輸液量調整装置、輸液量調整方法、輸液注入システム及びプログラム
【課題】薬液等の輸液を生体等に注入する輸液注入システムにおける輸液注入量を所定の設定値に保つことが可能であるとともに、システムを構成する各構成要素における異常事態の発生を自動的に確実かつ速やかに検知することが可能な輸液量調整装置を提供する。
【解決手段】針3及び輸液容器2のそれぞれと輸液管を介して接続され、輸液容器2から流入する輸液を、流量を調整して針に向けて送出する輸液ポンプ8と、輸液ポンプ8から吐出される輸液の流量を測定する流量センサ9と、測定流量が、設定流量となるように輸液ポンプ8の圧電素子に印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御する制御手段7と、を備え、制御手段7は、測定流量及び圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、輸液容器2、輸液ポンプ8、又は針3における異常事態の発生を検知する。
【解決手段】針3及び輸液容器2のそれぞれと輸液管を介して接続され、輸液容器2から流入する輸液を、流量を調整して針に向けて送出する輸液ポンプ8と、輸液ポンプ8から吐出される輸液の流量を測定する流量センサ9と、測定流量が、設定流量となるように輸液ポンプ8の圧電素子に印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御する制御手段7と、を備え、制御手段7は、測定流量及び圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、輸液容器2、輸液ポンプ8、又は針3における異常事態の発生を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液量調整装置及び輸液量調整方法、並びに輸液注入システムに関し、さらに詳しくは、輸液が収容された容器から生体に注入される輸液の注入量を調整する輸液量調整装置及び輸液注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、生体とは、人間のみに限らず広く動物の意を含み、また、生体内とは、生体の血管内、臓器内等の意を広く含むものとする。また、輸液は、液体の薬品の他、チューブを介して生体に注入される液体を広く含む。生体に輸液を注入するには、一般に、点滴装置が用いられる。本明細書では、かかる意味で生体、生体内、輸液なる用語を用いるものとする。
生体に対して点滴を行う際には、輸液(薬液)を適切な速度(単位時間あたりの流量)で生体に対して注入を行うとともに、点滴装置を構成する部品の破損や液漏れといった投薬状況の異常にも留意する必要がある。
点滴装置では、輸液を収容した容器にチューブの一端を接続し、そのチューブの他端に装着された注射針を介して生体内に輸液を注入するとともに、輸液の流量を適切に保つために、チューブの途中に注入速度の調整を行うための輸液量調整装置が設けられている。
従来、輸液量調整装置としては、点滴装置に点滴筒及びクランプを有し、看護師などの医療従事者が点滴筒内における輸液の滴下状況を見ながらクランプを操作するものが用いられている。
その他、輸液注入ポンプと呼ばれる装置も用いられている。この輸液注入ポンプでは、回転数を制御する機構を持ったモータにより注射筒を駆動する、あるいは一定速度でチューブを押圧していくしごきポンプを用いることで、注入速度(単位時間当たりの注入量)の調整を行うようになっている。
【0003】
このように、従来の点滴装置における注入速度の設定は、看護師等が点滴筒内での液滴の大きさと単位時間当りの滴下数を目視によって確認して行なうため、個人の経験と勘に依存するところが大きく、経験のない者が常に最適な速度に設定することは困難である。
例えば、輸液の粘性、密度、表面張力によって液滴の大きさが異なり、しかも、粘性及び表面張力は温度による変化が大きいので、同じ輸液でも温度によって液滴の大きさが変化することになり、この液滴の大きさを目視によって正確に把握することは困難である。
点滴中に温度が変化すると注入速度も変化するから、これを一定に維持するためには点滴中に、絶えずクランプにより速度の修正を行なう必要がある。
注入ポンプについても同様に温度・薬物の種類によって粘度・表面張力・密度などが変化するため初期速度の設定、一定速度の維持は極めて難しい。
また、注入ポンプを用いることで、装置が複雑化・大型化し、重量も増すため、点滴を受ける患者は大幅に行動の自由を制限されることになる。
さらに、装置を構成する部品に異常が生じた場合にも、どの箇所で、どのような故障が生じたかを瞬時に判断することは難しい。
【0004】
注入速度を一定に保つために、例えば特許文献1に記載のように、例えば、生体に注入すべき輸液を収容した容器を重量検出機構に保持し、輸液の残存重量を刻々と測定し、その測定値の経時的変化に基づいて、定められた時間内に定められた量の輸液が注入されるよう、容器からの輸液流出速度を刻々と制御する装置が提案されている。
しかし、かかる装置によっても、異常な事態が発生した場合には、正確な輸液注入が不能となるだけで、どこで異常が起こったか等の判断はできない。さらには、異常箇所の看護師等や患者表示・報知することは不可能である。
また、かかる装置のように、輸液の残存重量に基づく輸液流出速度の制御では、実際の輸液の速度に基づく制御ではないため、輸液速度を正確に制御することは難しい。
さらに、重量検出機構や輸液流出速度の制御機構を設けることで、装置が複雑化・大型化するという問題も解決されていない。
特許文献2には、注入システムのような医療用流体フロー制御システムにおいて、医薬を適切な速度で患者に注入出来るように、MEMS(微小電気機械システム)ポンプによってチューブを流れる医薬の流量を制御することが開示されている。
また、ポンプ等に独立なセンサを設け、投薬状況の異常を検知できるようにした構成が、例えば特許文献3参照に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された手法では、MEMSポンプを用いることで、ポンプは大幅に小型化され、また、このポンプを適切に制御することで医薬の流量も一定に保つことが可能であるが、特許文献1と同様、装置を構成する部品に異常が生じた場合にも、どの箇所で、どのような故障が生じたかを瞬時に判断することは難しい。
また、特許文献3に記載のように、装置を構成する各部品にセンサを設けても、構成を徒に複雑化させてしまう。
本発明は、上述の事情を鑑みて、薬液等の輸液を生体等に注入する輸液注入システムにおける輸液注入量を所定の設定値に保つことが可能であるとともに、システムを構成する各構成要素における異常事態の発生を自動的に確実かつ速やかに検知することが可能な輸液量調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、該流量センサによって測定される測定流量が、予め設定された設定流量となるように前記圧電素子に印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、異常事態の発生を検知する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、表示手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、無線通信手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断する輸液量調整装置を特徴とする。
【0007】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の輸液量調整装置と、当該輸液量調整装置を介して輸液管により接続された生体に輸液を注入するための針と及び輸液を充填した輸液容器と、を少なくとも備えたことを特徴とする輸液注入システム。
【0008】
また、請求項10の発明は、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、を備えた輸液量調整装置の輸液量調整方法であって、前記輸液量調整装置が有するポンプ制御部が、前記流量センサにより測定される測定流量が、所定の設定流量となるように前記輸液ポンプに印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御するステップと、前記輸液量調整装置が有する異常判断部が、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、前記輸液容器、前記輸液管、前記輸液ポンプ、又は前記針における異常事態の発生を判断するステップと、を含む輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項11の発明は、請求項10に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記輸液量調整装置は表示手段を備え、前記輸液量調整装置が有する報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示させるステップを含む輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項12の発明は、請求項10又は11に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記輸液量調整装置は、無線通信手段を備え、前記報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知するステップを含む輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項13の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
【0009】
また、請求項14の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項15の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項16の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
また、請求項17の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項18の発明は、請求項10乃至17の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成したので、本発明によれば、輸液が収容された容器から生体内に至る輸液管の途中に本発明の輸液量調整装置が接続された状態で、流量センサの計測情報に基づいて、輸液管内の輸液の流量が目標の設定量に維持されるようにマイクロポンプの駆動周波数と駆動電圧を制御するともにその挙動を監視することにより、流量センサ以外の特別なセンサなどを別に設けることなく、異常事態が起きたときに測定流量と駆動周波数、駆動電圧の状況から、注入状況(輸液注入システムの構成要素)の異常を素早く且つ正確に、検知することが可能となる。
