説明

農業用シートの巻取構造及び農業用シートとその展張施工方法

【課題】波うちのない綺麗な巻き上げが可能となる農業用シートの巻取構造及び農業用シートを得、特に巻き上げ作業の向上、シート寿命の延長、開口作業時間の短縮、暖房性能の低下を防止する。
【解決手段】光透過性を有し、帯状シート材43の幅方向一方の側縁31をレール形枠材19に固定するとともに、幅方向他方の側縁33を巻取パイプ35に固定する農業用シート27の巻取構造であって、帯状シート材43の幅方向一方の側縁31には帯状シート材の長手方向に延在する第1の位置決めラインが設けられ、幅方向他方の側縁33には第1の位置決めラインと平行な第2の位置決めラインが設けられる。レール形枠材19は第1の位置決めラインに一致して固定され、巻取パイプ35は第2の位置決めラインに一致して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状シート材の幅方向一方の側縁がレール形枠材に固定されるとともに、幅方向他方の側縁が巻取パイプに固定される農業用シートの巻取構造及び農業用シートに関し、特に、換気開口部に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来より断面略半円形の屋根部を有した蒲鉾状の農業用ビニールハウスが知られている。この種の農業用ビニールハウスは、単棟型や連棟型として設置され、上記断面に直交方向の奥行きが100mを超えるものも多くある。一般に、農業用ビニールハウスでは、気象の推移によるハウス内の温度変化を適温に調節するために換気を行う(例えば特許文献1参照)。そのための一手段として、単棟ハウス両側面や連棟ハウス間の谷間側屋根面に、矩形状の換気開口部を奥行き方向に渡って形成し、この換気開口部に帯状シート材の巻取パイプを設置し、巻取パイプの回転により帯状シート材を巻き上げ下げして、換気開口部を開閉する。
【0003】
帯状シート材は、長手方向がハウス奥行き方向となる向きで換気開口部に配置され、幅方向一方の側縁(上縁)が、ハウスフレームに固定されるレール形枠材(例えば特許文献2参照)に固定され、幅方向他方の側縁(下縁)が、ハウス奥行き方向に渡って設けられた回転自在な巻取パイプに固定される(例えば特許文献3参照)。巻取パイプには巻上げ装置が連結され、巻上げ装置はハンドルにギアを噛ませた減速機構及びストッパーを備え、手動によるハンドル回転を減速機を介して巻取パイプに伝達する(例えば特許文献4参照)。
【0004】
この巻取構造によれば、換気開口部の閉鎖状態で、巻上げ装置のハンドルが回転されると、巻取パイプが帯状シート材の下縁を巻き上げながら上昇し、換気開口部を開放し、ハンドルを逆回転することにより、巻回した帯状シート材を繰り出しながら巻取パイプが下降して換気開口部を閉鎖することができた。
【特許文献1】実公平5−3007号公報
【特許文献2】実公昭57−44093号公報
【特許文献3】特開2002−354946号公報
【特許文献4】実登3081396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した換気開口部に設けられる帯状シート材は、巻取パイプにより巻き取り、繰り出されることから、擦れ等が生じ易く、一般的に3年以内で交換される。交換に際しては、既設の帯状シート材を撤去した後、新規帯状シート材の上縁をレール形枠材に固定し、下縁を巻取パイプに固定する。帯状シート材の幅寸法は75〜230cmであり、上縁及び下縁を目分量でレール形枠材及び巻取パイプに固定していた。このため、レール形枠材と巻取パイプとの離間距離が、ハウス奥行き方向でバラツキ、巻取パイプにて巻き上げされた際にシートを巻回した巻取パイプが上下方向に波うつことがあった。この波うちは、上縁及び下縁の固定作業が作業者の目分量であることが主要因であり、また奥行き方向が長尺であることで複数人による作業である場合に、各個人の判断でシート側縁からの距離(長さ)を決めてレール形枠材と巻取パイプとにそれぞれ固定していくため、側縁から均等な長さ(位置)で固定されず、すなわち上下固定間隔のシート幅が不均一となることに要因がある。
【0006】
