ってケースにかかってしまうリスクが高い。そのため、薬液が本体の例えばローラユニット31の付近の開口部441,442,443から本体の内部に侵入して、モータM等にかかってしまい内部故障を起こす可能性がある。このように、モータMに薬液がかかってモータMの動作が停止すると、輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入する輸液動作を行えなくなる。そこで、図5と図6に示す本発明の実施形態の携帯型の輸液ポンプ10は、本体(ケース)11内の要素であるモータM等に対する薬液等の液体の侵入を確実に防いで、輸液ポンプ10が内部故障を起こさないようにして薬液を注入する輸液動作を行うことができるようにするために、図6に示す幾つかのシール材700,750を用いている。なお、これらのシール材700,750は、薬液だけではなく、水分等の液体をも本体の内部に侵入させない機能を有する。
【0034】
図6に示すシール材700のサイズはシール材750のサイズよりも大きく、シール材750はシール材700の内側に位置されている。
図6に示すシール材700は、本体11の密閉用のシール材である。すなわち、シール材700は、前筐体49の接合部49Sと後筐体44の接合部44Sの間に配置されることで、前筐体49と後筐体44の外側と前筐体49と後筐体44の内側との隙間を埋めて密閉して、薬液等の液体が、前筐体49と後筐体44の接合部49S、44Sを通じて、前筐体49と後筐体44の内部に入らないようにする機能を有する。
【0035】
図6に示すシール材750は、モータMや減速ユニット444付近に配置されて、モータMや減速ユニット444を薬液や水分等の液体から守るためのシール材である。図6に示すシール材750は、ベース445の表面449において、ロータユニット31と第1のスライダ32と第2のスライダ33を囲むようにして配置され、細長い材料によりエンドレス状に作られている。
このシール材750をベース445の表面449に配置して固定し、このシール材750を前筐体49に内面49Nを押し当てて潰す。これにより、薬液等の液体が、図6に示す前筐体49の外側から前筐体49の開口部441だけでなく、開口部442,443を通じて、前筐体49の内部に侵入したとしても、薬液等の液体はシール材750の存在により、シール材750の範囲外へ侵入することが阻止できる。従って、薬液等の液体が、シール材750の外側のモータMや減速ユニット444、メイン基板400と電源基板470等の本体11内の要素に対して侵入するのを防ぐことができる。
【0036】
次に、図5と図6を参照して、衝撃履歴部としての破損対象部500を説明する。
医療従事者や患者が上述した構造を有する輸液ポンプ10を手で持って使用中に、この輸液ポンプ10を手から落下させてしまい例えば床面に落としてしまった場合には、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプ10がこれ以上の使用ができないことを認知させて、薬液の注入動作を続けて行うことができないようにする必要がある。そこで、輸液ポンプ10が落下して所定の衝撃力を受けると破損可能な破損対象部500が、輸液ポンプ10には予め設定されている。
図5と図6を参照すると、破損対象部500は、1つの落下部品の一例としてのコイル501と、落下観察窓502を有している。このコイル501は、輸液ポンプ10を落下させてしまった場合に、あえて壊れやすいようにしている部分であり、例えば電源基板470に実装されている。コイル501は、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損する。このコイル501は、電源基板470に対して半田を用いて電気的に接続されているが、輸液ポンプ1が例えば床面に落下して所定の衝撃力を受けると、電源基板470から脱落するようになっている。この安価なコイル501は、例えば電源基板470に対して、脱落し易いように電気接続用の半田の量を減らしてある。
【0037】
輸液ポンプ10が落下する際の例えばフローリングのような床面までの高さの基準は、例えば1mであるが、特に限定されない。コイル501が電源基板470から脱落して、コイル501が電源基板470の電気回路を構成しなくなると、図4に示す電源基板470から制御部100へ電源電圧が供給されなくなる。
これにより、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、制御部100が確実に認識でき、制御部100は、輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、輸液ポンプ10のモータを能動的に停止させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる。従って、携帯型の輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
制御部100は、安価なコイル501が脱落することを利用して、輸液ポンプ10の落下衝撃を検出できるので、図4に示すメイン基板49には、落下の衝撃を検出するためのショックセンサとこのショックセンサを動作させるための内部バッテリを、別個に設定する必要が無いので、コストダウンが図れる。このとき、所定の衝撃力は、輸液ポンプ10が自然落下した場合を想定することにより、落下高さと輸液ポンプ10の重量によることになる。そのため、落下の高さを1mとして、そのときの衝撃力で落下衝撃を検出できるように、コイル501の取付け具合を調節する。つまり、所定の衝撃力は、例えば高さ50cmからの衝撃力に設定することも可能であり、破損対象部500を調節することで、使用状況に好ましい設定が可能である。
【0038】
コイル501が電源基板470から脱落すると、制御部100の指令により、図4に示す制御回路18Tは、表示部18において、「輸液ポンプが落下衝撃を受けて停止した旨」の警報内容を表示させて、医療従事者や患者に警報を発する。また、制御部100の指令により、制御回路85は、点灯表示部18を例えば点滅させて、医療従事者や患者に対して点滅により警報を発することができる。あるいは、制御部100の指令により、ブザー回路90は、ブザー88を鳴動させて、医療従事者や患者に対して音により警報を発することができる。このような表示部18における警報内容の表示と、点灯表示部18の点滅表示による警報と、ブザー88による音による警報は、1つを選択して、もしくは複数選択して使用することができる。
【0039】
