説明

農作業機

【課題】適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、中央作業部2と、左右の延長作業部3とを具備する。中央作業部2は、耕耘作業をする中央耕耘体12と、整地作業をする中央整地体13とを備える。延長作業部3は、耕耘作業をする延長耕耘体32と、整地作業をする延長整地体33とを備える。中央整地体13は、係合受部材30を有する。延長整地体33は、延長作業部3の展開作業状態時に係合受部材30と係脱可能に係合する可動係合部材70を有する。延長整地体33は、可動係合部材70を係合受部材30側に向けて付勢する付勢部材とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な耕耘整地作業ができる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結される作業部である中央作業部と、この中央作業部の左右方向両端部に設けられ折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられる延長作業部とを具備している。
【0004】
また、中央作業部は、耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体の後方で整地作業をする整地体とを備えている。延長作業部は、耕耘作業をする延長耕耘体と、この延長耕耘体の後方で整地作業をする延長整地体とを備えている。
【0005】
さらに、延長作業部の延長整地体は、連結孔を有している。中央作業部の整地体は、延長作業部の展開作業状態時に連結孔に挿入される連結ピンと、この連結ピンを連結孔側に向けて付勢するコイルばね等の付勢部材とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−304707号公報(図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の農作業機では、延長作業部の展開作業状態時において、整地体と延長整地体とが連結ピンを介して常に係合連結された状態となっているため、例えば比較的大きな石が整地体および延長整地体のうちの一方のみに当たった場合であっても、これら整地体および延長整地体の両方が上動してしまい、その結果、圃場面に広範囲にわたって段差が生じる等の不具合が発生し、適切な耕耘整地作業ができないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結される作業部と、この作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられる延長作業部とを具備し、前記作業部は、耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体の後方で整地作業をする整地体とを備え、前記延長作業部は、耕耘作業をする延長耕耘体と、この延長耕耘体の後方で整地作業をする延長整地体とを備え、前記整地体および前記延長整地体のいずれか一方は、係合受部材を有し、前記整地体および前記延長整地体のいずれか他方は、前記延長作業部の展開作業状態時に前記係合受部材と係脱可能に係合する可動係合部材と、この可動係合部材を前記係合受部材側に向けて付勢する付勢部材とを有し、前記延長作業部の展開作業状態時において、前記可動係合部材が前記付勢部材の付勢力に抗して可動して前記可動係合部材と前記係合受部材との係合が解除されるものである。
【0010】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、係合受部材は、互いに離間対向する対をなす係合受突部を有し、可動係合部材は、前記両係合受突部間に対して出入りする係合部を有し、整地体および延長整地体のうちの一方のみに衝撃力が加わった場合に、前記可動係合部材が前記係合受突部にて押されて付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間から抜け出た後、再度、前記可動係合部材が前記係合受突部にて押されて前記付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間に入り込むものである。
【0011】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、係合部と係合する両係合受突部の各々は、可動係合部材の移動方向に沿って位置する係合受面および前記可動係合部材の移動方向に対して傾斜して位置する傾斜案内面を有し、整地体および延長整地体のうちの一方のみに衝撃力が加わった場合に、前記可動係合部材が前記係合受面にて押されて付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間から抜け出た後、再度、前記可動係合部材が前記傾斜案内面にて押されて前記付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間に入り込むものである。
【0012】
請求項4記載の農作業機は、請求項2または3記載の農作業機において、可動係合部材の係合部は、丸棒状のものであり、係合受部材の係合受突部の突出長さ寸法が、前記係合部の半径寸法よりも大きくかつ前記係合部の直径寸法よりも小さいものである。
