説明

輸液ポンプ

【課題】看護師等の医療従事者の操作ミス等に起因するフリーフローを確実に防止することが可能な輸液ポンプを実現する。
【解決手段】輸液チューブを閉塞または開放するローラクランプ7を保持するためのクランプ保持部113をポンプ本体11に設け、そのクランプ保持部113にローラクランプ7を保持し、扉12を閉鎖した状態で、ローラクランプ7のローラ72の一部が外部に露出する構造とする。そして、扉12が閉鎖状態(ロック状態)のときには、ローラクランプ7のローラ72をチューブ閉塞位置に操作しない限りは、扉12を開放できない構造とすることで、輸液中や輸液終了後の誤った操作によるフリーフローを確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の薬液を体内に注入する場合などに用いる輸液ポンプとしては、例えば、機械的注入式輸液ポンプ、重力を利用した自然滴下式輸液ポンプ、予圧注入式輸液ポンプなどの種々の方式のものが知られている。
【0003】
機械的注入式輸液ポンプとしては、シリンジのピストンを押圧して輸液を行うシリンジ式輸液ポンプや、ペリスタルティック式輸液ポンプがある。また、ペリスタルティック式輸液ポンプには、ローラを備えたロータ等により輸液チューブを押圧して輸液を行うローラ式輸液ポンプ、及び、フィンガ式輸液ポンプがある。
【0004】
これら輸液ポンプのうち、フィンガ式輸液ポンプは、例えば、一方向(輸液チューブに沿う方向)に配列された複数のフィンガ、その各フィンガを個別に進退駆動するカム、及び、ポンプの扉側に設けられ、その扉を閉じた状態で上記複数のフィンガの先端部に対向して配置される押圧板などを有するポンプ機構を備え、輸液バッグに接続された輸液チューブを、上記複数のフィンガと押圧板との間にセットした状態で、各フィンガをカムにて個別に進退駆動することにより、輸液チューブを各フィンガで順次押圧して輸液を蠕動運動にて送り出すように構成されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
このような輸液ポンプを用いて輸液を行う場合、輸液ポンプから輸液チューブを取り外す際などにおいて、輸液が重力によって落下し患者に過剰に輸液が投与されてしまう、いわゆる「フリーフロー」が発生するおそれがある。こうしたフリーフローを防止する方法として、ローラクランプを用いて輸液チューブを閉塞するという方法が採られている。その具体的な例について以下に説明する。
【0006】
まず、輸液の注入に用いられる輸液セットは、一般に、輸液バッグに接続される輸液チューブ、その輸液チューブの途中に設けられた点滴筒、ローラクランプ、及び、輸液チューブの先端に接続された注射針(静脈針)などを備えており、このような輸液セットの輸液チューブを輸液ポンプに取り付ける場合、まずは、ローラクランプにて輸液チューブを閉塞しておく。次に、輸液ポンプの扉を開いた状態で輸液チューブをポンプ本体(ポンプ機構部)に装着し、その後に輸液ポンプの扉を閉じる。このとき(扉を閉鎖したとき)、輸液ポンプのポンプ機構部にて輸液チューブの少なくとも1箇所が閉塞される。そして、このような輸液チューブのセットが完了した後に、ローラクランプを開放し、次いで輸液ポンプを駆動して所定の輸液を行う。一方、輸液を終了した際には、輸液ポンプを停止した後にローラクランプにて輸液チューブを閉塞し、この状態(フリーフローを防止した状態)で、輸液ポンプの扉を開いて輸液チューブを取り外す。このような操作手順により、輸液開始準備時、及び、輸液ポンプから輸液チューブを取り外す際のフリーフローを防止することができる。
【0007】
なお、フリーフローを防止する技術として、例えば、下記の特許文献3及び特許文献4に、アンチフリーフロー機能を備えた専用のクランプを用いた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−113726号公報
【特許文献2】特開2007−167316号公報
【特許文献3】特開2004−057577号公報
【特許文献4】特開2009−119161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した輸液ポンプにおいて、輸液中に誤って輸液ポンプの扉を開いてしまうと、フリーフローが発生する場合がある。また、輸液が終了した際に、ローラクランプにて輸液チューブを閉塞する操作を行う前に誤って輸液ポンプの扉を開いた場合にもフリーフローが発生する場合がある。このように、従来では、看護師等の医療従事者の操作ミス等によってフリーフローが起こるおそれがあり、その改善が望まれている。
【0010】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、フリーフローを確実に防止することが可能な輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、輸液チューブを押圧して当該輸液チューブ内の輸液を一方向に送液するポンプ機構を有するポンプ本体と、そのポンプ本体の輸液チューブ取付位置を開閉自在に覆う扉とを備えた輸液ポンプを前提としており、このような輸液ポンプにおいて、前記ポンプ本体に、ローラの移動によって輸液チューブを閉塞または開放するローラクランプを保持するためのクランプ保持部が設けられており、そのクランプ保持部にローラクランプを保持し、前記扉を閉鎖した状態で、当該ローラクランプのローラの一部が扉の開口部(ローラ貫通穴)を通じて外部に露出するように構成されているとともに、扉を閉鎖状態にロックするための扉ロック機構を備えている。
