説明

農作業機

【課題】オペレータが頻繁に操作したい出力系外部機器と、手動入力系外部機器との対応付けを任意に選択し且つ決定でき、オペレータ(ユーザ)の要望に簡単に応えて、農作業の作業能率を向上させる。
【解決手段】農作業機の運転部にある運転席の前方に配置されたハンドルに、各出力系外部機器に対する操作指令を実行するためのステアリング右スイッチ132を設ける。制御装置103は、ステアリング右スイッチ132と各出力系外部機器との対応付けに関する項目を液晶表示装置121に表示した状態で、第1及び第2選択スイッチ122,123並びにブザー停止スイッチ125にて前記項目の選択操作をすることにより、ステアリング右スイッチ132の手動操作にて作動すべき出力系外部機器を、前記項目に対応して切り換える制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を刈取脱穀するためのコンバインといった農作業機に係り、より詳しくは、農作業機におけるアクチュエータ等の複数種類の出力系外部機器を操作するための手動入力系外部機器を、オペレータの好みや要望に応じて配置換えできるようにした構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のコンバイン等の農作業機では、例えば、刈高さを自動制御と手動制御とに切り替えるスイッチ、機体の左右水平姿勢を自動保持する自動制御と手動制御とに切り替えるスイッチ、機体の対地高さ(車高)を調節するスイッチ、扱深さを調節するスイッチ等の手動入力系外部機器を設け、これらのスイッチ(手動入力系外部機器)は対応するアクチュエータ等の出力系外部機器を作動させるようにマイクロコンピュータ等の制御手段に関連付けして接続されている。
【0003】
そして、入力系外部機器のうち手動による入力操作を実行するもの(スイッチ類や操作レバー)、また、前記自動モードの入り切りの切り替えスイッチ類は、運転室のサイドコラム、フロントコラムやステアリングコラム等の予め定められた位置に配置されていた。そして、そのスイッチ類や操作レバーの数が多くなると、それらを使い勝手の良い箇所ばかりでなく、やや使い勝手の悪い箇所にも配置しなければならないから、個々のオペレータにとって操作づらいスイッチや操作レバーが存在する。また、作業中頻繁に使用するスイッチや操作レバーはより使い勝手の良い箇所に配置していることが、操作性及びオペレータの疲労軽減のためには好ましいのであるが、個々のオペレータの好みや癖により、頻繁に使用するスイッチや操作レバーの種類が各々異なるし、個々のオペレータの利き手(右利きと左利き)の違いにより、操作性が良い配置位置も異なるから、このような不便さを解消するようにユーザから要望があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、オペレータ(ユーザ)の好みに合わせて、スイッチ類や操作レバー等の手動による入力系外部機器の配置箇所を変更できる(カスタマイズできる)ようにした農作業機における制御装置を提案している。
【特許文献1】特開2002−315424号公報(図6、図7、図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、スイッチ等の手動入力系外部機器の1乃至複数のうち、複数個のカスタムスイッチをオペレータが操作し易い箇所に配置し、別途特定の選択スイッチを配置しておき、この選択スイッチにより、各カスタムスイッチの機能の設定を変更して、所望する出力系外部機器と対応関係を有するようにしたものであるから、オペレータの利き手の相違に応じた箇所や、特定の農作業の自動制御を頻繁に入り切りしたい場合の操作のし易い箇所に、所定の機能を有する切替えスイッチを配置できて、操作性が向上し、作業時の疲労を少なくできる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、カスタムスイッチを選択し、且つその機能(所望する出力系外部機器との対応付け)を行うために特定の選択スイッチを備える必要があった。
【0007】
また、このような機能を備える特定の選択スイッチの構成は相当複雑であり、制御手段への接続関係も複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて、オペレータ(ユーザ)の好みや要望に合わせて、手動入力系外部機器の機能の選択、設定を一層簡単に行える農作業機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、農作業機における走行部及び作業部の各々を作動させるための複数種類の出力系外部機器と、前記各出力系外部機器に対する操作指令を実行するための手動入力系外部機器と、前記走行部の操向操作をするための操向操作手段と、前記農作業についての各種情報を表示する表示手段と、前記手動入力系外部機器、前記出力系外部機器及び前記表示手段に接続された制御装置とを備えている農作業機であって、前記手動入力系外部機器は前記操向操作手段に設けられており、前記制御装置は、前記手動入力系外部機器と前記各出力系外部機器との対応付けに関する項目を前記表示手段に表示した状態で、前記表示手段に備わる選択入力手段にて前記項目の選択操作をすることにより、前記手動入力系外部機器の手動操作にて作動すべき前記出力系外部機器を、前記項目に対応して切り換える制御を実行するというものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した農作業機において、前記操向操作手段は、前記農作業機の運転部にある運転席の前方に配置されたハンドルであり、前記ハンドルのステアリングホイルには、前記手動入力系外部機器としての1乃至複数の操作用スイッチを備えており、前記ハンドルの内径部に、前記表示手段を構成する電気的表示装置が配置されているというものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した農作業機において、当該農作業機は穀稈を刈取脱穀するためのコンバインであるというものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によると、手動入力系外部機器は操向操作手段に設けられており、制御装置は、前記手動入力系外部機器と各出力系外部機器との対応付けに関する項目を表示手段に表示した状態で、前記表示手段に備わる選択入力手段にて前記項目の選択操作をすることにより、前記手動入力系外部機器の手動操作にて作動すべき前記出力系外部機器を、前記項目に対応して切り換える制御を実行するので、前記各出力系外部機器のうち、オペレータが好み又は作業工程上の必要性から頻繁に操作したいものと、前記手動入力系外部機器との対応付けを、任意に選択し且つ決定できる(カスタマイズできる)ことになる。このため、オペレータ(ユーザ)の要望に簡単に応えることができて、農作業の作業能率を向上できるという効果を奏する。