このような波うちが生じると、シート開閉時にガタツキが発生し、特に巻き上げ作業性を低下させた。また、巻き取り量の不均衡から局所的な擦れ、すなわち、枠材や煽り防止ベルト等との擦れ(摩耗)が発生し、その結果シート寿命を短縮させることにもなった。さらに、シート閉鎖時(巻取パイプの下降時)に、巻取パイプに波うちが残れば、換気開口部が完全に閉鎖されず、暖房性能を低下させる原因ともなった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、波うちのない綺麗な巻き上げが可能となる農業用シートの巻取構造及び農業用シートを提供し、もって、特に取り付け作業性の向上、取付状態を整え略一定幅とし、シート寿命の延長、開口作業時間の短縮、暖房性能の低下防止を図ることを目的とする。また、この農業用シートを、展張し取り付けるにあたり、波うちなどを発生させることなく、農業用ハウスの奥行き方向に均等幅で取り付けることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の農業用シートの巻取構造は、光透過性を有する帯状シート材43の幅方向一方の側縁31がレール形枠材19に固定されるとともに、幅方向他方の側縁33が巻取パイプ35に固定される農業用シート27の巻取構造であって、
前記帯状シート材43の前記幅方向一方の側縁31には該帯状シート材43の長手方向に延在する第1の位置決めライン47が設けられ、前記幅方向他方の側縁33には該第1の位置決めライン47と平行な第2の位置決めライン49が設けられ、
前記レール形枠材19が前記第1の位置決めライン47に一致して固定され、前記巻取パイプ35が前記第2の位置決めライン49に一致して固定されたことを特徴とする。
【0009】
この農業用シートの巻取構造では、第1の位置決めライン47にレール形枠材19が固定されるとともに、これと平行な第2の位置決めライン49に巻取パイプ35が固定され、レール形枠材19と巻取パイプ35との間の帯状シート材43の距離W1が、レール形枠材19及び巻取パイプ35の全長に渡って等しくなる。したがって、巻取パイプ35の回転に伴う帯状シート材43の巻き込み量が全ての位置で等しくなり、波うちのない綺麗な巻き上げが可能となる。また、弛みや、巻きすぎの不均衡がなく、全長に渡って等量ずつが巻き上げられ、ガタツキのない良好な巻き上げ作業が可能となる。さらに、巻回済みの帯状シート材43を巻き戻す際、すなわち、帯状シート材43を繰り出しながら巻取パイプ35を下降させる際、同量が繰り出され、波うちのない水平な巻取パイプ35が下降されることで、展張完了時に換気開口部15が確実に閉鎖される。
【0010】
請求項2記載の農業用シートは、光透過性を有する帯状シート材43からなり、幅方向一方の側縁31がレール形枠材19に固定されるとともに、幅方向他方の側縁33が巻取パイプ35に固定される帯状の農業用シート27であって、
前記帯状シート材43の前記幅方向一方の側縁31には前記レール形枠材19と一致し該帯状シート材43の長手方向に延在する第1の位置決めライン47が設けられ、
前記幅方向他方の側縁33には前記巻取パイプ35に一致し該第1の位置決めライン47と平行な第2の位置決めライン49が設けられたことを特徴とする。
【0011】
この農業用シートでは、固定位置に第1、第2の位置決めライン47,49が設けられているので、従来の作業者の目分量による位置決めに比べ、レール形枠材19や巻取パイプ35に対する取付け位置が容易に視認可能となる。また、不均衡な取付状態とならず正確な固定位置が簡単に決定でき、シートの弛みや張りすぎの手直しが不要となり、作業性が良好となる。
【0012】
請求項3記載の農業用シートは、前記帯状シート材43の厚さが、0.2〜0.7mmに形成されていることを特徴とする。
【0013】
この農業用シート27では、厚みのあるシート材43で構成されることから、開閉が頻繁に行われる換気開口部13a,13b,15に用いるのに好適であり、開閉動作にて起こる擦れなどに対する耐久性が向上する。
【0014】
請求項4記載のシート展張施工方法は、請求項2又は3記載の農業用シートを用い、農業用ハウス100を構成する換気開口部13a,13b,15に展張し取り付けるシート展張施工方法であって、
