説明

農作業機

【課題】心土破砕体の破損を防止でき、複数の付勢体にて心土破砕体をもとの作業状態にスムーズに戻すことができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、トラクタに連結する作業機本体5と、作業機本体5に設けた耕耘体11と、作業機本体5に設けた整地体16とを備える。作業機本体5の破砕体被取付部31には心土破砕体30を上下回動可能に取り付ける。破砕体被取付部31の左右両側方には心土破砕体30を下方に向けて付勢する複数のコイルばね41を配設する。各コイルばね41の付勢力がそれぞれ個別に調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心土破砕体の破損を防止可能な農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。この従来の農作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結される作業機本体と、作業機本体に設けられ耕耘作業をする耕耘体と、作業機本体に設けられ耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、作業機本体に設けられ耕耘体の後方で心土破砕作業をする心土破砕体(サブソイラ体)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−287439号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば圃場の土中の石等の障害物が心土破砕体に当たった場合に、心土破砕体が破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、心土破砕体の破損を防止でき、しかも、複数の付勢体にて心土破砕体を下方に回動させてもとの作業状態にスムーズに戻すことができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結され、破砕体被取付部を有する作業機本体と、この作業機本体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、前記作業機本体に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、前記破砕体被取付部に上下方向に回動可能に取り付けられ、心土破砕作業をする心土破砕体と、前記破砕体被取付部の左右両側方に配設され、前記心土破砕体を下方に向けて付勢する複数の付勢体とを備えるものである。
【0007】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、各付勢体の付勢力がそれぞれ個別に調整可能となっているものである。
【0008】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、心土破砕体の左右位置が調整可能となっており、前記心土破砕体は、走行車の後輪の後方かつ耕耘体の前方で心土破砕作業をするものである。
【0009】
請求項4記載の農作業機は、請求項3記載の農作業機において、走行車の後輪の後方かつ耕耘体の前方で心土破砕作業をする複数の心土破砕体を備え、互いに近接して隣り合う心土破砕体の前後位置が異なっているものである。
【0010】
請求項5記載の農作業機は、請求項1ないし4のいずれか一記載の農作業機において、各付勢体が外部に露出しているものである。
【0011】
請求項6記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、作業機本体の破砕体被取付部に回動可能に取り付けられ、ロッド用孔部を有する回動体と、前記ロッド用孔部に挿通され、心土破砕体の回動に連動して上下動するロッドと、このロッドの上端側に螺合され、前記心土破砕体の作業深さを調整するための作業深さ調整用ナットと、前記ロッドの下端側に螺合され、付勢体の付勢力を調整するための付勢力調整用ナットとを備え、前記回動体と前記付勢力調整用ナットとの間に付勢体が配設されているものである。
【0012】
請求項7記載の農作業機は、請求項1ないし6のいずれか一記載の農作業機において、破砕体被取付部が、作業機本体の取付部に上下位置調整可能に取り付けられているものである。
【0013】
請求項8記載の農作業機は、請求項1ないし7のいずれか一記載の農作業機において、心土破砕体は、前受部分および後受部分を有する心土破砕本体部と、この心土破砕本体部の下端部に回動可能に設けられ、一の状態時には前記前受部分と当接し、他の状態時には前記後受部分と当接するチゼル部とを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、土中の石等の障害物が心土破砕体に当接した場合、心土破砕体は上方に回動するため、心土破砕体の破損を防止でき、しかも、その障害物との当接後、複数の付勢体にて心土破砕体を下方に回動させてもとの作業状態にスムーズに戻すことができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