説明

農用作業機

【課題】従来より、ツールバーに接地輪と作業装置とを取り付け、その駆動軸に接地輪からの回転動力を伝達する農用作業機では、低畦作業用の接地輪で高畦作業を行うと、接地輪が十分に下降できずに接地面から浮いて接地性が悪化する、という問題があった。
【解決手段】ツールバー15に接地輪33を支持する支持体110は、下端部に軸支する該接地輪33をツールバー15より所定の下限位置まで下方付勢する押圧機構116に加え、該接地輪33の所定上方位置で該接地輪33からの回転動力を取り出す動力取出部119を備える第一支持体111と、該動力取出部119をツールバー15より上下一方に変位支持する第二支持体112とから構成し、該第二支持体112の少なくとも一部の上下反転操作により、動力取出部119をツールバー15より上下他方に変位支持して接地輪33の高さを変更可能とする反転変位構造99を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールバーに接地輪と作業装置とを取り付け、該作業装置の駆動軸に前記接地輪からの回転動力を伝達する農用作業機に関し、特に、接地性に優れた、接地輪の高さ調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、施肥播種機等の農用作業機においては、トラクタ等の走行車両の後部に、ロータリ耕耘装置等を介して施肥装置・播種装置等の作業装置を装着し、圃場を走行しながら施肥・播種等の各種農作業を行っているが、その際の前記作業装置の駆動方式として、接地輪駆動タイプが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
該接地輪駆動タイプとは、接地輪を圃場面に接地させた状態で走らせ、その際に発生する回転動力を前記作業装置に伝達し、該作業装置に設けた肥料・種子等の繰出部を駆動させるものであり、該繰出部からの繰出速度が走行速度の変化に追従することから、該走行速度変化に伴う肥料・種子等の散布量・投下間隔のばらつきが抑制されている。
更に、該接地輪は、作業装置を取り付けたツールバーに支持体を介して支持され、該支持体に設けた押圧機構により、圃場に向かって下方に付勢された状態で上下揺動されることから、接地輪の接地力増大による接地性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−298028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記押圧機構はツールバーを基準とした所定の下限位置までしか接地輪の高さを変更できない構成となっているため、例えば、低畦作業用の接地輪で高畦作業を行うと、接地輪が高畦間の溝等の接地面から浮いた状態となり、接地輪の接地力が減少して接地性が悪化し、作業装置に安定した回転動力を伝達できず、前述した肥料・種子等の散布量・投下間隔のばらつきが大きくなり、作物の収穫量・品質が悪化する、という問題があった。
更に、前記支持体は全体が一体的に構成されているため、接地輪が接地面から浮かないようにするには、畦の高さが変わる毎に支持体を丸ごと変える必要があり、部品コストが増加すると共に、部品の共有化ができずに在庫管理が複雑となって、管理コストの増加やメンテナンス性の悪化を招く、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1により、ツールバーに接地輪と作業装置とを取り付け、該作業装置の駆動軸に前記接地輪からの回転動力を伝達する農用作業機において、前記ツールバーに接地輪を支持する支持体は、下端部に軸支する前記接地輪をツールバーより所定の下限位置まで下方付勢する押圧機構に加え、前記接地輪の所定上方位置で該接地輪からの回転動力を取り出す動力取出部を備える第一支持体と、該動力取出部を前記ツールバーより上下一方に変位支持する第二支持体とから構成し、該第二支持体の少なくとも一部の上下反転操作により、前記動力取出部をツールバーより上下他方に変位支持して接地輪の高さを変更可能とする反転変位構造を設けたものである。
請求項2により、前記動力取出部から取り出した回転動力を駆動軸まで伝達する動力伝達手段を設けたものである。
請求項3により、前記反転変位構造は、前記動力取出部をツールバーより下方に変位支持して接地輪の高さを下方に変更するものである。
