説明

輸送手段または管路中へのモノマー組成物の輸送

部分的または完全に中和されたアクリル酸または過剰に中和されたアクリル酸の水溶液を含む組成物を輸送手段中に収容するかまたは管路を通して輸送することによる、モノマー組成物を輸送する方法が記載されている。本発明による方法は、アクリル酸モノマーを輸送する際の高められた安全性、生じる生成物の改善された品質ならびに高い経済性を示す。この方法は、高い活性のアクリル酸の安全な輸送を保証する。重合抑制剤の使用量は、減少させることができる。もう1つの利点は、二量体のアクリル酸の形成が最少化されることである。容器、管路およびパイプラインの温度調節は、不要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送手段または管路中へのモノマー組成物の輸送に関する。
【0002】
水吸収性樹脂、超吸収体またはSAP(Superabsorbing Polymers)とも呼称される、は、水性液体をヒドロゲルの形成下に吸収し、それによって結合する状態にある。従って、超吸収体は、水性体液を吸収するために、殊に衛生製品、例えばおむつ、失禁用パッドおよび失禁用ショーツ、生理帯および類似物に使用されている。更に、超吸収体の使用は、防火服(Brandschutz)、ケーブル外被、包装材料および医学的用途に関する。SAPについての包括的な外観、その使用および製造は、F.L. Buchholz und AT. Graham(編集), "Modern Superabsorbent Polymer Technology", Wiley-VCH, New York, 1998に記載されている。
【0003】
超吸収体の中で、アクリル酸を基礎とする超吸収体は、特に重要な物質種である。通常、モノマーのアクリル酸は、水吸収性樹脂を製造する使用場所に輸送される。しかし、アクリル酸は、最も反応性の高い公知のビニルモノマーの1つである。この理由から、輸送の際には、モノマーのアクリル酸に重合抑制剤(安定剤)が添加され、早期の重合を回避する。
【0004】
慣用の重合抑制剤は、フェノチアジン(PTZ)またはフェノール系抑制剤、例えばヒドロキノンまたはp−メチルオキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル、MEHQ)である。フェノール系抑制剤は、酸素と結合して、例えば空気と接触して抑制効果を発揮する。道路輸送のために、氷アクリル酸は、通常、重合抑制剤、例えばMEHQ200ppmで安定化される。
【0005】
WO 00/20369には、アクリル酸の輸送中にラジカル重合を回避させるために、フェノール系重合抑制剤、例えばp−メトキシフェノールおよび共抑制剤、殊にマンガンカチオンを添加することが推奨されている。共抑制剤は、例えばカチオン交換剤を用いて除去することができる。
【0006】
米国特許第5130471号明細書には、アクリルモノマー、フェノチアジンおよび少なくとも1個のヒドロキシル基を有する環式アミンを含む安定化されたアクリルモノマー組成物が記載されている。
【0007】
欧州特許出願公開第765856号明細書には、アクリル酸と共に(i)ニトロキシルラジカルおよび/またはヒドロキシルアミンおよび(ii)ジヘテロ置換ベンゼン化合物、例えばp−メトキシフェノールを含む安定化されたモノマー組成物が開示されている。
【0008】
MEHQは、分子量酸素と結合して極めて効果的にモノマーのアクリル酸を安定化するとしても、湿った気候条件および/または温かい気候条件の下で有色の分解生成物を形成する。MEHQを安定剤として使用することによりアクリル酸の変色をまねき、超吸収体およびそれから製造された製品の貯蔵中に変色を促進することは、公知である。この変色は、一般に回避することができない。それというのも、超吸収体またはそれから製造された製品は、長い輸送経路上を国際的に輸送され、しばしば高い空気湿度の下で時々長時間貯蔵されるからである。殊に、衛生学の分野での使用の場合には、変色された製品は、望ましくない。
【0009】
更に、アクリル酸の二量体の形成が問題として生じる。二量化の場合、アクリル酸分子は、他のアクリル酸分子の二重結合に付加され、その結果、ミヒャエル付加物(Michael-Addukt)のβ−アクリルオキシプロピオン酸が生じる。二量体のアクリル酸は、既に数時間の滞留時間後に検出可能であり、したがってよりいっそう長い滞留時間または輸送時間で著しい二量体形成が生じる。ジアクリル酸形成は、高い温度および水の存在によって促進される。
【0010】
二量体のアクリル酸は、第1にアクリル酸の重合を損なう。更に、重合導入された二量体のアクリル酸は、高められた温度で解離しうる。これは、ポリマーの残留モノマー含量が高いことを明らかにするものであり、放出および悪臭公害をまねく。
【0011】
従って、ジアクリル酸形成を制限するために、氷アクリル酸は、できるだけ無水でできるだけ低い温度で貯蔵されるべきでありおよび/または輸送されるべきであるを抑制するために、氷アクリル酸が輸送および/または貯蔵の全期間に亘って部分結晶で存在することが推奨されている。
【0012】
アクリル酸は、14℃の融点を有する。このアクリル酸は、14℃またはそれ未満の温度で固体状態に移行しうる。結晶化された氷アクリル酸の融解は、最善の注意を必要とし、それというのも、氷アクリル酸は、結晶化の際に重合抑制剤で局部的に減損し、不安定なアクリル酸が大量の熱の発生下に爆発的に重合しうるからである。融解に使用される外部熱源は、安全性の理由から高すぎる温度水準を有さず、そのために融解は、比較的長い時間を必要とする。
【0013】
従って、実地においては、輸送中および/または貯蔵中にアクリル酸の凍結を回避させることは、極めて重要である。従って、アクリル酸は、加熱されたおよび/または絶縁された容器または管路中で輸送されなければならない。他の選択可能な方法によれば、アクリル酸は、十分に高い温度で(しかし、爆発の危険のために、最大約30℃まで)積み込むことができ、したがって目的の場所に到着するまで、温度は、15℃を下廻らない。しかし、よりいっそう高い温度は、二量体のアクリル酸の形成を促進する。
【0014】
本発明は、上記問題を最少化するかまたは克服する、1つの輸送手段または管路でモノマー組成物を安全に輸送する方法を記載するという課題に基づくものである。本発明は、殊に安全な輸送のために必要量の重合抑制剤、例えばp−メトキシフェノールを減少させることができる輸送方法を記載するという課題に基づくものである。
【0015】
この課題は、モノマー組成物を1つの輸送手段または管路で輸送する方法によって解決され、この場合このモノマー組成物は、部分的または完全に中和されたアクリル酸または過剰に中和されたアクリル酸の水溶液を含む。
【0016】
本発明による方法は、アクリル酸モノマーを輸送する際の高められた安全性、生じる生成物の改善された品質ならびに高い経済性を示す。
【0017】
本発明による方法を使用することにより、高反応性のアクリル酸の安全な輸送が保証されている氷アクリル酸の場合に存在するような極端な熱発生下での早期の重合による損傷の場合における危険性のポテンシャルは、本発明による方法によって完全に排除される。