、各付勢体の付勢力をそれぞれ個別に調整できるため、複数の付勢体にて心土破砕体をもとの作業状態により一層スムーズに戻すことができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、心土破砕体の左右位置を調整でき、心土破砕体が走行車の後輪の後方かつ耕耘体の前方で心土破砕作業をするため、心土破砕体にてより一層適切な心土破砕作業ができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、互いに近接して隣り合う心土破砕体の前後位置が異なっているため、スムーズな土の流れを確保でき、複数の心土破砕体にて適切かつ確実な心土破砕作業ができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、各付勢体が外部に露出しているため、カバーで覆った場合に比べて、付勢体の状態を容易に確認できるとともに、付勢体の交換も簡単にできる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、ロッドの上端側に螺合された作業深さ調整用ナットによって心土破砕体の作業深さを簡単に調整でき、ロッドの下端側に螺合された付勢力調整用ナットによって付勢体の付勢力を簡単に調整できる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、破砕体被取付部の上下位置を調整することによって心土破砕体の作業深さを簡単に調整できる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、心土破砕体は心土破砕本体部とこの心土破砕本体部の下端部に回動可能に設けられ一の状態時には前受部分と当接し他の状態時には後受部分と当接するチゼル部とを有するため、例えばチゼル部が心土破砕本体部の下端部に固設された構成等に比べて、耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図2】同上農作業機の平面図である。
【図3】同上農作業機の心土破砕体が上方回動した状態の側面図である。
【図4】同上農作業機の要部側面図である。
【図5】同上農作業機の要部正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る農作業機の要部側面図である。
【図7】同上農作業機の要部正面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る農作業機の要部正面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る農作業機の要部側面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係る農作業機の平面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係る農作業機の平面図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態に係る農作業機の要部側面図である。
【図13】同上農作業機の取付板を示す側面図である。
【図14】同上農作業機の一の状態時のチゼル部を示す側面図である。
【図15】同上農作業機の他の状態時のチゼル部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の農作業機の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、走行車であるトラクタ2の後部に連結されトラクタ2の走行により圃場を前方に移動しながら耕耘整地作業等を行なうものである。
【0025】
農作業機1は、図1および図2に示されるように、トラクタ2が後部に有する図示しない3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持部)に連結された作業機本体5を備えている。
【0026】
作業機本体5は、左右方向長手状で断面略円形状のフレームパイプ等の主フレーム部6を有し、この主フレーム部6の左右方向中央部にはミッションケース等の軸保持部7が設けられている。軸保持部7にはトラクタ2からの動力を入力する略前後方向の入力軸8が回転可能に設けられ、この入力軸8はトラクタ2のPTO軸にジョイントおよび伝動シャフト等からなる動力伝達手段(図示せず)を介して接続されている。また、主フレーム部6の左端部にはチェーンケース部9が設けられ、主フレーム部6の右端部にはブラケット部10が設けられている。
【0027】
そして、作業機本体5のチェーンケース部9およびブラケット部10には、入力軸8側からの動力によって所定方向に回転しながら耕耘作業をするロータリー式の耕耘体11が設けられている。耕耘体11は、チェーンケース部9およびブラケット部10に架設された左右方向の回転軸12と、この回転軸12に取り付けられこの回転軸12とともに回転して耕耘作業をする複数の耕耘爪13とを有している。
【0028】
