説明

近接場光発生装置およびその製造方法

【課題】導波路に対向するエッジ部を有する近接場光発生素子を備えた近接場光発生装置において、導波路を伝播する光の利用効率を高め、且つ近接場光のスポット径を小さくすることを可能にする。
【解決手段】近接場光発生装置15は、溝部31gを有する導波路31と、導波路31の上面31c上に配置され、溝部31gに連続する開口部34cを有するクラッド層34と、開口部34c内に収容された近接場光発生素子32と、導波路31およびクラッド層34と近接場光発生素子32との間に介在する緩衝層33を備えている。近接場光発生素子32は、溝部31gに近づくに従って互いの距離が小さくなる側面32d,32eと、側面32d,32eを接続し、緩衝層33を介して溝部31gに対向するエッジ部32fと、エッジ部32fの一端に位置する近接場光発生部32gを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に近接場光を照射して磁気記録媒体の保磁力を低下させて情報の記録を行う熱アシスト磁気記録に用いられる近接場光発生装置およびその製造方法、ならびに、近接場光発生装置を有する熱アシスト磁気記録ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよび磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置等の磁気記録装置では、高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドおよび磁気記録媒体の性能向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、基板に対して、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。磁気ディスク装置において、薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体の表面からわずかに浮上するスライダに設けられる。
【0003】
磁気記録媒体は、磁性微粒子が集合した不連続媒体であり、各磁性微粒子は単磁区構造となっている。この磁気記録媒体において、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子によって構成される。記録密度を高めるためには、隣接する記録ビットの境界の凹凸を小さくしなければならない。そのためには、磁性微粒子を小さくしなくてはならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、磁性微粒子の体積の減少に伴って、磁性微粒子の磁化の熱安定性が低下するという問題が発生する。この問題を解消するには、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすることが効果的である。しかし、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすると、記録媒体の保磁力が大きくなって、既存の磁気ヘッドでは情報の記録が困難になるという問題が発生する。
【0004】
上述のような問題を解決する方法として、いわゆる熱アシスト磁気記録という方法が提案されている。この方法では、保磁力の大きな記録媒体を使用し、情報の記録時には、記録媒体のうち情報が記録される部分に対して磁界と同時に熱も加えて、その部分の温度を上昇させ保磁力を低下させて情報の記録を行う。以下、熱アシスト磁気記録に用いられる磁気ヘッドを、熱アシスト磁気記録ヘッドと呼ぶ。
【0005】
熱アシスト磁気記録では、磁気記録媒体に対して熱を加える方法としては、近接場光を用いる方法が一般的である。近接場光を発生させる方法としては、光によって励起されたプラズモンから近接場光を発生する金属片である近接場光プローブ、いわゆるプラズモン・アンテナを用いる方法が一般に知られている。特許文献1および特許文献2には、プラズモン・アンテナに光を直接照射してプラズモンを励起させる方法が記載されている。
【0006】
ところが、光が直接照射されることによって近接場光を発生するプラズモン・アンテナでは、照射された光の近接場光への変換の効率が非常に低いことが知られている。プラズモン・アンテナに照射された光のエネルギーの大部分は、プラズモン・アンテナの表面で反射されたり、熱エネルギーに変換されてプラズモン・アンテナに吸収されたりする。プラズモン・アンテナのサイズは光の波長以下に設定されるため、プラズモン・アンテナの体積は小さい。そのため、プラズモン・アンテナにおいて、上記の熱エネルギーの吸収に伴う温度上昇は非常に大きくなる。
【0007】
上述のような温度上昇により、プラズモン・アンテナは、体積の膨張を引き起こし、熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて磁気記録媒体に対向する面である媒体対向面から突出する。すると、再生ヘッドにおける媒体対向面に位置する端部が磁気記録媒体から遠ざかってしまい、その結果、記録動作時にサーボ信号が読み取れなくなるという問題が発生する。
【0008】
そこで、例えば特許文献3に記載されているように、導波路を伝播する光を、プラズモン・アンテナに直接照射するのではなく、近接場光発生素子に対して緩衝部を介して表面プラズモン・ポラリトンモードで結合させて、近接場光発生素子に表面プラズモンを励起させる技術が提案されている。近接場光発生素子は、媒体対向面に配置されて近接場光を発生させる先鋭部である近接場光発生部を有している。この技術では、導波路と緩衝部の界面において、導波路を伝播する光が全反射することによって、緩衝部にしみ出すエバネッセント光が発生し、このエバネッセント光と近接場光発生素子における電荷の集団振動すなわち表面プラズモンとが結合して、近接場光発生素子に表面プラズモンが励起される。近接場光発生素子において、励起した表面プラズモンは、近接場光発生部まで伝播し、近接場光発生部から近接場光が発生される。この技術によれば、近接場光発生素子には、導波路を伝播する光が直接照射されないので、近接場光発生素子の過度の温度上昇を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−114184号公報
【特許文献2】特開2001−255254号公報
【特許文献3】特開2005−116155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、近接場光発生素子の形状と、近接場光発生素子、緩衝部および導波路の配置の一例について説明する。この例では、導波路の上面の上に緩衝部を介して近接場光発生素子が配置される。この近接場光発生素子は、緩衝部を介して導波路に対向するエッジ部を有している。典型的には、この近接場光発生素子における媒体対向面に平行な断面の形状は、頂点が下を向いた二等辺三角形である。近接場光発生素子のエッジ部の一端は媒体対向面に配置されている。この近接場光発生素子において、媒体対向面に配置されたエッジ部の一端およびその近傍の部分が近接場光発生部となる。この例では、近接場光発生素子のエッジ部に表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンは、エッジ部に沿って近接場光発生部まで伝播し、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部より近接場光が発生される。この例によれば、近接場光発生素子のエッジ部に励起された表面プラズモンを、効率よく、近接場光発生部まで伝播させることができる。
【0011】
上記の近接場光発生素子において、エッジ部は、理想的には、所定の角度をなす2つの側面が接することによって線状に形成される。しかし、実際に作製された近接場光発生素子では、エッジ部は、丸みを帯びるため、所定の角度をなす2つの側面を接続する円筒面形状になる。ここで、この円筒面形状のエッジ部の曲率半径を先端半径と呼ぶ。また、エッジ部を介して接続される2つの側面がなす角度を先端角度と呼ぶ。熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられる近接場光発生素子では、上記の先端半径と先端角度は、以下で説明するように、熱アシスト磁気記録ヘッドの特性に影響を与える重要なパラメータである。
【0012】
まず、先端半径について説明する。先端半径は、近接場光発生部より発生される近接場光のスポット径に影響を与えるパラメータである。磁気記録装置における記録密度をより大きくするためには、近接場光のスポット径はより小さい方が好ましい。近接場光のスポット径をより小さくするためには、先端半径がより小さいことが好ましい。
【0013】
次に、先端角度について説明する。導波路を伝播する光の利用効率を高めるためには、近接場光発生素子に励起される表面プラズモンの強度を大きくすることが重要である。そのためには、エバネッセント光の波数と近接場光発生素子に励起される表面プラズモンの波数とを合わせる必要がある。近接場光発生素子に励起される表面プラズモンの波数は、近接場光発生素子の形状、特に近接場光発生素子のエッジ部の形状によって変化する。そのため、先端角度は、近接場光発生素子に励起される表面プラズモンの波数に影響を与えるパラメータである。一方、エバネッセント光の波数は、導波路を伝播する光の波長に依存する。導波路を伝播する光として、一般的なレーザ光を使用する場合には、そのレーザ光の波長に依存して決まるエバネッセント光の波数に、近接場光発生素子に励起される表面プラズモンの波数を合わせる必要がある。そのため、先端角度には好ましい範囲が存在する。
【0014】
