説明

近位力軽減経血管リード

患者の内頸静脈内で標的位置に且つ迷走神経に隣接して植え込まれる医療用電気リード。リードは、近位剛性を備えた近位領域及び遠位領域を有する。遠位領域は、遠位剛性を備えると共に遠位領域を内頸静脈内に保持するように構成された第1の螺旋部を有する。移行領域が近位領域と遠位領域との間に設けられ、この移行領域は、移行剛性を備えている。電極が、遠位領域に結合されている。近位剛性は、近位領域から遠位領域に伝達される力の大きさを減少させるために遠位剛性よりも低い。移行剛性は、遠位剛性よりも低く且つ近位剛性よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経又は筋肉を刺激する医療用電気リードに関する。本発明は、特に、内頸静脈内での保持を改良した医療用電気リードに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な医学的、精神的及び神経的障害又は病態を治療するために神経の直接的刺激と間接的刺激の両方に対して多大な研究がなされ、かかる神経としては、左迷走神経、右迷走神経、交感神経、副交感神経、横隔神経、仙骨神経及び海綿体神経が挙げられる。最近、心不全を含む種々の心臓の病態を治療するための方法として、迷走神経の刺激が提案されてきている。心不全は、心臓が体内全体にわたって血液をポンプ送りする機能の低下及び肺内流体を肺の中に蓄積させる高い充満圧を特徴とする心臓の病態である。
【0003】
典型的には、神経刺激電極は、刺激されるべき神経と直接的接触状態に置かれるカフタイプ又は刺入タイプの電極である。これら電極は、外科的植え込みを必要とし、膨潤又は神経に対する直接的な機械的損傷に起因して非可逆的な神経損傷を生じさせる場合がある。侵襲性の低いアプローチは、血管内リードを用いて隣接する血管を通して神経を刺激することである。1つ又は2つ以上の電極を有するリードを患者の血管系中に挿入して、刺激されるべき神経に隣接して位置する血管内の部位まで運ぶ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リードを血管内神経刺激のために血管の内部に保持することは、困難が生じる。例えば、患者の内頸静脈の直径及び断面は、患者が横たわっているか立っているかに応じて変化することがある。また、頸部の動き及び頸部に対する外部からの圧力により、内頸静脈内に配置されているリードが外れる場合がある。かくして、当該技術分野において、内頸静脈内に確実に保持できる医療用電気リードが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、患者の内頸静脈内で迷走神経に隣接して位置する標的場所に植え込まれる医療用電気リードである。リードは、近位剛性を備えた近位領域と、遠位領域とを有する。遠位領域は、遠位剛性を備えると共に遠位領域を内頸静脈内に保持するように構成された第1の螺旋部を有する。移行領域が近位領域と遠位領域との間に設けられ、移行領域は、移行剛性を備える。電極が、遠位領域に結合されている。近位剛性は、近位領域から遠位領域に伝達される力の大きさを減少させるために遠位剛性よりも低い。移行剛性は、遠位剛性よりも低く且つ近位剛性よりも高い。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、患者の内頸静脈内で迷走神経に隣接して位置する標的場所に植え込まれる医療用電気リードである。リードは、近位領域、遠位領域、及び遠位領域に結合された電極を有する。近位領域は、近位領域から遠位領域に伝達される力の大きさを減少させるための手段を有する。遠位領域は、遠位領域を内頸静脈内に保持するための手段を有する。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、患者の内頸静脈内で迷走神経に隣接して位置する標的場所に植え込まれる医療用電気リードである。リードは、近位剛性を備えた近位領域と、遠位領域とを有する。遠位領域は、遠位剛性を備えると共に遠位領域を内頸静脈内に保持するように構成された保持構造体を有する。電極が、遠位領域に結合されている。近位剛性は、近位領域から遠位領域に伝達される力の大きさを減少させるために遠位剛性よりも低い。
【0008】
多くの実施形態が開示されているが、本発明の更に別の実施形態は、本発明の例示の実施形態を示すと共に説明する以下の詳細な説明から当業者には明らかになろう。したがって、図面の記載及び詳細な説明は、性質上例示であって、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】患者の上半身の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による内頸静脈内に植え込まれた医療用電気リードの概略図である。