【0012】
そして、その扉ロック機構は、相互に係合可能なロック片と係合部材とを有し、前記扉が閉鎖状態であって前記クランプ保持部に保持された前記ローラクランプのローラがチューブ開放位置にあるときに、前記ロック片と前記係合部材とが係合して前記扉を閉鎖状態にロックするロック状態となり、前記扉が閉鎖状態であって前記クランプ保持部に保持された前記ローラクランプのローラがチューブ閉塞位置にあるときには、前記ロック片と前記係合部材との係合が解除されて前記扉が非ロック状態となるように構成されていることを技術的特徴としている。
【0013】
本発明の輸液ポンプによれば、扉が閉鎖状態(ロック状態)であるときに、ローラクランプのローラをチューブ閉塞位置に操作しない限りは、扉ロック機構のロック片と係合部材とが係合した状態(ロック状態)が維持される。これにより輸液中に誤って扉を開こうとしても、扉を開くことができないので、誤った操作によるフリーフローを防止することができる。また、輸液終了後、ローラクランプにて輸液チューブを閉塞する前に、扉を開こうとしても、扉を開くことはできない。これによって、ローラクランプを閉め忘れた状態(フリーフローが生じ得る状況)で輸液チューブを輸液ポンプから取り外してしまう、といった問題もなくなる。
【0014】
このように、本発明の輸液ポンプによれば、看護師等の医療従事者の操作ミス等に起因するフリーフローを確実に防止することができる。
【0015】
本発明の輸液ポンプに適用する扉ロック機構の具体的な例として、支点軸を中心に回動自在なロックレバーを有し、そのロックレバーの一端側に上記ロック片が設けられ、他端側に、上記クランプ保持部に保持されたローラクランプのローラに接触可能な作動片が設けられているとともに、ロックレバーを、ロック片と係合部材とが係合するロック位置に向けて付勢するロックばねを備えており、ロックレバーの作動片が自由な状態のときに、上記ロックばねの弾性力によって、ロック片が、当該ロック片と上記係合部材とが係合するロック位置に配置される。また、扉が閉鎖された状態で、クランプ保持部に保持されたローラクランプのローラがチューブ閉塞位置に移動操作されたときに、そのローラの移動過程においてロックレバーの作動片がローラに当接し、当該作動片が上記ロックばねの弾性力に抗して移動されて上記ロック片が非ロックに配置されるという構成を挙げることができる。
【0016】
この構成の輸液ポンプによれば、扉が開いている状態のときには、ロックばねの弾性力によってロックレバーのロック片がロック位置にあるので、ローラクランプをクランプ保持部に保持した際に、そのローラクランプのローラがチューブ閉塞位置にない場合には、扉を閉めようとしても、ロック片と係合部材とが干渉するため扉を閉めることができなくなる(例えば図11参照)。
【0017】
また、この構成の輸液ポンプにおいても、扉が閉鎖状態(ロック状態)であるときに、ローラクランプのローラをチューブ閉塞位置に操作しない限りは、ロックばねの弾性力によってロック片がロック位置に配置され、そのロック片と係合部材との係合状態(ロック状態)が維持されるので扉を開くことはできない。これにより、輸液中に誤って扉を開いてしまうことによるフリーフローを防止することができる。なお、この構成の輸液ポンプにおいても、輸液終了後に、扉の外部側に露出しているローラを回転操作してローラクランプにて輸液チューブを閉塞することで、扉が非ロック状態となり、扉を開くことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポンプ本体のクランプ保持部にローラクランプを保持する構造とし、扉が閉鎖状態で上記クランプ保持部に保持されたローラクランプのローラがチューブ閉塞位置にない場合は扉を開くことができず、そのローラをチューブ閉塞位置を配置したときに限って扉を開くことが可能になるので、看護師等の医療従事者の操作ミス等に起因するフリーフローを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の輸液ポンプの一例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の輸液ポンプの一例を示す概略構成図である。この図2では輸液ポンプの扉を開いた状態を示している。
【図3】図2のX矢視図である。
【図4】図2の輸液ポンプに適用するロックレバー等を抽出して示す斜視図である。
【図5】本発明の輸液ポンプの一例を示す概略構成図である。この図5では輸液ポンプの扉を開いた状態を示しており、また、ポンプ本体にローラクランプを保持した状態を示している。
【図6】本発明の輸液ポンプの一例を示す概略構成図である。この図6では図5の状態から輸液ポンプの扉を閉じた状態を示している。なお、図6では扉の図示は省略している。
【図7】本発明の輸液ポンプの一例を示す概略構成図である。この図7では図6の状態からローラクランプのローラを回転操作して扉をロックした状態を示している。なお、図7では扉の図示は省略している。
【図8】図7のI−I断面図である。
【図9】図7のII−II断面図である。
【図10】ポンプ本体のクランプ保持部にローラクランプを保持した状態を示す縦断面図である。
【図11】輸液ポンプの扉が開放状態であり、クランプ保持部に保持したローラクランプが閉塞状態でない場合の状態を示すである。
【図12】本発明の輸液ポンプに適用するポンプ機構の構造を示す図である。
【図13】ポンプ機構のフィンガの動作を示す図である。なお、図13は各フィンガをカム軸と直交する面で切断した断面図である。