このように、緩衝部を介して導波路に対向するエッジ部を有する近接場光発生素子では、導波路を伝播する光の利用効率を高めるために、先端角度を好ましい範囲内の角度とし、近接場光のスポット径をより小さくするために、先端半径をより小さくすることが求められる。しかし、実際に近接場光発生素子を作製する上では、特に先端角度がある程度大きい場合に、先端半径を小さくすることが難しいという問題点がある。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、導波路に対向するエッジ部を有する近接場光発生素子を備えた近接場光発生装置であって、導波路を伝播する光の利用効率を高め、且つ近接場光のスポット径を小さくすることを可能にする近接場光発生装置およびその製造方法、ならびに、近接場光発生装置を有する熱アシスト磁気記録ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよび磁気記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の近接場光発生装置は、導波路と、クラッド層と、近接場光発生素子と、緩衝層とを備えている。導波路は、上面と、この上面で開口し、この上面に平行な第1の方向に長い溝部とを有し、光を伝播させる。クラッド層は、導波路の上面に接する下面と、その反対側の上面と、この上面から下面にかけて貫通して溝部に連続する開口部とを有している。近接場光発生素子は、第1の方向に長く、少なくとも一部が開口部内に収容されている。緩衝層は、溝部および開口部内において、導波路およびクラッド層と近接場光発生素子との間に介在する。クラッド層と緩衝層は、いずれも、導波路の屈折率よりも小さい屈折率を有している。開口部は、導波路の上面に近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の開口部側壁を有している。溝部は、第1の開口部側壁に連続する第1の溝部側壁と、第2の開口部側壁に連続する第2の溝部側壁とを有している。導波路の上面に垂直な第2の方向に対して第1の溝部側壁がなす角度は、第2の方向に対して第1の開口部側壁がなす角度よりも小さく、第2の方向に対して第2の溝部側壁がなす角度は、第2の方向に対して第2の開口部側壁がなす角度よりも小さい。近接場光発生素子は、緩衝層を介して第1および第2の開口部側壁に対向し、溝部に近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の側面と、この第1および第2の側面を接続し、緩衝層を介して溝部に対向するエッジ部と、エッジ部の一端に位置し、近接場光を発生する近接場光発生部とを有している。エッジ部において、導波路と緩衝層との界面において発生するエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンがエッジ部に沿って近接場光発生部に伝播され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部より近接場光が発生される。
【0017】
本発明の近接場光発生装置において、近接場光発生素子は、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Au、Ag、CuおよびAlからなるグループから選択された1つによって、またはこれらのうちの複数の元素からなる合金によって形成されていてもよい。
【0018】
本発明の近接場光発生装置の製造方法は、導波路およびクラッド層を形成する工程と、導波路、クラッド層および緩衝層によって近接場光発生素子形成用のフレームが形成されるように、導波路の溝部およびクラッド層の開口部内に緩衝層を形成する工程と、フレーム内に近接場光発生素子を形成する工程とを備えている。
【0019】
本発明の近接場光発生装置の製造方法において、導波路およびクラッド層を形成する工程は、後に溝部が形成されることによって導波路となる予備導波路を形成する工程と、予備導波路の上にクラッド層を形成する工程と、クラッド層をエッチングマスクとして予備導波路をエッチングして、予備導波路に溝部を形成することによって、導波路を完成させる工程とを含んでいてもよい。この場合、導波路を完成させる工程は、エッチング選択比が1より大きい条件で、予備導波路をエッチングしてもよい。
【0020】
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法において、緩衝層は原子層堆積法によって形成されてもよい。
【0021】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドは、磁気記録媒体に対向する媒体対向面と、媒体対向面に配置された端面を有し、情報を磁気記録媒体に記録するための記録磁界を発生する磁極と、本発明の近接場光発生装置とを備えている。近接場光発生部は、前記媒体対向面に配置されている。近接場光発生装置は、記録磁界によって磁気記録媒体に情報を記録する際に磁気記録媒体に照射される近接場光を発生する。
【0022】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、近接場光発生素子は、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Au、Ag、CuおよびAlからなるグループから選択された1つによって、またはこれらのうちの複数の元素からなる合金によって形成されていてもよい。
【0023】
本発明のヘッドジンバルアセンブリは、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドと、この熱アシスト磁気記録ヘッドを支持するサスペンションとを備えている。本発明の磁気記録装置は、磁気記録媒体と、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドと、この熱アシスト磁気記録ヘッドを支持すると共に磁気記録媒体に対して位置決めする位置決め装置とを備えている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の近接場光発生装置、熱アシスト磁気記録ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリまたは磁気記録装置では、導波路は溝部を有し、クラッド層は溝部に連続する開口部を有している。導波路の上面に垂直な第2の方向に対して第1の溝部側壁がなす角度は、第2の方向に対して第1の開口部側壁がなす角度よりも小さく、第2の方向に対して第2の溝部側壁がなす角度は、第2の方向に対して第2の開口部側壁がなす角度よりも小さい。近接場光発生素子は、緩衝層を介して第1および第2の開口部側壁に対向し、溝部に近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の側面と、この第1および第2の側面を接続し、緩衝層を介して溝部に対向するエッジ部と、エッジ部の一端に位置し、近接場光を発生する近接場光発生部とを有している。このような構成により、本発明によれば、所望の先端角度と小さな先端半径を有するエッジ部を含む近接場光発生素子を実現することが可能になる。これにより、本発明によれば、導波路を伝播する光の利用効率を高め、且つ近接場光のスポット径を小さくすることが可能になるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法では、導波路、クラッド層および緩衝層によって近接場光発生素子形成用のフレームが形成されるように、導波路の溝部およびクラッド層の開口部内に緩衝層を形成し、その後、フレーム内に近接場光発生素子を形成する。このような製造方法によれば、所望の先端角度と小さな先端半径を有する近接場光発生素子を形成することが可能になる。これにより、本発明によれば、導波路を伝播する光の利用効率を高め、且つ近接場光のスポット径を小さくすることが可能になるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法において、導波路およびクラッド層を形成する工程は、後に溝部が形成されることによって導波路となる予備導波路を形成する工程と、予備導波路の上にクラッド層を形成する工程と、クラッド層をエッチングマスクとして予備導波路をエッチングして、予備導波路に溝部を形成することによって、導波路を完成させる工程とを含んでいてもよい。この場合には、溝部と開口部が正確に位置合わせされるので、近接場光発生素子を精度よく形成することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る近接場光発生装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る近接場光発生装置の要部の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る近接場光発生装置の要部の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける近接場光発生装置と磁極を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおけるヘッド部の媒体対向面の一部を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける近接場光発生装置と磁極を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る近接場光発生装置による近接場光発生の原理を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る磁気記録装置を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリを示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドを示す斜視図である。
【図11】図10における11−11線断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る磁気記録装置の回路構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係る近接場光発生装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図14】図13に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図15】図14に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図16】図15に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図17】図15に示した工程における緩衝層の成長の過程を示す説明図である。
【図18】比較例の近接場光発生装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図19】図18に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図20】図19に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図21】第1のシミュレーションで使用した近接場光発生装置のモデルを示す側面図である。
【図22】図21に示した近接場光発生装置のモデルの正面図である。
【図23】第1のシミュレーションの結果を示す特性図である。
【図24】第2のシミュレーションで使用した近接場光発生素子形成用のフレームのモデルの形状を示す説明図である。
【図25】第4のシミュレーションで使用した近接場光発生装置のモデルを示す側面図である。
