説明

農薬粒子と両親媒性物質とを含む水性分散液

本発明は、10μmまでの粒径を有する固体活性物質粒子と両親媒性物質とを含む水性分散液に関する。本発明は更に、活性物質と両親媒性物質とを接触させることによる、該分散液の製造方法に関する。本発明はまた、該水性分散液を乾燥させることにより得られる、10μmまでの粒径を有する活性物質粒子と両親媒性物質とを含有する固体組成物に関する。本発明は更に、植物病原性菌類および/または望ましくない植物成長および/または昆虫および/もしくはダニによる望ましくない侵襲を防除するための、および/または植物の成長を調節するための、該分散液または該固体組成物の使用に関する。最後に本発明は、該分散液または該固体組成物で処理された種子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10μmまでの粒径を有する固体活性物質粒子と両親媒性物質とを含む水性分散液に関する。本発明は更に、活性物質と両親媒性物質とを接触させることによる、該分散液の製造方法に関する。本発明は更に、該水性分散液を乾燥させることにより得られる、10μmまでの粒径を有する活性物質粒子と両親媒性物質とを含む固体組成物に関する。さらに、本発明は、それぞれの有害生物、それらの環境および/またはそれぞれの有害生物から保護されるべき植物、土壌および/または望ましくない植物および/または有用な植物および/またはそれらの環境に該分散液または該固体組成物を作用させることにより、植物病原性菌類および/または望ましくない植生および/または昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、および/または植物の成長を調節するための、該分散液または該固体組成物の使用、ならびに有用な植物の種子を該分散液または該固体組成物で処理することにより、植物に対する昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、および/または植物病原性菌類を防除するための、および/または望ましくない植生を防除するための、該分散液または該固体組成物の使用に関する。最後に、本発明は、該分散液または該固体組成物で処理された種子に関する。好ましい特徴と他の好ましい特徴との組合せは本発明に含まれる。
【背景技術】
【0002】
多数の活性物質、例えば農薬は、理想的には、水性系の形態で提供される。当然のことながら、これは、水に不溶性である活性物質の効率的施用をより困難にする。なぜなら、水溶液中で利用可能な濃度、したがって生物活性が低いからである。粒子表面積を拡大させることにより、すなわち、同じ総量を維持しながら粒径をより小さくすることにより、活性物質粒子の溶解度、分散性およびバイオアベイラビリティが増加されうることが公知である。例えば、粒径がより小さくなると、生体膜の透過はより容易になる。同様に、該粒子の溶解速度および見掛け溶解度は増加する。Mueller RH, Benita S, Boehm BHL編, Stuttgart, Germany: Medpharm Scientific Publishers; 1998も参照されたい。これは同時に、数マイクロメートル、好ましくは1マイクロメートル未満の規模の粒子を使用する場合には、同じ効果を達成するために要求される活性物質の量が、より大きな粒子の形態の活性物質を使用する場合より少ないことを意味する。
【0003】
10マイクロメートル未満の粒径を有する系のコロイド安定化のためには、粒子の凝集を抑制する界面活性物質が頻繁に使用される。典型的な安定化剤は低分子量界面活性剤またはオリゴマーである。しかし、高分子量補助剤、例えばコロイドおよび両親媒性重合体も、小さい寸法の活性物質粒子を安定化する可能性をもたらす。同様に、水に非常に難溶性の物質、例えばヘキサデカンを加えることにより、オストワルド熟成に対して超微細分散液を浸透圧的に安定化させることが可能である。
【0004】
10μm未満の粒径を有する活性物質粒子と両親媒性物質とを含む水性分散液は一般的に公知である。
【0005】
WO 1995/25504は、例えばエルカ酸でありうる長鎖カルボン酸の疎水性エマルション中に封入された薬物の安定エマルションを含む医薬組成物を開示している。
【0006】
WO 2008/002485は、非晶質薬物コアと、該コアの表面上に吸収された安定化剤とを含むナノ粒子を開示している。挙げられている安定化剤はステアリン酸またはドデシル硫酸ナトリウムである。
【0007】
WO 2004/006959は、2000nm未満のサイズを有する粒子、安定化剤および浸透活性結晶化阻害剤を含むナノ粒子含有液体組成物を開示している。該安定化剤は、例えばステアリン酸またはホスファートである。
【0008】
WO 2008/100896は、酸、乳化剤、共存乳化剤および水を含む組成物を開示している。該組成物は更に、エルカ酸を含みうる。
【0009】
WO 1998/04761は、40重量%以上の水、有機溶媒、および14〜23個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸から選択されるアニオン界面活性剤を含むマイクロエマルションを開示している。
【0010】
WO 2003/059063は、5〜22個の炭素原子を有する脂肪酸と、選択された有機酸とを含む殺菌組成物を開示している。該脂肪酸は例えばエルカ酸でありうる。
【0011】
EP 0 388 239は、界面活性剤と難溶性農薬活性物質の粒子とを含む水性懸濁液を開示している。
【0012】
先行技術の欠点は、とりわけ、粒子成長には不十分な該粒子の安定化しか得られず、その結果、追加的な結晶化阻害剤、共存乳化剤または他の有機酸を加えなければならないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 1995/25504
【特許文献2】WO 2008/002485
【特許文献3】WO 2004/006959
【特許文献4】WO 2008/100896
【特許文献5】WO 1998/04761
【特許文献6】WO 2003/059063
【特許文献7】EP 0 388 239