請求項4により、前記第二支持体は、前記ツールバーに着脱可能に固定される基部に、前記ツールバーより上下一方に突出する突出部を連結して成る変位部材と、該突出部に着脱可能に連結されるフレーム部材とから構成し、該フレーム部材に前記第一支持体の動力取出部を支持するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、支持体の一部の上下反転操作だけで、支持体の大部分の構成はそのままで、ツールバーを基準にして上下いずれか一方に動力取出部を変位支持し、接地輪の高さを容易に変更することができる。これにより、畦の高さにかかわらず、畦間の溝等の接地面に接地輪を適正に接地させることができ、接地輪の接地力が増加して接地性が向上し、作業装置に安定した回転動力を伝達して、設定通りの散布量・投下間隔で施肥・播種等の作業が行え、作物の収穫量・品質が向上する。更に、畦の高さが変わる毎に支持体を丸ごと変える必要がなく、製造コストが低減すると共に、部品の共有化が可能となり、在庫管理が容易となって管理コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項2により、動力伝達手段の長さ調整によって、前記動力取出部・駆動軸の配置位置にかかわらず、接地輪から動力取出部まで伝達されてきた回転動力を駆動軸まで確実に伝達することができ、これにより、接地輪の高さの変更自由度を大きくすることができる。
請求項3により、接地輪をツールバーよりも下方に十分に下降させることができ、低畦作業用の接地輪で高畦作業を行っても、接地輪が高畦間の溝等の接地面から浮くことがなく、接地輪の接地力が増加して接地性が向上する。
請求項4により、第二支持体の一部である変位部材をツールバーとフレーム部材とから取り外してから、該変位部材のみを上下反転し、該上下反転した変位部材を再び前記ツールバーとフレーム部材に取り付けることにより、下端部に接地輪を軸支する第一支持体が動力取出部を介して前記第二支持体のフレーム部材に固定された状態で、該動力取出部をツールバーの上下他方に変位支持することができ、最小限の組み替え作業だけで接地輪の高さの変更が可能となり、製造コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に関わる施肥播種機をトラクタの後部に装着した状態の全体構成を示す平面図である。
【図2】施肥播種ユニットの側面図である。
【図3】施肥装置の施肥繰出部近傍の側面断面図である。
【図4】播種装置の播種繰出部近傍の側面断面図である。
【図5】動力取出ユニットの側面一部断面図である。
【図6】動力取出部から駆動軸までの動力伝達構成を示す伝動ケース・延長ケース近傍の正面一部断面図である。
【図7】接地輪の高さの変更手順を示す動力取出ユニットの側面図である。
【図8】別形態の反転変位構造による接地輪の高さの変更手順を示す動力取出ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1の矢印Fで示す方向を、本発明に関わる農用作業機である施肥播種機2の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等は、この前進方向を基準とするものである。
【0009】
まず、該施肥播種機2をトラクタ後部のロータリ耕耘装置1に装着した場合の全体構成について、図1、図2により説明する。
該ロータリ耕耘装置1は、図示せぬトラクタの後部に昇降自在に装着されると共に、前記ロータリ耕耘装置1には、左右にデプスホイール3・3を軸支するデプスフレーム4が横設されており、該デプスフレーム4に、前記施肥播種機2が装着される。
【0010】
前記ロータリ耕耘装置1は、トラクタのPTO軸からユニバーサルジョイント等を介して動力が図示せぬギヤボックスに入力され、該ギヤボックスより、伝動軸、チェーンケースを介して、ロータリ耕耘装置1下部に横架した爪軸5に動力が伝達されて回転駆動される。該爪軸5には、直刀、なた爪又は溝掘爪等の爪6が目的に応じて複数装着されており、該爪6の回転により圃場が耕耘される。
【0011】
前記施肥播種機2において、前部上方には、前記デプスフレーム4に支持された施肥装置7が配置され、該施肥装置7よりも下方には、播種装置8、前述のように耕耘した圃場に溝を形成する作溝器9、及び覆土ディスク10が、上下揺動可能に配設されている。
【0012】
前記作溝器9は、左右のディスク25a・25bから成るディスク対25によって構成されており、このうちの右のディスク25bの外側に前記施肥装置7からの肥料を供給し、前記ディスク対25の内側に前記播種装置8からの種子を供給するようにしている。更に、前記覆土ディスク10の後方には、鎮圧ローラ11が転動可能に配置されている。
【0013】
そして、これら施肥装置7、播種装置8、作溝器9、覆土ディスク10及び鎮圧ローラ11等から成るユニット( 以下、「施肥播種ユニット」とする)12は、いずれも1条単位で構成されており、本実施例では、左から順に、略等間隔で3個の施肥播種ユニット12L・12C・12Rが並設されている。このうち左半部に設けられた施肥播種ユニット12Lと施肥播種ユニット12Cとの間には、前記施肥装置7を駆動するための動力取出ユニット13が配置されている。