【0018】
重合抑制剤の使用量は、減少させることができる。例えば、重合の直前に活性炭で処理することによる重合抑制剤の費用のかかる除去は、不用である。同様に、重合抑制剤の減少された使用量は、抑制剤によって引き起こされる変色に対して製造された生成物の持続的な安定性を生じさせる。
【0019】
部分的中和されたアクリル酸の水溶液を準備することにより、重合位置での重合の直前の溶解または中和の工程は、不用である。
【0020】
更に、本発明による方法の重要な利点は、二量体のアクリル酸の形成が最少化することである。二量体のアクリル酸の形成は、pH値、ひいては中和度に依存する。部分的または完全に中和されたアクリル酸または過剰に中和されたアクリル酸においては、二量体のアクリル酸の形成は、抑制されている重合前の二量体のアクリル酸の分離は、省略することができる。
【0021】
付加的な利点は、モノマー組成物が導かれる容器、管路およびパイプラインの温度調節を省略することができることであり、それというのも、前記のモノマー組成物は、純粋なアクリル酸よりも明らかに低い温度で結晶化するからである。
【0022】
本発明による方法は、優れた安全性およびそれから生じる、高い経済性によるプロセスの簡易化を示す。
【0023】
モノマー組成物を輸送することができる輸送手段には、道路、鉄道または船舶輸送、殊にトラック、タンカーまたはコンテナ船輸送のための郵送手段が挙げられる。この輸送手段は、輸送手段と固定結合されているかまたは液体を収容するのに適している容器、例えばタンクコンテナを積み込んでいるタンク装置を有することができる。管路は、殊にパイプラインまたは別の陸上の管路である。また、管路には、輸送手段を負うための一時的な結合および輸送手段を負わない一時的な結合が挙げられる。
【0024】
一般に、輸送手段または管路中でのモノマー組成物の滞留時間は、少なくとも1時間、大抵は少なくとも5時間、例えば少なくとも10時間である。1つの輸送手段における輸送の場合、滞留時間は、例えば6時間ないし25日間、しばしば12〜48時間、大抵は24〜36時間であることができる。1つの輸送手段における輸送の場合、輸送手段を充填する時間または輸送手段で負荷すべき容器が完全に空になるまでの時間は、"滞留時間"と見なされる。1つの管路中で輸送する場合、計算により管路の空の容積(長さ×横断面積)および通過量(単位時間当りの容量)から生じる平均滞留時間は、"滞留時間"と見なされる。
【0025】
本発明による方法の高められた安全性は、モノマー組成物の関連する大きな容量、例えば少なくとも1m3、特に少なくとも5m3または少なくとも20m3の容量を輸送する場合に特に効果を発揮する。輸送手段のタンクまたは釜が仕切られている場合には、コンパートメントの容積は、"関連する容量"と見なされる。管路中での輸送の場合には、管路の空の容積(長さ×横断面積)は、"関連する容量"と見なされる。
【0026】
一般に、モノマー組成物は、輸送中、−10〜25℃、特に−5〜15℃、殊に0〜10℃の範囲内の温度に維持される。
【0027】
中和剤しては、殊にアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩が適している。従って、アクリル酸は、特に全部または一部がアルカリ金属塩として、殊に全部または一部がナトリウム塩および/またはカリウム塩として存在する。更に、中和剤としては、アンモニアおよびアミン、例えばトリエタノールアミンがこれに該当する。
【0028】
"過剰に中和されたアクリル酸"とは、アクリル酸の完全な中和が必要とされる場合よりも大量の中和剤が添加されているアクリル酸溶液である。アクリル酸の好ましい中和度は、20〜110モル%、例えば20〜100モル%、特に20〜80モル%、殊に40〜75モル%である。特定の実施態様において、中和度は、100〜110モル%である。
【0029】
モノマー組成物は、部分的または完全に中和されたアクリル酸または過剰に中和されたアクリル酸の水溶液、即ちアクリル酸/アクリル酸塩、水および場合によっては中和剤からなる均一な混合物を含み、この場合水のモル含量は、アクリル酸/アクリル酸塩、水および場合による過剰の中和剤の物質量の総和に対して一般に50モル%を上廻る。前記組成物は、アクリル酸として計算したアクリル酸/アクリル酸塩を特に16〜56質量%、殊に24〜40質量%、大抵の場合有利に28〜36質量%含有し、即ちアクリル酸塩ならびに遊離アクリル酸は、アクリル酸(72.06g/molの分子量で)として計算される。
【0030】
1つの実施態様において、モノマー組成物は、本質的に重合抑制剤を含有していない。
【0031】
安全性の理由から、および調節が必要であることから、重合抑制剤を完全に省略することは、大抵の場合に望ましくない。従って、モノマー組成物は、一般に少なくとも1つの重合抑制剤を含有する。
【0032】
適当な重合抑制剤は、フェノチアジン、フェノール系重合抑制剤、例えばフェノール、ヒドロキノン、p−メチルフェノール、トコフェノール、2,5−ジ−第三ブチル−ヒドロキノン、クロマノール誘導体、例えば2,2,5,7,8−ペンタメチル−6−クロマノール、2,2,5,7−テトラメチル−6−クロマノール、2,2,5,8−テトラメチル−6−クロマノール、2,2,7,8−テトラメチル−6−クロマノール、2,2,5−トリメチル−6−クロマノール、2,2,7−トリメチル−6−クロマノール、2,2,8−トリメチル−6−クロマノール、ニトロキシルラジカル、例えばOH−TEMPOおよび別の公知の重合抑制剤である。多くの場合、重合抑制剤としてp−メトキシフェノールが使用され、アクリレートモノマー組成物が実質的に別の重合抑制剤を含有しないことは、好ましい。p−メトキシフェノールを使用する場合、前記組成物は、特に溶解された酸素を含有しおよび/または周囲空気または酸素含有ガス空間と接触して存在する。
【0033】
特に、重合抑制剤のモノマー組成物中での全含量は、アクリル酸に対して100ppm未満、特に50ppm未満、殊に40ppm未満、大抵の場合に有利に20ppm未満である。
【0034】
特定の実施態様の場合に、アクリル酸に対するppmでのp−メトキシフェノールのモノマー組成物中での含量は、χまたはそれ未満であり、この場合χは、次の方程式
χ=200−1.5DN
特に
χ=200−1.8DN
によって記載され、
上記式中、DNは、モル%でのアクリル酸の中和度を表わし、DNは、20〜110モル%の範囲内にある。
【0035】
モノマー組成物は、一般にアクリル酸の重合に不利な影響を及ぼす不純物100ppm未満、殊に20ppm未満、特に10ppm未満を含有する。芳香族アルデヒド、例えばベンズアルデヒドおよびフルフラールの含量は、特に25ppm未満であり、殊に15ppmを上廻らない。プロセス抑制剤、例えばフェノチアジンの含量は、同様に特に10ppm未満であり、殊に5ppmまたは2ppmを上廻らない。
【0036】
特に、次の不純物は、最大で記載された濃度でモノマー組成物中に含有されている:
【表1】

【0037】
全てのppmの記載は、アクリル酸に対する質量ppmである。
【0038】
モノマー組成物は、氷アクリル酸を適当な中和剤で完全または部分的に中和することによって得ることができる。