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Mueller RH, Benita S, Boehm BHL編, Stuttgart, Germany: Medpharm Scientific Publishers; 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
10μm未満の粒径を有する農薬粒子を安定に製剤化するための新規方法を特定することが本発明の目的であった。特に、該方法は、環境にも非常に優しく安価であり産業上利用しうる物質を取り扱うことが意図された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
該目的は、10μmまでの粒径を有する活性物質粒子と10重量%以下まで20℃で水に可溶性である両親媒性物質とを含む水性分散液により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、両親媒性物質は、少なくとも1つの親水性単位と少なくとも1つの疎水性単位の物質または物質の混合物を意味すると理解される。疎水性単位は、通常、水に非常に難溶性である。これは、1g/l未満、好ましくは0.1g/l未満、特に好ましくは0.01g/l未満、特に0.001g/l未満の水中の溶解度を意味すると理解される。具体例としては、長鎖アルカン、縮合芳香環系、シリコーンおよび過フッ素化化合物が挙げられる。該親水性単位は極性であり、エネルギー的に有利に水と相互作用する。それは、酸基、例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸の形態をとることが可能であり、あるいは対イオンとしての例えばアルカリ金属またはアンモニウムイオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウムまたはテトラアルキルアンモニウム、例えばテトラブチルアンモニウムでのこれらの基の中和化実施形態をとることが可能である。同様に、親水性単位はオリゴエーテル、例えばオリゴ(エチレンオキシド)でありうる。該単位は直接的に連結されているか、あるいは当業者に公知の他の化学的リンカー、例えばエステルまたはアミド結合により連結されている。1つの実施形態においては、両親媒性物質は少なくとも25℃、好ましくは少なくとも40℃、特に好ましくは少なくとも60℃のクラフト点を有する。クラフト点未満の温度では、ミセルは存在せず、該物質は水に不溶性であると考えられる。その分子残留溶解度は低く、1g/l未満、好ましくは0.1g/l未満、特に好ましくは0.01g/l未満、特に0.001g/l未満である。好ましい実施形態においては、該両親媒性物質は10重量%以下まで、好ましくは1重量%以下まで、特に好ましくは0.1重量%以下まで、特に0.01重量%以下まで、20℃で水に可溶性である。
【0018】
好ましくは、該両親媒性物質は脂肪族酸(aliphatic acid)またはその塩であり、該脂肪族酸は10重量%以下まで20℃で水に可溶性である。該脂肪族酸は10重量%以下まで、好ましくは1重量%以下まで、特に好ましくは0.1重量%以下まで、特に0.01重量%以下まで、20℃で水に可溶性である。該両親媒性物質が脂肪族酸の塩である場合、該脂肪族酸は通常、水溶性を決定するために使用される。該脂肪族酸は通常、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和脂肪族基、および酸基、例えばカルボキシル基、スルホニル基またはリン酸基、好ましくはカルボキシル基を含む。該脂肪族酸の好適な塩としては、例えば、該脂肪族酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩が挙げられる。前記の複数の脂肪族酸、それらの塩、または脂肪族酸の塩との脂肪族酸の混合物も可能である。
【0019】
該脂肪族酸は、好ましくは、少なくとも20個の炭素原子を有する脂肪酸である。好ましくは、該脂肪酸は22〜36個の炭素原子を含む。それは直鎖状または分枝状で飽和または不飽和でありうる。好適な脂肪酸としては、例えば、アラキドン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、エルカ酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、セロチン酸(C26)またはメリシン酸、好ましくはエルカ酸およびベヘン酸、特にエルカ酸が挙げられる。エルカ酸(シス−13−ドコサエン酸)は、幾つかのアブラナ品種およびハマナ品種の種子、特にアビシニアン・カレ(Abyssinian kale)(Crambe abyssinica)に大量に見出されるモノ飽和脂肪酸である。
【0020】
ほとんどの場合、本発明の分散液は、使用する活性物質に対して40重量%以下、好ましくは35重量%以下、特に好ましくは30重量%以下の両親媒性物質を含む。通常、該分散液は、使用する活性物質に対して少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%、特に少なくとも15重量%の両親媒性物質を含む。
【0021】
水性分散液は水性エマルションまたは水性懸濁液でありうる。それは、好ましくは水性懸濁液である。この文脈においては、「懸濁液」なる語は、特に、平衡融点未満の粒子を含む、過冷却融解物からの粒子の分散液をも意味すると理解される。
【0022】
水性分散液は通常、連続相としての水、および分散相としての固体粒子を含む。ほとんどの場合、本発明の分散液は30〜98重量%、好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜80重量%の水を含む。
【0023】
ほとんどの場合、該活性物質粒子は少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%の活性物質を含む。該活性物質粒子は、好ましくは、活性物質からなる。該水性懸濁液中の10μm未満の粒径を有する活性物質粒子の含量は、広い範囲、例えば0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜40重量%で変動しうる。