図7(A)は、落下観察窓502の構成例を示しており、落下観察窓502は、落下したコイル501を留めておくための部品留置体503を有している。この部品留置体503は、透明の表面板504と、四方の側面板505を有している。部品留置体503は、本体11の前筐体49と後筐体44が形成する空間SP内に配置され、電源基板470上のコイル501が電源基板470から脱落した場合に、部品留置体503がコイル501を留めておくことができる。前筐体49には、例えば正方形の開口部506が形成されており、この開口部506には透明の表面板504が露出している。この開口部506は、図2に例示するように、カセット収納部15に形成されている。しかし、この開口部502の形成位置は、コイル501の搭載位置に対応していて脱落したコイルを留置できれば良いので、特に限定されることは無い。
図7(B)は、電源基板470上のコイル501が電源基板470から脱落した状態を示しており、コイル501が電源基板470から脱落すると、このコイル501は落下観察窓502内に留めておくことができる。これにより、医療従事者や患者は、落下観察窓502内に留まっているコイル501を、透明な表面板504を通して目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。すなわち、輸液ポンプ10を落下させてしまった後では、医療従事者や高齢者の患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、薬液の注入動作ができないようにすることができ、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0040】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態である輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図8に示す本発明の第2実施形態の電気的な構成を示すブロックは、図4に示す本発明の第1実施形態の電気的な構成を示すブロックとは異なり、制御部100には、内部バッテリ201が付加されている。内部バッテリ201は制御部100に対して、非常用の電源供給を行う。内部バッテリ201は、例えばコイン電池である。この内部バッテリ201は、衝撃履歴部として、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると電源供給機構の破損を行う破損対象部である。
図8に示すように、この内部バッテリ201は、電極211,212の間に電気的に接続されている。しかし、輸液ポンプ1が例えば床面に落下して所定の衝撃力を受けると、内部バッテリ201は、電極211,212の間から落下して、電源供給機構の破損を行うことから、内部バッテリ201からは制御部100に対して電源供給をしなくなる。
【0041】
これにより、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、制御部100が確実に認識でき、制御部100は、輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、輸液ポンプ10のモータを能動的に停止させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる。つまり、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や高齢者の患者に対して、携帯型の輸液ポンプのこれ以上の使用ができないことを認知させて、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
制御部100は、安価な内部バッテリ201が電極211,212の間から脱落することを利用して、輸液ポンプ10の落下衝撃を検出できるので、図4に示すメイン基板49に、ショックセンサを別個に設定する必要が無く、コストダウンが図れる。
【0042】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態である輸液ポンプ10を示す斜視図である。
図9に示す本発明の第3実施形態である輸液ポンプ10は、図1に示す本発明の第1実施形態の輸液ポンプ10に比べると、カバー12の構造が異なる。
図9の輸液ポンプ10のカバー12は、薄肉部分12Rを有している。薄肉部分12Rの厚みT1は、四方の周囲部分12Sの厚みT2に比べて、薄くなっている。この薄肉部分12Rは、四方の周囲部分12Sに比べて割れやすい部分、すなわち強度が弱い部分である。このカバー12の薄肉部分12Rは、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して所定の衝撃力を受けると破損可能な破損対象部である。輸液ポンプ1が例えば床面に落下して所定の衝撃を受けると、割れやすい部分である薄肉部分12Rが破損することから、医療従事者や患者は、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、目視で確認することができる。
これにより、携帯型の輸液ポンプを落下させてしまった後では、医療従事者や患者に対して、携帯型の輸液ポンプ10のこれ以上の使用ができないことを認知させて、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0043】
<第4実施形態>
図10は、本発明の第4実施形態である輸液ポンプ10の電池ボックス900を示す斜視図である。
電池ボックス900は、図6にも示すように後筐体44側に設けられており、電池ボックス900には、蓋部材901がヒンジ部902を用いてRR方向に開閉可能に取り付けられている。この電池ボックス900内には、2本の電池Bが着脱可能に装着できる空間903を有している。シール材950が、後筐体44の表面であってこの電池ボックス900の周囲の4辺の溝部分905に固定されている。この電池ボックス900内に配置されている電極931,932の内の電極932は、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、SS方向に脱落するようになっているので、電池Bは、図4に示す制御部100等に電源供給できなくなる。この電極932は、本実施形態における衝撃履歴部として設けられているもので、具体的には、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
【0044】
これにより、輸液ポンプ10が落下による衝撃を受けて輸液ポンプ10が破損したことを、制御部100が確実に認識でき、制御部100は、輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、輸液ポンプ10のモータを能動的に停止させて、薬液の注入動作ができないようにすることができる。従って、携帯型の輸液ポンプ10を落下させてしまった後に、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