【図3】図2の医療用電気リードの概略図である。
【図4】本発明の別の実施形態による医療用電気リードの正面図である。
【図5】本発明の別の実施形態による医療用電気リードの正面図である。
【図6】本発明の更に別の実施形態による内頸静脈内に植え込まれた医療用電気リードの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について種々の変更例及び変形例が可能であるが、特定の実施形態が、図面に一例として示されており、これらにつき以下に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、記載した特定の実施形態に限定されることはない。これとは逆に、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に属するあらゆる変更例、均等例及び変形例を包含するものである。
【0011】
図1は、心臓10並びに頸部12及び胸部14の静脈を含む患者の上半身の概略図である。鎖骨下静脈16は、腕18から血液を排出させる。内頸静脈20は、頭22から血液を排出し、この内頸静脈は、鎖骨下静脈16と繋がって腕頭静脈又は無名静脈24を形成している。腕頭静脈24が互いに結合して上大静脈26を形成し、この上大静脈は、頭22、頸部12、腕18及び胸部14からの血液を右心房28に戻す。迷走神経30が、右内頸静脈20に隣接した状態で示されている。別の迷走神経(図示せず)が、左内頸静脈20に隣接して位置している。刺激デバイス38が、患者の鎖骨下静脈16の近くで皮下ポケット内に配置されている。刺激デバイス38は、患者の鎖骨下静脈16、腕頭静脈24及び内頸静脈20を通して延びる医療用電気リード40に接続されている。一実施形態では、刺激デバイス38は、電気的刺激を迷走神経30に与える。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態による患者の鎖骨下静脈16及び腕頭静脈24を通して延び、患者の内頸静脈20内に植え込まれた医療用電気リード40の概略図である。図2の医療用電気リード40は、左鎖骨下静脈16から右内頸静脈20に「反対側方法」を用いて植え込まれた状態で示されているが、別の実施形態では、医療用電気リード40は、右鎖骨下静脈16から左内頸静脈20内に植え込まれる。さらに別の実施形態では、医療用電気リード40の植え込みは、右鎖骨下静脈16から右内頸静脈20内への又は左鎖骨下静脈16から左内頸静脈20内への「同側」植え込みである。
【0013】
図2に示されているように、医療用電気リード40は、電気的絶縁材料で構成されたリード本体42を有する。医療用電気リード40は、近位領域44及び遠位領域46を有している。保持構造体48が、遠位領域46内に配置されている。電極50が、遠位領域46内に配置され、これら電極は、導電性部材(図示せず)を介して刺激デバイス38に電気的に結合されている。2つの電極50が図2に示されているが、医療用電気リード40は、任意の数の電極50を有することができる。電極50は、リング電極から成っていても良いし、或いは、当該技術分野において知られている任意の他の形態を有しても良い。別の実施形態では、電極50は、2007年1月30日に出願された関連の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/668,957号明細書(発明の名称:経血管神経刺激のための電極形態(ELECTRODE CONFIGURATIONS FOR TRANSVASCULAR NERVE STIMULATION))に従って構成され、この特許文献を参照により援用する。医療用電気リード40の遠位領域46は、近位領域44の剛性よりも高い剛性を備えている。遠位領域46の剛性及び保持構造体48は、力を内頸静脈20に及ぼす。この力は、電極50を内頸静脈20に抗して迷走神経30に隣接して保持するのを助けると共にリード40を内頸静脈20内に安定化するのを助ける。
【0014】
患者の位置並びに患者の頸部12の運動及び患者の頸部12に対する外部からの圧力の影響に依存して患者の内頸静脈の直径及び断面が変化する状況において、遠位領域46の保持の改良は、医療用電気リード40を内頸静脈20内に植え込む場合に有利である。かくして、医療用電気リード40の安定性の増大により、長期治療を確実に施す能力が向上する。近位領域44の低い剛性により、近位領域44から遠位領域46に伝達される力の大きさが減少する。加うるに、近位領域44の低い剛性により、植え込みを行う臨床医は、医療用電気リード40を内頸静脈20内に植え込む際、(図1に示されているように)リードのたるみを上大静脈26内に追加することができる。リードのたるみは又、遠位領域46を内頸静脈20内に保持するのを助ける。