【0024】
該活性物質粒子の粒径は通常、数平均粒径を意味する。それは10μm未満、好ましくは2μm未満、特に好ましくは1μm未満である。ほとんどの場合、該粒径は5nmを超える、好ましくは20nmを超える、特に好ましくは50nmを超える。ほとんどの場合、該粒径は、光子相関分光法(動的光散乱)により、例えば、Brookhaven Instruments BI90ブランドの装置を使用して決定される。この測定方法においては、サンプルの調製、例えば、測定濃度への希釈は、とりわけ、分散サンプル中および使用する装置上の活性物質の細かさおよび濃度に左右される。該方法は、問題の系に関して確立される必要があり、当業者に公知である。
【0025】
該固体活性物質粒子は結晶または非晶質であり、好ましくは非晶質である。非晶質は、均一固体の分子単位が結晶格子の形態では配置されていないことを意味する。非晶質活性物質粒子は、該粒子の大部分が結晶性活性物質を含有しないこと、好ましくは、該物質の80〜100重量%、特に90〜100重量%が非晶質形態であることを意味する。非晶質形態は、種々の方法により、例えば、偏光顕微鏡下での検査、示差走査熱量測定法(DSC)、x線回折または溶解度比較により、好ましくはDSCにより、結晶性形態から識別されうる。
【0026】
好適な活性物質としては、例えば、着色剤、化粧品活性物質、薬理学的活性物質、農薬、肥料、食品または飼料の添加物、重合体、紙、織物、革製品または洗剤およびクリーニング製品の補助剤が挙げられる。前記活性物質の混合物も適している。一般に、好適な活性物質は、10g/l以下まで、好ましくは1g/l以下まで、特に好ましくは0.1g/l以下まで、特に0.01g/l以下まで20℃で水に可溶性であるものである。
【0027】
ほとんどの場合、本発明の分散液は、該分散液に対して1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%の活性物質粒子を含む。通常、それは該活性物質に対して40重量%以下、好ましくは30重量%以下の両親媒性物質を含む。通常、それは該活性物質に対して少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の両親媒性物質を含む。
【0028】
着色剤の具体例としては、色素、印刷用インク、顔料、UV吸収剤、蛍光増白剤またはIR色素が挙げられる。有機色素は400〜850nmの波長範囲で吸収極大を有するが、蛍光増白剤は250〜400nmの範囲に1以上の吸収極大を有する。公知のとおり、蛍光増白剤は、UV光で照射されると可視範囲の蛍光を放出する。蛍光増白剤の具体例としては、ビススチリルベンゼン、スチルベン、ベンゾオキサゾール、クマリン、ピレンおよびナフタレンのクラスの化合物が挙げられる。好適なその他のものとしては、流体用のマーカー、例えば鉱油マーカーが挙げられる。UV吸収剤は通常、UV線を吸収する及び吸収放射を非放射的に不活性化する化合物と理解される。そのような化合物は、例えば、日焼け止めにおいて、または有機重合体を安定化させるために使用される。
【0029】
他の好適な活性物質は化粧品(美容用)活性物質である。化粧品は、専ら又は主に、清潔化、ケア、保護、良好な健康の維持、香水適用を目的として、または外観を変化させるため、または体臭に影響を及ぼすために、人体または口腔内に外的に使用されるように意図された物質または物質の調製物である。好適なその他のものとしては、例えば昆虫忌避物質、例えばイカリジンまたはN,N-ジエチルメタ-トルアミド(DEET)が挙げられる。
【0030】
さらに、全ての医薬活性物質が活性物質として使用されうる。
【0031】
他の好適な活性物質としては、食品または飼料添加物、例えば食品着色料、アミノ酸、ビタミン、保存剤、抗酸化剤、芳香物質または香料が挙げられる。
【0032】
農薬および肥料、好ましくは農薬も、活性物質として使用されうる。
【0033】
特に好ましい活性物質は農薬である。農薬なる語は、殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、毒性緩和剤および/または成長調節剤の群から選択される少なくとも1つの活性物質を意味する。好ましい農薬は殺菌剤、殺虫剤および除草剤である。前記クラスの2以上からの農薬の混合物も使用されうる。それらの農薬は当業者によく知られており、例えばPesticide Manual, 14th Ed. (2006), The British Crop Protection Council, Londonにおいて見出されうる。
【0034】
好適な殺虫剤としては、カルバマート、有機ホスファート、有機塩素殺虫剤、フェニルピラゾール、ピレスロイド、ネオニコチノイド、スピノシン、アベルメクチン、ミルベマイシン、幼若ホルモン類似体、ハロゲン化アルキル、有機スズ化合物、ネレイストキシン(nereistoxin)類似体、ベンゾイル尿素、ジアシルヒドラジン、METIアカリシドのクラスからの殺虫剤、およびクロロピクリン(chloropicrin)、ピメトロジン(pymetrozin)、フロニカミド(flonicamid)、クロフェンテジン(clofentezin)、ヘキシルチアゾックス(hexythiazox)、エトキサゾール(etoxazole)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、プロパルガイト(propargite)、テトラジフォン(tetradifon)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、DNOC、ブプロフェジン(buprofezin)、シロマジン(cyromazin)、アミトラズ(amitraz)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、アセキノシル(acequinocyl)、フルアクリピリム(fluacrypyrim)、ロテノン(rotenone)またはそれらの誘導体のような殺虫剤が挙げられる。
【0035】