【0013】
そして、オペレータがどの出力系外部機器と手動入力系外部機器とを対応させるかという作業内容の選択及び決定は、前記表示手段に備わる前記選択入力手段の手動操作にて実行でき、且つその選択及び決定の状態が前記表示手段に表示されるので、作業内容の選択・決定を簡単、且つ明瞭に実行できるという効果も奏する。
【0014】
特に、請求項2の発明を採用すれば、前記操向操作手段としてのハンドルのステアリングホイルに、前記手動入力系外部機器としての1乃至複数の操作用スイッチを備えており、前記ハンドルの内径部に、前記表示手段を構成する電気的表示装置が配置されているから、前記作業内容の選択・決定のための前記操作用スイッチの手動操作は、オペレータは前記ハンドルから手を離すことなく実行できる。その上、オペレータは前記ハンドルを操作しながらその内径部の電気的表示装置を見て確認できる。従って、農作業が安全に行え、且つ作業能率の更なる向上が図れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの全体左側面図、図2は同右側面図、図3は動力伝達系のスケルトン図、図4は油圧式無段変速機構のスケルトン図、図5は油圧回路図、図6は走行機体前部の側面説明図、図7は走行装置の側面説明図、図8は走行装置の平面説明図、図9は運転室(運転キャビン)の平面図、図10は運転室(運転キャビン)の右側面図、図11はステアリングコラムの表示部の平面図、図12はハンドル部の平面図、図13は計器パネルの平面図、図14は主変速レバーの説明図、図15は制御系の機能ブロック図である。
【0016】
本発明を適用したコンバインは、走行機体1の下部に左右一対の走行装置としての左右走行クローラ2a,2bが装設されたものであり、走行機体1の進行方向に向かって左側には脱穀装置3を搭載し、走行機体1の前部には単動式の刈取部昇降油圧シリンダ9により昇降動可能な刈取前処理装置4を配置する。刈取前処理装置4の下部フレームの下部側にはバリカン式の刈刃装置5を、前方には6条分の穀稈引起装置6が配置され、穀稈引起装置6と脱穀装置におけるフイードチェン7前端との間には穀稈搬送装置8が配置され、穀稈引起装置6の下部前方には分草体10が突出している。走行機体1の右側前部に運転室11が配置され、その後側に穀粒タンク12が配置されている。
【0017】
図1に示すように、刈取前処理装置4に先端を装着した前方下向き傾斜状の昇降筒フレーム14の基端を水平筒(図示せず)に固着し、該水平筒を走行機体1の前部に設けた複数の軸受ブラケット(図示省略)に回動自在に軸支し、走行機体1上のエンジン15からの動力を水平筒及び昇降筒フレーム14の各々の内径部に配置した伝動軸等を介して刈取前処理装置4の各部に動力伝達される。そして、昇降筒フレーム14の中途部と走行機体1との間に装架した刈取部昇降油圧シリンダ9にて刈取前処理装置8を昇降駆動させるものである。
【0018】
コンバインの動力伝達系を示すスケルトン図(図3)に示すように、エンジン15の出力軸16a及び16bをエンジンルームカバーの前側及び後側に突設させ、前側に突出する出力軸16aの前端から自在継手軸を介してミッションケース23にドライブシャフト駆動出力させる。後側に突出する出力軸16bの後側突出部にフライホイールを取付け、その後側に設けられた作業出力プーリ24からベルト、テンションローラ形脱穀クラッチ及びプーリ25を介してカウンタケース32に対して後向きに突出する第1入力軸26に、エンジン15の駆動力(一定回転動力)が動力伝達される。
【0019】
カウンタケース32には、前向きに突出する第1入力軸26と一体的な扱胴入力軸26aと、機体外側方に突出する刈取入力軸27と、機体内方向に突出する第2入力軸としての車速同調入力軸28と、フイードチェン入力軸29と、出力回転軸30とが備えられている。
【0020】
後述する油圧式無段変速機構(油圧ポンプ、油圧モータ式)のミッションケース23の出力軸23aに設けた刈取駆動プーリと前記カウンタケース32右側に突出した車速同調入力軸28に設けた車速同調プーリとにベルトを巻掛し、テンションローラ形刈取クラッチを介してベルトを緊張させ、ミッションケース23からカウンタケース32に車速同調動力を入力させ、高速走行時には、左右両側の走行クローラ2a,2bの速度に同調させて刈取前処理装置4の駆動速度も高い速度にするように構成されている。
【0021】
また、カウンタケース32前側に突出する扱胴入力軸26aに設けた脱穀プーリと扱胴13及び処理胴18の各駆動入力プーリとをベルトにて巻掛け連結する一方、出力回転軸30に取付けられた選別プーリからベルト等を介して扱胴13下側の選別唐箕17及び揺動選別機構に駆動力を伝え、脱穀部(脱穀装置)3の各部を駆動すると共に、前記カウンタケース32の左側面のフィードチェン入力軸29から、フイードチェン7の前側駆動スプロケットに動力を伝える。
【0022】
エンジン15の後側の出力軸16bに設けたプーリと、排出オーガ31の横スクリューコンベヤ33の前端に取付けられた排出駆動プーリとに排出クラッチを介してベルト巻掛け連結させ、排出オーガ31に出力を伝えて穀粒タンク12の穀粒を排出させる。
【0023】
なお、揺動選別機構は、穀粒を穀粒タンク12に取出す一番コンベヤ、再選別処理する二番選別物を取出す二番コンベヤ、副唐箕34、扱胴13と一番コンベヤ、二番コンベヤ間に横架させる揺動選別盤35等からなる。
【0024】
