説明

迅速な水質アセスメントのためのエンテロコッカスおよび糞便バクテロイデス

本発明は、サンプル中の糞便指標菌の迅速なアセスメントのための方法および組成物に関する。サンプル中のこれらの生物の存在の、特に定量PCR法を用いる検出に使用するための新規プライマーおよびプローブ組成物を、本明細書において提供する。配列番号1〜4、7および8に示すプライマーならびに配列番号5、6および9に示す新規オリゴヌクレオチドプローブ配列を含む、新規オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブ、ならびにサンプル中の糞便指標菌、特にエンテロコッカス種(Enterococcus spp.)および糞便バクテロイデス種(Bacteroides spp.)、または検体処理対照の検出および/または定量のためのこれらのプライマーおよびプローブの使用方法を、本明細書において提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[電子的に提出する配列表に関する記載]
配列表の正式なコピーを、2010年7月21に作製した1キロバイトのサイズを有する「393017SeqList.txt」という名のファイルで、ASCII形式の配列表としてEFS−Web経由で電子的に提出し、同時に、本明細書と共に出願する。このASCII形式のドキュメントに含まれている配列リストは、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、サンプル中の指標菌、特にエンテロコッカス種(Enterococcus spp.)および糞便バクテロイデス種(Bacteroides sp.)の検出および/または定量のための組成物および方法を提供する。本発明は、サンプル中の検体処理対照の検出および/または定量のための組成物および方法も含む。
【背景技術】
【0003】
疫学研究により、汚染された雨水による影響を受けた場所での水泳またはサーフィンからのレクリエーション感染(recreational exposure)が、様々な病気の有意な増加をもたらすことが証明された(Griffin,2003,supra;Haile et al.(1999)Epidemiology 10:355−363)。濾過摂食者による汚染物の濃縮のため、汚染された貝類の消費による感染のさらにいっそう大きな可能性があり得る(Gerba(1988)Food Technol.42:99−103;Griffin,2003,supra;Pina et al.(1998)Appl.Environ.Microbiol.64:3376−3382;Schwab et al.(1998)J.Food Prot.61:1674−1680)。懸念される病気としては、下痢、目および呼吸器感染症、胃腸炎、肝炎、心筋炎、髄膜炎、麻痺ならびに重症慢性疾患が挙げられる(しかしこれらに限定されない)。
【0004】
米国では、大腸菌(Escherichia coli)および腸球菌(enterococci)が微生物の水質の指標として目下使用されて、病原菌および病原性ウイルスの潜在的存在の代用として役立っている。
【0005】
米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency:US EPA)による以前の健康および疫学研究により、海洋および真水サンプル両方における細菌属エンテロコッカスのコロニー形成単位(colony−forming unit:CFU)密度が、これらの水に曝露された水泳者における胃腸炎疾患率と直接相関していることが立証された(Cabelli et al.(1982)J.Epidemiol.115:606−616;Dufour(1984)EPA−600/1−84−004,Office of Research and Development,US Environmental Protection Agency,Cincinnati,OH)。一般にE.coliと呼ばれる菌株は、病原性遺伝子を備えることにより、人間または動物における種々の感染症(尿路感染症、コレラ様または出血性下痢、赤痢症候群、溶血性および尿毒症性症候群、敗血症、新生児髄膜炎、様々な化膿性感染症)の原因になり得る。これらのデータに基づいて、許容可能な健康上のリスクと関係づけることができる、これらの生物の最大濃度に関するガイダンスが出された(Dufour and Ballantine(1986)EPA 440/5−84−002,Washington DC)。それ以来、レクリエーション水サンプル中のエンテロコッカス濃度を測定するために開発されてきた改善された選択的培養法により、この遅延期間の間の水質条件の変化が、水泳者の健康を完全に保護するものでないという公衆への通告になり得ることが多いことが証明された(Messer and Dufour(1998)Appl.Environ.Microbiol.64:678−680;US EPA(2002)EPA 821/R−02/022,2002,US Environmental Protection Agency,Office of Water(4303T),Washington DC)。しかし、この方法には、結果を得るために、まだ少なくとも24時間必要である。
【0006】
報告時間がより短い分子微生物分析法の潜在的使用に対する関心が、今、益々高まっている。そのような技術の1つが、定量ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)である。多数の異なる糞便指標生物および水系感染性病原体の特異的検出のために、この技術に付随するプライマーセットおよびプローブが、今では開発されている(Ludwig and Schleifer(2000)Syst.Appl.Microbiol.23:556−562;Lyon(2001)Appl.Environ.Microbiol.67:4685−4693;Brinkman et al.(2003)Appl.Environ.Microbiol.69:1775−1782;Foulds et al.(2002)J.Appl.Microbiol.93:825−834;Blackstone et al.(2003)J.Microbiol.Methods 53:149−155;Frahm and Obst(2003)J.Microbiol.Methods 52:123−131;Guy et al.(2003)Appl.Environ.Microbiol.69:5178−5185;Noble et al.(2003)J.Water Health 1:195−207)。現場でまたは現場付近で動作させることができる携帯用器械類の利用可能性およびQPCR分析用のサンプルの迅速な処理方法の開発(Brinkman et al.2003,supra)により、サンプリングから結果までのこの方法の全時間要求量は、おおよそほんの数時間に減少された。
【0007】
幾つかの特許が、有害細菌を検出するための方法を開示している。米国特許第6,207,818号明細書、同第6,060,252号明細書、同第6,054,269号明細書および同第5,298,392号明細書すべてに、そのような有害細菌の増幅および検出が記載されている。
【発明の概要】
【0008】
既存の方法と等価の結果をもたらす、生体サンプル、工業サンプルおよび環境サンプル中の指標菌の迅速な定量方法の重要な要求がある。生体サンプル、工業サンプルおよび環境サンプル中の有害細菌の存在を迅速に検出するためのさらなる方法が必要とされている。
【0009】
本発明は、サンプル、特に、生物源、工業源および環境源からのサンプル中の糞便指標菌の迅速なアセスメントのための方法および組成物に関する。サンプル中のこれらの生物の存在の、特に定量PCR法を用いる検出に使用するための新規プライマーおよびプローブ組成物を、本明細書において提供する。本発明は、定量アッセイの完全性を、該アッセイにおいて検体処理対照(Specimen processing control:SPC)の存在を検出することにより評価するための組成物および方法をさらに含む。
【0010】
1つの実施形態において、本発明は、新規オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブセットを提供する。これらのプライマーおよびプローブセットを増幅法(例えば、PCR、特に定量PCR)において使用することができ、および試験サンプル、特に生体サンプル、工業サンプルまたは環境サンプル中の糞便指標菌を検出するための増幅法において使用するためのキットにパッケージすることができる。加えて、これらのプライマーおよび/またはプローブセットを増幅法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)において使用して、生物源、工業源および環境源から糞便指標菌を除去するために用いられる処置の効力を評価またはモニターすることができる。
【0011】
従って、1つの実施形態において、本発明は、配列番号1〜4に示す新規オリゴヌクレオチドプライマー、ならびに配列番号5および6に示す新規オリゴヌクレオチドプローブ配列を提供するものである。もう1つの実施形態において、本発明は、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャーの一方と、配列番号5を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアとクエンチャーの他方と、PCRブロッカー部分と、配列番号1を含むオリゴヌクレオチドとを含む新規プローブを提供する。この組成物を、サンプル中の糞便指標菌、特に、ヒト糞便汚染に関連したバクテロイデス属のメンバー、例えばバクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotamicron)を検出する方法において、配列番号2と併用することができる。もう1つの実施形態において、本発明は、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャーの一方と、配列番号6を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアとクエンチャーの他方と、PCRブロッカー部分と、配列番号3を含むオリゴヌクレオチドとを含む新規プローブを提供する。この組成物を、サンプル中の糞便指標菌、特にエンテロコッカス種を検出する方法において、配列番号4と併用することができる。
【0012】
もう1つの実施形態において、本発明は、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャーの一方と、配列番号9を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアとクエンチャーの他方と、PCRブロッカー部分と、配列番号7を含むオリゴヌクレオチドとを含む新規プローブを提供する。この組成物を、サンプルについての定量アッセイ、特にポリメラーゼ系の増幅アッセイの完全性を評価する方法において、配列番号8と併用することができる。
【0013】
本発明による組成物を含むサンプル中の糞便指標菌の検出および/または定量に有用なキットを、さらに提供する。このキットは、提供された組成物をポリメラーゼ系の増幅反応(例えばPCRまたはQPCR)において使用するための説示をさらに含むことができる。定量アッセイの完全性を評価するためのキットも提供する。
【0014】
もう1つの実施形態において、本発明は、サンプル中の糞便指標菌を、該細菌中に存在する標的核酸領域のポリメラーゼ系の増幅を用いて検出する方法に関し、この方法は、(a)糞便指標菌を含有すると推測される試験サンプルを提供するステップと、(b)前記サンプルと本発明の組成物とを、標的核酸領域を含むポリメラーゼ系の核酸増幅生成物を生じさせるために十分な条件下で接触させるステップと、(c)前記試験サンプル中の生きている糞便指標菌の存在の指標として前記核酸増幅生成物の存在を検出するステップとを含む。
【0015】
本発明は、本発明によるプライマーの使用にも関し、この場合のプライマーおよびプローブは、配列番号1〜9で定義するとおりの配列のいずれかに一致する配列を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法および組成物は、ポリメラーゼ系の増幅法、特にポリメラーゼ連鎖反応を用いる、23S rRNAおよび16s rRNAをそれぞれコードする標的遺伝子の増幅による、サンプル中の糞便指標菌、特にエンテロコッカス種および糞便バクテロイデス種の検出および/または定量に向けたものである。本明細書において用いる場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、特異的ポリヌクレオチドテンプレート配列(または「標的核酸」)を増幅するためのインビトロ法を指す。「糞便指標菌」は、そのサンプル中の糞便の存在に関係づけられる(または「を示す」)サンプル源中に存在する微生物を指す。本発明のために、糞便指標菌は、エンテロコッカス種および糞便バクテロイデス種である。