好適な抗菌剤としては、ジニトロアニリン、アリルアミン、アニリノピリミジン、抗生物質、芳香族炭化水素、ベンゼンスルホンアミド、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアジン、ベンジルカルバマート、カルバマート、カルボキサミド、カルボン酸アミド、クロロニトリル、シアノアセトアミドオキシム、シアノイミダゾール、シクロプロパンカルボキサミド、ジカルボキシミド、ジヒドロジオキサジン、ジニトロフェニルクロトナート、ジチオカルバマート、ジチオラン、エチルホスホナート、エチルアミノチアゾールカルボキサミド、グアニジン、ヒドロキシ-(2-アミノ)ピリミジン、ヒドロキシアニリド、イミダゾール、イミダゾリノン、無機物質、イソベンゾフラノン、メトキシアクリラート、メトキシカルバマート、モルホリン、N-フェニルカルバマート、オキサゾリジンジオン、オキシイミノアセタート、オキシイミノアセトアミド、ペプチジルピリミジン、ヌクレオシド、フェニルアセトアミド、フェニルアミド、フェニルピロール、フェニル尿素、ホスホナート、ホスホロチオラート、フタルアミド酸、フタルイミド、ピペラジン、ピペリジン、プロピオンアミド、ピリダジノン、ピリジン、ピリジニルメチルベンズアミド、ピリミジンアミン、ピリミジン、ピリミジノンヒドラゾン、ピロロキノリノン、キナゾリノン、キノリン、キノン、スルファミド、スルファモイルトリアゾール、チアゾールカルボキサミド、チオカルバマート、チオカルバマート、チオファナート、チオフェンカルボキサミド、トルアミド、トリフェニルスズ化合物、トリアジン、トリアゾールのクラスからの殺菌剤が挙げられる。
【0036】
好適な除草剤としては、アセトアミド、アミド、アリールオキシフェノキシプロピオナート、ベンズアミド、ベンゾフラン、安息香酸、ベンゾチアジアジノン、ビピリジリウム、カルバマート、クロロアセトアミド、クロロカルボン酸、シクロヘキサンジオン、ジニトロアニリン、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル、グリシン、イミダゾリノン、イソオキサゾール、イソオキサゾリジノン、ニトリル、N-フェニルフタルイミド、オキサジアゾール、オキサゾリジンジオン、オキシアセトアミド、フェノキシカルボン酸、フェニルカルバマート、フェニルピラゾール、フェニルピラゾリン、フェニルピリダジン、ホスフィン酸、ホスホロアミダート、ホスホロジチオアート、フタラマート、ピラゾール、ピリダジノン、ピリジン、ピリジンカルボン酸、ピリジンカルボキサミド、ピリミジニウムジオン、ピリミジニル、(チオ)ベンゾアート、キノリンカルボン酸、セミカルバゾン、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホニル尿素、テトラゾリノン、チアジアゾール、チオカルバマート、トリアジン、トリアジノン、トリアゾール、トリアゾリノン、トリアゾロカルボキサミド、トリアゾロピリミジン、トリケトン、ウラシル、尿素のクラスからの除草剤が挙げられる。
【0037】
好ましい農薬としては、水に不溶性のものが挙げられる。好適な不溶性農薬としては、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、非常に特に好ましくは0.01%以下まで20℃で水に可溶性のものが挙げられる。好適な不溶性農薬の具体例(括弧内は各場合における20℃での水溶性)としては、ピラクロストロビン(1.9mg/l)、エポキシコナゾール(6.6mg/l)、プロクロラズ(34mg/l)、好ましくはピラクロストロビンが挙げられる。
【0038】
使用される農薬は、しばしば、20℃で固体である。その融点は、好ましくは少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃である。
【0039】
本発明は、活性物質を両親媒性物質と接触させることによる、本発明の分散液の製造方法に関する。この場合、該両親媒性物質は10重量%以下まで20℃で水に可溶性である。分散された活性物質を該両親媒性物質と接触させることが可能であり、あるいは、活性物質と両親媒性物質とを接触させた後に分散させることが可能である。農薬のような活性物質を分散させるための広範な方法が一般に当業者によく知られている。好適な方法の具体例としては、沈殿法、乳化法、蒸発法、溶融乳化または微粉砕法、好ましくは沈殿法が挙げられる。該活性物質と該両親媒性物質とを水系内で接触させ、該混合物を分散させることが好ましい。該両親媒性物質を、有機溶媒中で、特に、該活性物質と同じ溶媒中で使用することが特に好ましい。好適な活性物質は前記のものである。該活性物質は通常、水に不溶性である。該活性物質は、好ましくは、水に不溶性である。好適な両親媒性物質は前記の両親媒性物質である。該両親媒性物質は、好ましくは、少なくとも20個、好ましくは22〜36個の炭素原子を含む脂肪酸である。
【0040】
特に好ましい方法は以下のようにして行われる。水性溶液を調製し、該活性物質および該両親媒性物質を水混和性有機溶媒に溶解し、それらの2つの溶液を乱流混合する(沈殿法);
該活性物質および該両親媒性物質を、水と混和性でない有機溶媒に溶解し、該溶液を水溶液と乱流混合し、場合によっては、該有機溶媒を除去する(場合によっては蒸発と組合された、乳化法);
溶融活性物質と該両親媒性物質とを含む溶融物を水溶液と混合し、冷却する(溶融乳化);あるいは
該活性物質を、該両親媒性物質の存在下で微粉砕する(微粉砕法)。
【0041】
特に好適な方法においては、水溶液を準備し、該活性物質および該両親媒性物質を水混和性有機溶媒に溶解し、それらの2つの溶液を乱流混合する(沈殿法)。
【0042】