巻回状態の前記農業用シート27を、前記換気開口部13a,13b,15にて巻き戻しながら前記農業用ハウス100の奥行き方向に展張し載置する工程と、
レール形枠材19のシート定着溝19cの一方の縁部に、前記第1の位置決めライン47を一致させ、農業用シート27の一方の側縁31を、前記シート定着溝19c内に入れるとともに、該シート上から係止線条19bを用いて該係止線条19bを前記シート27とともに溝19c内へ嵌め入れる工程と、
巻取パイプ35の下面から他方の側縁33を巻き付け、該他方の側縁33に設けられる第2の位置決めライン49を該巻取パイプ35の外側面に沿わせて位置決めし、巻き付けられた他方の側縁33を、C字状固定具37を嵌合して、挟着固定する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0015】
このシート展張施工方法では、巻回状態の農業用シート27を農業用ハウス100の屋根部分などにて巻き戻し、展開して換気開口部13a,13b,15に載置し、一方の側縁31をレール形枠材19のシート定着溝19cに係止線条19bにて取り付け、また、他方の側縁33を巻取パイプ35にC字状固定具37にて取り付ける。それぞれの側縁31,33を取り付ける際に、各側縁に設けられた位置決めライン47,49にて、位置を確認しながら作業を行えることで、レール形枠材19と巻取パイプ35との間隔距離は、一定に保たれ、シートが波うち状に取り付けられることがなくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載の農業用シートの巻取構造によれば、帯状シート材の幅方向一方の側縁には長手方向に延在する第1の位置決めラインが設けられ、幅方向他方の側縁には第1の位置決めラインと平行な第2の位置決めラインが設けられ、レール形枠材が第1の位置決めラインに一致して固定され、巻取パイプが第2の位置決めラインに一致して固定されるので、換気開口部でのシート巻き上げ時に、波うちのない綺麗な巻き上げが可能となり、開閉動作がスムースとなって、農業用シートの寿命を延ばすことができる。また、特に巻き上げ作業が良好となり、開口作業時間を短縮することができる。さらに、展張時に換気開口部を確実に閉鎖でき、暖房性能の低下を防止することができる。また、開閉がスムースとなり波うちなども発生しないことから、温湿度センサ等を備えた自動開閉制御装置を備えた農業用ハウス、すなわち、前記巻取パイプが外気の変化等に応じて回転駆動し、シートの巻き取り,巻き戻しを行って、開閉を自動的に行う装置にも適応可能となる。
【0017】
請求項2記載の農業用シートによれば、帯状シート材の幅方向一方の側縁にはレール形枠材と一致し長手方向に延在する第1の位置決めラインが設けられ、幅方向他方の側縁には巻取パイプに一致し第1の位置決めラインと平行な第2の位置決めラインが設けられたので、レール形枠材や巻取パイプに対する取付け時に固定位置を容易に視認でき、波うちや蛇行のない真っ直ぐな取付けが可能となる。この結果、ズレのない高精度な展張が行える。また、固定位置が簡単に決定でき、作業性が良好となるので、シート交換の作業時間を短縮することができる。さらに、展張する長さ(奥行き)の長い農業用ハウスなどでのシート展張作業の際に、複数人での作業を行う場合などにも、各人の目分量などで作業を進めてしまうことなく、取付位置がずれずに精度の高い展張作業を行うことができる。
【0018】
請求項3記載の農業用シートによれば、帯状シート材の厚さを、0.2〜0.7mmとすることで、従来に比べ、厚みのあるシート材で構成されることとなり、開閉が頻繁に行われる換気開口部に用いるのに好適であり、開閉動作にて起こる擦れなどに対する耐久性が向上する。
【0019】