【0015】
任意の標準的な方法を用いてリード40の種々の領域の剛性を測定することができる。一方法では、リード40の10mm区分を0.5mmの距離曲げ又は撓ませるのに必要な力を測定する。この方法を用いてリード40の一区分を10mmよりも長い距離、例えば15mmの距離に切断する。リード40の15mm区分を次に2つの箇所で固定し、2つの箇所相互間に10mmの距離を置く。力をこれら2つの箇所の中央に加え、力の大きさを様々にした状態で撓み距離を測定する。10mm区分を0.5mmの距離撓ませるのに必要な力の大きさをリード40の剛性の測定として用いることができる。力は、ミリニュートン(mN)で測定されるのが良い。10mmよりも短いリード40の剛性を測定するには、10mmよりも長く且つ実際のリード40の区分と同一の構成要素を有するリード40の延長した区分を形成する。
【0016】
一実施形態では、近位領域44の剛性は、10mmスパンにわたり0.5mmの撓みに必要な力が約500mN未満であるようなものである。別の実施形態では、近位領域44の剛性は、10mmスパンにわたり0.5mmの撓みに必要な力が約300mN未満であるようなものである。遠位領域46と近位領域44の相対剛性を比で表すことができる。一実施形態では、遠位領域46と近位領域44の剛性の比は、約2:1である。別の実施形態では、遠位領域46と近位領域44の剛性の比は、約4:1である。別の実施形態では、遠位領域46と近位領域44の剛性の比は、内頸静脈20内への遠位領域46の保持を可能にすると共に近位領域44から遠位領域46に伝達される力の大きさを減少させる任意の比である。
【0017】
遠位領域46内に縫合糸52を用いることにより医療用電気リード40を内頸静脈20内で一層安定化することができる。一実施形態では、医療用電気リード40の植え込み後、患者が所与の期間にわたり頸椎装具を着用することにより、医療用電気リード40は、一段と安定化される。変形実施形態では、医療用電気リード40は、医療用電気リード40を内頸静脈20内で安定化するために、当該技術分野において周知の固定特徴部、例えばシリコーン歯又はコルク栓抜き形固定特徴部(図示せず)を遠位領域46のところに有するのが良い。変形実施形態では、固定特徴部を保持構造体48に設けても良い。他の実施形態では、固定特徴部を医療用電気リード40の先端部66のところに設けても良い。医療用電気リード40は、リード本体42に設けられていて、組織の内部成長を促進する領域54を更に有するのが良い。一実施形態では、領域54は、リード本体42の粗くされたポリマー表面を含む。変形実施形態では、領域54は、リード本体42内、電極50内又はリード本体42と電極50との間の段付き又ははめ込み直径部の領域を含む。他の実施形態では、領域54は、ポリマーメッシュ、例えばダクロンメッシュ、金属メッシュ、例えばステンレス鋼若しくはニチノールメッシュ、又は生体吸収性メッシュを含む。生体吸収性メッシュの例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリジオキサノンを含む。医療用電気リード40は、内頸静脈20内でのその安定性を向上させるために縫合糸52、固定デバイス、組織内部成長領域54又は頸椎装具の任意の組み合わせを有するのが良い。
【0018】
経皮スティック法を用いて医療用電気リード40を内頸静脈20又は任意の他の血管内に植え込むのが良い。スタイレット又はガイドワイヤ(図示せず)を用いて医療用電気リード40を血管内に植え込むことができる。一実施形態では、スタイレット又はガイドワイヤを用いると、植え込み処置中、近位領域44に増大した剛性を与えることができる。変形実施形態では、例えば2007年1月30日に出願された関連の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/669,047号明細書(発明の名称:経血管リードのための直接配送(DIRECT DELIVERY FOR TRANSVASCUALAR LEAD))、2007年1月30日に出願された関連の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/669,042号(発明の名称:経血管リードを配送するための方法及び装置(METHOD AND APPARATUS FOR DELIVERING TRANSVASCULAR LEAD))及び2007年1月30日に出願された関連の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/669,050号明細書(発明の名称:サイドポートリード配送システム(SIDE PORT LEAD DELIVERY SYSTEM))に開示されているリード配送システムを用いて医療用電気リード40を植え込んでも良く、これら特許文献の全てを参照により援用する。