【図14】ポンプ機構の動作説明図である。
【図15】ポンプ機構の動作説明図である。
【図16】輸液セットの構成を模式的に示す図である。
【図17】ローラクランプの斜視図である。
【図18】ローラクランプの側面図(A)及び平面図(B)を併記して示す図である。
【図19】ローラクランプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
−輸液セット−
輸液ポンプについて説明する前に、輸液に用いる輸液セットについて図16を参照して説明する。
【0022】
図16に示す輸液セットSは、薬液を収容する輸液バッグB、この輸液バッグBのポートBpに差し込まれる連結針S1、点滴液の流量を目視にて確認するための点滴筒S2、これら連結針S1と点滴筒S2とを繋ぐ上流側の輸液チューブT、上記点滴筒S2に接続される下流側の輸液チューブT、この下流側の輸液チューブTの途中に設けられたローラクランプ7、及び、輸液チューブTの先端部に接続される注射針(静脈針)S3などによって構成されている。
【0023】
ローラクランプ7は、図17〜図19に示すように、クランプ本体71とローラ72とを備えている。クランプ本体71は、所定の間隔を隔てて対向する一対の側壁71a,71bと底板71cとが一体形成された樹脂成形品である。その各側壁71a,71bの内面には、ローラ72の回転軸72a,72bを支持しつつガイドするガイド溝711a,711bが設けられている。クランプ本体71の底面71d(底板71cの上面)にはV溝71eが形成されている。また、クランプ本体71の底面71dは上記ガイド溝711a,711bに対して傾斜しており、クランプ本体71の一端側(フランジ71f側)から他端側に向かうにしたがって、ガイド溝711a,711bと底面71dとの間の距離が小さくなるように構成されている。
【0024】
上記ローラ72は、ガイド溝711a,711bに沿って、クランプ本体71の一端部(フランジ71f側の端部)と、他端部(フランジ71fとは反対側の端部)との間において回転移動可能であり、フランジ71f側の移動端(開放側移動端)にローラ72が位置したときに、ローラ72の外周面とクランプ本体71の底面71dとの間の間隔が最大となり、フランジ71fとは反対側の移動端(閉塞側移動端)にローラ72が位置したときに、ローラ72の外周面とクランプ本体71の底面71dとの間の間隔が最小となる。
【0025】
以上の構造のローラクランプ7において、輸液チューブTをクランプ本体71の底面71dとローラ72の外周面との間に挿入した状態で、ローラ72を回転操作して、ローラ72をクランプ本体71の閉塞側移動端に配置すると、輸液チューブTが完全に閉塞される状態となる。この状態からローラ72をクランプ本体71のフランジ71f側に向けて回転移動させていくと、そのローラ72の回転移動に伴って輸液チューブTへの押圧量(扁平量)が小さくなり、輸液チューブT内を流れることが可能な輸液の量が多くなっていく。そして、ローラ72を開放側移動端に配置した状態で、輸液チューブTはローラ72にて押圧されない状態(完全開放状態)となる。
【0026】
[実施形態1]
−輸液ポンプ−
本発明の輸液ポンプの一例について図1〜図15参照して説明する。
【0027】
この例の輸液ポンプ1は、ペリスタルティックフィンガ式の輸液ポンプであって、ポンプ本体(ケーシング)11と、このポンプ本体11の前面側(チューブ取付位置)を閉鎖する扉12とを備えている。扉12はヒンジ14,14を介してポンプ本体11に揺動自在(回動自在)に支持されており、ポンプ本体11の前面側を完全に閉鎖する位置から、完全開放位置(例えば、180°開く位置)までの間において揺動可能となっている。
【0028】
ポンプ本体11の前面には、輸液送り方向の上流側から順に、チューブ装着ガイド部111、そのチューブ装着ガイド部111から矩形状に拡大したポンプ部112、及び、クランプ保持部113が設けられている。チューブ装着ガイド部111の溝幅は、上記した輸液セットの輸液チューブTの外径に対応する大きさとなっている。また、ポンプ部112には、後述するポンプ機構2のフィンガ21・・21の先端部が臨んでいる。チューブ装着ガイド部111は横方向に湾曲した形状(曲り形状)に形成されている。
【0029】
なお、扉12の内面に押圧板24が設けられている。この押圧板24は、扉12を閉じた状態で上記ポンプ機構2の複数のフィンガ21・・21の先端部に対向する位置に配置されている。
【0030】
クランプ保持部113は、図16〜図19に示すローラクランプ7のクランプ本体71を、その底板71c側から嵌め込むことが可能な保持凹部113aを備えており、この保持凹部113aにローラクランプ7(クランプ本体71)を嵌め込んだ状態で、輸液チューブTが輸液ポンプ1の上下方向に沿って配置され、ローラ72の上下方向への移動により輸液チューブTの閉塞と開放とを行うことができる。
【0031】
また、ポンプ本体11の側端部(ヒンジ14とは反対側の端部)には、後述する扉ロック機構5の係合部材121が入り込むことが可能なロック用凹部11aが設けられている。このロック用凹部11aの縦壁(凹部の底壁)110aには矩形スリット状の貫通穴110bが設けられており(図6〜図9参照)、この貫通穴110bを通じて、後述するロックレバー5Aのロック片51がポンプ本体11の外部(ロック用凹部11aの内部)に突出可能となっている。
【0032】