また、マイクロポンプを導入しているので、小型且つ軽量で、利便性に優れた輸液量調整装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るシステムの概要を示す図。
【図2】図1に示すシステムコントローラの構成を示す図。
【図3】本発明で用いられるマイクロポンプの動作概念を示す模式図。
【図4】マイクロポンプの動作時の状態を示す模式図。
【図5】マイクロポンプの通常駆動時の圧電素子の駆動周波数と流量の関係を示す図。
【図6】通常時における駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図7】マイクロポンプが壊れた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図8】マイクロポンプに泡が入った場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図9】針先から液漏れが生じた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図10】マイクロポンプの通常駆動時の圧電素子の駆動周波数と流量の関係を示す図。
【図11】異常事態における駆動周波数、駆動電圧、流量と異常箇所との関係を示す図。
【図12】本発明における基本的な閉ループ制御を説明するフローチャート。
【図13】本発明における異常判断を説明するフローチャート。
【図14】本発明に適用可能な流量センサの概要を示す図。
【図15】圧電素子を駆動するドライバ回路を示す図。
【図16】圧電素子の駆動電圧を検出するための回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る輸液注入システムの概要を示す図である。
本発明に係る輸液注入システムは、小型・軽量であり、持ち運びも簡単となるように設計されている。
図1に示すように本実施形態に係る輸液注入システム1は、薬液等の輸液LMを充填された輸液バッグ(輸液容器)2と、輸液バッグ2内の輸液LMを生体内に注入するための注射針(針)3に加え、圧電素子を用いたマイクロ(μ)ポンプ8と、マイクロポンプ8を流れる輸液の量を測定する流量センサ9とから主に構成されるとともに、チューブ(輸液管)4−1を介して輸液バッグ2と接続され、かつチューブ(輸液管)4−2を介して注射針3と接続されたマイクロポンプモジュール5と、マイクロポンプモジュール5を構成するマイクロポンプ8及び流量センサ9と電気的に接続され、流量センサ9の出力結果に基づくマイクロポンプ8の時間あたりの吐出量が、予め設定された流量(設定流量)となるようにマイクロポンプ8を構成する圧電素子に印加する駆動パルスの電圧と周波数の少なくとも一方を変化させる閉ループ制御を行うシステムコントローラ(制御手段)7と、を備えている。
【0013】
閉ループ制御の結果、マイクロポンプ8から吐出される輸液の流量と、圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数が変化するが、システムコントローラ7は、後に詳述する方法によって、これらの値の関係からマイクロポンプの破損、マイクロポンプにおける泡の発生、注射針の針先の液漏れ、経路における輸液の液漏れといった機器異常、すなわち投薬状況の異常を判断する。
また、システムコントローラ7は、流量センサにより測定される流量などの輸液の注入状況を表示するための、液晶画面などの表示部12を有し、異常がある場合には、表示部12にその旨を表示することにより周知を行う。
また、操作者が輸液の(目標)注入量と(目標)注入時間等を入力するための操作パネル(不図示)、注入状況の異常を伝える警報装置(不図示)等のインターフェイスが備えられている。
また、看護師等が所持するリモコンRCと無線による非接触通信が可能であり、リモコンRCによる制御も可能である。さらに、医療機関に設置されるナースコールのシステムと連携し、マイクロポンプモジュール5の異常を、ナースコールを介して看護師等に通知することも可能である。
なお、異常表示については、輸液バッグを設置する点滴用のポールなど、外部から見易い位置に上方に突出して設けられた図示しない動作インジケータを設け、この動作インジケータが赤色または緑色に多色に点灯、点滅したり、回転点灯表示するように構成することで、輸液注入システムの動作状態や警報状態が遠方からでもモニターでき、より安全性を高められる。
【0014】
チューブ4−1、4−2は、弾力性が高く自己拡張性のある可撓性チューブが使用されている。可撓性を有するチューブを用いることで、マイクロポンプモジュール5や生体Bが動くなどして、輸液バッグ2、マイクロポンプモジュール5、生体Bの相対的な位置が変化したとしても、それに追随してチューブが撓むため、輸液LMが流れる流路が確保される。
注射針3は、マイクロポンプモジュール5に接続されるチューブ4−2の他端に取り付けられる取り付け具6の先端に固定される。
輸液LMを血管内に注入する際には、注射針3を生体Bの内部に体表面を介して刺し入れ、その先端を血管内に留置させる。その際、看護師などは、注射針3の先端が血管内から抜けないように注射針3の根元、あるいは取り付け具6を、粘着テープ等を用いて生体Bの体表面に固定する。
マイクロポンプモジュール5内において、マイクロポンプ8と流量センサ9は、チューブ4−3によって接続されているが、このチューブ4−3については、マイクロポンプ8、流量センサ9を接続して両者間に輸液LMを流すことができれば、材質、形態を問わず、いかなる管状部材を使用してもよい。
【0015】
図2は、図1に示すシステムコントローラの構成を示す図であり、(a)は、ハードウェア構成図、(b)は機能ブロック図である。
また、図2(a)に示すように、システムコントローラ7は、流量センサ9により測定されるマイクロポンプ8を流れる時間当たり量(測定流量)が、予め設定された流量(設定流量)となるように、マイクロポンプ8が有するドライバ回路(図15)圧電素子に印加する駆動パルスの電圧、周波数を制御する制御部11と、上記のリモコンRCと非接触通信を行うための無線(W/L)インターフェイス(無線通信手段)13を備えている。
さらに、システムコントローラ7は、制御用のプログラムを格納するROM(Read Only Memory)14と、制御用プログラムを展開し、また流量センサ9から入力される単位時間あたり測定流量と、測定流量を積算したトータルの流量である積算流量等を格納するためのRAM(Random Access Memory)15と、を備えている。
なお、設定流量は、輸液の種別や患者の容態に合わせて図示しない入力手段によって設定し、RAM15に格納する。
【0016】
また、システムコントローラ7は、所定の時間(Δtとする)毎に、動力P(駆動周波数、駆動電圧)を監視しており、この監視結果もRAM15に記憶する。
記憶された監視結果は、記憶されてから一定時間後に消去される。従って、RAM15内には、常に現在から一定時間内の監視結果(一定数(nとする)の最新の監視結果)が保存される。
記憶された監視結果に基づいて投薬状況(輸液注入システム)の異常を検知した際には、システムコントローラ7は、輸液LMの注入を停止する、警報を発する、といった緊急処置を実行する。
そして、正常に、定められた量(目標注入量)の輸液の注入が完了した際に、輸液の注入を停止する、といった終了処置を実行する。
また、(b)に示すように、制御部11は、マイクロポンプ8(ドライバ回路)を制御して吐出する流量を変化させる制御を行うポンプ制御部21と、設定流量と測定流量とを比較する比較演算部22、測定流量、ポンプ(圧電素子)の駆動電圧・駆動周波数の変化から輸液注入システムの異常を判断する異常判断部23と、輸液注入システムの異常が確認された場合に、表示部12及び無線通信(W/L)手段13を制御して表示部12、看護師等が有するリモコンRCにその旨を報知、警報する報知制御部24と、また、を実行している。
なお、本実施形態において、これらの制御ブロックを制御部11によって実行されるプログラムとして示しているが、ハードウェアにより構成することも出来る。
【0017】
以上説明したように、本発明は、図1に示すような、マイクロポンプの吐出量を測定する流量センサの出力(流量)が理想的な値となるようにマイクロポンプの吐出量をシステムコントローラによって閉ループ制御する構成を備えた輸液注入システムにおいて、システムの異常箇所を見つけるのに、各部位にセンサ等を設けることなく、マイクロポンプモジュール5が有する流量センサ9によって測定される輸液の流量と、マイクロポンプ8の圧電素子の駆動周波数、駆動電圧との関係から、マイクロポンプシステムの異常箇所を検出するものである。
【0018】
図3は、本発明で用いられるマイクロポンプの動作概念を示す模式図であり、(a)は、マイクロポンプの縦断面図、(b)は上面図である。なお、図3(a)は、図3(b)中のA−A断面図に相当する。
また、図4は、マイクロポンプの動作時の状態を示す模式図である。
マイクロポンプ8は、エッチングによって溝を切ったSi(シリコン)基板30と、シリコン基板30に陽極接合したガラス基板31から主に構成されている。
シリコン基板30に設けた溝が圧力室(ポンプ室)35となるが、ガラス基板31の圧力室に対応する箇所に圧電素子(ピエゾ素子)34を設け、ポンプ室35の両側のシリコン基板30に、流路抵抗の異なるディフューザ36、ディフューザ37がエッチングにより形成されている。
なお、圧電素子34は、その撓み方向の両側の面に電極34a、電極34bを有し、電極34bを介してガラス基板31上に設けられている。
なお、圧電素子は、ガラス基板31だけでなく、シリコン基板外表面の、ポンプ室35を挟んで圧電素子34と反対側の面にも設けるようにしても良い。
【0019】
また、それぞれのディフューザに連通する貫通孔であり、ポンプの入口、出口となるインレット38、アウトレット39が同じくエッチングにより形成されており、インレット38には輸液バッグ2と連通するチューブ4−1が、アウトレット39には、流量センサ14に接続されたチューブ4−2が接続される。
システムコントローラ7から圧電素子34に駆動電圧(電圧パルス)を印加することにより圧電素子34が撓み運動し、ガラス基板31の圧電素子と接する部分がダイヤフラムDPとして動作して、圧力がかかることで、ポンプ室35が収縮(図4(a))・膨張(図4(b))する。その際に、インレット38、アウトレット39の前後に生じる圧力差で流れができる。