【0017】
1つの実施形態では、1つ以上のオリゴヌクレオチドプライマー配列を1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ配列に共有結合により結合させる。前記プローブは、該オリゴヌクレオチドプローブの一方の末端でフルオロフォアと隣接し、該オリゴヌクレオチドプローブの反対側の末端で(または内部で)クエンチャーと隣接している。このプライマー/プローブ複合体は、プローブ配列のプライマー伸長生成物への組込みを防止するために、プライマーおよびプローブ配列間にPCRブロッカー分子をさらに含む。前記オリゴヌクレオチドプローブは、互いに相補的である2つのステムを両端に有して、プライマーの伸長生成物にまだハイブリダイズしていないときには、ステム−ループ(または「ヘアピン」)二次構造であるように設計されている。この実施形態において、前記プローブの3’および5’末端に結合されているフルオロフォアおよびクエンチャーは、プローブが溶液中で遊離しているときには極めて近接していて、蛍光は検出できない。前記プローブが、伸長されたプライマー(すなわち「プライマー伸長生成物」)に結合しているためにアンフォールドしているときには、フルオロフォアとクエンチャーは離隔されているので、蛍光を検出して増幅生成物の量を定量することができる。この蛍光は、そのサンプル中に存在する標的核酸の量に対応する。
【0018】
もう1つの実施形態において、前記プライマー/プローブ複合体は、配列番号5を含むプローブに共有結合により結合された、配列番号1に示すオリゴヌクレオチドプライマーを含む。この複合体は、プローブ配列に隣接しているフルオロフォアおよびクエンチャー、ならびに該プライマーと該プローブの間に少なくとも1つのPCRブロッカー分子(例えば、ヘキサエチレン(hexyethylene)グリコール)をさらに含む。このプライマー/プローブ複合体を、配列番号2に示すオリゴヌクレオチドプライマーと共に使用して、定量ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)を用いてサンプル中の糞便バクテロイデス種の存在を迅速に検出することができる。
【0019】
さらにもう1つの実施形態において、前記プライマー/プローブ複合体は、配列番号6を含むプローブセットに共有結合により結合された、配列番号3に示すオリゴヌクレオチドプライマーを含む。この複合体は、プローブ配列に隣接しているフルオロフォアおよびクエンチャー、ならびに該プライマーと該プローブの間に少なくとも1つのPCRブロッカー分子(例えば、ヘキサエチレングリコール)をさらに含む。このプライマー/プローブ複合体を、配列番号4に示すオリゴヌクレオチドプライマーと共に使用して、定量ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)を用いてサンプル中のエンテロコッカス種の存在を迅速に検出することができる。これらのそれぞれのプライマー/プローブ複合体を単独で使用してまたは併用して、試験サンプル中に存在する糞便指標菌の量を定量することができる。
【0020】
サンプルに関して、定量アッセイ、特に、例えばポリメラーゼ系の増幅アッセイの完全性を評価するための方法をさらに包含する。前記アッセイの完全性は、サンプル中の標的核酸のレベルを正確に評定するそのアッセイの能力を指す。例えば、サンプルマトリックス(すなわち、試験しているサンプルの成分)によるPCR阻害が標的テンプレートの増幅を妨げ、その結果、偽陰性報告がなされる場合がある。従って、反応に検体処理対照(SPC)を含めること、および本明細書に記載する構築物を用いてそのSPCの存在を検出することにより、標的核酸の検出に干渉することなく、サンプル分析の効率に関する有用な情報を得ることができる。前記構築物を、本明細書に記載するバクテロイデスおよび/もしくはエンテロコッカスアッセイと共に用いることができ、またはサンプル、特に、任意の生体サンプル、工業サンプルもしくは環境サンプルの任意の増幅ベースの定量アッセイの際に使用することができる。従って、様々な実施形態において、前記SPCプライマー/プローブ複合体は、配列番号9を含むプローブセットに共有結合により結合された、配列番号7に示すオリゴヌクレオチドプライマーを含む。この複合体は、プローブ配列に隣接しているフルオロフォアおよびクエンチャー、ならびに該プライマーと該プローブの間に少なくとも1つのPCRブロッカー分子(例えば、ヘキサエチレングリコール)をさらに含む。このプライマー/プローブ複合体を、配列番号8に示すオリゴヌクレオチドプライマーと共に使用して、定量ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)を用いてサンプル中の検体処理対照(SPC)の存在を迅速に検出することができる。
【0021】
<サンプル源>
本発明の方法および組成物は、生体サンプル、工業サンプルまたは環境サンプル中の糞便指標菌の検出および/または定量の際に有用である。本発明の1つの態様において、前記環境サンプルは、レクリエーション水から採取される。「レクリエーション水」は、海洋水、池水、湖水、クリーク水、河川水、スイミングプール、温水浴槽、サウナなどを含む。本発明は、貝類もしくは他の水生生物、陸生生物、地下水、浸出水、廃水、下水、汚水、中水道用水、ビルジ水、バラスト水、供給水、プロセス用水、工業用水、潅漑用水、雨水、流出水、冷却水、非飲用水、飲用水、飲料水、半純水および/または使用済み超純水などをはじめとする(しかしこれらに限定されない)、他のサンプル源での使用に同様に適する。
【0022】
サンプルからの核酸材料の抽出は、当技術分野において公知の常用技術を用いて行うことができる。「細菌から抽出される核酸」は、全核酸、またはリボソームRNAもしくはゲノムDNA、またはさらに細菌からの核酸の逆転写から得られる核酸のいずれかを意味すると解される。
【0023】
核酸材料は、標準的な方法、例えばガラスビーズミリングおよびガラスミルク吸着法、または核酸材料を抽出する任意の同様の手順を用いて抽出される。加えて、下の実験実施例セクションにおいて提供するプロトコルを用いて、本方法において市販のキット、例えばDNA EZ RW−04キット(GeneRite、ニュージャージー州ブランズウィック)を利用することができる。
【0024】
<オリゴヌクレオチドプライマー>
本発明の1つの実施形態において、サンプル中の糞便指標菌の検出および/または定量の際に使用するためのオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。本明細書において用いる場合、「プライマー」は、塩基対合により標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする、指標菌中に存在するまたは指標菌に由来する標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を有するまたは含有するタイプのオリゴヌクレオチドを指す。1つの実施形態において、本発明のプライマーは、配列番号1〜4に示すヌクレオチド配列を含むものである。用語「オリゴヌクレオチド」は、概して150ヌクレオチド長以下の(例えば、5ヌクレオチドと150ヌクレオチドの間、好ましくは10から100ヌクレオチドの間、さらに好ましくは15から50ヌクレオチドの間の長さの)、短いポリヌクレオチドを指す。しかし、本明細書において用いる場合、この用語は、より長いまたはより短いポリヌクレオチド鎖を包含することも意図されている。
【0025】
本明細書において用いる場合、用語「標的ポリヌクレオチド」および「標的核酸」は、サンプル中のその量を判定することとなるポリヌクレオチドを指す。本発明において、標的核酸は、16S rRNA(バクテロイデス種について)または23s rDNA(エンテロコッカス種について)をコードする核酸に対応する。本発明の「標的核酸」は、少なくとも20ヌクレオチド、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも100ヌクレオチド以上、例えば500ヌクレオチド以上の既知配列を含有する。本発明の「標的核酸」は、天然起源のポリヌクレオチド(すなわち、人間の介入なしで自然界に存在するもの)である場合もあり、またはゲノムDNA、cDNA、プラスミドDNA、全RNA、mRNA、tRNA、rRNAをはじめとする(しかしこれらに限定されない)、組換えポリヌクレオチド(すなわち、人間の介入でしか存在しないもの)である場合もある。標的ポリヌクレオチドは、例えばポリメラーゼ連鎖反応の場合のように、それ自体の増幅生成物も含む。本発明によると、「標的ポリヌクレオチド」または「標的核酸」は、チオリン酸塩、亜リン酸塩、環原子修飾誘導体などを含む、修飾ヌクレオチドを含有する場合がある。
【0026】
本明細書において用いる場合、用語「相補的」は、2つのポリヌクレオチド鎖の領域間のまたは同じポリヌクレオチド鎖の2つの領域間の配列相補性の概念を指す。ポリヌクレオチドの第一の領域は、同じまたは異なるポリヌクレオチドの第二の領域に、それら2領域が逆平行型に配置されていて該第一の領域の少なくとも1つのヌクレオチドが該第二の領域の塩基と塩基対合できる場合、相補的である。従って、2つの相補的ポリヌクレオチドは、すべてのヌクレオチド位置で塩基対合している必要はない。「相補的」は、第二のポリヌクレオチドに100%すなわち「完全に」相補的であり、従ってすべてのヌクレオチド位置で塩基対合を形成する、第一のポリヌクレオチドを指す。「相補的」は、100%相補的ではなく(例えば、90%または80%または70%相補的)、1つ以上のヌクレオチド位置にミスマッチヌクレオチドを含有する、第一のポリヌクレオチドも指す。従って、本発明のオリゴヌクレオチドは、本明細書において配列番号1、2、3、4、5、6、7、8または9として開示するポリヌクレオチドに相補的である標的核酸領域が異なるバクテロイデスまたはエンテロコッカスの種(またはSPC)を検出することができる。
【0027】
本明細書において用いる場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的(部分相補的を含む)ポリヌクレオチド鎖の対合に関して用いる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強さ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖間の会合の強さ)は、ポリヌクレオチド間の相補性の程度、塩の濃度などの条件による影響を受ける関与する条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドの融解温度(Tm)、他の成分の存在(例えば、ポリエチレングリコールの存在または不在)、ハイブリダイズする鎖のモル濃度およびポリヌクレオチド鎖のG:C含有量をはじめとする、当技術分野において周知の多くの要因による影響を受ける。
【0028】
本発明のプライマーは、適切な配列のクローニングおよび消化ならびに直接化学合成をはじめとする(しかしこれらに限定されない)、当技術分野において公知の技術を用いて調製することができる。
【0029】
本発明のプライマーを作製するために使用することができる化学合成法としては、Narang et al.,Methods in Enzymology,68:90(1979)により記載されたホスホトリエステル法、Brown et al.,Methods in Enzymology,68:109(1979)により開示されたホスホジエステル法、Beaucage et al.,Tetrahedron Letters,22:1859(1981)により開示されたジエチルホスホロアミダート法および米国特許第4,458,066号明細書に記載されている固体支持体法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の合成オリゴヌクレオチドプライマーを調製するための自動オリゴヌクレオチド合成装置の使用もここでは考えられる。加えて、所望される場合には、当技術分野において公知の技術および下で説明する技術を用いてプライマーを標識することができる。
【0030】
<オリゴヌクレオチドプローブ>