【0039】
一般に、アクリル酸は、C3炭化水素、例えばプロパンまたはプロペンおよびこれらの混合物を酸素を用いて接触気相酸化することによって製造される(プロペンからのアクリル酸の製造のためには、例えばUllmanns Enzyclopedia of Ind. Chem. 5th ed. ,CD-ROM, "Acrylic acid and derivatives, 1.3.1 Propenoxidation), Wiley-VCH Weinheim 1997; K. Weisaermel, H. -J. Arpe "Industrielle Org. Chem., 4. Aufl. VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim 1994, 第315-317頁、ならびにドイツ連邦共和国特許出願公開第2943707号明細書、ドイツ連邦共和国特許第1205502号明細書、欧州特許出願公開第117146号明細書、欧州特許出願公開第293224号明細書、英国特許第1450986号明細書参照;プロパンからのアクリル酸の製造のためには、例えばWO 99/20590およびWO 00/53555参照)。
【0040】
3炭化水素の酸化の際に生じるガス状反応混合物は、凝縮可能な成分として主要量のアクリル酸と共に、一般に飽和カルボン酸、例えば酢酸およびプロピオン酸、一連の芳香族アルデヒド、例えばフルフラールおよびベンズアルデヒド、場合によっては脂肪族アルデヒド、例えばホルムアルデヒド、アクロレインならびに場合によってはアセトアルデヒドおよびプロピオンアルデヒド、プロトアネモニン(protoanemonin)ならびに多種多様な不飽和または芳香族カルボン酸およびこれらの無水物、例えば安息香酸、マレイン酸、無水マレイン酸および無水フタル酸を含有する。
【0041】
反応ガスからアクリル酸を取得するために、数多くの方法が公知である。例えば、熱い反応ガスからのアクリル酸の分離は、適当な吸収剤中への吸収、例えば高沸点溶剤、例えばジフェニルエーテルとジフェニルとからなる混合物を用いての向流吸収(ドイツ連邦共和国特許出願公開第2136396号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4308087号明細書ならびにUllmanns Enzyclopedia of Ind. Chem. 5th ed. ,CD-ROM, 上掲書)または水中での吸収(例えば、欧州特許出願公開第511111号明細書およびそこに引用された刊行物)によって達成することができ、引続きアクリル酸の取得のために、例えば蒸留による分離方法により吸収剤は、除去することができる。
【0042】
別の方法で、反応ガスの全ての凝縮可能な成分、即ちアクリル酸、反応水ならびに上記の不純物は、十分に完全に凝縮される(所謂、全凝縮物)。引続き、この場合得られた含水アクリル酸は、共沸剤を用いての蒸留(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3429391号明細書および特開平11−24766号公報)、有機溶剤を用いての抽出法(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2164767号明細書、特開昭58−140039号公報、米国特許第3553261号明細書、米国特許第4219389号明細書、英国特許第1427223号明細書、米国特許第3962074号明細書およびドイツ連邦共和国特許第2323328号明細書参照)によって水が十分に遊離される。
【0043】
上記方法によって、アクリル酸粗製生成物が取得され、これは、粗製アクリル酸と呼称される。
【0044】
粗製アクリル酸の後精製は、蒸留によって行なうことができる。しかし、アクリル酸の蒸留は、問題ないわけではなく、それというのも、このアクリル酸は、熱負荷の際に極めて簡単に重合するからである。従って、アクリル酸には、蒸留中にプロセス重合抑制剤が添加されなければならない。更に、留出物として生じるアクリル酸には、輸送および/または貯蔵のために重合抑制剤、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が添加される。
【0045】
また、蒸留のための他の選択可能な方法によれば、公知技術水準で、例えば米国特許第4493719号明細書、欧州特許出願公開第616998号明細書、欧州特許出願公開第648520号明細書、欧州特許出願公開第715870号明細書、欧州特許第776875号明細書、WO 98/25889およびWO 01/77056にアクリル酸の結晶化が提案された。
【0046】
精製されたアクリル酸を取得するために、結晶物は、溶融される。
【0047】
その際に得られたアクリル酸溶融液の高い重合傾向のために、この時点で重合抑制剤、例えばMEHQが添加されなければならず、このことは、上記の欠点を結果として生じる。
【0048】
特に有利には、氷アクリル酸が自体公知の方法で結晶化され、結晶化されたアクリル酸が溶融工程の代わりに直接にアルカリ水溶液中、殊にアルカリ金属水酸化物水溶液中に溶解される場合には、アクリル酸ポリマーの製造、殊にアクリル酸を基礎とした超吸収体の製造に適したアクリル酸が得られる。
【0049】
従って、有利には、ドイツ連邦共和国特許第10221202号明細書に記載の方法により得られる。この方法は、
i)氷アクリル酸溶融液を1段または多段の結晶化に掛け、この場合結晶性アクリル酸および不純物の含量に富んだアクリル酸含有残留溶融液が得られ、
ii)結晶性アクリル酸の残留溶融液を十分または完全に分離し、
iii)結晶性のアクリル酸をアクリル酸の溶解に十分な量のアルカリ水溶液中に吸収し、その際部分的または完全に中和されたアクリル酸溶液が得られることによって特徴付けられる。
【0050】
工程i)での氷アクリル酸の結晶化の実施は、自体公知の方法で行なわれる。通常、氷アクリル酸は、結晶器中に移され、冷却下にアクリル酸の一部分が晶出される。このアクリル酸は、常法により十分または完全に母液、即ち不純物の含量に富んだ残留溶融液から分離される。場合によっては、こうして得られた結晶性アクリル酸は、溶融することができ、望ましい純度が達成されるまで、1つまたはそれ以上、例えば2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ、それ以上の連続した結晶化段階に供給することができる。この場合、好ましくは向流原理により作業が行なわれ、すなわち、それぞれの結晶化段階の母液は、それぞれ先行する結晶化段階に供給される。結晶化が多段の結晶化として実施される限り、アクリル酸結晶物の溶融の際には、微少量の安定剤、特にヒドロキノンまたはヒドロキノンモノアルキルエーテル、例えばヒドロキノンモノメチルエーテルを添加することができる。更に、この量は、一般に結晶物に対して1〜200ppmの範囲内、殊に5〜100ppmの範囲内である。しかし、アクリル酸の溶融が行なわれる場合には、原則的に微少量の添加剤が必要とされる。即ち、最後の結晶化段階に続いて、一般にさらに安定剤は添加されないかまたは微少量の他の安定剤が添加され、結晶物が溶解する。