なお、圧電素子34に駆動電圧を印加するという場合、システムコントローラ7により、電極34a、電極34b間に電圧を印加している。電極34aには+電圧が印加され、電極34bはGNDに接続されている。そして、両電極間の電位差が、圧電素子34を駆動する駆動電圧となる。
ポンプ室35が収縮・膨張を繰り返すことにより、インレット38からアウトレット39への定常的な流体の流れが発生する。
【0020】
より詳細に説明すると、図3(b)に示すように、ディフューザ36、37はそれぞれインレット38から圧力室35、圧力室35からアウトレット39に向かって、すなわち図中矢印方向に向かって徐々にその断面積が広くなっている。
圧電素子34に電圧パルスを印加することにより、ダイヤフラム部DPを、振動させることができる。すなわち、圧電素子に電圧パルスを印加することにより、圧力室35が収縮と、膨張(収縮時の状態からの膨張)を繰り返す。圧力室35の収縮率(ダイヤフラム部DPのたわみ量)は、圧電素子に印加する電圧のパルス振幅、パルス幅、に応じて決まり、圧力室35の収縮・膨張の繰り返し数は、電圧パルスの周波数によって決まる。
圧力室35が膨張(実際には、膨張率1である)すると、インレット38とアウトレット39の両方から輸液が流れ込む。
【0021】
ここで、インレット38とアウトレット39からそれぞれ流れ込む流体は、それぞれディフューザ36、37を通過する。ディフューザ36、37は、前述の通り、いずれも矢印方向に行くに従って、断面積が徐々に広くなっている。そのため、ディフューザ36、37は、矢印方向に流れる流体に対し小さい抵抗を、矢印の逆方向に流れる流体に対し大きい抵抗を及ぼす。
従って、図4(a)の状態では、インレット38に向かって吐出される輸液f1は、ディフューザの断面積が狭くなる方向に流れるため抵抗が大きく、その流量は少ない。
アウトレット39に向かって吐出される輸液f2は、ディフューザの断面積が広くなる方向に流れるため、流量が大きい。
また、図4(b)の状態では、インレットから流れ込む輸液f3は、ディフューザ36の断面積が広くなる方向に流れるため抵抗が小さく、その流量は大きい。逆に、アウトレットから流れ込む輸液f4は、ディフューザ37の断面積が狭くなる方向に流れるため、抵抗が大きく、その流量は小さい。
【0022】
圧力室35が1回、収縮・膨張すると、インレット38から圧力室35へ、正味|f3−f1|の量の流体が流れ込むとともに、圧力室35からアウトレット39へ正味|f2−f4|の流体が流れ出る。従って、インレット38からアウトレット39へ、正味f=|f1−f3|=|f4−f2|の量の流体が流れる。
なお、圧力室35の容積W、収縮率βとすると、関係f=W(1−β)が成り立つ。圧力室35が収縮・膨張を繰り返すことで、インレット38からアウトレット39への定常的な流体の流れが発生する。圧力室35の収縮・膨張の繰り返しが回数(周波数)をωとすると、単位時間あたりの体積流量F=ωf=ωW(1−β)の流体がインレット38からアウトレット39へ流れる。
体積流量(マイクロポンプ8を通過する輸液の流量)Fは、圧電素子34に印加する電圧パルスのパルス振幅V、パルス幅H(パルス面積VH)、パルス周期T(周波数1/T)の少なくとも1つを調整することにより、制御することができる。
圧電素子34に印加する電圧パルスのパルス幅V(又はパルス面積VH)を大きく(小さく)すれば、圧電素子34の伸縮量が、すなわち、ダイヤフラムDPの撓みが大きく(小さく)なる。従って、パルス振幅V(又はパルス面積VH)を変えることにより、圧力室35の膨張・収縮率(1−β)を調整することが出来る。それにより、流量F=ωW(1−β)を制御することが出来る。
【0023】
また、電圧パルスの周波数を大きく(小さく)すれば、ダイヤフラム部DPの振動数(すなわち圧力室35の収縮・膨張の単位時間の繰り返し回数ω)が大きく(小さく)なる。従って、電圧パルスの周波数を変えることによって、圧力室35の収縮・膨張の単位時間の繰り返し回数ωを調整することができる。
なお、原理上、電圧パルスの周波数はポンプ室の収縮・膨張の単位時間の繰り返し回数ωに等しいので、電圧パルスの周波数をωを用いて表記する。
ただし、このマイクロポンプの構造に制限を受けるものではない。
なお、本実施例では、全てシリコン基板30を500μmエッチングし、ポンプサイズとPZT(圧電素子)のサイズはほぼ同じで5mm*10mm、PZT流路は市販の医療用チューブを用いて構成している。チューブの接合は流路には接着剤が付かないようにして接合した。
【0024】
図5は、マイクロポンプ8の通常駆動時の圧電素子の駆動周波数と流量の関係を示す図である。
通常時、圧電素子の周波数が大きくなる程、流量を増加するが、周波数がある値を超えると逆に流量は低下して行くことが分かっている。
【0025】
図6から図10に関しては同様の初期設定として実験を開始した。針先からは液体(ブドウ糖5%液)に入れて実験を行った。また輸液バッグはポンプの約10cm上にポールで固定しマイクロポンプモジュールは水平な実験台に置いた。
初期設定としては、駆動周波数は1KHz程度に設定し1.5倍以上にはしない設定にした。また、圧電素子34の駆動電圧は固定で70Vとし、駆動周波数は通常は最大流量領域とはしない。図5に示すように、駆動周波数の変動が急激な流量変動を起こす可能性があるためである。
また、上記したように、流量センサ9で測定されるマイクロポンプ8を通過する輸液の流量を見て、その流量が一定となるように(予め設定した流量となるように)、マイクロポンプ8の圧電素子34の駆動周波数や駆動電圧をフィードバッグ制御する。システムコントローラ7は、一定時間間隔でポンプ(圧電素子34)の駆動周波数、駆動電圧、流量をチェックする。
【0026】
<通常時>
図6は、通常時における駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
なにも問題がなくマイクロポンプ8が通常に駆動した場合は、図6に示すように駆動電圧と流量が一定であり、駆動周波数については、輸液バッグからの圧力に影響されており、最初輸液の圧力が強いので、(ポンプ駆動が弱くてよいので)最初は、駆動周波数が低いが徐々に安定となり、時間と共に輸液が少なくなって輸液面が下がってくると輸液からの圧力が弱まるので、ポンプの駆動周波数がやや増加するのが特徴である。
なお、輸液は200mlソフトバッグ(大塚製薬;KN補液3B)を使用した。
【0027】
<ポンプが壊れた時>
図7は、マイクロポンプ8が壊れた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
マイクロポンプ8が壊れたことは、図7に示すように駆動電圧、駆動周波数が一定であり、かつ流量がゼロであることで判別が可能である。
【0028】
<ポンプに泡が入った場合>
図8は、マイクロポンプ8に泡が入った場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
マイクロポンプ8に泡が発生した場合、図8に示すように、急激に流量がゼロに減ってしまう。また、最初から泡が発生していれば流量ゼロのままとなる。
泡が発生している場合、最初に駆動周波数で流量を回復するために駆動周波数が急増するが、駆動周波数では回復できずに、駆動電圧も上昇し始める。このタイミングは駆動周波数が1.5倍以上に到達した時点で駆動電圧を変化させるプログラムにした。
このタイミング等は流量を回復可能であれば良いので、このタイミングはあくまでも例である。
【0029】
<針先液漏れ>
図9は、針先から液漏れが生じた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
針先が人体等からはずれると、いままで抵抗となっていたものが外れるので輸液は流れやすくなり、マイクロポンプ8から流れ出す能力(動力)としては少なく済むため駆動周波数が減る。通常時と挙動は似ているが、そのあと流量が一定となるので判別が可能である。
【0030】
<輸液液漏れ>
図10は、輸液がポンプまでの間で漏れている場合における駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
輸液がポンプまでの間で漏れている場合は、通常時よりも早く輸液が減少する。
その場合、マイクロポンプ8の駆動周波数も、通常時よりも輸液の圧力が急に減るのでその分マイクロポンプ8の能力を上げなくてはならないので、通常時よりも駆動周波数の増加が時間に対して大きく、判別可能である。
また輸液等からのもれが大きい場合は駆動電圧も増加させるようになるので大きな輸液の漏れも検出が可能である。
【0031】
図11は、以上説明した異常事態における駆動周波数、駆動電圧、流量と異常箇所との関係とを関連付けた図である。
制御部11は、図2に示した異常判断部23により、この図に示される関係を基に異常の有無・異常箇所を判断し、報知制御部24による警報、表示部12への表示を行う。
駆動周波数・駆動電圧が一定に増加し、流量センサの出力が0を示す場合、ポンプの全壊(A.)と判断し、「表示部12にポンプ(壊れ)」と表示する。
また、駆動周波数が急激に増加し、駆動電圧も増加しており、また流量センサの出力が0を示す場合、ポンプに泡が発生した(B.)ものと判断し、「表示部12のポンプ(泡)」と表示する。
また、駆動周波数が漸増し、駆動電圧が一定であり、また、流量センサの出力が一定であれば、ポンプでの液漏れと判断し(C1.)、表示部12に「ポンプ(液漏れ)」と表示する。
また、駆動周波数が、最初減少した後でその後一定となり、駆動電圧と流量センサの出力が一定である場合、針先抜けによる液漏れ(C2.)であると判断し、表示部12に「針先抜け」と表示する。
また、駆動周波数と駆動電圧が共に増加し、流量センサに出力が一定の場合、輸液バッグでの液漏れ(C3.)と判断し、表示部12に「輸液バッグ(液漏れ)」と表示する。
【0032】
以下に、本実施形態における処理の流れについて説明する。
図12は、本発明における基本的な閉ループ制御を説明するフローチャートである。
輸液ポンプシステムの動作が開始されると、制御部11は、予め設定された点滴の総量と、理想的な時間当たり流量をRAM15から読み出す(ステップS101)。
次いで、制御部11は、マイクロポンプ8を動作させる命令を発行する(ステップS102)。
制御部11は、流量センサ14から入力される信号から得られる流量を常に監視している。また、制御部11は、流量センサ14の値から輸液ポンプを流れた薬液の総量を積算し、ステップS101で読み出した総量に到達したと判断されれば(ステップS104でYes)、点滴は終了であるので、ポンプの動作を停止する(ステップS105)。