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーの1つ以上が、1つ以上のプローブ配列をさらに含む場合がある。前記プローブは、前記オリゴヌクレオチドプライマーとは別である(「二分子プローブ」)場合もあり、または、好ましくは、オリゴヌクレオチドプライマーに結合されている(「一分子プローブ」または「テイルドプローブ」)場合もある。例えば、Whitcombe et al.(1999)Nature Biotechnol.17:804−807および米国特許第6,326,145号明細書(これらは両方とも、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている自己プロービング配列(例えば、SCORPIONS(商標)プライマー、「テイルドプライマー」とも呼ばれる)を参照のこと。
【0031】
本明細書において用いる場合、用語「プローブ」は、プローブ中の少なくとも1つの配列とプライマー伸長生成物中の配列との相補性に起因して、プライマー伸長生成物とハイブリッド構造を形成するポリヌクレオチドを指す。「プライマー伸長生成物」とは、本明細書において配列番号1〜4、7および8として開示する配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーの(標的核酸をテンプレートとして使用する)ポリメラーゼ系の伸長の結果として生ずる核酸生成物を意図する。前記プローブのポリヌクレオチド領域は、DNAおよび/またはRNAおよび/または合成ヌクレオチド類似体から成り得る。好ましくは、前記プローブは、上で説明したオリゴヌクレオチドプライマー配列に相補的な配列を含有しない。本発明のプローブは、理想的には、100ヌクレオチド以下の長さ、例えば、80ヌクレオチド以下、70ヌクレオチド以下、60ヌクレオチド以下、50ヌクレオチド以下、40ヌクレオチド以下、30ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下または10ヌクレオチド未満の長さである。
【0032】
幾つかの実施形態において、本発明によるプローブは、ヘアピン配列を含む。「ヘアピン配列」または「ステムループ配列」は、本明細書において用いる場合、ループ配列によって隔てられた、二本鎖ステム領域を形成することができる、2つの自己相補的配列を含む。前記二本鎖ステム領域を含むオリゴヌクレオチドの2つの領域は、互いに実質的に相補的であり、その結果、適切な条件下では自己ハイブリダイゼーションが生ずる。しかし、前記ステムは、そのステム領域のハイブリダイゼーションのために適切な条件(例えば温度)下でヘアピン構造が保持されるのであれば、1つ以上のミスマッチ、挿入または欠失を含むことができる。前記ヘアピン配列は、二本鎖ステムセグメントから伸びる一本鎖領域をさらに含む場合がある。一分子(または「テイルド」)プローブの場合、ヘアピン配列は、オリゴヌクレオチドプライマー配列の5’末端に位置し、下で説明するようなリンカー配列および/または他の部分によって場合により隔てられている。前記ヘアピンのステム領域は、2から20塩基対、概して3から10塩基対または3塩基対と8塩基対の間であり得る。
【0033】
1つの実施形態において、前記ヘアピン構造のステム配列は、標的核酸へのハイブリダイゼーションを避けるように設計される。従って、前記ヘアピン配列のステム配列は、標的核酸と相同性を共有しない。加えて、前記ステム構造は、ステム形成領域外のプローブの領域へのハイブリダイゼーションを避けるように設計される。従って、前記ステム領域の配列は、前記プローブの他の部分への相同性を共有しない(すなわち、ループ配列への相同性がない)。
【0034】
もう1つの実施形態において、前記ヘアピン構造のステムの配列の少なくとも一部は、プライマー伸長生成物に相補的であり、従って、それにハイブリダイズすることができる。好ましくは、前記ステムの自己ハイブリダイゼーションは、ミスマッチ標的配列へのプローブの結合より熱力学的に有利であるように設計される。ヘアピン配列の安定性および融解温度は、例えばmfold(Zuker(1989)Science 244:48−52)またはOligo 5.0(Rychlik & Rhoads(1989)Nucleic Acids Res.17:8543−51)などのプログラムを用いて、判定することができる。
【0035】
本明細書において用いる場合、「Tm」および「融解温度」はいずれも、二本鎖ポリヌクレオチド分子集団の50%が一本鎖に解離した状態になる温度を意味する用語である。ポリヌクレオチドのTmを計算するための方程式は、当技術分野において周知である。例えば、次の方程式によってTmを計算することができる:Tm=69.3+0.41×(G+C)%−650/L(式中、Lは、ヌクレオチド中のプローブの長さである)。1M塩でのハイブリダイゼーションアッセイから採用されたおよびPCRプライマーについてのTmの計算に一般に用いられる式:[(A+Tの数)×2℃+(G+Cの数)×4℃]を用いて、ハイブリッドポリヌクレオチドのTmも推定することができる。例えば、Newton et al.(1997)PCR 2nd Ed.(Springer−Verlag,New York)を参照のこと。Tmの計算のために構造および配列の特徴を考慮に入れる、他のより高度な計算法が、当技術分野には存在する。算出されるTmは単なる推定値であり、最適な温度は、一般には実験により決定される。
【0036】
2つのステム形成領域に介在する一本鎖ループ配列は、1から40塩基の間、概して2から30塩基、3から20塩基、4から15塩基、または4から10塩基で長さの点で様々であり得る。1つの実施形態において、前記ループの配列は、本発明のプライマー配列(例えば、配列番号1、2、3、4、7または8)のポリメラーゼ系の伸長の結果として生ずるプライマー伸長生成物の一部分にハイブリダイズする。さらなる実施形態において、前記ループの配列は、配列番号5を含む。もう1つの実施形態において、前記ループの配列は、配列番号6を含む。尚、さらなる実施形態において、前記ループの配列は、配列番号9を含む。
【0037】
<リンカー配列>
本発明によるプローブは、ヘアピン配列とオリゴヌクレオチドプライマー配列の間に位置するリンカー配列をさらに含むことができる。リンカーは、例えば、標的核酸にハイブリダイズする標的結合配列に干渉することなく確実にヘアピン配列が形成されるために、または標的結合配列の標的核酸へのハイブリダイゼーションに干渉することなく標識を付けることを確実に可能にするために有用であり得る。本明細書において用いる場合、「標的結合配列」は、配列番号1〜4、7および8として開示するプライマー配列に対応する。
【0038】
前記リンカー配列は、1と40の間の塩基、概して1と25の間、1と20の間、1と15の間、1と10の間および1と5の間の塩基を含むことができる。そのリンカー配列がヘアピンループ構造の形成に干渉しない、望ましくない標的にハイブリダイズしない、またはプローブ配列のプライマー伸長生成物へのハイブリダイゼーションに干渉しないのであれば、リンカー配列に関する厳格な要件はない。
【0039】
前記プローブは、標的結合配列のポリメラーゼを介した連鎖伸長を防止するブロッキング部分をさらに含むことができる。本発明の1つの実施形態において、前記PCRブロッカーは、プローブとプライマーの間、該オリゴヌクレオチドプライマー配列の5’末端に挿入されるヘキサエチレングリコール(HEG)である。他の適するブロッカー部分としては、プライマーテンプレートの伸長を防止することとなる、スペーサー要素18(SP−18)、2−O−アルキルRNA、ペプチド核酸、またはヌクレオチド配列が挙げられる。この実施形態は、欧州特許第0416817号明細書および米国特許第5,525,494号明細書(これらの内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0040】
<標識付け>
本発明のプライマーおよび/またはプローブは、増幅反応のモニタリングを助長するために1つ以上の標識をさらに含むことができる。本明細書において用いる場合、用語「標識」または「標識された」は、検出可能な(好ましくは、定量可能な)シグナルを生じさせるために使用することができる、およびポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブに結合させることができる、任意の原子または部分を指す。直接および間接標識法をはじめとする多種多様な標識およびコンジュゲーション技術が公知であり、科学文献にも特許文献にも広範に報告されている。使用することができる標識の例としては、ラジオヌクレオチド、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光部分、インターカレーター、化学発光部分、磁気粒子などが挙げられる。そのような標識の使用を教示している特許としては、米国特許第3,817,837号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,939,350号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,277,437号明細書、同第4,275,149号明細書および同第4,366,241号明細書が挙げられる。
【0041】
<フルオロフォア>
1つの実施形態において、前記プライマーおよび/またはプローブは、インタクトプローブ中の(例えば、ステム−ループ配置(一分子)内の、またはプライマー伸長生成物には結合していないが、下で説明するクエンチャーを含むオリゴヌクレオチドに結合している(二分子))フルオロフォアによって放射される蛍光を実質的に消光するが、インタクトでないプローブ中の蛍光を消光せず、その結果、ステム領域の変性およびプライマー伸長生成物へのプローブの少なくとも一部分のハイブリダイゼーションにより全蛍光が増加することとなるように、フルオロフォアおよびクエンチャーで標識することができる。さらに、増幅生成物の実時間検出中の蛍光シグナルの発生により、サンプル中の初期の標的配列数の正確な定量が可能になる。
【0042】
5−FAM(5−カルボキシフルオレセインとも呼ばれる、スピロ(イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン)−5−カルボン酸、3’,6’−ジヒドロキシ−3−オキソ−6−カルボキシフルオレセインとも呼ばれる)、5−ヘキサクロロ−フルオレセイン([4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−(3’,6’−ジピバロイル−フルオレセイニル)−6−カルボン酸])、6−ヘキサクロロ−フルオレセイン([4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−5−カルボン酸])、5−テトラクロロ−フルオレセイン([4,7,2’,7’−テトラクロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−5−カルボン酸])、6−テトラクロロ−フルオレセイン([4,7,2’,7’−テトラクロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−6−カルボン酸])、5−TAMRA(5−カルボキシテトラメチルローダミン、キサンチリウム,9−(2,4−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチルアミノ)、6−TAMRA(6−カルボキシテトラメチルローダミン、キサンチリウム,9−(2,5−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチルアミノ)、EDANS(5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸)、1,5−IAEDANS(5−((((2−ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸)、DABCYL(4−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸)Cy5(インドジカルボシアニン−5)Cy3(インド−ジカルボシアニン−3)、およびBODIPY FL(2,6−ジブロモ−4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a,−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸)、Rox、ならびにこれらの適する誘導体をはじめとする(しかしこれらに限定されない)多種多様なフルオロフォアを使用することができる。
【0043】
<クエンチャー>