ほとんどの場合、該活性物質の及び該両親媒性物質の、水混和性有機溶媒中の溶液は、水混和性有機溶媒を含む。水混和性は、この文脈においては、該有機溶媒が、少なくとも10重量%、好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%まで、相分離を伴うことなく20℃で水と混和性であることを意味する。場合によっては、該溶液は、更なる製剤助剤、例えば分散剤を含みうる。必要に応じて、該溶液は、温度を上昇させて調製されうる。好適な溶媒としては、C1-C6-アルキルアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、エステル、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセタール、エーテル、環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン、脂肪族カルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、N-置換またはN,N-ジ置換カーボンアミド、例えばアセトアミド、カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、ならびにラクトン、例えばブチロラクトン、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルプロピオンアミド、脂肪族および芳香族炭化水素、例えばメチレンクロリド、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンまたはクロロベンゼン、N-ラクタム、グリコール、例えばエチレングリコールまたはプロピレングリコール、ならびに前記溶媒の混合物が挙げられる。好ましい溶媒はグリコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、メチレンクロリド、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、および前記溶媒の混合物である。
【0043】
特に好ましい溶媒はプロピレングリコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフラン、特にプロピレングリコールである。
【0044】
該水溶液は、水、および場合によっては更なる製剤助剤、例えば分散剤を含む。
【0045】
乱流混合を行うためには、一般に公知の方法が当業者に公知である。該プロセス工程は、バッチ様態で、例えば攪拌容器内で、または連続的に行われうる。乳化のために連続的に作動する機械および装置としては、例えば、コロイドミル、歯付きリング分散装置、および他の構造形状の動的ミキサー、さらには、高圧ホモジナイザー、ポンプ(下流ノズル、弁、膜または他の狭いスリット形状を有するもの)、静的ミキサー、インラインミキサー(ロータ/ステータの原理で作動するもの)(Ultra-Turrax, Inline Dissolver)、微小混合系および超音波乳化系が挙げられる。歯付きリング分散装置または高圧ホモジナイザーを使用することが好ましい。用いる溶液の温度は20〜200℃、好ましくは50〜150℃でありうる。もう1つの好ましい実施形態においては、該乱流混合は混合室内で行われうる。
【0046】
本発明の方法により製造された分散液は希釈されることが可能であり、あるいはそのままの状態でそれ以降に使用されうる。さらに、該水性分散液を濃縮することが可能である。
【0047】
通常、前記の活性物質が本発明の方法において使用される。水に不溶性の農薬を使用することが好ましい。ほとんどの場合、該方法において使用される両親媒性物質は、前記の脂肪酸、特に、少なくとも20個、好ましくは22〜36個の炭素原子を含む脂肪酸である。
【0048】
場合によっては、更なる製剤助剤が該方法の前、途中または後に加えられうる。製剤助剤は、例えば、溶媒、界面活性剤、無機乳化剤(ピッカリング(Pickering)乳化剤)、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤および殺菌剤である。種子の処理を意図した製剤は更に、接着剤、および場合によっては顔料をも含みうる。
【0049】
好適な溶媒としては、水、有機溶媒、例えば、中ないし高沸点の鉱油画分、例えば灯油およびディーゼル油、さらに、コールタール油、および植物または動物由来の油、脂肪族、環状および芳香族炭化水素、例えばパラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンおよびその誘導体、アルキル化ベンゼンおよびその誘導体、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびシクロヘキサノール、グリコール、ケトン、例えばシクロヘキサノン、ガンマ-ブチロラクトン、ジメチル脂肪酸アミド、脂肪酸および脂肪酸エステル、ならびに強極性溶媒、例えばアミン、例えばN-メチルピロリドンが挙げられる。原則として、溶媒混合物、および前記溶媒と水との混合物を使用することも可能である。該方法の後にのみ、該活性物質の分散液が形成されるときに、前記溶媒を加えることが好ましい。
【0050】
ほとんどの場合、本発明の水性分散液は、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、特に10重量%以下の有機溶媒を含む。
【0051】
一般に、アニオン、カチオンおよび/またはノニオン界面活性剤を加える。通常使用されるアニオン界面活性剤としては、例えば、エトキシル化モノ-、ジ-およびトリ-アルキルフェノール(3〜50のエトキシル化度;アルキル基:C4〜C12)、ならびにエトキシル化脂肪アルコール(3〜80のエトキシル化度;アルキル基:C8〜C36)が挙げられる。具体例としては、BASF SEのLutensol(登録商標)ATブランド(C12-C14-脂肪アルコールエトキシラート;3〜8のエトキシル化度)、Lutensol(登録商標)AOブランド(C13-C15-オキソアルコールエトキシラート;3〜30のエトキシル化度)、Lutensol(登録商標)ATブランド(C16-C18-脂肪アルコールエトキシラート;11〜80のエトキシル化度)、Lutensol(登録商標)ONブランド(C10-オキソアルコールエトキシラート;3〜11のエトキシル化度)、およびLutensol(登録商標)TOブランド(C13-オキソアルコールエトキシラート;3〜20のエトキシル化度)が挙げられる。好適なその他のものとしては、両親媒性重合体、例えば、EP 1 756 188 B1の段落[0012]〜[0068]またはDE 10 2006 001 529 A1の段落[0025]〜[0055]に記載されているもの、あるいは単量体アクリル酸、ブチルメタクリラート、メチルメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラートおよび/またはイソブチルメタクリラートに基づくものが挙げられる。