【0014】
次に、前記施肥播種ユニット12の詳細構成について、図1、図2により説明する。
前記デプスフレーム4後部の左右略中央部には、高さ及び前後角度を調節可能とするヒッチユニット14が取り付けられ、該ヒッチユニット14の後部に、ツールバー15が横設され、該ツールバー15に、前記動力取出ユニット13と3個の施肥播種ユニット12L・12C・12Rとが取り付けられている。
【0015】
なお、該施肥播種ユニット12L・12C・12Rは互いに略同一構造であるため、以下の説明では、左右中央の施肥播種ユニット12Cについてのみ説明し、他の施肥播種ユニット12L・12Rについての説明は省略する。
【0016】
施肥播種ユニット12Cでは、前記ツールバー15に係止具16が着脱可能に外嵌され、該係止具16の後部に、前記施肥装置7の施肥繰出部7bの前部が固定されている。そして、該施肥繰出部7bの上部には、施肥ホッパ7aが設けられ、該施肥ホッパ7aの底部が前記施肥繰出部7bと連通する落下口には、板状のシャッタ17が設けられており、該シャッタ17を水平方向にスライドさせることにより、施肥作業終了時や施肥ホッパ7aを外して移動する時にはシャッタ17を閉じ、施肥作業中や余った肥料を排出する時にはシャッタ17を開けるようにしている。
【0017】
更に、前記施肥繰出部7bの下部は、蛇腹等で伸縮自在な中間パイプ7cを介して、ロート状の施肥パイプ7dの上部に連通され、該施肥パイプ7dの下部は、前記ディスク対25の右外側に配置されている。これにより、駆動中の施肥繰出部7bから送出される肥料を前記溝の外に落下させることができる。
【0018】
前記係止具16の下面には、後方に開いた平面視U字状の固定具18が外嵌固定され、該固定具18の両側面に、上下に並設された揺動アーム19・20の前部が、前高後低に回動可能に軸支される。そして、該揺動アーム19・20の後部には、取付フレーム21の前フレーム21aが枢結されており、該前フレーム21aは、一対の揺動アーム19・20から成る平行リンク69によって、前記固定具18に対して揺動可能に連結されている。
【0019】
前記前フレーム21aには、前記覆土ディスク10を下端で支持する覆土ディスク支持アーム77の上端が固設されると共に、前記作溝器9におけるディスク対25の支軸78を下端で支持する作溝器支持アーム79の上端が、ボルト80により締結固定されている。そして、該ボルト80を緩めて作溝器支持アーム79を上下に摺動させた後、ボルト80を締め付けることにより、ディスク対25の高さを変更し、作溝器9による溝の深さを微調整できるようにしている。
【0020】
更に、前記前フレーム21aの下部より左右外方に、フレーム87が突設され、該フレーム87の左右側端からは、左右一対のアウタースクレーパ88・88が、前記ディスク対25に沿って後斜め下方に向かって延出され、該アウタースクレーパ88・88の下辺が、各ディスク25a・25bの外側面にアウタースクレーパ88・88自身の弾性によって押圧されている。これにより、ディスク対25の作溝作業中の回転を利用して、ディスク対25の外側面に固着する土、株、藁等を、アウタースクレーパ88・88の下辺により掻き落すようにしている。
【0021】
また、このような前フレーム21aの後方には、後フレーム21bが連設されており、該後フレーム21bの上部に、前記播種装置8の播種繰出部8bが固設されている。
【0022】
該播種繰出部8bの上部には、播種ホッパ8aが設けられ、該播種ホッパ8aの底部が前記播種繰出部8bと連通する落下口にも、前記施肥繰出部7bと同様な、開閉用の板状のシャッタ22が設けられている。
【0023】
更に、前記播種繰出部8bの下部は、播種パイプ8cの上部に連通され、該播種パイプ8cの下部は、前記ディスク対25の内側に配置されている。これにより、駆動中の播種繰出部8bから送出される種子を前記溝内に落下させることができる。
【0024】
前記後フレーム21bの後部の両側面には、ローラ支持フレーム24の前部が締結固設され、該ローラ支持フレーム24の後部は、左右に分岐して支持部24a・24bとなって、前記ローラ軸11bを回動自在に支持すると共に、該ローラ軸11bに、側面にラグ26を備えたローラ11aが外嵌固定されるようにして、前記鎮圧ローラ11が形成されている。
【0025】