また、耕耘体11の上方部は作業機本体5の略円弧板状のカバー部15にて覆われており、このカバー部15の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする略板状の均平板等の整地体16が上下方向に回動可能に設けられている。すなわち例えば整地体16の前端部が作業機本体5のカバー部15の後端部に左右方向の軸17を介して回動可能に取り付けられている。整地体16は、整地作業をする略板状の整地本体部18と、この整地本体部18に突設された連結部19とを有している。整地体16の連結部19と作業機本体5の連結部20とが整地体16の接地圧を調整可能な連結手段21にて連結されている。連結手段21は、連結ロッド22およびこの連結ロッド22の外周に配設された複数のコイルばね23等にて構成されている。
【0029】
また一方、作業機本体5は、主フレーム部6に連結板部25を介して連結され主フレーム部6より前方にこの主フレーム部6と平行に位置する左右方向長手状で断面略正方形状のヒッチパイプ等の副フレーム部26を有している。
【0030】
副フレーム26には、左右対をなす略板状の破砕体被取付部31が取付ボルト32、ナット35および取付板33等を介して左右位置調整可能に取り付けられている。そして、各破砕体被取付部31には、トラクタ2の後輪(後輪タイヤ)3の後方かつ耕耘体11の前方で心土破砕作業をするサブソイラ体である心土破砕体30が左右方向の軸34を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。つまり、農作業機1は左右方向の軸34を中心として作業状態および障害物退避状態間で上下回動可能な左右一対の心土破砕体30を備えている。なお、ここでいうトラクタ2の後輪3の後方とは、後輪3の真後ろの位置のほか、その真後ろの位置から左右方向に少しずれた位置も含む意味である。
【0031】
すなわち図3に示すように、心土破砕体30は、作業状態で作業している際に、圃場の土中の石等の障害物Aに当接すると、左右方向の軸34を中心として上方に回動する。
【0032】
この心土破砕体30は、上下方向長手状で略板状の心土破砕本体部であるナイフ部36と、このナイフ部36の下端部に設けられた先金等の刃部であるチゼル部37とを有し、ナイフ部36の上端部が破砕体被取付部31に左右方向の軸34を介して回動可能に取り付けられている。なお、各破砕体被取付部31は、互いに近接して対向した2枚の対向板31aにて構成されており、両対向板31aの下端部間にナイフ部36の上端部が挿入されて軸34にて回動可能に支持されている。
【0033】
また、図4および図5に示すように、農作業機1は、作業機本体5の略板状の破砕体被取付部31の左右両側方に近接状に配設され、心土破砕体30を下方に向けて付勢することにより心土破砕体30を左右方向の軸34を中心として下方に回動させて障害物Aとの当接前のもとの作業状態に戻す複数の略円筒状の付勢体であるコイルばね41を備えている。つまり、各心土破砕体30ごとに複数、例えば2本ずつ配設され、それぞれ1つの心土破砕体30が対応する左右2本の弾性変形可能な圧縮ばねであるコイルばね41にて左右両側から下方に向けて付勢されている。そして、この各コイルばね41の付勢力がそれぞれ個別に調整可能となっている。
【0034】
ここで、図4および図5に示されるように、心土破砕体30のナイフ部36の上部には左右方向に軸方向を有する軸状体(回動支点)42が固着され、この軸状体42の軸方向両端側の外周面には外形略直方体状の回動体である下回動体43が左右方向の軸である軸状体42を中心として回動可能に取り付けられている。
【0035】
下回動体43には上方に向って開口するねじ孔部44が形成され、このねじ孔部44には連動体としての長手状部材であるロッド45の下端部が螺入され、固定用ナット46にてそのロッド45の下端部が下回動体43に対して固定されている。つまりロッド45の下端部は、軸状体42および下回動体43を介して心土破砕体30に連結されている。
【0036】
ロッド45は、心土破砕体30の破砕体被取付部31に対する上下方向の回動に連動してその破砕体被取付部31に対して上下動するもので、少なくとも下端側外周面および上端側外周面にねじ溝45aが形成され、このロッド45の外周にコイルばね41が配設されている。つまりコイルばね41内にロッド45の長手方向中間部が挿通されている。
【0037】
また、このロッド45の上端側は、破砕体被取付部31の上端部に左右方向の軸50を中心として回動可能に取り付けられた略円筒状の回動体である上回動体(タンブラ等)51のロッド用孔部52にこの上回動体51に対して上下動可能に挿通されている。この上回動体51は、破砕体被取付部31の上端部に略コ字状の枠53および軸50を介して回動可能に取り付けられている。つまり上回動体51は、破砕体被取付部31に取り付けられた一方側の軸50と破砕体被取付部31に固着した枠53に取り付けられた他方側の軸50とによって回動可能に支持されている。
【0038】