【0019】
図3は、図2の医療用電気リード40の組み合わせ状態の概略図である。図3に示されているように、保持構造体48は、螺旋部を含む。一実施形態では、保持構造体48は、2006年1月30日に出願された関連の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/668,926号明細書(発明の名称:経血管リード安定のための螺旋形態(SPIRAL CONFIGURATIONS FOR INTRAVASCULAR LEAD STABILITY))に開示されている螺旋形状を有し、この特許文献を参照により援用する。変形実施形態では、保持構造体48は、2007年1月30日に出願された関連の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/668,887号明細書(発明の名称:二重螺旋リード形態(DUAL SPIRAL LEAD CONFIGURATIONS))に開示されているような二股状、二方向又は二重螺旋の形態をしており、この特許文献を参照により援用する。他の実施形態では、保持構造体48は、電極50を内頸静脈20内の所望の位置に保持する任意の形状を有する。一実施形態では、保持構造体48は、頸静脈20の内径よりも約5〜約50パーセント大きな直径を有する。一実施形態では、保持構造体48は、内頸静脈20の内径よりも約2ミリメートル大きな直径を有する。
【0020】
図2を参照して説明したように、医療用電気リード40の遠位領域46は、近位領域44の剛性よりも高い剛性を有する。図3に示されている実施形態では、遠位領域46は、導電性部材60を有し、近位領域44は、導電性部材62を有する。遠位領域46の剛性が近位領域44の剛性に対して高いことは、導電性部材60の剛性が導電性部材62の剛性に対して高いことに起因している。図3に示されている実施形態では、導電性部材60は、導電性コイルから成り、導電性部材62は、導電性コイル60の剛性よりも低い剛性を備えたケーブルコネクタから成る。変形実施形態では、両方の導電性部材60,62は、導電性コイルから成るが、導電性コイル60は、導電性コイル62よりも剛性が高い。この増大した剛性は、コイル60,62を巻回する際の差、コイル60,62について互いに異なる材料を選択すること、コイル60,62の線の直径の差、コイル60,62のピッチの差又は当該技術分野において知られている任意の他の方法を用いることによって達成できる。一実施形態では、導電性部材60は、導電性部材62よりも剛性の高い金属で作られる。一実施形態では、コイル60は、MP35N‐Agで作られ、導電性部材62は、Pt‐Taで作られる。一実施形態では、導電性部材60は、コイル導電性部材62よりも剛性の高い導電性ケーブルであっても良い。
【0021】
図4は、本発明の別の実施形態としての医療用電気リード40の正面図である。この実施形態では、遠位領域46の剛性と近位領域44の剛性の差は、互いに異なるリード本体材料の選択によって達成される。リード本体42は、遠位リード本体70及び近位リード本体72を有する。一実施形態では、遠位リード本体70は、剛性ポリマーで構成され、近位リード本体72は、これよりもフレキシブルなポリマーで作られる。一実施形態では、遠位リード本体70は、ポリウレタンから成り、近位リード本体72は、シリコーンから成る。変形実施形態では、遠位リード本体70と近位リード本体72の両方は、ポリウレタンで構成され、遠位リード本体70は、近位リード本体72よりも剛性の高いポリウレタンで作られる。さらに別の変形実施形態では、遠位リード本体70と近位リード本体72の両方は、シリコーンで構成され、遠位リード本体70は、近位リード本体72よりも剛性の高いシリコーンで構成される。
【0022】