なお、前記ローラ支持フレーム24の途中部から後方には、前方に開いた平面視U字状のスクレーパ27が延出され、該スクレーパ27の内側に前記ローラ11aを配置すると共に、該ローラ11aの後部外周面には、前記スクレーパ27の後部内面から前方に突設した板状の掻き取り部27aの前縁が当接されている。これにより、ローラ11aの外周面に固着する土、株、藁等を、鎮圧動作と同時に機械的に掻き落すことができる。
【0026】
このような構成において、前記揺動アーム19の後側の支軸19aと、前記揺動アーム20の前側の支軸20aとの間には、左右一対のリンクバネ23・23が介装されており、該リンクバネ23・23により、前記取付フレーム21に連結した作溝器9、覆土ディスク10、及び鎮圧ローラ11を一定圧力で圃場面に押し付けるので、それに伴い、同じ取付フレーム21の上部で前記平行リンク69によって揺動する前記播種装置8を圃場面の凹凸に追従させることができ、圃場面から播種繰出部8bまでの播種高さを常に略同一に設定し、作業中の播種位置のばらつきを抑えて播種精度を高めるようにしている。
【0027】
次に、前記施肥繰出部7b・播種繰出部8bの繰出構造と、その駆動のための動力伝達構成について、図1乃至図4により説明する。
このうちの施肥繰出部7bは、図1、図2、図3に示すように、その駆動軸35は、全ての施肥播種ユニット12L・12C・12Rに共通であって、前記ツールバー15の後方に平行に横設される。更に、該駆動軸35は、断面視で多角形、本実施例では6角形に形成された上で回動軸36が外嵌され、該回動軸36に、繰出ロール37が外嵌固定されている。そして、該繰出ロール37の外周には、肥料を施肥ホッパ7aから落入させる複数の繰出凹部37a・37a・・・が、溝状で略等間隔に形成されている。
【0028】
該繰出ロール37、回動軸36等は、施肥繰出部7bを構成する繰出ケース38内に嵌装されると共に、このうちの回動軸36は、該繰出ケース38の左右両側に前後回動可能に支持される。そして、該繰出ケース38の後上部には、ブラシ39がノブネジ40によって固定され、該ブラシ39の先を前記繰出ロール37の外周に接触させると共に、繰出ケース38の下部には、ガイドロート41が連設され、該ガイドロート41の下端には、前記中間パイプ7cに連通する放出口42が形成されている。
【0029】
このような構成において、前記駆動軸35により繰出ロール37が回動されると、繰出凹部37a・37a・・・が、上方の施肥ホッパ7aに臨む位置から下方のガイドロート41に向かって矢印54の方向に回転し、前記施肥ホッパ7aから繰出凹部37a・37a・・・に落入して装填された肥料が、下方に回転搬送される。この際、前記ブラシ39によって、繰出凹部37a・37a・・・からはみ出た肥料は掻き落とされ、余分な肥料を繰り出さないようにしている。
【0030】
すると、この回転搬送された肥料は、前記放出口42内に落入し、前記中間パイプ7cから施肥パイプ7dを通って溝の外に落下する。これにより、略一定量の肥料を溝の外に確実に繰り出すことができる。
【0031】
そして、このような繰出構造を有する施肥繰出部7bの駆動軸35は、後で詳述する動力取出ユニット13の延長ケース120の上部を貫通し、接地輪33からの回転動力が伝達されるようにしており、前述のようにして、施肥ホッパ7a内の肥料が繰り出される。
【0032】
また、前記播種繰出部8bは、図1、図2、図4に示すように、その繰出機構は目皿式であって、平面視で略同一円周上に複数の搬送孔43a・43a・・・を開口した円盤状の目皿43が、後斜め下方に傾斜した回転面に沿って回転可能な構成としている。そして、該目皿43の前部下方には、前記播種パイプ8cに連通する放出口45が形成されている。
【0033】
更に、前記目皿43は、回転軸46の上端に固設され、該回転軸46の下端には、ベベルギア47が固設され、該ベベルギア47は、播種繰出部8bへの入力軸48の内端に固設されたベベルギア49と噛合されている。そして、該入力軸48は、前記取付フレーム21の後フレーム21bに左右方向に軸支されている。
【0034】
このような構成において、前記入力軸48によりベベルギア49が回動されると、噛合するベベルギア47を介して回転軸46に回転動力が伝達され、目皿43が回転し、前記播種ホッパ8aから、低い方にある搬送孔43aに落入した種子44が、前記播種繰出部8bの下部の位置92から、前記放出口45の直上の位置93まで回転搬送される。
【0035】
すると、この回転搬送された種子44は、前記放出口45内に落入し、前記播種パイプ8cを通って溝内に落下する。これにより、種子44を、放出口45までの搬送中に傷つけることなく、一定量を溝内に確実に繰り出すことができる。
【0036】