【0013】
請求項5記載の農作業機は、請求項1ないし4のいずれか一記載の農作業機において、付勢部材の付勢力の大きさを調整することが可能となっているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、延長作業部の展開作業状態時において可動係合部材が付勢部材の付勢力に抗して可動して可動係合部材と係合受部材との係合が解除される構成であるため、適切な耕耘整地作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図2】同上農作業機の展開平面図である。
【図3】同上農作業機の展開平面図である。
【図4】同上農作業機の作業時の部分側面図である。
【図5】同上農作業機の連結手段を示す図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】(a)〜(h)は、延長作業部の延長整地体に衝撃力が加わった場合における動作説明図である。
【図9】(a)〜(h)は、中央作業部の中央整地体に衝撃力が加わった場合における動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図3において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されて使用される耕耘整地作業機(ロータリー)である。つまり、農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態で、トラクタの走行により進行方向である前方に向かって圃場上を移動しながら耕耘整地作業をする折畳式作業機である。
【0018】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降装置)に連結され、トラクタ側から動力を受けて耕耘整地作業をする左右方向長手状の作業部である中央作業部2を備えている。
【0019】
また、農作業機1は、中央作業部2の左右方向両端部に回動支点である折畳用軸4を中心として上下方向に回動可能に設けられ、その回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられ、展開作業状態時には中央作業部2側から動力を受けて耕耘整地作業をする左右方向長手状の左右の延長作業部3を備えている。
【0020】
各延長作業部3は、農作業機1の中央部に位置する中央作業部2に対して回動中心軸線Aを中心として回動可能であり、一方向(展開方向)への所定角度、例えば略180度の回動により中央作業部2の外側方に位置する展開作業状態となり、この展開作業状態に展開ロック手段5によって解除可能にロックされる。また、各延長作業部3は、一方向とは反対の他方向(折畳方向)への所定角度、例えば略180度の回動により中央作業部2の上方に位置する折畳非作業状態となり、この折畳非作業状態に折畳ロック手段(図示せず)によって解除可能にロックされる。
【0021】
なお、延長作業部3の状態を切り換える際における延長作業部3の回動角度は、例えば150度や90度等でもよい。また、展開ロック手段5は、例えばロックピン6およびこのロックピン6と係合するフック7等にて構成されている。
【0022】
中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンク部に連結される左右方向長手状の機体である中央機体11と、この中央機体11に回転可能に設けられトラクタ側から動力を受けて回転しながら耕耘作業をする耕耘体である中央耕耘体12と、中央機体11の耕耘カバー部15の後端部に左右方向の回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ中央耕耘体12の後方で整地作業をする整地体である中央整地体13とを備えている。
【0023】
中央機体11は、左右方向長手状で円筒状のフレームパイプ部16を有し、このフレームパイプ部16の左右方向中央部にはギアボックス部17が設けられ、このギアボックス部17から入力軸18が前方に向かって突出している。入力軸18は、トラクタのPTO軸(図示せず)に、ユニバーサルジョイントおよび伝動シャフトからなる伝動手段(図示せず)を介して接続される。
【0024】
フレームパイプ部16の長手方向一端部である左端部には、伝動ケース部(例えばチェーンケース)19の上部が取り付けられている。フレームパイプ部16の長手方向他端部である右端部には、伝動ケース部19と離間対向する板状のブラケット部20の上部が取り付けられている。
【0025】
また、中央機体11は、中央耕耘体12の上方部を覆う湾曲板状の耕耘カバー部15を有し、この耕耘カバー部15の後端部に中央整地体13の上端部が蝶番等を介して回動可能に取り付けられている。
【0026】
中央耕耘体12は、伝動ケース部19の下部とブラケット部20の下部とにて回転可能に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸21を有している。回転軸21は、フレームパイプ部16内の伝動シャフト22および伝動ケース部19内のチェーン等にて構成された伝動手段から動力を受けて回転する。回転軸21には、この回転軸21とともに回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪23が取り付けられている。
