説明

輸送システム

【課題】走行経路の水平方向での占有領域を縮小でき、且つプラットホームにおける円滑な人の移動を確保できる輸送システムを提供すること。
【解決手段】本発明は、所定の走行経路2を輸送車3が走行する輸送システムであって、走行経路2と、走行経路2から鉛直方向に離間して配置された停車場52cとの間で、輸送車3を昇降させる昇降部55を有する、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状に形成された走行経路に沿って走行する輸送車を用いた輸送システムが開示されている。輸送車は、走行経路上の所定の停車場から他の停車場に移動して、人や被輸送物を輸送するものである。ここで、積載量の小さな輸送車を用いたときに輸送システム全体としての輸送量を向上させるためには、所定の停車場に停車している輸送車を後続の輸送車が追い越して、輸送車の流れを滞らせないことが必要である。特許文献1の輸送システムでは、停車場の手前で走行経路を左右に分岐させて、停車場に向かう経路と停車場を通ることなく先に進む経路とに分けている。そのため、停車場に輸送車が停車していても後続の輸送車は先に進むことができ、輸送車の走行が滞ることを防止できる。よって、輸送システム全体の輸送量を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−290663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術には、以下のような課題が存在する。
特許文献1の輸送システムでは、走行経路を左右に分岐させているため、停車場の近傍で走行経路の水平方向での占有領域が拡大してしまうという課題があった。また、輸送車の停車場には乗降する人が行き交うプラットホーム(乗降場)が隣接されているが、このプラットホームは走行経路によって分断されており、プラットホームにおける円滑な人の移動を妨げてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、走行経路の水平方向での占有領域を縮小でき、且つプラットホームにおける円滑な人の移動を確保できる輸送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、所定の走行経路を輸送車が走行する輸送システムであって、走行経路と、該走行経路から鉛直方向に離間して配置された停車場との間で、輸送車を昇降させる昇降部を有する、という構成を採用する。
本発明では、昇降部の作動によって、走行経路上に位置する輸送車が走行経路から鉛直方向に離間して配置された停車場に移動する。そのため、後続の輸送車は、停車場に停車した輸送車を追い越して先に進むことが可能となる。また、本発明では、停車場は走行経路から鉛直方向に離間しており、停車場に隣接するプラットホームも走行経路から鉛直方向に離間している。よって、プラットホームは走行経路によって分断されていない。
【0007】
また、本発明は、昇降部が、昇降自在に設置されるフレームと、フレームに設けられフレームが下降位置にあるときに走行経路に連続し輸送車を支持する第1支持部と、フレームに設けられフレームが上昇位置にあるときに走行経路に連続し輸送車を支持する第2支持部とを備える、という構成を採用する。
【0008】
また、本発明は、走行経路に沿って設けられ走行経路と平行する方向に移動して輸送車を走行駆動させる駆動軌道を有する、という構成を採用する。
【0009】
また、本発明は、輸送車の、走行経路から停車場への移動に関する動作に必要な時間を最短の運行間隔として、複数の輸送車の走行を制御する制御装置を有する、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明は、走行経路から停車場への移動に関する動作に必要な時間には、輸送車が減速を開始してから停車するまでに要する時間と、輸送車が走行経路から停車場に移動するために要する時間とが含まれる、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明は、制御装置が、昇降部の昇降動作及び複数の輸送車の走行を制御して、運行間隔を確保しつつ停車場に位置する輸送車を走行経路に戻す、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、昇降部の作動によって、輸送車を走行経路から鉛直方向に離間した停車場に移動できることから、走行経路の水平方向での占有領域を縮小できるという効果がある。また、本発明によれば、プラットホームが走行経路によって分断されていないため、プラットホームにおける円滑な人の移動を確保できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】輸送システム1の全体構成を示す概略図である。