ここで、前記ローラ11aの左側部と前記後フレーム21bの左側部との間には、伝動ケース100が配設され、該伝動ケース100の前部に、前記入力軸48が貫入されている。そして、該入力軸48にはスプロケット101が外嵌固定されると共に、前記ローラ軸11bにもスプロケット104が外嵌固定され、該スプロケット104と前記スプロケット101との間には、テンションバネ102で張設したチェーン103が巻回されており、該チェーン103を介して、入力軸48がローラ軸11bと連結されている。
【0037】
これにより、トラクタと一緒に施肥播種機2が進行すると、鎮圧ローラ11のローラ11aが回転し、該ローラ11aの回転動力が、ローラ軸11b、スプロケット104、チェーン103、スプロケット101から前記入力軸48に伝達され、前述のようにして、播種ホッパ8a内の種子が繰り出される。
【0038】
なお、前記スプロケット101・104は、いずれも着脱して交換可能に構成されると共に、そのための交換用スプロケット89が、前記ローラ支持フレーム24上のスプロケットホルダー90に装着されている。
【0039】
これにより、前記スプロケット101・104のいずれかを所定のものに交換するだけで、変速比を変更して入力軸48の回転速度を変え、播種間隔の適正化を図ることができ、別途に複雑な変速機構を設ける必要がなくなり、装置コストの低減や施肥播種機2の軽量・コンパクト化を図ることができる。
【0040】
次に、前記動力取出ユニット13の構成について、図1、図5、図6により説明する。
該動力取出ユニット13は、前記接地輪33と、該接地輪33を支持する支持体110と、該支持体110の動力取出部119から前記駆動軸35まで回転動力を伝達する延長ケース120とから成る。更に、前記支持体110は、前記接地輪33を下端部に軸支する第一支持体111と、該第一支持体111を前記ツールバー15に支持する第二支持体112とから構成される。
【0041】
該第二支持体112は、係止具28と、該係止具28より後方に略水平に延設する支持フレーム29とから構成される。
このうちの係止具28において、その上部は、前方に開いた側面視U字状で、上下面にボルト105・105が前後方向に固設された嵌合部114であって、該嵌合部114が、前記ツールバー15に後方より嵌合される。そして、前方からは、上下部に貫通孔107a・107aを有する固定板107が、該貫通孔107a・107aに前記ボルト105・105が挿通するようにして、前記ツールバー15に当接され、該ボルト105・105にナット106・106を前方から螺嵌することにより、係止具28がツールバー15に着脱可能に締結される。
【0042】
更に、係止具28の下部は、側面視L字状の突出部115であって、該突出部115の上端は、前記嵌合部114の下面に固設される一方、該突出部115は、下方に延出され、その下方延出端部には、前後のネジ孔108・108が左右方向に穿孔されている。
【0043】
前記支持フレーム29は、下方に開いた正面断面視U字状であって、その前部にも、図示せぬ前後のネジ孔が左右方向に穿孔されており、該ネジ孔と前記ネジ孔108・108にボルト30・30を螺挿することにより、支持フレーム29が突出部115の下端部に着脱可能に締結される。
【0044】
更に、支持フレーム29の前後途中部には、左右の支持板117・117が複数のボルト118により垂下状態で締結され、該支持板117・117の下部に、前記接地輪33からの回転動力を取り出す動力取出部119が取り付けられる。そして、該動力取出部119は、前記ツールバー15よりも下方に変位支持されている。
【0045】
なお、前記支持フレーム29の後部は、左右に分岐して支持部29a・29bとなり、該左右の支持部29a・29bに、前記接地輪33を下方付勢する押圧機構116の上部が連結されている。
【0046】
また、前記第一支持体111は、その下端部に前記接地輪33を支持すると共に、前記押圧機構116と動力取出部119とを備えている。
このうちの前記押圧機構116においては、前記支持部29a・29b間に、緩衝ピン31の上部が上下摺動可能に挿通され、該緩衝ピン31の下端は、前記動力取出部119を上端部に有する伝動ケース32の上下途中部に、前後回動可能に軸支されている。
【0047】
該伝動ケース32の下部に車軸33aが回動自在に支持され、該車軸33aに前記接地輪33が外嵌固定されている。そして、前記緩衝ピン31の下端近傍にはストッパ31aが固定され、該ストッパ31aと前記支持部29a・29bとの間における緩衝ピン31に、クッションバネ34が外嵌されている。
【0048】
これにより、接地輪33が、前記クッションバネ34の弾性力により、伝動ケース32を介して圃場に向かって常に下方付勢されており、接地面に対する接地力を増大させて、接地性を向上させるようにしている。
【0049】