一方、扉12には、上記クランプ保持部113に対応する位置(扉12の閉鎖状態でクランプ保持部113と対向する位置)に操作凹部123が設けられている(図1及び図8等参照)。この操作凹部123の奥側の縦壁(扉前面と平行な壁体)123aは、扉12を閉鎖した状態で、ポンプ本体11のクランプ保持部113に保持したローラクランプ7の側壁71a,71bの前面(上面)の接触(もしくは近接)するようにようになっている(図8参照)。なお、操作凹部123の上下壁及び左右は、後述するローラ72の回転操作を行いやすくするために、扉12の正面側に向かうにしたがって上下・左右に広がる傾斜壁となっている。
【0033】
また、操作凹部123の縦壁123aには、矩形スリット状のローラ貫通穴12aが設けられている。このローラ貫通穴12aは、ローラクランプ7のローラ72の厚さ(軸方向の幅)よりも所定量だけ大きなスリット幅で、クランプ保持部113に保持したローラクランプ7のローラ72の移動方向(上下方向)に沿って延びる穴である。ローラ貫通穴12aの上下方向の長さ寸法は、ローラクランプ7のローラ72の移動範囲(開放側移動端〜閉塞側移動端の範囲)よりも大きく設定されている。
【0034】
そして、これらの操作凹部123及びローラ貫通穴12aなどの構成によって、クランプ保持部113にローラクランプ7を保持して扉12を閉じた状態で、ローラクランプ7のローラ72の一部(略半分)がローラ貫通穴12aを通じて外部に露出するようになっている。したがって、看護師等は、輸液ポンプ1の内部に保持したローラクランプ7のローラ72を、外部(扉12の正面側)からの操作にて回転させることが可能であり、そのローラ72を上記した開放側移動端と閉塞側移動端との間において移動させることができる。つまり、外部操作により輸液ポンプ1内の輸液チューブTの開放と閉塞とを行うことができる。
【0035】
また、扉12の側端部(ヒンジ14とは反対側の端部)には、後述する扉ロック機構5の構成部材の1つである係合部材121が設けられている。係合部材121には、扉12を閉じた状態で、後述するロックレバー5Aのロック片51が入り込むことが可能な係合穴121aが設けられている。そして、扉12を閉じた状態で、後述する動作によりロックレバー5Aのロック片51が係合部材121の係合穴121aに入り込むと、ロック片51と係合部材121とが係合状態となり、ヒンジ14を中心とする係合部材121の回動、つまり、扉12の揺動(回動)が阻止されて扉12が完全閉鎖状態に保持される(扉ロック状態)。なお、扉12の内壁120には、ロックレバー5A及び作動片52等との干渉を避けるための開口部120aが設けられている。
【0036】
−ポンプ機構−
次に、ポンプ機構2の具体的な例について図12〜図15を参照して説明する。なお、図12〜図15において、偏心カム22については切断しないで表記している。
【0037】
ポンプ機構2は、一方向(上記ポンプ本体11に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図12に示す例では13個)のフィンガ21・・21、その各フィンガ21をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム22・・22、各偏芯カム22を回転するカム軸23、上記した押圧板24、及び、保持フレーム20などによって構成されている。
【0038】
保持フレーム20の前面側には各フィンガ21に対応する位置に開口部20a・・20aが設けられており、この開口部20aを通じて各フィンガ21の先端部が保持フレーム20の前面側(輸液チューブT側)に臨んでいる。また、これら複数のフィンガ21・・21の軸方向(カム軸23の軸心方向)の移動は保持フレーム20によって規制されている。なお、各フィンガ21は板状の部材であって、相互に摺動しながら個別に移動(進退移動)可能となっている。
【0039】
各フィンガ21にはそれぞれカム穴21aが形成されている。その各カム穴21aには、それぞれ円板状の偏心カム22が嵌め込まれている。各偏心カム22はカム穴21a内において回転可能であり、これら偏心カム22・・22は上記カム軸23に回転一体に取り付けられている。
【0040】
各偏心カム22は、その円板の中心がカム軸23に対して偏心しており、図13に示すように、カム軸23が1回転(360°回転)すると、フィンガ21の先端部が最前進位置(チューブ閉塞位置)と最後退位置(チューブ完全開放位置)との間を1回往復するようになっている。そして、これらの複数の偏心カム22は相互に所定の位相差(カム軸23の回転方向の位相差)をもってカム軸23に取り付けられている。具体的には、偏心カム22・・22は、カム軸23の軸方向に並ぶ複数のフィンガ21・・21の先端部が略正弦波に沿うような位相差(360°/偏心カム22の数)でカム軸23に取り付けられている。なお、図13には、カム軸23が90°回転するごとのフィンガ21の位置を示している。
【0041】
上記ポンプ機構2のカム軸23は、図12に示すように、上下方向(複数のフィンガ21・・21の配列方向)に沿って設けられている。カム軸23の下端部は、保持フレーム20に設けられたベアリング26によって回転自在に支持されている。カム軸23の上側部分は、保持フレーム20の壁体を貫通して上方に突出している。そのカム軸23の貫通部分にはベアリング25が設けられており、そのベアリング25によってカム軸23の上側部分が回転自在に支持されている。
【0042】
