説明

農業用バイオマット工法

【課題】 畝の表面に農業用バイオマットを効率よく張る農業用バイオマット工法を提供する。
【解決手段】 トラクターによって材料タンクと材料吹き付け手段を運搬しながら、農業用バイオマットの材料を材料タンクから材料吹き付け手段に供給して、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段から畝の表面に吹き付けて、畝の表面に農業用バイオマットを張る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用バイオマットを畝に張る工法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の農業用マルチ資材が大きな役割を果たしている。そのようなマルチ資材の1つとしてビニールマルチが多用されている。
【0003】
ビニールマルチは、原材料及びその形態によって、農業用、工業用、土木用および日常生活用等があり、その大部分は塩化ビニール製品である。
【0004】
最近では、マルチ資材として土壌中で分解消失するシート状の生分解プラスチック製品も開発されつつある。
【0005】
農業用マットは、天然植物繊維を原料にしたシート状のマルチ資材で、透水性と通気性がビニールマルチより優れている。
【0006】
農業用バイオマットは、作物種に応じて、種々の有機質肥料(堆肥、腐葉土等)、培抗微生物、炭(バイオリアクター)などを混合してシート状に作られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビニールマルチは、雑草防除と地温を高めるだけの単純な機能を有するだけで、かつ通気性と透水性が期待できないため、作物生育と土壌環境に悪影響を及ぼす。
【0008】
また、ビニールマルチは、作物収穫後の片付け作業に労力がかかり、加えて焼却で発生するダイオキシンによる環境汚染も大きな問題となっている。
【0009】
マルチ資材の生分解プラスチック製品は、透水性と通気性が十分でない欠点を有する。
【0010】
農業用マットは、完全分解に約3年間を要し、茶のような多年生作物の雑草防止には適合するが、1年生の作物には適合しない。
【0011】
従来のマルチ資材は、すべて予めシート状に形成されるものであり、農業生産現場でシート状のマルチ資材を広げて畝の表面に張る。
【0012】
本発明の目的は、畝の表面に農業用バイオマットを効率よく張る農業用バイオマット工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0014】
(1)農業用バイオマットの材料を畝に吹きつけて、畝の表面に農業用バイオマットを張ることを特徴とする農業用バイオマット工法。
【0015】
(2)トラクターによって材料タンクと材料吹き付け手段を運搬しながら、農業用バイオマットの材料を材料タンクから材料吹き付け手段に供給して、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段から畝の表面に吹き付けて、畝の表面に農業用バイオマットを張ることを特徴とする農業用バイオマット工法。
【0016】
(3)トラクターと材料吹き付け手段との間にロータリーを配置して、畝をロータリーで整形した直後に、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段から畝の表面に吹き付けることを特徴とする前述の農業用バイオマット工法。
【0017】
(4)材料吹き付け手段がスクリューを有し、材料タンクから材料吹き付け手段に供給されてきた材料をスクリューでかき混ぜてから吹き付けることを特徴とする前述の農業用バイオマット工法。
【0018】
(5)材料吹き付け手段がヒータを有し、材料タンクから送られてきた材料をヒータで温めることを特徴とする前述の農業用バイオマット工法。
【0019】
(6)材料タンクがヒータを有し、ヒータによって材料タンク内で材料を温めることを特徴とする前述の農業用バイオマット工法。
【0020】
(7)吹き付け直後に、農業用バイオマットと畝を一緒に整形器具で押さえて整形することを特徴とする前述の農業用バイオマット工法。
【0021】
(8)トラクターとロータリーの間にコンプレッサーを配置し、コンプレッサーから高圧エアを吹き付け手段に送ることを特徴とする前述の農業用バイオマット工法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の1つの実施例による農業用バイオマット工法の実施状況を示す説明図。
【図2】農業用バイオマット工法の実施に用いる材料吹き付け手段および整形器具と畝との関係を示す概略側面図。
【図3】図2に示す材料吹き付け手段および整形器具と畝との関係を示す概略背面図。
【図4】材料吹き付け手段の一例を示す概略説明図。
【図5】材料吹き付け手段の他の例を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明においては、農業用バイオマットの材料(好ましくは粉状の材料と粘着性の付着物との混合物)を畝に吹きつけて、畝の表面に農業用バイオマット(幕)を張る。本発明に用いる農業用バイオマットの材料は、予めシート状に形成されているものではない。
【0024】
好ましくは、トラクターによって材料タンクと材料吹き付け手段を運搬しながら、農業用バイオマットの材料を材料タンクから材料吹き付け手段に供給して、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段から畝の表面に吹き付けて、畝の表面に農業用バイオマットを張る。
【0025】
さらに好ましくは、トラクターと材料吹き付け手段との間にロータリーを配置して、畝をロータリーで整形した直後に、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段から畝の表面に吹き付ける。
【0026】
材料吹き付け手段がスクリューとヒータを有し、材料タンクから材料吹き付け手段に供給されてきた材料をヒータで温め、かつ、スクリューでかき混ぜてから、材料を畝の表面に吹き付けることが好ましい。
【0027】
材料の吹き付け直後に、畝上に張られた農業用バイオマットと畝を一緒に整形器具で上から押さえて整形するのが好ましい。
【0028】
作業効率を向上させるために、トラクターとロータリーの間にコンプレッサーを配置し、コンプレッサーから高圧エアを吹き付け手段に送ることが好ましい。
【0029】
農業用バイオマットの材料は、作物種に応じて、種々の有機質肥料(堆肥、腐葉土等)、培抗微生物、炭(バイオリアクター)、灰、粘着性のある付着剤などを混合して作られる。灰にはカルシウム(石灰)が多く含まれているので除草効果が期待できる。付着剤の例として、ふのり、グルコマンナン、コンニャク、さつまいも、米がある。米の粉が使いやすく、柔軟性もあるが、コスト高になりやすい。グルコマンナンは、コスト面で有利である。農業用バイオマットは、好ましくは、灰及び/又は堆肥を微粉化し、それらに粘着性をもつ付着剤を配合し、エアで畝に吹き付けて形成する。