【0051】
一般に、それぞれの結晶化段階における結晶化は、氷アクリル酸中に含有されているアクリル酸の少なくとも10質量%、特に少なくとも20質量%が晶出する程度に行なわれる。一般的に、結晶化段階において使用されるアクリル酸の90質量%以下、特に80質量%以下、殊に70質量%以下が晶出され、十分な精製効果が達成される。
【0052】
特に好ましい実施態様において、結晶化は、工程i)で1段階の結晶化として行なわれ、即ち結晶化は、望ましい結晶度になるまで実施され(工程i))、残留溶融液、以下、母液とも呼称される、は、結晶性アクリル酸から分離され(工程ii))、結晶性アクリル酸は、アルカリ水溶液中に吸収される(工程iii))。
【0053】
結晶性アクリル酸からの残留溶融液の分離は、自体公知の方法で液相と固体相とを分離するための通常の方法により行なわれる。この場合、残留溶融液を完全に結晶相から分離することは、不要である。しばしば、工程ii)で分離されたアクリル酸は、分離された全部のアクリル酸に対してなお10質量%まで、例えば1〜10質量%の母液を含有する。更に、一般にアクリル酸の溶解前に工程iii)で次に記載された精製工程が実施される。
【0054】
工程iii)での結晶性アクリル酸の溶解は、結晶性アクリル酸を十分な量のアルカリ水溶液で処理することによって行なわれる。アルカリ水溶液は、アクリル酸を中和し、重合でのアクリル酸の使用に不利な影響を及ぼさない、水中の塩基性の、通常、無機物質の溶液である。このためには、アルカリ金属塩基、例えばアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩およびアルカリ金属水酸化物が属し、この場合には、最後にアルカリ金属水酸化物が好ましい。特に、工程iii)では、苛性ソーダ水溶液または苛性カリ水溶液が使用される。前記容器中のアルカリ金属の濃度は、一般に少なくとも10質量%未満であり、特に20〜60質量%の範囲内、殊に20〜50質量%の範囲内にある。
【0055】
モノマー組成物は、アクリル酸を基礎とするポリマーの製造に特に好適である。アクリル酸を基礎とするSAPの製造は、周知のように本質的にアクリル酸および/またはアクリル酸塩を重合可能なモノマーとして含有するモノマー水溶液のラジカル重合によって行なわれる。重合は、特に溶液重合またはゲル重合として均一な水相中で行なわれるかまたは懸濁重合として行なわれ、この場合モノマー水溶液は、多相反応として形成される。重合の際に生じる水含有ポリマーゲルは、場合によっては粗大粉砕後に乾燥され、場合によっては微粉砕される。引続き、こうして得られた粒子状ポリマーは、一般に表面後架橋される。
【0056】
更に、本発明は、
a)アクリル酸を製造し、直接に部分的または完全に中和されたアクリル酸または過剰に中和されたアクリル酸の水溶液に移行させ、
b)こうして得られたモノマー組成物を交通手段でまたは管路を通じて輸送し、
c)場合によってはモノマー組成物の中和度を調節し、場合によっては他のモノマーを添加し、溶液重合またはゲル重合を実施することによる水吸収性樹脂の製造法に関する。
【0057】
場合によっては、重合の直前にモノマー組成物の中和度を重合に必要とされている値に調節することができる。重合のための中和度は、例えば65〜75モル%または40〜50モル%である。輸送されるモノマー組成物が例えば100モル%の中和度を有する場合には、アクリル酸を添加することによって望ましい低い中和度に調節することができる。
【0058】
記載されるように、本発明による輸送の場合に二量体のアクリル酸は、僅かな規模でのみ形成される。これは、重合後に得られたポリマーが後処理および/または後加工の経過中に高温工程、特に少なくとも150℃の温度、例えば160〜190℃に掛けられる場合には、有利である。この温度で重合導入された二量体アクリル酸は、再び1分子のアクリル酸を分離し、このアクリル酸は、完成されたポリマーの残留モノマー含量を上昇させる。
【0059】
高温工程は、例えば表面後架橋である。
【0060】
特に、重合は、酸素の十分な排除下または完全な排除下で実施される。従って、特に不活性ガス雰囲気下で作業される。不活性ガスとしては、殊に窒素または水蒸気が使用される。殊に、重合すべきモノマー水溶液またはモノマー含有水性重合媒体が重合前および/または重合中に不活性ガスで洗浄されることは、有効であることが証明された。
【0061】
重合は、一般に0℃〜150℃の温度範囲内、特に10℃〜100℃の範囲内で行なわれ、常圧下ならびに高められた圧力下または低下された圧力下で実施されてよい。
【0062】
重合すべきモノマー組成物は、その全体量に対して一般に:
モノマーAとしてのアクリル酸(塩)を50〜99.99質量%、特に70〜99.9質量%、殊に80〜99.8質量%、
アクリル酸と共重合可能な1つ以上のモノエチレン系不飽和モノマーBを0〜49.99質量%、特に0〜29.9質量%、殊に0〜19.8質量%および
少なくとも1つの架橋作用を有する化合物Cを0.01〜20質量%、特に0.1〜15質量%、殊に0.2〜3質量%含有する。
【0063】
本明細書中で以下、全ての質量分は、重合すべきモノマーの全質量に対するものであり、この場合酸基を有するモノマーの質量の記載、但し、このモノマーは、塩として存在していてもよく、は、常に酸の形に対するものである
適当なモノマーBの例は、アクリル酸とは異なる酸基を有するモノマーB1、例えば特に4〜8個のC原子を有するモノエチレン系不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸、例えばメタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸およびフマル酸;4〜10個、特に4〜6個のC原子を有するモノエチレン系不飽和ジカルボン酸の半エステル、例えばマレイン酸の半エステル、例えばマレイン酸モノメチルエステル;モノエチレン系不飽和スルホン酸およびホスホン酸、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシ−プロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸およびアリルホスホン酸および塩、殊に前記酸のナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩である。
【0064】
好ましいモノマーB1は、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸または前記酸の混合物である。全モノマー量に対するモノマーB1の割合は、所望される限り、全モノマーの量に対して特に0.1〜29.9質量%、殊に0.5〜19.8質量%である。
【0065】