総量に到達するまでは(ステップS104でNo)、一定期間毎に、流量センサの値に基づく流量を、ステップS101で取得した設定流量と比較する(ステップS106)。
測定流量が、設定流量と異なる場合(ステップS107でYes)は、制御部11は、輸液ポンプ8を制御して、輸液ポンプの周波数等や駆動電圧を変更して流量を加減・調整(ステップS108)する。
調整の結果、流量センサの出力値が、設定流量と同じとなれば、再びステップS103に戻って流量信号の監視を続ける。
【0033】
図13は、本発明における異常判断を説明するフローチャートである。
上記したように、システムコントローラ7は、圧電素子に対する閉ループ制御とともに、圧電素子の駆動電圧・駆動周波数を一定期間ごとに監視し(ステップS201)、図11に示す流量・駆動電圧・駆動周波数の変化のパターンから輸液注入システムの異常を判断している。
ポンプ壊れと判断される場合は(ステップS202)、制御部11は、ポンプ動作を停止させ、警報・表示を行う(ステップS208)。
ポンプの故障ではないが(ステップS202でNo)、ポンプに泡が発生したと判断される場合(ステップS203でYes)もステップS207へ進む。
ポンプへの泡の発生が起きておらず(ステップS203でNo)、ポンプでの液漏れと判断される場合は(ステップS204でYes)、ステップS207へ進む。
ポンプの液漏れと判断されず(ステップS204でNo)、針先での液漏れと判断される場合は(ステップS205でYes)、ステップS207へ進む。
針先での液漏れと判断されず(ステップS205でNo)、薬液バッグでの液漏れと判断される場合(ステップS206)、ステップS207へ進む。
薬剤バッグ液漏れとも判断されない場合(ステップS206でNo)、輸液注入システムに異常は起きていないので、図13のメインルーチンへと戻る。
【0034】
次に、本発明に適用可能な流量センサについて説明する。
図14は、本発明に適用可能な流量センサの概要を示す図である。
流量センサは、sensirion 1cm*1cmのMEMSセンサである熱式質量流量センサを使用した。
熱式質量流量センサは管路に輸液を流しつつ、管路内を流れる輸液を熱源(ヒータ40)を用いて加熱すると同時に、温度センサ41を用いてチューブ4−3の管壁を介して薬剤から伝わる熱量を計測する。温度センサの計測結果は計測部42に送られる。熱式質量流量センサの計測部42は、温度センサの計測結果を用いて輸液の流量を求める。
チューブ4−3内を通過する輸液の温度を2つの温度センサ41で測定している。
ここで、輸液が流れていない場合、ヒータ40からの熱が輸液LMに等方的に伝わるため、管路内の輸液の温度分布は、ヒータの設置位置を中心に対称的な形(左右)対称な山形)になる。なお、輸液の流れる方向を+X方向とする。この場合、温度センサの計測結果は互いに等しく、それらの差は零となる。
一方、輸液が(+X方向に)流れている場合、管内の輸液の温度分布は、流れの方向に頂点がシフトした左右非対称な山形となる。この場合、輸液の流れる方向の下流側の温度センサの計測結果は上流側の温度センサの計測結果より大きく、これらの差(上流側の温度センサの計測結果を基準とする)は正の値になる。このような原理に基づき、熱式質量流量センサは、温度センサ41の計測結果の差から管路内を流れる輸液の流量(流れの向きを含む)を求める。
【0035】
図15は、圧電素子を駆動するドライバ回路を示す図である。
ドライバ回路51は、パルス発生器から入力されるパルスに基づいて圧電素子34に駆動パルスを印加する。回路自体は一般的なものであるので、ここでは詳しく説明しない。
圧電素子の駆動周波数は、周波数カウンターキットを用いて測定した。
●周波数カウンターの仕様
マイコン PIC16F819 20Mhz動作
基準発振 水晶発振子 20Mhz
表示器 16X2 LCD キャラクターディスプレー
測定方式 直接計数式
測定レンジ 0.1Sec/1Sec/10Sec 3レンジを切り替え可能
分解能 16777216 (24ビット) 8桁表示
測定精度 絶対精度 6桁程度
測定範囲 DC〜33Mhz
プリスケーラーON/OFFの切り替えが可能 1:1/1:8
入力感度 入力回路 FETアンプ
1Mhz 50mA以上/10Mhz 0.2V以上/15Mhz 0.3V以上
【0036】
また、圧電素子の駆動電圧は、図16に示すような回路で検出可能である。
また、実験で使用した他の部材は以下の通りである。
チューブ:内径2mm 70cm程度
針:外径0.6mm静脈用 外径1mm 輸血用 日本理化学機械製
輸液:生理食塩水(S−500B;エアレスタイプ)
マイクロポンプモジュールのケースはMEMSポンプを、ラバーで振動を防ぎ、プラスチックケースとOリングで挟んだ構造とした。流路中に接着剤はないが、流路を固定するのに今回は接着剤を用いた。
【0037】
また、輸液セットとしてテルモ社製のテルフュージョン輸液セット(DEHPフリー、翼付針付を使用して実験を行った。
実施フロー
(1)マイクロポンプモジュール5に注射針の付いたチューブ4−2をセットする。
(2)輸液バッグ2にチューブ4−1を接続(図示していないが、輸液バッグ2とμポンプ8の間にクレンメをいれてある)。クレンメは、初期は閉じている。
(3)システムコントローラ7に流量を設定(200ml/h)。
(4)クレンメを開ける。
(5)マイクロポンプ8を駆動する駆動周波数、駆動電圧は1.0KHz、70Vである。
(6)マイクロポンプ8の特性は図5に示す周波数特性をもつ。
(7)輸液が針先まで届いたら、一旦マイクロポンプ8を止め、クレンメも閉じる。
(8)患者に針を指し、
(9)ポンプ駆動と同時にクレンメも開ける。
(10)途中で異常があればポンプは停止するプログラムにする。
(11)異常箇所がある場合は異常箇所が表示され警報がなる。
(12)輸液がなくなる前に液量200mlなら180ml以降警報がなるようにプログラムする。
異常がある場合はクレンメを閉じて、その箇所をなおす。
直った事を確認して、(1)〜(12)をくりかえす。
【符号の説明】
【0038】
1 輸液注入システム、2 輸液バッグ、3 注射針、4 チューブ、5 マイクロポンプモジュール、7 システムコントローラ、8 マイクロポンプ、9 流量センサ、11 制御部、12 表示部、13 無線通信インターフェイス、14 ROM、15 RAM、21 ポンプ制御部、22 比較演算部、23 異常判断部、24 報知制御部、30 シリコン基板、31 ガラス基板、34 圧電素子、35 ポンプ室、36 ディフューザ、37 ディフューザ、38 インレット、39 アウトレット、40 ヒータ、41 温度センサ、42 計測部、51 ドライバ回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開昭63−212371号公報
【特許文献2】特表2005−514175公報
【特許文献3】特開2008−086581公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液量調整装置及び輸液量調整方法、並びに輸液注入システムに関し、さらに詳しくは、輸液が収容された容器から生体に注入される輸液の注入量を調整する輸液量調整装置及び輸液注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、生体とは、人間のみに限らず広く動物の意を含み、また、生体内とは、生体の血管内、臓器内等の意を広く含むものとする。また、輸液は、液体の薬品の他、チューブを介して生体に注入される液体を広く含む。生体に輸液を注入するには、一般に、点滴装置が用いられる。本明細書では、かかる意味で生体、生体内、輸液なる用語を用いるものとする。
生体に対して点滴を行う際には、輸液(薬液)を適切な速度(単位時間あたりの流量)で生体に対して注入を行うとともに、点滴装置を構成する部品の破損や液漏れといった投薬状況の異常にも留意する必要がある。
点滴装置では、輸液を収容した容器にチューブの一端を接続し、そのチューブの他端に装着された注射針を介して生体内に輸液を注入するとともに、輸液の流量を適切に保つために、チューブの途中に注入速度の調整を行うための輸液量調整装置が設けられている。
従来、輸液量調整装置としては、点滴装置に点滴筒及びクランプを有し、看護師などの医療従事者が点滴筒内における輸液の滴下状況を見ながらクランプを操作するものが用いられている。
その他、輸液注入ポンプと呼ばれる装置も用いられている。この輸液注入ポンプでは、回転数を制御する機構を持ったモータにより注射筒を駆動する、あるいは一定速度でチューブを押圧していくしごきポンプを用いることで、注入速度(単位時間当たりの注入量)の調整を行うようになっている。
【0003】
このように、従来の点滴装置における注入速度の設定は、看護師等が点滴筒内での液滴の大きさと単位時間当りの滴下数を目視によって確認して行なうため、個人の経験と勘に依存するところが大きく、経験のない者が常に最適な速度に設定することは困難である。
例えば、輸液の粘性、密度、表面張力によって液滴の大きさが異なり、しかも、粘性及び表面張力は温度による変化が大きいので、同じ輸液でも温度によって液滴の大きさが変化することになり、この液滴の大きさを目視によって正確に把握することは困難である。
点滴中に温度が変化すると注入速度も変化するから、これを一定に維持するためには点滴中に、絶えずクランプにより速度の修正を行なう必要がある。
注入ポンプについても同様に温度・薬物の種類によって粘度・表面張力・密度などが変化するため初期速度の設定、一定速度の維持は極めて難しい。
また、注入ポンプを用いることで、装置が複雑化・大型化し、重量も増すため、点滴を受ける患者は大幅に行動の自由を制限されることになる。
さらに、装置を構成する部品に異常が生じた場合にも、どの箇所で、どのような故障が生じたかを瞬時に判断することは難しい。
【0004】
注入速度を一定に保つために、例えば特許文献1に記載のように、例えば、生体に注入すべき輸液を収容した容器を重量検出機構に保持し、輸液の残存重量を刻々と測定し、その測定値の経時的変化に基づいて、定められた時間内に定められた量の輸液が注入されるよう、容器からの輸液流出速度を刻々と制御する装置が提案されている。
しかし、かかる装置によっても、異常な事態が発生した場合には、正確な輸液注入が不能となるだけで、どこで異常が起こったか等の判断はできない。さらには、異常箇所の看護師等や患者表示・報知することは不可能である。
また、かかる装置のように、輸液の残存重量に基づく輸液流出速度の制御では、実際の輸液の速度に基づく制御ではないため、輸液速度を正確に制御することは難しい。
さらに、重量検出機構や輸液流出速度の制御機構を設けることで、装置が複雑化・大型化するという問題も解決されていない。