なお、カウンタケース32に設けたサンギヤとプラネタリギヤとリングギヤを備える遊星ギヤ機構からなるフィードチェン変速機構によって無段変速可能にフィードチェン7に動力伝達するもので、第1入力軸26からの動力を入力して穀稈の搬送に必要な最低回転を確保しながら、油圧式(HST式)無段変速機構からの出力軸23aを経てフィードチェン変速機構を介して出力回転軸30に動力伝達し、低い一定回転から高回転にフィードチェン7の速度を車速と同調させて変更可能となるように構成されている。
【0025】
次に、ミッションケース23内のHST式(2油圧モータ2油圧ポンプによる無段階変速機構内に機械的変速機構を組み込んだもの)走行駆動部42の構成について説明する。図4に示す実施例は、ミッションケース23内に、後述する左右一対の遊星歯車機構61,61等からなる差動歯車機構と、第1油圧ポンプ63及び第1油圧モータ64からなる走行用油圧式駆動手段と、第2油圧ポンプ66及び第2油圧モータ67からなる旋回用油圧式駆動手段と動力伝達用歯車機構等を内装する。なお、走行機体1に搭載したエンジン15からの回転力は、出力軸16aを介して両方の油圧ポンプ63,66の入力軸に伝達し、伝達ケース65内の油圧路を介してそれぞれの油圧モータ64,67に油圧動力伝達する。
【0026】
左右一対の遊星歯車機構61,61は左右対称状であって、同一半径上に複数(実施例では3つ)の遊星歯車69がそれぞれ回転自在に軸支された左右一対の腕輪68をミッションケース60内にて同軸線上にて適宜隔てて相対向させて配置する。各遊星歯車69にそれぞれ噛み合う太陽歯車70,70を固着した太陽軸71の左右両端は、両腕輪68,68の内側にてその回転中心部に位置する軸受に回転自在に軸支されている。内周面の内歯と外周面の外歯とを備えたリングギヤ72は、その内歯が3つの遊星歯車69にそれぞれ噛み合うように、太陽軸71と同心状に配置されており、このリングギヤ72は、腕輪68の外周部に形成されている。
【0027】
走行用油圧式駆動手段における容量可変式の第1油圧ポンプ63の回転斜板の角度を変更調節する等にて、第1油圧モータ64への圧油の吐出方向と吐出量を変更して、当該第1油圧モータ64の出力軸の回転方向及び回転数が調節可能に構成されている。そして、第1油圧モータ64の入力軸からの回転動力は、歯車74,75,76,77を介して歯車機構にて構成された副変速機構80に伝達され、その出力歯車78を介して太陽軸71に固定したセンター歯車79に伝達される。
【0028】
なお、歯車74の軸74aに関連させた歯車機構81を介して作業機等への回転力を伝達するPTO軸82(実施形態では、車速同調入力軸28に対応する)に出力する。この場合、PTO軸82の中途部にはクラッチ手段82aが備えられている。従って、走行用油圧式駆動手段からの回転動力は、伝動歯車機構及び副変速機構80を介してセンター歯車79に伝達され、次いで、左右一対の遊星歯車機構61,61に伝達される。そして、左側の腕輪68の中心軸73に固着した伝動歯車83を、左側の走行クローラ2aの駆動輪51に対する出力軸21aに固着した伝動歯車84に噛み合わせて出力する。同様に、右側の腕輪38の中心軸73に固着した伝動歯車83を、右側の走行クローラ2bの駆動輪51に対する出力軸21bに固着した伝動歯車84に噛み合わせて出力する。
【0029】
他方、旋回用油圧式駆動手段における容量可変式の第2油圧ポンプ66の回転斜板の角度を変更調節する等にて、第2油圧モータ67への圧油の吐出方向及び吐出量を変更して、当該第2油圧モータ67の出力軸の回転方向及び回転数を調節可能に構成されている。そして、第2油圧モータ67からの回転動力は、歯車機構85を介して一対の伝動歯車86,87に伝達される。次いで、図4に示すように右側のリングギヤ72の外歯に対しては伝動歯車86と直接噛み合い、左側の伝動歯車87が逆転軸に取付く逆転歯車89に噛み合い、この逆転歯車89と左側のリングギヤ72の外歯とが噛み合う。
【0030】
従って、第2油圧モータ67の正回転にて、左側のリングギヤ72が所定回転数にて逆回転すると、右側のリングギヤ72が前述と同一回転数にて正回転することになる。この構成により、例えば、旋回用油圧式駆動手段を停止させておけば、左右両側のリングギヤ72,72の回転は自由回転状態である。この場合、図示しないクラッチ手段を作動させ手油圧モータ67の出力を切断するのが好ましい。この状態で走行用油圧式駆動手段を駆動すると、第1油圧モータ64からの回転力は、太陽軸71のセンター歯車79に入力され、その回転力は、左右両側の太陽歯車70,70に同一回転数にて伝達され、左右両側の遊星歯車機構の遊星歯車69、腕歯車68を介して左右両側の出力軸21a,21bに平等に同方向の同一回転数にて出力されるので、直進走行ができる。従って、走行用油圧式駆動手段のみを正回転駆動すると、走行機体1は直進前進し、逆回転駆動したときには直進後退する。
【0031】
反対に、走行用油圧式駆動手段を停止した状態では、太陽軸71及び左右両側の太陽歯車70,70は固定される。この場合、図示しないブレーキ手段を作動させるのが好ましい。この状態にて、旋回用の油圧式駆動手段(第2油圧モータ67)を例えば正回転駆動させると、左の遊星歯車69、腕歯車68からなる遊星歯車機構は逆回転する一方、右の遊星歯車69、腕歯車68からなる遊星歯車機構は正回転することになる。従って、左走行クローラ2は後進する一方、右走行クローラ2は前進するので、走行機体1はその場で、左にスピンターンすることになる。
【0032】
同様にして、旋回用油圧式駆動手段(第2油圧モータ67)を逆回転駆動させると、左の遊星歯車機構61は正回転し、右の遊星歯車機構61は逆回転して、左走行クローラ2は前進する一方、右走行クローラ2は後進するので、走行機体1はその場で、右にスピンターンすることになる。そして、走行用油圧式駆動手段を駆動しつつ旋回用油圧式駆動手段を駆動した場合には、前進時及び後退時において、スピンターン旋回半径より大きい旋回半径で右また左に旋回できることになり、その旋回半径は左右走行クローラ2a,2bの速度に応じて決定されることになる。
【0033】