本発明によるポリマーの性質を最適化するために、モノエチレン系不飽和モノマーB2を使用することは、有効であり、このモノマー不飽和モノマーは、酸基を有しないが、しかしアクリル酸および場合によってはモノマーB1と共重合可能であり、架橋作用を有しない。このためには、例えばモノエチレン系不飽和ニトリル、例えばアクリルニトリル、メタクリルニトリル、前記モノエチレン系不飽和カルボン酸のアミド、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルアミド、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチルビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムが所属する。更に、モノマーB2には、飽和C1〜C4−カルボン酸のビニルエステル、例えばビニルホルミエート、ビニルアセテートおよびビニルプロピオネート、アルキル基中に少なくとも2個のC原子を有するアルキルビニルエーテル、例えばエチルビニルエーテルまたはブチルビニルエーテル、モノエチレン系不飽和C3〜C6−カルボン酸のエステル、例えば1価C1〜C18−アルコールとアクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸とからなるエステル、アルコキシル化された1価の飽和アルコール、例えばアルコール1モル当たり酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン2〜200モルと反応されている10〜25個のC原子を有するアルコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、ならびにポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのモノアクリル酸エステルおよびモノメタクリル酸エステルが挙げられ、この場合ポリアルキレングリコールの分子量(Mn)は、例えば2000までを有することができる。更に、適当なモノマーB2は、スチレンおよびアルキル置換されたスチレン、例えばエチルスチレンまたは第三ブチルスチレンである。全モノマー量に対するモノマーB2の割合は、特に20質量%を上廻らず、所望される限り、特に0.1〜20質量%である。架橋作用を有する化合物Cとしては、分子中に少なくとも2個、例えば2、3、4または5個のエチレン系不飽和二重結合を有する化合物がこれに該当する。この化合物は、架橋剤モノマーC1とも呼称される。化合物C1の例は、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、それぞれ106〜8500、特に400〜2000の分子量のポリエチレングリコールに由来するポリエチレングリコールジアクリレートおよびポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロプレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、酸化エチレンと酸化プロピレンとからなるブロック共重合体のジアクリレートおよびジメタクリレート、2回、3回、4回または5回アクリル酸またはメタクリル酸とエステル化された多価アルコール、例えば繰り線、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットまたはジペンタエリトリット、モノエチレン系不飽和カルボン酸とエチレン系不飽和アルコールとのエステル、例えばアリルアルコール、シクロヘキセノールおよびジシクロペンテニルアルコール、例えばアリルアクリレートおよびアリルメタクリレート、さらにトリアリルアミン、ジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリドおよびジエチルジアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、106〜4000の分子量のポリエチレングリコールのポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタエリトリットトリアリルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルまたはポリエチレングリコールジグリシジルエーテル1モルとペンタエリトリトールトリアリルエーテルまたはアリルアルコール2モルとの反応生成物およびジビニルエチレン尿素である。重合すべきモノマー混合物に対するモノマーC1の割合は、特に0.01〜5質量%、殊に0.2〜3質量%である。
【0066】
更に、架橋作用を有する化合物Cとしては、官能基を有する化合物C2が機能を有することができ、この化合物C2は、供給結合の形成下にポリマーの少なくとも2個のカルボキシル基と反応することができる(カルボキシル基に対して補足的な官能基)。架橋剤Cとしては、エチレン系不飽和二重結合と共にカルボキシル基に対して補足的な少なくとも1個の他の官能基を有する架橋作用を有するモノマーC3もこれに該当する。多数のこの種の官能基を有するポリマーもこれに該当する。適当な官能基は、例えばヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基およびアジリジン基、さらにイソシアネート基、エステル基およびアミド基ならびにアルキルオキシシリル基である。このタイプの適当な架橋剤には、例えばアミノアルコール、例えばエタノールアミンまたはトリエタノールアミン、ジオールおよびポリオール、例えば1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ポリビニルアルコール、ソルビット、澱粉、酸化エチレンと酸化プロピレンとからなるブロック共重合体、ポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミンならびにそれぞれ4000000までの分子量を有するポリアミン、エステル、例えばソルビタン脂肪酸エステル、エトキシル化されたソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリシジルエーテル、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビットポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリットポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアジリジン化合物、例えば2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)−プロピオネート]、炭酸のジアミド、例えば1,6−ヘキサメチレンジエチレン尿素、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレン尿素、ハロゲンエポキシ化合物、例えばエピクロロヒドリンおよびa−メチルエピフルオロヒドリン、ポリイソシアネート、例えば2,4−トルイレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、アルキレンカーボネート、例えば1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、さらにビスオキサゾリンおよびオキサゾリドン、ポリアミドアミンならびにこれとエピクロロヒドリンとの反応生成物、さらにポリ四級アミン、例えばジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの縮合生成物、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの単独重合体および共重合体ならびに場合によっては例えば塩化メチルで四級化されているジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの単独重合体および共重合体が挙げられる。