【図2】第1周辺駅5の構成を示す概略図である。
【図3】昇降部55の昇降動作を示す概略図である。
【図4】輸送車3の停止動作及び上昇動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図4を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
本実施形態に係る輸送システム1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、輸送システム1の全体構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は輸送システム1における中央駅と複数の周辺駅との関係を示す概略図である。
【0016】
輸送システム1は、屋外、地下又は建築構造物内(工場やショッピングモール等)に設けられ、人や被輸送物を輸送するために用いられるシステムである。なお、本実施形態の輸送システム1は、屋外の地上面に設置され、近距離且つ少量の輸送を行うためのシステムである。輸送システム1は、走行経路2と、輸送車3と、中央駅4と、第1周辺駅5と、第2周辺駅6と、第3周辺駅7と、制御装置8とを有している。
輸送システム1は、人や被輸送物を中央駅4から各周辺駅5,6,7に向けて輸送し、また、人や被輸送物を各周辺駅5,6,7から中央駅4に向けて輸送するように構成されている。
【0017】
走行経路2は、輸送車3が走行する経路であって、地上面に設けられ平面視略環状に形成されている。また、走行経路2は、輸送車3を走行駆動させるための駆動ベルト21(図2参照)を有している。
【0018】
輸送車3は、走行経路2に沿って走行し、人や被輸送物を輸送するためのものである。輸送車3は、駆動ベルト21の駆動によって走行するため、走行のための駆動装置を有していない。すなわち、輸送車3の構成を簡略化し、車重を軽量化することができる。走行経路2には複数の輸送車3が配置されており、全て同一の方向に向かって走行している。
【0019】
中央駅4は、走行経路2上に設けられ、輸送システム1における輸送の出発地となる駅である。中央駅4は、輸送車3が停車し、人の乗降や被輸送物の積み降ろしが行われる第1停車場41、第2停車場42及び第3停車状43を備えている。
【0020】
第1周辺駅5、第2周辺駅6及び第3周辺駅7は、輸送システム1における輸送の目的地となる駅である。周辺駅5,6,7は、人の乗降や被輸送物の積み降ろしが行われる不図示の停車場をそれぞれ備えている。また、図1(b)に示すように、中央駅4の第1停車場41、第2停車場42及び第3停車状43は、第1周辺駅5、第2周辺駅6及び第3周辺駅7にそれぞれ対応している。すなわち、目的地である周辺駅5,6,7にそれぞれ対応する停車場41,42,43から輸送車3に乗車すれば、周辺駅5,6,7にそれぞれ輸送される構成となっている。
【0021】
制御装置8は、輸送システム1における複数の輸送車3の走行動作と、中央駅4及び周辺駅5,6,7に設けられた昇降部(図2参照)の昇降動作を制御する装置である。制御装置8は、複数の輸送車3、中央駅4及び周辺駅5,6,7と信号の送受信を行うため、それぞれと有線又は無線接続されている。
【0022】
次に、走行経路2、輸送車3及び第1周辺駅5の構成を、図2を参照して詳細に説明する。
図2は、第1周辺駅5の構成を示す概略図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線視断面図である。なお、図2及び後述する図3において、地上面を符号G、人を符号Pで表す。
以下、走行経路2、輸送車3及び第1周辺駅5の順に説明する。
【0023】
走行経路2は、地上面Gに設けられており、駆動ベルト21と、一対の走行面22とを有している。
駆動ベルト21は、輸送車3を駆動して走行させるためのベルト状の駆動軌道であって、走行経路2に沿って延在している。駆動ベルト21は、不図示の駆動装置及び駆動ローラ等により駆動されており、一方向に向かって所定の速度(凡そ30km/h)で移動している。駆動ベルト21は、高い摩擦係数を備えた材質を用いて形成され、輸送車3を下方から支持できる強度を備えている。駆動ベルト21の輸送車3が載置される面は、水平面と略平行して設けられている。
【0024】
走行面22は、輸送車3が走行する固定面であって、駆動ベルト21とともに輸送車3を下方から支持するものである。走行面22は、駆動ベルト21を挟んだ両側にそれぞれ設けられ、走行経路2に沿って延在している。走行面22は、駆動ベルト21の輸送車3が載置される面と略同一の高さに設けられている。なお、走行面22の代わりに、地上面Gに固定され、走行経路2に沿って延在するレール状の部材を用いてもよい。