特許文献2には、注入システムのような医療用流体フロー制御システムにおいて、医薬を適切な速度で患者に注入出来るように、MEMS(微小電気機械システム)ポンプによってチューブを流れる医薬の流量を制御することが開示されている。
また、ポンプ等に独立なセンサを設け、投薬状況の異常を検知できるようにした構成が、例えば特許文献3参照に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された手法では、MEMSポンプを用いることで、ポンプは大幅に小型化され、また、このポンプを適切に制御することで医薬の流量も一定に保つことが可能であるが、特許文献1と同様、装置を構成する部品に異常が生じた場合にも、どの箇所で、どのような故障が生じたかを瞬時に判断することは難しい。
また、特許文献3に記載のように、装置を構成する各部品にセンサを設けても、構成を徒に複雑化させてしまう。
本発明は、上述の事情を鑑みて、薬液等の輸液を生体等に注入する輸液注入システムにおける輸液注入量を所定の設定値に保つことが可能であるとともに、システムを構成する各構成要素における異常事態の発生を自動的に確実かつ速やかに検知することが可能な輸液量調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、該流量センサによって測定される測定流量が、予め設定された設定流量となるように前記圧電素子に印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、異常事態の発生を検知する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、表示手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、無線通信手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断する輸液量調整装置を特徴とする。
【0007】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、前記制御手段は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断する輸液量調整装置を特徴とする。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の輸液量調整装置と、当該輸液量調整装置を介して輸液管により接続された生体に輸液を注入するための針と及び輸液を充填した輸液容器と、を少なくとも備えたことを特徴とする輸液注入システム。
【0008】
また、請求項10の発明は、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、を備えた輸液量調整装置の輸液量調整方法であって、前記輸液量調整装置が有するポンプ制御部が、前記流量センサにより測定される測定流量が、所定の設定流量となるように前記輸液ポンプに印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御するステップと、前記輸液量調整装置が有する異常判断部が、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、前記輸液容器、前記輸液管、前記輸液ポンプ、又は前記針における異常事態の発生を判断するステップと、を含む輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項11の発明は、請求項10に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記輸液量調整装置は表示手段を備え、前記輸液量調整装置が有する報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示させるステップを含む輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項12の発明は、請求項10又は11に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記輸液量調整装置は、無線通信手段を備え、前記報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知するステップを含む輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項13の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
【0009】
また、請求項14の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項15の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項16の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
また、請求項17の発明は、請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、前記異常判断部は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断する輸液量調整装置の輸液量調整方法を特徴とする。
また、請求項18の発明は、請求項10乃至17の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成したので、本発明によれば、輸液が収容された容器から生体内に至る輸液管の途中に本発明の輸液量調整装置が接続された状態で、流量センサの計測情報に基づいて、輸液管内の輸液の流量が目標の設定量に維持されるようにマイクロポンプの駆動周波数と駆動電圧を制御するともにその挙動を監視することにより、流量センサ以外の特別なセンサなどを別に設けることなく、異常事態が起きたときに測定流量と駆動周波数、駆動電圧の状況から、注入状況(輸液注入システムの構成要素)の異常を素早く且つ正確に、検知することが可能となる。
また、マイクロポンプを導入しているので、小型且つ軽量で、利便性に優れた輸液量調整装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るシステムの概要を示す図。
【図2】図1に示すシステムコントローラの構成を示す図。
【図3】本発明で用いられるマイクロポンプの動作概念を示す模式図。
【図4】マイクロポンプの動作時の状態を示す模式図。
【図5】マイクロポンプの通常駆動時の圧電素子の駆動周波数と流量の関係を示す図。
【図6】通常時における駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図7】マイクロポンプが壊れた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図8】マイクロポンプに泡が入った場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図9】針先から液漏れが生じた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図。
【図10】マイクロポンプの通常駆動時の圧電素子の駆動周波数と流量の関係を示す図。
【図11】異常事態における駆動周波数、駆動電圧、流量と異常箇所との関係を示す図。
【図12】本発明における基本的な閉ループ制御を説明するフローチャート。
【図13】本発明における異常判断を説明するフローチャート。
【図14】本発明に適用可能な流量センサの概要を示す図。
【図15】圧電素子を駆動するドライバ回路を示す図。
【図16】圧電素子の駆動電圧を検出するための回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る輸液注入システムの概要を示す図である。
本発明に係る輸液注入システムは、小型・軽量であり、持ち運びも簡単となるように設計されている。
図1に示すように本実施形態に係る輸液注入システム1は、薬液等の輸液LMを充填された輸液バッグ(輸液容器)2と、輸液バッグ2内の輸液LMを生体内に注入するための注射針(針)3に加え、圧電素子を用いたマイクロ(μ)ポンプ8と、マイクロポンプ8を流れる輸液の量を測定する流量センサ9とから主に構成されるとともに、チューブ(輸液管)4−1を介して輸液バッグ2と接続され、かつチューブ(輸液管)4−2を介して注射針3と接続されたマイクロポンプモジュール5と、マイクロポンプモジュール5を構成するマイクロポンプ8及び流量センサ9と電気的に接続され、流量センサ9の出力結果に基づくマイクロポンプ8の時間あたりの吐出量が、予め設定された流量(設定流量)となるようにマイクロポンプ8を構成する圧電素子に印加する駆動パルスの電圧と周波数の少なくとも一方を変化させる閉ループ制御を行うシステムコントローラ(制御手段)7と、を備えている。
【0013】
閉ループ制御の結果、マイクロポンプ8から吐出される輸液の流量と、圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数が変化するが、システムコントローラ7は、後に詳述する方法によって、これらの値の関係からマイクロポンプの破損、マイクロポンプにおける泡の発生、注射針の針先の液漏れ、経路における輸液の液漏れといった機器異常、すなわち投薬状況の異常を判断する。
また、システムコントローラ7は、流量センサにより測定される流量などの輸液の注入状況を表示するための、液晶画面などの表示部12を有し、異常がある場合には、表示部12にその旨を表示することにより周知を行う。
また、操作者が輸液の(目標)注入量と(目標)注入時間等を入力するための操作パネル(不図示)、注入状況の異常を伝える警報装置(不図示)等のインターフェイスが備えられている。
また、看護師等が所持するリモコンRCと無線による非接触通信が可能であり、リモコンRCによる制御も可能である。さらに、医療機関に設置されるナースコールのシステムと連携し、マイクロポンプモジュール5の異常を、ナースコールを介して看護師等に通知することも可能である。
なお、異常表示については、輸液バッグを設置する点滴用のポールなど、外部から見易い位置に上方に突出して設けられた図示しない動作インジケータを設け、この動作インジケータが赤色または緑色に多色に点灯、点滅したり、回転点灯表示するように構成することで、輸液注入システムの動作状態や警報状態が遠方からでもモニターでき、より安全性を高められる。
【0014】