【0067】
特に、モノマーCは、少なくとも1つのモノマーC1を上記量で含む。特に、重合は、化合物C2の不在下で行なわれる。
【0068】
適当なグラフト主鎖は、天然に由来してもよいし、合成に由来してもよい。このためには、澱粉、即ちトウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、カッサバ澱粉、エンドウ澱粉またはこれらの混合物の群からの天然澱粉、変性された澱粉、澱粉分解生成物、例えば酸化的、酵素的または加水分解的に分解された澱粉、デキストリン、例えば焙焼デキストリンならびに低級オリゴ糖および多糖類、例えば4〜8個の環員を有するシクロデキストリンが挙げられる。更に、オリゴ糖および多糖類としては、セルロース、澱粉誘導体およびセルロース誘導体がこれに該当する。更に、ポリビニルアルコール、N−ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体、ポリアミン、ポリアミド、親水性ポリエステルまたはポリアルキレンオキシド、殊にポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドが適している。適当なポリアルキレンオキシドは、一般式I
1−O−(CH2−CHX−O)n−R2
〔式中、R1、R2は、互いに無関係に水素、C1〜C4−アルキル;C2〜C6−アルケニル、殊にフェニル;または(メタ)アクリルを表わし;Xは、水素またはメチルを表わし、nは、1〜1000、殊に10〜400の整数を表わす〕を有する。
【0069】
重合用反応器としては、製造に常用の反応器、殊にベルト反応器、押出機および混練機がこれに該当する("Modern Superabsorbent Polymer Technology", 第3.2.2章参照)。ポリマーは、特に有利に連続的または非連続的な混練法により製造されるか、または連続的なベルト重合法(Bandpolymerisationsverfahren)により製造される。
【0070】
開始剤としては、原則的に加熱の際に重合温度で、または酸化還元反応に基づいてラジカルの形成下に崩壊する全ての化合物がこれに該当する。この重合は、高エネルギー放射線、例えばUV放射線の作用によっても光開始剤の存在下に引き起こすことができる。また、電子線を重合可能な水性混合物に対して作用させることによる重合の開始が可能である。
【0071】
適当な開始剤は、例えばペルオキソ化合物、例えば有機過酸化物、有機ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸塩、過ホウ酸塩、アゾ化合物および所謂酸化還元触媒である。好ましいのは、水溶性開始剤である。多くの場合には、種々の重合開始剤の混合物、例えば過酸化水素とペルオクソ二硫酸ナトリウムまたはペルオクソ二硫酸カリウムとからなる混合物を使用することが有利である。適した有機過酸化物は、例えば過酸化アセチルアセトン、過酸化メチルエチルケトン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、tert−アミルペルピバラート、tert−ブチルペルピバラート、tert−ブチルペルネオヘキサノエート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルイソノナノエート、tert−ブチルペルマレエート、tert−ブチルペルベンゾエート、ジ−(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボネート、ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジミリスチルペルオキシジカルボネート、ジアセチルペルオキシジカルボネート、アリルペルエステル、クミルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペル−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、過酸化アセチルシクロヘキシルスルホニル、過酸化ジラウリル、過酸化ジベンゾイルおよびtert−アミルペルネオデカノエートである。特に好適な重合開始剤は、水溶液アゾ開始剤、例えば2,2’−アゾ−ビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾ−ビス(N,N’−ジメチレン)イソブチルアミジン二塩酸塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロブチリル、2,2’−アゾ−ビス[2−(2’−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩および4,4’−アゾ−ビス−(4−シアノ吉草酸)である。記載された重合開始剤は、通常の量で、例えば重合すべきモノマーに対して0.01〜5質量%、特に0.05〜2.0質量%、多くの場合に0.05〜0.30質量%の量で使用される。
【0072】
酸化還元開始剤は、有利である。この酸化還元開始剤は、酸化性成分として少なくとも1つの上記したペルオキソ化合物を、および還元性成分として、例えばアスコルビン酸、グルコース、ソルボース、アンモニウム−またはアルカリ金属−スルフィット、−ヒドロゲンスルフィット、−チオスルフェート、−ハイポスルフィット(hyposulfit)、−ピロスルフィットまたは−スルフィド、または金属塩、例えば鉄(II)イオンまたはナトリウムヒドロキシメチルスルホキシレートを含有する。特に、酸化還元触媒の還元性成分としてアスコルビン酸または亜硫酸ナトリウムが使用される。また、還元性成分として、2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸のナトリウム塩、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸の二ナトリウム塩および重亜硫酸ナトリウムからなる混合物が好ましい。この種の混合物は、Brueggolite(登録商標)FF6およびBrueggolite(登録商標)FF7(Brueggemann Chemicals社;Heilbronn; DE)として入手可能である。重合の際に使用される、モノマーの量に対して、例えば酸化還元触媒系の還元性成分3・10-6〜1モル%および酸化還元触媒の酸化性成分0.001〜5.0モル%が使用される。
【0073】
重合が高エネルギー放射線の作用によって引き起こされる場合には、通常、開始剤として所謂光開始剤が使用される。
【0074】