【0025】
輸送車3は、少なくとも1つの駆動輪31と、複数の従動輪32とを有している。駆動輪31及び従動輪32は、いずれも回転自在に輸送車3の下面側に設けられている。駆動輪31は、駆動ベルト21に接触する位置に設けられ、従動輪32は、走行面22に接触する位置に設けられている。駆動輪31及び従動輪32は、協働して輸送車3を下方から支持している。なお、複数の従動輪32は、それらのみで輸送車3を下方から支持できる。駆動輪31の外周面は、摩擦抵抗の高い材質(ゴム等)で形成されており、駆動ベルト21との間で生じる摺動を防止できる。
【0026】
駆動輪31には、その回転を制動する不図示の制動部が連結されており、該制動部の作動により駆動輪31と輸送車3とが一体的に固定される。このとき、所定の方向で移動する駆動ベルト21が、駆動輪31を介して輸送車3を走行駆動させることができる。なお、輸送車3の加減速時における振動や衝撃等を緩和するために輸送車3の走行を細かく制御し、また、停止時に輸送車3を走行面22に対して固定して保持するため、従動輪32に不図示の制動部を設けてもよい。
【0027】
第1周辺駅5は、走行経路2を走行する輸送車3が停車して、停車中の輸送車3に対して人の乗降や被輸送物の積み降ろしが行われる箇所である。第1周辺駅5は、プラットホーム51と、駅構造物52と、昇降部55とを有している。
【0028】
プラットホーム51は、輸送車3に対して乗り降りする人Pが移動する領域であって、停車中の輸送車3の周りに設けられている。プラットホーム51は、不図示の支持柱等により支持されている。プラットホーム51は、水平面に略平行して、且つ地上面Gに設けられた走行経路2から鉛直方向上側に離間して配置されている。すなわち、プラットホーム51は走行経路2によって分断されておらず、プラットホーム51上に人Pが移動できる広い領域を確保することができる。よって、プラットホーム51における円滑な人Pの移動を確保できる。
【0029】
駅構造物52は、鉛直方向に延在する構造物であり、走行経路2とプラットホーム51とを繋いで設置されている。駅構造物52は、その下部で走行経路2と連結している。駅構造物52と走行経路2との連結部分には、走行面22は設けられておらず、その代わりに後述する第1支持部57及び第2支持部58が設けられている。なお、駆動ベルト21は、駅構造物52と走行経路2との連結部分にも、他の部分と変わらず延在している。駅構造物52の下部には、走行経路2を走行している輸送車3が通過する開口部52aが形成されている。
【0030】
駅構造物52の上部は、プラットホーム51を貫通して上側に突出している。駅構造物52のプラットホーム51からの突出部分には、輸送車3への乗降時に開放される開閉扉52bが設けられている。開閉扉52bは安全のために、輸送車3への乗降が可能なときにのみ開放される。
【0031】
駅構造物52の内部には所定の空間が形成されている。駅構造物52のプラットホーム51からの突出部分の内部には、輸送車3が停車する停車場52cが設けられている。停車場52cは、走行経路2上にある輸送車3が上側に移動して停車する箇所である。すなわち、停車場52cは、走行経路2から鉛直方向上側に離間して配置されている。輸送車3が停車場52cに停車しているときに、輸送車3に対する乗降が行われる。さらに、駅構造物52の内部には、昇降部55が設置されている。
【0032】
昇降部55は、走行経路2と、走行経路2から鉛直方向上側に離間して配置された停車場52cとの間で、輸送車3を昇降させるものである。昇降部55は、一対のフレーム56と、一対の第1支持部57と、一対の第2支持部58とを備えている。
【0033】
フレーム56は、走行経路2の駆動ベルト21を挟んだ両側にそれぞれ設けられ、鉛直方向に延在する部材を含んで構成されている。また、フレーム56には不図示の昇降装置が設けられており、フレーム56は、地上面Gより下方の位置(下降位置)と駅構造物52の内部の位置(上昇位置)との間で昇降自在に設置されている。
【0034】
第1支持部57は、一対のフレーム56にそれぞれ一体的に設けられ、輸送車3を下方から支持するための部材である。第1支持部57は、略矩形の板状に形成され、その板面が水平面に平行し且つ走行経路2に平行して設置されている。また、第1支持部57は、フレーム56が下降位置にあるときに、走行経路2の走行面22に連続する位置に設けられている。
【0035】
第2支持部58は、第1支持部57と同様に、一対のフレーム56にそれぞれ一体的に設けられ、輸送車3を下方から支持するための部材である。第2支持部58は、略矩形の板状に形成され、その板面が水平面に平行し且つ走行経路2に平行して設置されている。また、第2支持部58は、フレーム56が上昇位置にあるときに、走行経路2の走行面22に連続する位置に設けられている。