本明細書において用いる場合、用語「クエンチャー」は、蛍光ドナーからの放射を、そのドナーにまたはそのドナーの付近に結合されているとき、減少させることができる、発色性分子または化合物の一部を指す。消光は、蛍光共鳴エネルギー移動(FET)、光誘起電子移動、項間交差の常磁性増進(paramagnetic enhancement of intersystem crossing)、Dexter交換カップリング、および励起子カップリング、例えばダーク・コンプレックス(dark complexes)の形成をはじめとする幾つかのメカニズムのいずれかによって行うことができる。従って、クエンチャーは、アッセイに使用される励起したフルオロフォアからの少なくとも1つの蛍光放射を消光することができる、任意の材料であり得る。下記の参考文献によって例示されるように、特定のプローブに適切なレポーター−クエンチャーペアを選択するために利用することができる実際に役立つ沢山のガイダンスが文献の中にある:Clegg(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2994−2998;Wu et al.(1994)Anal.Biochem.218:1−13;Pesce et al.,editors(1971)Fluorescence Spectroscopy(Marcel Dekker,New York);White et al.(1970)Fluorescence Analysis:A Practical Approach(Marcel Dekker,New York)など。文献としては、レポーター−クエンチャーペアを選択するための蛍光および発色性分子ならびにそれらの関連光学特性の網羅的リストを提供する参考文献、例えば、Berlman(1971)Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules,2nd Edition(Academic Press,New York);Griffiths(1976)Colour and Constitution of Organic Molecules(Academic Press,New York);Bishop,editor(1972)Indicators(Pergamon Press,Oxford);Haugland(1992)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(Molecular Probes,Eugene,OR);Pringsheim(1949)Fluorescence and Phosphorescence(Interscience Publishers,New York)(これらのすべては、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)も挙げられる。さらに、下記の参考文献によって例示されるように、オリゴヌクレオチドに付加させることができる一般的な反応性基によって共有結合により結合させるためのレポーターおよびクエンチャー分子の誘導体化についての広範なガイダンスが文献の中にある、例えば、Hauglans,1992,supra;Ullman et al.,米国特許第3,996,345号、Khanna et al.,米国特許第4,351,760号(これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0044】
多数の市販のクエンチャーが当技術分野において公知であり、それらとしては、DABCYL、BHQ−1、BHQ−2およびBHQ−3(Biosearch Technologies,Inc.、カリフォルニア州ノヴァト)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
フルオロフォアおよびクエンチャーの結合
本発明によるプローブは、該プローブ配列の3’ヌクレオチドに結合された、フルオロフォアまたはクエンチャーの一方を有する。前記フルオロフォアまたはクエンチャーの結合は、好ましくは、3’末端ヌクレオチドのヒドロキシル部分でである。直接カップリングにより、または代替的に1原子と5原子の間の長さのリンカー配列または他の適する分子を使用して、結合を行うことができる。
【0046】
蛍光またはクエンチャーの内部結合については、当技術分野において公知の手段のいずれかを用いて連結を行うことができる。多くの色素のオリゴヌクレオチドへの結合のために適切な連結方法論が、多くの参考文献、例えば、Marshall(1975)Histochemical J.7:299−303;Menchen et al.,米国特許第5,188,934号明細書、Menchen et al.,欧州特許出願第87310256.0号、およびBergot et al.,国際出願PCT/US90/05565に記載されている。すべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
前記フルオロフォアまたはクエンチャーの他方は、プローブ内のヘアピン配列の外部の任意の場所に、好ましくは、該オリゴヌクレオチドプローブがインタクトであるときに十分な量の消光が起こるような該蛍光/クエンチャーの他方から離れた所に、結合させることができる。例えば、フルオロフォアをプライマー/プローブ複合体の3’ヌクレオチドに結合させる場合、クエンチャーを、標的結合配列内または自由選択のリンカー配列内いずれかのプローブ内に結合させることができる。1つの実施形態では、前記フルオロフォアおよびクエンチャーを互いに5ヌクレオチドと40ヌクレオチドの間で配置する。もう1つの実施形態では、前記フルオロフォアおよびクエンチャーを互いに10ヌクレオチドと34ヌクレオチドの間、15ヌクレオチドと30ヌクレオチドの間、または20から25ヌクレオチドの間で配置する。
【0048】
もう1つの実施形態において、前記プライマー/プローブ複合体は、クエンチャー配列を含まない。この例でのプローブは、ヘアピン配置をとらず、線形(「オープン」フォーマット)である。クエンチャーは、そのプローブ配列の少なくとも一部分に相補的である(およびハイブリダイズすることができる)別のオリゴヌクレオチドに結合させ、この場合、その相補的部分は、フルオロフォアに隣接しているまたは少なくとも十分に近接しているので、それら2つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズしたときに、フルオロフォアによって放射される蛍光がクエンチャーによって吸収される。この実施形態でのプローブは、該プローブのプライマー伸長生成物へのハイブリダイゼーションのほうが、クエンチャー配列を含む相補的オリゴヌクレオチドへの該プローブの再アニーリングより熱力学的に有利であるように設計される。このタイプのプローブを本明細書では「二分子」プローブと呼ぶ。
【0049】
固体支持体へのプローブの結合
本発明のプローブを固体支持体に直接連結させることもでき、またはケミカルスペーサーによって連結させることもできる。本発明による有用な固体支持体としては、シリカ系マトリックス、セルロース系材料、プラスチック材料、膜ベースのマトリックス、ならびにスチレン、ラテックスまたはシリカ系材料および他のポリマーを含む(しかしこれらに限定されない)表面を含むビーズが挙げられるが、それらに限定されない。磁気ビーズも本発明により有用である。固体支持体は、幾つかの製造業者から購入することができる。
【0050】
オリゴヌクレオチドを、固体支持体にカップリングさせることができるように、一定の化学的および/または捕捉部分を用いて合成できることは、当業者に周知である。オリゴヌクレオチドの固体支持体への結合の例は、例えば、米国特許出願公開第2003/0165912号において見つけることができ、該出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。適する捕捉部分としては、ビオチン、ハプテン、タンパク質、ヌクレオチド配列、抗原部分、または化学反応性部分が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなオリゴヌクレオチドを、先ず、溶解状態で使用し、その後、固体支持体上に捕捉させることができ、または先ず、固体支持体に結合させ、その後、検出反応において使用することができる。
【0051】
上で論じたように、好ましい実施形態において、前記プローブオリゴヌクレオチドは、標識オリゴヌクレオチドプローブをプライマー伸長生成物にハイブリダイズしたときに、フルオロフォアの励起によりその標識オリゴヌクレオチドプローブのフルオロフォアとクエンチャーの間で蛍光エネルギー移動が発生しないように構成される。これらのタイプのプローブ構造の例としては、SCORPIONS(商標)プローブ(例えば、Whitcombe et al.,1999,supraおよび米国特許第6,326,145号明細書に記載されている)、Sunriseプローブ(例えば、Nazarenko et al.(1997)Nuc.Acids Res.25:2516−2521、米国特許第6,117,635号明細書に記載されている(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる))、Molecular Beacons(Tyagi et al.(1996)Nature Biotechnology 14:303−308、米国特許第5,989,823号明細書に記載されている(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる))、および配座アシストプローブ(conformationally assisted probes)(例えば、米国特許仮出願第60/138,376号に記載されている(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる))が挙げられる。これらの実施形態において、前記プローブは、プライマー伸長生成物の配列に相補的なハイブリダイゼーションドメインを含む。
【0052】
従って、本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、5’から3’方向に、フルオロフォアと、配列番号5を含むプローブ配列と、クエンチャーと、SP−18と、配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプライマーとを含む。このプライマー/プローブ複合体(本明細書では「SCORPIONS(登録商標)プローブ」または「テイルドプローブ」とも呼ぶ)は、サンプル中の糞便バクテロイデス種の検出および/または定量の際に、特に、配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含むPCRまたはQPCR反応において使用されると有用である。もう1つの実施形態において、前記組成物は、5’から3’方向に、フルオロフォアと、配列番号6を含むプローブ配列と、クエンチャーと、SP−18と、配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプライマーとを含む。このプライマー/プローブ複合体は、サンプル中のエンテロコッカス種の検出および/または定量の際に、特に、配列番号4に示すオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含むPCRまたはQPCRベースの反応において使用されると有用である。さらにもう1つの実施形態において、5’から3’方向に、フルオロフォアと、配列番号9を含むプローブ配列と、クエンチャーと、SP−18と、配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプライマーとを含む。このプライマー/プローブ複合体は、サンプル中のシロザケ(chum salmon)(シロザケ(Oncorhynchus keta))の内部転写スペーサー領域2の検出および/または定量の際に、特に、配列番号8に示すオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含むPCRまたはQPCRベースの反応において使用されると有用である。
【0053】
当技術分野において理解されているように、配列番号1〜4、7および8に示すオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブは、標的核酸もしくはプライマー伸長生成物へのハイブリダイゼーションを助長するために、クエンチャー、フルオロフォア、ブロッカーもしくは他の適する部分の結合を助長するために、または所望の二次構造(例えば、ステムループ)の形成を助長するために、追加の配列または部分をさらに含むことができる。
【0054】