両親媒性ブロック重合体、特に、エチレンオキシド-プロピレンオキシドに基づくものも好適である。具体例としては、Pluronic(登録商標)PEブランド(EO-PO-EOトリブロック重合体; EO: エチレンオキシド, PO: プロピレンオキシド)が挙げられる。好適なその他ものとしては、櫛状(comb)重合体、特に、アルコキシポリオキシアルキレン(メタ)アクリラート、例えば、メチルメタクリラート、メタクリル酸および(メトキシポリエチレングリコール)メタクリラートの櫛状重合体に基づくもの(Atlox(登録商標)4913としてUniqemaから商業的に入手可能である)が挙げられる。通常使用されるその他のものとしては、多糖およびその誘導体、好ましくは、イヌリンに基づく多糖、例えばInutec(登録商標)SP1(グラフト化アルキル基を有するチコリ由来のイヌリン)が挙げられる。
【0052】
通常使用されるアニオン界面活性剤の具体例としては、以下のもののアルカリ金属塩およびアンモニウム塩が挙げられる:アルキルスルファート(アルキル基:C8〜C12)(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、エトキシル化アルカノール(4〜30のエトキシル化度;アルキル基:C12〜C18)およびエトキシル化アルキルフェノール(3〜50のエトキシル化度;アルキル基:C4〜C12)の硫酸セミエステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)、ならびにアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)。さらに、一般式(I)
【化1】

【0053】
(式中、R1およびR2はH原子またはC4-〜C24-アルキルであり、同時にH原子ではなく、M1およびM2はアルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンでありうる)の化合物はアニオン界面活性剤であることが判明している。一般式(I)においては、R1およびR2は、好ましくは、6〜18個のC原子、特に6個、12個および16個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基であり、ここで、R1およびR2は、両方が同時にH原子ではない。M1およびM2は、好ましくは、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであり、ナトリウムが特に好ましい。M1およびM2がナトリウムであり、R1が、12個のC原子を有する分枝状アルキル基であり、R2がH原子またはR1である化合物(I)が、特に有利である。例えばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Companyのブランド)のような50〜90重量%の量のモノアルキル化産物を含む厳密には混合物を、多くの場合使用する。好適なその他のものとしては、ジアルキルスルホスクシナートの塩、例えば、ナトリウム ジオクチルスルホスクシナート(Lutensit(登録商標)A-BOとしてBASF SEから商業的に入手可能)が挙げられる。さらに、アリールフェノールアルコキシラートまたはその硫酸化もしくはリン酸化誘導体、特に、エトキシル化ジ-およびトリ-スチリルフェノールまたはその硫酸化もしくはリン酸化誘導体、例えば、RhodiaのSoprophor(登録商標)(1分子当たり約16個のエチレンオキシド基を有するエトキシル化トリスチリルフェノールスルファートのアンモニウム塩)が好適である。同様に、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体の部分的に中和されたアルカリ金属塩、例えば、BASFのSokalan(登録商標)ブランド、特にSokalan CP45(アクリル酸/マレイン酸共重合体、ナトリウム塩、特に中和されたもの)が好適である。
【0054】
好適なカチオン界面活性剤としては、通例、1個のC6-ないしC18-アルキル、-アルキルアリールまたは複素環基を有するカチオン塩、例えば、第1級、第2級、第3級または第4級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩、およびアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩が挙げられる。具体例としては、ドデシルアンモニウムアセタートまたは対応スルファート、2-(N,N,N-トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン系エステルのスルファートまたはアセタート、N-セチルピリジニウムスルファート、N-ラウリルピリジニウムスルファートおよびN-セチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムスルファート、N-ドデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムスルファート、N-オクチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムスルファート、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムスルファートおよびジェミニ(Gemini)界面活性剤N,N'-(ラウリルジメチル)-エチレンジアミンジスルファート、エトキシル化タロー脂肪アルキルN-メチルアンモニウムスルファートおよびエトキシル化オレイルアミン(例えば、BASF SEの約12エチレンオキシド単位のUniperol(登録商標)AC)が挙げられうる。重要なことは、アニオン性カウンター基の求核性が可能な限り低いことであり、そのようなものとしては、例えば以下のものが挙げられる:ペルクロラート、スルファート、ホスファート、ニトラートおよびカルボキシラート、例えばアセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、プロピオナート、オキサラート、シトラート、ベンゾアート、および有機スルホン酸の共役アニオン、例えばメチルスルホナート、トリフルオロメチルスルホナートおよびパラ-トルエンスルホナート、さらに、テトラフルオロボラート、テトラフェニルボラート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボラート、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロアルセナートまたはヘキサフルオロアンチモナート。