そして、ロッド45の上端側外周面のねじ溝45aには、心土破砕体30の破砕体被取付部31に対する回動に基づき心土破砕体30の作業深さを調整するための2つの作業深さ調整用ナット(ダブルナット)56が螺合されている。ロッド45の下端側外周面のねじ溝45aには、心土破砕体30に対するコイルばね41の付勢力を調整するための付勢力調整用ナット(ダブルナット)57が螺合されている。
【0039】
また、上回動体51の上端と作業深さ調整用ナット56との間には、略円筒状のカラー等のスペーサ58が配設されている。上回動体51の下端と付勢力調整用ナット57との間には、コイルばね41が所望量だけ圧縮された状態で配設されている。すなわち例えばコイルばね41の上端が上回動体51の下端に当接し、コイルばね41の下端がリング状のばね受け59を介して付勢力調整用ナット57に当接している。
【0040】
なお、図3および図4に示されるように、心土破砕体30を回動可能に支持する破砕体被取付部31は、作業機本体5の取付部である取付板33に対して複数、例えば2本の止めピン61,62によって取り付けられている。また、破砕体被取付部31に形成されたフック部である係合凹部64が、取付板33に取り付けられた係合ピン63に引っ掛かって係合している。そして、この破砕体被取付部31は工具レスで取付板33に対して脱着可能となっている。なお、止めピン61は必ずしも必要ではない。
【0041】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0042】
農作業機1をトラクタ2の走行により前方に移動させると、所定方向に回転する耕耘体11が耕耘作業を行い、この耕耘体11の後方では整地体16が整地作業を行う。また、耕耘体11の前方では、トラクタ2の後輪3の後方で、チゼル部37が耕耘体11の下端より下方に位置する作業状態の心土破砕体30が、耕盤層および心土層等の硬盤の土を破砕する心土破砕作業を行う。
【0043】
この作業時に、図3に示すように、作業状態の心土破砕体30のチゼル部37に土中の石等の障害物Aが当接すると、心土破砕体30は、破砕体被取付部31に対して左右両側の弾性体であるコイルばね41の付勢力に抗して軸34を中心として上方に回動し、障害物退避状態になる。この際、心土破砕体30の回動に連動してロッド45が上動し、この上動に応じて左右両側のコイルばね41が圧縮弾性変形する。
【0044】
その後、心土破砕体30は、チゼル部37から障害物Aが離れると、左右両側のコイルばね41の弾性復元力である付勢力に基づき、破砕体被取付部31に対して軸34を中心として下方に回動し、もとの作業状態に復帰する。
【0045】
そして、このような農作業機1によれば、土中の石等の障害物Aが心土破砕体30に当接した場合、心土破砕体30は上方に回動して跳ね上がるため、心土破砕体30の破損を防止でき、しかも、その障害物Aとの当接後、左右両側のコイルばね41の付勢力によって心土破砕体30を下方に回動させてもとの作業状態に素早くスムーズに戻すことができ、よって、より適切な心土破砕作業を行うことができる。
【0046】
また、心土破砕体30を付勢する複数のコイルばね41の各々の付勢力をそれぞれ個別に調整できるため、複数のコイルばね41にて心土破砕体30をもとの作業状態により一層素早くスムーズに戻すことができ、しかも、その付勢力の調整は、ロッド45の下端側に螺合された2つの付勢力調整用ナット57を回動操作することによって簡単に行なうことができる。
【0047】
さらに、心土破砕体30を破砕体被取付部31に対して所望量回動させることにより破砕体被取付部31に対して心土破砕体30の作業深さ(心土破砕体30の下端位置)を調整できるため、心土破砕体30にて適切な心土破砕作業ができ、しかも、その作業深さの調整は、ロッド45の上端側に螺合された2つの作業深さ調整用ナット56を回動操作することによって簡単に行なうことができる。
【0048】
また、破砕体被取付部31の副フレーム部26に対する取付位置を変更することにより心土破砕体30の左右位置を調整でき、心土破砕体30がトラクタ2の後輪3の後方かつ耕耘体11の前方で心土破砕作業を行うため、心土破砕体30にてより一層適切な心土破砕作業ができる。
【0049】
さらに、各コイルばね41が外部に露出しているため、例えばコイルばね41をカバーで覆った場合に比べて、コイルばね41の圧縮状態を容易に確認でき、コイルばね41の強弱等を容易に判断できるとともに、各コイルばね41の交換も簡単にでき、またカバー内に水分が貯まる不具合もなく、耐久性が向上する。
【0050】
なお、上記第1の実施の形態では、破砕体被取付部31の左右両側方に1本ずつ配設した2本のコイルばね(第1ばねおよび第2ばね)41で心土破砕体30を下方に付勢する構成について説明したが、例えば図6および図7に示す第2の実施の形態のように、心土破砕体30と破砕体被取付部31との間に略円筒状の付勢体であるコイルばね(第3ばね)71を配設し、これら3本のコイルばね41,71にて心土破砕体30を下方に付勢する構成でもよい。
【0051】
図6および図7に示すコイルばね71は、伸縮可能な連結体72の上下の2つのばね受け73間に圧縮された状態で装着され、連結体72の下端部が心土破砕体30に左右方向の軸74を介して回動可能に連結され、連結体72の上端部が破砕体被取付部31に左右方向の軸75を介して回動可能に連結されている。