【図26】図25に示した近接場光発生装置のモデルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図8を参照して、本発明の一実施の形態に係る磁気記録装置としての磁気ディスク装置について説明する。図8に示したように、磁気ディスク装置は、複数の磁気記録媒体としての複数の磁気ディスク201と、この複数の磁気ディスク201を回転させるスピンドルモータ202とを備えている。本実施の形態における磁気ディスク201は、垂直磁気記録用であり、ディスク基板上に、軟磁性裏打ち層、中間層および磁気記録層(垂直磁化層)が順次積層された構造を有している。
【0029】
磁気ディスク装置は、更に、複数の駆動アーム211を有するアセンブリキャリッジ装置210と、複数の駆動アーム211の先端部に取り付けられた複数のヘッドジンバルアセンブリ212とを備えている。ヘッドジンバルアセンブリ212は、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッド1と、この熱アシスト磁気記録ヘッド1を支持するサスペンション220とを備えている。
【0030】
アセンブリキャリッジ装置210は、熱アシスト磁気記録ヘッド1を、磁気ディスク201の磁気記録層に形成され、記録ビットが並ぶトラック上に位置決めするための装置である。アセンブリキャリッジ装置210は、更に、ピボットベアリング軸213と、ボイスコイルモータ214とを有している。複数の駆動アーム211は、ピボットベアリング軸213に沿った方向にスタックされ、ボイスコイルモータ214によって駆動されて、軸213を中心として揺動可能になっている。なお、本発明の磁気記録装置の構造は、以上説明した構成の磁気ディスク装置に限定されるものではない。例えば、本発明の磁気記録装置は、それぞれ1つの磁気ディスク201、駆動アーム211、ヘッドジンバルアセンブリ212および熱アシスト磁気記録ヘッド1を備えたものであってもよい。
【0031】
磁気ディスク装置は、更に、熱アシスト磁気記録ヘッド1の記録動作および再生動作を制御すると共に、後述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードの発光動作を制御する制御回路230を備えている。
【0032】
図9は、図8におけるヘッドジンバルアセンブリ212を示す斜視図である。前述のように、ヘッドジンバルアセンブリ212は、熱アシスト磁気記録ヘッド1とサスペンション220とを備えている。サスペンション220は、ロードビーム221と、このロードビーム221に固着され、弾性を有するフレクシャ222と、ロードビーム221の基部に設けられたベースプレート223と、ロードビーム221およびフレクシャ222の上に設けられた配線部材224とを有している。配線部材224は、複数のリードを含んでいる。熱アシスト磁気記録ヘッド1は、磁気ディスク201の表面に対して所定の間隔(浮上量)をもって対向するように、サスペンション220の先端部においてフレクシャ222に固着されている。配線部材224の一端部は、熱アシスト磁気記録ヘッド1の複数の端子に電気的に接続されている。配線部材224の他端部には、ロードビーム221の基部に配置された複数のパッド状端子が設けられている。
【0033】
アセンブリキャリッジ装置210およびサスペンション220は、本発明における位置決め装置に対応する。なお、本発明のヘッドジンバルアセンブリは、図9に示した構成のものに限定されるものではない。例えば、本発明のヘッドジンバルアセンブリは、サスペンション220の途中にヘッド駆動用ICチップが装着されたものであってもよい。
【0034】
次に、図10および図11を参照して、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッド1の構成について説明する。図10は、熱アシスト磁気記録ヘッド1を示す斜視図である。図11は、図10における11−11線断面図である。熱アシスト磁気記録ヘッド1は、スライダ10と光源ユニット50とを備えている。図11は、スライダ10と光源ユニット50を分離した状態を表している。
【0035】
スライダ10は、アルティック(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなる直方体形状のスライダ基板11と、ヘッド部12とを備えている。スライダ基板11は、磁気ディスク201に対向する媒体対向面11aと、この媒体対向面11aとは反対側の背面11bと、媒体対向面11aと背面11bとを連結する4つの面とを有している。媒体対向面11aと背面11bとを連結する4つの面のうちの1つは素子形成面11cである。素子形成面11cは、媒体対向面11aに垂直である。ヘッド部12は、素子形成面11cの上に配置されている。媒体対向面11aは、磁気ディスク201に対するスライダ10の適切な浮上量が得られるように加工されている。ヘッド部12は、磁気ディスク201に対向する媒体対向面12aと、この媒体対向面12aとは反対側の背面12bとを有している。媒体対向面12aは、スライダ基板11の媒体対向面11aと平行である。
【0036】
ここで、ヘッド部12の構成要素に関して、基準の位置に対して、素子形成面11cに垂直で、且つ素子形成面11cから遠ざかる方向にある位置を「上方」と定義し、その反対方向にある位置を「下方」と定義する。また、ヘッド部12に含まれる任意の層に関して、素子形成面11cにより近い面を「下面」と定義し、素子形成面11cからより遠い面を「上面」と定義する。
【0037】
また、X方向、Y方向、Z方向、−X方向、−Y方向、−Z方向を以下のように定義する。X方向は、媒体対向面11aに垂直で、且つ媒体対向面11aから背面11bに向かう方向である。Y方向は、媒体対向面11aおよび素子形成面11cに平行な方向であって、図11における奥から手前に向かう方向である。Z方向は、素子形成面11cに垂直な方向であって、素子形成面11cから離れる方向である。−X方向、−Y方向、−Z方向は、それぞれ、X方向、Y方向、Z方向とは反対方向である。スライダ10から見た磁気ディスク201の進行方向はZ方向である。スライダ10における空気流入端(リーディング端)は、媒体対向面11aの−Z方向における端部である。スライダ10における空気流出端(トレーリング端)は、媒体対向面12aのZ方向における端部である。また、トラック幅方向は、Y方向に平行な方向である。
【0038】
光源ユニット50は、レーザ光を出射する光源としてのレーザダイオード60と、このレーザダイオード60を支持する直方体形状の支持部材51とを備えている。支持部材51は、例えば、アルティック(Al23・TiC)等のセラミック材料によって形成されている。支持部材51は、接着面51aと、この接着面51aとは反対側の背面51bと、接着面51aと背面51bとを連結する4つの面とを有している。接着面51aと背面51bとを連結する4つの面のうちの1つは光源設置面51cである。接着面51aは、スライダ基板11の背面11bに接着される面である。光源設置面51cは、接着面51aに垂直であり、素子形成面11cに平行である。レーザダイオード60は、光源設置面51cに搭載されている。光源設置面51cは、本発明における支持部材の上面に対応する。支持部材51は、レーザダイオード60を支持する機能の他に、レーザダイオード60によって発生される熱を放散させるヒートシンクの機能を有していてもよい。
【0039】
図11に示したように、ヘッド部12は、素子形成面11cの上に配置された絶縁層13と、この絶縁層13の上に順に積層された再生ヘッド14、近接場光発生装置15、記録ヘッド16および保護層17を備えている。絶縁層13と保護層17は、Al23(以下、アルミナとも記す。)等の絶縁材料によって形成されている。
【0040】
再生ヘッド14は、絶縁層13の上に配置された下部シールド層21と、この下部シールド層21の上に配置されたMR素子22と、このMR素子22の上に配置された上部シールド層23と、MR素子22の周囲において下部シールド層21と上部シールド層23の間に配置された絶縁層24とを有している。下部シールド層21と上部シールド層23は、軟磁性材料によって形成されている。絶縁層24は、アルミナ等の絶縁材料によって形成されている。
【0041】
MR素子22の一端部は、媒体対向面12aに配置されている。MR素子としては、例えば、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子またはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用のセンス電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、センス電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。MR素子22がTMR素子またはCPPタイプのGMR素子の場合には、下部シールド層21と上部シールド層23は、センス電流をMR素子22に流すための電極を兼ねていてもよい。MR素子22がCIPタイプのGMR素子の場合には、MR素子22と下部シールド層21の間と、MR素子22と上部シールド層23の間に、それぞれ絶縁膜が設けられ、これらの絶縁膜の間に、センス電流をMR素子22に流すための2つのリードが設けられる。
【0042】
ヘッド部12は、更に、上部シールド層23の上に配置された絶縁層25と、この絶縁層25の上に配置された中間シールド層26とを備えている。中間シールド層26は、記録ヘッド16で発生する磁界からMR素子22をシールドする機能を有している。絶縁層25は、アルミナ等の絶縁材料によって形成されている。中間シールド層26は、軟磁性材料によって形成されている。絶縁層25と中間シールド層26は、省略してもよい。
【0043】
近接場光発生装置15は、記録ヘッド16より発生される記録磁界によって磁気ディスク201に情報を記録する際に磁気ディスク201に照射される近接場光を発生する。近接場光発生装置15は、中間シールド層26の上に配置された誘電体層27と、この誘電体層27の上に配置された導波路31と、誘電体層27の上において導波路31の周囲に配置された誘電体層29と、近接場光発生素子32と、緩衝層33(図11では図示せず)と、クラッド層34とを備えている。導波路31は、ヘッド部12の背面12bに配置された入射端31aを有している。近接場光発生装置15の構成については、後で詳しく説明する。
【0044】