【0055】
加えられる界面活性剤またはその混合物の濃度は広範囲で変動しうる。通常、該水性分散液に対して0.1〜30重量%の濃度が用いられる。
【0056】
アニオン界面活性剤の具体例としては、金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素、バリウムまたはマンガンの塩、オキシドおよびヒドロキシドが挙げられる。以下のものが挙げられうる:水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウムおよび硫化亜鉛。シリカート、ベントナイト、ヒドロキシアパタイトおよびヒドロタルク石も挙げられうる。
【0057】
増粘剤(擬塑性レオロジー、すなわち、静止状態では高い粘度を、運動状態では低い粘度を該製剤に付与する化合物)の具体例としては、例えば多糖、例えばキサンタンガム、または有機薄板状鉱物が挙げられる。
【0058】
好適な消泡剤としては、例えばシリコーンエマルション、長鎖アルコール、脂肪酸、有機フッ素化合物およびそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
該水性製剤を安定化させるために、殺バクテリア剤が加えられうる。本発明の製剤中に存在しうる好適な殺バクテリア剤としては、農薬活性物質の製剤化に通常使用される全ての殺バクテリア剤、例えばジクロロフェンおよびベンジルアルコールヘミホルマールが挙げられる。
【0060】
好適な凍結防止剤の具体例としては、多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセロール、好ましくはグリセロールが挙げられる。一般に、該水性溶液に対して0〜30重量%、好ましくは10〜20重量%が加えられる。
【0061】
種子粉衣(seed-dressing)製剤中に存在しうる好適な接着剤としては、種子粉衣製品において通常使用されうる全ての粘着剤が挙げられる。好ましくは以下のものが挙げられうる:ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコールおよびチロース。
【0062】
さらに、場合によっては、着色剤も本発明の製剤に加えられうる。この文脈においては、好適な着色剤としては、そのような目的に通常使用される全てのもの、例えばC.I. Pigment Red 48:2が挙げられる。この文脈においては、水に難溶性である顔料、および水溶性である色素の両方が使用されうる。
【0063】
一般に、結晶化阻害剤を加えることは必要ではない。5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下の結晶化阻害剤を加えることが好ましく、特に、結晶化阻害剤を加えないことが好ましい。
【0064】
本発明は更に、本発明の分散液を乾燥することにより得られる、10μmまでの粒径を有する活性物質粒子と両親媒性物質とを含む固体組成物に関する。該乾燥は、例えば噴霧乾燥により行われうる。しばしば、該固体組成物の水含量は10重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に0.5重量%以下である。
【0065】
本発明は更に、水性分散液における10μmまでの粒径を有する活性物質粒子の成長を減速するための、両親媒性物質、例えば脂肪酸またはその塩基の使用に関するものであり、ここで、該脂肪酸は10重量%以下まで20℃で水に可溶性である。粒子の成長の減速は、20℃で24時間の該分散液の貯蔵の後、両親媒性物質を含まない溶液と比較して該粒径の増加が低下することを意味すると理解される。
【0066】
本発明の分散液または本発明の固体組成物は、それぞれの有害生物、それらの環境および/またはそれぞれの有害生物から保護されるべき植物、土壌および/または望ましくない植物および/または有用な植物および/またはそれらの環境に該分散液または該固体組成物を作用させることにより、植物病原性菌類および/または望ましくない植生および/または昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するために、および/または植物の成長を調節するために使用されうる。
【0067】
本発明の分散液または本発明の固体組成物は、有用な植物の種子を該分散液または該固体組成物で処理することにより、植物に対する昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するために、および/または植物病原性菌類を防除するために、および/または望ましくない植生を防除するために使用されうる。
【0068】
本発明は更に、本発明の分散液または本発明の固体組成物で処理された種子に関する。「処理」なる表現は、一般に、粉衣を意味する。種子を粉衣することにより、本発明の分散液は、一般に、種子上に残存する。好ましくは、該種子は本発明の分散液または本発明の固体組成物を含む。
【0069】
本発明の利点は、10μm未満の粒径を有する活性物質粒子の水性分散液が粒子成長(オストワルド熟成)の減速を示すことである。もう1つの利点は、該粒子がより遅く沈殿し、より遅く結晶化し、またはそれらが全く生じないことである。該分散液のこの安定化が、環境に優しい物質(これは例えば脂肪酸である)を使用して達成されたことも好都合である。本発明の方法は、それが既存の設備で行われうるという利点を有する。さらに、活性物質粒子の安定な水性分散液が得られうる。
