説明

農業・園芸用資材

【課題】資源の循環を促進することによって地球環境の改善に貢献するとともに、安全性に配慮した農業・園芸用資材を提供する。
【解決手段】都市塵、汚泥、製紙スラッジなどの可燃物を燃焼処理した焼却残渣、または石炭灰の少なくとも1種をアルカリ水熱反応によりゼオライト化し、該ゼオライト化物にアントシアン類およびハーブ成分を含有させ得られる人工ゼオライトからなる農業・園芸用資材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業・園芸用資材に関する。
【背景技術】
【0002】
固形の肥料や殺虫剤は一般に支持体の色を反映している。しかし、園芸は観賞を主な目的とするため、使用する資材の色は重要であり、好みを選べることが望まれる。さらに、農業・園芸用資材の着色に使用される色素は、農・園芸作業中での健康への影響ならびに土壌および農作物への残留の見地から見て、安全性に優れた天然色素が好ましい。
【0003】
さて、人工ゼオライトの農業・園芸用資材への展開は資源循環の方策として適している。何故なら、ゼオライトは特性の一つである陽イオン交換能に着目して土壌改良剤に利用されていることからも明らかなように、植物の生育にとって好ましい素材である。
【0004】
農業・園芸は害虫との闘いでもある。害虫防除には主に殺虫、誘引捕獲、および忌避による方法がある。殺虫および誘引と比較して忌避による方法は、生態系の観点から環境への影響が小さい。特に、天然物由来の忌避剤は、健康への影響が小さく、最も安全であると考えられる。
【特許文献1】なし。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石炭灰は海面の埋め立てや陸上への投棄の限界量を超え、切実な社会問題を引き起こしてきた。近年は、石油価格高騰に対処した石炭需要の増加に伴って、発生量は増加の一方である。本発明の目的は、石炭灰を初め焼却残渣等の焼却灰等の産業廃棄物を有効利用し、さらに、安全性に優れた天然色素およびハーブ成分を用いて付加価値を付けることによって、資源の循環を促進することを企図した農業・園芸用資材の製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、アントシアン類を含む人工ゼオライトからなる農業・園芸用資材に関する。
【0007】
さらに本発明は、人工ゼオライトが都市塵、汚泥、製紙スラッジなどの可燃物を燃焼処理した焼却残渣、または石炭灰の少なくとも1種をアルカリ水熱反応によりゼオライト化した上記農業・園芸用資材に関する。
【0008】
さらに本発明は、人工ゼオライトがアントシアン類およびハーブ成分を含む人工ゼオライトからなる農業・園芸用資材に関する。
さらに本発明は、害虫忌避作用を持つハーブ成分からなる上記農業・園芸用資材に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、産業廃棄物を有効利用し、安全性に優れた植物成分を含ませて付加価値を付けた農業・園芸用資材を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用される人工ゼオライトは都市塵、汚泥、製紙スラッジなどの可燃物を燃焼処理した焼却残渣、または石炭灰の少なくとも1種をアルカリ水熱反応によりゼオライト化した多孔質の結晶である。人工ゼオライトの製造法は特開昭59−86687にも記されているように、二酸化珪素、酸化アルミニウムを主成分とする産業廃棄物、例えば、石炭灰のフライアッシュをアルカリ水中で加熱処理して得られる。ゼオライト結晶中のアルミニウム原子は酸素原子4個が配位しているために負帯電している。
【0011】
本発明に使用されるアントシアン類は、配糖体であるシアニン、デルフィニン、ペラルゴニン、アピゲニニン、ルテオリニン等のアントシアニン類、およびそれらのアグリコンであるシアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン、アピゲニニジン、ルテオリニジン等のアントシアニジン類である。アントシアン類はフラボノイド系ポリフェノールに属する天然色素で、かつフラビリウム塩構造の分子である。ポリフェノール構造に起因して、活性酸素のラジカル捕捉能が高い反面、酸化分解し易い。また、フラビリウム塩の非局在化した電子構造に起因して、長波長の光を吸収するため色相が深色的であり色素として有用である。しかし、オキソニウムカチオンの対イオンであるハロゲンイオンは容易にアルカリに中和され、それ故、フラビリウム塩分子中のオキソニウム塩は化学的に不安定である。
【0012】