請求項4記載のシート展張施工方法によれば、巻回状態の農業用シートを巻き戻し、展開して換気開口部に載置し、一方の側縁をレール形枠材のシート定着溝に係止線条にて取り付け、また、他方の側縁を巻取パイプにC字状固定具にて取り付ける手順となり、それぞれの側縁を取り付ける際に、各側縁に設けられた位置決めラインにて、位置を確認しながら作業を行えることで、レール形枠材と巻取パイプとの間隔距離は、一定に保たれ、換気開口部のシートが波うち状に取り付けられることがなくなる。各位置決めラインを有することで、展張作業時には、作業する者の目分量などではなくなり、正確な位置で取り付けることが可能となり、作業者が複数であっても、略均一な展張状態となり、作業効率とともにその展張品質も向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る農業用シートの巻取構造及び農業用シートの好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る巻取構造を備えた農業用ビニールハウスの斜視図である。
農業用ビニールハウス100は、支柱パイプ1a、アーチパイプ1b、桁パイプ1c、棟木パイプ1d等の骨組み1に塩化ビニル系樹脂フィルム等からなるシート材3を展張したものであり、例えば断面略半円形の屋根部11を有した蒲鉾状に形成され、単棟型や図例のように複数ハウスが連棟型として設置される。
【0021】
単棟ハウス両側面や連棟ハウス間の谷間側屋根面には、矩形状の換気開口部13a,13b,15が奥行き方向に渡って形成され、この換気開口部13a,13b,15は本実施の形態に係る巻取構造を備えている。なお、換気開口部13aは肩部開口を示し、換気開口部13bは壁部開口を示す。単棟ハウス両側面の換気開口部13a,13bに設けられる巻取構造と、谷間側屋根面の換気開口部15に設けられる巻取構造は基本的に同一構成であるので、以下では谷間側屋根面の換気開口部15に設けられる巻取構造を例に説明する。
【0022】
図2は図1に示した谷間側屋根面の換気開口部の拡大斜視図である。
連棟ハウス間の谷間には谷樋17が設けられ、谷樋17はアーチパイプ1bの下端を接続する。アーチパイプ1bには谷樋17と平行に離間したレール形枠材19が固定され、このレール形枠材19と谷樋17の間に換気開口部15が形成されている。谷樋17の長手方向には所定間隔で複数の紐掛け21が設けられる。レール形枠材19の長手方向には所定間隔で複数の紐掛けフック23が設けられる。紐掛け21と紐掛けフック23には煽り防止ベルト25がジクザグに張架されている。この煽り防止ベルト25とアーチパイプ1bの間隙は本実施の形態に係る農業用シート27の展張スペースとなる。
【0023】
図3はレール形枠材部分におけるシート固定構造の斜視図、図4は図3の分解断面図である。
農業用シート27は、光透過性を有する軟質塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン系樹脂の帯状シート材43からなり、幅方向一方の側縁(上縁)31がレール形枠材19に固定される。レール形枠材19は、一対の溝フレーム19a,19aと、バネ性を有する係止線条19bからなり、屋根部11のシート材3と農業用シート27の上縁31とを収容した各シート定着溝19cに係止線条19bをそれぞれ挿入することで、シート材3及び農業用シート27の上縁31を固定する。なお、その他の形状のレール形枠材としては、シート定着溝を1つで構成し、このシート定着溝が深く形成されて、係止線条を2本とシート材を2枚、収容可能とし、屋根部のシート材・一方の係止線条・農業用シート・係止線条、の順に挿入し、すなわちシート材と農業用シートとが重なって、それぞれを固定することとしてもよい。
【0024】
図5は巻上げ装置近傍の斜視図、図6は巻取パイプ部分におけるシート固定構造の分解断面図である。
農業用シート27は、幅方向他方の側縁(下縁)33が巻取パイプ35に固定される。下縁33は、巻取パイプ35に巻かれた上にバネ性を有する断面C字状の固定具37が嵌合されることで巻取パイプ35に挟着固定される。なお、下縁33を巻回した巻取パイプ35には、さらに不図示のシート回転止め具が嵌合されてもよい。
【0025】
巻取パイプ35の一端には巻上げ装置39が接続され、巻上げ装置39はハンドル(手回し棒)39aに不図示のギアを噛ませた減速機構及びストッパーを備え、手動によるハンドル回転を減速機を介して巻取パイプ35に伝達する。
【0026】
図7は農業用シートが巻回された原反の斜視図、図8は図7に示した農業用シートの位置合わせ状況を表した斜視図である。