本実施の形態における記録ヘッド16は、垂直磁気記録用である。この記録ヘッド16は、コイル41と、磁極42と、記録シールド43と、ギャップ層44とを有している。コイル41は、磁気ディスク201に記録する情報に応じた磁界を発生する。磁極42は、媒体対向面12aに配置された端面を有し、コイル41によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を磁気ディスク201に記録するための記録磁界を発生する。記録シールド43は、媒体対向面12aにおいて、磁極42に対してZ方向の前方(トレーリング端側)に配置された端面を有している。ギャップ層44は、磁極42と記録シールド43の間に配置されている。磁極42と記録シールド43は、軟磁性材料によって形成されている。ギャップ層44は、非磁性材料によって形成されている。媒体対向面12aにおける磁極42の端面と記録シールド43の端面との間隔は、例えば0.01〜0.5μmの範囲内である。ギャップ層44は、Al23、SiO、AlN、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の非磁性絶縁材料によって形成されていてもよいし、Ru等の非磁性導電材料によって形成されていてもよい。
【0045】
記録ヘッド16は、更に、磁極42の周囲に配置された絶縁層45と、磁極42の上面の一部および絶縁層45の上面の一部の上に配置された絶縁層46とを有している。コイル41は、絶縁層46の上に配置されている。記録ヘッド16は、更に、コイル41を覆う絶縁層47を有している。絶縁層45,46は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層47は、例えばフォトレジストによって形成されている。コイル41は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0046】
記録シールド43の一部は、絶縁層47の上に配置されている。また、記録シールド43は、媒体対向面12aから離れた位置で、磁極42の上面に接続されている。磁気ディスク201に記録されるビットパターンの端部の位置は、媒体対向面12aに配置された磁極42の端面におけるギャップ層44側の端部の位置によって決まる。記録シールド43は、媒体対向面12aに配置された磁極42の端面より発生されて磁気ディスク201の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込むことにより、この磁束が磁気ディスク201に達することを阻止する。これにより、記録密度を向上させることができる。また、記録シールド43は、熱アシスト磁気記録ヘッド1の外部からヘッド1に印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が磁極42に集中して取り込まれることによって磁気ディスク201に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド43は、磁極42の端面より発生されて、磁気ディスク201を磁化した磁束を還流させる機能も有している。
【0047】
図11に示したように、保護層17は、記録ヘッド16を覆うように配置されている。図10に示したように、ヘッド部12は、更に、保護層17の上面に配置され、MR素子22に電気的に接続された一対の端子18と、保護層17の上面に配置され、コイル41に電気的に接続された一対の端子19とを備えている。これらの端子18,19は、図9に示した配線部材224の複数のパッド状端子に電気的に接続されている。
【0048】
レーザダイオード60としては、InP系、GaAs系、GaN系等の、通信用、光学系ディスクストレージ用または材料分析用等として通常用いられているものが使用可能である。レーザダイオード60が出射するレーザ光の波長は、例えば375nm〜1.7μmの範囲内のいずれの値であってもよい。具体的には、レーザダイオード60としては、例えば、発光可能波長領域が1.2〜1.67μmとされているInGaAsP/InP四元混晶系レーザダイオードを用いることもできる。
【0049】
図11に示したように、レーザダイオード60は、下部電極61と活性層62と上部電極63とを含む多層構造を有している。この多層構造における2つの劈開面には、光を全反射して発振を励起するためのSiO、Al23等からなる反射層64が設けられている。反射層64には、発光中心62aを含む活性層62の位置において、レーザ光を出射するための開口が設けられている。レーザダイオード60の厚みTLAは、例えば、60〜200μm程度である。
【0050】
光源ユニット50は、更に、光源設置面51cに配置され、下部電極61に電気的に接続された端子52と、光源設置面51cに配置され、上部電極63に電気的に接続された端子53とを備えている。これらの端子52,53は、図9に示した配線部材224の複数のパッド状端子に電気的に接続されている。端子52,53を介してレーザダイオード60に所定の電圧を印加すると、レーザダイオード60の発光中心62aからレーザ光が出射される。レーザダイオード60より出射されるレーザ光は、電界の振動方向が活性層62の面に対して垂直なTMモードの偏光であることが好ましい。
【0051】
レーザダイオード60の駆動には、磁気ディスク装置内の電源を使用することが可能である。磁気ディスク装置は、通常、例えば2V程度の電圧を発生する電源を備えており、この電源の電圧はレーザダイオード60を駆動するのに十分である。また、レーザダイオード60の消費電力は、例えば数十mW程度であり、これは、磁気ディスク装置内の電源で十分に賄うことができる。
【0052】
図11に示したように、光源ユニット50は、支持部材51の接着面51aがスライダ基板11の背面11bに接着されることによって、スライダ10に対して固着される。レーザダイオード60と導波路31は、レーザダイオード60から出射されたレーザ光が導波路31の入射端31aに入射するように位置決めされている。
【0053】
次に、図1ないし図7を参照して、近接場光発生装置15の構成について詳しく説明する。図1は、近接場光発生装置15を示す斜視図である。図2は、図1の2−2線で示す位置における近接場光発生装置15の要部の一例を示す断面図である。図3は、図1の2−2線で示す位置における近接場光発生装置15の要部の他の例を示す断面図である。図4は、近接場光発生装置15と磁極42を示す斜視図である。図5は、ヘッド部12の媒体対向面12aの一部を示す正面図である。図6は、近接場光発生装置15と磁極42を示す断面図である。図7は、近接場光発生装置15による近接場光発生の原理を説明するための説明図である。図5において、記号TWを付した矢印はトラック幅方向を表している。トラック幅方向は、Y方向に平行である。
【0054】
導波路31は、媒体対向面12aに垂直な方向(X方向)に延びている。導波路31は、図11に示した入射端31aと、媒体対向面12aにより近い端面31bと、上面31cと、下面31dと、2つの側面31e,31fとを有している。下面31dは、誘電体層27の上面に接している。導波路31の周囲に配置された誘電体層29は、上面29cを有している。端面31bは、媒体対向面12aに配置されていてもよいし、媒体対向面12aから離れた位置に配置されていてもよい。図1ないし図7には、端面31bが媒体対向面12aから離れた位置に配置された例を示している。この例では、端面31bと媒体対向面12aとの間に誘電体層29の一部が介在する。導波路31は、レーザダイオード60より出射されて、入射端31aに入射されたレーザ光35を伝播させる。
【0055】
図1ないし図4に示したように、導波路31は、上面31cで開口し、この上面31cに平行な第1の方向に長い溝部31gを有している。第1の方向は、X方向に平行な方向である。図2および図3に示したように、溝部31gは、第1の方向(X方向)に長い底部31g3と、この底部31g3と上面31cとを連結し第1の方向(X方向)に長い第1および第2の溝部側壁31g1,31g2とを有している。
【0056】
図1に示したように、導波路31の端面31bが媒体対向面12aから離れた位置に配置されている場合、誘電体層29は、導波路31の端面31bと媒体対向面12aとの間の位置において、上面29cで開口し、溝部31gに続いて第1の方向(X方向)に延びる溝部29gを有している。溝部29gの媒体対向面12aに平行な断面の形状は、溝部31gの媒体対向面12aに平行な断面の形状と同じである。なお、導波路31の端面31bが媒体対向面12aに配置されている場合には、溝部29gは存在しない。
【0057】
図1ないし図3に示したように、クラッド層34は、導波路31の上面31cおよび誘電体層29の上面29cに接する下面34aと、その反対側の上面34bと、この上面34bから下面34aにかけて貫通して溝部31g,29gに連続する開口部34cとを有している。
【0058】
図2および図3に示したように、開口部34cは、導波路31の上面31cに近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の開口部側壁34c1,34c2を有している。ここで、導波路31の上面31cに垂直な第2の方向に対して第1の開口部側壁34c1がなす角度を記号θ1で表し、第2の方向に対して第2の開口部側壁34c2がなす角度を記号θ2で表す。第2の方向は、Z方向に平行な方向である。角度θ1と角度θ2は等しいことが好ましい。
【0059】
第1の溝部側壁31g1は第1の開口部側壁34c1に連続し、第2の溝部側壁31g2は第2の開口部側壁34c2に連続している。ここで、図3に示したように、第2の方向(Z方向)に対して第1の溝部側壁31g1がなす角度を記号θ3で表し、第2の方向に対して第2の溝部側壁31g2がなす角度を記号θ4で表す。第2の方向に対して第1の溝部側壁31g1がなす角度θ3は、第2の方向に対して第1の開口部側壁34c1がなす角度θ1よりも小さい。第2の方向に対して第2の溝部側壁31g2がなす角度θ4は、第2の方向に対して第2の開口部側壁34c2がなす角度θ2よりも小さい。図2には、第2の方向に対して溝部側壁31g1,31g2がなす角度θ3、θ4がいずれも0°である例を示している。そのため、図2には記号θ3、θ4を付していない。第2の方向に対して溝部側壁31g1,31g2がなす角度は、0°に限らず、それぞれθ1,θ2よりも小さければよい。図3には、第2の方向に対して溝部側壁31g1,31g2がなす角度θ3、θ4が0°以外である例を示している。角度θ3、θ4が0°以外の場合、図3に示したように、溝部側壁31g1,31g2は、底部31g3に近づくに従って互いの距離が小さくなるように第2の方向に対して傾斜していてもよい。
【0060】
図1に示したように、近接場光発生素子32は、第1の方向(X方向)に長く、少なくとも一部が開口部34c内に収容されている。緩衝層33は、溝部31g,29gおよび開口部34c内において、導波路31、誘電体層29およびクラッド層34と近接場光発生素子32との間に介在している。なお、導波路31の端面31bが媒体対向面12aに配置されている場合には、溝部29gが存在しないので、緩衝層33は、溝部31gおよび開口部34c内において、導波路31およびクラッド層34と近接場光発生素子32との間に介在する。
【0061】