本発明の構成体において、アントシアン分子中のフェノール性水酸基は酸性のためにプロトンとしてゼオライト分子中の酸素原子と比較的強く水素結合する。そのため、アントシアン単独と比較してラジカルからの攻撃およびそれに伴う酸化分解が生じ難くなる。さらに、アントシアン分子中のフラビリウムカチオン部位はゼオライトを構成するアルミニウムアニオンと静電気的に結合することによって安定化する。アントシアン類の安定化は担持物質がアルミニウム成分を含み、かつゼオライト化していなければ望めず、実験事実によっても裏付けられた。以上のように、アントシアン分子の耐候性はゼオライトとの化学的相互作用の寄与によって向上すると考えられ、安全性、深色の色相、および優れた耐候性の特徴は、天然色素のアントシアン類を人工ゼオライトと複合化することによって達成された。
【0013】
本発明に使用されるハーブ成分は、アルコール類としてシトロネロール、ゲラニオール、イソメントール、ネオメントール、カルバクロールなど、ケトン類としてメントン、イソメントン、カンファー、ピノカンフォン、イソピノカンフォンなど、アルデヒド類としてシトロネラールなどである。これらは、昆虫忌避作用を有するものとして、すでに知られている。また、これら化合物中のヒドロキシ基、オキソ基、ホルミル基はゼオライト細孔内部において、結晶を構成する酸素原子と静電的に結合していると考えられる。この結合はハーブ成分の酸化分解に対する安定化に寄与する一方、弱い結合力のために経時で開放され、ゼオライト細孔から外部へ向かって徐々に放出するものと考えられる。
本発明のアントシアン類およびハーブ成分を含む人工ゼオライトは、アントシアン類およびハーブ精油を初めとするハーブ成分含有物を水、エタノールなどのアルコール類、ケロセンなどの石油系溶剤等に溶解または分散したものを人工ゼオライトに含浸した後、溶剤を蒸発させて得られる。アントシアン類およびハーブ成分含有物をそれぞれ単独で水、エタノールなどのアルコール類、ケロセンなどの石油系溶剤等に溶解または分散したものを人工ゼオライトに含浸させた後に混合して溶剤を蒸発させてもよい。
【0014】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。例中、部は重量部を表す。
〔実施例1〕
石炭灰フライアッシュ100部、水酸化ナトリウム150部を水1000部に加えて撹拌しながら90℃、20時間処理した。水洗、85℃熱風乾燥、粉砕して人工ゼオライトを得た。
水1000部にシトロネロールやゼラニウムを主成分としたハーブ精油であるゼラニウム・エジプシャン(レプリコ・ジャパン社)0.3部、および3−デオキシアントシアニン類であるアピゲニニジンやルテオリニジンを主成分とした天然色素であるキリヤスブラウンK−12(キリヤ化学社)15部を溶解し、人工ゼオライト100部を撹拌しながら加えた。50℃、5時間加熱処理後、濾別、50℃減圧乾燥した。天然色素とハーブ成分を含む人工ゼオライトを粉砕して農業・園芸用資材とした。
【0015】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして人工ゼオライトを得た。
エタノール450部、水300部の混合溶剤にシトロネロールやゼラニウムを主成分としたハーブ精油であるローズ・オットー(レプリコ・ジャパン社)0.2部およびシアニジンアシルグルコシドおよびペオニジンアシルグルコシドを主成分とした天然色素であるキリヤスレッドPSP(キリヤ化学社)10部を溶解し、人工ゼオライト100部を撹拌しながら加えた。60℃、4時間加熱処理後、濾別、50℃減圧乾燥した。天然色素とハーブ成分を含む人工ゼオライトを粉砕して農業・園芸用資材とした。
【0016】
〔比較例〕
実施例1および2の人工ゼオライトの代わりに珪藻土を用いて、天然色素とハーブ成分を含む人工ゼオライトを粉砕して農業・園芸用資材とした。
【0017】
実施例1、2の本発明農業・園芸用資材を土壌表面に散布した畑地は散布しない対照地と比較し何れも3ヶ月間に亘り害虫(蚊)の飛来が減少し、かつ葉菜類(小松菜)の食害が減少した。資材の退色もほとんど認められなかった。一方、比較例では完全に退色して無彩色になった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントシアン類を含む人工ゼオライトからなる農業・園芸用資材。
【請求項2】
人工ゼオライトが、都市塵、汚泥、製紙スラッジなどの可燃物を燃焼処理した焼却残渣、または石炭灰の少なくとも1種をアルカリ水熱反応によりゼオライト化したものであることを特徴とする請求項1記載の農業・園芸用資材。
【請求項3】
ハーブ成分を含む請求項1または2記載の農業・園芸用資材。
【請求項4】
ハーブ成分が害虫忌避作用を持つ請求項3記載の農業・園芸用資材。


【公開番号】特開2009−142160(P2009−142160A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320276(P2007−320276)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】