図5及び図6に示されるように、走行クローラ2a,2bは、左右一対のトラックフレーム50,50の前後端に各々配置した駆動輪51と従動輪52とトラックフレーム50の下面中途部に配置された複数の転動輪53との外周に巻回されている。左右トラックフレーム50,50と走行機体1とは、左右の昇降油圧シリンダ54a,54bと前後位置の側面視L字状の前後レバーを同時に作動させるように連結する連結杆等とからなる走行部昇降駆動手段を介して連結され、左右の昇降油圧シリンダ54a,54b(図5参照)は互いに独立的に作動させることにより、左右の走行クローラ2a,2bを走行機体1の左右に対して独立的に昇降させる。
【0034】
従って、左右両側の昇降油圧シリンダ54a,54bを同時に作動して、左右のトラックフレーム50,50を走行機体1に対して同時に下げると、走行機体1は左右両側の走行クローラ2a,2b接地部に対して上方に離れて(上昇し)、走行機体1の走行クローラ2a,2b接地部に対する相対高さ(車高)は高くなる。逆に、前記左右のトラックフレーム50,50を走行機体1に対して同時に上げる、走行機体1は左右両側の走行クローラ2a,2b接地部に対して近づいて(下降し)、走行機体1の走行クローラ2a,2b接地部に対する相対高さ(車高)は低くなる。
【0035】
そして、左側の昇降油圧シリンダ54aを作動して左側のトラックフレーム50を走行機体1に対して下げる、または右側の昇降油圧シリンダ54bを作動して右側のトラックフレーム50を走行機体1に対して上げると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、右側の走行クローラ2b接地部に対する走行機体1の車高は低くなり(左側の走行クローラ2a接地部に対する走行機体1の車高は高くなり)、走行機体1は右下がりに傾斜する。逆に、右側の昇降油圧シリンダ54bを作動して左側のトラックフレーム50を走行機体1に対して下げる、または左側の昇降油圧シリンダ54aを作動して右側のトラックフレーム50を走行機体1に対して上げると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、左側の走行クローラ2a接地部に対する走行機体1の車高は低くなり(右側の走行クローラ2b接地部に対する走行機体1の車高は高くなり)、走行機体1は左下がりに傾斜するのである。
【0036】
走行機体1の左右各走行クローラ2a,2b接地部に対する相対高さ(車高)を検出するためのロータリエンコーダ式等の左右の車高検出センサ150,151が、前記連結杆に連設した連結ロッドやリンク機構を介して連動し、左右の昇降油圧シリンダ54a,54bの左右のトラックフレーム50,50の上下動量を検出するように構成されている。
【0037】
また、走行機体1の左右の傾斜程度を検出するための傾斜検出センサ152は、振り子式(重力式)等にて構成され、走行機体1の任意の位置例えば運転室11内等に配置されている。なお、刈取前処理装置4と圃場面との対地高さを検出して刈高さを検出するための刈高さセンサとしての左右の超音波センサ20a,20bは、刈取前処理装置4の左右両側端の前記穀稈引き起こし装置6の裏面側に設けたブラケット(図示せず)に配置し、各超音波センサ20a,20bにおける発信器の発信部(ホーン部)と受信器の受信部とを圃場面に向けるように配置する。各超音波センサ20a,20bの設置高さと刈刃5の設置高さとが異なる場合には、超音波センサ20a,20bの検出値から所定の換算により、刈高さ検出値を求めるようにしている。
【0038】
また、走行機体1と刈取前処理装置4との相対高さを検出するための昇降ポジションセンサ153は、前記昇降フレーム14の回動角度を検出することより求めることができるように構成されている(図7参照)。
【0039】
図8は、前記昇降油圧シリンダ54a,54b等のための油圧回路を示し、油圧ポンプ90からの吐出する圧油を分流する分流弁93を介して分岐し、その一方の吐出路から前記刈取前処理装置4を昇降させる刈取部昇降アクチュエータとしての油圧シリンダ9と、右側(運転室11側)の昇降油圧シリンダ54bとに対する第1油圧回路91へ送る。分流弁63の他方の吐出路からは、排出オーガ31の横パイプ31aの縦パイプ31bに対する傾斜角度を変更するための排出オーガ昇降用油圧シリンダ31cと、左側の昇降油圧シリンダ54aとに対する第2油圧回路92へ送るように構成され、それぞれの油圧シリンダ9、31c、54a、54bに対する電磁制御弁95、96、97、98や逆止弁、リリーフ弁等が接続されている。
【0040】
図7に示されるように、穀稈搬送装置8は、刈刃5にて刈取った6条分の刈取穀稈の株元部をフィードチェン7に渡す縦搬送チェン8aと、6条分の刈取穀稈の株元寄り中途部をフィードチェン7に渡す第1補助搬送チェン8b及び第2補助搬送チェン8cとで構成されている。刈取前処理装置4の昇降フレーム14には、縦搬送チェン8aの送り始端部が支軸を介して取付けられているとともに、支軸を中心として縦搬送チェン8aを回動させる扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99としての正逆回転可能な電動モータが配設されている。この扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99の正逆回転により、縦搬送チェン8aの送り終端部は、第1補助搬送チェン8bの前端部に対して接離するように回動することができる。したがって、縦搬送チェン8aを回動させると、最終的にフィードチェン7に受継がれた刈取穀稈の穂先部は、深扱ぎ側または浅扱ぎ側に位置する。縦搬送チェン8aの穀稈搬入側には、刈取穀稈の穂先部を検出するための扱深さセンサ154が設けられている。実施形態では、扱深さセンサ154は浅扱ぎセンサと深扱ぎセンサとで構成されている。扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99を介して回動させる縦搬送チェン8aの扱ぎ深さを検出するための扱ぎ深さ位置センサ155が設けられている(図15参照)。
【0041】
次に、図9〜図14を参照して、運転室11(運転部)内の各種操作用レバーやスイッチ類の配置構成について説明する。運転室11内のステップフレーム43のうち、前部で低位置の水平状ステップ部44にステアリングコラム45を立設させ、操向操作用である丸型(環状)のハンドル47、計器パネル40及びフロントパネル41をステアリングコラム45上部に設けると共に、ステップフレーム43の後部を段付立上り状のシート部に形成して、このシート部に運転席46を設ける。すなわち、操向操作手段としての回転操作式のハンドル47は、運転室11内における運転席46の前方に位置している。