農業用シート27は、幅W方向の軸41に帯状シート材43が原反45として巻回される。帯状シート材43の上縁31には、帯状シート材43の長手方向に延在する第1の位置決めライン47が設けられ、下縁33には第1の位置決めライン47と平行な第2の位置決めライン49が設けられている。つまり、農業用シート27は、帯状シート材43の両側縁に第1の位置決めライン47と第2の位置決めライン49を設けてなる。なお、これら位置決めライン47,49は、シート材成型直後に印刷などの手段で設けられ、或いは、筆記具等による線引きなどの手段で形成され、その後、軸41に巻き取られて製品化されるものであり、また、この巻取長は、必要な長さに予め切断されるなど、展張作業現場にてシート材43への加工などを必要としない状態とされて工場より出荷される。
【0027】
帯状シート材43は、厚さが0.2〜0.7mm、好ましくは0.25〜0.55mm、本実施の形態では、厚さ0.4mm、幅Wが100〜150cmで形成される。第1の位置決めライン47、第2の位置決めライン49は、帯状シート材43の側端から5〜10cm、例えば6cm程度の位置に設けられる。したがって、第1の位置決めライン47と第2の位置決めライン49に挟まれた帯状シート材43の中央領域は等幅W1となる。本巻取構造では、レール形枠材19がこの第1の位置決めライン47に一致して固定され、巻取パイプ35がこの第2の位置決めライン49に一致して固定される。
【0028】
第1の位置決めライン47と第2の位置決めライン49は、印刷によって設けることができる。帯状シート材43は光透過性を有しているので、シート表裏面の一方に印刷すれば、他方の面からの視認が可能となるが、シート両面に設けられることがより好ましい。第1の位置決めライン47と第2の位置決めライン49は、直線で印刷してもよく、図例のように、網目模様の印刷としても被着体への重ね合わせ時に、被着体が透けて見え位置決め性を良好にできる。
【0029】
また、図8に示すように、第1の位置決めライン47の幅W2は、レール形枠材19のシート定着溝19cの溝開口幅Waより小さく、好ましくはレール形枠材19の開口縁の一方側に沿う細幅なラインとされる。また、第2の位置決めライン49の幅W3は、巻取パイプ35の直径Dより小さく、第1の位置決めライン47と略同幅とされる。これにより、第1の位置決めライン47がレール形枠材19の溝開口側縁上に配置可能となるとともに、第2の位置決めライン49が平面視で巻取パイプ35の外周面に沿う縁部分、例えば巻取パイプ35を下から巻き、端縁が重なる位置に配置可能となり、レール形枠材19と巻取パイプ35に対する目視による位置合わせを長尺な全長に渡って容易にすることができ、複数人での作業においても、略均一な位置、略均一な展張幅で取り付けが行える。この他、位置決めライン47,49には、エンボス、複数穿孔を共に施しても良く、透過して取付位置の確認を行いながら取り付け作業を進められる。
【0030】
この農業用シート27の巻取構造では、第1の位置決めライン47にレール形枠材19が固定されるとともに、第2の位置決めライン49に巻取パイプ35が固定され、レール形枠材19と巻取パイプ35との間の帯状シート材43の距離W1が、レール形枠材19及び巻取パイプ35の全長に渡って等しくなる。したがって、巻取パイプ35の回転に伴う帯状シート材43の巻き込み量が全ての位置で等しくなり、波うちのない綺麗な巻き上げが可能となる。また、弛みや、巻きすぎの不均衡がなく、全長に渡って等量ずつが巻き上げられ、ガタツキのない良好な巻き上げ作業が可能となる。さらに、巻回済みの帯状シート材43を巻き戻す際、すなわち、帯状シート材43を繰り出しながら巻取パイプ35を下降させる際、同量が繰り出され、波うちのない水平な巻取パイプ35が下降されることで、展張完了時に換気開口部15が確実に閉鎖される。
【0031】
農業用シート27では、レール形枠材19と巻取パイプ35の固定位置に第1、第2の位置決めライン47,49が設けられているので、従来の目分量による位置決めに比べ、レール形枠材19や巻取パイプ35に対する取付け位置が容易に視認可能となる。正確な固定位置が簡単に決定でき、シートの弛みや張りすぎの手直しが不要となり、作業性が良好となる。
【0032】