含水ポリマーゲルの湿分含量は、一般に20〜80質量%の範囲内にある。更に、含水ポリマーゲルは、自体公知の方法で粒子状ポリマーに変換され、引続き表面後架橋される。
【0075】
このために、重合の際に生じる含水ポリマーゲルは、一般に最初に公知方法により粉砕される。含水ポリマーゲルの粗大粉砕は、通常の引裂工具および/または切削工具を用いて、例えば円筒状反応器中での重合の場合には排出ポンプの作用によって、またはベルト重合の場合には切削ローラーまたは切削ローラーの組合せによって行なわれる。更に、粉砕は、一般にゲルチョッパー(Gel Chopper)で行なわれる。混練反応器中での重合の場合には、直接に乾燥能を有する含水ポリマーゲルが生じる。
【0076】
引続き、こうして得られた粗大粉砕されたポリマーゲルは、高められた温度で、例えば80℃〜250℃の範囲内、殊に100℃〜180℃の範囲内で公知方法により乾燥される("Modern Superabsorbent Polymer Technology", 第3.2.5章参照)。この場合、粒子状ポリマーは、粉末または顆粒の形で得られ、場合によっては粒度の調節のためになお数回の粉砕工程および篩別工程に掛けられる("Modern Superabsorbent Polymer Technology", 第3.2.6章および第3.2.7.章参照)。
【0077】
この表面後架橋は、自体公知の方法で乾燥された、特に粉砕および篩別されたポリマー粒子を用いて行なわれる。表面架橋のために、官能基を有する化合物が使用され、この官能基は、架橋下にポリマーの少なくとも2個のカルボキシル基と反応しうる(後架橋剤)。この官能基は、後架橋剤中で潜在性の形で存在することができ、即ちこの後架橋剤は、表面後架橋の反応条件下で初めて放出される。後架橋剤中の適当な官能基は、ヒドロキシル基、グリシジル基、アルコキシシリル基、アジリジン基、第1アミノ基および第2アミノ基、N−メチロール基(=N−ヒドロキシメチル基、N−CH2−OH−基)、オキサゾリジン基、尿素基およびチオ尿素基、場合によっては可逆的に封鎖されたイソシアネート基ならびに環状カーボネート基、例えばエチレンカーボネート中の環状カーボネート基である。表面後架橋のために、後架橋剤は、特に水溶液の形でポリマー粒子の表面上に施こされる。水溶液は、水混合可能な有機溶剤を含有することができる。適当な溶剤は、例えばC1〜C4−アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトンである。
【0078】
適当な後架橋剤は、例えば次の通りである:
ジグリシジル化合物またはポリグリシジル化合物、例えばホスホン酸ジグリシジルエーテルまたはエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのビスクロロヒドリンエーテル、
アルコキシシリル化合物、
ポリアジリジン、ポリエーテルを基礎とする、アジリジン単位含有化合物または置換炭化水素、例えばビス−N−アジリジノメタン、
ポリアミンまたはポリアミドアミンならびにこれらとエピクロロヒドリンとの反応生成物、
ジオールおよびポリオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、メチルトリグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、200〜10000の平均分子量Mwを有するポリエチレングリコール、ジグリセリンおよびポリグリセリン、ペンタエリトリット、ソルビット、前記ポリオールのオキシエチラートならびに前記ポリオールとカルボン酸または炭酸とのエステル、例えばエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート、
炭酸誘導体、例えば尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2−オキサゾリジノンおよびその誘導体、ビスオキサゾリン、ポリオキサゾリン、ジイソシアネートおよびポリイソシアネート、
ジ−N−メチロール化合物およびポリ−N−メチロール化合物、例えばメチレンビス(N−メチロールメタクリルアミド)またはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、
2回またはそれ以上封鎖されたイソシアネート基を有する化合物、例えば2,2,3,6−テトラメチルピペリジノン−4で封鎖されたトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート。
【0079】
必要な場合には、酸性触媒、例えばp−トルエンスルホン酸、燐酸、硼酸またはアンモニウム燐酸二水素塩を添加することができる。
【0080】
架橋剤溶液の施与は、有利に架橋剤の溶液を従来の反応混合機または混合装置および乾燥装置、例えばパターソン−ケリー混合機(Patterson-Kelly-Mischer)、DRAIS乱流混合機、レーディゲ混合機(Loedige-Mischer)、スクリューミキサー、パンミキサー、渦動床ミキサーおよびシュギミックス(Schugi-Mix)中で噴霧することによって行なわれる。架橋剤溶液の噴霧後、温度処理工程を、有利に後接続された乾燥機中で80〜230℃、有利に100〜160℃または180〜200℃の温度で5分間ないし6時間、有利に10分間ないし2時間、特に有利に10分間ないし1時間に亘って続けることができ、この場合には、分解生成物ならびに溶剤含分を除去することができる。しかし、この乾燥は、ミキサー自体の中で、ジャケットの加熱または予熱されたキャリヤーガスの吹き込みによって行なうこともできる。
【0081】
得られたSAPは、殊に衛生製品の製造に適している。衛生製品、殊におむつ、ナプキン、および大人用の失禁用パッドおよび失禁用ショーツの構造および形は、一般に公知であり、例えば欧州特許出願公開第0316518号明細書、欧州特許出願公開第0202127号明細書、ドイツ連邦共和国特許第19737434号明細書、WO 00/65084、WO 00/65348およびWO 00/35502中に記載されている。
【0082】
おむつ、ナプキン、および失禁用パッドおよび失禁用ショーツの典型的な衛生製品は、次のものを含む:
(A) 上側の液体透過性カバー、
(B) 下側の液体不透過性層、
(C) (A)と(B)との間に存在する、次の成分を有するコア:
(C1)水吸収性樹脂10〜100質量%、
(C2)親水性繊維材料0〜90質量%、
(D) 場合により、前記コア(C)の上側及び下側に直接存在する組織層及び
(E) 場合により(A)と(C)との間に存在する吸収層。
【0083】
液体透過性カバー(A)は、直接皮膚に接触する層である。この場合、このための材料は、通常、ポリエステル、ポリオレフィン、レイヨンの合成または半合成の繊維またはフィルム、または天然の繊維、例えば綿からなる。不織材料の場合に、前記繊維は一般に結合剤、例えばポリアクリレートにより結合することができる。有利な材料は、ポリエステル、レーヨンおよびこれらのブレンド、ポリエチレンおよびポリプロピレンである。
【0084】
液体不透過性層(B)は、一般にポリエチレンまたはポリプロピレンからなるシートからなる。
【0085】