近接場光発生素子32は、以下で詳しく説明するような、ほぼ三角柱形状を有している。近接場光発生素子32は、媒体対向面12aに配置された第1の端面32aと、その反対側の第2の端面32bと、上面32cと、第1および第2の側面32d,32eとを有している。第1の側面32dは、緩衝層33を介して第1の開口部側壁34c1に対向している。第1の側面32dは、第1の開口部側壁34c1と平行であるか、ほぼ平行である。第2の側面32eは、緩衝層33を介して第2の開口部側壁34c2に対向している。第2の側面32eは、第2の開口部側壁34c2と平行であるか、ほぼ平行である。第1および第2の側面32d,32eは、溝部31gに近づくに従って互いの距離が小さくなっている。
【0062】
近接場光発生素子32は、更に、第1および第2の側面32d,32eを接続し、緩衝層33を介して溝部31gに対向するエッジ部32fと、媒体対向面12aに配置され、近接場光を発生する近接場光発生部32gとを有している。近接場光発生部32gは、媒体対向面12aに配置されたエッジ部32fの一端に位置している。ここで、第1の側面32dと第2の側面32eがなす角度を先端角度と呼び、図2および図3に示したように記号θで表す。エッジ部32fは、第1および第2の側面32d,32eの下端同士を接続する円筒面形状を有している。ここで、エッジ部32fの曲率半径を先端半径と呼び、図2および図3に示したように記号Rで表す。近接場光発生部32gは、具体的には、端面32aにおけるエッジ部32fの端部およびその近傍の部分である。先端角度θは、例えば80°〜120°の範囲内である。先端半径Rは、例えば0〜50nmの範囲内である。
【0063】
先端半径Rは、例えば、以下のようにして求めることができる。まず、集束イオンビーム(FIB)装置に付随する走査イオン顕微鏡(SIM)を用いて、近接場光発生素子32の第1の端面32aの画像を得る。次に、この画像上で、図2および図3において破線で示したような、エッジ部32fおよび側面32d,32eに内接する適当な大きさの円を描く。次に、その円の半径を求め、これを先端半径Rとする。
【0064】
近接場光発生素子32のトラック幅方向(Y方向)の最大の幅WNFと、近接場光発生素子32の厚み(Z方向の寸法)TNFは、いずれも、レーザ光35の波長よりも十分に小さい。WNFは、例えば100〜300nmの範囲内である。TNFは、例えば60〜150nmの範囲内である。近接場光発生素子32のX方向の長さHNFは、例えば0.5〜3μmの範囲内である。
【0065】
近接場光発生素子32の近傍における導波路31のトラック幅方向(Y方向)の幅WWGは、例えば0.3〜1μmの範囲内である。近接場光発生素子32の近傍における導波路31の厚み(Z方向の寸法)TWGは、例えば0.1〜1μmの範囲内である。
【0066】
図2および図3に示したように、溝部31gの深さ(Z方向の寸法)を記号EmHで表し、溝部31gの開口のトラック幅方向(Y方向)の幅を記号EmWで表し、溝部31gの底部31g3と近接場光発生素子32のエッジ部32fとの距離を記号BTで表す。深さEmHは、例えば20〜200nmの範囲内である。幅EmWは、例えば100〜300nmの範囲内である。距離BTは、例えば20〜100nmの範囲内である。BTは、EmHより小さくてもよいし、EmHと等しくてもよいし、EmHより大きくてもよい。BTがEmHより小さい場合には、近接場光発生素子32の一部は、緩衝層33を介して溝部31g内に収容される。また、近接場光発生素子32の第1の側面32dと第1の開口部側壁34c1とが対向する部分および近接場光発生素子32の第2の側面32eと第2の開口部側壁34c2とが対向する部分における緩衝層33の厚みを記号ATで表す。ATは、BTよりも小さく、例えば10〜90nmの範囲内である。
【0067】
近接場光発生素子32は、金属等の導電材料によって形成されている。近接場光発生素子32は、例えば、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Au、Ag、CuおよびAlからなるグループから選択された1つによって、またはこれらのうちの複数の元素からなる合金によって形成されていてもよい。
【0068】
導波路31は、レーザ光35を通過させる誘電体材料によって形成されている。誘電体層27,29、緩衝層33およびクラッド層34は、いずれも、誘電体材料によって形成され、且つ導波路31の屈折率よりも小さい屈折率を有している。従って、導波路31は、入射端31aを除いて、導波路31の屈性率よりも小さい屈折率を有する誘電体材料によって覆われている。誘電体層27,29、緩衝層33およびクラッド層34の各材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
例えば、レーザ光35の波長が600nmであって、導波路31がAl(屈折率n=1.63)によって形成されている場合には、誘電体層27,29、緩衝層33およびクラッド層34は、SiO(屈折率n=1.46)によって形成されていてもよい。また、導波路31がTa(n=2.16)等の酸化タンタルによって形成されている場合には、誘電体層27,29、緩衝層33およびクラッド層34は、SiO(n=1.46)またはAl(n=1.63)によって形成されていてもよい。
【0070】
図7に示したように、近接場光発生素子32のエッジ部32fは、緩衝層33を介して導波路31の溝部31gと対向する結合部32f1を含んでいる。結合部32f1では、導波路31と緩衝層33との界面において発生するエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起される。なお、近接場光発生素子32では、結合部32f1だけではなく、近接場光発生素子32の外面のうちの結合部32f1の近傍の部分においても、表面プラズモンが励起されてもよい。ここで、結合部32f1の長さをBLとする。近接場光発生素子32の外面のうちの少なくとも結合部32f1に励起された表面プラズモンは、エッジ部32fに沿って近接場光発生部32gに伝播され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部32gより近接場光が発生される。
【0071】
BTとBLは、表面プラズモンの適切な励起、伝播を実現するための重要なパラメータである。BTは、前記した範囲内すなわち20〜100nmの範囲内であることが好ましい。BLは、0.5〜3μmの範囲内であることが好ましい。
【0072】
導波路31の端面31bと媒体対向面12aとの間の距離DBFは、例えば0〜2.0μmの範囲内である。
【0073】
次に、図7を参照して、近接場光発生装置15による近接場光発生の原理と、近接場光を用いた熱アシスト磁気記録の原理について説明する。レーザダイオード60より出射されたレーザ光35は、導波路31を伝播して、緩衝層33の近傍に達する。ここで、導波路31と緩衝層33との界面において、レーザ光が全反射することによって、緩衝層33内にしみ出すエバネッセント光が発生する。次に、このエバネッセント光と、近接場光発生素子32の外面のうちの少なくとも結合部32f1における電荷のゆらぎとが結合する形で表面プラズモンモードが誘起され、近接場光発生素子32の外面のうちの少なくとも結合部32f1に表面プラズモンが励起される。なお、正確には、この系においては素励起である表面プラズモンが電磁波と結合することになるので、励起されるのは表面プラズモン・ポラリトンである。しかし、以下では、ポラリトンを省略して、表面プラズモン・ポラリトンを表面プラズモンと呼ぶ。
【0074】
近接場光発生素子32の外面のうちの少なくとも結合部32f1に励起された表面プラズモン36は、エッジ部32fに沿って近接場光発生部32gに伝播される。その結果、近接場光発生部32gにおいて表面プラズモン36が集中し、この表面プラズモン36に基づいて、近接場光発生部32gから近接場光37が発生する。この近接場光37は、磁気ディスク201に向けて照射され、磁気ディスク201の表面に達し、磁気ディスク201の磁気記録層の一部を加熱する。これにより、その磁気記録層の一部の保磁力が低下する。熱アシスト磁気記録では、このようにして保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、磁極42より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
【0075】
本実施の形態に係る近接場光発生装置15によれば、プラズモン・アンテナにレーザ光を直接照射して、プラズモン・アンテナより近接場光を発生させる場合に比べて、高い光利用効率で、導波路31を伝播するレーザ光を近接場光に変換することが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、レーザ光のエネルギーが熱エネルギーに変換されることによって媒体対向面12aの一部が突出することを抑制することができる。
【0076】
次に、図4ないし図6を参照して、磁極42の構成の一例について説明する。この例では、磁極42は、第1層42A、第2層42Bおよび第3層42Cを有している。図5に示したように、第1層42Aは、媒体対向面12aにおいて、近接場光発生素子32の第1の端面32aに対してZ方向の前方(トレーリング端側)に配置された端面を有している。この第1層42Aの端面と第1の端面32aとの間隔は、20〜50nmの範囲内であることが好ましい。第2層42Bは、第1層42Aの上に配置されて、第1層42Aの上面に接している。第2層42Bは、媒体対向面12aにより近い端面を有し、この端面は媒体対向面12aから離れた位置に配置されている。第3層42Cは、第2層42Bの上に配置されて、第2層42Bの上面に接している。第3層42Cは、媒体対向面12aにより近い端面を有し、この端面は媒体対向面12aから離れた位置に配置されている。第3層42Cの端面と媒体対向面12aとの間の距離は、第2層42Bの端面と媒体対向面12aとの間の距離よりも大きい。
【0077】
次に、図6および図11を参照して、記録シールド43の構成の一例について説明する。この例では、記録シールド43は、第1層43Aと第2層43Bとを有している。図6に示したように、第1層43Aは、ギャップ層44によって磁極42から隔てられて、磁極42の第2層42Bおよび第3層42Cの各端面と媒体対向面12aとの間に配置されている。図11に示したように、第2層43Bは、第1層43A、絶縁層47および磁極42の第3層42Cの上に配置され、媒体対向面12aの近傍において第1層43Aの上面に接し、媒体対向面12aから離れた位置で第3層42Cの上面に接している。
【0078】
なお、磁極42および記録シールド43の構成は、上述した構成に限定されない。例えば、磁極42は、1つまたは2つの層によって構成されていてもよい。また、記録シールド43は、1つ、または3つ以上の層によって構成されていてもよい。
【0079】