【0042】
ステップフレーム43の右側沿いには、運転室11の入口に対する開閉扉が設けられている。運転室11の入口と反対側の運転席46の左側にサイドコラム48を設け、このサイドコラム48の上面に前方より主変速レバー249、副変速レバー250、脱穀及び刈取用クラッチレバー251、排藁切断及び集束用切換スイッチ252を設ける。運転席46の左右両側には左右のアームレスト253が上方に折畳み自在に配備されている。HST式(2油圧モータ2油圧ポンプによる無段階変速機構内に機械的変速機構を組み込んだもの)走行駆動部42の各油圧ポンプ等の斜板を調節して車速を無段階変速するための主変速レバー49は、図9に示すように、前記運転室11内の座席46の側方の略水平状のサイドコラム48の上面に穿設したガイド溝258に沿って前後回動し、ほぼ垂直姿勢の中立位置(停止位置)に対して前に倒すと前進位置であり、垂直に対する傾斜角度が大きいほど車速が速くなる。後方に傾斜させると後退となり、その傾斜角度が大きいほど車速が速くなる。
【0043】
図9〜図11に示す如く、フロントパネル41は中央部より左右方向に延設させた左右翼部である上下パネルケース259a、259bに分割したものである。上パネルケース259aの上面には、左右にスイッチパネル41a、41bを備え、ステアリングコラム45の上部に下パネルケース259bの下側を固定させる。上パネルケース259aの左右中央部位の前端から計器パネル40のパネルボックスが上向きに突出するように連結されている。ハンドル47はステアリングホイル255とハンドルスポーク256とハンドルハブ257とで側面視略コ形状に形成され、上パネルケース259aの左右中央部位の上方に突出させるハンドル軸(図示せず)にハンドルハブ257を固定させる。そして、ステアリングホイル255・スポーク256・ハブ257で囲まれる空間域に計器パネル40のパネルボックスを配設させ、ハンドル軸やハンドルハブ257の取付部をフロントパネル41の中央部で隠蔽するように構成している。
【0044】
そして、フロントパネル41における左右のスイッチパネル41a・41bには、操作用及び設定用の各種のスイッチが複数配置されている。例えば、左スイッチパネル41aには、走行機体1を左右水平な姿勢に維持する自動水平制御の入り切りを操作するための自動水平スイッチ190、走行機体1の左右傾斜角度を設定するための傾斜設定ダイヤル191、脱穀装置3に対する刈取穀稈の扱深さ位置を所定位置に維持する自動扱深さ制御の入り切りを操作するための自動扱深さスイッチ192等のスイッチ類が配置されている。
【0045】
右のスイッチパネル41bには、刈取前処理装置4を所定の刈高さ位置に維持する自動刈高さ制御の入り切りを操作するための自動刈高さスイッチ193、自動刈高さ制御時の刈高さ位置を設定するための刈高さ設定ダイヤル194、選別機構(図示せず)における穀粒の選別状態を調節する選別調節ダイヤル195等の各種操作用のスイッチ類が配置されている。
【0046】
なお、その他の種類のスイッチ、例えば、作業中エンジン負荷が限界に近づくと車速を自動減速し負荷が軽減されると自動的に元の車速に戻す快速制御入切用スイッチ、高速運転入切用の自動走行スイッチ、作業灯をオンオフする作業灯スイッチ、エンジン15のアクセル調節を行うダイヤル式設定器、エンジン15を一定回転させる電子ガバナ制御入切用のエコモードスイッチ等を、左右のスイッチパネル41a,41bに配置しても良い。
【0047】
運転パネルであるフロントパネル41を、ステアリングコラム45の上端であって、ハンドル47より下方に左右長手の翼状に設けたことによって、コンバイン作業に必要な各種作業用スイッチなど操作部材をフロントパネル41の両ウイング部に集約的且つコンパクトに配設して操作性を向上させると共に、サイドコラム48に設置する作業用スイッチを低減させコラム48横幅を縮小させて、運転席46との間の作業スペースを拡大させるなどして作業性を向上させることができる。サイドコラム48の側板にボルト止めする運転部用コントローラ103をボックス103aで覆うように構成している。
【0048】
図12及び図13に示す如く、フロントパネル41の上方であって、ハンドル47のステアリングホイル255より内径部位に配置された表示手段としての計器パネル40は、液晶表示装置121(電気的表示装置)を備えており、その左右両側には、液晶表示装置121の画面選択や画面設定のための複数のスイッチ122,123,124,125が配置されている。
【0049】
図14に示す如く、主変速レバー249の握り部の上面には、手動で走行機体1の左右及び前後傾斜姿勢を調節可能な十字方向に移動可能な姿勢調節スイッチ126と、刈取前処理装置4の刈取速度を変速操作するための刈取変速スイッチ127と、刈取穀稈の扱深さ位置を手動で変更調節するための扱深さ調節スイッチ128と、刈取前処理装置4を手動で昇降操作するための刈取昇降スイッチ129と、刈取前処理装置4を刈高さ設定ダイヤル194で予め設定した刈高さ位置(以下、設定刈高さ位置という)よりも高い所定高さまで強制的に上昇させたり、設定刈高さ位置まで強制的に下降させたりするための刈取オートスイッチ130と、HST式走行駆動部42内に設けた機械的変速機構(図示せず)を操作する伝動モータ等のアクチュエータを制御するための副変速スイッチ131とが配置されている。
【0050】
これらのスイッチは、コンバインでの刈取脱穀作業時に操作する機会が多いものであるから、このように主変速レバー249の握り部に配置すると、左手を握り部から離さずに例えば親指でスイッチを簡単に操作でき、非常に操作性がよい。
【0051】
なお、ガイド溝に沿って前後に回動する副変速レバー50は、HST式走行駆動部42内に設けた機械的変速機構(図示せず)を操作する伝動モータ等のアクチュエータを制御するためのものである。
【0052】