本明細書において開示するオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブ配列の変異体および断片を本発明の方法において使用できることは、さらに理解される。例えば、前記配列は、本明細書において配列番号1〜9として開示する配列より短い場合もあり、もしくは長い場合もあり、または前記オリゴヌクレオチドプライマーが、PCRもしくは等価の反応においてプライマー配列のテンプレート依存性伸長を(本明細書の他の箇所で説明するような適切な条件下で)開始させるように標的核酸にハイブリダイズする能力を保持するのであれば、および前記プローブが適切な条件下でプライマー伸長生成物にハイブリダイズする能力を保持するのであれば、1から5、もしくは5から10のヌクレオチド置換を有することができる。
【0055】
さらに、シグナルが強く、プライミング機能が、上で説明した好ましいSCORPIONS(登録商標)構造を含まないプライマーと同一であるため、本発明の方法(例えば、QPCR)において使用するプライマーのすべてがSCORPIONS(登録商標)配置である必要は必ずしもない。幾つかの実施形態において、本発明の方法において使用するプライマーは、プライマーの100%未満、90%未満、80%未満、70%、60%、50%、40%、30%または20%未満をSCORPIONS(登録商標)配置で含む。前記反応における残りのプライマーを、本明細書において提供する手順もしくは当技術分野において公知の手順に従って標識することができ、または標識しない場合もある。SCORPIONS(登録商標)は、増幅反応の開始前に付加させることもでき、または増幅反応の開始の後の時点で付加させることもできる。好ましくは、SCORPIONS(登録商標)を反応の開始時に付加させる。
【0056】
ポリメラーゼ系の増幅
非常に多数の異なるPCRまたはQPCRプロトコルが当技術分野において公知であり、それらを本明細書において下で例示し、ならびにサンプル中の糞便指標菌の検出および/または定量のための今般記載する組成物を用いる使用にそれらを直接適用するまたは適応させることができる。一般に、PCRでは、標的ポリヌクレオチド配列を少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーまたはオリゴヌクレオチドプライマーのペアとの反応により増幅させる。プライマーが標的核酸の相補領域にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼがそのプライマーを伸長して標的配列を増幅させる。ポリメラーゼ系の核酸増幅生成物を生じさせるために十分な条件下では、1つのサイズの核酸断片が反応生成物(増幅生成物である標的ヌクレオチド配列)を支配する。増幅サイクルを繰り返して、単一の標的ポリヌクレオチド配列の濃度を増す。PCRに一般に使用される任意のサーモサイクラーで反応を行うことができる。しかし、実時間蛍光測定能力を有するサイクラー、例えば、SMARTCYCLER(登録商標)(Cepheid、カリフォルニア州サニーヴェール)、ABI PRISM 7700(登録商標)(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスター・シティー)、ROTOR−GENE(商標)(Corbett Research、オーストラリア、シドニー)、LIGHTCYCLER(登録商標)(Roche Diagnostics Corp、インディアナ州インディアナポリス)、ICYCLER(登録商標)(Biorad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)およびMX4000(登録商標)(Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)が好ましい。
【0057】
定量PCR(QPCR)(実時間PCRとも呼ばれる)は、一部の状況下では、定量的測定ばかりでなく時間および汚染減少ももたらすので、好ましい。本明細書において用いる場合、「定量PCR(または「実時間QPCR」)は、反応生成物を繰り返しサンプリングする必要なく行えるようなPCR増幅の進行の直接モニタリングを指す。定量PCRでは、反応生成物を、シグナルがバックグラウンドレベルより上に上昇した後、かつ、反応がプラトーに達する前に生成して追跡するようなシグナリングメカニズム(例えば蛍光)によって、モニターすることができる。蛍光の検出可能または「閾値」レベルを達成するために必要なサイクル数は、PCRプロセス開始時の増幅可能な標的の濃度に比例して変動するので、シグナル強度の測定により、実時間でサンプル中の標的核酸の量を測定することが可能になる。
【0058】
好ましい実施形態では、標識プローブを使用して、PCR増幅によって生じた伸長生成物を検出する。本発明の配列を含む標識プローブを用いる任意のプローブフォーマット、例えば、当技術分野において公知であるもしくは本明細書中の他の箇所で説明するようなSCORPIONS(商標)プローブ、サンライズプローブ、TAQMAN(登録商標)プローブまたは分子ビーコンプローブを使用することができる。
【0059】
<PCR条件>
PCR反応を構成する方法は、当業者に周知である。反応混合物は、テンプレート核酸(下で説明するような陰性対照の場合を除く)と、適切なバッファー、塩などとの組み合わせでオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブと、適切な濃度の核酸ポリメラーゼとを最低でも含む。本明細書において用いる場合、「核酸ポリメラーゼ」は、ヌクレオシド三リン酸の重合を触媒する酵素を指す。一般に、この酵素は、標的配列にアニールされたプライマーの3’末端で合成を開始し、合成停止までそのテンプレートに沿って5’方向に進行する。適切な濃度は、今般記載する方法でこの反応を触媒するものを含む。公知のDNAポリメラーゼとしては、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、T7 DNA ポリメラーゼ、テルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus:Tth)DNAポリメラーゼ、バチルス・ステアロテルモフィスル(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)DNA ポリメラーゼ、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus:Taq)DNAポリメラーゼおよびピュロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus:Pfu)DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0060】
上述の成分に加えて、本方法において生成される反応混合物は、プライマー、プローブおよびデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含む。SCORPION(登録商標)プライマー/プローブ複合体は、約10から約1500nM、または約50から約1200nM、または約100から約1000nM、または約250nMで存在する。リバースプライマーは、約10から約500nM、または約25から約400nM、または約50から約300nM、または約250nMで存在する。
【0061】
通常、前記反応混合物は、4つの天然起源のヌクレオシド塩基、すなわちdATP、dTTP、dCTPおよびdGTPに対応する、異なる4種類のdNTPをさらに含む。本方法において、各dNTPは、概して、約10から5000μM、通常は約20から1000μM、約100から800μM、または約300から600μMの範囲の量で存在する。
【0062】
本方法の第一段階で調製される反応混合物は、一価イオン源と二価カチオン源と緩衝剤とを含む水性緩衝媒体をさらに含む。任意の適当な一価イオン源、例えば、塩化カリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、グルタミン酸カリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。二価カチオンは、マグネシウム、マンガン、亜鉛などであり得るが、該カチオンは概してマグネシウムである。塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどをはじめとする、任意の適当なマグネシウムカチオン源を用いることができる。バッファー中に存在するマグネシウムの量は、0.5から10mMの範囲であり得るが、好ましくは約1から約6mM、または約3から約5mMの範囲である。バッファー中に存在し得る代表的な緩衝剤または塩としては、Tris、Tricine、HEPES、MOPSなどが挙げられ、この場合の緩衝剤の量は、概して、約5から150mM、通常は約10から100mM、およびさらに通常は約20から50mMの範囲であり、一定の好ましい実施形態において、前記緩衝剤は、約6.0から9.5の範囲のpH、または約pH8.0を生じさせるために十分な量で存在する。緩衝媒体中に存在し得る他の薬剤としては、キレート剤、例えば、EDTA、EGTAなどが挙げられる。
【0063】
前記反応混合物を調製する際、様々な構成成分を任意の適当な順序で併せることができる。例えば、バッファーをプライマー、ポリメラーゼ、そしてその後テンプレート核酸と併せることができ、または様々な構成成分のすべてを同時に併せて反応混合物を生成することができる。
【0064】
あるいは、例えばTAQMAN(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、OMNIMIX(登録商標)もしくはSMARTMIX(登録商標)(Cepheid)、IQ(商標)Supermix(Bio−Rad Laboratories)、LIGHTCYCLER(登録商標)FastStart(Roche Applied Science、インディアナ州インディアナポリス)またはBRILLIANT(登録商標)QPCR Master Mix(Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)をはじめとする市販の予め混合された試薬を、その製造業者の説示に従って本発明の方法において利用すること、または反応条件を向上させるように修飾すること(例えば、必要に応じてバッファー濃度、カチオン濃度もしくはdNTP濃度の修飾)ができる。
【0065】
前記反応混合物の調製後、その反応混合物をプライマー伸長条件(「ポリメラーゼ系の核酸増幅生成物を生じさせるために十分な条件」)、すなわち、テンプレートとしてテンプレート鎖を用いるプライマー分子の末端へのヌクレオチドの付加によりポリメラーゼ媒介プライマー伸長が可能になる条件に付す。多くの実施形態において、前記プライマー伸長反応条件は増幅条件であり、該反応条件は多数の反応サイクルを含み、そのそれぞれの反応サイクルが、(1)変性段階、(2)アニール段階、および(3)重合段階を含む。反応サイクル数は、実行されるアプリケーションによって様々であるが、通常は少なくとも15、さらに通常は少なくとも20であり、60以上もの多さであることもあるが、異なるサイクルの数は、概して約20から40の範囲である。約25サイクルより多く、通常、約30サイクルより多く行う方法については、酵素的プライマー伸長に適する条件が維持されるように反応混合物に追加のポリメラーゼを導入することが適当であるまたは望ましい場合がある。
【0066】
前記変性段階は、反応混合物を高温に加熱すること、および反応混合物中に存在する任意の二本鎖のまたはハイブリダイズした核酸が解離するために十分な期間、その混合物を高温で維持することを含む。変性のために、通常、反応混合物の温度を85から100℃、通常は90から98℃およびさらに通常は約93から96℃の範囲の温度に上昇させ、該温度で約3から120秒、通常は約5から30秒の範囲の期間、維持する。
【0067】
変性後、その反応混合物を、(存在する場合には)該混合物中に存在するテンプレート核酸へのプライマーのアニーリングに十分な、および該プライマーを、それがハイブリダイズされている核酸をテンプレートとして用いて、5’から3’方向に伸長するような様式でのヌクレオチドの該プライマー末端への重合に十分な条件、すなわち、プライマー伸長生成物の酵素的生産に十分な条件に付す。これらの条件を達成するために反応混合物を低下させる温度は、通常、最適な効率および特異性をもたらすように選択され、一般に、約50から75、通常は約55から70およびさらに通常は60から68℃の範囲、さらに特におおよそ60℃である。15秒から30分、通常は約20秒から5分もしくは約30秒から1分の範囲の期間、または約43秒間、アニーリング条件を維持する。
【0068】
この段階は、アニーリング段階および伸長段階それぞれ1つずつを、各段階についての温度および時間長の変動および最適化に伴って、場合により含むことがある。2段階アニーリングおよび伸長の場合、アニーリング段階を上述のように進行させる。プライマーのテンプレート核酸へのアニーリング後、その反応混合物を、上述のようなヌクレオチドのプライマー末端への重合に備えるために十分な条件にさらに付す。重合条件を達成するために、概して反応混合物の温度は、約65から75、通常は約67から73℃の範囲の温度に上昇されまたは該温度で維持され、約15秒から20分、通常は約30秒から5分の範囲の期間、維持される。