次に、図12を参照して、図8における制御回路230の回路構成と、熱アシスト磁気記録ヘッド1の動作について説明する。制御回路230は、制御LSI(大規模集積回路)100と、制御LSI100に接続されたROM(リード・オンリ・メモリ)101と、制御LSI100に接続されたライトゲート111と、ライトゲート111とコイル41とに接続されたライト回路112とを備えている。
【0080】
制御回路230は、更に、MR素子22と制御LSI100とに接続された定電流回路121と、MR素子22に接続された増幅器122と、この増幅器122の出力端と制御LSI100とに接続された復調回路123とを備えている。
【0081】
制御回路230は、更に、レーザダイオード60と制御LSI100とに接続されたレーザ制御回路131と、制御LSI100に接続された温度検出器132とを備えている。
【0082】
制御LSI100は、ライトゲート111に、記録データを供給すると共に記録制御信号を与える。また、制御LSI100は、定電流回路121と復調回路123に再生制御信号を与えると共に、復調回路123から出力される再生データを受け取る。また、制御LSI100は、レーザ制御回路131に、レーザON/OFF信号と動作電流制御信号とを与える。温度検出器132は、磁気ディスク201の磁気記録層の温度を検出し、この温度の情報は制御LSI100に与えられる。ROM101は、レーザダイオード60に供給する動作電流の値を制御するため制御テーブル等を格納している。
【0083】
記録動作時には、制御LSI100は、ライトゲート111に記録データを供給する。ライトゲート111は、記録制御信号が記録動作を指示するときのみ、記録データをライト回路112へ供給する。ライト回路112は、この記録データに従ってコイル41に記録電流を流す。これにより、磁極42より記録磁界が発生され、この記録磁界によって、磁気ディスク201の磁気記録層にデータが記録される。
【0084】
再生動作時には、定電流回路121は、再生制御信号が再生動作を指示するときのみ、MR素子22に一定のセンス電流を供給する。MR素子22の出力電圧は、増幅器122によって増幅され、復調回路123に入力される。再生制御信号が再生動作を指示するとき、復調回路123は、増幅器122の出力を復調して再生データを生成し、制御LSI100に与える。
【0085】
レーザ制御回路131は、レーザON/OFF信号に基づいてレーザダイオード60に対する動作電流の供給を制御すると共に、動作電流制御信号に基づいてレーザダイオード60に供給される動作電流の値を制御する。レーザON/OFF信号がオン動作を指示する場合、レーザ制御回路131の制御により、発振しきい値以上の動作電流がレーザダイオード60に供給される。これにより、レーザダイオード60よりレーザ光が出射され、このレーザ光が導波路31を伝播する。そして、前述の近接場光発生の原理により、近接場光発生素子32の近接場光発生部32gから近接場光37が発生し、この近接場光37によって、磁気ディスク201の磁気記録層の一部が加熱されて、その一部の保磁力が低下する。記録時には、この保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、磁極42より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
【0086】
制御LSI100は、温度検出器132によって測定された磁気ディスク201の磁気記録層の温度等に基づいて、ROM101内に格納された制御テーブルを参照して、レーザダイオード60の動作電流の値を決定し、その値の動作電流がレーザダイオード60に供給されるように動作電流制御信号によってレーザ制御回路131を制御する。制御テーブルは、例えば、レーザダイオード60の発振しきい値および光出力−動作電流特性の温度依存性を表すデータを含んでいる。制御テーブルは、更に、動作電流値と、近接場光37によって加熱された磁気記録層の温度上昇分との関係を表すデータや、磁気記録層の保磁力の温度依存性を表すデータも含んでいてもよい。
【0087】
図12に示したように、制御回路230が、記録/再生動作の制御信号系とは独立して、レーザダイオード60を制御するための信号系すなわちレーザON/OFF信号および動作電流制御信号の信号系を有することによって、単純に記録動作に連動したレーザダイオード60への通電のみならず、より多様なレーザダイオード60への通電のモードを実現することができる。なお、制御回路230の回路構成は、図12に示したものに限定されるものではない。
【0088】
次に、本実施の形態に係る近接場光発生装置15の製造方法について説明する。本実施の形態に係る近接場光発生装置15の製造方法は、導波路31およびクラッド層34を形成する工程と、導波路31、クラッド層34および緩衝層33によって近接場光発生素子32の形成用のフレームが形成されるように、導波路31の溝部31gおよびクラッド層34の開口部34c内に緩衝層33を形成する工程と、フレーム内に近接場光発生素子32を形成する工程とを備えている。以下、図13ないし図17を参照して、本実施の形態に係る近接場光発生装置15の製造方法について詳しく説明する。図13ないし図17は、それぞれ、近接場光発生装置15の製造過程における作製される積層体の一部の断面を表している。
【0089】
図13は、近接場光発生装置15の製造過程における一工程を示す。この工程では、まず、図示しない誘電体層27の上に、後に溝部31gが形成されることによって導波路31となる予備導波路31Pと、誘電体層29(図示せず)を形成する。次に、予備導波路31Pおよび誘電体層29の上に、開口部34cを有するクラッド層34を形成する。クラッド層34は、例えば、クラッド層34となる誘電体層を形成した後、この誘電体層に、反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)を用いたテーパーエッチングによって開口部34cを形成することによって形成することができる。
【0090】
図14は、次の工程を示す。この工程では、開口部34cを有するクラッド層34をエッチングマスクとして予備導波路31Pをエッチングして、予備導波路31Pに溝部31gを形成する。これにより、導波路31が完成する。なお、導波路31の端面31bと媒体対向面12aとの間に誘電体層29の一部が介在する場合には、予備導波路31Pに溝部31gを形成する際に同時に、誘電体層29の溝部29gが形成される。ここまでの工程が、導波路31およびクラッド層34を形成する工程である。
【0091】
クラッド層34をエッチングマスクとした予備導波路31Pのエッチングは、エッチング選択比、すなわち予備導波路31Pのエッチング速度をクラッド層34のエッチング速度で割った値が1より大きい条件で行うことが好ましい。この条件で予備導波路31Pをエッチングすることにより、図2および図3に示したように、第2の方向(Z方向)に対して第1の溝部側壁31g1がなす角度が、第2の方向に対して第1の開口部側壁34c1がなす角度θ1よりも小さく、第2の方向に対して第2の溝部側壁31g2がなす角度が、第2の方向に対して第2の開口部側壁34c2がなす角度θ2よりも小さくなるように、溝部31gを形成することができる。例えば、導波路31の材料(予備導波路31Pの材料)が酸化タンタルであり、クラッド層34の材料がAlである場合には、CFをエッチングガスとして用いたRIEによって予備導波路31Pのエッチングを行うことにより、上述のように溝部31gを形成することができる。この場合のエッチング選択比は約10である。
【0092】
予備導波路31Pに溝部31gを形成する際に同時に、誘電体層29の溝部29gを形成する場合には、クラッド層34と予備導波路31Pにおけるエッチング選択比が1より大きいと共に、クラッド層34と誘電体層29におけるエッチング選択比が1より大きい条件で、予備導波路31Pおよび誘電体層29のエッチングを行うことが好ましい。この条件は、例えば、導波路31の材料(予備導波路31Pの材料)が酸化タンタルであり、クラッド層34の材料がAlであり、誘電体層29の材料がSiOであり、CFをエッチングガスとして用いたRIEによって予備導波路31Pおよび誘電体層29のエッチングを行う場合に満される。
【0093】
図15は、次の工程を示す。この工程では、溝部31g、溝部29g(存在する場合に限る)および開口部34c内に緩衝層33を形成する。緩衝層33の形成方法としては、ステップカバレージのよい形成方法を用いることが好ましい。このような形成方法としては、例えば原子層堆積法(ALD)を用いることができる。緩衝層33を形成することにより、導波路31、誘電体層29(溝部29gが存在する場合に限る)、クラッド層34および緩衝層33によって近接場光発生素子32の形成用のフレームが形成される。
【0094】
図16は、次の工程を示す。この工程では、例えばスパッタ法によって、図15に示した工程で形成されたフレーム内に近接場光発生素子32を形成する。次に、例えば化学機械研磨(CMP)によって、クラッド層34、緩衝層33および近接場光発生素子32の上面を平坦化する。
【0095】
以上説明した近接場光発生装置15の製造方法によれば、所望の先端角度θと小さな先端半径Rを有する近接場光発生素子32を形成することが可能になる。以下、その理由について詳しく説明する。まず、図17を参照して、図15に示した工程における緩衝層33の成長の過程について説明する。緩衝層33の形成前において、溝部31gと開口部34cによって形成される凹部の媒体対向面12aに平行な断面の形状は、頂点が下を向いた二等辺三角形の頂点近傍がより凹んだ形状である。このような形状の凹部内に緩衝層33を形成する際には、図17において矢印で示したように緩衝層33が成長する。この緩衝層33の成長過程において、溝部31g内では、底部31g3、第1および第2の溝部側壁31g1,31g2の各々から成長した膜が結合するため、開口部34cの壁面上に比べて、緩衝層33の成長が速い。そのため、適当な厚みの緩衝層33を形成することにより、緩衝層33の上面によって形成される凹部の媒体対向面12aに平行な断面の形状は、頂点近傍が先鋭化された理想的な二等辺三角形に近いものとなる。従って、この緩衝層33の上に近接場光発生素子32を形成することによって、所望の先端角度θと小さな先端半径Rを有する近接場光発生素子32を形成することが可能になる。
【0096】
ここで、図18ないし図20を参照して、比較例の近接場光発生装置およびその製造方法について説明する。図18ないし図20は、それぞれ、比較例の近接場光発生装置の製造過程における作製される積層体の一部の断面を表している。
【0097】