チューブ4−1、4−2は、弾力性が高く自己拡張性のある可撓性チューブが使用されている。可撓性を有するチューブを用いることで、マイクロポンプモジュール5や生体Bが動くなどして、輸液バッグ2、マイクロポンプモジュール5、生体Bの相対的な位置が変化したとしても、それに追随してチューブが撓むため、輸液LMが流れる流路が確保される。
注射針3は、マイクロポンプモジュール5に接続されるチューブ4−2の他端に取り付けられる取り付け具6の先端に固定される。
輸液LMを血管内に注入する際には、注射針3を生体Bの内部に体表面を介して刺し入れ、その先端を血管内に留置させる。その際、看護師などは、注射針3の先端が血管内から抜けないように注射針3の根元、あるいは取り付け具6を、粘着テープ等を用いて生体Bの体表面に固定する。
マイクロポンプモジュール5内において、マイクロポンプ8と流量センサ9は、チューブ4−3によって接続されているが、このチューブ4−3については、マイクロポンプ8、流量センサ9を接続して両者間に輸液LMを流すことができれば、材質、形態を問わず、いかなる管状部材を使用してもよい。
【0015】
図2は、図1に示すシステムコントローラの構成を示す図であり、(a)は、ハードウェア構成図、(b)は機能ブロック図である。
また、図2(a)に示すように、システムコントローラ7は、流量センサ9により測定されるマイクロポンプ8を流れる時間当たり量(測定流量)が、予め設定された流量(設定流量)となるように、マイクロポンプ8が有するドライバ回路(図15)圧電素子に印加する駆動パルスの電圧、周波数を制御する制御部11と、上記のリモコンRCと非接触通信を行うための無線(W/L)インターフェイス(無線通信手段)13を備えている。
さらに、システムコントローラ7は、制御用のプログラムを格納するROM(Read Only Memory)14と、制御用プログラムを展開し、また流量センサ9から入力される単位時間あたり測定流量と、測定流量を積算したトータルの流量である積算流量等を格納するためのRAM(Random Access Memory)15と、を備えている。
なお、設定流量は、輸液の種別や患者の容態に合わせて図示しない入力手段によって設定し、RAM15に格納する。
【0016】
また、システムコントローラ7は、所定の時間(Δtとする)毎に、動力P(駆動周波数、駆動電圧)を監視しており、この監視結果もRAM15に記憶する。
記憶された監視結果は、記憶されてから一定時間後に消去される。従って、RAM15内には、常に現在から一定時間内の監視結果(一定数(nとする)の最新の監視結果)が保存される。
記憶された監視結果に基づいて投薬状況(輸液注入システム)の異常を検知した際には、システムコントローラ7は、輸液LMの注入を停止する、警報を発する、といった緊急処置を実行する。
そして、正常に、定められた量(目標注入量)の輸液の注入が完了した際に、輸液の注入を停止する、といった終了処置を実行する。
また、(b)に示すように、制御部11は、マイクロポンプ8(ドライバ回路)を制御して吐出する流量を変化させる制御を行うポンプ制御部21と、設定流量と測定流量とを比較する比較演算部22、測定流量、ポンプ(圧電素子)の駆動電圧・駆動周波数の変化から輸液注入システムの異常を判断する異常判断部23と、輸液注入システムの異常が確認された場合に、表示部12及び無線通信(W/L)手段13を制御して表示部12、看護師等が有するリモコンRCにその旨を報知、警報する報知制御部24と、また、を実行している。
なお、本実施形態において、これらの制御ブロックを制御部11によって実行されるプログラムとして示しているが、ハードウェアにより構成することも出来る。
【0017】
以上説明したように、本発明は、図1に示すような、マイクロポンプの吐出量を測定する流量センサの出力(流量)が理想的な値となるようにマイクロポンプの吐出量をシステムコントローラによって閉ループ制御する構成を備えた輸液注入システムにおいて、システムの異常箇所を見つけるのに、各部位にセンサ等を設けることなく、マイクロポンプモジュール5が有する流量センサ9によって測定される輸液の流量と、マイクロポンプ8の圧電素子の駆動周波数、駆動電圧との関係から、マイクロポンプシステムの異常箇所を検出するものである。
【0018】
図3は、本発明で用いられるマイクロポンプの動作概念を示す模式図であり、(a)は、マイクロポンプの縦断面図、(b)は上面図である。なお、図3(a)は、図3(b)中のA−A断面図に相当する。
また、図4は、マイクロポンプの動作時の状態を示す模式図である。
マイクロポンプ8は、エッチングによって溝を切ったSi(シリコン)基板30と、シリコン基板30に陽極接合したガラス基板31から主に構成されている。
シリコン基板30に設けた溝が圧力室(ポンプ室)35となるが、ガラス基板31の圧力室に対応する箇所に圧電素子(ピエゾ素子)34を設け、ポンプ室35の両側のシリコン基板30に、流路抵抗の異なるディフューザ36、ディフューザ37がエッチングにより形成されている。
なお、圧電素子34は、その撓み方向の両側の面に電極34a、電極34bを有し、電極34bを介してガラス基板31上に設けられている。
なお、圧電素子は、ガラス基板31だけでなく、シリコン基板外表面の、ポンプ室35を挟んで圧電素子34と反対側の面にも設けるようにしても良い。
【0019】
また、それぞれのディフューザに連通する貫通孔であり、ポンプの入口、出口となるインレット38、アウトレット39が同じくエッチングにより形成されており、インレット38には輸液バッグ2と連通するチューブ4−1が、アウトレット39には、流量センサ14に接続されたチューブ4−2が接続される。
システムコントローラ7から圧電素子34に駆動電圧(電圧パルス)を印加することにより圧電素子34が撓み運動し、ガラス基板31の圧電素子と接する部分がダイヤフラムDPとして動作して、圧力がかかることで、ポンプ室35が収縮(図4(a))・膨張(図4(b))する。その際に、インレット38、アウトレット39の前後に生じる圧力差で流れができる。
なお、圧電素子34に駆動電圧を印加するという場合、システムコントローラ7により、電極34a、電極34b間に電圧を印加している。電極34aには+電圧が印加され、電極34bはGNDに接続されている。そして、両電極間の電位差が、圧電素子34を駆動する駆動電圧となる。
ポンプ室35が収縮・膨張を繰り返すことにより、インレット38からアウトレット39への定常的な流体の流れが発生する。
【0020】
より詳細に説明すると、図3(b)に示すように、ディフューザ36、37はそれぞれインレット38から圧力室35、圧力室35からアウトレット39に向かって、すなわち図中矢印方向に向かって徐々にその断面積が広くなっている。
圧電素子34に電圧パルスを印加することにより、ダイヤフラム部DPを、振動させることができる。すなわち、圧電素子に電圧パルスを印加することにより、圧力室35が収縮と、膨張(収縮時の状態からの膨張)を繰り返す。圧力室35の収縮率(ダイヤフラム部DPのたわみ量)は、圧電素子に印加する電圧のパルス振幅、パルス幅、に応じて決まり、圧力室35の収縮・膨張の繰り返し数は、電圧パルスの周波数によって決まる。
圧力室35が膨張(実際には、膨張率1である)すると、インレット38とアウトレット39の両方から輸液が流れ込む。
【0021】
ここで、インレット38とアウトレット39からそれぞれ流れ込む流体は、それぞれディフューザ36、37を通過する。ディフューザ36、37は、前述の通り、いずれも矢印方向に行くに従って、断面積が徐々に広くなっている。そのため、ディフューザ36、37は、矢印方向に流れる流体に対し小さい抵抗を、矢印の逆方向に流れる流体に対し大きい抵抗を及ぼす。
従って、図4(a)の状態では、インレット38に向かって吐出される輸液f1は、ディフューザの断面積が狭くなる方向に流れるため抵抗が大きく、その流量は少ない。
アウトレット39に向かって吐出される輸液f2は、ディフューザの断面積が広くなる方向に流れるため、流量が大きい。
また、図4(b)の状態では、インレットから流れ込む輸液f3は、ディフューザ36の断面積が広くなる方向に流れるため抵抗が小さく、その流量は大きい。逆に、アウトレットから流れ込む輸液f4は、ディフューザ37の断面積が狭くなる方向に流れるため、抵抗が大きく、その流量は小さい。
【0022】
圧力室35が1回、収縮・膨張すると、インレット38から圧力室35へ、正味|f3−f1|の量の流体が流れ込むとともに、圧力室35からアウトレット39へ正味|f2−f4|の流体が流れ出る。従って、インレット38からアウトレット39へ、正味f=|f1−f3|=|f4−f2|の量の流体が流れる。
なお、圧力室35の容積W、収縮率βとすると、関係f=W(1−β)が成り立つ。圧力室35が収縮・膨張を繰り返すことで、インレット38からアウトレット39への定常的な流体の流れが発生する。圧力室35の収縮・膨張の繰り返しが回数(周波数)をωとすると、単位時間あたりの体積流量F=ωf=ωW(1−β)の流体がインレット38からアウトレット39へ流れる。
体積流量(マイクロポンプ8を通過する輸液の流量)Fは、圧電素子34に印加する電圧パルスのパルス振幅V、パルス幅H(パルス面積VH)、パルス周期T(周波数1/T)の少なくとも1つを調整することにより、制御することができる。
圧電素子34に印加する電圧パルスのパルス幅V(又はパルス面積VH)を大きく(小さく)すれば、圧電素子34の伸縮量が、すなわち、ダイヤフラムDPの撓みが大きく(小さく)なる。従って、パルス振幅V(又はパルス面積VH)を変えることにより、圧力室35の膨張・収縮率(1−β)を調整することが出来る。それにより、流量F=ωW(1−β)を制御することが出来る。
【0023】
また、電圧パルスの周波数を大きく(小さく)すれば、ダイヤフラム部DPの振動数(すなわち圧力室35の収縮・膨張の単位時間の繰り返し回数ω)が大きく(小さく)なる。従って、電圧パルスの周波数を変えることによって、圧力室35の収縮・膨張の単位時間の繰り返し回数ωを調整することができる。
なお、原理上、電圧パルスの周波数はポンプ室の収縮・膨張の単位時間の繰り返し回数ωに等しいので、電圧パルスの周波数をωを用いて表記する。
ただし、このマイクロポンプの構造に制限を受けるものではない。
なお、本実施例では、全てシリコン基板30を500μmエッチングし、ポンプサイズとPZT(圧電素子)のサイズはほぼ同じで5mm*10mm、PZT流路は市販の医療用チューブを用いて構成している。チューブの接合は流路には接着剤が付かないようにして接合した。
【0024】
図5は、マイクロポンプ8の通常駆動時の圧電素子の駆動周波数と流量の関係を示す図である。
通常時、圧電素子の周波数が大きくなる程、流量を増加するが、周波数がある値を超えると逆に流量は低下して行くことが分かっている。
【0025】