次に、図12を参照して、走行部である走行クローラ2a,2b、並びに作業部である脱穀装置3及び刈取前処理装置4などに設けてこれらを作動させる複数種類の出力系外部機器である刈取部昇降油圧シリンダ9、左右昇降油圧シリンダ54a,54b、扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99、及び旋回用油圧ポンプ66に対する操作指令を実行するための手動入力系外部機器(操作用スイッチ)であるステアリング右スイッチ132について説明する。
【0053】
ステアリングホイル255の右手側握り部の上面には、ステアリング右スイッチ132を配置する。ステアリングホイル255の左手側握り部の上面には、ステアリング左スイッチ133を配置する。ステアリング右スイッチ132は、前後及び左右方向(十字矢印134方向)に動作する。例えば、収穫作業時、ステアリング右スイッチ132を前方に動作したとき、圃場枕地での方向転換に必要な高さに刈刃5などを上昇させて支持する刈取フィット上昇動作(刈取部昇降油圧シリンダ9制御)が行われる。ステアリング右スイッチ132を後方に動作したとき、圃場の未刈穀稈の株元を刈取るのに必要な高さに刈刃5などを下降させて支持する刈取フィット下降動作(刈取部昇降油圧シリンダ9制御)が行われる。ステアリング右スイッチ132を左または右方向に動作したとき、圃場の未刈穀稈列に対する分草体10の左右方向の位置ずれを修正するために進路を変更する左または右フィットステアリング動作(旋回用油圧ポンプ66操舵制御)が行われる。このように、ステアリング右スイッチ132の動作を設定して出荷するように構成する。
【0054】
次に、ハンドル47のステアリングホイル255の右手側握り部に配置されたステアリング右スイッチ132の設定変更操作及びその制御について説明する。これら操作制御を実行するマイクロコンピュータ等の電子式の制御装置(コントローラ)103は図15に示し、図示しないが各種演算処理や制御を実行するための中央処理装置(CPU)や、制御プログラムを記憶させた読み出し専用メモリ(ROM)、各種の検出値、データ等を一時的に記憶させる随時読み書き可能メモリ(RAM)、制御装置103の電源をOFFとしても記憶データを保持するための不揮発性メモリ、タイマ機能としてのクロック、インターフェイス、バスなどを備える。
【0055】
制御装置103の入力側に接続するのは、ステアリング右スイッチ132の機能(各出力系外部機器との対応付け)を選択するための選択スイッチとしての第1選択スイッチ122及び第2選択スイッチ123と、設定スイッチ124と、警報用のブザー156をオフにするためのブザー停止スイッチ125と、脱穀クラッチをON(入り)・OFF(切り)操作するための脱穀クラッチスイッチ157と、刈取クラッチをON(入り)・OFF(切り)操作するための刈取クラッチスイッチ158と、刈取前処理装置4の昇降アーム14の回動位置(対機体高さ位置)を検出するための昇降ポジションセンサ153と、通常の刈取脱穀作業時の圃場面に対する刈取前処理装置4の高さ位置(対地高さ)を検出するための超音波センサ20a,20bと、走行機体1の左右の対地高さを検出するための左右車高センサ150,151と、走行機体1の左右方向の傾斜を検出するための傾斜検出センサ152と、縦搬送チェン8aの扱ぎ深さ位置を検出するための扱ぎ深さ位置センサ155と、前記縦搬送チェン8aからフィードチェン7に送る刈取穀稈長さを検出する扱ぎ深さセンサ154と、コントローラ103の電源をオンにするためのキースイッチ159(エンジン15の始動などにも使用)等である。
【0056】
第2選択スイッチ123は、選択スイッチとしての機能だけでなく、液晶表示装置121の表示内容を切り換える機能も備えている。また、ブザー停止スイッチ125は、第1及び第2選択スイッチ122,123の選択事項を決定する決定スイッチとしても機能するものである。このようにスイッチを多目的に用いる構成を採用すれば、スイッチの設置数を低減でき、部品点数削減によるコスト抑制に効果的である。第1及び第2選択スイッチ122,123とブザー停止スイッチ125とは、特許請求の範囲に記載した選択入力手段に相当する。
【0057】
制御装置103の出力側に接続するのは、HST式の走行駆動部42における第1走行用油圧ポンプ63及び第2旋回用油圧ポンプ66の各出力調節部と、脱穀クラッチ160の電磁弁駆動回路と、刈取クラッチ161の駆動モータ駆動回路と、刈取部昇降油圧シリンダ9の電磁弁駆動回路と、左右昇降油圧シリンダ54a,54bの電磁弁駆動回路と、扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99の駆動モータ駆動回路と、液晶表示装置121と、警報用のブザー156等である。
【0058】
次に、図16のフローチャートに基づき、ステアリング右スイッチ132の機能を切換える制御を説明する。キースイッチ159をオンにして電源を入れると、ステアリング右スイッチ132の機能が液晶表示装置121に表示される(S1)。例えば、図17に示されるように、「ステアリングの右スイッチの設定が変更されています。この設定でよろしいですか?」、「前後:車高上下調節、左右:車高傾斜調節」、「リセット(初期状態に戻す)」、「はい」が、液晶表示装置121に表示される。このとき、第2選択スイッチ123をオンにして「リセット」操作するか、またはブザー停止スイッチ125(決定スイッチ)をオンにして「はい」操作する(S2)。
【0059】
第2選択スイッチ123をオンにして「リセット」操作すると、出荷時の初期状態の設定(ステアリング右スイッチ132の前後動作にて刈取フィット昇降動作が行われる、ステアリング右スイッチ132の左右動作にて左または右フィットステアリング動作が行われる)に戻る。ブザー停止スイッチ125をオンにして「はい」操作すると、前回の設定が継続される。この後、キースイッチ159の操作にてエンジン15の始動が可能になる。
【0060】
第2選択スイッチ123と、ブザー停止スイッチ125とを、同時に一定時間(約5秒以上)オンにする(S3)。図18に示されるように、「メンテナンス選択メニュー」の画面に液晶表示装置121の表示が切換わる。液晶表示装置121には、「初期設定モード」、「チェッカーモード」、「サービスマンモード」の各項目が表示される(S4)。第1選択スイッチ122または第2選択スイッチ123のオン操作にて、「初期設定モード」、「チェッカーモード」、「サービスマンモード」の各項目を選択する。