コア(C)は、水吸収性樹脂(C1)と共に親水性繊維材料(C2)を含有する。親水性とは、水性液体が急速に前記繊維を介して分配されることであると解釈される。前記繊維材料は、通常ではセルロース、変性セルロース、レーヨン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートである。特に有利にセルロース繊維、例えばパルプである。繊維は、一般に1〜200μm、有利に10〜100μmの直径を有する。更に、前記繊維は、2mmの最小長さを有する。
【0086】
コアの全体量に対する親水性繊維材料の割合は、有利に20〜80質量%、特に有利に40〜70質量%である
本発明を以下の実施例につき詳説する。
【実施例】
【0087】
実施例1:アクリル酸水溶液および中和されたアクリル酸の貯蔵安定性
中和されていないアクリル酸溶液を製造するために、VE(完全脱塩)水1071.3gを装入し、その中にアクリル酸428.7g(5.95モル)(MEHQ50ppmで安定化した)を溶解した。ナトリウムアクリレート水溶液(100%の中和度)を製造するために、脱塩水595.4gを3 lのプラスチック容器中に装入し、その中に苛性ソーダ液476.0g(50%の)を溶解した。500mlの滴下漏斗を介してアクリル酸428.7g(5.95モル)(MEHQ50ppmで安定化した)を滴加した。計量供給中にプラスチック製ビーカーを氷浴中で冷却し、計量供給速度をプラスチックビーカーの内部の温度が30℃を上廻らないように選択した。
【0088】
こうして製造されたアクリル酸水溶液およびナトリウムアクリレート水溶液のアリコート(400g)を、500mlのネジ付き上蓋を備えたガラス容器中に注入した。蓋のネジを弛め、したがって重合の際に過圧を逃出させることができた。このアリコートを60℃で貯蔵し、貯蔵安定性を粘度測定により監視した。
【0089】
粘度測定を実施するために、試料をそれぞれ22℃(+/−2℃)に冷却した。粘度をB型粘度計(モデルLVT、スピンドル1)を用いて測定した。
【0090】
貯蔵試験の結果は、次の表中にまとめられている。
【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
実施例2:β−アクリルオキシプロピオン酸の形成
アクリル酸水溶液またはナトリウムアクリレート水溶液のアリコートを6℃または23℃で1週間貯蔵し、次にβ−アクリルオキシプロピオン酸の含量をHPLCによって測定した(カラム:水対称150×3.9mm;25℃;移動相:燐酸90体積%(0.1体積%)/アセトニトリル10体積%;210nmでの検出)。この結果は、次の表中にまとめられている。
【0095】
【表5】

【0096】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー組成物を輸送する方法において、部分的または完全に中和されたアクリル酸または過剰に中和されたアクリル酸の水溶液を含む組成物を輸送手段中に収容するかまたは管路を通して輸送することを特徴とする、モノマー組成物を輸送する方法。
【請求項2】
アクリル酸を全部または部分的にアルカリ金属塩として装入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アクリル酸を全部または部分的にナトリウム塩および/またはカリウム塩として装入する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アクリル酸の中和度は、20〜110モル%、特に20〜80モル%である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
組成物は、アクリル酸として計算したモノマー16〜56質量%、特に24〜40質量%を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
輸送手段または管路でのモノマー組成物の滞留時間は、少なくとも1時間である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
モノマー組成物を少なくとも1m3の関連する容量として輸送する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
モノマー組成物は、本質的に重合抑制剤を含有していない、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
モノマー組成物は、少なくとも1つの重合抑制剤を含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
重合抑制剤のモノマー組成物中での全含量は、アクリル酸に対して100ppm未満、特に50ppm未満である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
重合抑制剤は、p−メトキシフェノールであり、モノマー組成物は、本質的に別の重合抑制剤を含有していない、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
組成物は、溶解した酸素を含有しおよび/または周囲空気または酸素含有ガス空間と接触して存在する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アクリル酸に対するppmでのp−メトキシフェノールのモノマー組成物中での含量は、χまたはそれ未満であり、この場合χは、次の方程式
χ = 200 − 1.5DN
〔式中、DNは、百分率でのアクリル酸の中和度を表わす〕によって記載される、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
モノマー組成物は、水吸収性樹脂の製造に適している、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水吸収性樹脂を製造する方法において、
a)アクリル酸を製造し、部分的または完全に中和されたアクリル酸または過剰に中和されたアクリル酸の水溶液に移行させ、
b)こうして得られたモノマー組成物を交通手段でまたは管路を通じて輸送し、
c)場合によってはモノマー組成物の中和度を調節し、場合によっては他のモノマーを添加し、溶液重合またはゲル重合を実施することによる、水吸収性樹脂の製造法。
【請求項16】
工程c)で得られたポリマーをその後処理および/または後加工の経過中に高温工程に掛ける、請求項15記載の方法。
【請求項17】
高温工程が表面後架橋である、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2010−521580(P2010−521580A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500237(P2010−500237)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053422
【国際公開番号】WO2008/116840
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】