カム軸23の上端部にはタイミングプーリ(従動プーリ)201が回転一体に取り付けられている。このカム軸23のタイミングプーリ201と、電動モータ(例えばステッピングモータ)4の回転軸41に回転一体に取り付けられたタイミングプーリ(駆動プーリ)202との間にタイミングベルト203が巻き掛けられており、その電動モータ4の駆動によりカム軸23が回転する。電動モータ4は制御部3によって駆動制御(回転数制御)される。なお、この例において、電動モータ4には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
【0043】
そして、電動モータ4の駆動によりカム軸23が回転すると、各偏心カム22がフィンガ21のカム穴21a内で回転する。この偏心カム22の偏心回転に伴って、各フィンガ21が上流側(輸液送り方向の上流側)から下流側にかけて順次前進・後退していく。具体的には、図14(A)、(B)及び図15(A)、(B)に示すように、フィンガ21の先端部が上流側から下流側に蠕動波状に移動していく。このようなフィンガ21・・21の進退移動(往復移動)によって、これらフィンガ21・・21の先端部と押圧板24との間に配置された輸液チューブTに蠕動運動が付与され、当該輸液チューブT内の輸液が上流側から下流側へと送り出されていく。なお、この例では、輸液チューブTがフィンガ21・・21から受ける過負荷を軽減するために、押圧板24とベース板15との間に緩衝シート24aが設けられている。
【0044】
ここで、この例において、制御部3は、マイクロコンピュータ等を主体として構成されている。制御部3は、例えば扉12の前面に設置の操作パネル122(図1参照)の操作にて設定された輸液流量(単位時間当たりの輸液の送り量)の設定値に応じて、電動モータ4の回転数を制御することにより輸液流量を可変に調整することが可能であり、例えば輸液流量を1mL/h〜1200mL/hの範囲内において、[1mL/h]単位で設定することができる。また、制御部3は、後述するローラ移動機構3の電動モータ323の駆動制御を行う。さらに、制御部3は、上記操作パネル122に、「輸液流量(注入量)」や「注入積算時間」などの動作情報を表示し、また、「気泡混入異常」や「扉閉塞不良」などを含む各種警告を表示するように構成されている。
【0045】
−扉ロック機構−
次に、扉ロック機構5について図2〜図10を参照して説明する。
【0046】
この例の扉ロック機構5は、ロックレバー5A、ポンプ本体11の前壁110の裏面にに設けた支点軸53、ロックばね54、及び、上記扉12に設けた係合部材121などによって構成されている。
【0047】
ロックレバー5Aは、レバー片50、ロック片51及び作動片(入力片)52を備えている。レバー片50は、ポンプ本体11の上下方向に沿って延びる縦アーム50aと、ポンプ本体11の横方向(縦アーム50aと直交する方向)に沿って延びる横アーム50bとが一体形成されている。
【0048】
縦アーム50aの先端(ロックレバー5Aの一端側)にロック片51が一体形成されている。ロック片51は縦アーム50aに対して直交する方向に延びる板状の部材である。ロック片51は、上述したように、ロック用凹部11aの縦壁110aに設けた貫通穴110bを通じて外部に突出可能である。
【0049】
横アーム50bは、ポンプ本体11の横方向に延びる第1横片501bと、この第1横片501bの先端からポンプ本体11の前後方向に沿ってポンプ本体11の前面側に延びる連結片502bと、この連結片502bの先端からポンプ本体11の横方向に延びる第2横片503bとが一体形成されており、その第2横片503bの先端(ロックレバー5Aの他端側)に作動片52が一体形成されている。
【0050】
作動片52はポンプ本体11の上下方向に沿って延びる板状の部材である。作動片52は、図2〜図10に示すように、クランプ保持部113の下部中央に配置されており、そのクランプ保持部113にローラクランプ7を保持した状態で、作動片52の先端部52aがローラクランプ7のローラ72の外周面に対向するようになっている。つまり、作動片52は、その先端部52aがローラクランプ7のローラ72の外周面に接触可能な位置に配置されている。
【0051】
上記ロックレバー5Aを構成する各片のうち、縦アーム50a(ロック片51)、横アーム50bの第1横片501b及び連結片502bの一部は、ポンプ本体11の前壁110の裏面側に配置されており、その連結片502bの残りの部分及び第2横片503b(作動片52)はポンプ本体11の前壁110の前面側に配置されている。連結片502bは、前壁110に開口された貫通穴110cを通じて、前壁110の前面側と裏面側とに臨んでいる。
【0052】
上記縦アーム50aと横アーム50bとは互いに直交した状態で連結されている。これら縦アーム50aと横アーム50bとの連結部50cが支点軸53によって回転自在に支持されており、ロックレバー5Aの全体が支点軸53を中心として回動(揺動)可能となっている。そのロックレバー5Aの回動によってロック片51が、図2、図4及び図7に示すロック位置と、図5及び図6に示す非ロック位置とに移動することができる。
【0053】
なお、ロックレバー5Aの縦アーム50aの側部には、ロック片51のロック用凹部11aへの突出量(ロック片51の移動)を規定するための位置決め部材(突部)56が設けられており、この位置決め部材56にロックレバー5Aの縦アーム50aが当たった状態で、ロック片51が上記ロック位置に位置決めされる。
【0054】