【0070】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0071】
実施例
まず、3mmのガラスビーズおよびシェーカー(Red Devil)を使用して、16gのピラクロストロビンおよび0 / 1 / 2 / 4 g(ピラクロストロビンに対して0 / 6 / 11 / 25重量%)のエルカ酸を144gのプロピレングリコールに1時間懸濁させた。生じた尚も粒が粗い懸濁液を1kg/時間の流速で溶解セルの混合ノズルを介して運搬した。プロピレングリコールを200℃の温度および2kg/時間の送出速度でそこに運搬した。2つの流れを該溶解セル内で乱流混合し、ピラクロストロビンおよびエルカ酸の溶液を得た。
【0072】
このようにして得られた溶液を第2混合ノズルへ運搬し、16kg/時間の送出速度で水(予め5℃に冷却されたもの)と乱流混合した。該混合中にピラクロストロビンの粒子形成が生じる。このようにして得られた非晶質ピラクロストロビン沈殿物を排出させ、分析した。該水性懸濁液は0.42重量%のピラクロストロビンおよび0 / 0.025 / 0.05 / 0.11重量%のエルカ酸を含んでいた。
【0073】
レーザー回折(Malvern Mastersizer S)およびレーザー散乱(Brookhaven Instruments BI90)により、ピラクロストロビンの粒径を24時間にわたって測定した(表1および2)。
【0074】
比較のために、エルカ酸の代わりに4gのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用して、該実験を繰返した。このようにして得られた水性懸濁液は0.42重量%のピラクロストロビンおよび0.1重量%のSDSを含んでいた。
【0075】
該実験は、エルカ酸を含有する製剤が、エルカ酸を含有しない混合物と比較して減速した粒子成長を示すことを示した。
【0076】
表1: レーザー回折によるピラクロストロビンの粒径(1μm未満の比率(%))の分析
【表1】

【0077】
表2: レーザー散乱によるピラクロストロビンの粒径(nm単位のD)の分析
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
10μmまでの粒径を有する固体活性物質粒子と両親媒性物質とを含む水性分散液であって、該両親媒性物質が脂肪族酸またはその塩であり、該脂肪族酸が、少なくとも20個の炭素原子を有する脂肪酸であり、10重量%以下まで20℃で水に可溶性である、上記水性分散液。
【請求項2】
該脂肪族酸が、22〜36個の炭素原子を有する脂肪酸である、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
該活性物質が10 g/l以下まで20℃で水に可溶性である、請求項1または2に記載の分散液。
【請求項4】
該活性物質が農薬である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項5】
該活性物質に対して40重量%以下の両親媒性物質が存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項6】
該分散液に対して1〜60重量%の活性物質粒子が存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項7】
該活性物質粒子が活性物質からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項8】
該活性物質と該両親媒性物質とを接触させることによる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散液の製造方法。
【請求項9】
該活性物質が、水に不溶性である農薬である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液を乾燥させることにより得られる、10μmまでの粒径を有する活性物質粒子と両親媒性物質とを含む固体組成物。
【請求項11】
水性分散液における10μmまでの粒径を有する活性物質粒子の成長を減速させるための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の両親媒性物質の使用。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散液または請求項10に記載の固体組成物の使用であって、それぞれの有害生物、それらの環境および/またはそれぞれの有害生物から保護されるべき植物、土壌および/または望ましくない植物および/または有用な植物および/またはそれらの環境に該分散液または該固体組成物を作用させることにより、植物病原性菌類および/または望ましくない植生および/または昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、および/または植物の成長を調節するための、上記使用。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散液または請求項10に記載の固体組成物の使用であって、有用な植物の種子を該分散液または該固体組成物で処理することにより、植物に対する昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、および/または植物病原性菌類を防除するための、および/または望ましくない植生を防除するための、上記使用。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散液または請求項10に記載の固体組成物を含む種子。

【公表番号】特表2012−512825(P2012−512825A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541347(P2011−541347)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066837
【国際公開番号】WO2010/079037
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】