前記動力取出部119は、スプロケット50が外嵌固定されたボス138を、前記伝動ケース32の上端部に軸受け136・136を介して回転可能に支持し、該ボス138に動力取出軸121の右部を貫入して固定することにより構成される。更に、前記スプロケット50は、テンションバネ91で張設したチェーン51を介してスプロケット145に連結され、該スプロケット145が外嵌された反転軸146と同軸上には、小径の反転ギア147を固設されている。そして、該反転ギア147に、前記車軸33a上に固設された大径の車軸ギア148を噛合することによって、減速可能な変速装置52が構成されている。
【0050】
これにより、トラクタと一緒に施肥播種機2が進行すると、接地輪33が回転し、この回転動力が、車軸33aから変速装置52とチェーン伝動を介して前記動力取出軸121に伝達される。
【0051】
また、前記延長ケース120は、前記伝動ケース32の左側上部に立設するようにして付設されると共に、該延長ケース120の下端部には、スプロケット123が外嵌固定されたボス132が、軸受け136・137によって回転可能に支持され、該ボス132に、前記動力取出部119から左方に突出された前記動力取出軸121の左部が貫入して固定されている。
【0052】
一方、前記延長ケース120の上端部では、スプロケット125が外嵌固定されたボス133が、軸受け136・137によって回転可能に支持され、該ボス133に、前記駆動軸35が貫入して固定されている。そして、該スプロケット125と前記スプロケット123との間にチェーン124が巻回されており、該チェーン124を介して、動力取出軸121が、上方に離間した駆動軸35と連結されている。
【0053】
これにより、動力取出部119から取り出された回転動力が、延長ケース120におけるスプロケット123、チェーン124、スプロケット125を介することにより、動力取出軸121から駆動軸35に伝達されると、該駆動軸35により前記繰出ロール37が回動され、前述のようにして、施肥ホッパ7a内の肥料が繰り出される。そして、この際の回転動力の回転方向を、ギア対147・148により、接地輪33の回転方向である矢印140の方向から矢印141の方向に反転させ、スプロケット対50・145とスプロケット対125・123により、該矢印141の方向と同じ矢印142の方向に設定し、駆動軸35の回転方向を、前記矢印54で示す肥料繰出時の回転方向と一致させるようにしている。
【0054】
次に、このような構成の動力取出ユニット13における接地輪33の高さ調整構造について、図5乃至図8により説明する。
図5乃至図7に示すように、該動力取出ユニット13では、前述の如く、前記係止具28は、前記ツールバー15に、ボルト105・105とナット106・106によって着脱可能に締結された嵌合部114と、該嵌合部114より下方に延出する突出部115とから構成され、該突出部115の下方延出端に、前記支持フレーム29の前部がボルト30・30によって着脱可能に締結される。
【0055】
そこで、まず、前記延長ケース120の上端部のボス133から駆動軸35を引き抜き、その後、前記ナット106・106を緩めて固定板107を前方に脱着してから、係止具28の嵌合部114をツールバー15より後方に引き出すことにより、該ツールバー15から前記支持体110を取り外す。
【0056】
そして、取り外した支持体110において、前記動力取出部119の動力取出軸121と一緒に、前記延長ケース120を伝動ケース32の左側上部から脱着する。更に、前記ボルト30・30を緩めてネジ孔108・108等より螺脱してから、係止具28の突出部115を支持フレーム29の前部から引き出すことにより、該支持フレーム29から前記係止具28を取り外す。
【0057】
該係止具28は、ツールバー15の軸心と直交する反転軸131を中心にして上方へ反転させ、この反転した係止具28を、前記ボルト30・30によって再び支持フレーム29に締結固定し、これにより、動力取出ユニット13Aが構成される。
【0058】
そして、前記係止具28の嵌合部114をツールバー15に後方より嵌合してから、前記固定板107を前方から装着し、ボルト105・105にナット106・106を螺嵌することにより、前記動力取出ユニット13Aをツールバー15に締結固定し、更に、前記動力取出部119には、前記動力取出軸121に替えて駆動軸35を貫入する。
【0059】
このような係止具28と支持フレーム29とから成る反転変位構造99によると、係止具28を上方に反転した動力取出ユニット13Aでは、動力取出部119の中心位置が位置126から位置127まで移動し、それに伴い、接地輪33の下端位置も位置128から位置129まで移動する。なお、この移動幅135は、前記反転軸131から突出部115の下端部までの高低差(以下、「変位幅」とする)134の略倍に相当する。