【0036】
なお、中央駅4は、第1周辺駅5を走行経路2の延在方向に複数並べて配置したものと同様の構成を有しており、第2周辺駅6及び第3周辺駅7は、第1周辺駅5と同様の構成であることから、それらの詳細な説明は省略する。
【0037】
続いて、本実施形態に係る輸送システム1の動作を、図1を参照して説明する。
まず、人や被輸送物を、出発地である中央駅4から目的地である周辺駅5,6,7のそれぞれに輸送する動作を説明する。
例えば、人や被輸送物を、中央駅4から第1周辺駅5へ輸送する場合には、中央駅4の第1停車場41に停車している輸送車3に人が乗車し、被輸送物が積載される。輸送車3は第1停車場41から出発して、走行経路2に沿って走行し、第1周辺駅5に到着して停車する。第1周辺駅5に停車した輸送車3から人が降車し、被輸送物が降ろされることで、第1周辺駅5への輸送が完了する。
【0038】
また、人や被輸送物を、第1周辺駅5から中央駅4へ輸送する場合には、第1周辺駅5に停車している輸送車3に人が乗車し、被輸送物が積載される。輸送車3は第1周辺駅5から出発して、走行経路2に沿って走行し、第2周辺駅6や第3周辺駅7には停車せずに通過して、中央駅4に到着する。輸送車3は、中央駅4の停車場41,42,43のいずれかに停車する。中央駅4に到着した輸送車3から人が降車し、被輸送物が降ろされることで、中央駅4への輸送が完了する。
【0039】
なお、中央駅4と第2周辺駅6との間、及び中央駅4と第3周辺駅7との間でも、上述した輸送方法が採用されており、中央駅4から出発した輸送車3は目的とする周辺駅以外の駅には停車しない。すなわち、輸送車3は、目的地ではない周辺駅に停車している他の輸送車3を、追い越して走行する必要がある。
以上で、人や被輸送物を、出発地である中央駅4から目的地である周辺駅5,6,7のそれぞれに輸送する動作が完了する。
【0040】
続いて、本実施形態における昇降部55の昇降動作、及び輸送車3の追い越しに関する動作を、図2及び図3を参照して説明する。なお、輸送車3が第1周辺駅5に停車する場合について説明する。
図3は、昇降部55の昇降動作を示す概略図であって、(a)は下降位置にある昇降部55を示し、(b)は昇降動作中の昇降部55を示し、(c)は上昇位置にある昇降部55を示している。また、図3において、第1周辺駅5における駅構造物52に関する記載は省略している。
【0041】
まず、図3(a)に示すように、走行経路2を走行している輸送車3が、第1周辺駅5の昇降部55に停止する。
輸送車3は、走行経路2に沿って、駆動ベルト21に駆動されて走行している。また、輸送車3の従動輪32は、輸送車3の走行とともに走行面22(図3では図示せず)上を転がって移動している。この輸送車3に対して制御装置8が減速開始の指示を出力する。減速開始の指示を受けた輸送車3は、駆動輪31及び従動輪32における図示しない制動部の作動を調整することで、次第に減速し始める。ここで、昇降部55のフレーム56は下降位置にあり、第1支持部57は走行面22と連続している。すなわち、輸送車3の従動輪32は、走行面22から第1支持部57に渡ることができる。減速した輸送車3が、第1周辺駅5内に進入して、第1支持部57上で停止する。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、昇降部55を作動させて、輸送車3を上昇させる。
制御装置8が、フレーム56の図示しない昇降装置に対して上昇の指示を出力する。上昇の指示を受けた昇降装置が作動し、フレーム56は上昇する。第1支持部57が従動輪32を支持しており、且つ複数の従動輪32はそれらのみで輸送車3を支持できることから、フレーム56及び第1支持部57の上昇とともに輸送車3も上昇する。なお、駆動ベルト21は走行経路2に沿って設けられているので、フレーム56の上昇には関係がなく、鉛直方向での位置は変化しない。そのため、駆動輪31と駆動ベルト21とは互いに離間する。
【0043】
次に、図3(c)に示すように、昇降部55が上昇位置に移動する。
フレーム56が上昇位置に移動するとともに、輸送車3が停車場52c(図3では図示せず)に移動して停車する。停車場52cに停車した輸送車3に対して人の乗降、被輸送物の積み降ろしが行われる。
【0044】
このとき、フレーム56が上昇位置にあるため、第2支持部58は走行経路2の走行面22と連続している。そして、後続の他の輸送車3Aが、走行経路2を走行し第1周辺駅5に近づいたときにも、後続の輸送車3Aは第2支持部58を介して第1周辺駅5を通過することができる。すなわち、第1周辺駅5に輸送車3が停車しているときにも、後続の輸送車3Aは輸送車3を追い越して走行することができる。
【0045】