図6から図10に関しては同様の初期設定として実験を開始した。針先からは液体(ブドウ糖5%液)に入れて実験を行った。また輸液バッグはポンプの約10cm上にポールで固定しマイクロポンプモジュールは水平な実験台に置いた。
初期設定としては、駆動周波数は1KHz程度に設定し1.5倍以上にはしない設定にした。また、圧電素子34の駆動電圧は固定で70Vとし、駆動周波数は通常は最大流量領域とはしない。図5に示すように、駆動周波数の変動が急激な流量変動を起こす可能性があるためである。
また、上記したように、流量センサ9で測定されるマイクロポンプ8を通過する輸液の流量を見て、その流量が一定となるように(予め設定した流量となるように)、マイクロポンプ8の圧電素子34の駆動周波数や駆動電圧をフィードバッグ制御する。システムコントローラ7は、一定時間間隔でポンプ(圧電素子34)の駆動周波数、駆動電圧、流量をチェックする。
【0026】
<通常時>
図6は、通常時における駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
なにも問題がなくマイクロポンプ8が通常に駆動した場合は、図6に示すように駆動電圧と流量が一定であり、駆動周波数については、輸液バッグからの圧力に影響されており、最初輸液の圧力が強いので、(ポンプ駆動が弱くてよいので)最初は、駆動周波数が低いが徐々に安定となり、時間と共に輸液が少なくなって輸液面が下がってくると輸液からの圧力が弱まるので、ポンプの駆動周波数がやや増加するのが特徴である。
なお、輸液は200mlソフトバッグ(大塚製薬;KN補液3B)を使用した。
【0027】
<ポンプが壊れた時>
図7は、マイクロポンプ8が壊れた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
マイクロポンプ8が壊れたことは、図7に示すように駆動電圧、駆動周波数が一定であり、かつ流量がゼロであることで判別が可能である。
【0028】
<ポンプに泡が入った場合>
図8は、マイクロポンプ8に泡が入った場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
マイクロポンプ8に泡が発生した場合、図8に示すように、急激に流量がゼロに減ってしまう。また、最初から泡が発生していれば流量ゼロのままとなる。
泡が発生している場合、最初に駆動周波数で流量を回復するために駆動周波数が急増するが、駆動周波数では回復できずに、駆動電圧も上昇し始める。このタイミングは駆動周波数が1.5倍以上に到達した時点で駆動電圧を変化させるプログラムにした。
このタイミング等は流量を回復可能であれば良いので、このタイミングはあくまでも例である。
【0029】
<針先液漏れ>
図9は、針先から液漏れが生じた場合における、駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は、折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
針先が人体等からはずれると、いままで抵抗となっていたものが外れるので輸液は流れやすくなり、マイクロポンプ8から流れ出す能力(動力)としては少なく済むため駆動周波数が減る。通常時と挙動は似ているが、そのあと流量が一定となるので判別が可能である。
【0030】
<輸液液漏れ>
図10は、輸液がポンプまでの間で漏れている場合における駆動周波数、駆動電圧、流量の径時による変化を示す図であり、(a)は折れ線グラフ図、(b)は集計グラフ図である。
輸液がポンプまでの間で漏れている場合は、通常時よりも早く輸液が減少する。
その場合、マイクロポンプ8の駆動周波数も、通常時よりも輸液の圧力が急に減るのでその分マイクロポンプ8の能力を上げなくてはならないので、通常時よりも駆動周波数の増加が時間に対して大きく、判別可能である。
また輸液等からのもれが大きい場合は駆動電圧も増加させるようになるので大きな輸液の漏れも検出が可能である。
【0031】
図11は、以上説明した異常事態における駆動周波数、駆動電圧、流量と異常箇所との関係とを関連付けた図である。
制御部11は、図2に示した異常判断部23により、この図に示される関係を基に異常の有無・異常箇所を判断し、報知制御部24による警報、表示部12への表示を行う。
駆動周波数・駆動電圧が一定に増加し、流量センサの出力が0を示す場合、ポンプの全壊(A.)と判断し、「表示部12にポンプ(壊れ)」と表示する。
また、駆動周波数が急激に増加し、駆動電圧も増加しており、また流量センサの出力が0を示す場合、ポンプに泡が発生した(B.)ものと判断し、「表示部12のポンプ(泡)」と表示する。
また、駆動周波数が漸増し、駆動電圧が一定であり、また、流量センサの出力が一定であれば、ポンプでの液漏れと判断し(C1.)、表示部12に「ポンプ(液漏れ)」と表示する。
また、駆動周波数が、最初減少した後でその後一定となり、駆動電圧と流量センサの出力が一定である場合、針先抜けによる液漏れ(C2.)であると判断し、表示部12に「針先抜け」と表示する。
また、駆動周波数と駆動電圧が共に増加し、流量センサに出力が一定の場合、輸液バッグでの液漏れ(C3.)と判断し、表示部12に「輸液バッグ(液漏れ)」と表示する。
【0032】
以下に、本実施形態における処理の流れについて説明する。
図12は、本発明における基本的な閉ループ制御を説明するフローチャートである。
輸液ポンプシステムの動作が開始されると、制御部11は、予め設定された点滴の総量と、理想的な時間当たり流量をRAM15から読み出す(ステップS101)。
次いで、制御部11は、マイクロポンプ8を動作させる命令を発行する(ステップS102)。
制御部11は、流量センサ14から入力される信号から得られる流量を常に監視している。また、制御部11は、流量センサ14の値から輸液ポンプを流れた薬液の総量を積算し、ステップS101で読み出した総量に到達したと判断されれば(ステップS104でYes)、点滴は終了であるので、ポンプの動作を停止する(ステップS105)。
総量に到達するまでは(ステップS104でNo)、一定期間毎に、流量センサの値に基づく流量を、ステップS101で取得した設定流量と比較する(ステップS106)。
測定流量が、設定流量と異なる場合(ステップS107でYes)は、制御部11は、輸液ポンプ8を制御して、輸液ポンプの周波数等や駆動電圧を変更して流量を加減・調整(ステップS108)する。
調整の結果、流量センサの出力値が、設定流量と同じとなれば、再びステップS103に戻って流量信号の監視を続ける。
【0033】
図13は、本発明における異常判断を説明するフローチャートである。
上記したように、システムコントローラ7は、圧電素子に対する閉ループ制御とともに、圧電素子の駆動電圧・駆動周波数を一定期間ごとに監視し(ステップS201)、図11に示す流量・駆動電圧・駆動周波数の変化のパターンから輸液注入システムの異常を判断している。
ポンプ壊れと判断される場合は(ステップS202)、制御部11は、ポンプ動作を停止させ、警報・表示を行う(ステップS208)。
ポンプの故障ではないが(ステップS202でNo)、ポンプに泡が発生したと判断される場合(ステップS203でYes)もステップS207へ進む。
ポンプへの泡の発生が起きておらず(ステップS203でNo)、ポンプでの液漏れと判断される場合は(ステップS204でYes)、ステップS207へ進む。
ポンプの液漏れと判断されず(ステップS204でNo)、針先での液漏れと判断される場合は(ステップS205でYes)、ステップS207へ進む。
針先での液漏れと判断されず(ステップS205でNo)、薬液バッグでの液漏れと判断される場合(ステップS206)、ステップS207へ進む。
薬剤バッグ液漏れとも判断されない場合(ステップS206でNo)、輸液注入システムに異常は起きていないので、図13のメインルーチンへと戻る。
【0034】
次に、本発明に適用可能な流量センサについて説明する。
図14は、本発明に適用可能な流量センサの概要を示す図である。
流量センサは、sensirion 1cm*1cmのMEMSセンサである熱式質量流量センサを使用した。
熱式質量流量センサは管路に輸液を流しつつ、管路内を流れる輸液を熱源(ヒータ40)を用いて加熱すると同時に、温度センサ41を用いてチューブ4−3の管壁を介して薬剤から伝わる熱量を計測する。温度センサの計測結果は計測部42に送られる。熱式質量流量センサの計測部42は、温度センサの計測結果を用いて輸液の流量を求める。
チューブ4−3内を通過する輸液の温度を2つの温度センサ41で測定している。
ここで、輸液が流れていない場合、ヒータ40からの熱が輸液LMに等方的に伝わるため、管路内の輸液の温度分布は、ヒータの設置位置を中心に対称的な形(左右)対称な山形)になる。なお、輸液の流れる方向を+X方向とする。この場合、温度センサの計測結果は互いに等しく、それらの差は零となる。
一方、輸液が(+X方向に)流れている場合、管内の輸液の温度分布は、流れの方向に頂点がシフトした左右非対称な山形となる。この場合、輸液の流れる方向の下流側の温度センサの計測結果は上流側の温度センサの計測結果より大きく、これらの差(上流側の温度センサの計測結果を基準とする)は正の値になる。このような原理に基づき、熱式質量流量センサは、温度センサ41の計測結果の差から管路内を流れる輸液の流量(流れの向きを含む)を求める。
【0035】
図15は、圧電素子を駆動するドライバ回路を示す図である。
ドライバ回路51は、パルス発生器から入力されるパルスに基づいて圧電素子34に駆動パルスを印加する。回路自体は一般的なものであるので、ここでは詳しく説明しない。
圧電素子の駆動周波数は、周波数カウンターキットを用いて測定した。
●周波数カウンターの仕様
マイコン PIC16F819 20Mhz動作
基準発振 水晶発振子 20Mhz
表示器 16X2 LCD キャラクターディスプレー
測定方式 直接計数式
測定レンジ 0.1Sec/1Sec/10Sec 3レンジを切り替え可能
分解能 16777216 (24ビット) 8桁表示
測定精度 絶対精度 6桁程度
測定範囲 DC〜33Mhz
プリスケーラーON/OFFの切り替えが可能 1:1/1:8
入力感度 入力回路 FETアンプ
1Mhz 50mA以上/10Mhz 0.2V以上/15Mhz 0.3V以上
【0036】
また、圧電素子の駆動電圧は、図16に示すような回路で検出可能である。
また、実験で使用した他の部材は以下の通りである。
チューブ:内径2mm 70cm程度
針:外径0.6mm静脈用 外径1mm 輸血用 日本理化学機械製
輸液:生理食塩水(S−500B;エアレスタイプ)
マイクロポンプモジュールのケースはMEMSポンプを、ラバーで振動を防ぎ、プラスチックケースとOリングで挟んだ構造とした。流路中に接着剤はないが、流路を固定するのに今回は接着剤を用いた。