したがって、この農業用シートの巻取構造によれば、開閉動作がスムースとなって、農業用シート27の寿命を延ばすことができる。開口作業時間を短縮することができる。さらに、展張時に換気開口部15を確実に閉鎖できるので、暖房性能の低下を防止することができる。
【0033】
農業用シート27によれば、波うちや蛇行のない真っ直ぐな取付けが可能となり、ズレのない高精度な展張が行える。また、作業性が良好となるので、シート交換の作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る巻取構造を備えた農業用ビニールハウスの斜視図である。
【図2】図1に示した谷間側屋根面の換気開口部の拡大斜視図である。
【図3】レール形枠材部分におけるシート固定構造の斜視図である。
【図4】図3の分解断面図である。
【図5】巻上げ装置近傍の斜視図である。
【図6】巻取パイプ部分におけるシート固定構造の分解断面図である。
【図7】農業用シートが巻回された原反の斜視図である。
【図8】図7に示した農業用シートの位置合わせ状況を表した斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
13a,13b,15…換気開口部
19…レール形枠材
19c…シート定着溝
27…農業用シート
31…幅方向一方の側縁(上縁)
33…幅方向他方の側縁(下縁)
35…巻取パイプ
43…帯状シート材
47…第1の位置決めライン
49…第2の位置決めライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する帯状シート材の幅方向一方の側縁がレール形枠材に固定されるとともに、幅方向他方の側縁が巻取パイプに固定される農業用シートの巻取構造であって、
前記帯状シート材の前記幅方向一方の側縁には該帯状シート材の長手方向に延在する第1の位置決めラインが設けられ、前記幅方向他方の側縁には該第1の位置決めラインと平行な第2の位置決めラインが設けられ、
前記レール形枠材が前記第1の位置決めラインに一致して固定され、前記巻取パイプが前記第2の位置決めラインに一致して固定されたことを特徴とする農業用シートの巻取構造。
【請求項2】
光透過性を有する帯状シート材からなり、幅方向一方の側縁がレール形枠材に固定されるとともに、幅方向他方の側縁が巻取パイプに固定される帯状の農業用シートであって、
前記帯状シート材の前記幅方向一方の側縁には前記レール形枠材と一致し該帯状シート材の長手方向に延在する第1の位置決めラインが設けられ、
前記幅方向他方の側縁には前記巻取パイプに一致し該第1の位置決めラインと平行な第2の位置決めラインが設けられたことを特徴とする農業用シート。
【請求項3】
前記帯状シート材の厚さが、0.2〜0.7mmに形成されていることを特長とする請求項2記載の農業用シート。
【請求項4】
請求項2又は3記載の農業用シートを用い、農業用ハウスを構成する換気開口部に展張し取り付けるシート展張施工方法であって、
巻回状態の前記農業用シートを、前記換気開口部にて巻き戻しながら前記農業用ハウスの奥行き方向に展張し載置する工程と、
レール形枠材のシート定着溝の一方の縁部に、前記第1の位置決めラインを一致させ、農業用シートの一方の側縁を、前記シート定着溝内に入れるとともに、該シート上から係止線条を用いて該係止線条を前記シートとともに溝内へ嵌め入れる工程と、
巻取パイプの下面から他方の側縁を巻き付け、該他方の側縁に設けられる第2の位置決めラインを該巻取パイプの外側面に沿わせて位置決めし、巻き付けられた他方の側縁を、C字状固定具を嵌合して、挟着固定する工程と、
を具備することを特徴とするシート展張施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−142197(P2009−142197A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322388(P2007−322388)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(500222711)タフニック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】