そのため、複数の輸送車3が走行経路2を走行しているときにも、輸送車3の追い越しが可能なことから走行の停滞を防止でき、輸送システム1全体としての輸送量を向上できる。また、昇降部55の作動によって、輸送車3を走行経路2から鉛直方向に離間した停車場52cに移動できることから、走行経路2の水平方向での占有領域を縮小できる。
【0046】
なお、第1周辺駅5の停車場52cに停車している輸送車3が、中央駅4に向かって出発するときは、昇降部55の作動により、上述した上昇動作とは逆の手順で下降動作を行う。昇降部55の下降動作によって、輸送車3を停車場52cから走行経路2に戻すことができる。
以上で、昇降部55の昇降動作、及び輸送車3の追い越しに関する動作が完了する。
【0047】
続いて、本実施形態における制御装置8が、複数の輸送車3の間における運行間隔を調整する動作を、図4を参照して説明する。
図4は、輸送車3の停止動作及び上昇動作を示すフローチャートである。
【0048】
上述したように、複数の輸送車3が走行経路2を走行しているときにも、輸送車3の追い越しが可能なことから走行の停滞を防止できる。もっとも、昇降部55による輸送車3の昇降動作にトラブルが発生した場合には、後続の輸送車3が昇降部55の手前で停車できることが安全上必要である。本実施形態における制御装置8は、昇降部55の昇降動作及び輸送車3の走行動作を制御して、複数の輸送車3の間における運行間隔が所定の時間以下にならないように調整している。
【0049】
複数の輸送車3の間における運行間隔を設定するために参考となる、輸送車3の停止動作及び上昇動作に掛かる時間を、図4を参照して説明する。
まず、制御装置8から、これから昇降部55に停止する輸送車3に対して、減速開始の指示が出力される(ステップS11)。制御装置8より減速開始の指示が出力されてから輸送車3の減速が開始されるまでに、2秒が掛かる。
【0050】
次に、輸送車3が減速し始める(ステップS12)。輸送車3は30km/hの速度で走行しており(駆動ベルト21の移動速度)、この走行速度を一定の減速比(毎秒3.0km/h〜毎秒3.6km/h)で減速する。例えば、毎秒3.0km/hずつ減速したときには、輸送車3が停止するまでに10秒が掛かる。
【0051】
次に、輸送車3の停止確認を行う(ステップS13)。この確認は、輸送車3に設置されている速度センサ、及び昇降部55に設置されている位置センサ等からの信号により行う。制御装置8に停止確認信号が入力されるまで2秒待機する。
【0052】
次に、昇降部55を作動させて輸送車3の上昇すなわちリフトアップを行う(ステップS14)。制御装置8から昇降部55に対して、上昇開始の指示が出力される。昇降部55の上昇が完了するまでに、10秒が掛かる。
【0053】
次に、昇降部55の上昇確認すなわちリフトアップ確認を行う(ステップS15)。この確認は、昇降部55に設置されている位置センサ等からの信号により行う。制御装置8に上昇確認信号が入力されるまで2秒待機する。
【0054】
次に、上昇位置で昇降部55を鎖錠(ロック)し、鎖錠の確認を行う(ステップS16)。制御装置8から昇降部55に対して、鎖錠の指示が出力される。鎖錠は瞬間的に完了するため、続けて鎖錠の確認を行う。この確認は、昇降部55に設置されている鎖錠位置センサ等からの信号により行う。制御装置8に鎖錠確認信号が入力されるまで2秒待機する。
【0055】
以上の手順に従って輸送車3の停止動作及び上昇動作を行う間に、何らかのトラブルが発生し、所定の時間内に上述した確認信号が制御装置8に入力されなかったときには、制御装置8は、後続する輸送車3を走行経路2上で停止させる。すなわち、後続する輸送車3に対して、減速開始の指示を出力する(ステップS21)。
【0056】
ここで、上述した輸送車3の停止動作及び上昇動作に掛かる時間を、複数の輸送車3の間における最低の運行間隔としておけば、後続する輸送車3は昇降部55の手前に安全に停止することができる。上述した停止動作及び上昇動作に掛かる時間を合計すると凡そ30秒(≒28秒)となる。すなわち、本実施形態の安全上、複数の輸送車3の間における運行間隔を30秒以上としておくことが必要である。また、30秒の時間を複数の輸送車3の間における距離に換算すると、30km/hで走行する輸送車3では、凡そ250mの間隔があくことになる。なお、上述した運行間隔は、制御装置8が各輸送車3の走行速度をそれぞれ調整することにより確保する。
【0057】
さらに、制御装置8は、昇降部55の昇降動作及び輸送車3の走行を制御して、上記最低の運行間隔(30秒)を確保しつつ、第1周辺駅5の停車場52cに停車している輸送車3を走行経路2に戻すように制御する。
具体的には、まず、制御装置8は第1周辺駅5から上流側の所定の距離内(例えば1500m、時間にして3分)で、走行経路2上を走行している複数の輸送車3の間における間隔が1分以上となっている箇所を検索する。ここで、1分以上となっている箇所があれば、その中間に停車中の輸送車3を戻すことで、最低の運行間隔を確保することができる。