上記支点軸53は、ポンプ本体11の前壁110の裏面から突出する段付きの軸(前壁110に対して垂直な軸)であって、その小径部53aに上記レバー片50の結合部50cに設けた嵌合穴(支点穴)50dが嵌め込まれている。支点軸53の小径部53aの先端部にはピン55が取り付けられている。そのピン55とレバー片50(結合部50c)との間にロックばね(ねじりコイルばね)54が配置されている。このロックばね54の一端部はピン55に係止されている。また、ロックばね54の他端部はレバー片50の第1横片501bに係止されており、このロックばね54の弾性力によって、レバー片50が図2中矢印の向き(ポンプ本体11の正面から見て時計方向(ロック側))に付勢されている。
【0055】
以上の構造の扉ロック機構5において、ロックレバー5Aの作動片52が自由な状態であるときには、ロックばね54の弾性力によって、ロック片51が図2、図4及び図7にに示すロック位置に配置される。一方、作動片52に下向きの力(ポンプ部112に対して離反する向きの力)が作用すると、ロックレバー5Aが支点軸53を中心として反時計方向(ポンプ本体11の正面から見て反時計方向)に回動する。そして、作動片52が図5、図6及び図9(A)に示す位置(ローラ72の閉塞側移動端に相当する位置)に移動した状態で、ロック片51が非ロック位置に配置される。なお、この例において、ロックばね54の弾性力は、看護婦等がローラクランプ7のローラ72を回転操作したときに、そのローラ72にて作動片52を押す力よりも小さく設定されており、ローラ操作によりロックレバー5Aをロックばね54の弾性力に抗して回動させることが可能である。
【0056】
−ローラクランプの開閉操作等について−
次に、輸液ポンプ1への輸液チューブTのセッティング、及び、ローラクランプ7の開閉操作について図2〜図11を参照して説明する。
【0057】
(S1)まず、図16に示す輸液セットSのローラクランプ7のローラ72を操作して輸液チューブTを閉塞しておく(ローラ72を閉塞側移動端に配置しておく)。
【0058】
次に、輸液ポンプ1の扉12を開いた状態(図2参照)で、ローラクランプ7をポンプ本体11の前面側に持っていき、そのローラクランプ7のクランプ本体71を、フランジ71fを上側にした姿勢でポンプ本体11のクランプ保持部113(保持凹部113a)に嵌め込む(図5及び図10(A)参照)。具体的には、まずは、ローラクランプ7をクランプ保持部113の上方側に配置した状態で、そのローラクランプ7の下流側の輸液チューブTを、ロックレバー5Aの作動片52とクランプ保持部113の側壁113b(図2、図8参照)との間に押し込んで、輸液チューブTをクランプ保持部113の保持凹部113a内(作動片52の内側)に挿入する。次に、輸液チューブTを保持凹部113a内に挿入した状態で、ローラクランプ7及び輸液チューブTを下方側にスライドさせながら、クランプ本体71を保持凹部113a内に嵌め込む。このとき、人差し指などにより、ロックレバー5Aを非ロック側に回動(ポンプ本体11の正面から見て反時計方向に回動)させた状態でローラクランプ7を保持凹部113aに嵌め込む。あるいは、ローラクランプ7のローラ72にて作動片52を押し下げながらローラクランプ7を保持凹部113aに嵌め込む、というような手法によりローラクランプ7をクランプ保持部113に保持する。
【0059】
このようにして、ローラクランプ7をポンプ本体11のクランプ保持部113に保持した状態では、図5及び図10(A)に示すように、ロックレバー5Aの作動片52の先端部52aが、ローラ移動範囲の閉塞側移動端に位置しているローラ72の外周面に当接し、ロック片51が非ロック位置に配置される。
【0060】
(S2)ローラクランプ7をクランプ保持部113に保持した状態で、ローラクランプ7の上流側の輸液チューブTをチューブ装着ガイド部111及びポンプ部112に装着する。このようなチューブ装着が終了した後に扉12を閉める。この状態(扉12を閉じた状態)で、扉12の前面側に露出しているローラ72を回転操作して、ローラ72を上側に回転移動(チューブ解放位置(開放側移動端)側に向けて回転移動)させる(図10(B)参照)。このローラ72の移動過程において、ロックばね54の弾性力によってロックレバー5Aがロック側に回動(ポンプ本体11の正面から見て反時計方向に回動)し、ロックレバー5Aの作動片52がローラ72の外周面から外れた時点(作動片52が自由な状態になった時点)で、ロック片51がロック位置(図7〜図9等に示す位置)に配置される。
【0061】
ここで、この(S2)の操作を行う際に、クランプ本体11のクランプ保持部113に保持したローラクランプ7のローラ72がチューブ閉塞位置にない場合(ロックレバー5Aの作動片52が自由な状態である場合)は、ロックばね54の弾性力によって、ロックレバー5Aのロック片51がポンプ本体11のロック用凹部11aの内部に突出しているので、扉12を閉めようとしたときに、扉12の係合部材121がロック片51に当たる(干渉する)ため扉12を閉めることはできない。これによって、例えば、輸液ポンプ1に輸液チューブTを装着する際に、ローラクランプ7にて輸液チューブTを閉塞することを忘れている場合は、その旨(チューブ閉塞忘れ)を看護等が知ることができる。なお、こうした場合、クランプ保持部113に保持したローラクランプ7のローラ72を閉塞側移動端まで回転移動させ、ロック片51を非ロック位置にまで移動させた状態(扉ロックを解除した状態)で扉12を閉め、その後に、ローラ72を回転操作してチューブ解放位置(開放側移動端)に移動させるという操作を行う。
【0062】
このようなチューブセッティングを終了した後に、輸液ポンプ1を駆動させて輸液セットSのプライミング操作を行っておく。輸液ポンプ1の駆動によるプライミング操作の代わりに、輸液ポンプ1にセッティングを行う前に落差圧でプライミング操作を行った輸液セットSを輸液ポンプ1にセッティングするようにしてもよい。