【0030】
農業用バイオマットは、畝に吹き付けられたあと、土中の水分と反応して固まり、約3ヶ月後に分解するようにするのが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を説明する。
【0032】
図1において、10はトラクターを示す。このトラクター10の後方に、材料タンク12と材料吹き付け手段14が設けられる。材料タンク12の上部は開口しており、下方の底部に供給口12aが形成されている。その材料タンク12の下方の供給口12aに接続されているのが、材料吹き付け手段14である。この材料吹き付け手段14の具体例は後述する。
【0033】
トラクター10によって材料タンク12と材料吹き付け手段14を前方に運搬しながら、農業用バイオマットの材料を材料タンク12から材料吹き付け手段14に供給して、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段14から畝24の表面に吹き付けて、畝24の表面に農業用バイオマット30を張る。
【0034】
トラクター10と材料吹き付け手段14や材料タンク12との間にロータリー16が配置されていて、畝24を整形した直後に、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段14から畝24の表面に吹き付ける。
【0035】
図4に示すように、材料吹き付け手段14は、細長い圧力ケーシング14aと、その中に配置されたスクリュー14bと、底部に形成された複数のノズル14cと、ヒータ14dを有し、材料タンクからスクリューに供給されてきた材料をヒータ14dで温めるとともにスクリュー14bでかき混ぜてからノズル14を介して吹き付ける。
【0036】
図5は、材料吹き付け手段14の変形例を示す。図5において、材料吹き付け手段14は、細長い圧力ケーシング14aと、その中に配置されたスクリュー14bと、底部に形成された穴14fと、ヒータ14dを有し、材料タンクからスクリューに供給されてきた材料をヒータ14dで温めるとともにスクリュー14bでかき混ぜてから穴14fから吹きつける。
【0037】
図2〜3に示すように、吹き付け直後に、農業用バイオマット30と畝24を一緒に整形器具26(例えばレンコンローラ)で押さえて整形する。
【0038】
トラクター10とロータリー16の間にコンプレッサー18と油圧ポンプ20を配置し、コンプレッサー18から高圧エアを材料吹き付け手段14、とくにスクリュー14bを経てノズル14c又は穴14fに送る。
【0039】
ロータリー16は、農機具として一般に広く使用されている機種を使用するものとし、トラクター10の動力をユニバーサルジョイント22を介してロータリー16に伝達して、ロータリー16を回し、かつ、ユニバーサルジョイント22の途中で油圧タンク20を作動する。ロータリー16には土の抵抗が生じるので、従来と同様にユニバーサルジョイント22でロータリー16を回すのが好ましい。油圧タンク20はコンプレッサー18を作動する。
【0040】
材料タンク12から入って来た材料を材料吹き付け手段14に設置したヒータ、好ましくは熱線又はニクロム線形式のヒータ14dで温め、コンプレッサー18で圧力をかけて材料を噴霧状に吹付ける。
【0041】
吹付け直後に、レンコンローラーなどの整形器具26で押える。吹付けた直後のマルチ材料は、熱いので、土の水分で冷却し固める。
【0042】
好ましくは、材料(粉)の成分に変化が生じないように前処理しておく。例えば、灰を一度熱処理しておく。とくに、良くなじんで、溶け込むようにする。
【0043】
本発明は、前述の実施例に限定されない。例えば、前述のヒータ14dに加えて、又は、ヒータ14dの代りに、材料タンク12の供給口12aにヒータ(図示せず)を設けて、材料タンク12の供給口12aで、材料を高温に熱することもできる。
【0044】
また、ロータリー16に過大な負荷をかけないように、ユニバーサルジョイント22のシャフトを真すぐにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用バイオマットの材料を畝に吹きつけて、畝の表面に農業用バイオマットを張ることを特徴とする農業用バイオマット工法。
【請求項2】
トラクターによって材料タンクと材料吹き付け手段を運搬しながら、農業用バイオマットの材料を材料タンクから材料吹き付け手段に供給して、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段から畝の表面に吹き付けて、畝の表面に農業用バイオマットを張ることを特徴とする農業用バイオマット工法。
【請求項3】
トラクターと材料吹き付け手段との間にロータリーを配置して、畝をロータリーで整形した直後に、農業用バイオマットの材料を材料吹き付け手段から畝の表面に吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の農業用バイオマット工法。
【請求項4】
材料吹き付け手段がスクリューを有し、材料タンクから材料吹き付け手段に供給されてきた材料をスクリューでかき混ぜてから吹き付けることを特徴とする請求項2又は3に記載の農業用バイオマット工法。
【請求項5】
材料吹き付け手段がヒータを有し、材料タンクから送られてきた材料をヒータで温めることを特徴とする請求項2又は3に記載の農業用バイオマット工法。
【請求項6】
材料タンクがヒータを有し、ヒータによって材料タンク内で材料を温めることを特徴とする請求項2又は3に記載の農業用バイオマット工法。
【請求項7】
吹き付け直後に、農業用バイオマットと畝を一緒に整形器具で押さえて整形することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の農業用バイオマット工法。
【請求項8】
トラクターとロータリーの間にコンプレッサーを配置し、コンプレッサーから高圧エアを吹き付け手段に送ることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の農業用バイオマット工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−193791(P2010−193791A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42636(P2009−42636)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(593132629)株式会社ウエストワーク (2)
【Fターム(参考)】