【0060】
つまり、動力取出ユニット13Aのように係止具28が上方に反転したものは、接地輪33の高さが高くなって低畦作業に適したものとなり、前記動力取出ユニット13のように係止具28が下方に反転したものは、接地輪33の高さが低くなって高畦作業に適したものとなる。
【0061】
更に、各動力取出ユニット13・13Aでは、前記押圧機構116のクッションバネ34を伸縮させることにより、下方付勢力を変更して接地輪33の高さを微調整できるようにしている。
【0062】
なお、本実施例では、延長ケース120を伝動ケース32から脱着させているが、延長ケース120を伝動ケース32の左側上部にそのまま付設したままにしたり、下方に回転して伝動ケース32の側方に沿わせて収納するようにしてもよい。
【0063】
また、前記動力取出ユニット13と別形態の動力取出ユニット95について、図8により説明する。
該動力取出ユニット95では、その係止具28Aの構成要素のうち、嵌合部114は変更せず、突出部115のみを該突出部115よりも長く下方に延出した突出部115Aに変更することにより、より大きな変位幅134Aを確保している。そして、このような係止具28Aと支持フレーム29とから反転変位構造99Aが構成されている。
【0064】
更に、延長ケース120Aは、前記延長ケース120よりも長い伝達経路長を有しており、変位幅の134から134Aへの増加に伴って駆動軸35から下方に大きく離間した動力取出軸121まで、回転動力を伝達できるようにしている。
【0065】
このような係止具28Aと延長ケース120Aによると、動力取出部119の中心位置は、前記動力取出ユニット13の位置126よりも低い位置126Aに設定され、それに伴い、接地輪33の下端位置も、前記動力取出ユニット13の位置128よりも低い位置128Aに設定される。
【0066】
前記動力取出ユニット13と同様にして、係止具28Aを反転軸131を中心にして上方へ反転させると、その変位幅134Aが大きいため、動力取出部119の中心位置が駆動軸35よりも上方に位置する動力取出ユニット95Aが構成される。
【0067】
該動力取出ユニット95Aでは、前記動力取出ユニット13Aとは異なり、動力取出軸121からの回転動力を駆動軸35まで伝達可能な延長ケース120Bが必要となり、該延長ケース120Bは、前記伝動ケース32に付設した延長ケース120Aと交換して配設される。
【0068】
このような係止具28Aと延長ケース120Bによると、動力取出部119の中心位置は、前記動力取出ユニット13Aの位置127よりも高い位置127Aに設定され、それに伴い、接地輪33の下端位置も、前記動力取出ユニット13Aの位置129よりも高い位置129Aに設定される。
【0069】
つまり、前記係止具28・28Aの変位幅134・134Aと、延長ケース120・120A・120Bの長さを調整するだけで、接地輪33の高さを広範囲で変更することができて変更自由度が増し、様々な高さの畦への対応が可能となる。
【0070】
すなわち、以上のような構成により、ツールバー15に接地輪33と作業装置である施肥装置7とを取り付け、該施肥装置7の駆動軸35に前記接地輪33からの回転動力を伝達する農用作業機である施肥播種機2において、前記ツールバー15に接地輪33を支持する支持体110は、下端部に軸支する前記接地輪33をツールバー15より所定の下限位置まで下方付勢する押圧機構116に加え、前記接地輪33の所定上方位置で該接地輪33からの回転動力を取り出す動力取出部119を備える第一支持体111と、該動力取出部119を前記ツールバー15より上下一方に変位支持する第二支持体112とから構成し、該第二支持体112の少なくとも一部である係止具28の上下反転操作により、前記動力取出部119をツールバー15より上下他方に変位支持して接地輪33の高さを変更可能とする反転変位構造99を設けたので、支持体110の一部の上下反転操作だけで、支持体110の大部分の構成はそのままで、ツールバー15を基準にして上下いずれか一方に動力取出部119を変位支持し、接地輪33の高さを容易に変更することができる。これにより、畦の高さにかかわらず、畦間の溝等の接地面に接地輪33を適正に接地させることができ、接地輪33の接地力が増加して接地性が向上し、施肥装置7に安定した回転動力を伝達して、設定通りの散布量・投下間隔で施肥・播種等、本実施例では施肥の作業が行え、作物の収穫量・品質が向上する。更に、畦の高さが変わる毎に支持体110を丸ごと変える必要がなく、製造コストが低減すると共に、部品の共有化が可能となり、在庫管理が容易となって管理コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0071】