【0063】
そして、以上のような処理により輸液の準備が完了し、その後に、輸液ポンプ1を駆動して所定の輸液(点滴)を開始する。
【0064】
(S3)輸液ポンプ1の運転を開始してからの積算時間(または輸液積算量)が予定の値に達した時点で輸液ポンプ1の運転を停止する。次に、輸液ポンプ1の停止を確認した後に、扉12の前面側に露出しているローラ72を回転操作して、ローラ72を下側に回転移動(チューブ閉塞位置(閉塞側移動端)に向けて回転移動)させる。このローラ72の移動過程において、ローラ72の外周面がロックレバー5Aの作動片52の先端部52aに当接した時点から、ロックレバー5Aが非ロック側に、ロックばね54の弾性力に抗して回動(ポンプ本体11の正面から見て反時計方向に回動)し、ローラ72が閉塞移動端に達した時点(輸液チューブTが完全閉塞状態となった時点)でロック片51が非ロック状態になる(図6等参照)。この後に、扉12を開いて、輸液チューブT及びローラクランプ7を輸液ポンプ1から取り外す。
【0065】
以上のように、この例の輸液ポンプ1によれば、扉12が閉鎖状態(扉のロック状態)にあるときに、ローラクランプ7のローラ72をチューブ閉塞位置に操作しない限りは、扉ロック機構5のロック片51と係合部材121とが係合した状態(扉のロック状態)が維持される。これにより、輸液中に誤って扉12を開こうとしても、扉12を開くことができないので、誤った操作によるフリーフローを防止することができる。
【0066】
また、輸液終了後、ローラクランプ7にて輸液チューブTを閉塞する前に、扉12を開こうとしても、扉12を開くことはできない。これによって、ローラクランプ7を閉め忘れた状態(フリーフローが生じ得る状況)で輸液チューブTを輸液ポンプ1から取り外してしまう、といった問題もなくなる。
【0067】
さらに、本発明の輸液ポンプは、ポンプ本体11に輸液チューブTのローラクランプ7を保持することによりフリーフローを防止することができるので、専用のクランプを用いる必要がなく、ローラクランプを備えた一般的な輸液チューブにおいてもフリーフローを防止することができる。
【0068】
このように、この例の輸液ポンプ1によれば、看護師等の医療従事者の操作ミス等に起因するフリーフローを確実に防止することができる。
【0069】
なお、輸液ポンプ1の持ち運び時や未使用保管時などにおいて、輸液ポンプ1の扉12を閉めておく必要がある場合、次のような操作を行えばよい。
【0070】
例えば、板材や棒材等(もしくはローラクランプ7のローラ72)を、扉12のローラ貫通穴12aに扉前面側から挿入し、ロックレバー5Aの作動片52を押し下げてロック片51を非ロック位置に配置した状態で、扉12を閉じ、板材や棒材等を抜き取ることにより扉12を完全閉鎖状態にロックする。また、このような扉12のロックを解除するには、板材や棒材等を扉12のローラ貫通穴12aに扉前面側から挿入し、ロックレバー5Aの作動片52を押し下げてロック片51を非ロック位置に配置した状態で、扉12を開くという操作を行えばよい。
【0071】
以上の例では、ロック片51をロック位置に向けて付勢するロックばね54として、ねじりコイルばねを用いているが、本発明はこれに限られることなく、例えば、圧縮コイルばね、引張コイルばねなど、ロック片51(ロックレバー5A)をロック位置に向けて付勢できるものであれば、他の任意のばね(弾性部材)を適用してもよい。
【0072】
以上の例では、ロック片51(ロックレバー5A)をポンプ本体11側に設け、係合部材121を扉12側に設けているが、本発明はこれに限られることなく、ロック片を扉12側に設け、係合部材をポンプ本体11側に設けるようにしてもよい。
【0073】
[実施形態2]
次に、本発明の輸液ポンプの他の例について説明する。
【0074】
この例の輸液ポンプは、上記した[実施形態1]と同様に、ペリスタルティックフィンガ式の輸液ポンプであって、ポンプ本体11と、このポンプ本体11の前面側(チューブ取付位置)を閉鎖する扉12とを備えている(図1及び図2等参照)。扉12は、ヒンジ14,14を介してポンプ本体11に揺動自在(回転自在)に支持されており、ポンプ本体11の前面側を完全に閉鎖する位置から完全開放位置(例えば、180°開く位置)までの間において揺動可能となっている。
【0075】
この例の輸液ポンプにおいて、以下に説明する構成以外については、上記した[実施形態1]と同様な構成であるので、その具体的な説明は省略する。
【0076】
この例の輸液ポンプは、ローラ位置センサ600及び電気式の扉ロック機構700(いずれも図示せず)を備えている。
【0077】
ローラ位置センサ600は、例えば、発光素子と受光素子とからなる公知の光電センサ(反射型)であって、ポンプ本体11のクランプ保持部113に保持したローラクランプ7のローラ72がチューブ解放位置(開放側移動端)にあるときに(図7参照)、ローラ検出信号(ON信号)を出力するようになっている。なお、ローラ位置センサ600としては、発光素子と受光素子とを対向配置する構造の透過型光電センサを用いてもよい。また、このような光電センサのほか、例えば、ローラ72がチューブ解放位置(開放側移動端)に位置したときにON(またはOFF)となるリミットスイッチなど、他の公知の位置・物品検出手段を適用してもよい。
【0078】
電気式の扉ロック機構700は、例えばソレノイドをアクチュエータとし、上記ロータ位置センサ600の出力信号がON信号であるときに扉12を閉鎖状態にロックし、OFF信号であるときに扉12のロック状態を解除(非ロック状態)するように構成されている。