【0027】
中央整地体13は、耕耘カバー部15の後端部に回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ中央耕耘体12の後方で整地作業をする中央整地部材(中央均平板)25を有している。中央整地部材25は、左右方向長手状の整地本体板部26と、この整地本体板部26の左右方向両端部に設けられた鉛直面状の左右の側板部27とを有している。
【0028】
そして、図4等にも示されるように、中央整地体13の中央整地部材25の各側板部27には、係合受部材30が取付具(例えばボルトおよびナット)28にて取り付けられている。つまり、中央整地体13の中央整地部材25の側面部に係合受部材30が固定的に設けられている。
【0029】
延長作業部3は、中央作業部2の中央機体11の左右方向両端部に回動中心軸線Aを中心として上下方向に回動可能に設けられた延長機体31と、この延長機体31に回転可能に設けられ中央作業部2側から動力を受けて回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体32と、延長機体31の耕耘カバー部35の後端部に左右方向の回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ延長耕耘体32の後方で整地作業をする延長整地体33とを備えている。
【0030】
延長機体31は、左右方向長手状で円筒状のフレームパイプ部36を有している。フレームパイプ部36の長手方向一端部である左端部には伝動ケース部(例えばチェーンケース)37の上部が取り付けられ、フレームパイプ部36の長手方向他端部である右端部には伝動ケース部37と離間板状のブラケット部38の上部が取り付けられている。
【0031】
また、延長機体31は、延長耕耘体32の上方部を覆う湾曲板状の耕耘カバー部35を有し、この耕耘カバー部35の後端部に延長整地体33の上端部が蝶番等を介して回動可能に取り付けられている。
【0032】
延長耕耘体32は、伝動ケース部37の下部とブラケット部38の下部とにて回転可能に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸41を有している。そして、左側の延長耕耘体32の回転軸41は、フレームパイプ部36内の伝動シャフト42および伝動ケース部37内のチェーン等にて構成された伝動手段から動力を受けて回転する。なお、中央側の伝動シャフト22の左端部には一方側クラッチ43が取り付けられ、左側の伝動シャフト42の右端部には一方側クラッチ43と解除可能に接続される他方側クラッチ44が取り付けられている。また、右側の延長耕耘体32の回転軸41は、フレームパイプ部16内の伝動シャフト45および伝動ケース部37内のチェーン等にて構成された伝動手段から動力を受けて回転する。なお、中央側の伝動シャフト45の右端部には一方側クラッチ46が取り付けられ、伝動ケース部37内の伝動シャフト(図示せず)の左端部には一方側クラッチ46と解除可能に接続される他方側クラッチ47が取り付けられている。また、左右の各回転軸41には、この回転軸41とともに回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪48が取り付けられている。
【0033】
延長整地体33は、耕耘カバー部35の後端部に回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ延長耕耘体32の後方で整地作業をする延長整地部材(延長均平板)55を有している。延長整地部材55は、左右方向長手状の整地本体板部56と、この整地本体板部56の左右方向両端部に設けられた鉛直面状の左右の側板部57とを有している。
【0034】
そして、図5および図6等にも示されるように、延長整地部材55の整地本体板部56の上面における内端部(中央作業部2側の端部)の近傍には、上方に向かって突出する鉛直面状の突出板部61が固着されている。突出板部61にはコ字枠状の支持部である支持板部62が固着され、この支持板部62の下面が整地本体板部56の上面に固着されている。
【0035】
支持板部62は、先端部が突出板部61に固着された前後1対の対向板63と、これら両対向板63の基端部同士を一体に連結する連結板64とにて構成されている。連結板64には、複数、例えば2つの円形状の挿通孔65が形成されている。また、突出板部61のうち支持板部62の連結板64と離間対向する部分には、複数、例えば2つの円形状の挿通孔66が連結板64の挿通孔65に対応して形成されている。
【0036】
そして、延長整地体33の延長整地部材55の板部61,62には、延長作業部3の展開作業状態時に中央整地体13の係合受部材30と係脱可能に係合する可動係合部材(ロックバー)70が左右方向(図示した移動方向)に移動可能に設けられ、この可動係合部材70は複数、例えば2つの付勢部材(例えば圧縮コイルばね)71によって内側方である係合受部材30側に向けて常時付勢されている。