更に、前記動力取出部119から取り出した回転動力を駆動軸35まで伝達する動力伝達手段である延長ケース120を設けたので、該延長ケース120の長さ調整によって、前記動力取出部119・駆動軸35の配置位置にかかわらず、接地輪33から動力取出部119まで伝達されてきた回転動力を駆動軸35まで確実に伝達することができ、これにより、接地輪の高さの変更自由度を大きくすることができる。
【0072】
加えて、前記反転変位構造99は、前記動力取出部119をツールバー15より下方に変位支持して接地輪33の高さを下方に変更するので、接地輪33をツールバー15よりも下方に十分に下降させることができ、低畦作業用の接地輪33で高畦作業を行っても、接地輪33が高畦間の溝等の接地面から浮くことがなく、接地輪33の接地力が増加して接地性が向上する。
【0073】
更に、前記第二支持体112は、前記ツールバー15に着脱可能に固定される基部である嵌合部114に、前記ツールバー15より上下一方に突出する突出部115を連結して成る変位部材である係止具28と、該突出部115に着脱可能に連結されるフレーム部材である支持フレーム29とから構成し、該支持フレーム29に前記第一支持体111の動力取出部119を支持するので、前記第二支持体112の一部である係止具28をツールバー15と支持フレーム29とから取り外してから、該係止具28のみを上下反転し、該上下反転した係止具28を再び前記ツールバー15と支持フレーム29に取り付けることにより、下端部に接地輪33を軸支する第一支持体111が動力取出部119を介して前記第二支持体112の支持フレーム29に固定された状態で、該動力取出部119をツールバー15の上下他方に変位支持することができ、最小限の組み替え作業だけで接地輪33の高さの変更が可能となり、製造コストが低減する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、ツールバーに接地輪と作業装置とを取り付け、該作業装置の駆動軸に前記接地輪からの回転動力を伝達する、全ての農用作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
2 施肥播種機(農用作業機)
7 施肥装置(作業装置)
15 ツールバー
28 係止具(変位部材)
29 支持フレーム(フレーム部材)
33 接地輪
35 駆動軸
99 反転変位構造
110 支持体
111 第一支持体
112 第二支持体
114 嵌合部(基部)
115 突出部
116 押圧機構
119 動力取出部
120 延長ケース(動力伝達手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールバーに接地輪と作業装置とを取り付け、該作業装置の駆動軸に前記接地輪からの回転動力を伝達する農用作業機において、前記ツールバーに接地輪を支持する支持体は、下端部に軸支する前記接地輪をツールバーより所定の下限位置まで下方付勢する押圧機構に加え、前記接地輪の所定上方位置で該接地輪からの回転動力を取り出す動力取出部を備える第一支持体と、該動力取出部を前記ツールバーより上下一方に変位支持する第二支持体とから構成し、該第二支持体の少なくとも一部の上下反転操作により、前記動力取出部をツールバーより上下他方に変位支持して接地輪の高さを変更可能とする反転変位構造を設けたことを特徴とする農用作業機。
【請求項2】
前記動力取出部から取り出した回転動力を駆動軸まで伝達する動力伝達手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の農用作業機。
【請求項3】
前記反転変位構造は、前記動力取出部をツールバーより下方に変位支持して接地輪の高さを下方に変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の農用作業機。
【請求項4】
前記第二支持体は、前記ツールバーに着脱可能に固定される基部に、前記ツールバーより上下一方に突出する突出部を連結して成る変位部材と、該突出部に着脱可能に連結されるフレーム部材とから構成し、該フレーム部材に前記第一支持体の動力取出部を支持することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の農用作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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