【0079】
そして、この例では、扉12が閉鎖状態のときに、ポンプ本体11のクランプ保持部113に保持されたローラクランプ7のローラ72をチューブ閉塞側からチューブ開放位置(開放側移動端)に回転移動させたときに(図7参照)、ロック位置センサ600の検出信号がOFF信号からON信号に切り替わり、これに応じて扉ロック機構700が作動して扉12がロック状態となる。この状態から、ローラ72をチューブ解放位置に回転移動させると、ロック位置センサ600の検出信号がON信号からOFF信号に切り替わり、これに応じて扉ロック機構700によるロックが解除され扉12が非ロック状態となる。
【0080】
以上のように、この例の輸液ポンプにおいても、扉12が閉鎖状態(扉のロック状態)にあるときに、ローラクランプ7のローラ72をチューブ閉塞位置に操作しない限りは、扉12のロック状態)が維持される。これにより、輸液中に誤って扉12を開こうとしても、扉12を開くことができないので、誤った操作によるフリーフローを防止することができる。
【0081】
また、輸液終了後、ローラクランプ7にて輸液チューブTを閉塞する前に、扉12を開こうとしても、扉12を開くことはできない。これによって、ローラクランプ7を閉め忘れた状態(フリーフローが生じ得る状況)で輸液チューブTを輸液ポンプ1から取り外してしまう、といった問題もなくなる。さらに、輸液開始後のローラクランプ7の開け忘れも防止することができる。
【0082】
−他の実施形態−
以上の例では、輸液ポンプのポンプ機構として、ペリスタルティックフィンガ式のポンプ機構を用いているが、これに限定されることなく、輸液チューブ内の輸液を送液することが可能な機構であれば、他の方式のポンプ機構を採用してもよい。その一例として、ローラ式のポンプ機構や、例えば、特開2010−136853号公報に開示されているようなV字構造有機アクチュエータモジュールを備えたポンプ機構などを挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、医療用の薬液を体内に注入する場合などに用いる輸液ポンプに利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 輸液ポンプ
11 ポンプ本体
11a ロック用凹部
110b 貫通穴
112 ポンプ部
113 クランプ保持部
12 扉
12a ローラ貫通穴
121 係合部材
121a 係合穴
123 操作凹部
2 ポンプ機構
5 扉ロック機構
5A ロックレバー
51 ロック片
52 作動片
53 支点軸
54 ロックばね(ねじりコイルばね)
55 ピン
56 位置決め部材
7 ローラクランプ
72 ローラ
S 輸液セット
B 輸液バッグ
T 輸液チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液チューブを押圧して当該輸液チューブ内の輸液を一方向に送液するポンプ機構を有するポンプ本体と、前記ポンプ本体の輸液チューブ取付位置を開閉自在に覆う扉とを備えた輸液ポンプにおいて、
前記ポンプ本体に、ローラの移動によって輸液チューブを閉塞または開放するローラクランプを保持するためのクランプ保持部が設けられており、そのクランプ保持部にローラクランプを保持し、前記扉を閉鎖した状態で、当該ローラクランプのローラの一部が扉の開口部を通じて外部に露出するように構成されているとともに、前記扉を閉鎖状態にロックするための扉ロック機構を備え、
前記扉ロック機構は、相互に係合可能なロック片と係合部材とを有し、前記扉が閉鎖状態であって前記クランプ保持部に保持された前記ローラクランプのローラがチューブ開放位置にあるときに、前記ロック片と前記係合部材とが係合して前記扉を閉鎖状態にロックするロック状態となり、前記扉が閉鎖状態であって前記クランプ保持部に保持された前記ローラクランプのローラがチューブ閉塞位置にあるときには、前記ロック片と前記係合部材との係合が解除されて前記扉が非ロック状態となるように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の輸液ポンプにおいて、
前記扉ロック機構は、支点軸を中心に回動自在なロックレバーを有し、前記ロックレバーの一端側に前記ロック片が設けられ、他端側に、前記クランプ保持部に保持された前記ローラクランプのローラに接触可能な作動片が設けられているとともに、前記ロックレバーを、前記ロック片と前記係合部材とが係合するロック位置に向けて付勢するロックばねを備え、
前記ロックレバーの作動片が自由な状態のときに、前記ロックばねの弾性力によって、前記ロック片が、当該ロック片と前記係合部材とが係合するロック位置に配置され、
前記扉が閉鎖された状態で、前記クランプ保持部に保持された前記ローラクランプのローラがチューブ閉塞位置に移動操作されたときに、そのローラの移動過程において前記ロックレバーの作動片が前記ローラに当接し、当該作動片が前記ロックばねの弾性力に抗して移動されて前記ロック片が非ロック位置に配置されることを特徴とする輸液ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−245111(P2012−245111A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118136(P2011−118136)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】