【0058】
一方、上記所定の距離内で、走行経路2上を走行している複数の輸送車3の間における間隔が1分以上となっている箇所が検索できなかったときには、現在走行経路2上を走行している輸送車3に対して減速指示を出力し、間隔を拡大させる。そして、間隔が拡がった箇所に、停車中の輸送車3を戻すことで、最低の運行間隔を確保することができる。
【0059】
なお、輸送車3が第1周辺駅5の昇降部55にて昇降動作をする場合を説明したが、制御装置8は、第2周辺駅6及び第3周辺駅7の各昇降部に対しても、同様の制御を行っている。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、昇降部55の作動によって、輸送車3を走行経路2から鉛直方向に離間した停車場52cに移動できることから、走行経路2の水平方向での占有領域を縮小できるという効果がある。また、本実施形態によれば、プラットホーム51が走行経路2によって分断されていないため、プラットホーム51における円滑な人Pの移動を確保できるという効果がある。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、走行経路2は駆動ベルト21を備えているが、これに限定されるものではなく、輸送車3を走行駆動させるケーブル状の駆動軌道であってもよい。また、駆動軌道を使用せず、輸送車3が走行のための駆動装置を備え、自走できるものであってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、走行経路2は屋外の地上面に設置されているが、これに限定されるものではなく、輸送車が軌条に吊り下げられて走行する懸垂式の走行経路を本発明の輸送システムに使用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…輸送システム、2…走行経路、21…駆動ベルト、3…輸送車、52c…停車場、55…昇降部、56…フレーム、57…第1支持部、58…第2支持部、8…制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行経路を輸送車が走行する輸送システムであって、
前記走行経路と、前記走行経路から鉛直方向に離間して配置された停車場との間で、前記輸送車を昇降させる昇降部を有することを特徴とする輸送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の輸送システムにおいて、
前記昇降部は、
昇降自在に設置されるフレームと、
前記フレームに設けられ、前記フレームが下降位置にあるときに前記走行経路に連続し、前記輸送車を支持する第1支持部と、
前記フレームに設けられ、前記フレームが上昇位置にあるときに前記走行経路に連続し、前記輸送車を支持する第2支持部と、を備えることを特徴とする輸送システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の輸送システムにおいて、
前記走行経路に沿って設けられ、前記走行経路と平行する方向に移動して前記輸送車を走行駆動させる駆動軌道を有することを特徴とする輸送システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の輸送システムにおいて、
前記輸送車の、前記走行経路から前記停車場への移動に関する動作に必要な時間を最短の運行間隔として、複数の前記輸送車の走行を制御する制御装置を有することを特徴とする輸送システム。
【請求項5】
請求項4に記載の輸送システムにおいて、
前記走行経路から前記停車場への移動に関する動作に必要な時間には、前記輸送車が減速を開始してから停車するまでに要する時間と、前記輸送車が前記走行経路から前記停車場に移動するために要する時間と、が含まれることを特徴とする輸送システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の輸送システムにおいて、
前記制御装置は、前記昇降部の昇降動作及び複数の前記輸送車の走行を制御して、前記運行間隔を確保しつつ、前記停車場に位置する前記輸送車を前記走行経路に戻すことを特徴とする輸送システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−161981(P2011−161981A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24415(P2010−24415)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】