【0069】
上述の変性、アニーリングおよび重合サイクルは、概してサーマルサイクラーとして公知の、自動装置を使用して行うことができる。用いることができるサーマルサイクラーは、本明細書中の他の箇所ならびに米国特許第5,612,473号明細書、同第5,602,756号明細書、同第5,538,871号明細書および同第5,475,610号明細書(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0070】
本発明の方法を非PCRベースの適用において用いて標的核酸配列を検出することができ、この場合、そのような標的を固体支持体上に固定されていることがある。固体支持体上に核酸配列を固定する方法は、当技術分野において公知であり、Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.に、ならびに製造業者、例えば、膜についてはPall Corporation、Schleicher & Schuell、磁気ビーズについてはDynal、培養プレートについてはCostar、Nalgenunc、および本発明により有用な他の支持体についてはCPG,Inc.により提供されているプロトコルに記載されている。
【0071】
核酸増幅技術分野の技術者には、他の迅速な増幅手順、例えば、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベースの増幅システム(TAS)、自己持続性配列複製(3SR)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)および分岐DNA(bDNA)(Persing et al,1993,Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications,Amerian Society for Microbiology,Washington,D.C.)は公知である。本発明の範囲は、PCRによる増幅の使用に限定されず、むしろ、任意の迅速な核酸増幅法、または糞便指標菌の検出および/もしくは定量のための本発明の配列で有用であり得る任意の他の手順の使用を含む。
【0072】
さらに、様々な試薬の正確な量に関する、およびPCRまたは他の適する増幅手順についての条件(例えば、バッファー条件、サイクリング時間など)に関する変動は、当業者に公知であり、等価と見なされる。1つの実施形態において、本QPCR検出は、サンプル中の標的核酸(例えば、ゲノムまたはcDNA)の50コピーより少ない(好ましくは25コピーより少ない、さらに好ましくは25コピーより少ない、さらにいっそう好ましくは10コピーより少ない)検出感度を有する。1つの実施形態では、非特異的増幅からバックグラウンドを減少させることによりPCR反応を改善するために、および所望の伸長生成物の増幅を増加させるために、ホットスタートPCR反応を(例えば、ホットスタートTaq DNAポリメラーゼを使用して)行う。
【0073】
<対照>
本発明のPCRまたはQPCR反応は、様々な対照を含有することができる。そのような対照は、プライマー、バッファー、酵素および他の必要試薬(例えば塩化マグネシウム、ヌクレオチド)を、添加される試験サンプルがない状態でサイクリングする、「無テンプレート」陰性対照を含むはずである。並行して、既知の標的核酸を含む陽性対照も実行すべきである。陽性対照と陰性対照の両方を増幅反応に含める場合がある。単一の反応が、陽性対照、陰性対照もしくはサンプルテンプレートのいずれかを含有する場合があり、または単一の反応が、サンプルテンプレートと陽性対照の両方を含有する場合もある。
【0074】
「無テンプレート」対照に加えて、陰性対照は、反応物に含まれる非特異的標的核酸との増幅反応も含む場合があり、または試験サンプルを添加せずに(例えば、各段階が、試験サンプルも、指標菌がないことが分かっている精製水サンプルも使用しない)サンプル調製の任意のもしくはすべての段階(核酸抽出から増幅調製まで)を用いて調製されたサンプルである場合もある。
【0075】
試薬の完全性を確実にするために、通常、PCR反応で陽性および陰性対照を実行して、サンプルマトリックスによるPCR阻害が標的テンプレートの増幅を妨げ、その結果、偽陰性報告がなされる場合がある。従って、アッセイの完全性を評価するために個々の反応混合物それぞれに使用することができる検体処理対照(SPC)の検出のための方法および組成物も、本明細書において提供する。このタイプの評価は、偽陰性の報告および定量データの正確な調整を可能にする報告を妨げる場合がある。SPCは、的外れのDNA配列、例えば、リボソームRNA遺伝子オペロンのセグメント、例えばシロザケ(chum salmon)(シロザケ(Oncorhynchus keta))の内部転写スペーサー領域2である場合がある。例えば、既知量のSPC DNAを伸長段階開始時に各サンプルに、ならびに陽性および陰性対照に添加する。本発明の方法において使用するシロザケ(Oncorhynchus keta)SPCは、配列番号7、8または9のいずれかを含む、本明細書に記載する構築物を使用して検出することができる。SPCの使用により、標的核酸(例えば指標菌)の検出に干渉することなくアッセイの効率に関する有用な情報が得られる。前記SPCおよびその検出試薬は、本明細書に記載するエンテロコッカスおよび/もしくはバクテロイデスアッセイと共に使用することができ、または試験サンプル、特に生体サンプル、工業サンプルもしくは環境サンプル中の標的核酸を検出する任意の適する方法において対照として使用することができる。
【0076】
<プライマー伸長生成物の確認>
糞便指標菌が試験サンプル中に存在する場合、2つの細菌種それぞれについて単一の増幅生成物が生ずる結果となる。バクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotamicron)については、この増幅サンプルが約100から約200塩基対の長さ、好ましくは約140塩基対の長さであり、その末端が本発明のオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、配列番号1および2)によって定義される。エンテロコッカス種については、この増幅生成物が約80から約200塩基対の長さ、好ましくは約92塩基対の長さであり、その末端が本発明のオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、配列番号3および4)によって定義される。これらのポリヌクレオチド配列(すなわち、増幅生成物またはプライマー伸長生成物)のそれぞれが、さらに、次の反応のためのテンプレートとして役立つ。
【0077】
SPCについては、この増幅産物が約50から約200塩基対の長さ、好ましくは約78塩基対の長さであり、その末端が本発明のオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、配列番号7および8)によって定義される。これらのポリヌクレオチド配列(すなわち、増幅生成物またはプライマー伸長生成物)のそれぞれが、さらに、次の反応のためのテンプレートとして役立つ。
【0078】
所望される場合には、(例えば)サザンブロットアッセイをはじめとする標準的な分子技術を用いて、前記プライマー伸長または増幅生成物の素性を確認することができる。サザンブロットアッセイでは、増幅生成物を電気泳動によって分離し、膜(すなわち、セルロース、ナイロンなど)に転写し、オリゴヌクレオチドプローブとまたは関心のある核酸配列の任意の部分と反応させる。その後、そのプローブを、検出できるように修飾する。修飾方法は、放射標識ヌクレオチドまたは任意の数の非放射性標識(例えばビオチン)の組込みであり得る。
【0079】
サザンブロットアッセイにおいて使用するオリゴヌクレオチドプローブは、エンテロコッカスまたは糞便バクテロイデス種に由来し、従って、エンテロコッカスからの、またはバクテロイデス種、特にバクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotamicron)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・ディスタソニス(Bacteroides distsonis)およびバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)からの核酸に特異的である。サザンブロットアッセイにおいて使用するプローブは、常用の標準的な方法を用いて調製することができる。例えば、当技術分野において公知の常用の技術を用いて前記プローブを単離し、クローニングし、制限することができ、または本明細書中で前に説明した化学合成法を用いて前記プローブを作製することができる。
【0080】
あるいは、ドットブロット分析を用いて増幅生成物を検出することができる。ドットブロット分析は、ニトロセルロースまたは固体支持体、例えば、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズまたは非磁気ビーズなど(しかしこれらに限定されない))、反応トレーの壁、ストリップ(例えば、ニトロセルロースストリップ(しかしこれに限定されない))、試験管(しかしこれらに限定されない)へのオリゴヌクレオチドプローブ(例えば、前に説明したもの)付着を含む。標識された増幅生成物を含有するサンプルを添加し、反応させ、洗浄して未結合サンプルを除去し、当技術分野において公知の常用の技術を用いて、そのプローブに結合されている標識され増幅された生成物を視覚化する。プライマー伸長生成物または増幅生成物を検証するためのよりストリンジェントな方法は、当技術分野において周知の技術を用いる直接シークエンシングによる方法である。
【0081】
<シグナル検出>
標的核酸の量は、例えばフルオロフォアにより放射される検出可能な蛍光(すなわち「シグナル」)の増加によって、定量することができる。「蛍光の増加」は、本明細書において用いる場合、フルオロフォアにより放射される検出可能な蛍光の増加を指す。例えば、フルオロフォアとクエンチャーの間の距離を増加させると、例えば消光を減少させるようなクエンチャーのフルオロフォアからの空間的離隔に起因して、蛍光の増加が生ずる結果となり得る。
【0082】
任意の適当な手段、例えば、適する蛍光光度計、例えば耐熱性キュベットまたはプレートリーダー蛍光光度計を使用して、サンプルを蛍光の増加についてスクリーニングすることができる。蛍光は、公知の蛍光光度計を使用して適切にモニターされる。これらの装置からのシグナル、例えば光電子増倍管電圧は、データ・プロセッサー・ボードに送られ、サンプル管それぞれに関連したスペクトルに変換される。多数の管、例えば96の管を同時に評定することができる。この方法で頻繁に、例えば反応を通して10msに1回、1サイクルに1回、または各最終サイクル後に1回、例えば最終5、3、4、もしくは2サイクル後に1回、データを収集することができる。各サイクル中のサンプルからの反応性分子の蛍光をモニターすることにより、増幅反応の進行を様々な方法でモニターすることができる。例えば、融解ピークによって提供されるデータを、例えば融解ピーク下面積を計算してこのデータをサイクル数に対してプロットすることにより、分析することができる。Haugland,et al.(2005)Water Research 39:559−568(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法に従ってそのデータを分析することもできる。
【0083】
前記混合物を蛍光の変化についてスクリーニングすることにより、そのサンプルをプライマー伸長反応の終了時に1回スクリーニングするのか、多数回の増幅反応の終了時に1回、例えば(例えば、実時間PCRモニタリングにおいて行われるように)増幅反応の各サイクル後に、スクリーングするのかによって、1つ以上のアッセイ結果が得られる。
【0084】
上で説明したようにして生成されたデータを、様々な方法で解釈することができる。その最も単純な形では、増幅反応の経過にわたってのまたは増幅反応の終了時のサンプルからの蛍光の増加は、存在する標的配列、すなわち存在するプライマー伸長生成物の存在を示し、これは、その増幅反応が進行し、そのため標的配列がサンプル中に実際に存在したことを示唆する。増幅プロセス全体を通して増幅反応をモニターすることにより、定量も可能である。
【0085】