図5は、本発明の別の実施形態としての医療用電気リード40の正面図である。この実施形態では、リード本体42は、遠位リード本体80、近位リード本体82及び遠位方向に増大する剛性を備えていて、遠位リード本体80と近位リード本体82との間に設けられた移行領域84を有する。図5に示されている実施形態では、近位領域44から遠位領域46までの剛性の増大は、近位リード本体82よりも厚い絶縁層(図示せず)を備えた遠位リード本体80を用いることによって達成される。一実施形態では、近位リード本体82の絶縁層の厚さは、約0.004〜約0.008インチ(約0.1016〜約0.2032mm)であり、遠位リード本体80の絶縁層の厚さは、約0.006〜約0.012インチ(約0.1524〜約0.3048mm)である。図5に示されている実施形態では、移行領域84の厚さは、遠位方向に連続的に変化しているが、他の実施形態では、移行領域84は、互いに異なる厚さを備えた別々のセグメントから成っていても良い。
【0023】
一実施形態では、移行領域84は、約5ミリメートル〜5センチメートルの長さを有する。別の実施形態では、移行領域84は、長さがほぼ等しい3つのセグメントを有する。移行領域84を絶縁層の厚さに関して説明したが、他の実施形態では、移行領域84は、移行領域84を形成するために用いられる材料を変えることによって達成できる。例えば、一実施形態では、移行領域84は、近位リード本体82を形成するために用いられる材料よりも剛性が高いが遠位リード本体80を形成するために用いられる材料よりもフレキシブルな材料から成っていても良い。
【0024】
図6は、本発明の更に別の実施形態による患者の内頸静脈20内に植え込まれた医療用電気リード40の概略図である。図示の実施形態では、医療用電気リード40は、遠位領域46のところに配置された保持構造体48及び近位領域44のところに配置された成形付形部88を有する。図6に螺旋部として示された成形付形部88は、近位領域44から遠位領域46に伝達される力の大きさを減少させるため又は近位領域44に加えられる力又はトルクを弱め又は切り離すために、弱いばねとして働く。力を減少させるという成形付形部88の態様により、内頸静脈20内での遠位領域46の保持が改良される。成形付形部88は、図6では螺旋部として示されているが、他の実施形態では、成形付形部88は、遠位領域46に伝達される力の大きさを減少させる任意の他の形状を有する。一実施形態では、成形付形部88は、二次元波又は正弦曲線の形をしている。
【0025】
成形シリコーン部品、金属導体コイル、熱成形ポリウレタン管又は当該技術分野において知られている任意の他の方法を用いて保持構造体48及び成形付形部88を形成することができる。保持構造体48及び成形付形部88は、円又は楕円の形を含む種々の断面形状を有することができる。一実施形態では、保持構造体48及び成形付形部88は、ピッチが約0〜5センチメートルの螺旋部を含む。変形実施形態では、保持構造体48及び成形付形部88は、直径が約5〜約50ミリメートルの螺旋部から成っていても良い。一実施形態では、保持構造体48及び成形付形部88は、約10〜約35ミリメートルの直径を有する。別の変形実施形態では、保持構造体48及び成形付形部88は、真っ直ぐにしたときに約30〜約200ミリメートルの長さを有しても良い。一実施形態では、保持構造体48及び成形付形部88の長さは、真っ直ぐにしたとき、約40〜約70センチメートルである。
【0026】
他の実施形態では、遠位領域46の剛性と近位領域44の剛性の差は、上述の実施形態の任意の組み合わせによって達成できる。例えば、一実施形態では、遠位領域46は、コイル導体60及びこれよりも厚い遠位リード本体80を有し、近位領域44は、ケーブル導体62及びこれよりも薄いリード本体82を有する。別の実施形態では、遠位領域46は、剛性ポリマーから作られた厚いリード本体80を有し、近位領域44は、これよりもフレキシブルなポリマーで作られた薄いリード本体82を有すると共に成形付形部88を有する。移行領域84を上述した実施形態の任意の組み合わせ、例えばコイル導体60及びケーブル導体62と関連して用いることができる。医療用電気リード40を神経又は筋肉を刺激する目的で任意の血管、例えば静脈、動脈、リンパ管、胆管内に植え込み可能である。医療用電気リード40は、任意の数の導体、電極、端子コネクタ及び絶縁体を有することができる。
【0027】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述した例示の実施形態の種々の変形及び追加を行うことができる。例えば、上述の実施形態は、特定の特徴に係るが、本発明の範囲は、特徴の種々の組み合わせを備えた実施形態及び説明した特徴の全てを備えているわけではない実施形態をも含む。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に属するかかる変更例、変形例及び変化例をこれらの全ての均等例と一緒に包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の内頸静脈内で迷走神経に隣接した標的位置に植え込むための医療用電気リードであって、前記リードは、