【0052】
また、図8に示す第3の実施の形態のように、破砕体被取付部31の左右両側方に2本ずつ配設し左右に一直線に並んだ4本のコイルばね41で心土破砕体30を下方に付勢する構成でもよい。
【0053】
さらに、図9に示す第4の実施の形態のように、破砕体被取付部31の左右両側方に2本ずつ前後に並べて配設した4本のコイルばね41で心土破砕体30を下方に付勢する構成でもよい。
【0054】
また、例えば図示しないが、破砕体被取付部31の左右両側方に3本ずつ配設した6本のコイルばね41で心土破砕体30を下方に付勢する構成等でもよい。
【0055】
さらに、左右一対の心土破砕体30を備えた構成には限定されず、トラクタ2の後輪3の後方かつ耕耘体11の前方で心土破砕作業をする複数の心土破砕体30を備えた構成、すなわち例えば図10に示す第5の実施の形態のように左右両側に心土破砕体30を複数、例えば2つずつ互いに近接して配設した構成や、図11に示す第6の実施の形態のように左右両側に心土破砕体30を3つずつ互いに近接して配設した構成等でもよい。
【0056】
この図10および図11に示す構成では、互いに近接して隣り合う心土破砕体30の前後位置が異なっている。互いに近接して隣り合う心土破砕体30の前後位置が同じである場合には、作業時に近接して隣り合う心土破砕体30間に土がたまりやすく、作業不能となるおそれがあるが、互いに近接して隣り合う心土破砕体30の前後位置をずらすことで、両心土破砕体30間の間隙を広くすることなく、スムーズな土の流れを確保でき、作業不能となることを防止できる。
【0057】
また一方、農作業機1は、第7の実施の形態のもの、つまり図12に示す構成を備えたものであってもよい。
【0058】
この図12に示す構成では、作業機本体5の破砕体被取付部31が取付部である取付板33に複数段階、例えば2段階に上下位置調整可能に取り付けられている。
【0059】
取付板33は、図13に示すように、上下方向に間隔をおいて並んだ複数、例えば5つの孔部を有している。つまり、取付板33は、上から順に、第1ボルト孔部81、第1ピン孔部兼第2ボルト孔部82、第2ピン孔部83、第1ボルト孔部84、および第2ボルト孔部85を有している。また、取付板33は、副フレーム26の前部と嵌合する側面視略く字状のフレーム嵌合部86を有している。
【0060】
そして、図12に示す状態では、係合ピン63が第1ピン孔部兼第2ボルト孔部82に挿通され、この挿通された係合ピン63に対して抜止めピン(図示せず)が差し込まれることによりその係合ピン63が取付板33に抜止め状態に取り付けられている。そして、破砕体被取付部31のフック状の係合凹部64が、係合ピン63に引っ掛かって係合している。
【0061】
また、この図12に示す状態では、互いに一致した破砕体被取付部31の上側ボルト孔部(図示せず)および第1ボルト孔部81に上側ボルト91が挿通され、この挿通された上側ボルト91にナット(図示せず)が螺合締付され、かつ、互いに一致した破砕体被取付部31の下側ボルト孔部(図示せず)および第1ボルト孔部84に下側ボルト92が挿通され、この挿通された下側ボルト92にナット(図示せず)が螺合締付されている。
【0062】
このように、2本のボルト91,92および1本の係合ピン63を介して、破砕体被取付部31が取付板33に取り付けられている。なお、破砕体被取付部31を取付板33に取り付ける場合、最初に係合ピン63を第1ピン孔部兼第2ボルト孔部82に挿通して取付板33に取り付け、その係合ピン63に係合凹部64を引っ掛けることにより、破砕体被取付部31は係合ピン63を中心として回動可能な状態となり、その結果、破砕体被取付部31のボルト孔部と取付板33のボルト孔部81,84との位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0063】
そして、図12に示す状態よりも、破砕体被取付部31の取付板33に対する上下位置(高さ位置)を低くする場合、つまり心土破砕体30の作業深さを低くする場合には、係合ピン63を第2ピン孔部83に挿通し、上側ボルト91を第1ピン孔部兼第2ボルト孔部82に挿通し、下側ボルト92を第2ボルト孔部85に挿通すればよい。つまり、2本のボルト91,92および1本の係合ピン63の差し込む孔位置を換えることにより、破砕体被取付部31が取付板33に対して上下位置調整可能となっている。
【0064】
なお、破砕体被取付部31が取付板33に対して2段階に上下位置調整可能な構成には限定されず、3段階、4段階や5段階以上、或いは無段階に上下位置調整可能な構成とすることも可能である。
【0065】
また、図12に示す心土破砕体30が有する心土破砕本体部であるナイフ部36は、下部前面に前受部分95を有し、下部後面に後受部分96を有している。ナイフ部36の下端部には、チゼル部37が左右方向の軸99を中心として上下方向に回動可能に設けられている。そして、チゼル部37は、一の状態時には前当接部分97が前受部分95と当接し、他の状態時には後当接部分98が後受部分96と当接する。
【0066】