【0037】
ここで、図5ないし図7に示されるように、延長整地体33の可動係合部材70は、例えば断面円形状の丸棒が2箇所で直角に折り曲げられたコ字状をなすものである。つまり、可動係合部材70は、例えば互いに離間対向する左右方向の丸棒状の前後1対の対向部である対向棒部73と、これら両対向棒部73の基端部同士を一体に連結する前後方向の丸棒状の係合部である係合棒部74とにて構成されている。
【0038】
対向棒部73は、支持板部62の挿通孔65および突出板部61の挿通孔66に挿通され、これら両板部61,62の両挿通孔65,66の周縁部にてスライド移動可能に支持されている。対向棒部73の先端部には、第1ピン用孔76が上下に貫通して形成され、この第1ピン用孔76に第1ピン81が脱着可能に取り付けられ、この第1ピン81が座金等の第1リング83に接触している。対向棒部73の中間部には、互いに等間隔をおいて左右方向に並ぶ複数の第2ピン用孔77が上下に貫通して形成され、これら複数の第2ピン用孔77の中から選択された一の第2ピン用孔77に第2ピン82が脱着可能に取り付けられ、この第2ピン82が座金等の第2リング84に接触している。
【0039】
また、対向棒部73の中間部の外周側にはコイル状の付勢部材71が圧縮弾性変形した状態で配設され、この付勢部材71の軸方向一端部が突出板部61に接触し、この付勢部材71の軸方向他端部が第2リング84に接触している。
【0040】
そして、可動係合部材70を第2リング84および第2ピン82を介して付勢する付勢部材71の付勢力の大きさを調整することが可能となっている。すなわち例えば、第2ピン82を取り付ける第2ピン用孔77の変更により、付勢部材71の付勢力の大きさが調整可能となっている。なお、例えば図示しないが、係合受部材30の中央整地部材25に対する取付位置の変更により、係合受部材30と連結板64との間の距離を変えて付勢部材71の付勢力の大きさを調整できるようにしてもよい。
【0041】
中央整地体13の係合受部材30は、例えば中央整地部材25の側板部27にこの側板部27と重なり合うように取り付けられた取付板部86と、この取付板部86に外側方(延長作業部3側)に向かって突出状に一体に設けられ互いに離間対向する断面略3角状の例えば上下2対(合計4つ)の係合受突部87とにて構成されている。そして、延長整地体33の可動係合部材70の係合棒部74が、延長作業部3の展開作業状態時において上下で対をなす両係合受突部87間に対して出入り可能となっている。
【0042】
また、4つの各係合受突部87は、可動係合部材70の移動方向(左右方向)に沿って位置する平面状の係合受面88と、可動係合部材70の移動方向に対して所定角度(例えば略60度)αをもって傾斜して位置する平面状の傾斜案内面89と、係合受面88と傾斜案内面89との間において可動係合部材70の移動方向に対して直交する方向に沿って位置する平面状の連絡面90とを有している。
【0043】
さらに、係合受面88と連絡面90とは、湾曲面91を介して滑らかに連続している。また、取付板部86の係合受突部87側の面のうち両係合受面88間の空間部92に臨んだ部分が平面状の当接受面93となっており、この当接受面93に係合棒部74が係合当接する。
【0044】
上側の係合受突部87の傾斜案内面89は、係合受突部87の突出方向に向かって徐々に下り傾斜する傾斜面状に形成され、一方、下側の係合受突部87の傾斜案内面89は、係合受突部87の突出方向に向かって徐々に上り傾斜する傾斜面状に形成されている。このため、上下で対をなす両傾斜案内面89は、略ハ字状に位置している。
【0045】
また、図7に示されるように、上下で対をなす両係合受面88間の距離は、等径状で断面円形状の係合棒部74の直径寸法dよりも若干大きい。また、係合受突部87の突出長さ寸法(左右方向長さ寸法)aは、係合棒部74の半径寸法rよりも大きくかつ係合棒部74の直径寸法dよりも小さい。このため、係合棒部74は、両係合受面88間(両係合受突部87間)に対して、入り易いが、出難くなっている。
【0046】
そして、可動係合部材70の係合棒部74は、中央整地体13および延長整地体33のうちの一方のみに衝撃力(外力)が加わった際には、係合受面88および湾曲面91によって順次押される形で、付勢部材71の付勢力に抗して両係合受面88間から一旦抜け出る。また、この抜け出た係合棒部74は、傾斜案内面89にて案内された後、付勢部材71の付勢力によって両係合受面88間に自動的に入り込む。
【0047】
なお、係合受部材30、可動係合部材70および付勢部材71等にて、中央整地体13と延長整地体33とを解除可能に連結する係脱手段である連結手段(ロック装置)99が構成されている。
【0048】
また、図2および図3に示されるように、農作業機1は、延長作業部3を中央作業部2に対して上下方向に回動させる油圧シリンダ等の回動駆動手段95を備えている。回動駆動手段95は、例えばシリンダ本体96と、このシリンダ本体96内に対して出入りするロッド97とを有している。
【0049】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0050】
例えば最大の作業幅で耕耘整地作業をする際には、左右両側の延長作業部3を中央作業部2に対して下方へ回動させて展開作業状態に切り換える。