比較例の製造方法では、まず、図18に示したように、導波路331の上に、本実施の形態における開口部34cと同様の形状の開口部334cを有するクラッド層334を形成する。比較例における導波路331は、溝部を有していない。次に、図19に示したように、開口部334c内に緩衝層333を形成することによって、クラッド層334および緩衝層333によって近接場光発生素子形成用のフレームを形成する。次に、図20に示したように、フレーム内に近接場光発生素子332を形成する。次に、クラッド層334、緩衝層333および近接場光発生素子332の上面を平坦化する。
【0098】
比較例の製造方法では、導波路331が溝部を有していないことから、図17を参照して説明した作用は得られず、緩衝層333の上面によって形成される凹部の媒体対向面に平行な断面の形状は、二等辺三角形における頂点近傍が曲率半径の大きな円弧形状となるように丸められた形状となる。従って、この緩衝層333の上に形成された近接場光発生素子332では、本実施の形態における近接場光発生素子32に比べて、エッジ部の先端半径が大きくなる。
【0099】
次に、近接場光発生素子32の先端角度θと近接場光発生装置15における光利用効率との関係を調べた第1のシミュレーションについて説明する。ここで、光利用効率は、IOUT/IINを百分率で表したものと定義する。IINは、導波路31に入射するレーザ光の強度である。IOUTは、近接場光発生素子32の近接場光発生部32gから発生する近接場光の強度である。
【0100】
以下、図21および図22を参照して、第1のシミュレーションの条件について説明する。図21は、第1のシミュレーションで使用した近接場光発生装置15のモデルを示す側面図である。図22は、図21に示した近接場光発生装置15のモデルの正面図である。このモデルでは、近接場光発生素子32の媒体対向面12aに垂直な方向(X方向)の長さを3μmとし、近接場光発生素子32のトラック幅方向(Y方向)の最大の幅WNFを230nmとし、近接場光発生素子32の厚み(Z方向の寸法)TNFを80nmとした。また、導波路31のY方向の幅を800nmとし、導波路31の厚み(Z方向の寸法)を400nmとした。また、近接場光発生素子32のエッジ部32fのうち緩衝層33を介して導波路31と対向する部分の媒体対向面12aに垂直な方向(X方向)の長さを2.1μmとし、エッジ部32fと導波路31との距離を50nmとした。なお、このモデルでは、導波路31は溝部31gを有していない。また、導波路31の材料は酸化タンタルとし、近接場光発生素子32の材料はAgとし、緩衝層33およびクラッド層34の材料はAl23とした。また、導波路31を伝播するレーザ光の波長は650nmとした。
【0101】
第1のシミュレーションでは、先端半径Rを10nmに固定して、先端角度θが70°、90°、110°、130°、150°のそれぞれの場合について、光利用効率を求めた。このシミュレーションで得られた先端角度θと光利用効率との関係を、下記の表1と図23に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
表1と図23に示した第1のシミュレーションの結果から、第1のシミュレーションの上記の条件においては、先端角度θが110°の場合に最も光利用効率が高いことが分かった。なお、先端角度θによって光利用効率が変化するのは、先端角度θによって、近接場光発生素子32に励起される表面プラズモンの波数が変化するためである。先端角度θが110°のように、ある程度大きい場合には、本実施の形態に係る近接場光発生装置15の製造方法によらなければ、先端半径Rの小さなエッジ部32fを形成することが困難である。
【0104】
次に、導波路31の溝部31gの形状および緩衝層33の厚みATと、先端半径Rとの関係を調べた第2のシミュレーションについて説明する。図24は、第2のシミュレーションで使用した近接場光発生素子形成用のフレームのモデルの形状を示す説明図である。第2のシミュレーションでは、先端角度θを110°に固定して、溝部31gの深さEmHと、溝部31gの開口の幅EmWと、緩衝層33の厚みATの各値の組み合わせが異なる6つのモデルについて、先端半径Rを求めた。その結果を、下記の表2に示す。なお、モデル1は、溝部31gのないモデルである。このモデル1におけるEmWは、クラッド層34の開口部34cの底部における幅を表している。モデル1を用いた近接場光発生装置の製造方法は、図18ないし図20に示した比較例の近接場光発生装置の製造方法に対応する。
【0105】
【表2】

【0106】
表2に示した第2のシミュレーションの結果から、本実施の形態に係る近接場光発生装置によれば、図18ないし図20に示した比較例の近接場光発生装置の製造方法に比べて、先端半径Rを小さくすることができることが分かる。また、第2のシミュレーションの結果から、溝部31gの形状と緩衝層33の厚みATを変えることによって、先端半径Rを変えることができることが分かる。なお、第2のシミュレーションでは、表2に示した全てのモデルについて、近接場光発生素子32に表面プラズモンが励起されることを確認した。
【0107】
次に、近接場光発生素子32の先端半径Rと近接場光発生素子32の近接場光発生部32gから発生する近接場光のスポット径との関係を調べた第3のシミュレーションについて説明する。第3のシミュレーションでは、近接場光発生素子32の材料をAgとし、先端角度θを110°に固定して、先端半径Rが50nm、10nm、20nm、30nmのそれぞれの場合について、近接場光発生部32gから発生する近接場光の媒体対向面12aにおけるスポット径を求めた。スポット径は、近接場光の強度分布における半値全幅とした。第3のシミュレーションの結果を、下記の表3に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
表3に示されるように、先端半径Rが小さくなるほど、スポット径が小さくなることが分かる。表3における先端半径Rの50nmという値は、第2のシミュレーションにおける溝部31gのないモデル1を用いて形成した近接場光発生素子の先端半径の値である。先端半径Rが50nmの場合におけるスポット径の123nmという値は、大きすぎて、高記録密度化には適していない。表3における先端半径Rの10nm、20nm、30nmの各値は、表2に示されるように、第2のシミュレーションにおける溝部31gのあるモデル2ないし6を用いて実現される値である。先端半径Rが10nm、20nm、30nmのそれぞれの場合におけるスポット径は、先端半径Rが50nmの場合のスポット径に比べて十分小さく、高記録密度化に適している。
【0110】
以上の第1ないし第3のシミュレーションから分かるように、本実施の形態によれば、光利用効率が高くなる所望の先端角度θ(例えば110°)と小さな先端半径Rを有する近接場光発生素子32を実現することが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、導波路31を伝播する光の利用効率を高め、且つ近接場光のスポット径を小さくすることが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、高記録密度化に適した熱アシスト磁気記録ヘッドを実現することが可能になる。
【0111】
次に、溝部31gの深さEmH、溝部31gの開口の幅EmWおよび溝部31gの底部31g3とエッジ部32fとの距離BTと、光利用効率との関係を調べた第4のシミュレーションについて説明する。まず、図25および図26を参照して、第4のシミュレーションの条件について説明する。図25は、第4のシミュレーションで使用した近接場光発生装置15のモデルを示す側面図である。図26は、図25に示した近接場光発生装置15のモデルの正面図である。このモデルでは、近接場光発生素子32の媒体対向面12aに垂直な方向(X方向)の長さを2.1μmとし、近接場光発生素子32のトラック幅方向(Y方向)の最大の幅WNFを230nmとし、近接場光発生素子32の厚み(Z方向の寸法)TNFを80nmとした。また、導波路31のY方向の幅を800nmとし、導波路31の厚み(Z方向の寸法)を400nmとした。このモデルでは、導波路31の端面31bは媒体対向面12aに配置されている。そのため、結合部32f1の長さBLは、近接場光発生素子32の媒体対向面12aに垂直な方向(X方向)の長さと等しく、2.1μmである。また、導波路31の材料は酸化タンタルとし、近接場光発生素子32の材料はAgとし、緩衝層33およびクラッド層34の材料はAl23とした。また、導波路31を伝播するレーザ光の波長は650nmとした。
【0112】
また、第4のシミュレーションでは、近接場光発生素子32の媒体対向面12aに平行な断面の形状を二等辺三角形とし、先端角度θを110°に固定して、EmHとEmWとBTの各値の組み合わせが異なる複数の9つのモデルについて、光利用効率(%)を求めた。その結果を、下記の表4に示す。なお、EmH=0nm且つEmW=0nmの3つのモデルは、溝部31gのないモデルである。このモデルにおけるBTは、エッジ部32fと導波路31の上面31cとの距離を表している。
【0113】
【表4】

【0114】
表4に示されるように、溝部31gがない場合(EmH=0nm且つEmW=0nm)には、光利用効率は、BTが50nmのときに最も高く、BTが25nmのときと75nmのときには急激に減少している。これは、溝部31gがない場合には、光利用効率の安定化のためには、BTの制御が重要であることを意味している。
【0115】
一方、溝部31gがある場合には、EmH=50nm、EmW=100nm且つBT=50nmのときに光利用効率が最も高くなっているが、EmH=50nm、EmW=100nm且つBT=75nmのときでも光利用効率は十分高い値になっている。
【0116】
このように、溝部31gがない場合には、光利用効率が最大となるときの条件と比較してBTが大きくなると光利用効率が急減に減少するのに対し、溝部31gがある場合には、光利用効率が最大となるときの条件と比較してBTが大きくなっても光利用効率の急減な減少は生じない。溝部31gの有無によって、このような違いが生じる原因は、以下のように考えられる。
【0117】
溝部31gがない場合には、導波路31の上面31cのうち、近接場光発生素子32の外面(エッジ部32f)と近接した位置にあって近接場光発生素子32における表面プラズモンの励起に寄与する部分が非常に狭い。この場合、BTの変化は、近接場光発生素子32の外面と導波路31の上面31cにおける互いに近接する部分同士の距離の変化に直結する。そのため、溝部31gがない場合には、BTの変化に対して光利用効率が敏感に変化すると考えられる。
【0118】
これに対し、溝部31gがある場合には、近接場光発生素子32の外面のうち、エッジ部32fとその近傍の比較的広い部分と、導波路31の外面のうち、溝部31gとその近傍の上面31cの一部とを含む比較的広い部分とが互いに近接し、これらの部分が近接場光発生素子32における表面プラズモンの励起に寄与すると考えられる。そして、BTが変化しても、特に導波路31の外面のうち溝部31gの開口の近傍の部分と近接場光発生素子32の外面との距離の変化量は、BTの変化量に比べて小さい。そのため、溝部31gがある場合には、BTの変化に対して光利用効率の変化は緩やかになると考えられる。