すなわち図14に示すように、一の状態時つまり通常作業時(異物がない場合)には、チゼル部37は、圃場からの土圧を受けて前当接部分97と前受部分95とが当接した状態となって、心土破砕作業をする。
【0067】
図15に示すように、他の状態時つまり土中の石等の障害物Aとの当接時には、チゼル部37は、障害物Aから受ける力で回動し、後当接部分98と後受部分96とが当接した状態となる。そして、障害物Aからチゼル部37にさらに大きな力が加わると、図3に示されるように、チゼル部37は、ナイフ部36と一体となって、コイルばね41の付勢力に抗して軸34を中心として上方に回動し、障害物Aから逃げる。
【0068】
このように図12に示す構成を備えた農作業機1によれば、上記実施の形態による作用効果に加え、破砕体被取付部31の上下位置を調整することによって心土破砕体30の作業深さを簡単に調整でき、また例えばチゼル部37がナイフ部36の下端部に固設された構成等に比べて、チゼル部37の耐久性の向上を図ることができる。さらに例えば、ナイフ部36の下端部にチゼル部37が2本のボルトで固定された構成では、障害物Aとの当接(衝突)の際に、ボルトに大きな力が作用してボルトが破損する不具合が生じるおそれがあるが、図12の農作業機1ではそのようなボルト破損の不具合の発生を防止できる。
【0069】
なお、上記各実施の形態の構成を適宜組み合わせることも可能であり、例えば図12に示す取付板33に対する破砕体被取付部31の取付構成や、チゼル部37の回動構成を図1に示すものに適用した農作業機1でもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 農作業機
2 走行車であるトラクタ
3 後輪
5 作業機本体
11 耕耘体
16 整地体
30 心土破砕体
31 破砕体被取付部
33 取付部である取付板
36 心土破砕本体部であるナイフ部
41 付勢体であるコイルばね
45 ロッド
51 回動体である上回動体
52 ロッド用孔部
56 作業深さ調整用ナット
57 付勢力調整用ナット
71 付勢体であるコイルばね
95 前受部分
96 後受部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結され、破砕体被取付部を有する作業機本体と、
この作業機本体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、
前記作業機本体に設けられ、前記耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、
前記破砕体被取付部に上下方向に回動可能に取り付けられ、心土破砕作業をする心土破砕体と、
前記破砕体被取付部の左右両側方に配設され、前記心土破砕体を下方に向けて付勢する複数の付勢体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
各付勢体の付勢力がそれぞれ個別に調整可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
心土破砕体の左右位置が調整可能となっており、
前記心土破砕体は、走行車の後輪の後方かつ耕耘体の前方で心土破砕作業をする
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項4】
走行車の後輪の後方かつ耕耘体の前方で心土破砕作業をする複数の心土破砕体を備え、
互いに近接して隣り合う心土破砕体の前後位置が異なっている
ことを特徴とする請求項3記載の農作業機。
【請求項5】
各付勢体が外部に露出している
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の農作業機。
【請求項6】
作業機本体の破砕体被取付部に回動可能に取り付けられ、ロッド用孔部を有する回動体と、
前記ロッド用孔部に挿通され、心土破砕体の回動に連動して上下動するロッドと、
このロッドの上端側に螺合され、前記心土破砕体の作業深さを調整するための作業深さ調整用ナットと、
前記ロッドの下端側に螺合され、付勢体の付勢力を調整するための付勢力調整用ナットとを備え、
前記回動体と前記付勢力調整用ナットとの間に付勢体が配設されている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項7】
破砕体被取付部が、作業機本体の取付部に上下位置調整可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載の農作業機。
【請求項8】
心土破砕体は、
前受部分および後受部分を有する心土破砕本体部と、
この心土破砕本体部の下端部に回動可能に設けられ、一の状態時には前記前受部分と当接し、他の状態時には前記後受部分と当接するチゼル部とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−81932(P2010−81932A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109669(P2009−109669)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】