【0037】
また、輸液セットとしてテルモ社製のテルフュージョン輸液セット(DEHPフリー、翼付針付を使用して実験を行った。
実施フロー
(1)マイクロポンプモジュール5に注射針の付いたチューブ4−2をセットする。
(2)輸液バッグ2にチューブ4−1を接続(図示していないが、輸液バッグ2とμポンプ8の間にクレンメをいれてある)。クレンメは、初期は閉じている。
(3)システムコントローラ7に流量を設定(200ml/h)。
(4)クレンメを開ける。
(5)マイクロポンプ8を駆動する駆動周波数、駆動電圧は1.0KHz、70Vである。
(6)マイクロポンプ8の特性は図5に示す周波数特性をもつ。
(7)輸液が針先まで届いたら、一旦マイクロポンプ8を止め、クレンメも閉じる。
(8)患者に針を指し、
(9)ポンプ駆動と同時にクレンメも開ける。
(10)途中で異常があればポンプは停止するプログラムにする。
(11)異常箇所がある場合は異常箇所が表示され警報がなる。
(12)輸液がなくなる前に液量200mlなら180ml以降警報がなるようにプログラムする。
異常がある場合はクレンメを閉じて、その箇所をなおす。
直った事を確認して、(1)〜(12)をくりかえす。
【符号の説明】
【0038】
1 輸液注入システム、2 輸液バッグ、3 注射針、4 チューブ、5 マイクロポンプモジュール、7 システムコントローラ、8 マイクロポンプ、9 流量センサ、11 制御部、12 表示部、13 無線通信インターフェイス、14 ROM、15 RAM、21 ポンプ制御部、22 比較演算部、23 異常判断部、24 報知制御部、30 シリコン基板、31 ガラス基板、34 圧電素子、35 ポンプ室、36 ディフューザ、37 ディフューザ、38 インレット、39 アウトレット、40 ヒータ、41 温度センサ、42 計測部、51 ドライバ回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開昭63−212371号公報
【特許文献2】特表2005−514175公報
【特許文献3】特開2008−086581公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、
該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、
該流量センサによって測定される測定流量が、予め設定された設定流量となるように前記圧電素子に印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、異常事態の発生を検知することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、表示手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、無線通信手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の輸液量調整装置と、当該輸液量調整装置を介して輸液管により接続された生体に輸液を注入するための針と及び輸液を充填した輸液容器と、を少なくとも備えたことを特徴とする輸液注入システム。
【請求項10】
圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、を備えた輸液量調整装置の輸液量調整方法であって、
前記輸液量調整装置が有するポンプ制御部が、前記流量センサにより測定される測定流量が、所定の設定流量となるように前記輸液ポンプに印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御するステップと、
前記輸液量調整装置が有する異常判断部が、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、異常事態の発生を判断するステップと、を含むこと特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項11】
請求項10に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記輸液量調整装置は表示手段を備え、
前記輸液量調整装置が有する報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示させるステップを含むことを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記輸液量調整装置は、無線通信手段を備え、
前記報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知するステップを含むことを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項14】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項15】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項16】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整方法。
【請求項17】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項18】
請求項10乃至17の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項1】
圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、
該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、
該流量センサによって測定される測定流量が、予め設定された設定流量となるように前記圧電素子に印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、異常事態の発生を検知することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、表示手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、無線通信手段を備え、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の輸液量調整装置において、
前記制御手段は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の輸液量調整装置と、当該輸液量調整装置を介して輸液管により接続された生体に輸液を注入するための針と及び輸液を充填した輸液容器と、を少なくとも備えたことを特徴とする輸液注入システム。
【請求項10】
圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで輸液を送出する輸液ポンプと、該輸液ポンプから吐出される輸液の単位時間あたりの流量を測定する流量センサと、を備えた輸液量調整装置の輸液量調整方法であって、
前記輸液量調整装置が有するポンプ制御部が、前記流量センサにより測定される測定流量が、所定の設定流量となるように前記輸液ポンプに印加する駆動パルスの電圧及び周波数の少なくも一方を制御するステップと、
前記輸液量調整装置が有する異常判断部が、前記測定流量及び前記圧電素子の駆動電圧及び駆動周波数の少なくとも一方に基づいて、異常事態の発生を判断するステップと、を含むこと特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項11】
請求項10に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記輸液量調整装置は表示手段を備え、
前記輸液量調整装置が有する報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記表示手段に表示させるステップを含むことを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記輸液量調整装置は、無線通信手段を備え、
前記報知制御部が、異常事態の発生及び発生箇所を前記無線通信手段により外部装置に通知するステップを含むことを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、前記駆動周波数が増加した場合は、前記輸液ポンプにおける液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項14】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が一定の場合、前記輸液ポンプが破損したと判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項15】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量がゼロで、前記駆動電圧及び前記駆動周波数が増加する場合、前記輸液ポンプで泡が発生したものと判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項16】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量及び前記駆動電圧が一定で、かつ前記周波数が減少したあと一定となる場合は、前記針の先端での液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整方法。
【請求項17】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法において、
前記異常判断部は、前記測定流量が一定で、かつ前記駆動周波数及び前記駆動電圧が増加する場合は、前記輸液容器における液漏れであると判断することを特徴とする輸液量調整装置の輸液量調整方法。
【請求項18】
請求項10乃至17の何れか一項に記載の輸液量調整装置の輸液量調整方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−177411(P2011−177411A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46382(P2010−46382)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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