この要領で、反応混合物は、糞便指標菌の存在について容易にモニターされる。これらの方法は、指標菌のみの検出および/または定量に適すると共に、エンテロコッカス種および糞便バクテロイデス種に対応する2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドプローブを利用して両方の種についてスクリーニングする多重分析に適する。この実施形態において、各プライマー/プローブセットと共に使用されるシグナリング分子のタイプ(例えば、フルオロフォア、またはフルオロフォア/クエンチャーの組み合わせ)は、多重分析で容易に区別することができよう。多数の適当なフルオロフォア/クエンチャーペアが、文献(例えば、Glazer,et al.(1997)Current Opinion in Biotechnology 8:94−102)中でおよびカタログ、例えばMolecular ProbesおよびApplied Biosystemsからのものの中で詳述されている。
【0086】
<キット>
本方法を実施するためのキットも提供する。本発明によるキットは、少なくとも、(a)標識されたオリゴヌクレオチド(キットは、例えば糞便バクテロイデス種もしくはエンテロコッカス種のいずれかまたは両方にハイブリダイズする、2つ以上の区別可能なオリゴヌクレオチドを含む)と、(b)備えられている標識されたオリゴヌクレオチドを高忠実度増幅、例えばPCR反応において使用するための説示とを含む。前記キットは、エンテロコッカス種および糞便バクテロイデス種のそれぞれに対応するオリゴヌクレオチドを別々に備えている場合もあり、別個の反応成分に一緒にパッケージされた両方の細菌に対応するオリゴヌクレオチドを備えている場合もあり、または同じ反応成分にパッケージされた両方の細菌に対応するオリゴヌクレオチドを備えている場合もある。
【0087】
SPCの検出のためのキットも提供する。これらのキットは、最低限、(a)標識されたオリゴヌクレオチド(キットは、例えばSPCにハイブリダイズする2つ以上の区別可能なオリゴヌクレオチドを含む)と、(b)備えられている標識されたオリゴヌクレオチドを高忠実度増幅、例えばPCR反応において使用するための説示とを含む。前記キットは、本明細書に記載する糞便指標菌の1つ以上を検出することができるオリゴヌクレオチドをさらに含む場合があり、または環境サンプル、特に水サンプル中の1つ以上の他の標的物質を検出することができるオリゴヌクレオチドを含む場合もある。
【0088】
本キットは、本方法中に調製される反応混合物に含めることが求められるまたは適当であるおよび/もしくは望ましい追加の試薬をさらに含む場合ができ、そのような試薬としては、1つ以上のポリメラーゼ、水性緩衝媒体(調製されたもの、またはその構成成分中に存在するもの(該成分の1つ以上が予め混合されている場合があり、または該成分のすべてが別個である場合もある))などが挙げられる。
【0089】
前記キットの様々な試薬成分は、別個の容器内に存在する場合があり、またはテンプレート核酸との併用のためにすべてを予め併せて試薬混合物になっている場合もある。
【0090】
上述の成分に加えて、本キットは、本方法を実施するための説示をさらに含む。これらの説示は、様々な形態で本キット中に存在する場合があり、それらの説示1つ以上が前記キット内に存在する場合もある。これらの説示が存在し得る1つの形態は、適する媒体または基板、例えば情報が印刷された紙片、上、キットのパッケージング中、添付書類中などの印刷情報としての形態である。さらにもう1つの手段は、情報が記録されたコンピューター可読媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク(diskette)、CDなどである。存在し得るさらにもう1つの手段は、ウェブサイトアドレスであり、これをインターネット経由で用いて、離れた現場で情報にアクセスすることができる。任意の適当な手段が前記キット中に存在し得る。
【0091】
<方法>
サンプル採集
100mL〜1000mL量のサンプルを、HCl(5% v/v)で三回すすいだポリプロピレンまたは同等の容器に採集する。サンプルが混濁している場合、またはサンプルが高濃度の指標菌を含有すると予測される場合には、より少ない量を使用することができる。サンプル採取前に酸を除去しなければならず、その採集容器をサンプル水で3回すすがなければならない。氷を用いてそれらのサンプルを輸送し、4時間以内に処理する。あるいは、所望される場合には、滅菌使い捨てボトル(例えば、IDEXXサンプルボトル)に100mLのサンプルを採取することができる。
【0092】
サンプル処理
入念に混合した水サンプルの100mL量を、47mm、0.45μm細孔径ポリカーボネート(PC)フィルターを有するフィルターユニットに通す。その後、そのフィルターを少量(5〜10mL)の滅菌水ですすぐ。火炎処理またはオートクレーブ処理(または使い捨て)鉗子を使用してそのPCフィルターを迅速に除去し、0.3gの1mmシリカ/ジルコニウムビーズ(BioSpec Corp.、オクラホマ州バートルズヴィル)のおおよそ0.1gが入っている2mLねじ蓋付き試験管に入れ、下で説明する粗ビーズビーティングプロトコルに従って処理する、または後のバッチ分析のために1.5mL微量遠心管内にて−80℃で保管することができる。
【0093】
核酸伸長
このプロトコルでは、シロザケ(Oncorhynchus keta)精巣DNAを、核酸伸長効率を評定するための検体処理対照(SPC)として使用する。シロザケ(Oncorhynchus keta)精巣DNAは、水サンプル中で自然には見つけられないと予測されるため、および計画したアッセイの増幅特性が標的DNAに類似しているため、検体処理対照として使用する。前記糞便バクテロイデス種またはエンテロコッカスアッセイのいずれかで定量的な結果を得るために必ずしもこれらの細胞を使用する必要はないが、それは、QPCR中のアッセイの回復および阻害を含むサンプルの処理に関する有用な情報をもたらす。特定のプロトコルでは、100ngのシロザケ(Oncorhynchus keta)精巣DNAをビーズビーティングの開始時に添加する。使用者が、この手順の中で市販の核酸抽出キットを使用することを望む場合には、同濃度のシロザケ(Oncorhynchus keta)精巣DNAを添加することとなる。
【0094】
ゲノム校正標準
ゲノム校正標準をB.シータイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)(ATCC 29148)から調製する。B.シータイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)をCooked Meat Mediumu(BD Diagnostic Systems、メリーランド州スパークス)中、37℃での一夜培養で、嫌気的に成長させる。細胞浮遊液の一部を除去し、5分間、6000×gで遠心分離する。上清を除去し、10mLあたり細胞100,000の濃度に希釈する。10mLの細胞浮遊液を47mm、0.45μm細孔径ポリカーボネート(OC)フィルターによって真空濾過する。フィルターを−20℃で6ヶ月までの期間、または−80℃でそれより長く冷凍する。Nobek and Fuhrman(1998)に従って、細胞浮遊液の一部と除去し、系列希釈し、ホルマリン(最終1% v/v)で固定し、SYBR Green(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を使用して計数することにより、細胞数を得る。抽出セットごとに新しい細胞標準フィルターを使用する。
【0095】
ゲノム校正標準をエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(ATCC、29212)から調製する。E.フェカリス(E.faecalis)をBrain Herat Infusion Broth(BD Diagnostic Systems、メリーランド州スパークス)中、37℃での一夜培養で成長させる。細胞浮遊液の一部を除去し、5分間、6000×gで遠心分離する。上清を除去し、10mLあたり細胞100,000の濃度に希釈する。10mLの細胞浮遊液を、前に説明したように処理する。
【0096】
この検体処理対照は、Sigma(ミズーリ州セントルイス)から得たサケ精巣DNAから成る。サケ精巣DNAをBuffer AE(QIAGEN)に懸濁させ、260nMの吸収で分光光度測定する。1の光学密度は、260nMの二本鎖DNA 50μgに等しい。そのサケ精巣DNA懸濁液を、1μLあたり10ngの濃度が達成されるまで、Buffer AEで希釈する。サケ精巣DNAは、500μLで懸濁させて−20℃で1年までの期間、冷凍保存することができる。処理したサンプル、陰性または陽性対照それぞれにつき100ng(10μL)を添加する。
【0097】
DNA EZ RW04キットを使用するDNA抽出
簡単に言うと、サンプルまたは校正標準のいずれかを含有するPCフィルターを、0.3gの1mmシリカ/ジルコニウムビーズ(BioSPec Corp.、オクラホマ州バートルズヴィル)および500μLのExtraction Bufferが入っている2mLねじ蓋付き試験管に入れる。Extraction Bufferは、500μLのBuffer AE(QIAGEN Valencia、カリフォルニア州)および100ngのシロザケ(Oncorhynchus keta)精巣DNA(Salmon testes DNA Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)から成る。試験管を8プレース・ビーズ・ビーター(BioSpec)に入れて2分間、均質化する。それらの試験管をエッペンドルフ遠心機において2分間、12,000×gで回転させてフィルターおよびビーズをペレット化する。ペレットを乱すことなく、できる限り多くの上清を除去し、1.5mL低吸着(low retention)微量遠心管(Genemate、ISC Bioexpress、ユタ州ケイズヴィル)に添加する。その上清をさらに5分、12,000×gで回転させて、一切の破壊片をペレット化する。その上清を除去し、同量のBinding Bufferを添加し、1分間、室温でインキュベートする。その溶液をDNAsureカラムに添加し、12,000×gで1分間、回転させる。フロースルーを廃棄し、500μLのWashing Bufferをカラムに添加する。そのカラムを1分間、12,000×gで回転させる。フロースルーを廃棄し、そのカラムを新たな回収管に中に入れる。その管を12,000×gで1分間、遠心分離する。その回収管を廃棄し、カラムを新たな回収管に付ける。50μLのElution Bufferをそのカラムの中央に直接添加し、1分間、放置する。その管を1分間、12,000×gで回転させてDNAを溶離する。溶離したDNAを、使用するまで、−20℃で保管する。
【0098】
ビーズビーティング(Haugland et al.,2005,supraによる方法)を用いるDNA抽出
およそ0.1gから0.3gのジルコニアビーズ(BioSpec Products,Inc.、オクラホマ州バートルズヴィル)または同様のビーズを2mLねじ蓋付き微量遠心管に添加する。それらのビーズを121℃、15psiで15分間、重力サイクルでオートクレーブ処理する。サンプルを含有するPCフィルターを、ビーズおよび500μL Extraction Bufferが入っている管に入れる。Extraction Bufferは、500μLのBuffer AE(QIAGEN Valencia、カリフォルニア州)および100ngのシロザケ(Oncorhynchus keta)精巣DNA(Salmon testes DNA Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)から成る。試験管を8プレース・ビーズ・ビーター(BioSpec)に入れて2分間、均質化する。それらの試験管をエッペンドルフ遠心機において2分間、12,000×gで回転させてフィルターおよびビーズをペレット化する。ペレットを乱すことなく、できる限り多くの上清を除去し、1.5mL低吸着微量遠心管(Genemate、ISC Bioexpress、ユタ州ケイズヴィル)に添加する。その上清をさらに5分、12,000×gで回転させて、一切の破壊片をペレット化する。おおよそ100μLの上清を下流の処理のために除去する。このプロトコルは、粗抽出であり、PCRの阻害剤またはヌクレアーゼを除去しない。抽出サンプルは、凍解に耐えられないため、再び後日に再分析する場合には、4℃で保持するのが最良である。抽出サンプルを1週間まで保持することができる。
【0099】
Q−PCR分析