【0119】
このように、本実施の形態に係る近接場光発生装置15によれば、溝部31gがない場合に比べて、高い光利用効率が得られるBTの範囲が広くなる。これにより、本実施の形態によれば、緩衝層33の厚みを大きくすることができるという利点と、緩衝層33の厚みの変動の許容範囲が広くなるという利点が得られる。その結果、本実施の形態によれば、近接場光発生装置15の製造が容易になる。
【0120】
以上説明したように、本実施の形態に係る近接場光発生装置15によれば、高い光利用効率で、導波路31を伝播するレーザ光を近接場光に変換することが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、レーザ光のエネルギーが熱エネルギーに変換されることによって媒体対向面12aの一部が突出することを抑制することができる。
【0121】
また、本実施の形態によれば、光利用効率が高くなる所望の先端角度θと小さな先端半径Rを有する近接場光発生素子32を実現することが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、導波路31を伝播する光の利用効率を高め、且つ近接場光のスポット径を小さくすることが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、高記録密度化に適した熱アシスト磁気記録ヘッドを実現することが可能になる。
【0122】
また、本実施の形態によれば、緩衝層33の厚みを大きくすることができると共に、緩衝層33の厚みの変動の許容範囲が広くなり、その結果、近接場光発生装置15の製造が容易になる。
【0123】
また、本実施の形態に係る近接場光発生装置15の製造方法において、導波路31およびクラッド層34を形成する工程は、後に溝部31gが形成されることによって導波路31となる予備導波路31Pを形成する工程と、予備導波路31Pの上にクラッド層34を形成する工程と、クラッド層34をエッチングマスクとして予備導波路31Pをエッチングして、予備導波路31Pに溝部31gを形成することによって、導波路31を完成させる工程とを含んでいる。これにより、本実施の形態によれば、溝部31gと開口部34cが正確に位置合わせされるので、近接場光発生素子32を精度よく形成することが可能になる。
【0124】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、実施の形態では、媒体対向面12aにおいて、磁極42の端面(第1層42Aの端面)が近接場光発生素子32の端面32bに対してZ方向の前方(トレーリング端側)に配置されている。しかし、媒体対向面12aにおいて、磁極42の端面は、近接場光発生素子32の端面32bに対してZ方向の後方(リーディング端側)に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0125】
15…近接場光発生装置、31…導波路、31g…溝部、32…近接場光発生素子、32d…第1の側面、32e…第2の側面、32f…エッジ部、32g…近接場光発生部、33…緩衝層、34…クラッド層、34c…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、この上面で開口し、この上面に平行な第1の方向に長い溝部とを有し、光を伝播させる導波路と、
前記導波路の上面に接する下面と、その反対側の上面と、この上面から前記下面にかけて貫通して前記溝部に連続する開口部とを有するクラッド層と、
前記第1の方向に長く、少なくとも一部が前記開口部内に収容された近接場光発生素子と、
前記溝部および開口部内において、前記導波路およびクラッド層と前記近接場光発生素子との間に介在する緩衝層とを備え、
前記クラッド層と緩衝層は、いずれも、前記導波路の屈折率よりも小さい屈折率を有し、
前記開口部は、前記導波路の上面に近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の開口部側壁を有し、
前記溝部は、前記第1の開口部側壁に連続する第1の溝部側壁と、前記第2の開口部側壁に連続する第2の溝部側壁とを有し、
前記導波路の上面に垂直な第2の方向に対して前記第1の溝部側壁がなす角度は、前記第2の方向に対して前記第1の開口部側壁がなす角度よりも小さく、
前記第2の方向に対して前記第2の溝部側壁がなす角度は、前記第2の方向に対して前記第2の開口部側壁がなす角度よりも小さく、
前記近接場光発生素子は、前記緩衝層を介して前記第1および第2の開口部側壁に対向し、前記溝部に近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の側面と、この第1および第2の側面を接続し、前記緩衝層を介して前記溝部に対向するエッジ部と、前記エッジ部の一端に位置し、近接場光を発生する近接場光発生部とを有し、
前記エッジ部において、前記導波路と前記緩衝層との界面において発生するエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンが前記エッジ部に沿って前記近接場光発生部に伝播され、この表面プラズモンに基づいて前記近接場光発生部より前記近接場光が発生されることを特徴とする近接場光発生装置。
【請求項2】
前記近接場光発生素子は、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Au、Ag、CuおよびAlからなるグループから選択された1つによって、またはこれらのうちの複数の元素からなる合金によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の近接場光発生装置。
【請求項3】
上面と、この上面で開口し、この上面に平行な第1の方向に長い溝部とを有し、光を伝播させる導波路と、
前記導波路の上面に接する下面と、その反対側の上面と、この上面から前記下面にかけて貫通して前記溝部に連続する開口部とを有するクラッド層と、
前記第1の方向に長く、少なくとも一部が前記開口部内に収容された近接場光発生素子と、
前記溝部および開口部内において、前記導波路およびクラッド層と前記近接場光発生素子との間に介在する緩衝層とを備え、
前記クラッド層と緩衝層は、いずれも、前記導波路の屈折率よりも小さい屈折率を有し、
前記開口部は、前記導波路の上面に近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の開口部側壁を有し、
前記溝部は、前記第1の開口部側壁に連続する第1の溝部側壁と、前記第2の開口部側壁に連続する第2の溝部側壁とを有し、
前記導波路の上面に垂直な第2の方向に対して前記第1の溝部側壁がなす角度は、前記第2の方向に対して前記第1の開口部側壁がなす角度よりも小さく、
前記第2の方向に対して前記第2の溝部側壁がなす角度は、前記第2の方向に対して前記第2の開口部側壁がなす角度よりも小さく、
前記近接場光発生素子は、前記緩衝層を介して前記第1および第2の開口部側壁に対向し、前記溝部に近づくに従って互いの距離が小さくなる第1および第2の側面と、この第1および第2の側面を接続し、前記緩衝層を介して前記溝部に対向するエッジ部と、前記エッジ部の一端に位置し、近接場光を発生する近接場光発生部とを有し、
前記エッジ部において、前記導波路と前記緩衝層との界面において発生するエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンが前記エッジ部に沿って前記近接場光発生部に伝播され、この表面プラズモンに基づいて前記近接場光発生部より前記近接場光が発生される近接場光発生装置を製造する方法であって、
前記導波路およびクラッド層を形成する工程と、
前記導波路、クラッド層および緩衝層によって前記近接場光発生素子形成用のフレームが形成されるように、前記導波路の溝部および前記クラッド層の開口部内に前記緩衝層を形成する工程と、
前記フレーム内に前記近接場光発生素子を形成する工程と
を備えたことを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項4】
前記導波路およびクラッド層を形成する工程は、
後に前記溝部が形成されることによって前記導波路となる予備導波路を形成する工程と、
前記予備導波路の上に前記クラッド層を形成する工程と、
前記クラッド層をエッチングマスクとして前記予備導波路をエッチングして、前記予備導波路に前記溝部を形成することによって、前記導波路を完成させる工程とを含むことを特徴とする請求項3記載の近接場光発生装置の製造方法。
【請求項5】
前記導波路を完成させる工程は、エッチング選択比が1より大きい条件で、前記予備導波路をエッチングすることを特徴とする請求項4記載の近接場光発生装置の製造方法。
【請求項6】
前記緩衝層は原子層堆積法によって形成されることを特徴とする請求項3記載の近接場光発生装置の製造方法。
【請求項7】
磁気記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、情報を前記磁気記録媒体に記録するための記録磁界を発生する磁極と、
請求項1記載の近接場光発生装置とを備え、
前記近接場光発生部は、前記媒体対向面に配置され、
前記近接場光発生装置は、前記記録磁界によって前記磁気記録媒体に情報を記録する際に前記磁気記録媒体に照射される近接場光を発生することを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項8】
前記近接場光発生素子は、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Au、Ag、CuおよびAlからなるグループから選択された1つによって、またはこれらのうちの複数の元素からなる合金によって形成されていることを特徴とする請求項7記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項9】
請求項7記載の熱アシスト磁気記録ヘッドと、前記熱アシスト磁気記録ヘッドを支持するサスペンションとを備えたヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項10】
磁気記録媒体と、請求項7記載の熱アシスト磁気記録ヘッドと、前記熱アシスト磁気記録ヘッドを支持すると共に前記磁気記録媒体に対して位置決めする位置決め装置とを備えた磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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