【0051】
延長作業部3が展開作業状態に切り換えられると、中央作業部2のクラッチ43,46と延長作業部3のクラッチ44,47とが接続される。また、中央作業部2の中央整地体13の係合受部材30と延長作業部3の延長整地体33の可動係合部材70とが互いに係合し、中央整地体13と延長整地体33とが中央機体11および延長機体31に対して回動中心軸線Bを中心として一体となって上下回動可能な連結状態となる。すなわち、可動係合部材70の係合棒部74が、係合受部材30の両係合受突部87間つまり両係合受面88間の空間部92に嵌合するとともに、当接受面93に係合当接し、その結果、中央整地体13と延長整地体33とが自動的に連結される。
【0052】
そして、この状態で、トラクタの走行により農作業機1全体を前方に移動させると、中央作業部2の中央耕耘体12と延長作業部3の延長耕耘体32とにて耕耘作業が行われる。
【0053】
また、中央耕耘体12と延長耕耘体32との後方では、可動係合部材70と係合受部材30とが互いに係合して連結状態となっている中央整地体13と延長整地体33とにて整地作業が行われる。
【0054】
そして、このような耕耘整地作業時において、中央整地体13および延長整地体33のうちの一方のみ、すなわち例えば延長耕耘体32の耕耘爪48が圃場の土中にあった石等を延長整地部材55に向けて飛ばしたり或いは延長整地部材55を畦等にぶつけたりして、延長整地体33のみに所定値以上の大きな上向きの衝撃力が加わった場合には、図8(a)ないし(e)に示されるように、可動係合部材70が上側の係合受突部87の係合受面88および湾曲面91にて順次押されて付勢部材71の付勢力に抗して突出板部61および支持板部62に対してスライド移動することにより、係合棒部74が両係合受面88間の空間部92から一旦抜け出る。
【0055】
つまり、延長整地体33に作用した衝撃力によって可動係合部材70と係合受部材30との係合が自動的に解除され、延長整地体33が中央整地体13に対して上方へ回動(上動)してその衝撃力を逃がす。
【0056】
その後、図8(f)ないし(h)に示されるように、上動して衝撃力を逃がした延長整地体33は、自重で下方へ回動するため、可動係合部材70が上側の係合受突部87の傾斜案内面89にて押されて付勢部材71の付勢力に抗して突出板部61および支持板部62に対してスライド移動することにより、係合棒部74が両係合受面88間の空間部92に入り込むとともに当接受面93に当接し、もとの連結状態に自動的に復帰する。
【0057】
また同様に、例えば中央耕耘体12の耕耘爪23が圃場の土中にあった石等を中央整地部材25に向けて飛ばして中央整地体13のみに所定値以上の大きな上向きの衝撃力が加わった場合には、図9(a)ないし(e)に示されるように、可動係合部材70が下側の係合受突部87の係合受面88および湾曲面91にて順次押されて付勢部材71の付勢力に抗して突出板部61および支持板部62に対してスライド移動することにより、係合棒部74が両係合受面88間の空間部92から一旦抜け出る。
【0058】
つまり、中央整地体13に作用した衝撃力によって可動係合部材70と係合受部材30との係合が自動的に解除され、中央整地体13が延長整地体33に対して上方へ回動(上動)してその衝撃力を逃がす。
【0059】
その後、図9(f)ないし(h)に示されるように、上動して衝撃力を逃がした中央整地体13は、自重で下方へ回動するため、可動係合部材70が下側の係合受突部87の傾斜案内面89にて押されて付勢部材71の付勢力に抗して突出板部61および支持板部62に対してスライド移動することにより、係合棒部74が両係合受面88間の空間部92に入り込むとともに当接受面93に当接し、もとの連結状態に自動的に復帰する。
【0060】
そして、このような農作業機1によれば、延長作業部3の展開作業状態時において、中央整地体13や延長整地体33に対して比較的大きな石等に基づく衝撃力が作用した際に、可動係合部材70が付勢部材71の付勢力に抗して可動して可動係合部材70と係合受部材30との係合が解除されるため、例えば中央整地体13および延長整地体33の両方が上動して圃場面に広範囲にわたって段差が生じる等の不具合が発生することを防止でき、よって、適切な耕耘整地作業ができ、また、衝撃力を逃がすことにより損傷等を防止できる。
【0061】
また、係合受部材30の両係合受突部87の各々は可動係合部材70の移動方向に沿って位置する係合受面88および可動係合部材70の移動方向に対して傾斜して位置する傾斜案内面89を有し、中央整地体13および延長整地体33のうちの一方のみに衝撃力が加わった場合に、可動係合部材70が対応する係合受面88にて押されて付勢部材71の付勢力に抗して可動することにより、係合棒部74が両係合受突部87間から抜け出た後、再度、可動係合部材70が対応する傾斜案内面89にて押されて付勢部材71の付勢力に抗して可動することにより、係合棒部74が両係合受突部87間に入り込む構成であるため、より一層適切な耕耘整地作業ができるとともに、衝撃力を逃がすことにより損傷等を適切に防止できる。
【0062】