近位剛性を備えた近位領域と、
遠位剛性を備えた遠位領域と、を有し、前記遠位領域は、前記遠位領域を前記内頸静脈内に保持するように構成された第1の螺旋部を有し、
前記近位領域と前記遠位領域との間に設けられた移行領域を有し、前記移行領域は、移行剛性を備え、
前記遠位領域に結合された電極を有し、
前記近位剛性は、前記近位領域から前記遠位領域に伝達される力の大きさを減少させるために遠位剛性よりも低く、前記移行剛性は、前記遠位剛性よりも低く且つ前記近位剛性よりも高い、
ことを特徴とするリード。
【請求項2】
前記第1の螺旋部は、約5〜約50ミリメートルの直径、約30〜約200ミリメートルの長さ、及び約0〜約5センチメートルのピッチを有する、請求項1に記載のリード。
【請求項3】
前記遠位剛性と前記近位剛性の比は、約2:1である、請求項1に記載のリード。
【請求項4】
前記遠位剛性と前記近位剛性の比は、約4:1である、請求項1に記載のリード。
【請求項5】
前記近位剛性は、前記近位領域の10mmスパンにわたり0.5mmの撓みに必要な力が約500mN以下であるようなものである、請求項1に記載のリード。
【請求項6】
前記近位剛性は、前記近位領域の10mmスパンにわたり0.5mmの撓みに必要な力が約300mN以下であるようなものである、請求項1に記載のリード。
【請求項7】
前記近位領域は、成形付形部を含む、請求項1に記載のリード。
【請求項8】
前記成形付形部は、第2の螺旋部から成る、請求項7に記載のリード。
【請求項9】
患者の内頸静脈内で迷走神経に隣接した標的位置に植え込むための医療用電気リードであって、前記リードは、
近位領域、遠位領域、及び前記遠位領域に結合された電極を有し、
前記近位領域は、前記近位領域から前記遠位領域に伝達される力の大きさを減少させるための手段を有し、前記遠位領域は、前記遠位領域を前記内頸静脈内に保持するための手段を有する、
ことを特徴とするリード。
【請求項10】
前記保持手段は、保持構造体と、遠位剛性とを含む、請求項9に記載のリード。
【請求項11】
前記減少手段は、前記遠位剛性よりも低い近位剛性を含む、請求項10に記載のリード。
【請求項12】
前記減少手段は、成形付形部を更に含む、請求項11に記載のリード。
【請求項13】
前記保持構造体は、螺旋部から成る、請求項10に記載のリード。
【請求項14】
前記減少手段は、成形付形部から成る、請求項9に記載のリード。
【請求項15】
患者の内頸静脈内で標的位置に且つ迷走神経に隣接して植え込むための医療用電気リードであって、前記リードは、
近位剛性を備えた近位領域と、
遠位領域と、を有し、前記遠位領域は、遠位剛性を備えると共に前記遠位領域を前記内頸静脈内に保持するように構成された保持構造体を有し、
前記遠位領域に結合された電極を有し、
前記近位剛性は、前記遠位剛性よりも低い、
ことを特徴とするリード。
【請求項16】
遠位剛性を備えた遠位コイル導体と、前記遠位コイル導体の遠位剛性よりも低い近位剛性を備えた近位ケーブル導体とを更に有する、請求項15に記載のリード。
【請求項17】
遠位剛性を備えた遠位コイル導体と、前記遠位コイル導体の遠位剛性よりも低い近位剛性を備えた近位コイル導体とを更に有する、請求項15に記載のリード。
【請求項18】
前記リードは、遠位剛性を備えたポリマーから成る遠位リード本体と、前記遠位リード本体ポリマーの剛性よりも低い近位剛性を備えたポリマーから成る近位リード本体とを更に有する、請求項15に記載のリード。
【請求項19】
前記遠位リード本体は、ポリウレタンから成り、前記近位リード本体は、シリコーンから成る、請求項18に記載のリード。
【請求項20】
前記リードは、遠位絶縁厚さを備えた遠位リード本体と、前記遠位リード本体の遠位絶縁厚さよりも小さい絶縁厚さを備えた近位リード本体とを更に有する、請求項15に記載のリード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−516385(P2010−516385A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547237(P2009−547237)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/086125
【国際公開番号】WO2008/094348
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】