【0061】
第1選択スイッチ122または第2選択スイッチ123の操作にて「初期設定モード」を選択し、ブザー停止スイッチ125をオンにして決定すると、図19に示されるように、「初期設定メニュー」の画面に液晶表示装置121の表示が切換わる(S6)。「ステアリング右スイッチ設定」、「車高上下調節設定」、「こぎ深さモード設定」、「フィットステアリング設定」、「車高傾斜調節設定」、「刈高さ昇降(フィットなし)設定」、「刈高さ昇降(フィット昇降)設定」の各項目が表示される。各項目は、第2選択スイッチ123の操作にて上の項目から下の項目を順次選択される(矢印↓)。同じく、各項目は、第1選択スイッチ122の操作にて下の項目から上の項目を順次選択される(矢印↑)。
【0062】
第1選択スイッチ122または第2選択スイッチ123の操作にて「ステアリング右スイッチ設定」を選択する(S7)。ブザー停止スイッチ125をオンにして決定する(S8)。図20に示されるように、「ステアリング右スイッチ設定」の画面に液晶表示装置121の表示が切換わる(S9)。先ずステアリング右スイッチ132の前後操作のスイッチ機能を選択する(S10)。図21に示されるように、ステアリング右スイッチ132の前後操作スイッチは、車高上下調節、刈高さ昇降(フィットなし)、刈取フィット昇降、扱ぎ深さ調節の各機能のいずれかを選択する。つまり、左右昇降油圧シリンダ54a,54b(車高上下調節)、刈取部昇降油圧シリンダ9(刈高さ昇降、刈取フィット昇降)、及び、扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99(扱ぎ深さ調節)のうちいずれかと、ステアリング右スイッチ132の前後操作との対応付けに関する項目を選択する。
【0063】
次いで、ステアリング右スイッチ132の左右操作のスイッチ機能を選択する(S11)。図21に示されるように、ステアリング右スイッチ132の左右操作スイッチは、車高傾斜調節、フィットステアリング、扱ぎ深さ調節の各機能のいずれかを選択する。つまり、左右昇降油圧シリンダ54a,54b(車高傾斜調節)、旋回用油圧ポンプ66(フィットステアリング)、及び、扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99(扱ぎ深さ調節)のうちいずれかと、ステアリング右スイッチ132の左右操作との対応付けに関する項目を選択する。
【0064】
ステアリング右スイッチ132の前後操作スイッチ機能と、左右操作スイッチ機能とは、図21に示されるように、10通りの組み合わせがある。ステアリング右スイッチ132にて前後及び左右操作スイッチ機能を選択すると、選択したスイッチ機能の確認画面(例えば、「この設定でよろしいですか?」、「前後:車高上下調節」、「左右:車高傾斜調節」)が表示される(S12)。ブザー停止スイッチ125をオンにしてステアリング右スイッチ132の設定を決定する(S13)。
【0065】
ステアリング右スイッチ132の前後操作スイッチ機能を、「車高上下調節」に設定すると、ステアリング右スイッチ132の左右操作と左右昇降油圧シリンダ54a,54bの作動とが対応付けられることになり、湿田作業、圃場の深さ変化に対して機体の対地高さを俊敏に調節できる。ステアリング右スイッチ132の左右操作スイッチ機能を、「車高傾斜調節」に設定すると、ステアリング右スイッチ132の左右操作と左右昇降油圧シリンダ54a,54bの作動とが対応付けられることになり、湿田作業、畦際作業、排藁を巻上げる場合など、機体の左右傾斜調整が必要な場合に便利である。
【0066】
ステアリング右スイッチ132の前後操作スイッチ機能を、「刈高さ昇降(フィットなし)」に設定すると、ステアリング右スイッチ132の前後操作と刈取部昇降油圧シリンダ9の作動とが対応付けられることになり、速やかな刈取昇降動作にて、穀稈を刈りながら圃場に出入できる。ステアリング右スイッチ132の前後操作スイッチ機能を、「刈取フィット昇降」に設定した場合も、前述の態様と同様に、ステアリング右スイッチ132の前後操作と刈取部昇降油圧シリンダ9の作動とが対応付けられることになり、刈取部をゆるやかに昇降動作でき、未刈り穀稈の刈高さを微調整できる。
【0067】
ステアリング右スイッチ132の前後又は左右操作スイッチ機能を、「扱ぎ深さ調節」に設定すると、ステアリング右スイッチ132の前後又は左右操作と扱ぎ深さ調節用アクチュエータ99とが対応付けられることになり、穀稈の斜め刈りまたは刈り上げ作業のとき、穀稈の扱ぎ深さを俊敏に調節でき、稈こぼれなどを防止する。ステアリング右スイッチ132の左右操作スイッチ機能を、「フィットステアリング」に設定すると、ステアリング右スイッチ132の左右操作と旋回用油圧ポンプ66(フィットステアリング)とが対応付けられることになり、穀稈を刈取るときの条合せ操作を容易に行えるのである。
【0068】
以上の構成から明らかなように、実施形態では、ステアリング右スイッチ132がハンドル47に設けられており、制御装置103は、ステアリング右スイッチ132と各出力系外部機器9、54a,54b、66、99との対応付けに関する項目を計器パネル40の液晶表示装置121に表示した状態で、第1及び第2選択スイッチ122,123並びにブザー停止スイッチ125にて前記項目の選択操作をすることにより、ステアリング右スイッチ132の手動操作にて作動すべき出力系外部機器9、54a,54b、66、99を、前記項目に対応して切り換えるように制御するので、コンバインにおける各出力系外部機器9、54a,54b、66、99のうち、オペレータが好み又は作業工程上の必要性から頻繁に操作したいものと、ステアリング右スイッチ132との対応付けを、任意に選択し且つ決定できる(カスタマイズできる)から、オペレータ(ユーザ)の要望に簡単に応えることができて、農作業の作業能率を向上できる。
【0069】