dNTP、塩化マグネシウム(もしくは適するカチオン)、反応バッファー、DNAポリメラーゼ、プライマーおよび/またはプローブならびに陰性対照、陽性対照、試験サンプルまたは標準サンプル(概して、既知細菌種からの系列希釈核酸抽出物)を含む試験混合物を調製する。滅菌水を使用して、全反応量を概して25μLにする。各反応成分の濃度は、実験により決定することができるが、概して、約1.5から約6mMの塩化マグネシウム、約10mMの各dNTP、および約20から約50mMの適するバッファーを含む。QPCR分析を最適化および実施する方法は当技術分野において周知であり、本明細書中の他の箇所に追加のガイダンスを提供する。さらに、予め混合された試薬を、本明細書中の他の箇所に記載するような様々な商業的供給源から適当に入手することができる。サイクリング条件は、次のとおりである:95℃で2分間の1サイクル(ホットスタート)、続いて95℃で5秒および60℃で43秒の45サイクル。60℃サイクル中に蛍光を測定する。
【0100】
データ分析
データは、デルタCt法(Haugland et al.,2005,supra参照)を用いて分析することができ、または系列希釈した標準核酸サンプルからの結果を用いて公知の方法によって生成した標準曲線からの直接外挿によって分析することができる。
【0101】
<ENT SCORPIONS(登録商標)と既存の方法の比較>
サンプルは、南カリフォルニア海岸線から採集した、または研究室で作製した。研究室への輸送後、サンプルを分割し、膜濾過(EPA法1600)またはENTEROLERT(商標)(IDEXX、メイン州ウェストブルック)を用いてエンテロコッカスについて処理した。100mLのサンプルの濾過、および(1)ビーズビーティング(Haugland et al.,2005,supra)または(2)DNA抽出キット(DNA EZ RW04 DNA抽出キットGeneRite、ニュージャージー州ニュー・バーンズウィック)のいずれかによって、QPCR分析を行った。各QPCR分析については、標準曲線またはデルタCtアプローチを用いて各サンプルについての100mLあたりの細胞当量の列挙を行った。サケ精巣DNAを検体処理対照(すなわちマトリックス対照)として使用した。
【0102】
エンテロコッカスおよび糞便バクテロイデス種定量について独立して説明したように、糞便バクテロイデス種SCORPION(登録商標)プローブおよびプライマーまたはEntero−1 SCORPIONS(登録商標)プローブおよびプライマーを使用してQPCRを行った。QPCR反応についての条件を表1に従って最適化した。Entero−1 Scorpion QPCRとUSEPAにより現在認可されている既存の培養ベースの方法との間で等価の例が観察された(EPA 1600は、膜濾過法であり、Enterolertは、被定義基質技術ベースの方法である)。QPCRアッセイは、2008年夏季のDoheny Beachで、既存のEPA1600およびEnterolert法と83%の確率で「一致」を示した。これは、ビーチの解放を維持するためまたはビーチを閉鎖するために、ビーチの水質管理者が水質決定の実施に直面した場合に、その管理者が、他の方法に対してQPCRに基づいて83%の確率で正しい決定を行ったことを意味する。EnterolertとEPA 1600の間の一致は93%であるので、これら2つのEPA認可法の間の一致は完全ではなかった(表2、Blackwood and Noble,2009から除いたもの)。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の糞便指標菌の検出のための組成物であって、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャー分子の一方と、配列番号5を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアまたはクエンチャー分子の他方と、PCRブロッカー部分と、配列番号1を含むオリゴヌクレオチドとを含む、組成物。
【請求項2】
サンプル中の糞便指標菌の検出のための組成物であって、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャー分子の一方と、配列番号6を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアまたはクエンチャー分子の他方と、PCRブロッカー部分と、配列番号3を含むオリゴヌクレオチドとを含む、組成物。
【請求項3】
前記PCRブロッカー部分が、ヘキサエチレングリコール(HEG)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記PCRブロッカー部分が、ヘキサエチレングリコール(HEG)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
5’から3’方向に、フルオロフォアと、配列番号5を含むオリゴヌクレオチドと、クエンチャーと、PCRブロッカー部分と、配列番号1を含むオリゴヌクレオチドとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
5’から3’方向に、フルオロフォアと、配列番号6を含むオリゴヌクレオチドと、クエンチャーと、PCRブロッカー部分と、配列番号3を含むオリゴヌクレオチドとを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
配列番号1を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2を含むオリゴヌクレオチドとを含む、サンプル中の糞便指標菌の検出のためのキット。
【請求項8】
配列番号5を含むオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
配列番号3を含むオリゴヌクレオチドと配列番号4を含むオリゴヌクレオチドとを含む、サンプル中の糞便指標菌の検出のためのキット。
【請求項10】
配列番号6を含むオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を含むサンプル中の糞便指標菌の検出のためのキット。
【請求項12】
請求項2に記載の組成物を含むサンプル中の糞便指標菌の検出のためのキット。
【請求項13】
サンプル中の糞便指標菌の存在を、該糞便指標菌中に存在する標的核酸領域についてのポリメラーゼ系の増幅を用いて検出する方法であって、
a)糞便指標菌を含有すると推測される試験サンプルを提供するステップと、
b)前記サンプルと、少なくとも第一のオリゴヌクレオチドプライマーおよび第二のオリゴヌクレオチドプライマーとを、前記標的領域を含むポリメラーゼ系の核酸増幅生成物を生じさせるために十分な条件下で接触させるステップと、ここで、前記少なくとも第一のオリゴヌクレオチドプライマーおよび第二のオリゴヌクレオチドプライマーは、
i)配列番号1を含む第一のオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号2を含む第二のオリゴヌクレオチドプライマー、または
ii)配列番号3を含む第一のオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号4を含む第二のオリゴヌクレオチドプライマー
から成る群より選択され、
c)前記増幅生成物を検出するステップと
を含む方法。
【請求項14】
配列番号1を含む前記第一のオリゴヌクレオチドプライマーが、該プライマーの5’末端に共有結合により結合されているプローブをさらに含み、前記プローブが、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャー分子の一方と、配列番号5を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアまたはクエンチャー分子の他方と、PCRブロッカー部分とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配列番号3を含む前記第一のオリゴヌクレオチドプライマーが、該プライマーの5’末端に共有結合により結合されたプローブをさらに含み、前記プローブが、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャー分子の一方と、配列番号6を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアまたはクエンチャー分子の他方と、PCRブロッカー部分とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(a)において提供したサンプルから細菌の核酸を単離するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記単離の方法がビーズビーティングを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記PCRブロッカー部分が、ヘキサエチレングリコールである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリメラーゼ系の増幅が、定量ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
サンプル中の検体処理対照の検出のための組成物であって、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャー分子の一方と、配列番号9を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアまたはクエンチャー分子の他方と、PCRブロッカー部分と、配列番号7を含むオリゴヌクレオチドとを含む、組成物。
【請求項21】
配列番号7を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8を含むオリゴヌクレオチドとを含むサンプル中の糞便指標菌の検出のためのキット。
【請求項22】
配列番号9を含むオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
請求項20に記載の組成物を含む、サンプル中の糞便指標菌の検出のためのキット。
【請求項24】
サンプル中の検体処理対照の存在を、該検体処理対照中に存在する標的核酸領域のポリメラーゼ系の増幅を用いて検出するための方法であって、
a)試験サンプルを提供するステップと、
b)前記検体処理対照から抽出したDNAの量を前記試験サンプルに添加するステップと、ここで、前記検体処理対照は、シロザケの精巣からのDNAを含み、
c)前記サンプルと、少なくとも第一のオリゴヌクレオチドプライマーおよび第二のオリゴヌクレオチドプライマーとを、前記標的領域を含むポリメラーゼ系の核酸増幅生成物を生じさせるために十分な条件下で接触させるステップと、ここで、前記少なくとも第一のオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号7を含み、および前記少なくとも第二のオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号8を含み、
d)前記増幅生成物を検出するステップと
を含む方法。
【請求項25】
配列番号7を含む前記第一のオリゴヌクレオチドプライマーが、該プライマーの5’末端に共有結合により結合されたプローブをさらに含み、前記プローブが、5’から3’方向に、フルオロフォアまたはクエンチャー分子の一方と、配列番号9を含むオリゴヌクレオチドと、前記フルオロフォアまたはクエンチャー分子の他方と、PCRブロッカー部分とを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記PCRブロッカー部分が、ヘキサエチレングリコールである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリメラーゼ系の増幅が、定量ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)である、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2013−500047(P2013−500047A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522908(P2012−522908)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/042889
【国際公開番号】WO2011/017013
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(500093834)ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル (14)
【Fターム(参考)】