制御部100は、電極932が脱落することを利用して、輸液ポンプ10の落下衝撃を検出できるので、図4に示すメイン基板49に、ショックセンサを別個に設定する必要が無く、コストダウンが図れる。
【0045】
<第5実施形態>
図11は、本発明の第5実施形態である輸液ポンプ10を示す図である。
図11に示す本発明の第5実施形態では、カバー12の左右の第1と第2ヒンジ部13,13を示しており、左側の第1ヒンジ部13は、通常の構造を有している。しかし、右側の第2ヒンジ部13は、第1ヒンジ部13の構造とは異なっており、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、第2ヒンジ部13は、破損するようになっている。すなわち、第2ヒンジ部13の支持ピン13Pの長さLL2が、第1ヒンジ部13の支持ピン13Rの長さLL1に比べて、短くなっており、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、第2ヒンジ部13の支持ピン13Pが挿入穴13Hから外れて、カバー12が本体11から外れた状態になる。この第2ヒンジ部13は、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
このように、医療従事者や患者は、カバー12が本体11から外れた状態を目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。これにより、カバー12が本体11から外れてしまうと、図3に示すようにカセット20をカセット収納部15に収納しても、カバー12によりカセット20を押して装着することができないので、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0046】
<第6実施形態>
図12は、本発明の第6実施形態である輸液ポンプ10を示す図である。
図12は、図1に示す輸液ポンプ10をJ方向から見た側面図であり、輸液ポンプ10の本体11と、スイッチカバー部材1を示している。
輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、スイッチカバー部材1は、本体11から脱落するようになっている。スイッチカバー部材11が脱落すると、開始停止スイッチ17と解除ボタン16,16は、スイッチカバー部材1とともに本体11から脱落するので、開始停止スイッチ17と解除ボタン16,16は操作できなくなる。このスイッチカバー部材1は、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
医療従事者や患者は、スイッチカバー部材1が本体11から外れた状態を目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。これにより、輸液ポンプ10は使用できないので、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0047】
<第7実施形態>
図13は、本発明の第7実施形態である輸液ポンプ10を示す図である。
図13は、図6に示すモータMと減速ユニット444の支持構造例を示している。モータMは、緩衝材478を介して本体11の後筐体44の内面477に対して支持されている。本体11の後筐体44の外面476には、溝部分475が形成されており、この溝部分475は、モータMに対応した位置にある。
図13(A)に示すように、モータMと減速ユニット444が、緩衝材478を介して本体11の後筐体44の内面477に対して支持されている状態で、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、図13(B)に示すように、後筐体44が溝部分475において折れてGF方向に変形することから、モータMと減速ユニット444はベース445からGF方向に外れてしまう。このため、モータMの駆動力は図6に示すロータユニット31を回転することができず、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出できない。このモータMと後筐体44の溝部分475は、本実施形態における衝撃履歴部であり、輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部である。
このため、医療従事者や患者は、後筐体44が溝部分475において折れてGF方向に変形してしまった状態を目視で確認することで、輸液ポンプ10が落下衝撃を受けて壊れたことを容易に認識することができる。これにより、輸液ポンプ10は使用できないので、医療従事者や患者が輸液ポンプ10をそのまま使い続けてしまうことを防ぐことができる。
【0048】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
上述した本発明の各実施形態は、1つだけを適用するか、あるいは2つ以上もしくは全部を任意に組み合わせて適用することができる。
衝撃履歴部として設定される部材である輸液ポンプ10が落下して衝撃を受けると落下する電子部品としては、コイルに限らず、抵抗体やコンデンサ等であっても良く、特に限定されない。
図13に示す本発明の実施形態では、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けると、本体11の後筐体44が溝部分475において折れてGF方向に変形する例を示しているが、これに限らず、本体11の前筐体49が変形する構造を採用しても良い。
本発明の各実施形態では、輸液ポンプ10が床面に落下して衝撃を受けて輸液ポンプ10が動作しなくなったことを、図4に示す表示部18に表示したり、図4に示すブザー88により音で警報で報知したり、スピーカ89により音声で警報を報知するようにしても良い。
【符号の説明】
【0049】
1・・・スイッチカバー部材(破損対象部)、10・・・輸液ポンプ(医療機器の一例)、11・・・本体(ケースともいう)、12・・・カバー、12R・・・カバーの薄肉部分(破損対象部)、13・・・ヒンジ部(破損対象部)31・・・輸液送り部としてのロータユニット、44・・・後筐体、49・・・前筐体、201・・・内部バッテリ(コイン電池、破損対象部)、400・・・メイン基板、470・・・電源基板(回路基板)、475・・・後筐体44の溝部分(破損対象部)、501・・・コイル(破損対象部)、932・・・電極(破損対象部)、M・・・モータ(破損対象部)、B・・・電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部を有する輸液ポンプであって、