そして、オペレータがどの出力系外部機器9、54a,54b、66、99とステアリング右スイッチ132とを対応させるかという作業内容の選択及び決定は、計器パネル40に設けられた第1及び第2選択スイッチ122,123とブザー停止スイッチ125(決定スイッチ)とにより実行でき、且つ、その選択及び決定の状態が計器パネル40の液晶表示装置121に表示されるので、作業内容の選択・決定を簡単、且つ明瞭に行うことができる。このような液晶表示装置121の画面に表示する制御はマイクロコンピュータ等の制御手段103に格納するアプリケーションソフト(プログラム)だけで実行できるから、前記作業内容の選択・決定のアプリケーションソフト(プログラム)を追加するだけの簡単な変更で本発明が実現できる。
【0070】
また、前記ハンドル47のステアリングホイル255に、手動入力系外部機器としてのステアリング右スイッチ132を備えており、前記ハンドル47の内径部に、液晶表示装置121(電気的表示装置)が配置されているから、前記作業内容の選択・決定のためのステアリング右スイッチ132の操作は、前を向いた運転姿勢のままでハンドル47から手を離すことなく実行できる。その上、オペレータはハンドル47を操作しながらその内径部の液晶表示装置121を見て確認できる。従って、農作業が安全に行え、且つ作業能率の更なる向上が図れるという効果を奏する。
【0071】
また、前記手動入力系外部機器132は、二方向型または十字方向型スイッチとしたものであるから、ハンドル47のステアリングホイル255という小さい領域に多機能の操作部を設けることができるという効果を奏する。
【0072】
なお、操向操作手段は前述した回転操作式のハンドル47に限らず、例えばレバー式といった他の形態のものであっても構わない。操向操作手段がレバー式である場合は、その握り部に選択入力手段を設けるようにすれば、操作性がよくて好ましい。また、例えばハンドル47におけるステアリングホイル255の形状も、丸型(環状)のものに限定されるものではない。手動入力系外部機器(操作用スイッチ)は、前述の実施形態のように1つだけ(ステアリング右スイッチ132だけ)に限らず、複数あっても差し支えない。その他、各部の構成も図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】コンバインの右側面視である。
【図2】コンバインの左側面図である。
【図3】動力伝達系統のスケルトン図である。
【図4】油圧式無段変速機構のスケルトン図である。
【図5】昇降油圧シリンダ部の側面説明図である。
【図6】昇降油圧シリンダ部の平面説明図である。
【図7】刈取前処理装置の部分側面図である。
【図8】油圧回路図である。
【図9】運転室の平面図である。
【図10】運転室内の右側面図である。
【図11】フロントパネルの平面説明図である。
【図12】ハンドル部分の平面図である。
【図13】計器パネルの平面説明図である。
【図14】主変速レバーの握り部の平面説明図である。
【図15】制御装置の機能ブロック図である。
【図16】ステアリング右スイッチの機能切換制御フローチャートである。
【図17】液晶表示装置の初期画面の説明図である。
【図18】液晶表示装置のメンテナンス選択メニュー画面の説明図である。
【図19】液晶表示装置の初期設定メニュー画面の説明図である。
【図20】液晶表示装置のステアリング右スイッチ設定画面の説明図である。
【図21】ステアリング右スイッチの前後及び左右スイッチ機能の組み合わせ表図である。
【符号の説明】
【0074】
1 走行機体
2a,2b 走行クローラ(走行部)
3 脱穀装置(作業部)
4 刈取前処理装置(作業部)
9 刈取部昇降油圧シリンダ(出力系外部機器)
40 計器パネル(表示手段)
47 ハンドル(操向操作手段)
54a 左昇降油圧シリンダ(出力系外部機器)
54b 右昇降油圧シリンダ(出力系外部機器)
66 旋回用油圧ポンプ66(出力系外部機器)
99 扱ぎ深さ調節用アクチュエータ(出力系外部機器)
103 コントローラ(制御装置)
121 液晶表示装置(電気的表示装置)
122 選択入力手段の一例としての第1選択スイッチ
123 選択入力手段の一例としての第2選択スイッチ
125 選択入力手段の一例としてのブザー停止スイッチ(決定スイッチ)
132 ステアリング右スイッチ(手動入力系外部機器)
255 ステアリングホイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機における走行部及び作業部の各々を作動させるための複数種類の出力系外部機器と、前記各出力系外部機器に対する操作指令を実行するための手動入力系外部機器と、前記走行部の操向操作をするための操向操作手段と、前記農作業についての各種情報を表示する表示手段と、前記手動入力系外部機器、前記出力系外部機器及び前記表示手段に接続された制御装置とを備えている農作業機であって、
前記手動入力系外部機器は前記操向操作手段に設けられており、
前記制御装置は、前記手動入力系外部機器と前記各出力系外部機器との対応付けに関する項目を前記表示手段に表示した状態で、前記表示手段に備わる選択入力手段にて前記項目の選択操作をすることにより、前記手動入力系外部機器の手動操作にて作動すべき前記出力系外部機器を、前記項目に対応して切り換える制御を実行することを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記操向操作手段は、前記農作業機の運転部にある運転席の前方に配置されたハンドルであり、前記ハンドルのステアリングホイルには、前記手動入力系外部機器としての1乃至複数の操作用スイッチを備えており、前記ハンドルの内径部に、前記表示手段を構成する電気的表示装置が配置されていることを特徴とする請求項1に記載した農作業機。
【請求項3】
前記農作業機は穀稈を刈取脱穀するためのコンバインであることを特徴とする請求項1又は2に記載した農作業機としてのコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−68862(P2008−68862A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262085(P2007−262085)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【分割の表示】特願2004−297580(P2004−297580)の分割
【原出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】