さらに、可動係合部材70の係合棒部74は丸棒状のものであり、係合受部材30の係合受突部87の突出長さ寸法aが係合棒部74の半径寸法rよりも大きくかつ係合棒部74の直径寸法dよりも小さい構成であるため、係合棒部74が両係合受突部87間に対して入り易いが出難くなっており、その結果、より一層適切な耕耘整地作業ができるとともに、衝撃力を逃がすことにより損傷等を適切に防止できる。
【0063】
また、付勢部材71の付勢力の大きさを調整することが可能となっているため、圃場の土質等に対応でき、例えば可動係合部材70と係合受部材30との係合が不用意に解除する不具合等を防止できる。
【0064】
なお、上記実施の形態では、中央整地体13が係合受部材30を有し、延長整地体33が可動係合部材70および付勢部材71を有した構成について説明したが、例えば延長整地体33が係合受部材30を有し、中央整地体13が可動係合部材70および付勢部材71を有した構成でもよい。
【0065】
また、農作業機1は、左右両側に延長作業部3を備えた3分割式の構成には限定されず、例えば左右いずれか片側のみに延長作業部3を備えた構成等でもよい。
【0066】
さらに、係合受部材30は、略ハ字状をなす上下の傾斜案内面89を有した構成には限定されず、例えば上側の傾斜案内面89のみを有した構成や、下側の傾斜案内面89のみを有した構成等でもよい。
【0067】
また、例えば係合受部材30を係合受突部87のみで構成し、この係合受突部87を中央整地部材25の側板部27に溶接等で固着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 農作業機
2 作業部である中央作業部
3 延長作業部
12 耕耘体である中央耕耘体
13 整地体である中央整地体
30 係合受部材
32 延長耕耘体
33 延長整地体
70 可動係合部材
71 付勢部材
74 係合部である係合棒部
87 係合受突部
88 係合受面
89 傾斜案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される作業部と、
この作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられる延長作業部とを具備し、
前記作業部は、
耕耘作業をする耕耘体と、
この耕耘体の後方で整地作業をする整地体とを備え、
前記延長作業部は、
耕耘作業をする延長耕耘体と、
この延長耕耘体の後方で整地作業をする延長整地体とを備え、
前記整地体および前記延長整地体のいずれか一方は、係合受部材を有し、
前記整地体および前記延長整地体のいずれか他方は、
前記延長作業部の展開作業状態時に前記係合受部材と係脱可能に係合する可動係合部材と、
この可動係合部材を前記係合受部材側に向けて付勢する付勢部材とを有し、
前記延長作業部の展開作業状態時において、前記可動係合部材が前記付勢部材の付勢力に抗して可動して前記可動係合部材と前記係合受部材との係合が解除される
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
係合受部材は、互いに離間対向する対をなす係合受突部を有し、
可動係合部材は、前記両係合受突部間に対して出入りする係合部を有し、
整地体および延長整地体のうちの一方のみに衝撃力が加わった場合に、前記可動係合部材が前記係合受突部にて押されて付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間から抜け出た後、再度、前記可動係合部材が前記係合受突部にて押されて前記付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間に入り込む
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
係合部と係合する両係合受突部の各々は、可動係合部材の移動方向に沿って位置する係合受面および前記可動係合部材の移動方向に対して傾斜して位置する傾斜案内面を有し、
整地体および延長整地体のうちの一方のみに衝撃力が加わった場合に、前記可動係合部材が前記係合受面にて押されて付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間から抜け出た後、再度、前記可動係合部材が前記傾斜案内面にて押されて前記付勢部材の付勢力に抗して可動することにより、前記係合部が前記両係合受突部間に入り込む
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
可動係合部材の係合部は、丸棒状のものであり、
係合受部材の係合受突部の突出長さ寸法が、前記係合部の半径寸法よりも大きくかつ前記係合部の直径寸法よりも小さい
ことを特徴とする請求項2または3記載の農作業機。
【請求項5】
付勢部材の付勢力の大きさを調整することが可能となっている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−85595(P2012−85595A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236442(P2010−236442)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】