前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部が、前記衝撃の衝撃履歴部として、予め設定されている
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
前記破損対象部は、回路基板に配置され前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記回路基板から脱落する電子部品であり、前記破損対象部は、脱落した前記電子部品を目視可能に留置する落下観察窓を有することを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記破損対象部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると電極から脱落する電源供給用のコイン電池であり、前記コイン電池が前記電極から外れたことを検出する制御部を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記輸液送り部にカセットを装着するためのカバーを有し、前記カバーは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する薄肉部分を有し、前記薄肉部分が前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに輸液ポンプ。
【請求項5】
電源供給用の電池を受けている電極を有し、前記電極は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると脱落する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項6】
前記輸液送り部にカセットを装着するためにヒンジ部を用いて前記ケースに対して開閉可能に保持されているカバーを有し、前記ヒンジ部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに輸液ポンプ。
【請求項7】
前記ケースには、動作の開始と停止をさせる開始停止スイッチを有するスイッチカバー部材が配置され、前記スイッチカバー部材は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記本体から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項8】
前記輸液送り部を駆動するモータを有し、前記モータは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記輸液送り部から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに輸液ポンプ。
【請求項1】
ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部を有する輸液ポンプであって、
前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損可能な破損対象部が、前記衝撃の衝撃履歴部として、予め設定されている
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
前記破損対象部は、回路基板に配置され前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記回路基板から脱落する電子部品であり、前記破損対象部は、脱落した前記電子部品を目視可能に留置する落下観察窓を有することを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記破損対象部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると電極から脱落する電源供給用のコイン電池であり、前記コイン電池が前記電極から外れたことを検出する制御部を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記輸液送り部にカセットを装着するためのカバーを有し、前記カバーは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する薄肉部分を有し、前記薄肉部分が前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに輸液ポンプ。
【請求項5】
電源供給用の電池を受けている電極を有し、前記電極は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると脱落する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項6】
前記輸液送り部にカセットを装着するためにヒンジ部を用いて前記ケースに対して開閉可能に保持されているカバーを有し、前記ヒンジ部は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると破損する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに輸液ポンプ。
【請求項7】
前記ケースには、動作の開始と停止をさせる開始停止スイッチを有するスイッチカバー部材が配置され、前記スイッチカバー部材は、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記本体から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項8】
前記輸液送り部を駆動するモータを有し、前記モータは、前記輸液ポンプが落下して衝撃を受けると前記輸液送り部から脱落する前記破損対象部であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに輸液ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−200421(P2012−200421A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68046(P2011−68046)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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